車両の折り畳み式シート装置
【課題】シートの折り畳み状態では,シートクッション及びシートバック間から無駄な空間を排除して,シート全体をコンパクトにする。
【解決手段】シートクッション4は,その前後左右面に沿って延びていてクッション格納機構5が連結されるクッションフレーム14を有し,またシートバック6は,その上下左右面に沿って延びていてリクライニング機構7が連結されるバックフレーム17を有し,クッション格納機構5は,シートクッション4の使用位置Aではクッションフレーム14を前方上向きの傾斜状態に保持し,格納位置Bではクッションフレーム14を略水平状態に保持するように構成され,リクライニング機構7は,シートバック6の倒伏位置Dでは,前記バックフレーム17を略水平状態に保持するように構成される。
【解決手段】シートクッション4は,その前後左右面に沿って延びていてクッション格納機構5が連結されるクッションフレーム14を有し,またシートバック6は,その上下左右面に沿って延びていてリクライニング機構7が連結されるバックフレーム17を有し,クッション格納機構5は,シートクッション4の使用位置Aではクッションフレーム14を前方上向きの傾斜状態に保持し,格納位置Bではクッションフレーム14を略水平状態に保持するように構成され,リクライニング機構7は,シートバック6の倒伏位置Dでは,前記バックフレーム17を略水平状態に保持するように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,車体のフロア上に取り付けられるシート支持台と,シートクッションと,前記シート支持台及びシートクッション間に設けられて,シートクッションを使用位置から,その使用位置より低く且つ後方の格納位置へと移動させ得るクッション格納機構と,前記シートクッションの上方へ起立する起立位置及び,前記シートクッション上に重なる倒伏位置間を回動し得るように前記シート支持台に支持されるシートバックと,前記シート支持台及びシートバック間に設けられて,該シートバックを起立位置及び倒伏位置に選択的に保持し得るリクライニング機構と,前記シートバックの起立位置から倒伏位置への回動に連動して前記シートクッションを使用位置から格納位置へと移動させるように,前記リクライニング機構及び前記クッション格納機構間を連結する連動機構とよりなる,車両の折り畳み式シート装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝる車両の後部の折り畳み式シート装置は,下記特許文献1に開示されるように,既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−223474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のかゝる車両の折り畳み式シート装置では,クッション格納機構がシートクッションを使用位置から格納位置へと移動させるとき,シートクッションを平行移動させるようになっている。ところで,一般にシートクッションは,乗員の座りの安定性を考慮してその上面を前上がりに傾斜させているので,これをそのまゝ格納位置へ平行移動させると,その傾斜した上面にシートバックを倒伏させたとき,シートクッション及びシートバック間に無駄な空間ができてしまい,シートの折り畳み状態でのコンパクト化が阻害されることになる。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,シートクッションを格納位置に,シートバックを倒伏位置にそれぞれ保持したシートの折り畳み状態では,シートクッション及びシートバック間から無駄な空間を排除して,シート全体をコンパクトし,しかもシートバックの背面を荷物の積載面に有効利用し得る,車両の折り畳み式シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために,本発明は,車体のフロア上に取り付けられるシート支持台と,シートクッションと,前記シート支持台及びシートクッション間に設けられて,シートクッションを使用位置から,その使用位置より低く且つ後方の格納位置へと移動させ得るクッション格納機構と,前記シートクッションの上方へ起立する起立位置及び,前記シートクッション上に重なる倒伏位置間を回動し得るように前記シート支持台に支持されるシートバックと,前記シート支持台及びシートバック間に設けられて,該シートバックを起立位置及び倒伏位置に選択的に保持し得るリクライニング機構と,前記シートバックの起立位置から倒伏位置への回動に連動して前記シートクッションを使用位置から格納位置へと移動させるように,前記リクライニング機構及び前記クッション格納機構間を連結する連動機構とよりなる,車両の折り畳み式シート装置において,前記シートクッションは,その前後左右面に沿って延びていて前記クッション格納機構が連結されるクッションフレームを有し,また前記シートバックは,その上下左右面に沿って延びていて前記リクライニング機構が連結されるバックフレームを有し,前記クッション格納機構は,前記シートクッションの使用位置では前記クッションフレームを前方上向きの傾斜状態に保持し,格納位置では前記クッションフレームを略水平状態に保持するように構成され,前記リクライニング機構は,前記シートバックの倒伏位置では,前記バックフレームを略水平状態に保持するように構成されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記シートクッションを格納位置に,前記シートバックを倒伏位置にそれぞれ移動したシートの折り畳み状態では,前記クッションフレームの左右両側部と前記バックフレームの左右両側部とが平面視で重なるように,これらクッションフレーム及びバックフレームが構成されることを第2の特徴とする。
【0008】
さらに本発明は,第1の特徴に加えて,前記クッション格納機構は,一端部が第1ピボットを介して前記シート支持台に,他端部が第2ピボットを介して前記クッションフレームの前端部側面にそれぞれ連結される前部揺動アームと,この前部揺動アームの後方で一端部が第3ピボットを介して前記シート支持台に,他端部が第4ピボットを介して前記クッションフレームの後端部側面にそれぞれ連結される,前記前部揺動アームより有効長が短い後部揺動アームとよりなり,前記第2揺動アームを略鉛直な起立姿勢から後方への倒れ姿勢に回動すると共に,後部揺動アームを前方への張り出し姿勢から垂下姿勢に回動することにより,前記クッションフレームを略水平状態にした前記シートクッションの格納位置を得るようにしたことを第3の特徴とする。
【0009】
さらにまた本発明は,第3の特徴に加えて,前記シートクッションの使用位置では,前記第2ピボットの中心が前記クッションフレームの側部の中心軸線より上方へオフセットして配置される一方,前記第4ピボットの中心が前記クッションフレームの側部の中心軸線より下方へオフセットして配置されることを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の特徴によれば,シートクッションを格納位置に,シートバックを倒伏位置にそれぞれ保持したシートの折り畳み状態では,クッションフレーム及びバックフレームは共に略水平状態に保持されることで,両フレームは相互に略平行して最接近することになり,これによりシートクッション及びシートバック間から無駄な空間を排除しながらシート全体をコンパクトに折り畳むことができる。しかもシートバックの背面が略水平な荷物積載面として有効利用することができ,荷物の積載性が向上する。
【0011】
本発明の第2の特徴によれば,シートの折り畳み状態では,クッションフレームの左右両側部とバックフレームの両側部とが平面視で重なることにより,シートを一層コンパクトに折り畳むことができるのみならず,シートバックの背面への荷物の積載時,その重量を両フレームにより強固に支持することができる。
【0012】
本発明の第3の特徴によれば,略鉛直な起立姿勢から後方への倒れ姿勢へと回動する後部揺動アームの有効長は,前方への張り出し姿勢から垂下姿勢へと回動する前部揺動アームの有効長より短くなっているから,第2ピボットは後方及び下方へ大きく移動するのに対して,第4可動ピボットの下方への移動量は,前部可動ピボットのそれより小さく,後方への移動量は第2可動ピボットのそれと略等しくなり,その結果,シートクッションの使用位置において前上がり傾斜のクッションフレームを,格納位置では略水平状態とすることができる。
【0013】
本発明の第4の特徴によれば,第2ピボットの中心がクッションフレームの側部の中心軸線より上方へオフセットした分,前部揺動アームの有効長が長くなるので,シートクッションが格納位置に向かうとき,第2ピボットの後方及び下方への移動量が増加し,また第4ピボットの中心がクッションフレームの側部の中心軸線より下方へオフセットした分,シートクッションが格納位置に向かうとき,第4ピボットの後方移動限界が後方へ移行することになり,以上の結果,シートクッションの使用位置では前上がり傾斜のクッションフレームを,格納位置では,略水平状態にしつゝ充分に下方及び後方へ移動させることが可能となり,シートクッションの格納性の向上に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車の折り畳み式シートの斜視図。
【図2】上記折り畳み式シートの内部構造を示す斜視図。
【図3】上記折り畳み式シートにおける外側シート支持台及びその周辺部を外側から見た斜視図。
【図4】上記外側シート支持台及び前部揺動アームを内側から見た斜視図。
【図5】内側シート支持台及び前部揺動アームを内側から見た斜視図。
【図6】図2の6矢視図。
【図7】図6の7−7線断面図。
【図8】図6の8−8線拡大断面図。
【図9】図6の9−9線拡大断面図。
【図10】図6の9−9線拡大断面図。
【図11】図6のリクライニング機構部拡大図。
【図12】上記リクライニング機構のロック解除作用説明図。
【図13】上記シートの折り畳み状態を示す側面。
【図14】図13中のリクライニング機構部の拡大図。
【図15】チャイルドシート用取り付け環を示すバックフレームの下部斜視図。
【図16】本発明の別の実施形態をシートの折り畳み状態で示す側面図。
【図17】本発明の更に別の実施形態の折り畳み式シートを示す斜視図。
【図18】本発明の更にまた別の実施形態を示す,図9との対応図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。以下の説明において,前後,左右とは,本発明の折り畳み式シートを設置する自動車を基準にしていうものとする。
【0016】
先ず,図1,図7及び図13において,自動車の車体は,左右のサイドシルS,Sと,これらサイドシルS,Sの各外側縁から立ち上がって,図示しない左右の後輪を覆う一対のリアホイールハウスH,Hとを有しており,左右のサイドシルS,S間には,それらの上面を含むフロアFが形成され,このフロアF上に,本発明に係る左右一対の折り畳み式シート1,1が配設される。
【0017】
上記フロアFは,リアホイールハウスH,Hの根元に連なっていて前後方向に延びる幅狭の高所面Fa,Faと,これら高所面Fa,Fa間に形成される幅広の低所面Fbとが形成され,その低所面Fbは,高所面Fa,Fa間に形成される凹部Frの底面Fbとなっている。高所面Faは,前端側が前下がりに傾斜していて全席側のフロアFの一般面Fcに連なっており,また上記凹部Frは前方に向かって浅くなっていて,その底面Fbも上記一般面Fcに連なっている。また高所面Fa及び低所面Fb間の段部の前部には膨出部Pが形成されており,この膨出部Pは,その外側の凹部によってリアサスペンション機構(図示せず)の支持部を収容,保持するようになっている。
【0018】
図1及び図2に示すように,左右一対の折り畳み式シート1,1は対称的に構成される。各シート1は,高所面Fa及び低所面Fbにそれぞれ取り付けられる外側及び内側シート支持台2,2′と,凹部Frの上方に配設されるシートクッション4と,外側及び内側シート支持台2,2′とシートクッション4との各間を連結するクッション格納機構5,5と,シートクッション4の後端部近傍で外側及び内側シート支持台2,2′に支持されるシートバック6と,外側及び内側シート支持台2,2′とシートバック6との各間を連結するリクライニング機構7と,このリクライニング機構7及び前記クッション格納機構5間を連結する連動機構8とよりなっている。
