説明

車両の制動制御装置

【課題】車両の制動制御装置において、車両を起動し最初の走行開始以降であって最初のブレーキ操作時より前に回転部材の付着物を確実に除去することにより、付着物に起因した制動力の低下や振動及び鳴きの発生を防止する。
【解決手段】車両の制動制御装置は、判定手段(ステップ102)が、自動制動手段が電気的に起動状態になった後に、回転部材の付着物の有無を判定し、第1制動制御手段(ステップ212,216〜220)が、判定手段(ステップ102)が回転部材に付着物が有ると判定した場合、自動制動手段が電気的に起動された後の車両Mの最初の走行開始から所定時間T1経過の間に、自動制動手段に対して制御指令を出力し、所定量の制動力を発生させる。これにより、摩擦部材が回転部材に押し付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の制動制御装置としては、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1に示されている車両の制動制御装置は、特許文献1の図2に示されているとおり、ディスクロータが回転していること(車両が移動していること)を確認した上で、液圧制御回路を制御することにより、各車輪に設けられたシリンダに油圧を与え、運転者のブレーキペダルの操作に拘わり無く、ブレーキキャリパの摩擦材をディスクロータに押し付けると同時に、摩擦ブレーキのディスクロータに対する押し付け力を検出すると共にインホイールモータの電流値から車輪に対するトルクを求める(ステップ12)。ステップ12で検出された押し付け力とトルクとに基づきディスクロータの錆の発生を判定する(ステップ13)。ステップ13においてディスクロータに錆が発生していると判定された場合は、運転者がブレーキペダルを操作した際、回生ブレーキによる制動力の付与を停止し、優先的に摩擦ブレーキにより制動を行う(ステップ14)。これにより、ディスクロータに発生した錆は、シリンダにより摩擦材が押し付けられることにより除去される。
【特許文献1】特開2006−103630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1に記載の車両の制動制御装置においては、走行中の車両において運転者によるブレーキペダルの操作(ブレーキ操作)に伴うブレーキロータと摩擦材との摩擦によりブレーキロータの錆除去処理が実施されている。したがって、長期放置してブレーキロータに錆が発生している可能性の高い車両を運転する場合、イグニッションスイッチがオンされた後の最初の走行開始以降であって最初のブレーキ操作開始時においては少なくとも錆が除去されていないので、錆に起因した制動力が低下し、振動及び鳴きが発生するおそれがある。
【0004】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、車両の制動制御装置において、イグニッションスイッチがオンされた後の最初の走行開始以降であって最初のブレーキ操作時より前に回転部材の付着物を確実に除去することにより、付着物に起因した制動力の低下や振動及び鳴きの発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明の構成上の特徴は、車両の運転者によるブレーキペダルの踏込状態に関わらず、車輪と一体回転する回転部材に対し摩擦部材を押し付けて制動力を発生させる自動制動手段と、自動制動手段が電気的に起動状態になった後に、回転部材の付着物の有無を判定する判定手段と、判定手段が回転部材に付着物が有ると判定した場合、自動制動手段が電気的に起動された後の車両の最初の走行開始から所定時間経過の間に、自動制動手段に対して制御指令を出力し、所定量の制動力を発生させる第1制動制御手段と、を備えたことである。
【0006】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、第1制動制御手段で発生する所定量の制動力の影響を打ち消す駆動力を上乗せした駆動力を車輪に付与する駆動力付与手段をさらに備えたことである。
【0007】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または請求項2において、第1制動制御手段は、判定手段が回転部材に付着物が有ると判定した場合、該判定を実施した時点から車両の最初の走行開始時点までの間に、ブレーキペダルの踏込状態を考慮して少なくとも所定量以上の制動力が発生されるように自動制動手段を制御することである。
【0008】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、車両の運転者によるブレーキペダルの踏込状態に関わらず、車輪と一体回転する回転部材に対し摩擦部材を押し付けて制動力を発生させる自動制動手段と、自動制動手段が電気的に起動状態になった後に、回転部材の付着物の有無を判定する判定手段と、判定手段が回転部材に付着物が有ると判定した場合、その判定時点以降の車両の加速中において、自動制動手段に対して制御指令を出力し、所定量の制動力を発生させる第2制動制御手段と、を備えたことである。
【0009】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項4において、第2制動制御手段は、車両が加速中でありかつ所定速度以上である場合、自動制動手段を制御して所定量の制動力を所定時間だけ発生することである。
【0010】
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項5において、所定時間は、車両の車体速度が大きいほど短くなるように設定されていることである。
【0011】
