説明

車両の冷却装置

【課題】車両のシステム停止中の電池の電力消費を抑制しつつ、デッドソーク後の熱害を抑制する。
【解決手段】HV_ECUは、始動時であって(S100にてYES)、HV水温とMG温度(1)とMG温度(2)とインバータ温度とについてのHi駆動条件が全て不成立であると(S102にてNO、かつS104にてNO、かつS106にてNO、かつS108にてNO)、スロ−スタート制御を実行するステップ(S112)と、HV水温とMG温度(1)とMG温度(2)とインバータ温度とのうちいずれかのHi駆動条件が成立すると(S102にてYES、またはS104にてYES、またはS106にてYES、またはS108にてYES)、あるいは始動時でないと(S100にてNO)、通常制御を実行するステップ(S110)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動源および駆動源に関連した構成部品を冷却する冷却装置に関し、特にデッドソーク後のシステム再始動時における冷却媒体の流量制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機の動力により走行する電気自動車、ハイブリッド自動車および燃料電池自動車が知られている。このような車両には、エンジンを駆動源とする車両と異なり、モータジェネレータ、インバータおよびコンバータ等が搭載されており、このような発熱体を冷却する冷却装置が搭載される。
【0003】
この冷却装置は、冷却媒体が流れる冷却通路と、その冷却通路において冷却媒体を循環させるポンプと、冷却媒体の熱を放熱するラジエータ等の熱交換器とを含む。この冷却通路は、モータジェネレータ、インバータおよびコンバータなどの表面や内部などに張りめぐらされている。
【0004】
このような冷却装置が搭載された車両においては、高負荷運転後に直ちに車両のシステムを停止すると(以下、デッドソークともいう)、ポンプの作動が停止されるため、冷却媒体の流通が停止する。そのため、モータジェネレータ等の発熱体の周囲に停滞する冷却媒体の温度が増加する。そして、増加した冷却媒体の温度が発熱体の自然冷却とともに低下するまでに車両のシステムが再始動すると、ポンプの作動に応じて発熱体の周囲に停滞していた高温の冷却媒体が冷却通路を流通することなり、熱応力の発生に起因した熱衝撃などの熱害が発生する場合がある。
【0005】
このような問題に鑑みて、たとえば、特開平10−238345号公報(特許文献1)は、音振性能の低下とバッテリの電力消費を最小限に抑制しながら、原動機停止後の原動機の過熱を防止するハイブリッド電気自動車の冷却装置を開示する。この冷却装置は、原動機と第1のラジエータとの間で第1の冷却水ポンプにより冷却水を循環させ、第1のラジエータで第1の冷却ファンにより冷却水を冷却する第1の冷却系と、発電機と電動機と第2のラジエータとの間で第2の冷却水ポンプにより冷却水を循環させ、第2のラジエータで第2の冷却ファンにより冷却水を冷却する第2の冷却系とを備える。冷却装置は、第1の冷却系の冷却水温度を検出する第1の温度検出手段と、第2の冷却系の冷却水温度を検出する第2の温度検出手段と、単独モードでは第1の冷却系と第2の冷却系とでそれぞれ別個に冷却水を循環させ、連動モードでは第1の冷却系の冷却水を第1のラジエータと第2のラジエータと原動機との間で循環させる冷却水流路切換手段と、自動車のキースイッチがオフされると、第2の冷却系の冷却水温が第1の所定値以下に低下するまで第1の冷却系と第2の冷却系とでそれぞれ単独に冷却動作を行ない、第2の冷却系の冷却水温が第1の所定値以下に低下したら第2の冷却水ポンプを停止するとともに、冷却水流路切換手段により連動モードの流路に切り換える制御手段とを備える。
【0006】
上述した公報に開示された冷却装置によると、キースイッチオフ後の原動機、発電機および電動機の熱害を防止できるとともに、第1の冷却系の冷却能力が上がり、短時間で第1の冷却系の冷却水温度を下げることができ、冷却水ポンプと冷却ファンの運転音と振動による音振性能を向上させることができる。また、キースイッチオフ後の冷却水ポンプと冷却ファンの運転時間が短縮されるので、電池の電力消費が節約される。
【特許文献1】特開平10−238345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した公報に開示された冷却装置のように、キースイッチオフ後のエンジン停止時に冷却ポンプあるいは冷却ファンが駆動すると、たとえ短時間であっても騒音および振動が大きくなるという問題がある。また、発電不可の状態で、冷却水ポンプあるいは冷却ファンを駆動させると、電池の電力が消費される。そのため、再始動時と同時に電池の充電が必要となり、特に、ハイブリッド車両の場合、再始動時と同時に電池充電のためにエンジンが起動される場合があり、再始動時において騒音および振動が大きくなるという問題がある。運転者はシステム停止時およびシステム再始動時に上述したような騒音および振動により不快感を感じる可能性がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両のシステム停止中の電池の電力消費を抑制しつつ、デッドソーク後の熱害を抑制する車両の冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る車両の冷却装置は、車両の、少なくとも駆動源を有する駆動システムを冷却する。この冷却装置は、駆動システムの構成部品に接するように設けられ、冷却媒体が循環するように形成される冷却通路と、冷却通路の途中に設けられ、冷却媒体の熱を放熱する熱交換器と、冷却媒体を流通させるための流通手段と、流通手段を制御するための制御手段とを含む。制御手段は、駆動システムが走行準備状態になると、走行準備状態以外の通常制御状態における流量と異なる流量になるように、流通手段を制御するための手段を含む。
【0010】