【0019】
図3〜図6に示すように,上記クッション格納機構5は,シートクッション4を使用位置A(図6,図7参照)と格納位置B(図7,図13参照)とに交互に保持し得るもので,その使用位置Aでは,シートクッション4の底部4aが高所面Faより上方に位置し,格納位置Bでは,少なくとも同底部4aが高所面Faより下方の低所面Fbに近接した位置を占めるようになっている。
【0020】
また上記リクライニング機構7は,シートバック6を起立位置(図1,図6参照)と倒伏位置D(図1,図13参照)とに交互に保持し得るもので,その起立位置Cでは,シートバック6は,シートクッション4の後端部近傍からやゝ後方上向きに起立し,倒伏位置Dでは,シートバック6は,シートクッション4の上面に重なるようになっている。また上記連動機構8は,シートバック6の起立位置C及び倒伏位置D間での回動に連動してシートクッション4を使用位置A及び格納位置B間で移動させるようになっている。これらの詳細については後述する。尚,シートバック6を倒伏位置Dに倒すと共に,シートクッション4を格納位置Bに下げた状態をシート1の折り畳み状態という。
【0021】
図2に明示するように,左右の内側シート支持台2,2′は,低所面Fbの左右方向中央部に相互に近接して配設される。図2〜図7に示すように,外側及び内側シート支持台2,2′は,前部支持部材10,10′と,その後方に配置される後部支持部材11,11′と,これら前部及び後部支持部材10,10′;11,11′間を連結する連結部材12,12′とでそれぞれ構成される。前部支持部材10,10′は,水平なベース壁10a,10a′と,このベース壁10a,10a′の内側端から上方へ屈曲して起立した支持壁10b,10b′よりなっており,そのベース壁10a,10a′は,対応する高所面Fa及び低所面Fbにそれぞれボルト結合される。後部支持部材11,11′は,上記ベース壁10a,10a′より広い水平なベース壁11a,11a′と,このベース壁11a,11a′の一側端から,支持壁10b,10b′より高く上方へ屈曲して起立した支持壁11b,11b′よりなっており,そのベース壁11a,11a′は,対応する高所面Fa及び低所面Fbにそれぞれボルト結合される。内側シート支持台2′の前部及び後部支持部材10′,11′は,外側シート支持台2の前部及び後部支持部材10,11より,低所面Fb及び高所面Fa間の段差分だけ上下方向に長く形成される。これにより,外側シート支持台2とシートクッション4との間を連結するシートクッション格納機構5と,内側シート支持台2′とシートクッション4との間を連結するシートクッション格納機構5とを同一寸法に且つ対称的に構成することを可能にする。
【0022】
シートクッション4は,その前後左右面に沿って金属パイプ材を四辺形に曲げてなるフレーム14(以下,クッションフレーム14という。)を有しており,その左右両側部の前部外側面には前部ブラケット15,15が溶接され,また後側の左右の角部には後部ブラケット16,16が溶接される。前部ブラケット15は前後方向に長く延びていて,その長手方向中間には外方膨出部15aが形成される。また後部ブラケット16は,前後方向に延びてクッションフレーム14の外側面に溶接される前半部と,左右方向に延びてクッションフレーム14の後側面に溶接される後半部とでL字状に形成されており,その前半部の後端部には外方膨出部16aが形成される。これら前部及び後部ブラケット15,16によりクッションフレーム14は効果的に補強される。
【0023】
またシートバック6も,その上下左右面に沿って金属パイプを四辺形に曲げてなるフレーム17(以下,バックフレーム17という。)を有しており,その左右両側面の下部に側部ブラケット18,18が溶接される。
【0024】
上記クッションフレーム14及びバックフレーム17は,シート1の折り畳み状態では,クッションフレーム14の左右両側部とバックフレーム17の左右両側部とが平面視で重なるように,これらクッションフレーム14及びバックフレーム17の左右方向幅W1,W2(図7参照)が互いに略等しく設定される。
【0025】
図3〜図10において,前記シートクッション格納機構5は,前部支持部材10,10′の支持壁10b,10b′及び前部ブラケット15,15間を連結する前部揺動アーム19,19と,後部支持部材11,11′の支持壁11b,11′b及び後部ブラケット16,16間を連結する後部揺動アーム20,20とで構成される。各前部揺動アーム19は,その一端部が固定ピボット21を介して前部支持部材10,10′に,また他端部が前部可動ピボット22を介して前部ブラケット15にそれぞれ前後且つ上下方向に回動可能に連結される。また後部揺動アーム20は,その一端部が主軸23を介して後部支持部材11,11′の支持壁11b,11b′に,また他端部が後部可動ピボット24を介して後部ブラケット16にそれぞれ前後且つ上下方向に回動可能に連結される。主軸23は上記支持壁11b,11b′に固着されている。以上において,各後部揺動アーム20の有効長,即ち主軸23及び後部可動ピボット24間の軸間距離は,各前部揺動アーム19の有効長,即ち固定ピボット21及び前部可動ピボット22間の軸間距離より短く設定される。
【0026】
前部揺動アーム19の下端部を支持する固定ピボット21は,支持部材10a,10a′に固着されるリベットで構成される。
【0027】
また前部揺動アーム19の上端を支持する前部可動ピボット22は,前記前部ブラケット15の外方膨出部15aを貫通してその内壁に頭部22aが溶接又はかしめにより固着されるボルトで構成され,これにより前部可動ピボット22の支持剛性が強化される。この前部可動ピボット22の先端部にナット26を螺着することで前部揺動アーム19の上端部が取り付けられる。その際,前部可動ピボット22は,その中心がクッションフレーム14を構成するパイプ材の中心軸線Yより上方へ一定距離f1オフセットするように配置される(図6及び図8参照)。
【0028】
また後部揺動アーム20の前端部を支持する後部可動ピボット24は,前記後部ブラケット16の外方膨出部16aを貫通してその内壁に頭部24aが溶接又はかしめにより固着されるボルトで構成され,これにより後部可動ピボット24の支持剛性が強化される。この後部可動ピボット24の先端部にナット27を螺着することで後部揺動アーム20の前端部が取り付けられる。その際,後部可動ピボット24は,その中心がクッションフレーム14を構成するパイプ材の中心軸線より下方へ一定距離f2オフセットするように配置される(図6及び図10参照)。
【0029】
各ブラケット15,16の外方膨出部15a,16aは,各可動ピボット22,24の支持剛性を強化するのみならず,前部及び後部揺動アーム19,20の回動時,これら前部及び後部揺動アーム19,20とクッションフレーム14との干渉を回避するディスタンスピースの機能をも持つことにもなる。
【0030】
而して,図2〜図6に示すように,シートクッション4の使用位置Aは,前部揺動アーム19を固定ピボット21の上方へ略鉛直状態に起立(図示例では,固定ピボット21の後方へ僅かに傾斜している。)させると共に,後部揺動アーム20を主軸23の前方へ略水平に倒すことにより,シートクッション4の底部4aが高所面Faより高位置を占めるように制御される。このとき前部揺動アーム19の前方への回動限界を規制するための第1移動規制手段28がクッション格納機構5に設けられる。
【0031】
具体的には,第1移動規制手段28は,各シート支持台2,2′と各前部揺動アーム19,19との間に設けられる。より具体的には,第1移動規制手段28は,前部支持部材10,10′の支持壁10b,10b′に切り起こされたストッパ部28で構成され,そのストッパ部28が各前部揺動アーム19の前縁部を受け止めて前部揺動アーム19の前方への回動限界を規制するようになっている。このシートクッション4の使用位置Aでは,クッションフレーム14は,前方上向きに傾斜した状態に保持される。したがって,シートクッション4の上面も前方上向きに傾斜となる。
【0032】
また図13に示すように,シートクッション4の格納位置Bでは,前部揺動アーム19を固定ピボット21の後方へ略水平状態に回動する(図示例では,前部可動ピボット22側を僅かに上向きにする。)と共に,後部揺動アーム20を主軸23の略直下へ(図示例では,主軸23の下方且つやゝ後方へ)回動することにより,シートクッション4の底部4aが低所面Fbに近接した低位置を占めるように,即ち凹部Fr内に受容されるように制御される。
【0033】
このとき前部揺動アーム19の下方への回動限界を規制するための第2移動規制手段が外側シート支持台2及びそれに対応する前部揺動アーム19間,並びに内側シート支持台2′及びそれに対応する前部揺動アーム19間に設けられる。具体的には,第2移動規制手段は,前部揺動アーム19から屈曲させたストッパ部29(図4参照)と,外側シート支持台2の連結部材12に形成された内向きストッパ部30とで構成され,これらストッパ30及びストッパ部29が相互に当接することにより,前部揺動アーム19の下方への回動限界を規制するようになっており,また内側シート支持台2′における前部支持部材10′の支持壁10b′に切り起こされたストッパ部31(図5参照)で構成され,これに前部揺動アーム19の下側縁部が当接することにより,前部揺動アーム19の下方への回動限界を規制するようになっている。このような前部揺動アーム19の下方回動限界の規制により,前部可動ピボット22の中心は,固定ピボット21及び後部可動ピボット24の中心間を結ぶ直線Lを下方へ超えないように設定される。即ち,前部可動ピボット22の中心は,直線Lの上方で下降が阻止される。
【0034】
こゝで,クッション格納機構5は,シートクッション4を格納位置Bに下ろしたとき,シートクッション4の底部,特にクッションフレーム14の一部を高所面Faより低い位置まで下ろすように,且つクッションフレーム14を低所面Fbと同様に略水平状態に保持するように構成される。
【0035】
図7に示すように,シートクッション4の底面には,これが格納位置Bに来たとき,前記膨出部Pとの干渉を避ける逃げ4bが設けられる。
【0036】
図6,図9,図11及び図12において,リクライニング機構7は,シートバック6の左右の側部ブラケット18,18の外側面に複数のボルト34により固着される左右一対のリクライニングベース35,35とを備える。これらリクライニングベース35は,内,外側の後部支持部材11,11′の支持壁11b,11b′の内側面に重ねられると共に,各支持壁11b,11b′に固設された前記主軸23に回動可能に支持される。外側の後部支持部材11の支持壁11bには,その内側面より突出するストッパピン36が固設される一方,外側のリクライニングベース35には,主軸23と同心の円弧状をなして上記ストッパピン36と係合する長孔37が設けられ,ストッパピン36が長孔37の一方の内端壁に当接することによりシートバック6の起立位置C(図11参照)が規制され,ストッパピン36が長孔37の他方の内端壁に当接することによりシートバック6の倒伏位置D(図14参照)が規制されるようになっており,このときバックフレーム17及びシートバック6の背面は略水平状態に保持される。
【0037】
また外側のリクライニングベース35の外側面には,それと協働して上記支持壁11bを挟むように配置される補助ベース38が固着されており,この補助ベース38も前記主軸23に回動可能に支持される。
【0038】
補助ベース38及び主軸23には,補助ベース38を介してシートバック6を前方への倒伏方向へ付勢する倒伏ばね39が縮設される。この倒伏ばね39は,主軸23周りに配設されるゼンマイばねで構成され,その内端は主軸23に係止され,外端は補助ベース38に形成される係止爪40に係止される。
【0039】
外側の後部支持部材11の支持壁11bの上部外周面は,主軸23を中心とする円弧面に形成されると共に,その外周面にはロック溝33が形成される。一方,補助ベース38は,主軸23と,この主軸23の上方に配置されてリクライニングベース35及び補助ベース38を貫通する支軸41との二軸によりリクライニングベース35に固着されており,リクライニングベース35及び補助ベース38間において,上記ロック溝33に係脱し得るロックレバー42が上記支軸41に揺動可能に支持される。このロックレバー42は,シートバック6が前記起立位置Cに起こされたとき,ロック溝33に係合することにより,シートバック6を起立位置Cにロックする。このロックレバー42は,その上面より突出するレリーズアーム43を一体に有する。
