説明

車両の後部車体構造

【課題】サスペンションの支持剛性および車体剛性を向上させる。
【解決手段】本発明の車両の後部車体構造は、車室の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム11eと、一対のリヤサイドフレーム11eに両側端部12b2が連結されて、一対のリヤサイドフレーム11eを車幅方向に接続するように設けられるリヤサスペンションメンバ12bと、リヤサスペンションメンバ12bによって支持され、後輪を懸架するリヤサスペンション3と、リヤサスペンションメンバ12bに対応する位置で、左右一対のリヤサイドフレーム11eの間を接続するリヤクロスメンバ12aとを有し、リヤクロスメンバ12aは、両端部に、リヤサイドフレーム11eとの接続部分において車両前後方向に拡大した拡大部12a2を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後輪を懸架するリヤサスペンションを、リヤサスペンションメンバで支持する車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後輪は、車体に対してリヤサスペンションを介して懸架されている。このリヤサスペンションを支持するリヤサスペンションメンバは、車幅方向に延びる部材であり、その両端部が、車両前後方向に延びる一対のリヤサイドフレームに固定されている。
【0003】
リヤサスペンションは、路面の凹凸に追従するように車輪を変位させることで、路面から車体へ伝わる衝撃を吸収し、乗り心地を向上させるとともに、車輪や車軸を位置決めするための機構である。リヤサスペンションは、主に、コイルスプリング、ショックアブソーバ、サスペンションアームなどにより構成されている。このうち、サスペンションアームは、一端が車輪の所定の位置に対して回動可能に連結され、他端がリヤサスペンションメンバの所定の位置に対して回動可能に連結されてリンク機構を構成している。そして、サスペンションアームは、アームの長さや、アーム両端の連結位置が特定されることによって、その機能が効果的に発揮される。
【0004】
特許文献1には、自動車のサスペンション装置が開示されている。このなかで、ロアーアーム、アッパーアームおよびトーコントロールリンクからなるサスペンションアームのそれぞれの一端をリヤサスペンションクロスメンバ(リヤサスペンションメンバ)の所定の位置に連結することが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−137616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、複数のサスペンションアームをリヤサスペンションメンバに連結する場合には、リヤサスペンションメンバが、複数、車両の前後方向に異なる位置に配置される形態が一般的で、複雑で大掛かりな構造になりがちであった。
【0007】
しかしながら、単にリヤサスペンションメンバの構造を単純化しようとすると、サスペンションの支持剛性および車体剛性が劣ってしまう傾向がある。
【0008】
本発明は上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、サスペンションの支持剛性および車体剛性を簡単な構成で効果的に向上させることができる車両の後部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両の後部車体構造は、車室の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームと、該一対のリヤサイドフレームに両側端部が連結されて、前記一対のリヤサイドフレームを車幅方向に接続するように設けられるリヤサスペンションメンバと、該リヤサスペンションメンバによって支持され、後輪を懸架するリヤサスペンションと、前記リヤサスペンションメンバに対応する位置で、前記左右一対のリヤサイドフレームの間を接続するリヤクロスメンバとを有し、前記リヤクロスメンバは、両端部に、前記リヤサイドフレームとの接続部分において車両前後方向に拡大した拡大部を有することを特徴とする。
【0010】
この発明では、リヤサスペンションメンバに対応する位置にリヤクロスメンバが設けられているとともに、このリヤクロスメンバの両端部に、リヤサイドフレームとの接続部分において車両前後方向に拡大した拡大部を有する構成としたため、リヤクロスメンバとリヤサイドフレームとの接続部分では、リヤサイドフレームに加わった力がリヤクロスメンバに伝達される際に、この拡大部によって、局所的に応力が集中するのを避けつつ、リヤサスペンションメンバの設置部を効果的に補強することができる。つまり、このような拡大部によって結合された構造物を変形・破壊する場合には、従来よりも大きな荷重を入力しなければならない。したがって、サスペンションの支持剛性および車体剛性を簡単な構成で効果的に向上させることができる。
