説明

車両の操作ペダル支持構造

【課題】部品点数や構造の複雑化等を招くことなく、車両衝突時の操作ペダルの後退を確実に抑制することができると共に、衝突後も操作ペダルを使用することができる車両の操作ペダル支持構造を提供すること。
【解決手段】ブレーキペダル(操作ペダル)1のペダルアーム2の上端部をペダルブラケット3にペダル軸4を中心として揺動可能に取り付ける車両のプレーキペダル(操作ペダル)1の支持構造において、前記ペダル軸4をその中心軸線Oに対して偏心した位置の軸線を有する固定軸19によって前記ペダルブラケット3に回動可能且つ該固定軸19と相対回転不能に取り付け、車両衝突時の前記ペダルブラケット3の変位を前記固定軸19の回転に変換して前記ペダル軸4を前記ペダルブラケット3に対して前記固定軸19を中心として回動させるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突時の操作ペダルの後退動を抑制するようにした車両の操作ペダル支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の運転席にはブレーキペダルやクラッチペダル等の操作ペダルが設けられているが、図3にブレーキペダルの支持構造の従来例を示す。
【0003】
即ち、図3はブレーキペダル支持構造の従来例を示す側断面図であり、ブレーキペダル101は、その上端部がペダルブラケット103にペダル軸104によって揺動可能に軸支されており、ペダルブラケット103は、エンジンルームS1と車室S2とを仕切るように設けられたダッシュパネル105に取り付けられている。そして、ダッシュパネル105には、エンジンルームS1内に配設されたブレーキブースタ106がペダルブラケット103との共締めによって取り付けられており、該ブレーキブースタ106から車室S2内に延びるプッシュロッド107の先端はブレーキペダル101の中間部に連結されている。
【0004】
斯かる支持構造を備えた車両が前面衝突等によって車体前方から衝撃荷重を受けると、図4に示すように、エンジンルームS1内に配設されたエンジンEが車両後方(図示矢印方向)に移動し、該エンジンEによってブレーキブースタ106が車両後方に押される可能性があり、更に場合によっては、ダッシュパネル105が変形するとともに、ブレーキブースタ106のプッシュロッド107に連結されたブレーキペダル101がペダル軸104を中心として図4に鎖線にて示す位置からに実線にて示す位置まで矢印方向(時計方向)に回動する虞がある。
【0005】
そこで、車両が前面衝突等によって前方から衝撃荷重を受けた場合にブレーキペダルの後退を制限するためのペダル後退抑制機構が装備されており、このペダル後退抑制機構については従来から種々の提案がなされている。
【0006】
例えば、特許文献1には、ペダルブラケットに回動レバーを枢支し、車両衝突時の前方からの衝撃によって回動レバーがペダルブラケットと共に車両後方へ移動してステアリングコラム支持用の車体側部材に当接すると、該回動レバーが回動してペダル軸を押し下げ、該ペダル軸と共にブレーキペダルをペダルブラケットから脱落させるようにした構成が提案されている。
【0007】
又、特許文献2には、ベダルブラケットに対して相対移動可能なスライドプレートを車体側に固定するとともに、突出部がスライドプレートの孔部に係合するピボットブラケットをシャフトによってペダルブラケットに回動可能に軸支する構成が提案されている。これによれば、車両の前面衝突時にペダルブラケットがスライドプレートに対して車両後方に相対移動すると、ピボットブラケットの突出部とスライドプレートの孔部との係合が外れてピボットブラケットの回動が許容されるとともに、ピボットブラケットの突出部がスライドプレートの孔部の後縁で前方へ押される。すると、ピボットブラケットが後下方に回動し、これによってピボットプラケットを軸支するシャフトが後退動するため、ペダル軸が斜め後下方に移動し、ブレーキペダルは、ブレーキブースタのプッシュロッドとの連結点を中心として回動してブレーキペダルの踏み込み位置を車両前方側へ引き寄せ、車両衝突時のブレーキペダルの後退が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−015882号公報
【特許文献2】特許第3892653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1において提案されたブレーキペダルの支持構造では、衝突の規模に関わらずペダル軸と共にブレーキペダルがペダルブラケットから脱落するため、その後はブレーキベダルの操作が不可能となり、軽微な衝突の後に車両を移動させる際等に不便であるという問題がある。
