説明

車両の前部構造

【課題】タワーバーの支持剛性を向上させて車体剛性感を大きくした車体の前部構造を提供する。
【解決手段】本発明の車両の前部構造1は、車室とエンジンルームを区画し車幅方向に延びるダッシュパネル8と、エンジンルームの左右両側に車両前後方向に延びるように設けられた一対のフロントサイドフレーム2と、各フロントサイドフレームの車幅方向外側の車体に上方へ突出するように接合され且つサスペンション装置のダンパーの上部を支持するストラットタワー16と、ダッシュパネルの下端部から後方に向かって延びるフロアパネル7と、ダッシュパネルの車幅方向中央部に車両後方へ膨出するように形成されたダッシュパネルトンネル部23及びフロアパネルの幅方向中央部に上方に膨出し車両後方に延びるように形成されたフロアパネルトンネル部24を備えたトンネル部25と、を備え、ストラットタワーの上部とトンネル部がタワーバー30により連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部構造に係わり、特に、サスペンション装置のダンパーの上部を支持するストラットタワーと車体を連結するタワーバーを備えた車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両重量の前後バランスの最適化等のために、車両前部のエンジンルーム内に配置されるエンジンを車室側に後退させて配置する車両レイアウトが採用されつつある。
このような車両レイアウトを採用した車両の前部構造の例が、特許文献1〜特許文献3に記載されている。
【0003】
特許文献1には、タワーバーをカウルパネルのセンタカウルパネルに連結することにより、タワーバーの車幅方向の剛性を利用して、カウルパネルの車幅方向中央に凹状の収容部を設けた場合の剛性低下を防止するようにした車両の前部構造が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ストラットドーム(=ストラットタワー)の上部とダッシュパネルとをドームストラット(=タワーバー)に連結することにより、車体前後方向及び幅方向の剛性を高めた車両の前部構造が記載されている。
【0005】
特許文献3には、サスペンション装置のショックアブソーバの上端部を支持する単一部品として形成されたストラットハウジング(=ストラットタワー)に、サイドメンバ(=フロントサイドフレーム)、フードリッジ、ダッシュパネル、及び、ダッシュパネルの中央部から左右両側に向けて斜め前方に伸びるカウルトップパネルを結合して一体化して、所要の剛性及び強度を確保した車両の前部構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-111162号公報
【特許文献2】特開2008-127012号公報
【特許文献3】特開2009-078575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した車両の前部構造においては、タワーバーをカウルパネルやダッシュパネルに連結したり、ダッシュパネルに一体化されたカウルトップパネルを用いるようにしているが、そもそも、カウルパネルやダッシュパネルは、それら自体の剛性は大きくなく、容易に変形する部材である。
【0008】
そのため、特許文献1や特許文献2の車両の前部構造においては、タワーバーからカウルパネルやダッシュパネルに荷重が伝達された際、カウルパネルやダッシュパネルが容易に変形して後退してしまうので、タワーバーの支持剛性が小さいと言う問題がある。また、特許文献3の車両の前部構造においては、部品を一体化することにより、エンジンルーム内の容積が小さくなり、ブレーキ系統部品のレイアウトが困難となるという問題がある。さらに、車両の前部構造においては、歩行者保護性能等も向上させる必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、タワーバーの支持剛性を向上させて車体剛性感を大きくすることができる車両の前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の車両の前部構造は、車室とエンジンルームを区画し車幅方向に延びるダッシュパネルと、エンジンルームの左右両側に車両前後方向に延びるように設けられた一対のフロントサイドフレームと、各フロントサイドフレームの車幅方向外側の車体に上方へ突出するように接合され且つサスペンション装置のダンパーの上部を支持するストラットタワーと、ダッシュパネルの下端部から後方に向かって延びるフロアパネルと、ダッシュパネルの車幅方向中央部に車両後方へ膨出するように形成されたダッシュパネルトンネル部及び上記フロアパネルの幅方向中央部に上方に膨出し車両後方に延びるように形成されたフロアパネルトンネル部を備えたトンネル部と、を備え、ストラットタワーの上部とトンネル部がタワーバーにより連結されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、ストラットタワーの上部とトンネル部がタワーバーにより連結されているので、ストラットタワーに作用する荷重をタワーバーから剛性が大であるトンネル部に伝達することができ、これにより、車体剛性感を向上させ、ダッシュパネルの後退変形を抑制し、さらに、歩行者保護性能を向上させることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、トンネル部のタワーバーとの連結部位が、車両後方側へ傾斜した傾斜面を備えている。
このように構成された本発明においては、タワーバーの支持剛性とエンジン後方配置を両立することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、トンネル部は、更に、このトンネル部に沿って前後方向に延び且つトンネル部と共に閉断面を形成するトンネル補強部を備えている。
このように構成された本発明においては、トンネル部がトンネル部に沿って前後方向に延び且つトンネル部と共に閉断面を形成するトンネル補強部を備えているので、トンネル部は更に剛性が大となり、ダッシュパネル後退をより効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、車幅方向に延びるダッシュパネルの上端部に沿ってカウルパネルが設けられ、トンネル補強部がダッシュパネルに沿って上方へ延びてカウルパネルに連結されている。
このように構成された本発明においては、トンネル補強部がダッシュパネルに沿って上方へ延びてカウルパネルに連結されているので、その分、トンネル補強部をその剛性を低下させることなく車体後方へ薄くすることができ、また、エンジンの後方配置が可能となり、さらに、トンネル補強部への荷重伝達を向上させることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、サスペンション装置のダンパーが正面視で車幅方向内側上方から外側下方に向かって傾斜して上下方向に設けられ、上記タワーバーのトンネル部との連結部が正面視で上記ストラットタワーの上部を通り且つ上記ダンパーの軸線に対して直交して延びる線よりも上方に位置している。
このように構成された本発明においては、ストラットタワーの車幅方向内側上方への変形を抑制して剛性感を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両の前部構造によれば、タワーバーの支持剛性を向上させて車体剛性感を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態による車両の前部構造を示す車両前方から見た正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿って見た平面断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿って見た側面断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による車両の前部構造を車室側の斜め後方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態による車両の前部構造をエンジンルーム側の斜め上方から見た要部斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態による車両の前部構造を示す車両前方から見た正面図である。
【図7】図6のC−C線に沿って見た平面断面図である。
【図8】図7の要部拡大断面図である。