第1の発明によると、制御手段は、車両の駆動システムが走行準備状態になると(たとえば、運転者がイグニッションスイッチあるいはパワースイッチをオンして駆動システムを始動すると)、走行準備状態以外の通常制御状態における流量と異なる流量(たとえば、通常制御状態における流量よりも小さい流量)になるように、流通手段(たとえば、ポンプ)を制御する。たとえば、駆動システムの走行準備状態における冷却通路内の冷却媒体の流量が、通常制御状態における流量よりも小さくなると、冷却通路内を冷却媒体がゆっくりと流通する。熱交換器において、たとえば、冷却通路よりも小さい断面積を有する複数の冷却配管が設けられているような場合、冷却媒体がゆっくりと流通すると、各冷却配管間の流量の偏りが抑制される。そのため、各冷却配管に略均一の流量の冷却媒体が流通することになるため、複数の冷却配管のうち一部の冷却配管に流量が偏ることによる熱応力の集中を抑制することができる。すなわち、高負荷運転後直ちに駆動システムが停止された後(デッドソーク後)、駆動システムが再始動されても、熱応力の分布が平均化されることにより、応力集中等による熱害を抑制することができる。したがって、システム再始動後の熱衝撃が緩和される。また、始動後の流通手段の作動量が通常制御状態と比較して低くなるため、騒音および振動を低減することができる。一方、駆動システムの走行準備状態における冷却通路内の冷却媒体の流量が、通常制御状態における流量よりも大きくなると、冷却通路内の冷却媒体が速く流通する。冷却通路内において流速の増加により冷却媒体が大きく攪拌されるような構造を有している場合には、デッドソーク後の始動時において、冷却媒体が大きく攪拌されて、冷却通路を流通する冷却媒体の温度分布の偏りが平均化される。そのため、たとえば、システム停止中に駆動源の周辺に停滞していた冷却媒体の温度が平均化される。そのため、冷却媒体の熱に起因した、上述したような熱交換器における応力集中等の熱害を抑制することができる。したがって、システム再始動後の熱衝撃が緩和される。また、流通手段は、システムの再始動とともに作動するため、システム停止中に電池の電力が消費されることもない。したがって、システム停止中の電池の電力消費を抑制しつつ、デッドソーク後の熱害を抑制する車両の冷却装置を提供することができる。
【0011】
第2の発明に係る車両の冷却装置においては、第1の発明の構成に加えて、制御手段は、駆動システムが走行準備状態である時に、通常制御状態における流量よりも小さい流量に制限するための手段を含む。
【0012】
第2の発明によると、制御手段は、駆動システムが走行準備状態である時に(たとえば、運転者がイグニッションスイッチあるいはパワースイッチをオンして駆動システムを始動した時)、通常制御時の流量よりも小さい流量に制限する。これにより、駆動システムの始動時における冷却通路内の冷却媒体の流量が、通常制御状態における流量よりも小さくなると、冷却通路内を冷却媒体がゆっくりと流通する。熱交換器において、たとえば、冷却通路よりも小さい断面積を有する複数の冷却配管が設けられているような場合、冷却媒体がゆっくりと流通すると、各冷却配管間の流量の偏りが抑制される。そのため、各冷却配管に略均一の流量の冷却媒体が流通することになるため、複数の冷却配管のうち一部の冷却配管に流量が偏ることによる熱応力の集中を抑制することができる。すなわち、高負荷運転後直ちに駆動システムが停止された後(デッドソーク後)、システムが再始動されても、熱応力の分布が平均化されることにより、応力集中等による熱害を抑制することができる。したがって、システム再始動後の熱衝撃が緩和される。また、始動後の流通手段の作動量が通常制御状態と比較して低くなるため、騒音および振動を低減することができる。また、流通手段は、システムの再始動とともに作動するため、システム停止中に電池の電力が消費されることもない。
【0013】
第3の発明に係る車両の冷却装置においては、第1または2の発明の構成に加えて、制御手段は、走行準備状態になった後において、駆動システムの構成部品および冷却媒体のうち、少なくともいずれかの温度に基づいて、通常制御状態における流量と異なる流量になるように流通手段を制御するための手段を含む。
【0014】
第3の発明によると、制御手段は、走行準備状態になった後(たとえば、運転者がイグニッションスイッチあるいはパワースイッチをオンして駆動システムを始動した後)において、駆動システムの構成部品(たとえば、モータジェネレータ、インバータおよびコンバータ)および冷却媒体のうち、少なくともいずれかの温度に基づいて、通常制御状態における流量と異なる流量(たとえば、通常制御状態における流量よりも小さい流量)になるように流通手段を制御する。駆動システムの構成部品の温度が、たとえば、予め定められた温度以下であると、通常制御状態における流量と異なる流量になるようにすると、デッドソーク後のシステム再始動時であったとしても、比較的温度の高い冷却媒体が流通することによる熱衝撃を緩和することができる。
【0015】
第4の発明に係る車両の冷却装置は、第3の発明の構成に加えて、冷却媒体の温度を検知するための検知手段をさらに含む。制御手段は、検知された温度に基づいて通常制御状態における流量と異なる流量になるように流通手段を制御するための手段を含む。
【0016】
第4の発明によると、制御手段は、検知された冷却媒体の温度に基づいて通常制御状態における流量と異なる流量(たとえば、通常制御状態における流量よりも小さい流量)になるように流通手段(たとえば、ポンプ)を制御する。冷却媒体の温度が、たとえば、予め定められた温度範囲内であると、通常制御状態における流量と異なる流量になるようにすると、デッドソーク後のシステム再始動時であったとしても、比較的温度の高い冷却媒体が流通することによる熱衝撃を緩和することができる。
【0017】
第5の発明に係る車両の冷却装置においては、第3の発明の構成に加えて、車両は、少なくともモータジェネレータを駆動源とする車両である。冷却装置は、モータジェネレータの温度を検知するための検知手段をさらに含む。制御手段は、検知されたモータジェネレータの温度に基づいて通常制御状態における流量と異なる流量になるように流通手段を制御するための手段を含む。
