説明

車両の充電制御装置

【課題】 ヒータの要求能力を高めることなくバッテリの充電を所定時刻において完了可能な車両の充電制御装置を提供すること。
【解決手段】 ユーザがタイマ充電予約手段により指定した充電時間帯にタイマ充電を行うとき、バッテリ加熱が行われたときは充電停止時刻を遅らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの電力を用いて走行可能な車両の充電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリの電力を用いて走行可能な車両において、バッテリの充電制御を行う技術が特許文献1に開示されている。この公報には、バッテリ温度が低下し充電時間が長くなるために所定時間以内にバッテリの充電が完了できないと判別されたときは、所定時間以内に充電を完了するように、予め指定された充電開始時刻よりも前に、ヒータによりバッテリを加熱するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−115747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、充電開始前にバッテリの加熱を完了させるためには、短時間でバッテリを所定温度まで加熱する必要があり、走行用の電力源として使用されるような容積の大きなバッテリを加熱する場合、ヒータの要求能力が高くなるため、コストアップを招くという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ヒータの要求能力を高めることなくバッテリの充電を完了可能な車両の充電制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両の充電制御装置にあっては、ユーザがタイマ充電予約手段により指定した充電時間帯にタイマ充電を行うとき、バッテリ加熱が行われたときは充電停止時刻を遅らせる。
【発明の効果】
【0007】
タイマ充電とバッテリ加熱とが同時に行われることにより充電電力が低下したとしても、充電停止時刻を遅らせることで充電時間を延長することができ、充電量不足を回避することができる。また、タイマ充電中にバッテリ加熱を行えるため、ヒータの要求能力を高くする必要がなく、コストアップを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の車両の充電制御装置を表す全体システム図である。
【図2】実施例1のバッテリヒータ作動中におけるバッテリ温度とバッテリヒータの消費電力挙動を示すタイムチャートである。
【図3】実施例1の充電制御装置において実施されるタイマ充電時制御処理を表すフローチャートである。
【図4】実施例1のタイマ充電時制御処理を表すタイムチャートである。
【図5】実施例1のタイマ充電時制御処理を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
図1は実施例1の車両の充電制御装置を表す全体システム図である。実施例1の車両はバッテリのみをエネルギとして走行する電気自動車である。電動車両100は、充放電可能なバッテリ11を有し、バッテリ11に蓄えられた直流電力をインバータ32にて交流電力に変換し、駆動モータ31に供給することで車両を駆動する。また、バッテリ11は、充電ケーブル40で外部電源50と電動車両100とを接続することにより、外部電源電力を受電して充電される。外部電源50の種類は、一般的に普通充電の場合は商用電源であり、急速充電の場合は急速充電器であるが、図1では普通充電の形態を示す。商用電源52は一般的に電源コンセント51により給電される。
【0010】
充電ケーブル40は、電源コンセント51に接続可能な電源プラグ43と、充電中のシステム漏電を検知して配線を遮断する機能や、電流容量信号を車両に送る機能等を持つコントロールボックス42と、電動車両100の充電ポート23に接続可能な充電コネクタ41から構成されている。充電ケーブル40により外部電源50と電動車両100とが接続されると、充電制御装置21が起動し、設定されている充電モードに基づき、充電を開始するかどうかを決定する。充電モードは、すぐに充電を開始する即充電モードと、予め設定されている充電開始時刻及び/又は充電停止時刻に基づき充電開始/停止を行うタイマ充電モードと、等を有する。