【図9】図6のD−D線に沿って見た側面断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による車両の前部構造を車室側の斜め後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1乃至図5により、本発明の第1実施形態による車両の前部構造を説明する。図1は本発明の第1実施形態による車両の前部構造を示す車両前方から見た正面図であり、図2は図1のA−A線に沿って見た平面断面図であり、図3は図1のB−B線に沿って見た側面断面図であり、図4は本発明の第1実施形態による車両の前部構造を車室側の斜め後方から見た斜視図であり、図5は本発明の第1実施形態による車両の前部構造をエンジンルーム側の斜め上方から見た要部斜視図である。
【0018】
図1乃至図5に示すように、符号1は、本発明の第1実施形態による車両の前部構造を示し、この車両の前部構造1は、車両前方側に左右両側に車両前後方向に延びるように設けられた一対のフロントサイドフレーム2を備え、このフロントサイドフレーム2の前方部には車幅方向に延びるフロントクロスメンバ(No.1クロスメンバ)4が設けられ両側のフロントサイドフレーム2を連結している。
【0019】
フロントサイドフレーム2の後方部には、前後方向に延びる主要部2aと、車幅方向内側に形成された内方側メンバ2bと、車幅方向外側に形成された外方側メンバ2cとが、一体的に形成されている。
このフロントサイドフレーム2の主要部2aの下面には、前後方向に延びるフロアフレーム6の前端部が連結されている。また、このフロアフレーム6は、後述するダッシュパネル8の後方側に位置するフロアパネル7の下面に取り付けられている。
【0020】
フロントサイドフレーム2の後方には、車室SとエンジンルームEとを区画し車幅方向に延びるダッシュパネル8が設けられている。このダッシュパネル8の上方には、車幅方向に延びて空調ユニットへ外気を導入するためのカウルパネル10が設けられている。このカウルパネル10は車幅方向中央部が別部品で形成され分割構造となっている。
また、フロントサイドフレーム2の車両外方側には、エンジンルームE内に膨出し前輪(図示せず)を収容するホイールハウス12が設けされ、このホイールハウス12の上方には、ホイールハウス12を補強するためのエプロンレインフォースメント14が設けられている。
【0021】
さらに、図1に示すように、このホイールハウス12には、車輪(前輪)38のサスペンション装置40のダンパー42の上部を支持するストラットタワー16が設けられている。このストラットタワー16の前後位置には、ストラットタワー16の前後方向剛性を高める2つの補強プレート18が設けられている(図5参照)。
【0022】
具体的に説明すると、サスペンション装置40は、図1において破線で示すように、車輪38を回転可能に支持するナックル44と、車幅方向に延びてナックル44の上部と車体側部材に上下方向揺動可能に連結されるアッパーアーム46と、ナックル44の下部と車体側部材に上下方向揺動可に連結されつるロアーアーム48を備え、ダンパー42の下部は、ロアアーム48の車幅方向中間部48aに連結されている。ダンパー42の軸線L1は、標準的な乗員数と積載量における静止状態又は直進状態において、ストラットタワー16の上部に設けられたダンパー取付座42aから車幅方向内側上方から外側下方に向かって傾斜して上下方向に延びている。
【0023】
ダンパー取付座42aは、正面視で、車幅方向外側上方から内側下方へ傾斜して設けられている。ストラットタワー16は、支持剛性を高めるために、ダンパー取付座42aにてダンパー42からの荷重を出来るだけ垂直に受け止めて支持剛性を高めるために、ダンパー取付座42aは、上述したダンパー42の軸線L1に対してほぼ直交するように設けられている。
【0024】
なお、本実施形態においては、サスペンション装置の構造は、上述したものに限らず、ダンパーとアッパーアームとを連結しても良く、また、ダンパーの下部をナックルに連結するようにしても良い。更に、ダンパーをナックルの上部に連結し、アッパーアームを設けないようにしても良い。
【0025】
ここで、図2及び図3に示すように、破線で示したのは、エンジンと変速機からなるパワーユニットPの配置ラインである。この配置ラインに示すように、本実施形態の車両においては、通常の縦置きエンジンの車両よりパワーユニットPの配置位置が車両後方側に設定されている。具体的には、パワーユニットPは、フロントクロスメンバ4の車両後方側に配置され、パワーユニットPの後端が、ダッシュパネル8より後方側(車室S側)に突出するように設定され、カウルパネル10の下側に潜り込むように配置されている。このように、パワーユニットPを配置することにより、車両重量の前後バランスを最適化でき、操安性に優れた車両とすることができる。