【0018】
第5の発明によると、制御手段は、検知されたモータジェネレータの温度に基づいて通常制御状態における流量と異なる流量(たとえば、通常制御状態における流量よりも小さい流量)になるように流通手段(たとえば、ポンプ)を制御する。モータジェネレータの温度が、たとえば、予め定められた温度以下であると、通常制御状態における流量と異なる流量になるようにすると、デッドソーク後のシステム再始動時であったとしても、比較的温度の高い冷却媒体が流通することによる熱衝撃を緩和することができる。
【0019】
第6の発明に係る車両の冷却装置においては、第3の発明の構成に加えて、車両は、少なくともモータジェネレータを駆動源とする車両である。駆動システムは、モータジェネレータに電力を供給する電気機器を含む。冷却装置は、電気機器の温度を検知するための検知手段をさらに含む。制御手段は、検知された電気機器の温度に基づいて通常制御状態における流量と異なる流量になるように流通手段を制御するための手段を含む。
【0020】
第6の発明によると、制御手段は、検知された電気機器(たとえば、インバータあるいはコンバータ)の温度に基づいて通常制御状態における流量と異なる流量(たとえば、通常制御状態における流量よりも小さい流量)になるように流通手段(たとえば、ポンプ)を制御する。インバータあるいはコンバータの温度が、たとえば、予め定められた温度以下であると、通常制御状態における流量と異なる流量となるようにすると、デッドソーク後のシステム再始動時であったとしても、比較的温度の高い冷却媒体が流通することによる熱衝撃を緩和することができる。
【0021】
第7の発明に係る車両の冷却装置においては、第1〜6のいずれかの発明の構成に加えて、熱交換器は、冷却通路から供給される冷却媒体を流通し、通路断面積が冷却通路よりも小さい複数の冷却配管と、各冷却配管間に設けられる放熱部材とを含む。
【0022】
第7の発明によると、熱交換器(たとえば、ラジエータ)は、冷却通路から供給される冷却媒体を流通し、通路断面積が冷却通路よりも小さい複数の冷却配管(たとえば、チューブ)と、各冷却配管間に設けられる放熱部材(冷却フィン)とを含む。システム始動時において、流量を制限することにより、複数の冷却配管に冷却媒体がゆっくり流通する。これにより、各冷却配管間における流量分布の差の発生を抑制することができる。そのため、各冷却配管の膨張により生じる熱応力の分布が略均一になる。したがって、複数の冷却配管の一部における応力集中を回避することができる。すなわち、熱交換器に比較的高い温度が冷却媒体が流通することに起因して発生する熱衝撃を緩和することができる。
【0023】
第8の発明に係る車両の冷却装置においては、第1〜7のいずれかの発明の構成に加えて、車両は、内燃機関とモータジェネレータとが搭載されるハイブリッド車両である。モータジェネレータの冷却装置は、内燃機関の冷却装置とは独立して設けられる。
【0024】
第8の発明によると、モータジェネレータの冷却装置は、内燃機関の冷却装置とは独立して設けられる。したがって、ハイブリッド車両において、モータジェネレータの冷却装置が大型化すると、搭載性は悪化する傾向にある。本発明においては、流量を制御することによりデッドソーク後のシステム再始動時の熱衝撃を緩和することができるため、冷却装置の構造を大型化することを要しない。そのため、搭載性の悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0026】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る冷却装置が搭載されるハイブリッド車両の制御ブロック図を説明する。なお、本発明は図1に示すハイブリッド車両に限定されない。本実施の形態において、駆動源となるモータジェネレータが内燃機関の出力軸と連結されていればよく、二次電池を搭載した他の態様を有するハイブリッド車両であってもよい。また、二次電池ではなくキャパシタ等の蓄電機構であってもよい。また、二次電池である場合には、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などであって、その種類は特に限定されるものではない。また、本発明に係る冷却装置が適用される車両は、ハイブリッド車両に特に限定されるものではなく、たとえば、電気自動車、燃料電池車両、さらには、エンジンを駆動源とする車両に適用してもよい。
【0027】
ハイブリッド車両は、駆動源としての、たとえばガソリンエンジン等の内燃機関(以下、単にエンジンという)120と、モータジェネレータ(MG)140を含む。なお、図1においては、説明の便宜上、モータジェネレータ140を、モータ140Aとジェネレータ140B(あるいはモータジェネレータ140B)と表現するが、ハイブリッド車両の走行状態に応じて、モータ140Aがジェネレータとして機能したり、ジェネレータ140Bがモータとして機能したりする。このモータジェネレータがジェネレータとして機能する場合に回生制動が行なわれる。モータジェネレータがジェネレータとして機能するときには、車両の運動エネルギが電気エネルギに変換されて、車両が減速される。トランスアクスル100は、内部にモータジェネレータ140を収納する。
【0028】
ハイブリッド車両は、この他に、エンジン120やモータジェネレータ140で発生した動力を駆動輪160に伝達したり、駆動輪160の駆動をエンジン120やモータジェネレータ140に伝達する減速機180と、エンジン120の発生する動力を駆動輪160とジェネレータ140Bとの2経路に分配する動力分割機構(たとえば、遊星歯車機構)200と、モータジェネレータ140を駆動するための電力を充電する走行用バッテリ220と、走行用バッテリ220の直流とモータ140Aおよびジェネレータ140Bの交流とを変換しながら電流制御を行なうインバータ240と、走行用バッテリ220の充放電状態を管理制御するバッテリ制御ユニット(以下、バッテリECU(Electronic Control Unit)という)260と、エンジン120の動作状態を制御するエンジンECU280と、ハイブリッド車両の状態に応じてモータジェネレータ140およびバッテリECU260、インバータ240等を制御するMG_ECU300と、バッテリECU260、エンジンECU280およびMG_ECU300等を相互に管理制御して、ハイブリッド車両が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体を制御するHV_ECU320等を含む。