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項4乃至請求項6の何れか一項において、第2制動制御手段は、車両が旋回中である場合には、制動力の発生を中止することである。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、判定手段が、自動制動手段が電気的に起動状態になった後に、回転部材の付着物の有無を判定し、第1制動制御手段が、判定手段が回転部材に付着物が有ると判定した場合、自動制動手段が電気的に起動された後の車両の最初の走行開始から所定時間経過の間に、自動制動手段に対して制御指令を出力し、所定量の制動力を発生させる。これにより、自動制動手段が電気的に起動状態になった後の最初の走行開始以降であって最初のブレーキ操作時より前に、摩擦部材を回転部材に押し付けて回転部材の付着物を確実に除去することができる。したがって、その最初のブレーキ操作時においては、付着物が確実に除去されているので、付着物に起因した制動力の低下や振動及び鳴きの発生を防止することができる。
【0013】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、請求項1に係る発明において、駆動力付与手段が、第1制動制御手段で発生する所定量の制動力の影響を打ち消す駆動力を上乗せした駆動力を車輪に付与するので、アクセルペダルの踏込状態に応じた加速感が得られないという違和感を運転者に与えることなく、回転部材の付着物を除去することができる。
【0014】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、第1制動制御手段は、判定手段が回転部材に付着物が有ると判定した場合、該判定を実施した時点から車両の最初の走行開始時点までの間に、ブレーキペダルの踏込状態を考慮して少なくとも所定量以上の制動力が発生されるように自動制動手段を制御する。これにより、車両の最初の走行開始前から摩擦部材を回転部材に押し付けることができるので、最初の走行時において回転部材の付着物を確実に除去することができる。
【0015】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、判定手段が、自動制動手段が電気的に起動状態になった後に、回転部材の付着物の有無を判定し、第2制動制御手段が、判定手段が回転部材に付着物が有ると判定した場合、その判定時点以降の車両の加速中において、自動制動手段に対して制御指令を出力し、所定量の制動力を発生させる。これにより、自動制動手段が電気的に起動状態になった後の最初の加速以降であって最初のブレーキ操作時より前に、運転者に違和感を与えないで回転部材の付着物を確実に除去することができる。したがって、その最初のブレーキ操作時においては、付着物が確実に除去されているので、付着物に起因した制動力の低下や振動及び鳴きの発生を防止することができる。また、請求項1に係る発明による、車両の最初の走行開始時点から所定時間経過する時点までの間における除去処理によって付着物が完全に除去できない場合、残った付着物を完全に除去することができる。
【0016】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、請求項4において、第2制動制御手段は、車両が加速中でありかつ所定速度以上である場合、自動制動手段を制御して所定量の制動力を所定時間だけ発生するので、自動制動手段による制動力を運転者が感じることなく、回転部材の付着物を除去することができる。
【0017】
上記のように構成した請求項6に係る発明においては、請求項5に係る発明において、所定時間は、車両の車体速度が大きいほど短くなるように設定されているので、車体速度に応じて適切な時間だけ回転部材の付着物の除去を実施することができる。
【0018】
上記のように構成した請求項7に係る発明においては、請求項4乃至請求項6の何れか一項において、第2制動制御手段は、車両が旋回中である場合には、制動力の発生を中止するので、車両の挙動を安定に維持しながら回転部材の付着物の除去を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る車両の制動制御装置を適用した車両の一実施形態を図面を参照して説明する。図1はその車両の構成を示す概要図である。この車両Mは、前輪駆動車であり、車体前部に搭載した駆動源であるエンジン11の駆動力が前輪に伝達される形式のものである。なお車両Mは前輪駆動車でなく、他の駆動方式の車両例えば後輪駆動車、四輪駆動車でもよいし、電動モータを駆動源とする車両でもよい。
【0020】
車両Mは車輪回転部材用付着物除去装置を備えており、この車輪回転部材用付着物除去装置は、エンジン11、変速機12、ディファレンシャル13および左右駆動軸14a,14bを備えている。エンジン11の駆動力は、変速機12で変速されディファレンシャル13および左右駆動軸14a,14bを経て駆動輪である左右前輪Wfl,Wfrにそれぞれ伝達されるようになっている。エンジン11は、エンジン11の燃焼室内に空気を流入する吸気管11aを備えており、吸気管11a内には、吸気管11aの開閉量を調整して同吸気管11aを通過する空気量を調整するスロットルバルブ11bが設けられている。
【0021】
スロットルバルブ11bは、アクセルペダル16とスロットルバルブ11bがワイヤによって繋がれたワイヤ式でなく、電子制御式である。すなわち、スロットルバルブ11bは、エンジン制御ECU20からの指令によるスロットル駆動モータ11cの駆動によって開閉され、スロットルバルブ11bの開閉量はスロットル開度センサ11dによって検出されその検出信号がエンジン制御ECU20に送信されており、エンジン制御ECU20からの指令値となるようにフィードバック制御されている。エンジン制御ECU20は、基本的にはアクセル開度センサ16aが検出するアクセルペダル16の踏込み量を受信してその踏込み量に応じたスロットルバルブ11bの開閉量に相当する指令値をスロットル駆動モータ11cに送信する。なお、スロットルバルブ11bの開閉量すなわち吸入空気量に合わせてエンジン11への燃料も自動的に供給されるようになっている。これによれば、アクセルペダル16の踏込み量が増大すると、スロットルバルブ11bの開度が増大してエンジン11の出力が増大しこれにより車両Mの駆動力が増大して加速し、また踏込み量が減少すると、スロットルバルブ11bの開度が減少してエンジン11の出力が減少しこれにより車両Mの駆動力が減少して加速度は減少する。
【0022】
また、車輪回転部材用付着物除去装置は、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに液圧制動力を直接付与して車両を制動させる液圧ブレーキ装置Aを備えている。この液圧ブレーキ装置Aは、エンジン11の吸気負圧をダイヤフラムに作用させてブレーキペダル31の踏み込み操作により生じるブレーキ操作力を助勢して倍力(増大)する倍力装置である負圧式ブースタ32と、負圧式ブースタ32により倍力されたブレーキ操作力(すなわちブレーキペダル31の操作状態)に応じた基礎液圧である液圧(油圧)のブレーキ液(油)を生成して各押圧手段であるホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに供給するマスタシリンダ33と、ブレーキ液を貯蔵してマスタシリンダ33にそのブレーキ液を補給するリザーバタンク34と、マスタシリンダ33と各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrとの間に設けられてブレーキペダル31の踏込状態に関係なく制御液圧を形成して制御対象輪に付与可能であるブレーキアクチュエータ35と、ブレーキアクチュエータ35を制御するブレーキ制御ECU36(車両の制動制御装置である)を備えている。
【0023】
各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrは、各キャリパCLfl,CLfr,CLrl,CLrrに設けられており、液密に摺動するピストン(図示省略)を収容している。各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに基礎液圧または制御液圧が供給されると、各ピストンが摩擦部材である一対のブレーキパッドBPfl,BPfr,BPrl,BPrrを押圧して各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrと一体回転する回転部材であるディスクロータDRfl,DRfr,DRrl,DRrrを両側から挟んでその回転を規制するようになっている。ブレーキパッドBPfl,BPfr,BPrl,BPrrとディスクロータDRfl,DRfr,DRrl,DRrrとから摩擦ブレーキが構成されている。
【0024】
なお、本実施形態においては、ディスク式ブレーキを採用するようにしたが、ドラム式ブレーキを採用するようにしてもよい。この場合、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに基礎液圧または制御液圧が供給されると、各ピストンが一対のブレーキシューを押圧(拡張)して各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrと一体回転するブレーキドラムの内周面に当接してその回転を規制するようになっている。
【0025】
ブレーキアクチュエータ35は、一般的によく知られているものであり、液圧制御弁、ABS制御弁を構成する増圧制御弁および減圧制御弁、調圧リザーバ、ポンプ、そのポンプを駆動させるモータなどを一つのケースにパッケージすることにより構成されている。ブレーキアクチュエータ35は、マスタシリンダ33からの基礎液圧をホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに直接付与することができる。また、ブレーキアクチュエータ35は、ポンプの駆動と液圧制御弁の制御によって形成された制御液圧を各車輪Wfl,Wfr,Wrl,WrrのホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに発生することができる。すなわち、ブレーキアクチュエータ35は、運転者のブレーキペダル31の操作状態(踏込状態)に応じた液圧をホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに発生することもできるし、運転者のブレーキペダル31の操作状態(踏込状態)に関係なくホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrへの液圧を制御することが可能でもある。
【0026】
また、ブレーキアクチュエータ35内には、マスタシリンダ33内のブレーキ液圧であるマスタシリンダ圧を検出する圧力センサPが設けられており、この検出信号はブレーキ制御ECU36に送信されるようになっている。
【0027】
ブレーキ制御ECU36は、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの車輪速度をそれぞれ検出する各車輪速センサSfl,Sfr,Srl,Srr、圧力センサPからの各検出信号に基づいて、各制御弁の状態を切り換え制御または通電電流制御するとともにモータを駆動しポンプを制御することによりホイールシリンダWCfl〜WCrrに発生する制御液圧すなわち各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに発生する制御液圧制動力を制御する。
【0028】