【0026】
次に、フロントサイドフレーム2の外方側メンバ2cの後端はダッシュパネル8に沿って車幅方向に延び、この外方側メンバ2cの後端には、車幅方向に延びるトルクボックス20が接合され、さらに、このトルクボックス20の外側に位置しフロアフレーム6とほぼ平行して車両前後方向に延びるサイドシル22が接合されている。なお、このサイドシル22には、上方へ延びるフロントピラー21が接合されている。
【0027】
一方、上述したダッシュパネル8の車幅方向の中央部には車両後方に膨出したダッシュパネルトンネル部23が形成されている。また、上述したフロアパネル7の車幅方向中央部にも上方に膨出し車体前後方向に延びるフロアパネルトンネル部24が形成されている。このフロアパネルトンネル部24の前端部24aは、ダッシュパネルトンネル部23の後端部と接合され、これらのダッシュパネルトンネル部23及びフロアパネルトンネル部24によりトンネル部25が形成されている。
【0028】
また、ダッシュパネル8の車室側面には、車幅方向に延びるダッシュクロスメンバ26が接合されており、ダッシュパネル8との間に車幅方向に延びる閉断面を形成している。
【0029】
さらに、トンネル部25において、フロアパネルトンネル部24の上方には、フロアパネルトンネル部24に沿って前後方向に延びるトンネル補強部であるバックボーンフレーム部27が設けられ、さらに、このバックボーンフレーム部27の前方部には、ダッシュパネルトンネル部23の後方で斜め上方の延びてカウルパネル10に接合される上方延長部27aが形成されている。
このように、トンネル部25は、さらに、バックボーンフレーム部27及び上方延長部27aを備え、これらとトンネル部25との間に車体前後方向に延びる閉断面28が形成されている。
さらに、上述したフロントサイドフレーム2の内方側メンバ2bが主要部2aとともに閉断面を形成し、この閉断面がダッシュパネルトンネル部23と連結されている。
【0030】
次に、上述したストラットタワー16の上部には、車体前後方向に対して車体外方側から内方側へ斜めに延びるタワーバー30の前端部30aが連結されている。このタワーバー30の後端部には接合フランジ30bが取付られ、この取付フランジ30bにより、タワーバー30がダッシュパネル8の前面8a及びダッシュパネルトンネル部23の前方部分である車体後方側且つ車幅方向内側へ傾斜した傾斜面23aに締結部材32により連結されている(図2及び図3参照)。
【0031】
また、図2に示すように、バックボーンフレーム部27の上方延長部27aにも同様に傾斜面27bが京成され、この傾斜面27bの前端が、タワーバー30の後部と連結されるダッシュパネル8の前面の位置及びその近傍位置に対応するダッシュパネル8の後面に当接されている。さらに、タワーバー30の配置方向とバックボーンフレーム部27の傾斜面27bの傾斜方向とが平面視でほぼ直線状となるように配置されている。
【0032】
次に、図1に示すように、タワーバー30とダッシュパネルトンネル部23との連結部X1が、正面視にてストラットタワー16の上部X2を通りダンパー42の軸線L1に対して直交して延びる線L2よりも上方に位置するようになっている。
なお、タワーバー30とダッシュパネルトンネル部23との連結部X1が、正面視にて、上述したダンパー取付座42aの座面に沿って延びる直線よりも上方に位置するようにしてもよい。
【0033】
次に、本発明による第1実施形態による車両の前部構造における作用を説明する。
先ず、本実施形態による車両の前部構造1においては、ストラットタワー16の上部とトンネル部25のダッシュパネルトンネル部23がタワーバー30により連結されているので、ストラットタワー16に作用する荷重をタワーバー30からダッシュパネルトンネル部23(即ちトンネル部25)に伝達し、ストラットタワー16上部の車幅方向内側上方への変位を抑制することができるので、車体剛性感を向上させることができる。
また、車体の前後方向及び車幅方向の剛性が大きくなるので、ダッシュパネル8の後退変形を抑制することができる。
【0034】
また、前面衝突時にフロントサイドフレーム2よりも上方部位に障害物が衝突した場合であっても、衝突荷重をタワーバー30からダッシュパネルトンネル部23に伝達し、ダッシュパネル8の後退変形を抑制することができる。