【0011】
充電開始にあたっては、バッテリリレー13と充電リレー24とをそれぞれ繋げ、充電器22がコントロールボックス42の出力する電流容量信号に基づいて充電ケーブル40の電流容量を認識した上で、その電流容量の範囲内で外部電源50からの入力電流を制御する。充電器22に入力された交流電力(電圧×電流)は、充電器22において直流電力に変換し、電圧を昇圧した上で出力される。充電器22が出力する電力については、充電制御装置21によってリアルタイムに制御され、バッテリ制御装置12が要求するバッテリ11への充電電力と、充電器22が出力可能な出力可能電力と、強電補機系33とDCDCコンバータ34と弱電補機系35とが消費する補機消費電力により決定される。尚、DCDCコンバータ34は、電圧を降圧して弱電補機系35へ直流電力を供給する。
【0012】
充電中は、バッテリ制御装置12(バッテリ制御手段に相当)がバッテリ11のSOC、電圧、温度などの状態を監視し、これらに基づいて充電要求電力を決定し、充電制御装置21へ送る。バッテリ11への電力供給は、特に充電停止時刻や充電量の指定がない限り、満充電まで継続される。満充電時においては、バッテリ制御装置12が、バッテリ11のSOCや電圧により満充電判定を行い、充電制御装置21へ充電停止を要求し、充電制御装置21が充電停止する。充電停止にあたっては、充電器22が入出力する充電電力をゼロにした上で、バッテリリレー13と充電リレー24とを夫々遮断する。
【0013】
また、タイマ充電の場合は、予め設定されている充電開始時刻及び/又は充電停止時刻情報に基づいて充電制御装置21(充電制御手段に相当)が充電開始時刻及び/又は充電停止時刻を決定し、決定された充電開始時刻が現在時刻よりも後である場合は、充電ケーブル40が接続されても充電開始時刻まで充電システムを停止しておく。尚、タイマ充電の充電開始時刻や充電停止時刻情報については、ユーザがインターフェース装置25(タイマ充電予約手段に相当)によって直接入力して充電制御装置21が記憶するか、又は、予め設定してある複数の充電モードの中からユーザが任意のモードを選択することにより、車両が充電開始時刻/停止時刻を決定する方法がある。また、外気温を検出する外気温度センサ26を有する。
【0014】
また、バッテリ11は、温度が低くなると、充電可能容量の低下や、許容充電電流の低下により充電時間が長くなる特性がある。また、バッテリ11が凍結温度まで下がった場合は、充放電できなくなるという特性がある。このため、バッテリ11を所定温度以上に加熱及び保温するために、バッテリヒータ15を搭載している。バッテリ11には、バッテリ温度をモニタするバッテリ温度センサ14を有し、バッテリ温度が所定温度以下になった場合には、目標温度以上となるようにバッテリヒータ15を作動させ、バッテリ11を加熱する。バッテリヒータ15はバッテリ11または充電器22から電力供給を受けて作動する。
【0015】
尚、車両コスト低減のためには、バッテリ11を目標温度以上に保温できるだけの、必要最小限のヒータ出力を有する小出力型のヒータとする必要がある。この場合、バッテリ11を昇温する際のヒータ作動時間が長くなるため、充電とバッテリ加熱が同時に作動する機会が多くなる。特に、タイマ充電のように主にコストの安い夜間電力時間帯で使われる充電モードにおいては、バッテリ温度が低下している場合が多く、充電とバッテリ加熱が同時に作動することが予測される。ここで、充電とバッテリ加熱とが同時に作動した場合、充電器22の出力は外部電源電力により上限が決まるため、バッテリヒータ15の電力分だけ充電電力が不足してしまうことになる。このため、実施例1では、充電制御装置21において、充電中にバッテリ加熱が行われた場合には、現在設定されている充電停止時刻を遅らせ、充電量不足を防止するものである。
【0016】
図2は実施例1のバッテリヒータ作動中におけるバッテリ温度とバッテリヒータの消費電力挙動を示すタイムチャートである。走行終了時点では、走行中の放電によるバッテリ11の発熱によって外気温度よりもバッテリ11の温度が高くなる。その後、車両を放置している間は、バッテリ11の温度は、外気温度に向かって次第に低下していく。外気温度が極低温の場合は、前述したようにバッテリ11の性能低下温度やバッテリ内の電解質凍結温度に相当するバッテリ性能保証限界温度に達するのを防止するため、バッテリヒータ15によりバッテリ加熱を行う。