【0040】
さらにリクライニングベース35には,ロックレバー42側から上方に向かって順に配置されるロック制御レバー44及び駆動レバー45が支軸46及び支軸47をそれぞれ介して回動可能に支持される。
【0041】
ロック制御レバー44は,ロックレバー42側に突出する押えアーム44aと,レリーズアーム43に対向するレリーズカム44bと,駆動レバー45側に突出する従動アーム44cとよりなっており,押えアーム44aは,ロック溝33に係合したロックレバー42の背面を押圧して,その係合状態に保持することができ,またレリーズカム44bは,レリーズアーム43を押圧,回動してロックレバー42をロック溝33から離脱させることができる。従動アーム44cの側面には従動ピン48が突設されている。
【0042】
駆動レバー45は,支軸47の下方に突出するロアアーム45aと,支軸47の前方に突出するアッパアーム45bとよりなっており,ロアアーム45aには,前記従動ピン48が係合する屈曲長孔状の駆動溝49が設けられる。この駆動溝49は,アッパアーム45bが下向きに回動するとき(図11参照),従動ピン48を介してロック制御レバー44をロックレバー42のロック方向へ回動し,またアッパアーム45bが上向きに回動するとき(図12参照),従動ピン48を介してロック制御レバー44をロックレバー42のロック解除方向へ回動するようになっており,上記アッパアーム45bと前記補助ベース38との間に,アッパアーム45bを下向きに回動付勢するロックばね50が縮設される。このロックばね50はコイルばねで構成され,その一端は補助ベース38の接続片51に接続され,その他端は,アッパアーム45bの接続孔52に接続される。またアッパアーム45bには,ロックばね50の付勢力に抗してアッパアーム45bを上向きに回動させ得るレリーズ操作ワイヤ54が接続される。このレリーズ操作ワイヤ54は,リクライニングベース35の上端部にワイヤ支持片55を介して支持されるガイドチューブ56に案内されてシートバック6の背面側に引き出され,その外端には,これを牽引操作するためのストラップ57(図6)が付設される。
【0043】
而して,シートバック6を使用位置Aに起こした状態では,図11に示すように,ロックばね50の付勢力により,駆動レバー45のアッパアーム45bが下向きに回動し,駆動溝49により従動ピン48を介してロック制御レバー44をロックレバー42のロック方向に回動する。即ち,ロック制御レバー44の押えアーム44aがロックレバー42の背面を押圧して,ロックレバー42を,後部支持部材11のロック溝33との係合状態に保持し,これによりシートバック6は使用位置Aにロックされる。図12に示すように,前記ストラップ57によりレリーズ操作ワイヤ54を牽引すると,駆動レバー45のアッパアーム45bがロックばね50の付勢力に抗して上向きに回動し,駆動溝49により従動ピン48を介してロック制御レバー44をレリーズ方向へ回動する。即ちロックレバー42は,押えアーム44aをロックレバー42の背面から後方へ逃がすと共に,レリーズカム44bがロックレバー42のレリーズアーム43を押圧して,ロックレバー42をロック溝33から離脱させる。その結果,シートバック6は,倒伏ばね39の付勢力により前方へ回動して,シートクッション4の上面に重なる倒伏位置Dに到達する。この倒伏位置Dは,前述のように,後部支持部材11のストッパピン36がリクライニングベース35の長孔37の前方内端壁に当接することによりが規制され,バックフレーム17及びシートバック6の背面は略水平状態となる。
【0044】
シートバック6を倒伏位置Dから起立位置Cへ戻す際には,シートバック6を倒伏ばね39の付勢力に抗して引き起す。この間にレリーズ操作ワイヤ54の牽引を解放しておけば,ロックばね50の付勢力の作用によりロックレバー42がロック溝33に係合してシートバック6を起立位置Cに自動的に保持することができる。この起立位置Cは,前述のように,後部支持部材11のストッパピン36がリクライニングベース35の長孔37の後方内端壁に当接することによりが規制される。
【0045】
図3及び図9において,内外両側の後部揺動アーム20,20は,両側の後部支持部材11,11′支持壁11b,11b′からそれらの内側方へ所定距離eオフセットして配置される。そして各後部揺動アーム20と,上記支持壁11b,11b′の内側面に重ねられる各リクライニングベース35との各間を連動機構8が一体的に連結する。その際,上記所定距離eは,前記後部可動ピボット24の後部揺動アーム20外側面からの突出量より大きく設定される。
【0046】
具体的には,連動機構8は,各リクライニングベース35からその内側方へ屈曲して上記所定距離e延びるスペーサ片部58で構成され,このスペーサ片部58の内端から後部揺動アーム20が屈曲して形成される。これらリクライニングベース35,スペーサ片部58及び後部揺動アーム20は,単一の板材よりプレス成形される。尚,リクライニングベース35,スペーサ片部58及び後部揺動アーム20は,これらを分割して製作した後,溶接等により一体に結合することもできる。何れの場合においても,主軸23は,リクライニングベース35及び後部揺動アーム20に共通する枢軸となる。
【0047】
而して,連動機構8は,リクライニングベース35がシートバック6と共に起立するとき,それに連動して後部揺動アーム20を主軸23前方へ張り出させ,またリクライニングベース35がシートバック6と共に前方へ倒伏するとき,それに連動して後部揺動アーム20を主軸23の下方へ回動するように作動する。
【0048】
以上において,クッションフレーム14に溶接されるブラケット15,16は,クッションフレーム14と一体化されることで,実質上,クッションフレーム14の一部となり,またバックフレーム17に溶接されるブラケット18,65もバックフレーム17と一体化されることで,実質上,クッションフレーム14の一部となる。
【0049】
この折り畳み式シート1の作用について説明する。
【0050】
図11に示すように,シートバック6がリクライニング機構7により起立位置Cにロックされると,シートクッション格納機構5においては,リクライニングベース35に連結した後部揺動アーム20が主軸23の前方へ張り出した姿勢を取ると共に,前部揺動アーム19が略鉛直方向に起立した姿勢を取ることによりシートクッション4を,図6に示すように,フロアFの高所面Faより上方の,且つ上面が前上がり傾斜の使用位置Aに保持することができる。したがって,このシート1には乗員が通常通り安定良く座ることができる。
【0051】
このようなシートクッション4の使用位置Aでは,クッション格納機構5の前部揺動アーム19は,第1移動規制手段28,即ち前部支持部材10,10′のストッパ部28に当接することにより,前方への回動限界が規制されるので,使用状態のシート1に前向きの大なる荷重が作用した場合には,その荷重は,ロック状態のリクライニング機構7と,クッション格納機構5の第1移動規制手段28とに分散して支承されることになる。したがってリクライニング機構7の荷重負担を軽減させて,その大型化を回避しながら,シート1を使用状態に強固に保持することができる。
【0052】
次に,リクライニング機構7のロック状態を解除して,シートバック6を倒伏ばね39の付勢力により倒伏位置Dに向かって前方へ倒伏させる(図14参照)と,同時にリクライニングベース35も前方へ倒伏し,それに連動してシートクッション格納機構5の後部揺動アーム20が主軸23の下方へ回動しながら,後部可動ピボット24を介してクッションフレーム14の後端部を下方且つ後方へ引き寄せるため,それに伴ない前部揺動アーム19が略鉛直な起立姿勢から固定ピボット21周りに後方へ回動していき,これにより図13に示すように,シートクッション4は全体的に後方且つ下方へ,即ち格納位置Bに向かって移動していき,その格納位置Bは,前部揺動アーム19が内側及び外側シート支持台2,2′のストッパ30,31に当接することにより規制される。
【0053】
ところで,略鉛直な起立姿勢から後方への倒れ姿勢へと回動する後部揺動アーム20の有効長は,前方への張り出し姿勢から垂下姿勢へと回動する前部揺動アーム19の有効長より短くなっているから,前部可動ピボット22は後方及び下方へ大きく移動するのに対して,後部可動ピボット24の下方への移動量は,前部可動ピボット22のそれより小さく,後方への移動量は前部可動ピボット22のそれと略等しい。その結果,シートクッション4の使用位置Aにおいて前上がり傾斜のクッションフレーム14は,格納位置Bでは略水平状態となる。
【0054】
しかも,シートクッション4の使用位置Aでは,前部可動ピボット22の中心がクッションフレーム14の側部の中心軸線Yより上方へ一定距離f1オフセットした位置を占める一方,後部可動ピボット24の中心がクッションフレーム14の側部の中心軸線Yより下方へ一定距離f2オフセットした位置を占めるので,前部可動ピボット22の中心がクッションフレーム14の側部の中心軸線Yより上方へオフセットした分,前部揺動アーム19の有効長が長くなり,また後部可動ピボット24の中心がクッションフレーム14の側部の中心軸線Yより下方へオフセットした分,シートクッション4が格納位置Bに向かうとき,後部可動ピボット24の後方移動限界が後方へ移行することになり,シートクッション4の格納位置Bをより下方且つ後方に移行させることができる。
【0055】
以上により,シートクッション4は,その底部4aがフロアFの凹部Fr内に収められる。換言すれば,シートクッション4は,その底部4aを,フロアFの高所面Faより低い低所面Fbへの近接位置に保持され,シートクッション4の格納性が向上する。
【0056】
一方,シートバック6は,シートクッション4が格納位置Bに到達すると同時に倒伏位置Dに到達するもので,その倒伏位置Dは,後部支持部材11のストッパピン36がリクライニングベース35の長孔37の前方内端壁に当接することによりが規制される。
【0057】
ところで,倒伏位置Dのシートバック6は,バックフレーム17を略水平にしながら,格納位置Bのシートクッション4上に重なり,そのシートクッション4は,前述のようにクッションフレーム14を略水平状態にするので,両フレーム14,17は相互に略平行して最接近することになり,これによりシートクッション4及びシートバック6間から無駄な空間を排除しながらシート1全体をコンパクトに折り畳むことができる。しかもシートバック6の背面が略水平な荷物積載面として有効利用することができ,荷物の積載性が向上する。
【0058】
さらにクッションフレーム14及びバックフレーム17の左右方向幅W1,W2が互いに略等しく設定されているから,シート1の折り畳み状態では,クッションフレーム14の左右両側部とバックフレーム17の両側部とが平面視で重なることにより,シート1を一層コンパクトに折り畳むことができるのみならず,シートバック6の背面への荷物の積載時,その重量を両フレーム14,17により強固に支持することができる。
【0059】
またこのようなシート1の折り畳み状態では,シートクッション4は,その底部4aをフロアFの高所面Faより下げた位置に保持されると共に,そのシートクッション4上に,倒伏したシートバック6が重なるので,そのシートバック6の背面に荷物を載置した場合でも,荷物を含むシート1全体の重心を従来のものより下げ得て車両の低重心化に寄与し,また上記シートバック6上への積載容量の増加にも寄与することができる。
【0060】
その際,シートクッション4中,最重量物のクッションフレーム14の少なくとも一部が高所面Faより低い位置に来るようにシートクッション4が構成されることは,車両の低重心化を図る上でより効果的である。
【0061】
また折り畳み状態のシート1は,クッション格納機構5の作用により,折り畳み前の位置より後方に移動することになり,この状態でリアホイールハウスHの前後方向幅内に配置される。したがって,シート1の折り畳み状態では,リアホイールハウスHの前後のフロアFのスペースを有効的に利用することができる。
【0062】
またリクライニング機構7は,シートバック6の,リアホイールハウスHに対向する外側面に設けられるので,シートバック6とリアホイールハウスH間のデッドスペースを有効に利用してリクライニング機構7の設置を可能にする。
【0063】