更に、前面衝突時には、衝突荷重をフロントサイドフレーム2からストラットタワー16及びタワーバー30を介してダッシュパネルトンネル部23に分散すると共に、ストラットタワー16上部の車幅方向内側上方への変位を抑制することにより、ストラットタワー16よりも前方にあるフロントサイドフレーム2の部分を確実に座屈変形させることができる。
【0035】
また、タワーバー30がダッシュパネルトンネル部23に連結されることにより、ボンネット(図示せず)とタワーバー30との間の高さ方向には所望の空間が形成され、それにより、歩行者保護性能を向上させることができる。
【0036】
次に、本実施形態による車両の前部構造1においては、ダッシュパネルトンネル部23のタワーバー30と連結される前方部が車両後方側及び車幅方向内側へ傾斜した傾斜面23aを備えているので、タワーバー30の支持剛性とエンジン後方配置を両立させることができる。
【0037】
次に、本実施形態による車両の前部構造1においては、上述したように、トンネル部25において、フロアパネルトンネル部24に沿って前後方向に延びるバックボーンフレーム部27が設けられ、さらに、このバックボーンフレーム部27の前方部には、ダッシュパネルトンネル部23の後方で斜め上方の延びてカウルパネル10に接合される上方延長部27aが形成され、これらのバックボーンフレーム部27及び上方延長部27aによりトンネル部25との間に車体前後方向に延びる閉断面28が形成され、このトンネル部25にタワーバー30が連結されているので、車体の前後方向の剛性が更に向上し、それにより、ダッシュパネル後退を更に抑制することができる。
【0038】
次に、本実施形態による車両の前部構造1においては、車幅方向に延びるダッシュパネル8の上端部に沿ってカウルパネル10が設けられ、バックボーンフレーム27がダッシュパネル8に沿って上方へ延びてその上方延長部27aがカウルパネル10に連結されているので、その分、エンジンの後方配置が可能となり、さらに、バックボーンフレーム26への荷重伝達を向上させることができる。
【0039】
更に、図1に示すように、本実施形態による車両の前部構造1においては、カウルパネル10の車幅方向端部X3とストラットタワーの上部X2とを連結するエプロンレインフォースメント14が設けられ、タワーバー30のダッシュパネルトンネル部23との連結部X1が、正面視にてストラットタワー16の上部X2を通りダンパー42の軸線L1に対して直交して延びる線L2よりも上方に位置するようになっている。ストラットタワー30の車幅方向内側上方変形を抑えて剛性感を向上させることができる。
【0040】
この理由を具体的に説明する。エプロンレインフォースメント14とタワーバー30とが、ダンパー42の取付座42aを前端部とするトラス構造となっている。このトラス構造は、ダンパ−42からの入力荷重方向(軸線L1に沿った方向)に対して車両前後方向に沿って下方に傾斜している。換言すると、エプロンレインフォースメント14の後端部とタワーバー30の後端部を結ぶトラス構造の後縁が、正面視において、取付座42aよりも上方に位置している。このため、ストラットタワー16及びこのストラットタワー16を支持するフロントサイドフレーム2が、ダンパー42からの入力荷重によって車幅方向内側上方且つ後方へ曲げ変形しようとしても、この挙動に対して、トラス構造が実質的にその後端部近傍を軸として上方に揺動しようとするが、タワーバー30により前端部である取付座42aが前方に移動しようとし、それにより、突っ張り力が発生する。この突っ張り力により、ストラットタワー30の車幅方向内側上方変形を抑えられ、剛性感を向上が向上するのである。
【0041】
次に、図6乃至図10により、本発明の第2実施形態による車両の前部構造について説明する。図6は本発明の第2実施形態による車両の前部構造を示す車両前方から見た正面図であり、図7は図6のC−C線に沿って見た平面断面図であり、図8は図7の要部拡大断面図であり、図9は図6のD−D線に沿って見た側面断面図であり、図10は本発明の第2実施形態による車両の前部構造を車室側の斜め後方から見た斜視図である。
【0042】
この第2実施形態による車両の前部構造の基本構造は、上述した第1実施形態と同様であるので、以下、第1実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0043】