【0017】
バッテリヒータ15は、通常、ヒータ作動開始温度と、このヒータ作動開始温度よりも高いヒータ作動停止温度が予め設定されている。バッテリ温度センサ14により検知されたバッテリ11の温度が作動開始温度に達すると、バッテリヒータ15を作動開始し、作動停止温度まで昇温した時点でバッテリヒータ15の作動を停止する。これにより、バッテリ11を所定温度以上に保持する。バッテリヒータ15が小出力型の場合、バッテリヒータ作動開始温度から作動停止温度に上昇するまで、通常は数時間かかり、また、バッテリ温度が作動停止温度から作動開始温度に冷えるまで通常は数時間を要する。また、バッテリヒータ15の作動は、バッテリ温度に基づいて行われるものであり、バッテリ11の充電状態等とは独立して行われる。よって、充電システム側では、充電システムのスリープ状態であっても、定期的に、又は不定期的にバッテリヒータ15の作動状態をチェックする必要がある。
【0018】
図3は実施例1の充電制御装置において実施されるタイマ充電時制御処理を表すフローチャートである。
ステップS1では、タイマ充電時間帯の予約の有無を判断し、予約がないときは本制御フローを終了し、予約があるときはステップS2へ進む。
ステップS2では、充電開始時刻に到達したか否かを判断し、充電開始時刻に到達したときはステップS3に進み、到達していないときは本ステップを繰り返す。尚、このとき、充電システムはスリープ状態であり、チェック時刻に到達すると、充電システムを起動して各種チェックを行う。
ステップS3では、充電開始時刻に到達しているため充電を開始する。
ステップS4では、充電中にバッテリヒータ15が作動しているか否かを判断し、作動有りと判断したときはステップS5に進み、それ以外のときはステップS8に進む。
ステップS5では、バッテリヒータ作動中の消費電力量を積算する。
ステップS6では、予め設定されていた充電停止時刻に到達したか否かを判断し、到達したと判断したときはステップS7に進み、それ以外のときはステップS5に戻って消費電力量の積算を繰り返す。
ステップS7では、現在のバッテリ電力量にバッテリヒータ作動中の消費電力量を加えた電力量まで充電を継続し、充電が終了したときはステップS9に進んで充電を終了する。
ステップS8では、予め設定されていた充電停止時刻に到達したか否かを判断し、到達したと判断したときはステップS9に進んで充電を終了し、それ以外のときはステップS4に戻ってバッテリヒータ15が作動しているか否かのチェックを継続する。
【0019】
図4は実施例1のタイマ充電時制御処理を表すタイムチャートである。このタイムチャートの最初の状態は、ユーザが外部電源50と電動車両100とを充電ケーブル40により接続し、ユーザがインターフェース装置25により充電開始時刻と充電停止時刻とを設定した場合を示す。また、外部電源50により供給可能な電力には制限があり、この制限内で電力供給を行うものである。このとき、外気温はバッテリ性能保障限界温度よりも低く、言い換えると、バッテリ11の温度は放置によりヒータ作動停止温度を下回る。
【0020】
時刻t1において、バッテリ温度がヒータ作動停止温度を下回ると、バッテリヒータ15が作動し、バッテリ11を暖め始める。このときは、まだ充電開始時刻よりも前の段階である。
時刻t2において、充電開始時刻に到達すると、充電を開始する。このとき、継続的にバッテリヒータ15が作動しているため、充電電力量はバッテリヒータ15の消費電力量だけ不足する。この消費電力量は充電中に継続的に積算される。
時刻t3において、充電停止時刻に到達すると、積算された消費電力量に相当する充電量を補完するために継続して充電を継続する。これにより、タイマ充電中にバッテリヒータ15が作動し、充電量が不十分な場合であっても、充電停止時刻を遅らせることで充電量を確保することができる。
時刻t4において、必要な充電時間が経過すると、充電を停止する。
【0021】