【0029】
本実施の形態において、走行用バッテリ220とインバータ240との間には昇圧コンバータ242が設けられている。これは、走行用バッテリ220の定格電圧が、モータ140Aやモータジェネレータ140Bの定格電圧よりも低いので、走行用バッテリ220からモータ140Aやモータジェネレータ140Bに電力を供給するときには、昇圧コンバータ242で電力を昇圧する。
【0030】
なお、図1においては、各ECUを別構成としているが、2個以上のECUを統合したECUとして構成してもよい(たとえば、図1に、点線で示すように、MG_ECU300とHV_ECU320とを統合したECUとすることがその一例である)。
【0031】
動力分割機構200は、エンジン120の動力を、駆動輪160とモータジェネレータ140Bとの両方に振り分けるために、遊星歯車機構(プラネタリーギヤ)が使用される。モータジェネレータ140Bの回転数を制御することにより、動力分割機構200は無段変速機としても機能する。エンジン120の回転力はプラネタリーキャリア(C)に入力され、それがサンギヤ(S)によってモータジェネレータ140Bに、リングギヤ(R)によってモータおよび出力軸(駆動輪160側)に伝えられる。回転中のエンジン120を停止させる時には、エンジン120が回転しているので、この回転の運動エネルギをモータジェネレータ140Bで電気エネルギに変換して、エンジン120の回転数を低下させる。
【0032】
図1に示すようなハイブリッドシステムを搭載するハイブリッド車両においては、発進時や低速走行時等であってエンジン120の効率が悪い場合には、モータジェネレータ140のモータ140Aのみによりハイブリッド車両の走行を行ない、通常走行時には、たとえば動力分割機構200によりエンジン120の動力を2経路に分け、一方で駆動輪160の直接駆動を行ない、他方でジェネレータ140Bを駆動して発電を行なう。この時、発生する電力でモータ140Aを駆動して駆動輪160の駆動補助を行なう。また、高速走行時には、さらに走行用バッテリ220からの電力をモータ140Aに供給してモータ140Aの出力を増大させて駆動輪160に対して駆動力の追加を行なう。一方、減速時には、駆動輪160により従動するモータ140Aがジェネレータとして機能して回生発電を行ない、回収した電力を走行用バッテリ220に蓄える。なお、走行用バッテリ220の充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン120の出力を増加してジェネレータ140Bによる発電量を増やして走行用バッテリ220に対する充電量を増加する。もちろん、低速走行時でも必要に応じてエンジン120の駆動量を増加する制御を行なう。たとえば、上述のように走行用バッテリ220の充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合や、エンジン120の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
【0033】
また、ハイブリッド車両は、イグニッションスイッチ(以下、IGスイッチともいう)400をさらに含む。運転者がIGスイッチ400をオンすると、HV_ECU320は、IGスイッチ400のオン信号に応じて、走行用バッテリ220と昇圧コンバータ242との間に設けられるSMR(System Main Relay)(図示せず)をオンする。すなわち、IGスイッチ400のオンにより、モータジェネレータ140とインバータ240と昇圧コンバータ242と走行用バッテリ220とを含む、ハイブリッド車両の駆動システムが始動して、走行準備状態となる。なお、IGスイッチ400に代えてパワースイッチを用いるようにしてもよい。
【0034】
本実施の形態に係る車両の冷却装置は、図2に示すように、冷却通路108と、リザーブタンク102と、ラジエータ106と、電動ウォータポンプ104と、HV_ECU320とから構成される。
【0035】
冷却通路108は、インバータ240およびトランスアクスル100の駆動システムの構成部品に接するように設けられる。具体的には、冷却通路108の通路壁の外側が、インバータ240の筐体あるいはその内部の駆動素子およびトランスアクスル100の筐体あるいは筐体内部のモータジェネレータ140に当接するように設けられる。また、冷却通路108は、インバータ240およびトランスアクスル100を経由して循環するように形成される。冷却通路108の内部には、LLC(Long Life Coolant)等の不凍液が冷却液として充填される。なお、冷却通路108の内部に充填される冷却媒体は、液体に特に限定されるものではなく、たとえば、気体であってもよい。なお、本実施の形態において、冷却通路108内の冷却液は、図2の紙面時計回りに循環するものとする。
【0036】
リザーブタンク102は、冷却通路108の経路の途中であって、インバータ240と電動ウォータポンプ104との間の位置に設けられる。本実施の形態において、リザーブタンク102は、特にインバータ240と電動ウォータポンプ104との間に設けられることに限定されるものではない。リザーブタンク102は、冷却液が貯蔵されており、また、冷却通路108内の冷却液中の気体がリザーブタンク102から外部に放出される構造となっている。なお、リザーブタンク102に代えてフィラータンクを用いるようにしてもよい。
【0037】