【0010】
又、特許文献2において提案されたブレーキペダル支持構造では、ブレーキペダルのペダル軸が回動可能なピボットブラケット上に配されているため、高い支持剛性を確保することと、ガタを無くすことが難しく、又、部品点数が増加して構造が複雑化するという問題がある。
【0011】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、部品点数や構造の複雑化等を招くことなく、車両衝突時の操作ペダルの後退を確実に抑制することができると共に、衝突後も操作ペダルを使用することができる車両の操作ペダル支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、操作ペダルのペダルアームの上端部をペダルブラケットにペダル軸を中心として揺動可能に取り付ける車両の操作ペダル支持構造において、前記ペダル軸をその中心軸線に対して偏心した位置の軸線を有する固定軸によって前記ペダルブラケットに回動可能且つ該固定軸と相対回転不能に取り付け、車両衝突時の前記ペダルブラケットの変位を前記固定軸の回転に変換して前記ペダル軸を前記ペダルブラケットに対して前記固定軸を中心として回動させるよう構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ペダルアームの前記ペダル軸よりも下方の中間部にブースタのプッシュロッドを連結するとともに、前記ペダル軸をその揺動中心軸線が前記固定軸の軸線よりも車両前方に位置するよう配置し、車両衝突時に前記ペダル軸の揺動中心軸線と前記固定軸の軸線の位置関係が逆転するよう前記ペダル軸を回動させることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、ダッシュパネルに固定された前記ペダルブラケットを車両衝突時に移動可能にカウルボックスに連結し、車両衝突時の前記ペダルブラケットとカウルボックス間の相対変位を前記固定軸の回転運動に変換する変換機構を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記変換機構は、前記カウルボックスに固定されたリーンフォース部材に形成されたラックと前記固定軸の端部に形成されたピニオンを互いに噛合させて成るラックアンドピニオン機構で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、車両衝突時の衝撃によってペダルブラケットが車両後方に変位すると、その変位が固定軸の回転に変換されてペダル軸がペダルブラケットに対して固定軸と共に回動するが、固定軸はペダル軸の揺動中心軸線に対して偏心した軸線を有するため、該固定軸と共にペダル軸が回動すると該ペダル軸の揺動軸線が車両後方に移動し、操作ペダルの上端部がペダル軸と共に車両後方に移動する。このため、操作ペダルは、その中間連結点(例えば、ブースタのプッシュロッドの連結点)を中心として回動し、その中間連結点よりも下方の部位が車両の前方側に相対的に移動する。この結果、車両衝突時に操作ペダルの特に下半部の後退が抑制される。又、このような構成によれば、車両衝突後にも操作ペダルの操作が可能であるとともに、ペダルブラケットに軸支された回動レバーやピボットブラケット等を含んだ複雑な構造を用いる必要がないため、支持構造が単純化して部品点数の削減や軽量化、コストダウン等を図ることができる。更に、ペダルブラケットに回動可能に軸支された揺動部材上にペダル軸を配する構成を採用していないため、操作ペダルの支持構造に高い剛性が確保されるとともに、ガタの発生を防いで操作ペダルの安定した動作を確保することができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、通常状態ではペダル軸をその揺動中心軸線が固定軸の軸線よりも車両前方に位置するよう配置し、車両衝突時にはペダル軸の揺動中心軸線と固定軸の軸線の位置関係が逆転するようペダル軸を回動させるようにしたため、車両衝突時には操作ペダルがその中間部のプッシュロッド連結点を中心としてそれよりも下方の部位が車両前方へ移動するよう回動する。このため、操作ペダルのプッシュロッド連結点よりも下方の部位が車両前方に移動して相対的に乗員から離れる方向に移動することになる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、車両衝突時のカウルボックスの車両後方への移動は軽微であるため、車両衝突時にはペダルブラケットと共に固定軸がカウルボックスに対して車両後方へ相対移動し、両者の相対変位が変換機構によって固定軸の回転運動に変換されるため、固定軸と共にペダル軸が回動して該ペダル軸の揺動軸線が車両後方に移動し、該ペダル軸を中心として回動する操作ペダルの後退が抑制される。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、車両衝突時のペダルブラケットとカウルボックス(リーンフォース部材)との相対変位が簡単な構成のラックアンドピニオン機構によって回転軸の回転運動に確実に変換される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るブレーキペダル支持構造と作用を説明するための側面図である。