【0011】
また、前記リヤサイドフレームには、前記リヤクロスメンバが接続される位置の下側面に凹みが形成されて、上下方向に薄くなる連結部が形成され、該連結部に前記リヤサスペンションメンバの側端部が取り付けられることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、リヤサイドフレームの下側面に凹みが形成されることによって形成された上下方向に薄い連結部に対してリヤサスペンションメンバの側端部が取り付けられるので、リヤサスペンションメンバの側端部を、より上方に位置させることができる。
【0013】
また、前記連結部に取り付けられた前記リヤサスペンションメンバの前記側端部に対して、前記リヤサスペンションのアッパーアームが取り付けられていることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、リヤサスペンションメンバの側端部が連結部に取り付けられるとともに、この側端部にアッパーアームが取り付けられている。これによって、アッパーアームの一端が、より上方に取り付けられることになる。したがって、アッパーアームの車幅方向のスパンと上下方向の高さを拡大することができ、操縦安定性を向上させることができる。
【0015】
また、前記リヤサイドフレームが前後に分割され、後方のリヤサイドフレームの前端部および前方のリヤサイドフレームの後端部の間に、前記リヤサスペンションメンバの側端部が配設されるとともに、前記後方のリヤサイドフレームの前端部および前記前方のリヤサイドフレームの後端部が、前記リヤクロスメンバの前記拡大部によって連結されていることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、前後に分割されたリヤサイドフレームをリヤクロスメンバの拡大部で連結するとともに、前後に分割されたリヤサイドフレームの間にリヤサスペンションメンバが配設されるので、リヤサイドフレーム、リヤサスペンションメンバ、および、リヤクロスメンバの連結状態における剛性と、これら3部材の組み付け易さとを確保できる。
【0017】
また、前記拡大部が、平面視で、前記リヤクロスメンバの端部に向けて分岐した二股形状を呈し、前記リヤサスペンションメンバの側端部を挟むように前記リヤサイドフレームに対して接続されていることが好ましい。
【0018】
この発明によれば、拡大部が、平面視で、二股形状を呈しているので、リヤクロスメンバの軽量化を図ることもできる。あるいは、リヤサスペンションメンバの側端部の平面形状に工夫を施すことにより、リヤサイドフレームの車両前後方向の剛性を向上させることもできる。
【0019】
前記リヤサスペンションメンバの車幅方向中央部分が、両側端部より下方にオフセットした状態に形成されていることが好ましい。
【0020】
この発明によれば、リヤサスペンションメンバの車幅方向中央部分が、両側端部より下方にオフセットした状態に形成されていることによって、複数のサスペンションアームを異なる高さに連結することが可能である。したがって、リヤサスペンションメンバを車両の前後方向に異なる位置に複数設置する必要がなく、リヤサスペンションメンバの構造を単純化して、車体の軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、リヤサスペンションメンバに対応する位置にリヤクロスメンバが設けられているとともに、このリヤクロスメンバの両端部に、リヤサイドフレームとの接続部分において車両前後方向に拡大した拡大部を有する構成としたため、サスペンションの支持剛性および車体剛性を簡単な構成で効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車両の骨格を構成する部材を概略的に説明するための車両の下面図である。
【図2】車両の後部車体構造を概略的に説明するための平面図である。
【図3】車両の後部車体構造を概略的に説明するための側面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】実施の形態1のリヤサイドフレームとリヤクロスメンバとの結合部分の構造を概略的に説明するための斜視図である。
【図6】実施の形態2のリヤサイドフレームとリヤクロスメンバとの結合部分の構造を概略的に説明するための斜視図である。
【図7】実施の形態2のリヤサイドフレームとリヤサスペンションメンバとの結合部分の形態を説明するための断面図である。
【図8】実施の形態3のリヤサイドフレームとリヤクロスメンバとの結合部分の構造を概略的に説明するための斜視図である。
【図9】実施の形態3のリヤサイドフレームとリヤクロスメンバとの結合部分の構造を概略的に説明するための平面図である。
【図10】図9のX−X矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下で、本実施の形態の車両の後部車体構造について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
(実施の形態1)
車両のアンダーボディは、概ね、車両の前後方向に延びる強度部材であるサイドフレーム材と、車幅方向に延びる強度部材であるクロスメンバと、床面を構成し、荷重を分散させるフロアパネル2とから構成されている。
【0025】
サイドフレーム材としては、図1に示されるように、車両の前部に配置されるフロントリヤサイドフレーム11a、車両の前後方向中間部であって、車室の下部に配置されるフロアフレーム11b、サブフロアフレーム11c、サイドシル11d、車両の後部に配置されるリヤサイドフレーム11eなどがある。フロントリヤサイドフレーム11a、フロアフレーム11b、サブフロアフレーム11c、サイドシル11dおよびリヤサイドフレーム11eは、いずれも、左右一対ずつ設けられている。
【0026】
また、クロスメンバとしては、両端がフロントサイドフレーム11aに接続され、ボディの最前端に設けられるフロントクロスメンバ12e、フロントサイドフレーム11aに両端が接続されて、フロントクロスメンバ12aよりも後方側に設けられるフロントサスペンションクロスメンバ12c、両端がフロアフレーム11b後端部の近傍であって、リヤサイドフレーム11eの前端に接続されるフロアクロスメンバ12d、両端がリヤサイドフレーム11eに接続されて、フロアクロスメンバ12dより後方に配置されるリヤサスペンションメンバ12b、両端がリヤサイドフレーム11eの前後方向中間位置に接続されるリヤクロスメンバ12aなどがある。このうち、フロントサスペンションクロスメンバ12aは、前輪W1を懸架するフロントサスペンション3’を支持するためのものである。また、リヤサスペンションメンバ12bは、後輪W2を懸架するリヤサスペンション3(後に詳述する)を支持するためのものである。
【0027】
また、フロアパネル2は、板状の部材であり、図2および図3に示されるように、主に、前席シートおよび後席シートなどを支持し、乗員の居住空間の底面を形成する車室フロア部21と、荷室等の底面を形成する荷室フロア部23と、車室フロア部21および荷室フロア部23の間に設けられて、車両後方に向けて斜めに上昇する傾斜部22とを含む。また、フロアパネル2には、車両を左右対称に分ける中心ラインに沿って車両前後方向に延びるフロアトンネル2aが形成されている。フロアトンネル2aは、断面がハット状を呈し、アンダーボディを補強する部分である。
【0028】
フロアパネル2の下面には、図3に示されるように、サイドシル11d、フロアフレーム11b、サブフロアフレーム11c、リヤサイドフレーム11e、リヤクロスメンバ12aが設置されている。また、フロアパネル2は、フロアクロスメンバ12dが、フロアトンネル2aを横切るように、フロアパネル2の上面側に配置されることによって支持される。
【0029】
図5は、実施の形態1のリヤサイドフレーム11e、リヤクロスメンバ12a、および、リヤサスペンションメンバ12bとの結合部分の構造を概略的に説明するための斜視図である。
【0030】
実施の形態1の車両の後部車体構造は、図4および図5に示されるように、リヤサイドフレーム11eと、リヤサスペンションメンバ12bと、リヤサスペンション3と、リヤクロスメンバ12aとを含む。
【0031】
リヤサイドフレーム11eは、図2および図3に示されるように、前端が、フロアフレーム11bの後端部およびサイドシル11dの後端に接続され、車両後方へ向けて延びるパイプ状の部材である。リヤサイドフレーム11eは、後方側が、車両の後方へ斜め上方に屈曲して、前方側より一段高い位置で略水平に延びている。
【0032】
リヤサスペンションメンバ12bは、上述のように、リヤサスペンション3を支持するために設けられた車幅方向に延びる部材である。本実施の形態のリヤサスペンションメンバ12bは、リヤサスペンション3を支持する支持部12b1と、リヤサイドフレーム11eに連結されるための側端部12b2とから構成されている。側端部12b2は、車両前後方向に略水平に延びる部材であり、支持部12b1の両端部に支持部12b1と一体に設けられ、リヤサイドフレーム11eの前端より一段高くなった荷室フロア部23の下側位置(以下、高段位置という)において、その下面側に対して、ボルトBが締結されることで固定される。また、側端部12b2には、車両の前後方向に延びて、後述のアッパーアーム31aを回転可能に支持するシャフトSHが支持されている(図5では、シャフトSH、ボルトB、ナットNを省略)。また、支持部12b1は、図4に示されるように、車幅方向中央が下方にオフセットするように屈曲して形成されている。
【0033】