シートクッション4の格納位置Bでは,第2移動規制手段の作用により,即ち外側シート支持台2の連結部材12の内向きストッパ30に前部揺動アーム19のストッパ部29が当接すること,並びに内側シート支持台2′の前部支持部材10′のストッパ部31に前部揺動アーム19の下側縁部が当接することにより,前部可動ピボット22の中心は,固定ピボット21及び後部可動ピボット24の中心間を結ぶ直線Lを下方へ超えないよう,直線Lの上方に位置決められるから,シートバック6を倒伏位置Dから起立位置Cに向かって回動するとき,クッション格納機構5の後部揺動アーム20が下向き位置から前方へ回動するのに応じて前方へ移動するシートクッション4が,前部可動ピボット22を介して前部揺動アーム19を確実に前方へ押し上げて,シートクッション4を使用位置Aに復帰させることができる。
【0064】
一方,シートバック6は,所定の起立位置Cに来ると,リクライニング機構7のロックばね50の作用により,ロックレバー42が後部支持部材11のロック溝33に係合して,シートバック6を起立位置Cに保持することになる。
【0065】
また後部揺動アーム20は,後部可動ピボット24を支持する後部支持部材11の支持壁11bの内側面よりその内側方へ所定距離eオフセット配置され,その所定距離eは,後部可動ピボット24の後部揺動アーム20外側面からの突出量より大きく設定され,後部揺動アーム20とリクライニングベース35との間を連動機構8が一体的に連結するので,連動機構8が後部揺動アーム20及びリクライニングベース35間のスペーサの役割を果たすことになり,クッション格納機構5の後部揺動アーム20がシートクッション4を格納位置Bへ作動すべく,下方へ回動するとき,後部揺動アーム20は勿論,その外側面より突出した後部可動ピボット24や,それに螺合したナット27等と,後部支持部材11,11′の支持壁11b,11′bとの擦れや干渉を回避することができ,したがってシート1をスムーズに折り畳むことができ,勿論,使用状態への復帰もスムーズに行うことができる。
【0066】
また連動機構8は,リクライニングベース35から,その内側方に屈曲するスペーサ片部58で構成され,このスペーサ片部58の内端から前記後部揺動アーム20が屈曲して形成され,リクライニングベース35,スペーサ片部58及び後部揺動アーム20が単一の板材よりプレス成形されるので,部品点数の削減,構造の簡素化及びコンパクト化を図る上に有効である。
【0067】
再び図1,図2及び図13において,バックフレーム17の上部には,上下方向に延びる左右一対のヘッドレスト案内管60,60が固設され,このヘッドレスト案内管60,60に,ヘッドレスト61の左右一対の支持杆61a,61aが上下位置調節可能且つ着脱可能に嵌挿される。ヘッドレスト61は,シートバック6の上端面から前面に沿って屈曲しながら膨出し,且つ背面がシートバック6の背面より後退したティアドロップ型に構成されると共に,シート1の折り畳み時,即ちシートバック6の倒伏位置Dでは,シートクッション4の前方に来るように配置される。したがって,ヘッドレスト61の下面は,シートクッション4の上面より下方に位置し,ヘッドレスト61のシートクッション4との干渉を防ぐと共に,シート1全体の低重心化を図ることができる。特に,ヘッドレスト61は,シートバック6に対して上下位置が調節可能であるから,シートバック6の高さがシートクッション4の前後方向長さより短かい場合でも,ヘッドレスト61の位置を上方へ移動調節しておけば,シートバック6の倒伏時,ヘッドレスト61をシートクッション4の前方位置に配置させて,シートクッション4との干渉を回避することができる。
【0068】
またヘッドレスト61の,シートバック6前面からの膨出量S2は,シートクッション4前端部の厚みS1より小さく設定される。したがって,シート1の折り畳み時,シートクッション4の底部4aがフロアFの凹部Fr内に沈んでも,凹部Fr前方のフロアFの一般面Fcにヘッドレスト61が干渉することを防ぐことができる。
【0069】
一方,シートバック6の上端部には,最下降調節位置に調節したヘッドレスト61の上端部を受容する切欠き部62が形成される。したがって,ヘッドレスト61の最下降位置では,ヘッドレスト61の上面がシートバック6の上面と面一となるので,シートバック6の倒伏時,ヘッドレスト61と,その前方位置の他物との干渉を回避することができる。
【0070】
図2及び図15において,バックフレーム17の四角部には,チャイルドシート用の取り付け環64を溶接したブラケット65が,対応する角部を補強するように溶接される。こうすることで,チャイルドシート用の取り付け環64の支持剛性を高めることができる。
【0071】
図16に本発明の別の実施形態を示す。この実施形態では,シートバック6を倒伏時,上下位置調節可能のヘッドレスト61の位置を調節することにより,シートクッション4及びヘッドレスト61は,前後方向で対向する面を相互に接触させるようになっている。したがって,シート1の折り畳み時には,ヘッドレスト61をシートクッション4の前端に最接近させることになり,ヘッドレスト61と,図示しない前部シートとの干渉を容易に回避することができる。その他の構成は,前記実施形態と同様であるので,図16中,前記実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0072】
図17に本発明の更に別の実施形態を示す。この実施形態では,シートクッション4の前端に,シートバック6の倒伏時,ヘッドレスト61を収容し得る切欠き状の凹部63が設けられる。このような構成によれば,シートバック6の高さが充分確保し得ない場合で,しかもヘッドレスト61を高位置に調節しても,シートバック6の倒伏時には,ヘッドレスト61をシートクッション4に干渉させることなく,上記凹部63に収めることができると共に,ヘッドレスト61と前部シートとの干渉をも容易に回避することができる。
【0073】
しかもヘッドレスト61は,シートバック6に対して着脱が可能であるから,これをシートバック6から外しておけば,シートクッション4と前部シート1間の間隔が狭いときでも,ヘッドレスト61を外すことにより,ヘッドレスト61のシートクッション4への干渉を回避することができる。またヘッドレスト61の取り外したシート1の折り畳み状態では,シート1をリアホイールハウスHの前後方向幅内に容易に配置することができるので,リアホイールハウスH前方のフロアFのスペースをより有効的に利用することができる。その他の構成は,前記実施形態と同様であるので,図16中,前記実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0074】
図18に本発明のまた更に別の実施形態を示す。この実施形態では,連動機構8は,主軸23に回転可能に嵌合,支持されるスペーサカラー58′で構成され,このスペーサカラー58′の両端にリクライニングベース35及び後部揺動アーム20が溶接される。その他の構成は,前記実施形態と同様であるので,図18中,前記実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0075】
而して,スペーサカラー58′は,後部揺動アーム20を,後部支持部材11の支持壁11bの内側面よりその内側方へ所定距離eオフセット配置させると共に,リクライニングベース35に一体的に連結することになり,上記実施形態と同様に,後部揺動アーム20,後部可動ピボット24及びナット27等と,後部支持部材11,11′の支持壁11b,11′bとの擦れや干渉を防ぐことができる。
【0076】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,左右のシート1,1のシートクッション4,4を一体化して,これを左右の高所面Fa,Faに取り付けられる一対のシート支持台2,2により支持するようにしてもよい。図示例では,クッションフレーム14及びバックフレーム17を構成するパイプ材は同径としてあるが,これらを異径とすることもできる。
【符号の説明】
【0077】
A・・・・・・シートクッションの使用位置
B・・・・・・シートクッションの格納位置
C・・・・・・シートバックの起立位置
D・・・・・・シートバックの倒伏位置
F・・・・・・フロア
Y・・・・・・クッションフレームの側部の中心軸線
1・・・・・・シート
2・・・・・・シート支持台(外側シート支持台)
4・・・・・・シートクッション
5・・・・・・クッション格納機構
6・・・・・・シートバック
7・・・・・・リクライニング機構
8・・・・・・連動機構
14・・・・・クッションフレーム
17・・・・・バックフレーム
19・・・・・前部揺動アーム
20・・・・・後部揺動アーム
21・・・・・第1ピボット(固定ピボット)
22・・・・・第2ピボット(前部可動ピボット)
23・・・・・第3ピボット(主軸)
24・・・・・第4ピボット(後部可動ピボット)
【技術分野】
【0001】
本発明は,車体のフロア上に取り付けられるシート支持台と,シートクッションと,前記シート支持台及びシートクッション間に設けられて,シートクッションを使用位置から,その使用位置より低く且つ後方の格納位置へと移動させ得るクッション格納機構と,前記シートクッションの上方へ起立する起立位置及び,前記シートクッション上に重なる倒伏位置間を回動し得るように前記シート支持台に支持されるシートバックと,前記シート支持台及びシートバック間に設けられて,該シートバックを起立位置及び倒伏位置に選択的に保持し得るリクライニング機構と,前記シートバックの起立位置から倒伏位置への回動に連動して前記シートクッションを使用位置から格納位置へと移動させるように,前記リクライニング機構及び前記クッション格納機構間を連結する連動機構とよりなる,車両の折り畳み式シート装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝる車両の後部の折り畳み式シート装置は,下記特許文献1に開示されるように,既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−223474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のかゝる車両の折り畳み式シート装置では,クッション格納機構がシートクッションを使用位置から格納位置へと移動させるとき,シートクッションを平行移動させるようになっている。ところで,一般にシートクッションは,乗員の座りの安定性を考慮してその上面を前上がりに傾斜させているので,これをそのまゝ格納位置へ平行移動させると,その傾斜した上面にシートバックを倒伏させたとき,シートクッション及びシートバック間に無駄な空間ができてしまい,シートの折り畳み状態でのコンパクト化が阻害されることになる。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,シートクッションを格納位置に,シートバックを倒伏位置にそれぞれ保持したシートの折り畳み状態では,シートクッション及びシートバック間から無駄な空間を排除して,シート全体をコンパクトし,しかもシートバックの背面を荷物の積載面に有効利用し得る,車両の折り畳み式シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために,本発明は,車体のフロア上に取り付けられるシート支持台と,シートクッションと,前記シート支持台及びシートクッション間に設けられて,シートクッションを使用位置から,その使用位置より低く且つ後方の格納位置へと移動させ得るクッション格納機構と,前記シートクッションの上方へ起立する起立位置及び,前記シートクッション上に重なる倒伏位置間を回動し得るように前記シート支持台に支持されるシートバックと,前記シート支持台及びシートバック間に設けられて,該シートバックを起立位置及び倒伏位置に選択的に保持し得るリクライニング機構と,前記シートバックの起立位置から倒伏位置への回動に連動して前記シートクッションを使用位置から格納位置へと移動させるように,前記リクライニング機構及び前記クッション格納機構間を連結する連動機構とよりなる,車両の折り畳み式シート装置において,前記シートクッションは,その前後左右面に沿って延びていて前記クッション格納機構が連結されるクッションフレームを有し,また前記シートバックは,その上下左右面に沿って延びていて前記リクライニング機構が連結されるバックフレームを有し,前記クッション格納機構は,前記シートクッションの使用位置では前記クッションフレームを前方上向きの傾斜状態に保持し,格納位置では前記クッションフレームを略水平状態に保持するように構成され,前記リクライニング機構は,前記シートバックの倒伏位置では,前記バックフレームを略水平状態に保持するように構成されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記シートクッションを格納位置に,前記シートバックを倒伏位置にそれぞれ移動したシートの折り畳み状態では,前記クッションフレームの左右両側部と前記バックフレームの左右両側部とが平面視で重なるように,これらクッションフレーム及びバックフレームが構成されることを第2の特徴とする。