電動ウォータポンプ104は、冷却通路108の経路の途中であって、リザーブタンク102とトランスアクスル100との間の位置に設けられる。電動ウォータポンプ104は、HV_ECU320からの制御信号に応じて、冷却通路108内の冷却液を流通させるポンプである。本実施の形態において電動ウォータポンプ104は、ECU320からの制御信号に応じて、Hi駆動モードおよびLo駆動モードのうちのいずれか一方の駆動モードで作動する。電動ウォータポンプ104のLo駆動モードでの作動時の流量は、Hi駆動モードでの作動時の流量よりも制限された流量である。各駆動モードにおける流量は、実験等により適合される。
【0038】
なお、電動ウォータポンプ104は、特に択一的な駆動モードを有することに限定されるものではなく、たとえば、ECU320からの制御信号に応じて、流量を調整するものであってもよい。
【0039】
ラジエータ106は、冷却通路108の経路の途中であって、インバータ240とトランスアクスル100との間の位置に設けられる。すなわち、ラジエータ106は、トランスアクスル100に流通した後の冷却液が流通する位置に設けられる。ラジエータ106は、熱交換器であって、断面積が冷却通路108よりも小さい複数の冷却配管(図示せず)と各冷却配管間に設けられる冷却フィン(図示せず)とから構成される。
【0040】
また、トランスアクスル100に収納されるモータ140Aには、モータ140Aの温度を検知するMG温度センサ(1)(図示せず)が設けられる。MG温度センサ(1)により検知されたMG温度(1)に対応する検知信号は、HV_ECU320に送信される。MG温度センサ(1)は、たとえば、モータ140Aのコイル部の温度を検知するが特にこれに限定されるものではない。
【0041】
さらに、トランスアクスル100に収納されるジェネレータ140Bには、ジェネレータ140Bの温度を検知するMG温度センサ(2)(図示せず)が設けられる。MG温度センサ(2)により検知されたMG温度(2)に対応する検知信号は、HV_ECU320に送信される。MG温度センサ(2)は、たとえば、ジェネレータ140Bのコイル部の温度を検知するが特にこれに限定されるものではない。
【0042】
また、インバータ240には、冷却通路108内の冷却液の温度(以下、HV水温ともいう)を検知するHV水温センサ(図示せず)が設けられる。HV水温センサにより検知されたHV水温に対応する検知信号は、HV_ECU320に送信される。なお、HV水温センサはインバータ240内の位置に限定されるものではない。
【0043】
さらに、インバータ240には、インバータ240の温度を検知するインバータ温度センサ(図示せず)が設けられる。インバータ温度センサにより検知されたインバータ温度に対応する検知信号は、HV_ECU320に送信される。インバータ温度センサは、たとえば、インバータ240内のリアクトルの温度を検知するが特にこれに限定されるものではない。なお、インバータ240に代えて昇圧コンバータ242の温度を検知するようにしてもよい。
【0044】
このような構成の冷却装置において、駆動システムが始動して走行準備状態となるとともに、HV_ECU320の制御信号に応じて電動ウォータポンプ104が作動すると、電動ウォータポンプ104により流通させられる冷却液は、電動ウォータポンプ104からトランスアクスル100に到達する。トランスアクスル100には、モータジェネレータ140の周囲を囲うように冷却通路(図示せず)が形成されている。トランスアクスル100に到達した冷却液は、トランスアクスル100の内部の冷却通路を流通して、モータジェネレータ140の熱を吸熱する。そして、トランスアクスル100を流通した後の冷却液は、ラジエータ106に流入する。ラジエータ106に流入する冷却液は、ラジエータ106を構成する複数の冷却配管のそれぞれに流通する。各冷却配管内を流通する冷却液の熱は、冷却フィンを介して外部に放熱される。ラジエータ106には、走行風が当たる車両の前方側の位置に設けられており、車両の走行時には、走行風により放熱量が増加して、冷却液の温度は低下させられる。ラジエータ106において温度が低下させられた冷却液は、インバータ240に到達する。インバータ240を流通することにより、インバータ240の作動により発生する熱が冷却通路108を流通する冷却液により吸熱される。そして、冷却液は、リザーブタンク102を経由して電動ウォータポンプ104に戻る。
【0045】
以上のような構成を有する冷却装置が搭載される車両において、図3に示すように、IGスイッチ400がオフされるなどして、時間T(0)にて、車両の駆動システムが停止すると、電動ウォータポンプ104の作動が停止する。そのため、車両が高負荷あるいは高速運転した後直ちに駆動システムが停止された後(デッドソーク後)においては、モータジェネレータ140の周囲の冷却液は停滞するため、冷却液の温度はモータジェネレータの熱により上昇する。特に、デッドソーク後においては、モータジェネレータ140は高温であるため、冷却液の温度上昇の度合も大きい。一方、ラジエータ106において停滞する冷却液は、冷却フィンを介して外部に放熱されるため、温度が低下していく。
【0046】
時間T(1)以降、駆動システムの停止状態が継続する場合には、図3の細線に示すように、モータジェネレータ140の周囲の冷却通路およびラジエータ106に停滞する冷却液は、モータジェネレータ140の自然冷却により徐々に温度が低下していく。
【0047】
一方、時間T(1)にて、運転者がIGスイッチ400をオンするなどして、車両の駆動システムが再始動されると、電動ウォータポンプ104が作動するため、停滞していた冷却液が流通を開始する。そのため、図3の太線に示すように、トランスアクスル100の直前に停滞していた比較的温度の低い冷却液がトランスアクスル100に流入することにより、モータジェネレータ140の熱が冷却液に吸熱される。これにより、モータジェネレータ140の周囲の冷却液の温度は急激に低下する。
【0048】