リヤサスペンション3は、図3および図4に示されるように、主に、車輪W2およびリヤサスペンションメンバ12bを連結してリンク機構を構成するサスペンションアーム31と、圧縮コイルばねからなり、ばねの伸縮作用で衝撃を吸収するコイルスプリング33と、コイルスプリング33のもどり作用を和らげる、オイルダンパーなどのショックアブソーバ32とから構成されている。このうち、ショックアブソーバ32およびコイルスプリング33については、本実施の形態において、とくに限定されるものではないので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0034】
サスペンションアーム31は、略水平な状態で取り付けられるアッパーアーム31a、ロアーアーム31bなどを含む。本実施の形態では、アッパーアーム31aの一方の端部が、後輪W2のホイールサポートW21に対して回動可能に取り付けられており、アッパーアーム31aの他方の端部が、リヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2のシャフトSHを中心軸として回動可能に取り付けられている。また、ロアーアーム31bの一方の端部が、後輪W2のホイールサポートW21に対して回動可能に取り付けられており、ロアーアーム31bの他方の端部が、リヤサスペンションメンバ12bの支持部12b1に対して回動可能に取り付けられている。アッパーアーム31aおよびロアーアーム31bのリヤサスペンションメンバ12bに対する連結位置については、リヤサスペンションメンバ12bの中央部分が下方へオフセットした状態に形成されているので、上下方向に適宜調整することが可能である。つまり、中央部分が両側端部12b2よりも下方へオフセットした形態のリヤサスペンションメンバ12bを用いることで、リヤサスペンションメンバ12bが、極めて単純な形態であっても、上下に所定距離を置いて配設された複数のサスペンションアーム31a、31bを、それぞれ、適切な位置で支持することが可能となる。リヤサスペンションメンバ12bをこのような形態にすることで、リヤサスペンションメンバ12bの構造を単純化して、車体の軽量化を図ることができる。
【0035】
リヤクロスメンバ12aは、図2および図5に示されるように、角パイプ状の部材であり、車幅方向に延びる本体部12a1と、本体部12a1の左右両端部に本体部12a1と一体に形成され、車両前後方向に拡大した拡大部12a2と、本体部12a1の車幅方向中央部分から車両の前方に延びる前延部12a3とを含む。ここで、前延部12a3は、前端がフロアクロスメンバ12dの車幅方向中央部分に接続されており、後突時に、車両前後方向に大きく変形するのを防ぐ機能を有している。なお、図5では、前延部12a3を省略している。
【0036】
また、本実施の形態において、リヤクロスメンバ12aは、リヤサイドフレーム11eの高段位置(後方側)であって、リヤサスペンションメンバ12bと対応する位置(車両前後方向に略同じ位置)に設けられている。
【0037】
本実施の形態において、拡大部12a2は、本体部12a1から車幅方向外側へ向けて、緩やかに広がるような裾広がりの平面形状を呈している。また、リヤサイドフレーム11eとの接合部分における、拡大部12a2の車両前後方向の拡大度合いは、燃料タンクや荷室の配置状態、要求される剛性等に応じて適宜設定される。
【0038】
拡大部12a2は、リヤサイドフレーム11eの車幅方向内側面に対して溶接等の手段により固定される。拡大部12a2が車両の前後方向に拡大した形態であるため、リヤサイドフレーム11eと拡大部12a2との接合面積が増大する。これによって、リヤサイドメンバ11eからリヤクロスメンバ12aに伝達される荷重は、接続箇所で適度に分散されて伝達され、拡大部12a2によって、局所的に応力が集中するのを避けつつ、リヤサスペンションメンバの設置部を効果的に補強することができる。つまり、このような拡大部12a2によって結合された構造物を変形・破壊する場合には、従来よりも大きな荷重を入力しなければならない。したがって、この拡大部12a2を設けることで、サスペンション3の支持剛性および車体剛性を向上させることができる。このように、剛性を向上させることで、走行時における車体のねじれ等を効果的に防いで操縦安定性を向上させることができる。しかも、拡大部12a2は、車両前後方向に拡大しているので、リヤサイドフレーム11eを、その長手方向に補強する役目も担う。たとえば、リヤクロスメンバ12aの拡大部12aがリヤサイドフレーム11eに接続された箇所において、剛性が高いため、後突時等に、リヤサイドフレーム11eを長手方向に圧縮させるような力が作用した場合には、当該接続箇所での変形を抑え、リヤサイドフレーム11eの変形箇所を制御することができる。
【0039】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2のリヤサイドフレーム11eとリヤクロスメンバ12aとの結合部分の構造を概略的に説明するための斜視図である。図7は、実施の形態2のリヤサイドフレーム11eとリヤサスペンションメンバと12bの結合部分の形態を説明するための断面図である。