【0008】
さらに本発明は,第1の特徴に加えて,前記クッション格納機構は,一端部が第1ピボットを介して前記シート支持台に,他端部が第2ピボットを介して前記クッションフレームの前端部側面にそれぞれ連結される前部揺動アームと,この前部揺動アームの後方で一端部が第3ピボットを介して前記シート支持台に,他端部が第4ピボットを介して前記クッションフレームの後端部側面にそれぞれ連結される,前記前部揺動アームより有効長が短い後部揺動アームとよりなり,前記第2揺動アームを略鉛直な起立姿勢から後方への倒れ姿勢に回動すると共に,後部揺動アームを前方への張り出し姿勢から垂下姿勢に回動することにより,前記クッションフレームを略水平状態にした前記シートクッションの格納位置を得るようにしたことを第3の特徴とする。
【0009】
さらにまた本発明は,第3の特徴に加えて,前記シートクッションの使用位置では,前記第2ピボットの中心が前記クッションフレームの側部の中心軸線より上方へオフセットして配置される一方,前記第4ピボットの中心が前記クッションフレームの側部の中心軸線より下方へオフセットして配置されることを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の特徴によれば,シートクッションを格納位置に,シートバックを倒伏位置にそれぞれ保持したシートの折り畳み状態では,クッションフレーム及びバックフレームは共に略水平状態に保持されることで,両フレームは相互に略平行して最接近することになり,これによりシートクッション及びシートバック間から無駄な空間を排除しながらシート全体をコンパクトに折り畳むことができる。しかもシートバックの背面が略水平な荷物積載面として有効利用することができ,荷物の積載性が向上する。
【0011】
本発明の第2の特徴によれば,シートの折り畳み状態では,クッションフレームの左右両側部とバックフレームの両側部とが平面視で重なることにより,シートを一層コンパクトに折り畳むことができるのみならず,シートバックの背面への荷物の積載時,その重量を両フレームにより強固に支持することができる。
【0012】
本発明の第3の特徴によれば,略鉛直な起立姿勢から後方への倒れ姿勢へと回動する後部揺動アームの有効長は,前方への張り出し姿勢から垂下姿勢へと回動する前部揺動アームの有効長より短くなっているから,第2ピボットは後方及び下方へ大きく移動するのに対して,第4可動ピボットの下方への移動量は,前部可動ピボットのそれより小さく,後方への移動量は第2可動ピボットのそれと略等しくなり,その結果,シートクッションの使用位置において前上がり傾斜のクッションフレームを,格納位置では略水平状態とすることができる。
【0013】
本発明の第4の特徴によれば,第2ピボットの中心がクッションフレームの側部の中心軸線より上方へオフセットした分,前部揺動アームの有効長が長くなるので,シートクッションが格納位置に向かうとき,第2ピボットの後方及び下方への移動量が増加し,また第4ピボットの中心がクッションフレームの側部の中心軸線より下方へオフセットした分,シートクッションが格納位置に向かうとき,第4ピボットの後方移動限界が後方へ移行することになり,以上の結果,シートクッションの使用位置では前上がり傾斜のクッションフレームを,格納位置では,略水平状態にしつゝ充分に下方及び後方へ移動させることが可能となり,シートクッションの格納性の向上に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車の折り畳み式シートの斜視図。
【図2】上記折り畳み式シートの内部構造を示す斜視図。
【図3】上記折り畳み式シートにおける外側シート支持台及びその周辺部を外側から見た斜視図。
【図4】上記外側シート支持台及び前部揺動アームを内側から見た斜視図。
【図5】内側シート支持台及び前部揺動アームを内側から見た斜視図。
【図6】図2の6矢視図。
【図7】図6の7−7線断面図。
【図8】図6の8−8線拡大断面図。
【図9】図6の9−9線拡大断面図。
【図10】図6の9−9線拡大断面図。
【図11】図6のリクライニング機構部拡大図。
【図12】上記リクライニング機構のロック解除作用説明図。
【図13】上記シートの折り畳み状態を示す側面。
【図14】図13中のリクライニング機構部の拡大図。
【図15】チャイルドシート用取り付け環を示すバックフレームの下部斜視図。
【図16】本発明の別の実施形態をシートの折り畳み状態で示す側面図。
【図17】本発明の更に別の実施形態の折り畳み式シートを示す斜視図。
【図18】本発明の更にまた別の実施形態を示す,図9との対応図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。以下の説明において,前後,左右とは,本発明の折り畳み式シートを設置する自動車を基準にしていうものとする。
【0016】
先ず,図1,図7及び図13において,自動車の車体は,左右のサイドシルS,Sと,これらサイドシルS,Sの各外側縁から立ち上がって,図示しない左右の後輪を覆う一対のリアホイールハウスH,Hとを有しており,左右のサイドシルS,S間には,それらの上面を含むフロアFが形成され,このフロアF上に,本発明に係る左右一対の折り畳み式シート1,1が配設される。
【0017】
上記フロアFは,リアホイールハウスH,Hの根元に連なっていて前後方向に延びる幅狭の高所面Fa,Faと,これら高所面Fa,Fa間に形成される幅広の低所面Fbとが形成され,その低所面Fbは,高所面Fa,Fa間に形成される凹部Frの底面Fbとなっている。高所面Faは,前端側が前下がりに傾斜していて全席側のフロアFの一般面Fcに連なっており,また上記凹部Frは前方に向かって浅くなっていて,その底面Fbも上記一般面Fcに連なっている。また高所面Fa及び低所面Fb間の段部の前部には膨出部Pが形成されており,この膨出部Pは,その外側の凹部によってリアサスペンション機構(図示せず)の支持部を収容,保持するようになっている。
【0018】
図1及び図2に示すように,左右一対の折り畳み式シート1,1は対称的に構成される。各シート1は,高所面Fa及び低所面Fbにそれぞれ取り付けられる外側及び内側シート支持台2,2′と,凹部Frの上方に配設されるシートクッション4と,外側及び内側シート支持台2,2′とシートクッション4との各間を連結するクッション格納機構5,5と,シートクッション4の後端部近傍で外側及び内側シート支持台2,2′に支持されるシートバック6と,外側及び内側シート支持台2,2′とシートバック6との各間を連結するリクライニング機構7と,このリクライニング機構7及び前記クッション格納機構5間を連結する連動機構8とよりなっている。
【0019】
図3〜図6に示すように,上記クッション格納機構5は,シートクッション4を使用位置A(図6,図7参照)と格納位置B(図7,図13参照)とに交互に保持し得るもので,その使用位置Aでは,シートクッション4の底部4aが高所面Faより上方に位置し,格納位置Bでは,少なくとも同底部4aが高所面Faより下方の低所面Fbに近接した位置を占めるようになっている。
【0020】
また上記リクライニング機構7は,シートバック6を起立位置(図1,図6参照)と倒伏位置D(図1,図13参照)とに交互に保持し得るもので,その起立位置Cでは,シートバック6は,シートクッション4の後端部近傍からやゝ後方上向きに起立し,倒伏位置Dでは,シートバック6は,シートクッション4の上面に重なるようになっている。また上記連動機構8は,シートバック6の起立位置C及び倒伏位置D間での回動に連動してシートクッション4を使用位置A及び格納位置B間で移動させるようになっている。これらの詳細については後述する。尚,シートバック6を倒伏位置Dに倒すと共に,シートクッション4を格納位置Bに下げた状態をシート1の折り畳み状態という。
【0021】
図2に明示するように,左右の内側シート支持台2,2′は,低所面Fbの左右方向中央部に相互に近接して配設される。図2〜図7に示すように,外側及び内側シート支持台2,2′は,前部支持部材10,10′と,その後方に配置される後部支持部材11,11′と,これら前部及び後部支持部材10,10′;11,11′間を連結する連結部材12,12′とでそれぞれ構成される。前部支持部材10,10′は,水平なベース壁10a,10a′と,このベース壁10a,10a′の内側端から上方へ屈曲して起立した支持壁10b,10b′よりなっており,そのベース壁10a,10a′は,対応する高所面Fa及び低所面Fbにそれぞれボルト結合される。後部支持部材11,11′は,上記ベース壁10a,10a′より広い水平なベース壁11a,11a′と,このベース壁11a,11a′の一側端から,支持壁10b,10b′より高く上方へ屈曲して起立した支持壁11b,11b′よりなっており,そのベース壁11a,11a′は,対応する高所面Fa及び低所面Fbにそれぞれボルト結合される。内側シート支持台2′の前部及び後部支持部材10′,11′は,外側シート支持台2の前部及び後部支持部材10,11より,低所面Fb及び高所面Fa間の段差分だけ上下方向に長く形成される。これにより,外側シート支持台2とシートクッション4との間を連結するシートクッション格納機構5と,内側シート支持台2′とシートクッション4との間を連結するシートクッション格納機構5とを同一寸法に且つ対称的に構成することを可能にする。
【0022】
シートクッション4は,その前後左右面に沿って金属パイプ材を四辺形に曲げてなるフレーム14(以下,クッションフレーム14という。)を有しており,その左右両側部の前部外側面には前部ブラケット15,15が溶接され,また後側の左右の角部には後部ブラケット16,16が溶接される。前部ブラケット15は前後方向に長く延びていて,その長手方向中間には外方膨出部15aが形成される。また後部ブラケット16は,前後方向に延びてクッションフレーム14の外側面に溶接される前半部と,左右方向に延びてクッションフレーム14の後側面に溶接される後半部とでL字状に形成されており,その前半部の後端部には外方膨出部16aが形成される。これら前部及び後部ブラケット15,16によりクッションフレーム14は効果的に補強される。
【0023】
またシートバック6も,その上下左右面に沿って金属パイプを四辺形に曲げてなるフレーム17(以下,バックフレーム17という。)を有しており,その左右両側面の下部に側部ブラケット18,18が溶接される。
【0024】
上記クッションフレーム14及びバックフレーム17は,シート1の折り畳み状態では,クッションフレーム14の左右両側部とバックフレーム17の左右両側部とが平面視で重なるように,これらクッションフレーム14及びバックフレーム17の左右方向幅W1,W2(図7参照)が互いに略等しく設定される。
【0025】
図3〜図10において,前記シートクッション格納機構5は,前部支持部材10,10′の支持壁10b,10b′及び前部ブラケット15,15間を連結する前部揺動アーム19,19と,後部支持部材11,11′の支持壁11b,11′b及び後部ブラケット16,16間を連結する後部揺動アーム20,20とで構成される。各前部揺動アーム19は,その一端部が固定ピボット21を介して前部支持部材10,10′に,また他端部が前部可動ピボット22を介して前部ブラケット15にそれぞれ前後且つ上下方向に回動可能に連結される。また後部揺動アーム20は,その一端部が主軸23を介して後部支持部材11,11′の支持壁11b,11b′に,また他端部が後部可動ピボット24を介して後部ブラケット16にそれぞれ前後且つ上下方向に回動可能に連結される。主軸23は上記支持壁11b,11b′に固着されている。以上において,各後部揺動アーム20の有効長,即ち主軸23及び後部可動ピボット24間の軸間距離は,各前部揺動アーム19の有効長,即ち固定ピボット21及び前部可動ピボット22間の軸間距離より短く設定される。