ブレーキ制御ECU36は、エンジン制御ECU20と互いに通信可能に接続されている。ブレーキ制御ECU36は、エンジン制御ECU20に対して駆動力指令信号を出力するようになっている。エンジン制御ECU20は駆動力指令信号を受け取り、駆動力指令信号に応じた駆動源の駆動力となるようにスロットル駆動モータ11cを制御する。
【0029】
ブレーキ制御ECU36は、舵角センサ37a、ヨーレートセンサ38、横加速度センサ39、前後加速度センサ41からの各検出信号や、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの車輪速度をそれぞれ検出する各車輪速センサSfl,Sfr,Srl,Srrからの各検出信号を受け取り、各種物理量を算出するものである。
【0030】
ブレーキ制御ECU36は、舵角センサ37aが出力する運転者によるステアリング37の操作量に応じた操舵角ξを算出したり、ヨーレートセンサ38が出力する車両に発生している実際のヨーレートに応じた検出信号に基づいて実ヨーレート(実際のヨーレート)を算出したり、横加速度センサ39が出力する車両に発生している実際の横加速度に応じた検出信号に基づいて実際の横加速度を算出したり、前後加速度センサ41が出力する車両に発生している実際の前後加速度に応じた検出信号に基づいて実際の前後加速度を算出したりする。また、車輪速センサSfl,Sfr,Srl,Srrからの検出信号に基づいて、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの車輪速度や車速(車体速度)も算出するようになっている。
【0031】
また、ブレーキ制御ECU36およびエンジン制御ECU20は、イグニッションスイッチ42に接続されている。イグニッションスイッチ42がオンされると、ブレーキ制御ECU36およびエンジン制御ECU20はバッテリ(図示省略)から電源電圧が供給されるようになっている。すなわち、イグニッションスイッチ42がオンされると、ブレーキ制御ECU36およびエンジン制御ECU20は電気的に起動状態になり、自身のシステム起動(初期処理化)を開始する。
【0032】
また、ブレーキ制御ECU36は、ブレーキペダル31のオン・オフ状態を検出するブレーキスイッチ31aに接続されている。
【0033】
そして、ブレーキ制御ECU36は、マイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも図示省略)を備えている。CPUは、図2〜図4のフローチャートに対応したプログラムを実行して、ディスクロータの付着物除去を制御する。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMは前記プログラムを記憶するものである。
【0034】
次に、上記のように構成した車輪回転部材用付着物除去装置の作動を図2〜図4のフローチャートに沿って説明する。ブレーキ制御ECU36は、車両Mのイグニッションスイッチ42がオン状態にされると、所定の制御サイクルで上記フローチャートに対応したプログラムを繰り返し実行する。ブレーキ制御ECU36は、図2のステップ100にてプログラムの実行を開始する毎に、ディスクロータDR**に付着物が有るか無いかを判定する(ステップ102)。付着物は錆、汚れ、水などの液体の膜などである。本実施形態では、付着物が錆である場合について説明する。したがって、ブレーキ制御ECU36は、ステップ102において、ディスクロータDR**のブレーキパッドBP**が当接する部位に錆が発生しているか否かを判定することにより、付着物が有るか無いかを判定する。なお、本明細書および特許請求の範囲において、**は各車輪の位置であるfl(左前)、fr(右前)、rl(左後)、rr(右後)を表す。
【0035】
具体的には、車両Mの停止直前の水分付着状態や停止中の天候・湿度などと車両Mの停止から走行開始までの時間(駐車時間)とから錆が発生しているか否かを判定する。例えば雨天中を走行した後に駐車し、一週間後その車両を運転する場合、ディスクロータDR**が錆びている可能性は非常に高いので、錆が発生していると判定する。また、錆を検出する錆検出センサによって錆を直接検出するようにしてもよい。錆検出センサによって錆を検出すればディスクロータDR**に錆が発生していると判定し、錆を検出しなければディスクロータDR**に錆が発生していないと判定するようにすればよい。
【0036】
なお、ディスクロータDR**に付着物が有るか無いかの判定は、ブレーキ制御ECU36が電気的に起動状態になった時点(イグニッションスイッチ42のオン時点)に実施されているが、ブレーキ制御ECU36の電気的に起動状態になった時点から車両Mの最初の走行開始直前までの間に実施するようにしてもよい。例えば、シフトレバーの操作時点、クラッチレバーの操作時点でもよい。
【0037】
ブレーキ制御ECU36は、ディスクロータDR**に錆が発生していないと判定すると、ステップ102で「NO」と判定し、プログラムをステップ108に進めて本フローチャートを終了する(最初に戻る)。ブレーキ制御ECU36は、ディスクロータDR**に錆が発生していると判定すると、ステップ102で「YES」と判定し、ステップ104,106で錆除去処理をそれぞれ実行する。
【0038】
ブレーキ制御ECU36は、ステップ104において、図3に示す第1錆除去制御サブルーチンを実行する。この第1錆除去制御サブルーチンでは、ブレーキ制御ECU36が電気的に起動状態になった後の最初の走行時にディスクロータDR**の錆を除去する。具体的には、ブレーキ制御ECU36は、ステップ200にてサブルーチンの実行を開始する度に、イグニッションスイッチ42をオンした時点から第1錆除去制御を経験したことがないか否かを判定する(ステップ202)。すなわち、ブレーキ制御ECU36は、第1錆除去制御経験が「無し」と設定されていれば第1錆除去制御を経験したことがないと判定し、第1錆除去制御経験が「有り」と設定されていれば第1錆除去制御を経験したことがあると判定する。