【図2】本発明に係るブレーキペダル支持構造の分解斜視図である。
【図3】従来のブレーキペダル支持構造を示す側断面図である。
【図4】従来のブレーキペダル支持構造の車両衝突時の状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施の形態は本発明をブレーキペダルの支持構造に適用したものであって、図1はブレーキペダル支持構造と作用を説明するための側面図、図2は同ブレーキペダル支持構造の分解斜視図である。
【0023】
図1に示すように、ブレーキペダル1は、そのペダルアーム2の上端部がペダルブラケット3にペダル軸4によって揺動可能に軸支されており、ペダルブラケット3は、エンジンルームS1と車室S2とを仕切るように設けられたダッシュパネル5に取り付けられている。そして、ダッシュパネル5には、エンジンルームS1内に配設されたブレーキブースタ6がペダルブラケット3との共締めによって取り付けられており、該ブレーキブースタ6から車室内に延びるプッシュロッド7の先端はペダルアーム2のペダル軸4よりも下方の中間部に連結されている。尚、ペダルアーム2の下端には、乗員が足で踏み込むためのペダル踏面8が取り付けられている。
【0024】
又、ダッシュパネル5の上端はカウルボックス9に取り付けられており、カウルボックス9の下面にはリーンフォース部材10が固定されている。
【0025】
ところで、図2に示すように、前記ペダルブラケット3と前記リーンフォース部材10は下方が開口する門型の部材であって、ペダルブラケット3の上壁3aには車両前後方向に延びる左右2つの溝11と、これらの溝11に連通する車幅方向に長い溝12が形成されている。そして、ペダルブラケット3の左右の側壁3bには円孔13が形成されている。
【0026】
又、前記リーンフォース部材10は、ペダルブラケット3の上端部に車両前後方向に相対移動可能(実際には、後述のように車両衝突時にペダルブラケット3がリーンフォース部材10に対して車両後方へ相対移動する)に外嵌される部材であって、その上壁10aの左右2箇所(ペダルブラケット3の上壁3aに形成された前記2つの溝11の位置に対応する箇所)には円孔14が形成され、左右の側壁10bの下端には車両前後方向にラック15が形成されている。
【0027】
他方、ブレーキペダル1のペダルアーム2の上端部には円筒状のボス16が車幅方向に挿通固着されており、その内部には前記ペダル軸4が左右のブッシュ17を介して挿通されており、ペダルアーム2の上端部はペダル軸4を中心として揺動することができる。そして、上記ペダル軸4には、その軸心(ペダルアーム2の揺動中心軸線O)に対して平行にεだけ偏心した位置にスプライン孔18が車幅方向に貫設されている。
【0028】
而して、ペダル軸4は、ペダルアーム2の上端に挿通固着されたボス16の内部に通された状態でペダルブラケット3の左右の側壁3bの間に嵌め込まれ、これに貫設されたスプライン孔18とペダルブラケット3の左右の側壁3bに形成された円孔13とが合わせられた状態で、これらの円孔13とスプライン孔18に横方向から固定軸19が通される。そして、固定軸19のペダルブラケット3の一方の側壁3bから外側方に突出する端部には歯付ナット20が結着されており、該歯付ナット20の外周にはピニオン21が刻設されている。ここで、固定軸19の頭部19aの外周にはピニオン22が刻設されており、頭部19aから水平に延びる軸部19bはスプライン孔18とスプライン嵌合するスプライン軸を構成している。尚、歯付ナット20に代えて、内周にスプラインが形成され、外周にピニオンが刻設された歯付ワッシャを使用しても良い。
【0029】