【0026】
前部揺動アーム19の下端部を支持する固定ピボット21は,支持部材10a,10a′に固着されるリベットで構成される。
【0027】
また前部揺動アーム19の上端を支持する前部可動ピボット22は,前記前部ブラケット15の外方膨出部15aを貫通してその内壁に頭部22aが溶接又はかしめにより固着されるボルトで構成され,これにより前部可動ピボット22の支持剛性が強化される。この前部可動ピボット22の先端部にナット26を螺着することで前部揺動アーム19の上端部が取り付けられる。その際,前部可動ピボット22は,その中心がクッションフレーム14を構成するパイプ材の中心軸線Yより上方へ一定距離f1オフセットするように配置される(図6及び図8参照)。
【0028】
また後部揺動アーム20の前端部を支持する後部可動ピボット24は,前記後部ブラケット16の外方膨出部16aを貫通してその内壁に頭部24aが溶接又はかしめにより固着されるボルトで構成され,これにより後部可動ピボット24の支持剛性が強化される。この後部可動ピボット24の先端部にナット27を螺着することで後部揺動アーム20の前端部が取り付けられる。その際,後部可動ピボット24は,その中心がクッションフレーム14を構成するパイプ材の中心軸線より下方へ一定距離f2オフセットするように配置される(図6及び図10参照)。
【0029】
各ブラケット15,16の外方膨出部15a,16aは,各可動ピボット22,24の支持剛性を強化するのみならず,前部及び後部揺動アーム19,20の回動時,これら前部及び後部揺動アーム19,20とクッションフレーム14との干渉を回避するディスタンスピースの機能をも持つことにもなる。
【0030】
而して,図2〜図6に示すように,シートクッション4の使用位置Aは,前部揺動アーム19を固定ピボット21の上方へ略鉛直状態に起立(図示例では,固定ピボット21の後方へ僅かに傾斜している。)させると共に,後部揺動アーム20を主軸23の前方へ略水平に倒すことにより,シートクッション4の底部4aが高所面Faより高位置を占めるように制御される。このとき前部揺動アーム19の前方への回動限界を規制するための第1移動規制手段28がクッション格納機構5に設けられる。
【0031】
具体的には,第1移動規制手段28は,各シート支持台2,2′と各前部揺動アーム19,19との間に設けられる。より具体的には,第1移動規制手段28は,前部支持部材10,10′の支持壁10b,10b′に切り起こされたストッパ部28で構成され,そのストッパ部28が各前部揺動アーム19の前縁部を受け止めて前部揺動アーム19の前方への回動限界を規制するようになっている。このシートクッション4の使用位置Aでは,クッションフレーム14は,前方上向きに傾斜した状態に保持される。したがって,シートクッション4の上面も前方上向きに傾斜となる。
【0032】
また図13に示すように,シートクッション4の格納位置Bでは,前部揺動アーム19を固定ピボット21の後方へ略水平状態に回動する(図示例では,前部可動ピボット22側を僅かに上向きにする。)と共に,後部揺動アーム20を主軸23の略直下へ(図示例では,主軸23の下方且つやゝ後方へ)回動することにより,シートクッション4の底部4aが低所面Fbに近接した低位置を占めるように,即ち凹部Fr内に受容されるように制御される。
【0033】
このとき前部揺動アーム19の下方への回動限界を規制するための第2移動規制手段が外側シート支持台2及びそれに対応する前部揺動アーム19間,並びに内側シート支持台2′及びそれに対応する前部揺動アーム19間に設けられる。具体的には,第2移動規制手段は,前部揺動アーム19から屈曲させたストッパ部29(図4参照)と,外側シート支持台2の連結部材12に形成された内向きストッパ部30とで構成され,これらストッパ30及びストッパ部29が相互に当接することにより,前部揺動アーム19の下方への回動限界を規制するようになっており,また内側シート支持台2′における前部支持部材10′の支持壁10b′に切り起こされたストッパ部31(図5参照)で構成され,これに前部揺動アーム19の下側縁部が当接することにより,前部揺動アーム19の下方への回動限界を規制するようになっている。このような前部揺動アーム19の下方回動限界の規制により,前部可動ピボット22の中心は,固定ピボット21及び後部可動ピボット24の中心間を結ぶ直線Lを下方へ超えないように設定される。即ち,前部可動ピボット22の中心は,直線Lの上方で下降が阻止される。
【0034】
こゝで,クッション格納機構5は,シートクッション4を格納位置Bに下ろしたとき,シートクッション4の底部,特にクッションフレーム14の一部を高所面Faより低い位置まで下ろすように,且つクッションフレーム14を低所面Fbと同様に略水平状態に保持するように構成される。
【0035】
図7に示すように,シートクッション4の底面には,これが格納位置Bに来たとき,前記膨出部Pとの干渉を避ける逃げ4bが設けられる。
【0036】
図6,図9,図11及び図12において,リクライニング機構7は,シートバック6の左右の側部ブラケット18,18の外側面に複数のボルト34により固着される左右一対のリクライニングベース35,35とを備える。これらリクライニングベース35は,内,外側の後部支持部材11,11′の支持壁11b,11b′の内側面に重ねられると共に,各支持壁11b,11b′に固設された前記主軸23に回動可能に支持される。外側の後部支持部材11の支持壁11bには,その内側面より突出するストッパピン36が固設される一方,外側のリクライニングベース35には,主軸23と同心の円弧状をなして上記ストッパピン36と係合する長孔37が設けられ,ストッパピン36が長孔37の一方の内端壁に当接することによりシートバック6の起立位置C(図11参照)が規制され,ストッパピン36が長孔37の他方の内端壁に当接することによりシートバック6の倒伏位置D(図14参照)が規制されるようになっており,このときバックフレーム17及びシートバック6の背面は略水平状態に保持される。
【0037】
また外側のリクライニングベース35の外側面には,それと協働して上記支持壁11bを挟むように配置される補助ベース38が固着されており,この補助ベース38も前記主軸23に回動可能に支持される。
【0038】
補助ベース38及び主軸23には,補助ベース38を介してシートバック6を前方への倒伏方向へ付勢する倒伏ばね39が縮設される。この倒伏ばね39は,主軸23周りに配設されるゼンマイばねで構成され,その内端は主軸23に係止され,外端は補助ベース38に形成される係止爪40に係止される。
【0039】
外側の後部支持部材11の支持壁11bの上部外周面は,主軸23を中心とする円弧面に形成されると共に,その外周面にはロック溝33が形成される。一方,補助ベース38は,主軸23と,この主軸23の上方に配置されてリクライニングベース35及び補助ベース38を貫通する支軸41との二軸によりリクライニングベース35に固着されており,リクライニングベース35及び補助ベース38間において,上記ロック溝33に係脱し得るロックレバー42が上記支軸41に揺動可能に支持される。このロックレバー42は,シートバック6が前記起立位置Cに起こされたとき,ロック溝33に係合することにより,シートバック6を起立位置Cにロックする。このロックレバー42は,その上面より突出するレリーズアーム43を一体に有する。
【0040】
さらにリクライニングベース35には,ロックレバー42側から上方に向かって順に配置されるロック制御レバー44及び駆動レバー45が支軸46及び支軸47をそれぞれ介して回動可能に支持される。
【0041】
ロック制御レバー44は,ロックレバー42側に突出する押えアーム44aと,レリーズアーム43に対向するレリーズカム44bと,駆動レバー45側に突出する従動アーム44cとよりなっており,押えアーム44aは,ロック溝33に係合したロックレバー42の背面を押圧して,その係合状態に保持することができ,またレリーズカム44bは,レリーズアーム43を押圧,回動してロックレバー42をロック溝33から離脱させることができる。従動アーム44cの側面には従動ピン48が突設されている。
【0042】
駆動レバー45は,支軸47の下方に突出するロアアーム45aと,支軸47の前方に突出するアッパアーム45bとよりなっており,ロアアーム45aには,前記従動ピン48が係合する屈曲長孔状の駆動溝49が設けられる。この駆動溝49は,アッパアーム45bが下向きに回動するとき(図11参照),従動ピン48を介してロック制御レバー44をロックレバー42のロック方向へ回動し,またアッパアーム45bが上向きに回動するとき(図12参照),従動ピン48を介してロック制御レバー44をロックレバー42のロック解除方向へ回動するようになっており,上記アッパアーム45bと前記補助ベース38との間に,アッパアーム45bを下向きに回動付勢するロックばね50が縮設される。このロックばね50はコイルばねで構成され,その一端は補助ベース38の接続片51に接続され,その他端は,アッパアーム45bの接続孔52に接続される。またアッパアーム45bには,ロックばね50の付勢力に抗してアッパアーム45bを上向きに回動させ得るレリーズ操作ワイヤ54が接続される。このレリーズ操作ワイヤ54は,リクライニングベース35の上端部にワイヤ支持片55を介して支持されるガイドチューブ56に案内されてシートバック6の背面側に引き出され,その外端には,これを牽引操作するためのストラップ57(図6)が付設される。
【0043】
而して,シートバック6を使用位置Aに起こした状態では,図11に示すように,ロックばね50の付勢力により,駆動レバー45のアッパアーム45bが下向きに回動し,駆動溝49により従動ピン48を介してロック制御レバー44をロックレバー42のロック方向に回動する。即ち,ロック制御レバー44の押えアーム44aがロックレバー42の背面を押圧して,ロックレバー42を,後部支持部材11のロック溝33との係合状態に保持し,これによりシートバック6は使用位置Aにロックされる。図12に示すように,前記ストラップ57によりレリーズ操作ワイヤ54を牽引すると,駆動レバー45のアッパアーム45bがロックばね50の付勢力に抗して上向きに回動し,駆動溝49により従動ピン48を介してロック制御レバー44をレリーズ方向へ回動する。即ちロックレバー42は,押えアーム44aをロックレバー42の背面から後方へ逃がすと共に,レリーズカム44bがロックレバー42のレリーズアーム43を押圧して,ロックレバー42をロック溝33から離脱させる。その結果,シートバック6は,倒伏ばね39の付勢力により前方へ回動して,シートクッション4の上面に重なる倒伏位置Dに到達する。この倒伏位置Dは,前述のように,後部支持部材11のストッパピン36がリクライニングベース35の長孔37の前方内端壁に当接することによりが規制され,バックフレーム17及びシートバック6の背面は略水平状態となる。
【0044】
シートバック6を倒伏位置Dから起立位置Cへ戻す際には,シートバック6を倒伏ばね39の付勢力に抗して引き起す。この間にレリーズ操作ワイヤ54の牽引を解放しておけば,ロックばね50の付勢力の作用によりロックレバー42がロック溝33に係合してシートバック6を起立位置Cに自動的に保持することができる。この起立位置Cは,前述のように,後部支持部材11のストッパピン36がリクライニングベース35の長孔37の後方内端壁に当接することによりが規制される。
【0045】
図3及び図9において,内外両側の後部揺動アーム20,20は,両側の後部支持部材11,11′支持壁11b,11b′からそれらの内側方へ所定距離eオフセットして配置される。そして各後部揺動アーム20と,上記支持壁11b,11b′の内側面に重ねられる各リクライニングベース35との各間を連動機構8が一体的に連結する。その際,上記所定距離eは,前記後部可動ピボット24の後部揺動アーム20外側面からの突出量より大きく設定される。
【0046】
具体的には,連動機構8は,各リクライニングベース35からその内側方へ屈曲して上記所定距離e延びるスペーサ片部58で構成され,このスペーサ片部58の内端から後部揺動アーム20が屈曲して形成される。これらリクライニングベース35,スペーサ片部58及び後部揺動アーム20は,単一の板材よりプレス成形される。尚,リクライニングベース35,スペーサ片部58及び後部揺動アーム20は,これらを分割して製作した後,溶接等により一体に結合することもできる。何れの場合においても,主軸23は,リクライニングベース35及び後部揺動アーム20に共通する枢軸となる。