【0039】
ブレーキ制御ECU36は、第1錆除去制御を経験したことがある場合、プログラムをステップ224に進めて本サブルーチンを終了する。ブレーキ制御ECU36は、第1錆除去制御を経験したことがない場合、プログラムをステップ204以降に進めて第1錆除去制御を実行する。
【0040】
ブレーキ制御ECU36は、ホイールシリンダWC**の目標圧力値(所定量の制動力)を設定する(ステップ204)。目標圧力値は、ブレーキパッドBP**がディスクロータDR**に当接してディスクロータDR**の錆を削り取るのに十分な圧力値(制動力値)に設定されている。
【0041】
ブレーキ制御ECU36は、圧力センサPから現時点のマスタシリンダ圧(M/C圧)を測定し、その測定したマスタシリンダ圧から推定ホイールシリンダ圧(推定W/C圧)を導出する(ステップ206)。ブレーキ制御ECU36は、導出した推定ホイールシリンダ圧が目標圧力値より大きければ、ブレーキアクチュエータ35を制御しないので、現時点で発生しているマスタシリンダ圧による液圧がホイールシリンダWC**に発生されるようになっている(ステップ208で「NO」)。
【0042】
一方、ブレーキ制御ECU36は、導出した推定ホイールシリンダ圧が目標圧力値以下であれば、ブレーキアクチュエータ35を制御して、推定ホイールシリンダ圧と目標圧力値との差分の圧力を加圧する(ステップ208,210)。これにより、ブレーキペダル31が踏まれていない場合や、ブレーキペダル31の踏込量(踏込力)が目標圧力値に対して小さい場合には、目標圧力値に対する不足分を自動的に補ってホイールシリンダWC**に目標圧力値に応じた液圧を発生することができる。
【0043】
ブレーキ制御ECU36は、ステップ212において、車両Mが走行中であるか否かを判定する。ブレーキ制御ECU36は、車輪速センサSfl,Sfr,Srl,Srrからの検出信号に基づいて、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの車輪速度を算出して車速(車体速度)を算出する。なお、車速を検出する車速センサを別に設け、車速センサの検出結果から車速を算出するようにしてもよい。ブレーキ制御ECU36は、算出した車速が0km/hであれば、車両Mは停止していると判定し、算出した車速が0km/hでなければすなわち車速が0km/hより大きければ、車両Mは走行中であると判定する。
【0044】
ブレーキ制御ECU36は、車両Mが停止中であれば、ステップ212で「NO」と判定し、プログラムをステップ224に進めて本サブルーチンを終了する。ブレーキ制御ECU36は、車両Mが走行中となれば、ステップ212で「YES」と判定し、プログラムをステップ214以降に進める。
【0045】
ブレーキ制御ECU36は、車両Mの走行中において、ホイールシリンダWC**から発生される目標圧力値である制動力の影響を打ち消す駆動力を上乗せした駆動力を車輪W**に付与する(駆動力付与手段:ステップ214)。ブレーキ制御ECU36は、ホイールシリンダWC**から発生される目標圧力値の制動力の影響を打ち消す駆動力を上乗せした駆動力に相当する駆動力指令信号をエンジン制御ECU20に出力する。これにより、エンジン制御ECU20は、駆動力指令信号に応じた駆動力をアクセルペダル16の現時点の踏込量に応じた駆動力に上乗せした駆動力となるようにモータ11dを制御する。
【0046】
ブレーキ制御ECU36は、車両Mの走行開始時点から所定時間T1を経過する時点までの間に、ホイールシリンダWC**を制御して目標圧力値の制動力をブレーキパッドBP**に発生する。具体的には、ブレーキ制御ECU36は、ステップ212で車速が0km/hでなくなった時点からすなわち車速が0km/hより大きくなった時点(走行開始時点)からタイマーカウントを開始し(ステップ216)、タイマーが所定時間T1を経過するまで(ステップ218で「NO」)、ホイールシリンダWC**から目標圧力値の制動力が発生され続ける(ステップ210)。
【0047】
そして、ブレーキ制御ECU36は、タイマーが所定時間T1を経過すると(ステップ218で「YES」)、ホイールシリンダWC**による加圧を停止(終了)するとともに、タイマーをクリアする(ステップ220)。そして、ブレーキ制御ECU36は、第1錆除去制御経験を「有り」と設定する(ステップ222)。その後、プログラムをステップ224に進めて本サブルーチンを終了する。
【0048】
なお、発生している錆は駐車時間である放置時間が長いほど多くなり、その錆を除去するのに必要な時間は長くなるので、車両Mの停止から走行開始までの時間(駐車時間)が長くなるほど、所定時間T1が長くなるように設定されている。これにより、駐車時間に応じて適切な時間だけディスクロータDR**の錆の除去を実施することができる。
【0049】
第1錆除去制御サブルーチンの処理が終了すると、図2に示すステップ106に戻る。ブレーキ制御ECU36は、ステップ106において、図4に示す第2錆除去制御サブルーチンを実行する。この第2錆除去制御サブルーチンでは、ブレーキ制御ECU36が電気的に起動状態になり(イグニッションスイッチ42をオンし)車両Mの加速中にディスクロータDR**の錆を除去する。
【0050】
具体的には、ブレーキ制御ECU36は、ステップ300にてサブルーチンの実行を開始する度に、イグニッションスイッチ42をオンした時点から第2錆除去制御を経験したことがないか否かを判定する(ステップ302)。すなわち、ブレーキ制御ECU36は、第2錆除去制御経験が「無し」と設定されていれば第2錆除去制御を経験したことがないと判定し、第2錆除去制御経験が「有り」と設定されていれば第2錆除去制御を経験したことがあると判定する。
【0051】