従って、上述のように固定軸19がペダルブラケット3の左右の側壁3bに形成された円孔13とペダル軸4に貫設されたスプライン孔18に横方向から通されると、ペダル軸4はペダルブラケット3に回動可能且つ固定軸19と相対回転不能(固定軸19と共に回動するように)に取り付けられ、このペダル軸4の揺動中心軸線O(図1参照)を中心としてペダルアーム2が揺動する。このとき、固定軸19に形成されたピニオン22と歯付ナット20に形成されたピニオン21は、リーンフォース部材10の左右の側壁10bの下端に形成されたラック15にそれぞれ噛合しており、これらのラック15とピニオン21,22はラックアンドピニオン機構を構成している。尚、後述のように、ラックアンドピニオン機構は、車両衝突時のペダルブラケット3とリーンフォース部材10と間の車両前後方向の相対変位を固定軸19とペダル軸4の回転に変換する変換機構を構成するものである。
【0030】
而して、上述のようにペダル軸4と固定軸19及び歯付ナット20を回動可能に保持するペダルブラケット3は、リーンフォース部材10の2つの円孔14に挿通する不図示のボルトをリーンフォース部材10の上壁10aに形成された左右2つの溝11に通し、各ボルトをカウルボックス9に取り付けられた不図示のナットに締め付けることによってカウルボックス9にも取り付けられており、溝11によってリーンフォース部材10に対して相対移動可能に取り付けられている。
【0031】
次に、以上のように構成されたプレーキペダル1の支持構造の作用を図1に基づいて説明する。
【0032】
車両が衝突する前の通常状態においては、図1に実線にて示すようにペダル軸4はその揺動中心軸線Oが固定軸19の軸線Pよりも車両前方に位置するように配置されており、この状態で乗員がブレーキペダル1のペダル踏面8を踏み込むと、ペダルアーム2がその上端のペダル軸4の揺動中心軸線Oを中心として揺動し、該ペダルアーム2の中間部に連結されたブレーキブースタ6のプッシュロッド7が車両前方に押されてブレーキブースタ6が作動し、該ブレーキブースタ6によって乗員の踏力が軽減されるとともに、不図示のブレーキ装置が作動して所要の制動作用がなされる。
【0033】
そして、走行中の車両が前面衝突すると、前方からの衝撃荷重によってダッシュパネル5が変形し、これに取り付けられたブレーキブースタ6が車両後方に移動し、そのプッシュロッド7がブレーキペダル1のペダルアーム2の中間点を車両後方に押すためにペダルアーム2はペダル軸4を中心として車両後方に回動しようとする。
【0034】
然るに、本実施の形態では、車両衝突時の前方からの衝撃荷重によってペダルブラケット3がリーンフォース部材10に対して車両後方に相対移動する。このときの状態を図1に鎖線にて示すが、便宜上、図1にはリーンフォース部材10が車両前方に相対移動するよう描いている。尚、カウルボックス9及びこれに取り付けられたリーンフォース部材10の車両前方からの衝撃荷重による車両後方への移動は軽微であり、ペダルブラケット3がリーンフォース部材10に対して車両後方に相対移動するが、この相対移動は、該ペダルブラケット3の上壁3aに形成された左右2つの溝11とこれら挿通する不図示のボルトとの相対滑りによってなされる。
【0035】
而して、上述のようにペダルブラケット3がリーンフォース部材10に対して車両後方に相対移動すると、これに挿通する固定軸19とその端部に固着された歯付ナット20も同方向に移動するため、リーンフォース部材10の左右の側壁10bの下端に形成されたラック15に噛合するピニオン21,22がそれぞれ形成された固定軸19と歯付ナット20が図1の矢印方向(時計方向)に回動する。
【0036】
前述のようにペダル軸4と固定軸19とはスプライン嵌合によって連結されているため、上述のように固定軸19が回動するとペダル軸4は固定軸19と共にペダルブラケット3に対して図1の矢印方向に回動し、図1に鎖線にて示すようにペダル軸4の揺動中心軸線Oと固定軸19の軸線Pの位置関係が逆転し、ペダル軸4の揺動中心軸線Oが固定軸19の軸線Pに対して車両後方に移動する。このため、ペダル軸4の揺動中心軸線Oを中心として回動するブレーキペダル1のペダルアーム2も車両後方に移動する。そして、該ペダルアーム2はその中間のプッシュロッド連結点Qを中心として図1の反時計方向に回動して図1に鎖線にて示す位置に移動する。
【0037】
以上の結果、ペダルアーム2はそのプッシュロッド連結点Qよりも下方の部位が車両の前方側に相対的に移動することとなり、車両衝突時にブレーキペダル1の特に下半部の後退が抑制される。尚、このような効果を得るためには、車両衝突時にペダル軸4の揺動中心軸線Oと固定軸19の軸線Pの位置関係が逆転すれば良く、ペダル軸4が一番大きく変位することができるよう該ペダル軸4を180°回動させることが望ましく、これはリーンフォース部材10に形成されたラック15の長さを調整することによって実現される。
【0038】