【0047】
而して,連動機構8は,リクライニングベース35がシートバック6と共に起立するとき,それに連動して後部揺動アーム20を主軸23前方へ張り出させ,またリクライニングベース35がシートバック6と共に前方へ倒伏するとき,それに連動して後部揺動アーム20を主軸23の下方へ回動するように作動する。
【0048】
以上において,クッションフレーム14に溶接されるブラケット15,16は,クッションフレーム14と一体化されることで,実質上,クッションフレーム14の一部となり,またバックフレーム17に溶接されるブラケット18,65もバックフレーム17と一体化されることで,実質上,クッションフレーム14の一部となる。
【0049】
この折り畳み式シート1の作用について説明する。
【0050】
図11に示すように,シートバック6がリクライニング機構7により起立位置Cにロックされると,シートクッション格納機構5においては,リクライニングベース35に連結した後部揺動アーム20が主軸23の前方へ張り出した姿勢を取ると共に,前部揺動アーム19が略鉛直方向に起立した姿勢を取ることによりシートクッション4を,図6に示すように,フロアFの高所面Faより上方の,且つ上面が前上がり傾斜の使用位置Aに保持することができる。したがって,このシート1には乗員が通常通り安定良く座ることができる。
【0051】
このようなシートクッション4の使用位置Aでは,クッション格納機構5の前部揺動アーム19は,第1移動規制手段28,即ち前部支持部材10,10′のストッパ部28に当接することにより,前方への回動限界が規制されるので,使用状態のシート1に前向きの大なる荷重が作用した場合には,その荷重は,ロック状態のリクライニング機構7と,クッション格納機構5の第1移動規制手段28とに分散して支承されることになる。したがってリクライニング機構7の荷重負担を軽減させて,その大型化を回避しながら,シート1を使用状態に強固に保持することができる。
【0052】
次に,リクライニング機構7のロック状態を解除して,シートバック6を倒伏ばね39の付勢力により倒伏位置Dに向かって前方へ倒伏させる(図14参照)と,同時にリクライニングベース35も前方へ倒伏し,それに連動してシートクッション格納機構5の後部揺動アーム20が主軸23の下方へ回動しながら,後部可動ピボット24を介してクッションフレーム14の後端部を下方且つ後方へ引き寄せるため,それに伴ない前部揺動アーム19が略鉛直な起立姿勢から固定ピボット21周りに後方へ回動していき,これにより図13に示すように,シートクッション4は全体的に後方且つ下方へ,即ち格納位置Bに向かって移動していき,その格納位置Bは,前部揺動アーム19が内側及び外側シート支持台2,2′のストッパ30,31に当接することにより規制される。
【0053】
ところで,略鉛直な起立姿勢から後方への倒れ姿勢へと回動する後部揺動アーム20の有効長は,前方への張り出し姿勢から垂下姿勢へと回動する前部揺動アーム19の有効長より短くなっているから,前部可動ピボット22は後方及び下方へ大きく移動するのに対して,後部可動ピボット24の下方への移動量は,前部可動ピボット22のそれより小さく,後方への移動量は前部可動ピボット22のそれと略等しい。その結果,シートクッション4の使用位置Aにおいて前上がり傾斜のクッションフレーム14は,格納位置Bでは略水平状態となる。
【0054】
しかも,シートクッション4の使用位置Aでは,前部可動ピボット22の中心がクッションフレーム14の側部の中心軸線Yより上方へ一定距離f1オフセットした位置を占める一方,後部可動ピボット24の中心がクッションフレーム14の側部の中心軸線Yより下方へ一定距離f2オフセットした位置を占めるので,前部可動ピボット22の中心がクッションフレーム14の側部の中心軸線Yより上方へオフセットした分,前部揺動アーム19の有効長が長くなり,また後部可動ピボット24の中心がクッションフレーム14の側部の中心軸線Yより下方へオフセットした分,シートクッション4が格納位置Bに向かうとき,後部可動ピボット24の後方移動限界が後方へ移行することになり,シートクッション4の格納位置Bをより下方且つ後方に移行させることができる。
【0055】
以上により,シートクッション4は,その底部4aがフロアFの凹部Fr内に収められる。換言すれば,シートクッション4は,その底部4aを,フロアFの高所面Faより低い低所面Fbへの近接位置に保持され,シートクッション4の格納性が向上する。
【0056】
一方,シートバック6は,シートクッション4が格納位置Bに到達すると同時に倒伏位置Dに到達するもので,その倒伏位置Dは,後部支持部材11のストッパピン36がリクライニングベース35の長孔37の前方内端壁に当接することによりが規制される。
【0057】
ところで,倒伏位置Dのシートバック6は,バックフレーム17を略水平にしながら,格納位置Bのシートクッション4上に重なり,そのシートクッション4は,前述のようにクッションフレーム14を略水平状態にするので,両フレーム14,17は相互に略平行して最接近することになり,これによりシートクッション4及びシートバック6間から無駄な空間を排除しながらシート1全体をコンパクトに折り畳むことができる。しかもシートバック6の背面が略水平な荷物積載面として有効利用することができ,荷物の積載性が向上する。
【0058】
さらにクッションフレーム14及びバックフレーム17の左右方向幅W1,W2が互いに略等しく設定されているから,シート1の折り畳み状態では,クッションフレーム14の左右両側部とバックフレーム17の両側部とが平面視で重なることにより,シート1を一層コンパクトに折り畳むことができるのみならず,シートバック6の背面への荷物の積載時,その重量を両フレーム14,17により強固に支持することができる。
【0059】
またこのようなシート1の折り畳み状態では,シートクッション4は,その底部4aをフロアFの高所面Faより下げた位置に保持されると共に,そのシートクッション4上に,倒伏したシートバック6が重なるので,そのシートバック6の背面に荷物を載置した場合でも,荷物を含むシート1全体の重心を従来のものより下げ得て車両の低重心化に寄与し,また上記シートバック6上への積載容量の増加にも寄与することができる。
【0060】
その際,シートクッション4中,最重量物のクッションフレーム14の少なくとも一部が高所面Faより低い位置に来るようにシートクッション4が構成されることは,車両の低重心化を図る上でより効果的である。
【0061】
また折り畳み状態のシート1は,クッション格納機構5の作用により,折り畳み前の位置より後方に移動することになり,この状態でリアホイールハウスHの前後方向幅内に配置される。したがって,シート1の折り畳み状態では,リアホイールハウスHの前後のフロアFのスペースを有効的に利用することができる。
【0062】
またリクライニング機構7は,シートバック6の,リアホイールハウスHに対向する外側面に設けられるので,シートバック6とリアホイールハウスH間のデッドスペースを有効に利用してリクライニング機構7の設置を可能にする。
【0063】
シートクッション4の格納位置Bでは,第2移動規制手段の作用により,即ち外側シート支持台2の連結部材12の内向きストッパ30に前部揺動アーム19のストッパ部29が当接すること,並びに内側シート支持台2′の前部支持部材10′のストッパ部31に前部揺動アーム19の下側縁部が当接することにより,前部可動ピボット22の中心は,固定ピボット21及び後部可動ピボット24の中心間を結ぶ直線Lを下方へ超えないよう,直線Lの上方に位置決められるから,シートバック6を倒伏位置Dから起立位置Cに向かって回動するとき,クッション格納機構5の後部揺動アーム20が下向き位置から前方へ回動するのに応じて前方へ移動するシートクッション4が,前部可動ピボット22を介して前部揺動アーム19を確実に前方へ押し上げて,シートクッション4を使用位置Aに復帰させることができる。
【0064】
一方,シートバック6は,所定の起立位置Cに来ると,リクライニング機構7のロックばね50の作用により,ロックレバー42が後部支持部材11のロック溝33に係合して,シートバック6を起立位置Cに保持することになる。
【0065】
また後部揺動アーム20は,後部可動ピボット24を支持する後部支持部材11の支持壁11bの内側面よりその内側方へ所定距離eオフセット配置され,その所定距離eは,後部可動ピボット24の後部揺動アーム20外側面からの突出量より大きく設定され,後部揺動アーム20とリクライニングベース35との間を連動機構8が一体的に連結するので,連動機構8が後部揺動アーム20及びリクライニングベース35間のスペーサの役割を果たすことになり,クッション格納機構5の後部揺動アーム20がシートクッション4を格納位置Bへ作動すべく,下方へ回動するとき,後部揺動アーム20は勿論,その外側面より突出した後部可動ピボット24や,それに螺合したナット27等と,後部支持部材11,11′の支持壁11b,11′bとの擦れや干渉を回避することができ,したがってシート1をスムーズに折り畳むことができ,勿論,使用状態への復帰もスムーズに行うことができる。
【0066】
また連動機構8は,リクライニングベース35から,その内側方に屈曲するスペーサ片部58で構成され,このスペーサ片部58の内端から前記後部揺動アーム20が屈曲して形成され,リクライニングベース35,スペーサ片部58及び後部揺動アーム20が単一の板材よりプレス成形されるので,部品点数の削減,構造の簡素化及びコンパクト化を図る上に有効である。
【0067】
再び図1,図2及び図13において,バックフレーム17の上部には,上下方向に延びる左右一対のヘッドレスト案内管60,60が固設され,このヘッドレスト案内管60,60に,ヘッドレスト61の左右一対の支持杆61a,61aが上下位置調節可能且つ着脱可能に嵌挿される。ヘッドレスト61は,シートバック6の上端面から前面に沿って屈曲しながら膨出し,且つ背面がシートバック6の背面より後退したティアドロップ型に構成されると共に,シート1の折り畳み時,即ちシートバック6の倒伏位置Dでは,シートクッション4の前方に来るように配置される。したがって,ヘッドレスト61の下面は,シートクッション4の上面より下方に位置し,ヘッドレスト61のシートクッション4との干渉を防ぐと共に,シート1全体の低重心化を図ることができる。特に,ヘッドレスト61は,シートバック6に対して上下位置が調節可能であるから,シートバック6の高さがシートクッション4の前後方向長さより短かい場合でも,ヘッドレスト61の位置を上方へ移動調節しておけば,シートバック6の倒伏時,ヘッドレスト61をシートクッション4の前方位置に配置させて,シートクッション4との干渉を回避することができる。
【0068】
またヘッドレスト61の,シートバック6前面からの膨出量S2は,シートクッション4前端部の厚みS1より小さく設定される。したがって,シート1の折り畳み時,シートクッション4の底部4aがフロアFの凹部Fr内に沈んでも,凹部Fr前方のフロアFの一般面Fcにヘッドレスト61が干渉することを防ぐことができる。
【0069】
一方,シートバック6の上端部には,最下降調節位置に調節したヘッドレスト61の上端部を受容する切欠き部62が形成される。したがって,ヘッドレスト61の最下降位置では,ヘッドレスト61の上面がシートバック6の上面と面一となるので,シートバック6の倒伏時,ヘッドレスト61と,その前方位置の他物との干渉を回避することができる。
【0070】
図2及び図15において,バックフレーム17の四角部には,チャイルドシート用の取り付け環64を溶接したブラケット65が,対応する角部を補強するように溶接される。こうすることで,チャイルドシート用の取り付け環64の支持剛性を高めることができる。
【0071】
図16に本発明の別の実施形態を示す。この実施形態では,シートバック6を倒伏時,上下位置調節可能のヘッドレスト61の位置を調節することにより,シートクッション4及びヘッドレスト61は,前後方向で対向する面を相互に接触させるようになっている。したがって,シート1の折り畳み時には,ヘッドレスト61をシートクッション4の前端に最接近させることになり,ヘッドレスト61と,図示しない前部シートとの干渉を容易に回避することができる。その他の構成は,前記実施形態と同様であるので,図16中,前記実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0072】