ブレーキ制御ECU36は、第2錆除去制御を経験したことがある場合、プログラムをステップ322に進めて本サブルーチンを終了する。ブレーキ制御ECU36は、第2錆除去制御を経験したことがない場合、プログラムをステップ304以降に進める。
【0052】
ブレーキ制御ECU36は、車体速度が所定速度(例えば30km/h)以上であり、車両Mが前向きに直進状態であり、かつ、車両Mが加速中であれば、プログラムをステップ310に進めて第2錆除去制御を実行する。ブレーキ制御ECU36は、車体速度が所定速度(例えば30km/h)未満であるか、車両Mが直進状態でないか、あるいは、車両Mが加速中でなければ、プログラムをステップ310に進めて、ホイールシリンダWC**による加圧を停止(終了)するとともに、タイマーを保持する(ステップ320)。
【0053】
ブレーキ制御ECU36は、ステップ304において、上記ステップ212の処理と同様に車体速度を算出し、その算出した車体速度が所定速度以上であるか否かを判定する。
【0054】
ブレーキ制御ECU36は、ステップ306において、舵角センサ37aが出力する運転者によるステアリング37の操作量に応じた操舵角ξを算出し、その算出した操舵角ξが所定範囲内であれば車両Mは直進状態であると判定し、そうでなければ直進状態でないと判定する。なお、操舵角ξの代わりに、ヨーレートセンサ38からの検出結果に基づいて算出する実ヨーレートを使用してもよいし、横加速度センサ39からの検出結果に基づいて算出する実際の横加速度を使用するようにしてもよい。
【0055】
ブレーキ制御ECU36は、ステップ308において、前後加速度センサ41が出力する車両に発生している実際の前後加速度に応じた検出信号に基づいて実際の前後加速度を算出し、その算出した前後加速度が所定値以上であれば車両Mは加速中であると判定し、そうでなければ加速中でないと判定する。なお、前後加速度の代わりに、アクセル開度センサ16aからの検出結果に基づいて算出するアクセルペダル16の開度変化量(踏込量変化量)を使用するようにしてもよい。
【0056】
上述したように、車両Mの車体速度が所定速度(例えば30km/h)以上であり、車両Mが前向きに直進状態であり、かつ、車両Mが加速中である場合には、ブレーキ制御ECU36は、ステップ310において、ホイールシリンダWC**に目標圧力値(所定量の制動力)を加圧する。目標圧力値は、ブレーキパッドBP**がディスクロータDR**に当接してディスクロータDR**の錆を削り取るのに十分な圧力値(制動力値)に設定されている。
【0057】
ブレーキ制御ECU36は、ホイールシリンダWC**への加圧を開始した時点からタイマーカウントを開始し(ステップ312)、タイマーが所定時間T2を経過するまで(ステップ314で「NO」)、ホイールシリンダWC**から目標圧力値の制動力が発生され続ける(ステップ310)。
【0058】
そして、ブレーキ制御ECU36は、タイマーが所定時間T2を経過すると(ステップ314で「YES」)、ホイールシリンダWC**による加圧を停止(終了)するとともに、タイマーをクリアする(ステップ316)。そして、ブレーキ制御ECU36は、第2錆除去制御経験を「有り」と設定する(ステップ318)。その後、プログラムをステップ322に進めて本サブルーチンを終了する。
【0059】
なお、車両Mの車体速度が大きいほどすなわちディスクロータDR**の回転速度が大きいほど錆除去能力が高いので、所定時間T2は、車両Mの車体速度が大きいほど短くなるように設定されている。これにより、車体速度に応じて適切な時間だけディスクロータDR**の錆の除去を実施することができる。
【0060】
なお、ブレーキ制御ECU36は、車体速度が所定速度(例えば30km/h)未満であるか、車両Mが直進状態でないか、あるいは、車両Mが加速中でなければ、プログラムをステップ310に進めて、ホイールシリンダWC**による加圧を停止(終了)するとともに、タイマーを保持する(ステップ320)。再び、車体速度が所定速度(例えば30km/h)以上であり、車両Mが前向きに直進状態であり、かつ、車両Mが加速中となれば、上述した第2錆除去処理を再開する。
【0061】
そして、ブレーキ制御ECU36は、第2錆除去制御サブルーチンの処理が終了すると、プログラムを図2に示すステップ108に戻し、本フローチャートを終了する。
【0062】
上述したブレーキ制御ECU36による作動の一例を図5を参照して説明する。時刻t1に運転者がブレーキペダル31を踏み込み、時刻t2にイグニッションスイッチ42をオンする。
【0063】
時刻t1においては、ブレーキペダル31がオフからオンになり、ブレーキペダル31が踏み込まれたので踏込状態に応じたホイールシリンダ圧がホイールシリンダWC**に発生される。
【0064】
時刻t2においては、イグニッションスイッチ42がオンされると、錆判定が実施される(ステップ102)。錆有りと判定されると、目標圧力が設定される(ステップ204)。このとき、この発生されているホイールシリンダ圧は目標圧力値より大きいので、ブレーキアクチュエータ35からの制御液圧は加圧されない(ステップ208で「NO」)。なお、ブレーキペダル31の踏込量(踏込力)が目標圧力値に対して小さい場合や、ブレーキペダル31が踏まれていない場合(ステップ208で「YES」)には、目標圧力値に対する不足分を補うようにブレーキアクチュエータ35から制御液圧が加圧される(ステップ210)。
【0065】
その後、時刻t3にて運転者がブレーキペダル31の踏み込みを解除してアクセルペダル16を踏み込む。これにより、車両Mが走行を開始する。
【0066】
時刻t3においては、ホイールシリンダWC**には目標圧力値以上のホイールシリンダ圧が発生されている。また、時刻t3から所定時間T1経過する時点(時刻t4)までの間、ホイールシリンダWC**には目標圧力値のホイールシリンダ圧が自動的に発生されている。これにより、ホイールシリンダWC**には車両の走行開始前から時刻t4までの間、少なくとも目標圧力値のホイールシリンダ圧が発生され、ホイールシリンダWC**に所定量の制動力が発生される。