【0040】
実施の形態2の車両の後部車体構造は、図6および図7に示されるように、リヤサイドフレーム11eに、リヤサスペンションメンバ12bが連結される部分を形成したものである。なお、リヤクロスメンバ12aの構成および効果については、実施の形態1と同様であるので、ここでの重複する説明を省略する。
【0041】
具体的には、リヤサイドフレーム11eの下側面の一部を、リヤサイドサブフレーム11eの側端部12b2に対応した形状に上方へ凹ませている。この凹みに応じて形成された、上下方向の薄肉部分が、リヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2をリヤサイドフレーム11eに連結するための連結部11e0として使用される。リヤサイドフレーム11eの連結部11e0には、図7に示されるように、ボルトBを上下方向に挿通するためのボルト孔が形成されており、また、リヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2には、車両前後方向に突出し、上下方向に薄い段部A1が形成されている。そして、この段部A1に、ボルトBを上下方向に挿通するためのボルト孔が形成されているとともに、段部A1の下面に、ボルト孔に対応した位置にナットNが予め固定されている。
【0042】
側端部12b2を、連結部11e0に対して締結する際には、側端部12b2が連結部11e0の凹みに嵌め込まれた状態で、ボルトBが、リヤサイドフレーム11eの連結部11e0およびリヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2のボルト孔に挿通されて、ボルトBが側端部12b2のナットNに螺着されることによって、側端部12b2が、連結部11e0に対して締結される(図6では、ボルトBとナットNを省略)。
【0043】
このように、リヤサイドフレーム11eの高段位置の下面側に凹みを形成して、上下方向に薄肉の連結部11e0を形成することによって、側端部12b2は、リヤサイドフレーム11eが上下方向に薄くなった分だけ上方に配置される。また、側端部12b2には、アッパーアーム31aの一端部が、側端部12b2に設けられたシャフトSHを中心軸として回動可能に取り付けられる。すなわち、アッパーアーム31aの一端部をリヤサイドフレーム11eが上下方向に薄くなった分だけ高い位置に取り付けることが可能になる。これによって、アッパーアーム31aの車幅方向のスパンと上下方向の高さを拡大することができ、操縦安定性を向上させることができる。また、リヤサイドフレーム11eの所定の位置に凹みが形成されていることによって、リヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2が、この凹みに嵌め込まれると、支持部12b1が正規の位置に位置決めされる。すなわち、連結部11e0は、リヤサスペンションメンバ12bの位置決め機能をも有する。さらに、リヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2が、凹みにはめ込まれることによって、薄肉の連結部11e0が補強される。
【0044】
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3のリヤサイドフレーム11eとリヤクロスメンバ12aとの結合部分の構造を概略的に説明するための斜視図である。図9は、実施の形態2のリヤサイドフレーム11eとリヤクロスメンバ12aとの結合部分の構造を概略的に説明するための平面図である。図10は、図9のX−X線矢視図である。
【0045】
実施の形態3の車両の後部車体構造は、一対のリヤサイドフレーム11eを、リヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2が設けられる高段位置で、それぞれ、前後に分割したものである。
【0046】
具体的には、各リヤサイドフレーム11eは、高段部において前後に分割されている。そして、前方側の部材の後端部11e1と後方側の部材の前端部11e2との間にリヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2が配置される程度の空間が確保される。
【0047】
また、リヤクロスメンバ12aは、その両端に設けられた拡大部12a2が、平面視で、リヤクロスメンバ12bの端部に向けて分岐した二股形状を呈している。そして、拡大部12a2は、一方がリヤサイドフレーム11eの後端部11e1に対して溶接によって固定され、他方がリヤサイドフレーム11eの前端部11e2に対して溶接によって固定される。こうして、分割されて2部材からなるリヤサイドフレーム11eは、リヤクロスメンバ12aの拡大部12a2を介して一体にされる。
【0048】
さらにリヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2は、上面が、リヤサイドフレーム11eの上面と並ぶように、リヤサイドフレーム11eの後端部11e1と前端部11e2との間の空間に配置される。つまり、リヤクロスメンバ12aの拡大部12a2は、リヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2を挟むようにリヤサイドフレーム11eに対して接続されている。
【0049】
また、本実施の形態の側端部12b2は、平面視で、五角形状を呈している。側端部12b2がリヤサイドフレーム11eの前端部11e2および後端部11e1の間に配置されると、一部が車幅方向内側に突出し、二股形状に分岐した拡大部12a2の間に配置されることになる。これによって、側端部12b2を部分的に拡大部12a2の二股に分岐した部分に入れ込んだ状態で、リヤクロスメンバ12aの車両前後方向のずれを拘束し、剛性を向上させることができる。
【0050】
このような、リヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2と、リヤサイドフレーム11eとの連結は、図9および図10に示されるように、ボルトBとナットNとによってなされる。具体的には、側端部12b2には、上下方向に薄く、車両の前後方向に突出した段部A1が設けられているとともに、リヤサイドフレーム11eの後端部11e1および前端部11e2には、下側に、この段部A1に対応する凹部A2が形成されている。さらに、リヤサイドフレーム11eの後端部11e1および前端部11e2には、ボルトBを上下方向に挿通するためのボルト孔が形成されているとともに、側端部12b2の段部A1にもまた、ボルトBを上下方向に挿通するためのボルト孔が形成されている。また、側端部12b2の下面には、ボルト孔に対応した位置にナットNが予め固定されている。
【0051】
リヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2を、リヤサイドフレーム11eの前端部11e2および後端部11e1に対して締結する際には、側端部12b2の段部A1が後端部11e1および前端部11e2の凹部A2に対応した当接した状態で、ボルトBが、リヤサイドフレーム11eの後端部11e1および前端部11e2のボルト孔に挿通される。さらに、ボルトBは、リヤサスペンションメンバ12の側端部12b2の段部A1に形成されたボルト孔に挿通されて、ボルトBが側端部12b2のナットNに螺合することによって、リヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2が、リヤサイドフレーム11eの後端部11e1および前端部11e2に対して締結される(図8では、ボルトBおよびナットNを省略)。
【0052】
こうして、前後に分割されたリヤサイドフレーム11eをリヤクロスメンバ12aの拡大部12a2で連結するとともに、前後に分割されたリヤサイドフレーム11eの間にリヤサスペンションメンバ12bが配設されて、リヤサイドフレーム11e、リヤサスペンションメンバ12b、および、リヤクロスメンバ12aの連結状態における剛性と、これら3部材の組み付け易さとが確保される。
【0053】
このように、リヤサイドフレーム11eが前後に分断されて、リヤサイドフレーム11eの後端部11e1および前端部11e2の間にリヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2を配設することで、リヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2は、リヤサイドフレーム11eの上下方向の厚さ分だけ上方に配置されることになる。また、側端部12b2には、アッパーアーム31aの一端部が、側端部12b2に設けられたシャフトSHを中心軸として回動可能に取り付けられる。すなわち、アッパーアーム31aの一端部をリヤサイドフレームの上下方向の厚さ分だけ高い位置に取り付けることが可能になる。これによって、アッパーアーム31aの車幅方向のスパンと上下方向の高さを拡大することができ、操縦安定性を向上させることができる。
【0054】
以上の実施の形態によれば、リヤサスペンションメンバ12bに対応する位置にリヤクロスメンバ12aが設けられているとともに、このリヤクロスメンバ12aは、両端部に、リヤサイドフレーム11eとの接続部分において車両前後方向に拡大した拡大部12a2を含んでいる。リヤクロスメンバ12aとリヤサイドフレーム11eとの接続部分では、リヤサスペンションメンバ12bからリヤサイドフレーム11eに対して加わった力、あるいは、リヤサイドフレーム11eに対して直接加わった力がリヤクロスメンバ12aに伝達される際に、この拡大部12a2によって、局所的に応力が集中するのを避けつつ、リヤサスペンションメンバ12bの設置部を効果的に補強することができる。つまり、このような拡大部12a2によって結合された構造物を変形・破壊する場合には、従来よりも大きな荷重を入力しなければならない。したがって、サスペンション3の支持剛性および車体剛性を簡単な構成で効果的に向上させることができる。