この第2実施形態による車両の前部構造1においては、主に図7及び図8に示すように、バックボーンフレーム部27の上方延長部27aの前端に設けられた接合フランジ27bが、車幅方向に延びるダッシュクロスメンバ26の車幅方向内側に設けられた接合フランジ26aと接合されている。
【0044】
次に、ダッシュクロスメンバ26の車幅方向内側に設けられた接合フランジ26aと、ダッシュパネルトンネル部23と、上述したタワーバー30の後願側の接合フランジ30bが、締結部材32により、締結されている。
【0045】
この第2実施形態による車両の前部構造1によれば、上述した第1実施形態と同様な作用効果を奏することができる。さらに、第2実施形態による車両の前部構造1によれば、タワーバー30の接合フランジ30bが、ダッシュクロスメンバ26の接合フランジ26a及びダッシュパネルトンネル部23とにより締結されるので、タワーバー30のトンネル部25との連結部の剛性を大きくし、ダッシュパネル8の後退変形をより効果的に抑制することができる。その結果、タワーバー30の支持剛性を向上させて車体剛性感を大きくすることができる。
さらに、図6に示すように、正面視にて、タワーバー30とダッシュパネルトンネル部23との連結部X1が、ストラットタワー16の上部X2よりも下方に位置しているので、剛体のタワーバー30上方の図示しないボンネットフードとの間に緩衝スペースを第1実施形態よりも更に高く設けることができるので、さらに、歩行者保護性能が向上する。
【符号の説明】
【0046】
1 車両の前部構造
2 フロントサイドフレーム
6 フロアフレーム
P 車室
E エンジンルーム
7 フロアパネル
8 ダッシュパネル
10 カウルパネル
12 ホイールハウス
14 エプロンレインフォースメント
16 ストラットタワー
23 ダッシュパネルトンネル部
23a 傾斜面
24 フロアパネルトンネル部
25 トンネル部
26 ダッシュクロスメンバ
27 バックボーンフレーム部
27a 上方延長部
27b 傾斜面
27c 接合フランジ
28 閉断面
30 タワーバー
32 締結部材
40 サクペンション装置
42 ダンパー
L1 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室とエンジンルームを区画し車幅方向に延びるダッシュパネルと、
上記エンジンルームの左右両側に車両前後方向に延びるように設けられた一対のフロントサイドフレームと、
上記各フロントサイドフレームの車幅方向外側の車体に上方へ突出するように接合され且つサスペンション装置のダンパーの上部を支持するストラットタワーと、
上記ダッシュパネルの下端部から後方に向かって延びるフロアパネルと、
上記ダッシュパネルの車幅方向中央部に車両後方へ膨出するように形成されたダッシュパネルトンネル部及び上記フロアパネルの幅方向中央部に上方に膨出し車両後方に延びるように形成されたフロアパネルトンネル部を備えたトンネル部と、を備え、
上記ストラットタワーの上部と上記トンネル部がタワーバーにより連結されていることを特徴とする車両の前部構造。
【請求項2】
上記トンネル部のタワーバーとの連結部位が、車両後方側へ傾斜した傾斜面を備えている請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
上記トンネル部は、更に、このトンネル部に沿って前後方向に延び且つトンネル部と共に閉断面を形成するトンネル補強部を備えている請求項1又は2に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
上記車幅方向に延びるダッシュパネルの上端部に沿ってカウルパネルが設けられ、上記トンネル補強部が上記ダッシュパネルに沿って上方へ延びて上記カウルパネルに連結されている請求項3に記載の車両の前部構造。
【請求項5】
上記サスペンション装置のダンパーは正面視で車幅方向内側上方から外側下方に向かって傾斜して上下方向に設けられ、上記タワーバーのトンネル部との連結部が正面視で上記ストラットタワーの上部を通り且つ上記ダンパーの軸線に対して直交して延びる線よりも上方に位置している請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−131735(P2011−131735A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293038(P2009−293038)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】