又、本実施の形態に係るブレーキペダル1の支持構成によれば、車両衝突後にもブレーキペダル1の操作が可能であるため、軽微な衝突時に車両を移動させる際等に便利である。そして、本実施の形態に係る支持構造においては、ペダルブラケット3に軸支された回動レバーやピボットブラケット等を含んだ複雑な構造を用いる必要がないため、支持構造が単純化して部品点数の削減や軽量化、コストダウン等を図ることができる。更に、ペダルブラケット3に回動可能に軸支された揺動部材上にペダル軸4を配する構成を採用していないため、ブレーキペダル1の支持構造に高い剛性が確保されるとともに、ガタの発生を防いでブレーキペダル1の安定した動作を確保することができる。
【0039】
尚、リーンフォース部材10の上壁10aに形成された左右2つの溝11の車両前後方向の長さを適当に設定すれば、車両衝突時の衝撃が大きくてペダルブラケット3の車両後方への移動量が一定値を超えると、リーンフォース部材10とペダルブラケット3を固定する不図示のボルトがリーンフォース部材10の上壁10aに形成された車幅方向に長い溝12に嵌まり、ペダルブラケット3がブレーキペダル1と共に脱落するよう構成することもできる。この場合、リーンフォース部材10はペダルブラケット3に外嵌されているため、ペダルブラケット3とブレーキペダル1の脱落が可能となる。
【0040】
又、本実施の形態に係る支持構造によれば、車両衝突時のペダルブラケット3とリーンフォース部材10との相対変位が簡単な構成のラックアンドピニオン機構によって回転軸19の回転運動に確実に変換されるという効果も得られる。
【0041】
尚、以上は本発明をブレーキペダルの支持構造に対して適用した形態について説明したが、本発明は、クラッチペダルを含む他の任意の操作ペダルの支持構造に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
1 ブレーキペダル(操作ペダル)
2 ペダルアーム
3 ペダルブラケット
3a ペダルブラケットの上壁
3b ペダルブラケットの側壁
4 ペダル軸
5 ダッシュパネル
6 ブレーキブースタ(ブースタ)
7 プッシュロッド
8 ペダル踏面
9 カウルボックス
10 リーンフォース部材
10a リーンフォース部材の上壁
10b リーンフォース部材の側壁
11,12 溝
13,14 円孔
15 ラック
16 ボス
17 ブッシュ
18 スプライン孔
19 固定軸
19a 固定軸の頭部
19b 固定軸の軸部
20 歯付ナット
21,22 ピニオン
O ペダルアームの揺動中心軸
P 固定軸の軸線
Q ペダルアームのプッシュロッド連結点
S1 エンジンルーム
S2 車室
ε ペダル軸のオフセット量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ペダルのペダルアームの上端部をペダルブラケットにペダル軸を中心として揺動可能に取り付ける車両の操作ペダル支持構造において、
前記ペダル軸をその中心軸線に対して偏心した位置の軸線を有する固定軸によって前記ペダルブラケットに回動可能且つ該固定軸と相対回転不能に取り付け、車両衝突時の前記ペダルブラケットの変位を前記固定軸の回転に変換して前記ペダル軸を前記ペダルブラケットに対して前記固定軸を中心として回動させるよう構成したことを特徴とする車両の操作ペダル支持構造。
【請求項2】
前記ペダルアームの前記ペダル軸よりも下方の中間部にブースタのプッシュロッドを連結するとともに、前記ペダル軸をその揺動中心軸線が前記固定軸の軸線よりも車両前方に位置するよう配置し、車両衝突時に前記ペダル軸の揺動中心軸線と前記固定軸の軸線の位置関係が逆転するよう前記ペダル軸を回動させることを特徴とする請求項1記載の車両の操作ペダル支持構造。
【請求項3】
ダッシュパネルに固定された前記ペダルブラケットを車両衝突時に移動可能にカウルボックスに連結し、車両衝突時の前記ペダルブラケットとカウルボックス間の相対変位を前記固定軸の回転運動に変換する変換機構を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両の操作ペダル支持構造。
【請求項4】
前記変換機構は、前記カウルボックスに固定されたリーンフォース部材に形成されたラックと前記固定軸の端部に形成されたピニオンを互いに噛合させて成るラックアンドピニオン機構で構成されることを特徴とする請求項3記載の車両の操作ペダル支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−218183(P2010−218183A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63787(P2009−63787)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】