図5は実施例1のタイマ充電時制御処理を表すタイムチャートである。基本的には図4に示す内容と同じであるが、このタイムチャートでは、充電開始時刻においてバッテリヒータ15が作動しておらず、充電中の時刻t21において、バッテリヒータ15の作動が開始した例を示す。この場合においても、バッテリヒータ15の作動と同時に消費電力量の積算が開始され、その積算量に応じて充電停止時間を遅らせることで、充電量を確保するものである。
【0022】
以上、実施例1は、下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)電気を充放電するバッテリ11と、バッテリ11を加熱するバッテリヒータ15と、バッテリ11の温度を検知するバッテリ温度センサ14(バッテリ温度検出手段)と、バッテリ11の温度状態を監視してバッテリヒータ15を制御してバッテリ加熱を行うバッテリ制御装置12(バッテリ制御手段)と、バッテリ11及びバッテリヒータ15に電力を供給する充電器22と、ユーザが所定の充電時間帯と目標充電量を任意に指定可能なインターフェース装置25(タイマ充電予約手段)と、インターフェース装置25により指定された充電時間帯にタイマ充電を行なう充電制御装置21(充電制御手段)と、を備え、充電制御装置21は、タイマ充電中にバッテリ加熱が行なわれたときは、充電時間帯の充電停止時刻を遅らせることとした。
【0023】
すなわち、タイマ充電とバッテリ加熱とが同時に行われることにより充電電力が低下したとしても、充電停止時刻を遅らせることで充電時間を延長することができ、充電量不足を回避することができる。また、タイマ充電中にバッテリ加熱を行えるため、バッテリヒータ15の要求能力を高くする必要がなく、コストアップを回避することができる。また、充電中にバッテリヒータ15を作動させつつ充電を行うため、充電効率の低下を回避することができる。
【0024】
(2)充電制御装置21は、タイマ充電中にバッテリ加熱が行なわれたときの消費電力量を充電するまで遅らせる。すなわち、タイマ充電中のバッテリヒータ15による消費電力量を補うことで、不用に充電時間を遅らせることなく充電量を確保することができる。
【0025】
以上、実施例1に基づいて本発明を説明したが、上記構成に限られず本発明の範囲を逸脱しない範囲で他の構成を取り得る。実施例1では、電動車両について説明したが、プラグインハイブリッド型の車両であってもよい。また、実施例では積算されたバッテリヒータ15の消費電力量だけ充電停止時刻を遅らせる構成としたが、更に確実に充電を完了するために安全率を考慮してマージンを加算した時間だけ遅らせてもよい。
【符号の説明】
【0026】
11 バッテリ
12 バッテリ制御装置
14 バッテリ温度センサ
15 バッテリヒータ
21 充電制御装置
22 充電器
25 インターフェース装置
26 外気温度センサ
40 充電ケーブル
50 外部電源
100 電動車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気を充放電するバッテリと、
前記バッテリを加熱するバッテリヒータと、
前記バッテリの温度を検知するバッテリ温度検出手段と、
前記バッテリの温度状態を監視して前記バッテリヒータを制御してバッテリ加熱を行うバッテリ制御手段と、
前記バッテリ及び前記バッテリヒータに電力を供給する充電器と、
ユーザが所定の充電時間帯と目標充電量を任意に指定可能なタイマ充電予約手段と、
前記タイマ充電予約手段により指定された充電時間帯にタイマ充電を行う充電制御手段と、
を備え、
前記充電制御手段は、タイマ充電中にバッテリ加熱が行われたときは、前記充電時間帯の充電停止時刻を遅らせることを特徴とする車両の充電制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の充電制御装置において、
前記充電制御手段は、タイマ充電中にバッテリ加熱が行われたときの消費電力量を充電するまで遅らせることを特徴とする車両の充電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−191783(P2012−191783A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54092(P2011−54092)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】