【0067】
したがって、車両Mの走行により回転しているディスクロータDR**にブレーキパッドBP**が押圧されるので、ディスクロータDR**の錆が除去される。また、車輪W**に制動力が発生されている状態で車両Mが走行を開始するので、走行開始後制動力を発生する場合の減速感を運転者に与えることなく、錆除去処理を実施することができる。
【0068】
また、時刻t3から時刻t4までの間、ホイールシリンダWC**に発生する所定量の制動力の影響を打ち消す駆動力を車輪W**に付与するので、アクセルペダル16の踏込状態に応じた加速感が得られないという違和感を運転者に与えることなく、ディスクロータDR**の錆を除去することができる。
【0069】
その後、時刻t5にて車両Mが加速中となった場合、時刻t5から所定時間T2経過する時点(時刻t6)までの間、ホイールシリンダWC**には目標圧力値のホイールシリンダ圧が自動的に発生される。これにより、ホイールシリンダWC**に所定量の制動力が発生される。したがって、車両Mの走行により回転しているディスクロータDR**にブレーキパッドBP**が押圧されるので、ディスクロータDR**の錆が除去される。
なお、上述したステップ102の処理が判定手段であり、ステップ210またはステップ310の処理が自動制動手段であり、ステップ212,216〜220の処理が第1制動制御手段であり、ステップ308,312〜316の処理が第1制動制御手段である。
【0070】
上述した説明から明らかなように、本実施形態によれば、判定手段(ステップ102)が、自動制動手段(36;ステップ210)が電気的に起動状態になった後に、回転部材DR**の付着物の有無を判定し、第1制動制御手段(36;ステップ212,216〜220)が、判定手段(ステップ102)が回転部材DR**に付着物が有ると判定した場合、自動制動手段が電気的に起動された後の車両Mの最初の走行開始から所定時間T1経過の間に、自動制動手段(36;ステップ210)に対して制御指令を出力し、所定量の制動力を発生させる。これにより、自動制動手段(36;ステップ210)が電気的に起動状態になった後の最初の走行開始以降であって最初のブレーキ操作時より前に、摩擦部材BP**を回転部材DR**に押し付けて回転部材DR**の付着物を確実に除去することができる。したがって、その最初のブレーキ操作時においては、付着物が確実に除去されているので、付着物に起因した制動力の低下や振動及び鳴きの発生を防止することができる。
【0071】
また、駆動力付与手段(ステップ214)が、第1制動制御手段(36;ステップ212,216〜220)で発生する所定量の制動力の影響を打ち消す駆動力を上乗せした駆動力を車輪W**に付与するので、アクセルペダル16の踏込状態に応じた加速感が得られないという違和感を運転者に与えることなく、回転部材DR**の付着物を除去することができる。
【0072】
また、第1制動制御手段(36;ステップ212,216〜220)は、判定手段(ステップ102)が回転部材DR**に付着物が有ると判定した場合、該判定を実施した時点から車両Mの最初の走行開始時点までの間に、ブレーキペダル31の踏込状態を考慮して少なくとも所定量以上の制動力が発生されるように自動制動手段(36;ステップ210)を制御する。これにより、車両Mの最初の走行開始前から摩擦部材BP**を回転部材DR**に押し付けることができるので、最初の走行時において回転部材DR**の付着物を確実に除去することができる。
【0073】
また、判定手段(ステップ102)が、自動制動手段(36;ステップ210)が電気的に起動状態になった後に、回転部材DR**の付着物の有無を判定し、第2制動制御手段(36;ステップ308,312〜316)が、判定手段(ステップ102)が回転部材DR**に付着物が有ると判定した場合、その判定時点以降の車両Mの加速中において、自動制動手段(36;ステップ210)に対して制御指令を出力し、所定量の制動力を発生させる。これにより、自動制動手段(36;ステップ210)が電気的に起動状態になった後の最初の加速以降であって最初のブレーキ操作時より前に、運転者に違和感を与えないで回転部材DR**の付着物を確実に除去することができる。したがって、その最初のブレーキ操作時においては、付着物が確実に除去されているので、付着物に起因した制動力の低下や振動及び鳴きの発生を防止することができる。
【0074】
また、第1錆除去制御と第2錆除去制御の両方の制御を実施した場合、第1錆除去制御による、車両Mの最初の走行開始時点から所定時間T1経過する時点までの間における除去処理によって付着物が完全に除去できない場合、残った付着物を第2錆除去制御によって完全に除去することができる。
【0075】
また、第2制動制御手段(36;ステップ308,ステップ312〜316)は、車両Mが加速中でありかつ所定速度以上である場合、自動制動手段(36;ステップ308,ステップ312〜316)を制御して所定量の制動力を所定時間T2だけホイールシリンダWC**に発生するので、自動制動手段による制動力を運転者が感じることなく、回転部材DR**の付着物を除去することができる。
【0076】
また、所定時間T2は、車両Mの車体速度が大きいほど短くなるように設定されているので、車体速度に応じて適切な時間だけ回転部材DR**の付着物の除去を実施することができる。
【0077】
また、第2制動制御手段(36;ステップ308,ステップ312〜316)は、車両が旋回中である場合には(ステップ306で「NO」)、制動力の発生を中止する(ステップ320)ので、車両Mの挙動を安定に維持しながら回転部材DR**の付着物の除去を実施することができる。
【0078】