モータジェネレータ140の周囲に停滞していた比較的温度の高い冷却液が流通を開始して、ラジエータ106に流入すると、ラジエータ106内の冷却液の温度が急激に増加する。そして、電動ウォータポンプ104の作動により冷却液が冷却通路108を循環すると、モータジェネレータ140の周囲の冷却液の温度変化およびラジエータ106における冷却液の温度変化は、収束していく。
【0049】
ここで、図4に示すように、ラジエータ106に流入する冷却液は、ラジエータ106内の複数の冷却配管のそれぞれを流入する。このときの流水分布は、図4の紙面上下方向の中央部の冷却配管において最も流量が大きくなり、上方向あるいは下方向の冷却配管ほど流量が小さい傾向にある。これは、ラジエータ106の入口および出口が、図4の紙面上下方向の中央部において冷却通路108に接続されるためである。
【0050】
図5に図4の破線に囲まれた部分の拡大図を示す。図5に示すように、ラジエータ106は、冷却配管112,114,116と、冷却フィン118,122と、コアプレート124とから構成される。
【0051】
冷却配管112,114,116は、互いに略平行になるように図5の紙面上下方向に沿って設けられる。冷却フィン118,122は、平板が波状に屈曲されて形成される。冷却フィン118は、冷却配管112,114間に設けられる。冷却フィン122は、冷却配管114,116間に設けられる。そして、冷却配管122,144,116および冷却フィン118,122は、図5の紙面左右方向から挟みこむように2つのコアプレート124が設けられる。2つコアプレート124の間の距離は、ラジエータ106の構成部材により規制される。
【0052】
駆動システムの再始動時において、冷却配管112,114,116にトランスアクスル100に停滞していた比較的温度の高い冷却液が流入すると、冷却配管112,114,116は、冷却液の熱により膨張する。2つのコアプレート124間の距離は規制されているため、冷却配管112,114,116が膨張すると、冷却配管112,114,116のコアプレート124との接続部に応力が集中する場合がある。
【0053】
さらに、流水分布が各冷却配管によって異なると、冷却配管からコアプレートに付与する熱応力は、各冷却配管によって異なることとなる。したがって、デッドソーク後に、特に中央部の冷却配管に比較的高い温度の冷却液が集中的に流通すると、中央部の冷却配管に応力集中の度合が大きくなる。そのため、熱害に対して不利な状態となる傾向にある。
【0054】
そこで、本発明は、車両の駆動システムが走行準備状態になると、HV_ECU320が走行準備状態以外の通常制御状態における流量と異なる流量になるように流通手段を制御する点に特徴を有する。
【0055】
より具体的には、HV_ECU320は、IGスイッチ400がオンされ、駆動システムが始動してから予め定められた時間が経過するまで電動ウォータポンプ104をLo駆動モードで制御し、予め定められた時間が経過した後は、Hi駆動モードで制御する。また、HV_ECU320は、IGスイッチ400がオンされた後、駆動システムの構成部品および冷却液のうち、少なくともいずれかの温度に基づいて、電動ウォータポンプ104をLo駆動モードで制御する。
【0056】
以下、図6を参照して、本実施の形態に係る冷却装置を構成するHV_ECU320で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0057】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、HV_ECU320は、駆動システムの始動時であるか否かを判定する。具体的には、HV_ECU320は、運転者がIGスイッチ400をオンしてから予め定められた時間以内であると、駆動システムの始動時であると判定する。「予め定められた時間」は、少なくともトランクアクスル100内の冷却液がラジエータ106に到達する時間であれば、特に限定される時間ではない。駆動システムの始動時であると(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS110に移される。
【0058】
S102にて、HV_ECU320は、HV水温センサにより検知されるHV水温についてのHi駆動条件が成立するか否かを判断する。HV_ECU320は、たとえば、図7(A)に示すように、HV水温がT(0)からT(1)までの予め定められた温度範囲内であると、HV水温についてのHi駆動条件が不成立であると判断し、T(0)からT(1)までの範囲外になると、Hi駆動条件が成立すると判断する。HV水温についてのHi駆動条件が成立すると(S102にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでないと(S102にてNO)、処理はS104に移される。
【0059】
S104にて、HV_ECU320は、モータ140A温度についてHi駆動条件が成立するか否かを判断する。HV_ECU320は、たとえば、図7(B)に示すように、モータ140Aに設けられたMG温度センサ(1)から送信されるMG温度(1)が予め定められた温度T(2)以上であると、モータ140A温度についてHi駆動条件が成立すると判断する。モータ140A温度についてのHi駆動条件が成立すると(S104にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでないと(S104にてNO)、処理はS106に移される。
【0060】
S106にて、HV_ECU320は、ジェネレータ140B温度についてのHi駆動条件条件が成立するか否かを判断する。HV_ECU320は、たとえば、図7(C)に示すように、ジェネレータ140Bに設けられたMG温度センサ(2)から送信されるMG温度(2)が予め定められた温度T(3)以上であると、ジェネレータ140B温度についてのHi駆動条件が成立すると判断する。ジェネレータ140B温度についてのHi駆動条件が成立すると(S106にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでないと(S106にてNO)、処理はS108に移される。なお、予め定められた温度(2)および(3)は、同じ温度であってもよいし、異なる温度であってもよいものとする。