図17に本発明の更に別の実施形態を示す。この実施形態では,シートクッション4の前端に,シートバック6の倒伏時,ヘッドレスト61を収容し得る切欠き状の凹部63が設けられる。このような構成によれば,シートバック6の高さが充分確保し得ない場合で,しかもヘッドレスト61を高位置に調節しても,シートバック6の倒伏時には,ヘッドレスト61をシートクッション4に干渉させることなく,上記凹部63に収めることができると共に,ヘッドレスト61と前部シートとの干渉をも容易に回避することができる。
【0073】
しかもヘッドレスト61は,シートバック6に対して着脱が可能であるから,これをシートバック6から外しておけば,シートクッション4と前部シート1間の間隔が狭いときでも,ヘッドレスト61を外すことにより,ヘッドレスト61のシートクッション4への干渉を回避することができる。またヘッドレスト61の取り外したシート1の折り畳み状態では,シート1をリアホイールハウスHの前後方向幅内に容易に配置することができるので,リアホイールハウスH前方のフロアFのスペースをより有効的に利用することができる。その他の構成は,前記実施形態と同様であるので,図16中,前記実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0074】
図18に本発明のまた更に別の実施形態を示す。この実施形態では,連動機構8は,主軸23に回転可能に嵌合,支持されるスペーサカラー58′で構成され,このスペーサカラー58′の両端にリクライニングベース35及び後部揺動アーム20が溶接される。その他の構成は,前記実施形態と同様であるので,図18中,前記実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0075】
而して,スペーサカラー58′は,後部揺動アーム20を,後部支持部材11の支持壁11bの内側面よりその内側方へ所定距離eオフセット配置させると共に,リクライニングベース35に一体的に連結することになり,上記実施形態と同様に,後部揺動アーム20,後部可動ピボット24及びナット27等と,後部支持部材11,11′の支持壁11b,11′bとの擦れや干渉を防ぐことができる。
【0076】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,左右のシート1,1のシートクッション4,4を一体化して,これを左右の高所面Fa,Faに取り付けられる一対のシート支持台2,2により支持するようにしてもよい。図示例では,クッションフレーム14及びバックフレーム17を構成するパイプ材は同径としてあるが,これらを異径とすることもできる。
【符号の説明】
【0077】
A・・・・・・シートクッションの使用位置
B・・・・・・シートクッションの格納位置
C・・・・・・シートバックの起立位置
D・・・・・・シートバックの倒伏位置
F・・・・・・フロア
Y・・・・・・クッションフレームの側部の中心軸線
1・・・・・・シート
2・・・・・・シート支持台(外側シート支持台)
4・・・・・・シートクッション
5・・・・・・クッション格納機構
6・・・・・・シートバック
7・・・・・・リクライニング機構
8・・・・・・連動機構
14・・・・・クッションフレーム
17・・・・・バックフレーム
19・・・・・前部揺動アーム
20・・・・・後部揺動アーム
21・・・・・第1ピボット(固定ピボット)
22・・・・・第2ピボット(前部可動ピボット)
23・・・・・第3ピボット(主軸)
24・・・・・第4ピボット(後部可動ピボット)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロア(F)上に取り付けられるシート支持台(2)と,シートクッション(4)と,前記シート支持台(2)及びシートクッション(4)間に設けられて,シートクッション(4)を使用位置(A)から,その使用位置(A)より低く且つ後方の格納位置(B)へと移動させ得るクッション格納機構(5)と,前記シートクッション(4)の上方へ起立する起立位置(C)及び,前記シートクッション(4)上に重なる倒伏位置(D)間を回動し得るように前記シート支持台(2)に支持されるシートバック(6)と,前記シート支持台(2)及びシートバック(6)間に設けられて,該シートバック(6)を起立位置(C)及び倒伏位置(D)に選択的に保持し得るリクライニング機構(7)と,前記シートバック(6)の起立位置(C)から倒伏位置(D)への回動に連動して前記シートクッション(4)を使用位置(A)から格納位置(B)へと移動させるように,前記リクライニング機構(7)及び前記クッション格納機構(5)間を連結する連動機構(8)とよりなる,車両の折り畳み式シート装置において,
前記シートクッション(4)は,その前後左右面に沿って延びていて前記クッション格納機構(5)が連結されるクッションフレーム(14)を有し,また前記シートバック(6)は,その上下左右面に沿って延びていて前記リクライニング機構(7)が連結されるバックフレーム(17)を有し,前記クッション格納機構(5)は,前記シートクッション(4)の使用位置(A)では前記クッションフレーム(14)を前方上向きの傾斜状態に保持し,格納位置(B)では前記クッションフレーム(14)を略水平状態に保持するように構成され,前記リクライニング機構(7)は,前記シートバック(6)の倒伏位置(D)では,前記バックフレーム(17)を略水平状態に保持するように構成されることを特徴とする,車両の折り畳み式シート装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の折り畳み式シート装置において,
前記シートクッション(4)を格納位置(B)に,前記シートバック(6)を倒伏位置(D)にそれぞれ移動したシート(1)の折り畳み状態では,前記クッションフレーム(14)の左右両側部と前記バックフレーム(17)の左右両側部とが平面視で重なるように,これらクッションフレーム(14)及びバックフレーム(17)が構成されることを特徴とする,車両の折り畳み式シート装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両の折り畳み式シート装置において,
前記クッション格納機構(5)は,一端部が第1ピボット(21)を介して前記シート支持台(2)に,他端部が第2ピボット(22)を介して前記クッションフレーム(14)の前端部側面にそれぞれ連結される前部揺動アーム(19)と,この前部揺動アーム(19)の後方で一端部が第3ピボット(23)を介して前記シート支持台(2)に,他端部が第4ピボット(24)を介して前記クッションフレーム(14)の後端部側面にそれぞれ連結される,前記前部揺動アーム(19)より有効長が短い後部揺動アーム(20)とよりなり,前記第2揺動アーム(19)を略鉛直な起立姿勢から後方への倒れ姿勢に回動すると共に,後部揺動アーム(20)を前方への張り出し姿勢から垂下姿勢に回動することにより,前記クッションフレーム(14)を略水平状態にした前記シートクッション(4)の格納位置(B)を得るようにしたことを特徴とする,車両の折り畳み式シート装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両の折り畳み式シート装置において,
前記シートクッション(4)の使用位置(A)では,前記第2ピボット(22)の中心が前記クッションフレーム(14)の側部の中心軸線(Y)より上方へオフセット(f1)して配置される一方,前記第4ピボット(24)の中心が前記クッションフレーム(14)の側部の中心軸線(Y)より下方へオフセット(f2)して配置されることを特徴とする,車両の折り畳み式シート装置。
【請求項1】
車体のフロア(F)上に取り付けられるシート支持台(2)と,シートクッション(4)と,前記シート支持台(2)及びシートクッション(4)間に設けられて,シートクッション(4)を使用位置(A)から,その使用位置(A)より低く且つ後方の格納位置(B)へと移動させ得るクッション格納機構(5)と,前記シートクッション(4)の上方へ起立する起立位置(C)及び,前記シートクッション(4)上に重なる倒伏位置(D)間を回動し得るように前記シート支持台(2)に支持されるシートバック(6)と,前記シート支持台(2)及びシートバック(6)間に設けられて,該シートバック(6)を起立位置(C)及び倒伏位置(D)に選択的に保持し得るリクライニング機構(7)と,前記シートバック(6)の起立位置(C)から倒伏位置(D)への回動に連動して前記シートクッション(4)を使用位置(A)から格納位置(B)へと移動させるように,前記リクライニング機構(7)及び前記クッション格納機構(5)間を連結する連動機構(8)とよりなる,車両の折り畳み式シート装置において,
前記シートクッション(4)は,その前後左右面に沿って延びていて前記クッション格納機構(5)が連結されるクッションフレーム(14)を有し,また前記シートバック(6)は,その上下左右面に沿って延びていて前記リクライニング機構(7)が連結されるバックフレーム(17)を有し,前記クッション格納機構(5)は,前記シートクッション(4)の使用位置(A)では前記クッションフレーム(14)を前方上向きの傾斜状態に保持し,格納位置(B)では前記クッションフレーム(14)を略水平状態に保持するように構成され,前記リクライニング機構(7)は,前記シートバック(6)の倒伏位置(D)では,前記バックフレーム(17)を略水平状態に保持するように構成されることを特徴とする,車両の折り畳み式シート装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の折り畳み式シート装置において,
前記シートクッション(4)を格納位置(B)に,前記シートバック(6)を倒伏位置(D)にそれぞれ移動したシート(1)の折り畳み状態では,前記クッションフレーム(14)の左右両側部と前記バックフレーム(17)の左右両側部とが平面視で重なるように,これらクッションフレーム(14)及びバックフレーム(17)が構成されることを特徴とする,車両の折り畳み式シート装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両の折り畳み式シート装置において,
前記クッション格納機構(5)は,一端部が第1ピボット(21)を介して前記シート支持台(2)に,他端部が第2ピボット(22)を介して前記クッションフレーム(14)の前端部側面にそれぞれ連結される前部揺動アーム(19)と,この前部揺動アーム(19)の後方で一端部が第3ピボット(23)を介して前記シート支持台(2)に,他端部が第4ピボット(24)を介して前記クッションフレーム(14)の後端部側面にそれぞれ連結される,前記前部揺動アーム(19)より有効長が短い後部揺動アーム(20)とよりなり,前記第2揺動アーム(19)を略鉛直な起立姿勢から後方への倒れ姿勢に回動すると共に,後部揺動アーム(20)を前方への張り出し姿勢から垂下姿勢に回動することにより,前記クッションフレーム(14)を略水平状態にした前記シートクッション(4)の格納位置(B)を得るようにしたことを特徴とする,車両の折り畳み式シート装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両の折り畳み式シート装置において,
前記シートクッション(4)の使用位置(A)では,前記第2ピボット(22)の中心が前記クッションフレーム(14)の側部の中心軸線(Y)より上方へオフセット(f1)して配置される一方,前記第4ピボット(24)の中心が前記クッションフレーム(14)の側部の中心軸線(Y)より下方へオフセット(f2)して配置されることを特徴とする,車両の折り畳み式シート装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−131289(P2012−131289A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283662(P2010−283662)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]