【0055】
なお、上記実施の形態では、リヤクロスメンバ12aの本体部12a1と拡大部12a2とが一部材で形成されている形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本体部12a1と拡大部12a2とを別部材とし、これらを一体にすることによってリヤクロスメンバ12aが構成される形態であってもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、リヤクロスメンバ12aとして、本体部12a1の、車幅方向略中央部から、車両前方へ向けて延びるトンネル状の前延部12a3が設けられている形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前延部12a3が省略された形態であってもよい。
【0057】
また、上記実施の形態3では、側端部12b2の平面形状を五角形状にして、車幅方向内側に一部を突出させて、側端部12b2を部分的に、拡大部12a2の二股に分岐した部分に入れ込んだ状態で、拡大部12a2の前後方向のずれを拘束して、剛性を向上させた形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、側端部12b2を、平面視で車幅方向内側に突出していない形態とし、拡大部12a2の分岐した部分の間に空間を確保する形態であってもよい。この場合には、リヤサスペンションメンバ12bの側端部12b2と、リヤサイドフレーム11eの後端部11e1および前端部11e2と、リヤクロスメンバ12aの拡大部12a2との結合部分の軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0058】
11e リヤサイドフレーム
11e0 連結部
11e1 後端部
11e2 前端部
12a リヤクロスメンバ
12a2 拡大部
12b リヤサスペンションメンバ
12b2 側端部
3 リヤサスペンション
32 アッパーアーム



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームと、
該一対のリヤサイドフレームに両側端部が連結されて、前記一対のリヤサイドフレームを車幅方向に接続するように設けられるリヤサスペンションメンバと、
該リヤサスペンションメンバによって支持されて、後輪を懸架するリヤサスペンションと、
前記リヤサスペンションメンバに対応する位置で、前記左右一対のリヤサイドフレームの間を接続するリヤクロスメンバとを有し、
前記リヤクロスメンバは、両端部に、前記リヤサイドフレームとの接続部分において車両前後方向に拡大した拡大部を有することを特徴とする車両の後部車体構造。
【請求項2】
前記リヤサイドフレームには、前記リヤクロスメンバが接続される位置の下側面に凹みが形成されて、上下方向に薄くなる連結部が形成され、
該連結部に前記リヤサスペンションメンバの側端部が取り付けられる請求項1記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
前記連結部に取り付けられた前記リヤサスペンションメンバの前記側端部に対して、前記リヤサスペンションのアッパーアームが取り付けられている請求項2記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
前記リヤサイドフレームが前後に分割され、後方のリヤサイドフレームの前端部および前方のリヤサイドフレームの後端部の間に、前記リヤサスペンションメンバの側端部が配設されるとともに、
前記後方のリヤサイドフレームの前端部および前記前方のリヤサイドフレームの後端部が、前記リヤクロスメンバの前記拡大部によって連結されている請求項1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
前記拡大部が、平面視で、前記リヤクロスメンバの端部に向けて分岐した二股形状を呈し、前記リヤサスペンションメンバの側端部を挟むように前記リヤサイドフレームに対して接続されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項6】
前記リヤサスペンションメンバの車幅方向中央部分が、両側端部より下方にオフセットした状態に形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−234939(P2010−234939A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84206(P2009−84206)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】