【0061】
S108にて、HV_ECU320は、インバータ温度についてのHi駆動条件が成立するか否かを判断する。HV_ECU320は、たとえば、図7(D)に示すように、インバータ240に設けられたインバータ温度センサから送信されるインバータ温度が予め定められた温度T(4)以上であると、インバータ温度についてのHi駆動条件が成立すると判断する。インバータ温度についてのHi駆動条件が成立すると(S108にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでないと(S108にてNO)、処理はS112に移される。
【0062】
S110にて、HV_ECU320は、Hi駆動モードで電動ウォータポンプ104を通常制御する。S112にて、HV_ECU320は、Lo駆動モードで電動ウォータポンプ104をスロ−スタート制御する。
【0063】
なお、予め定められた温度T(0)〜T(4)は、HV水温とMG温度(1)とMG温度(2)とインバータ温度とにおいてそれぞれ速やかに冷却されることが必要となる温度であって、実験等により適合されればよい。
【0064】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る冷却装置の動作について説明する。
【0065】
たとえば、高負荷あるいは高速運転した後直ちに駆動システムが停止されると、電動ウォータポンプ104の作動が停止するため、モータ140Aおよびジェネレータ140Bの周囲に流通するトランスアクスル100内の冷却通路の冷却液の温度が上昇する。
【0066】
また、ラジエータ106の温度は冷却フィンにより放熱されるため、温度は低下していく。そして、運転者がIGスイッチ400をオンするなどして、駆動システムが再始動されると(S100にてYES)、予め定められた時間が経過するまでに、HV水温とMG温度(1)とMG温度(2)とインバータ温度についてのHi駆動条件がいずれも不成立であると(S102にてNO、かつS104にてNO、かつS106にてNO、かつS108にてNO)、電動ウォータポンプ104にてLo駆動モードでのスロースタート制御が実行される(S112)。
【0067】
そのため、Hi駆動モードにおける通常制御状態における流量よりも制限された流量の冷却液が冷却通路108を流通する。そのため、冷却液は、冷却通路108内を通常制御状態よりもゆっくりと流通する。そのため、ラジエータ106の複数の冷却配管間の流水分布が略均一となる。そのため、トランスアクスル100に停滞していた比較的温度の高い冷却液は、ラジエータ106の各冷却配管に略均一に流通することとなる。すなわち、比較的温度の高い冷却液の熱は、複数の冷却配管のそれぞれに略均一に吸熱されることとなる。そのため、冷却配管の一部に集中して冷却液が流通する場合と比較して、冷却配管からコアプレート124に付与される熱応力の集中の度合が緩和される。すなわち、熱衝撃が緩和される。
【0068】
HV水温とMG温度(1)とMG温度(2)とインバータ温度とのうち、いずれかの温度についてのHi駆動条件が成立すると(S102にてYES、またはS104にてYES、またはS106にてYES、またはS108にてYES)、あるいは、駆動システムが始動してから予め定められた時間が経過すると(S100にてNO)、電動ウォータポンプ104にてHi駆動モードでの通常制御が実行される(S110)。そのため、インバータ240およびモータジェネレータ140の温度は予め定められた温度範囲内になるように制御される。
【0069】
以上のようにして、本実施の形態に係る冷却装置によると、駆動システムが走行準備状態である時における冷却通路内の冷却液の流量が、通常制御状態における流量よりも小さくなると、冷却通路内を冷却液がゆっくりと流通する。ラジエータにおいて、冷却液がゆっくりと流通すると、各冷却配管間の流量の偏りが抑制される。そのため、各冷却配管に略均一の流量の冷却液が流通することになるため、複数の冷却配管のうち一部の冷却配管に流量が偏ることによる熱応力の集中を抑制することができる。すなわち、デッドソーク後、システムが再始動されても、熱応力の分布が平均化されることにより、応力集中等による熱害を抑制することができる。したがって、システム再始動後の熱衝撃が緩和される。また、始動後の電動ウォータポンプの作動量が通常制御状態と比較して低くなるため、騒音および振動を低減することができる。また、電動ウォータポンプは、システムの再始動とともに作動するため、システム停止中に電池の電力が消費されることもない。したがって、システム停止中の電池の電力消費を抑制しつつ、デッドソーク後の熱害を抑制する車両の冷却装置を提供することができる。
【0070】
なお、本実施の形態においては、駆動システムが走行準備状態になると、走行準備状態以外の通常制御状態における流量よりも制限するようにしたが、流量を増加するようにしてもよい。たとえば、トランスアクスルとラジエータとの間において、流速の増加により冷却液が攪拌されるような構造を有する場合においては、流量を増加させることにより、冷却液の攪拌が促進させることができる。そのため、トランスアクスルに停滞していた比較的温度の高い冷却液が攪拌されることにより、冷却通路内の冷却液の温度分布の偏りが平均化される。そのため、冷却液の熱に起因したラジエータにおける応力集中の度合が低減されることにより、熱害を抑制することができる。したがって、駆動システムの再始動後の熱衝撃を緩和することができる。
【0071】
さらに、エンジンとモータジェネレータとが搭載されるハイブリッド車両において、モータジェネレータの冷却装置はエンジンの冷却装置とは独立して設けられる。したがって、ハイブリッド車両において、モータジェネレータの冷却装置が大型化すると、搭載性は悪化する傾向にある。本発明においては、流量を制御することによりデッドソーク後のシステム再始動時の熱衝撃を緩和することができるため、冷却装置の構造を大型化することを要しない。そのため、搭載性の悪化を抑制することができる。