なお、上述した実施形態においては、第1錆除去制御および第2錆除去制御の何れか一方を実施するようにしてもよい。
【0079】
また、上述した実施形態においては、倍力装置として負圧式ブースタを用いているが、ポンプにより発生した液圧をアキュムレータに蓄圧し、この液圧をピストンに作用させてブレーキペダル21に作用するペダル踏力を倍力してもよい。
【0080】
また、上述した実施形態においては、押圧手段がホイールシリンダである場合を説明したが、車輪に制動力を発生するものであれば他の形式でもよく、例えば電動モータを使用するブレーキバイワイヤ式のブレーキ装置でもよい。この場合、電動モータを駆動してディスク式ブレーキのブレーキパッドBP**を押圧したり、ドラム式ブレーキのブレーキシューを拡張したりする。これにより、制動力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明による車両の制動制御装置を適用した車両の一実施形態を示す概要図である。
【図2】図1に示すブレーキ制御ECUにて実行される制御プログラムのフローチャートである。
【図3】図1に示すブレーキ制御ECUにて実行される第1錆除去制御サブルーチンのフローチャートである。
【図4】図1に示すブレーキ制御ECUにて実行される第2錆除去制御サブルーチンのフローチャートである。
【図5】本発明による車両の制動制御装置による作動を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0082】
11…エンジン、11b…スロットルバルブ、11c…スロットル駆動モータ、11d…スロットル開度センサ、12…変速機、13…ディファレンシャル、16…アクセルペダル、16a…アクセル開度センサ、20…エンジン制御ECU、31…ブレーキペダル、31a…ブレーキスイッチ、32…負圧式ブースタ、33…マスタシリンダ、34…リザーバタンク、35…ブレーキアクチュエータ、36…ブレーキ制御ECU(車両の制動制御装置;自動制動手段;判定手段;第1および第2制動制御手段;駆動力付与手段)、37a…舵角センサ、38…ヨーレートセンサ、39…横加速度センサ、41…前後加速度センサ、42…イグニッションスイッチ、A…液圧ブレーキ装置、M…車両、Wfl,Wfr,Wrl,Wrr…車輪、P…圧力センサ、Sfl,Sfr,Srl,Srr…車輪速センサ、WCfl,WCfr,WCrl,WCrr…ホイールシリンダ、DRfl,DRfr,DRrl,DRrr…ディスクロータ(回転部材)、BPfl,BPfr,BPrl,BPrr…ブレーキパッド(摩擦部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(M)の運転者によるブレーキペダル(31)の踏込状態に関わらず、車輪(W**)と一体回転する回転部材(DR**)に対し摩擦部材(BP**)を押し付けて制動力を発生させる自動制動手段(36;ステップ210)と、
前記自動制動手段が電気的に起動状態になった後に、前記回転部材の付着物の有無を判定する判定手段(36;ステップ102)と、
前記判定手段が前記回転部材に前記付着物が有ると判定した場合、前記自動制動手段が電気的に起動された後の前記車両の最初の走行開始から所定時間経過の間に、前記自動制動手段に対して制御指令を出力し、所定量の制動力を発生させる第1制動制御手段(36;ステップ212,216〜220)と、
を備えたことを特徴とする車両の制動制御装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1制動制御手段で発生する前記所定量の制動力の影響を打ち消す駆動力を上乗せした駆動力を前記車輪に付与する駆動力付与手段(ステップ214)をさらに備えたことを特徴とする車両の制動制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記第1制動制御手段は、前記判定手段が前記回転部材に前記付着物が有ると判定した場合、該判定を実施した時点から前記車両の最初の走行開始時点までの間に、前記ブレーキペダルの踏込状態を考慮して少なくとも前記所定量以上の制動力が発生されるように前記自動制動手段を制御することを特徴とする車両の制動制御装置。
【請求項4】
車両(M)の運転者によるブレーキペダル(31)の踏込状態に関わらず、車輪(W**)と一体回転する回転部材(DR**)に対し摩擦部材(BP**)を押し付けて制動力を発生させる自動制動手段(36;ステップ310)と、
前記自動制動手段が電気的に起動状態になった後に、前記回転部材の付着物の有無を判定する判定手段(36;ステップ102)と、
前記判定手段が前記回転部材に前記付着物が有ると判定した場合、その判定時点以降の前記車両の加速中において、前記自動制動手段に対して制御指令を出力し、所定量の制動力を発生させる第2制動制御手段(36;ステップ308,312〜316)と、
を備えたことを特徴とする車両の制動制御装置。
【請求項5】
請求項4において、前記第2制動制御手段は、前記車両が加速中でありかつ所定速度以上である場合、前記自動制動手段を制御して前記所定量の制動力を所定時間だけ発生することを特徴とする車両の制動制御装置。
【請求項6】
請求項5において、前記所定時間は、前記車両の車体速度が大きいほど短くなるように設定されていることを特徴とする車両の制動制御装置。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6の何れか一項において、前記前記第2制動制御手段は、前記車両が旋回中である場合には、前記制動力の発生を中止する(ステップ306,320)ことを特徴とする車両の制動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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