【0072】
また、本実施の形態においては、HV水温とMG温度(1)とMG温度(2)とインバータ温度とについてHi駆動条件に基づいて電動ウォータポンプの流量を制御したが、HV水温、MG温度(1)、MG温度(2)およびインバータ温度のうちいずれか一つについてのHi駆動条件に基づいて電動ウォータポンプの流量を制御するようにしてもよい。あるいは、駆動システムが始動時であると判断されると、予め定められた時間が経過するまでLo駆動モードで電動ウォータポンプを制御するようにしてもよい。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】ハイブリッド車両の制御ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る冷却装置の構成を示す図である。
【図3】デッドソーク後のモータジェネレータおよびラジエータを流通する冷却液の温度変化を示すタイミングチャートである。
【図4】ラジエータにおける流水分布を示す図である。
【図5】図4の破線枠の拡大図である。
【図6】本実施の形態に係る冷却装置を構成するHV_ECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】HV水温、モータジェネレータ温度およびインバータ温度についてのHi駆動条件を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
100 トランスアクスル、102 リザーブタンク、104 電動ウォータポンプ、106 ラジエータ、108 冷却通路、112,114,116 冷却配管、118,122 冷却フィン、120 エンジン、124 コアプレート、140 モータジェネレータ、140A モータ、140B ジェネレータ、160 駆動輪、180 減速機、200 動力分割機構、220 走行用バッテリ、240 インバータ、242 昇圧コンバータ、260 バッテリECU、280 エンジンECU、300 MG_ECU、320 HV_ECU、400 イグニッションスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の、少なくとも駆動源を有する駆動システムを冷却する冷却装置であって、
前記駆動システムの構成部品に接するように設けられ、冷却媒体が循環するように形成される冷却通路と、
前記冷却通路の途中に設けられ、冷却媒体の熱を放熱する熱交換器と、
前記冷却媒体を流通させるための流通手段と、
前記流通手段を制御するための制御手段とを含み、
前記制御手段は、前記駆動システムが走行準備状態になると、前記走行準備状態以外の通常制御状態における流量と異なる流量になるように、前記流通手段を制御するための手段を含む、車両の冷却装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記駆動システムが走行準備状態である時に、前記通常制御状態における流量よりも小さい流量に制限するための手段を含む、請求項1に記載の車両の冷却装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記走行準備状態になった後において、前記駆動システムの構成部品および前記冷却媒体のうち、少なくともいずれかの温度に基づいて、前記通常制御状態における流量と異なる流量になるように前記流通手段を制御するための手段を含む、請求項1または2に記載の車両の冷却装置。
【請求項4】
前記冷却装置は、前記冷却媒体の温度を検知するための検知手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記検知された温度に基づいて前記通常制御状態における流量と異なる流量になるように前記流通手段を制御するための手段を含む、請求項3に記載の車両の冷却装置。
【請求項5】
前記車両は、少なくともモータジェネレータを駆動源とする車両であって、
前記冷却装置は、前記モータジェネレータの温度を検知するための検知手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記検知されたモータジェネレータの温度に基づいて前記通常制御状態における流量と異なる流量になるように前記流通手段を制御するための手段を含む、請求項3に記載の車両の冷却装置。
【請求項6】
前記車両は、少なくともモータジェネレータを駆動源とする車両であって、前記駆動システムは、前記モータジェネレータに電力を供給する電気機器を含み、
前記冷却装置は、前記電気機器の温度を検知するための検知手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記検知された電気機器の温度に基づいて前記通常制御状態における流量と異なる流量になるように前記流通手段を制御するための手段を含む、請求項3に記載の車両の冷却装置。
【請求項7】
前記熱交換器は、
前記冷却通路から供給される冷却媒体を流通し、通路断面積が前記冷却通路よりも小さい複数の冷却配管と、
各前記冷却配管間に設けられる放熱部材とを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の車両の冷却装置。
【請求項8】
前記車両は、内燃機関とモータジェネレータとが搭載されるハイブリッド車両であって、
前記モータジェネレータの冷却装置は、前記内燃機関の冷却装置とは独立して設けられる、請求項1〜7のいずれかに記載の車両の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−216799(P2007−216799A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38405(P2006−38405)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】