説明

車両の操舵支援装置及び操舵支援方法

【課題】自車両の操舵角を目標とする操舵角へ素早く収束させることが可能な、車両の操舵支援装置及び操舵支援方法を提供する。
【解決手段】目標操舵角と現在操舵角との乖離度である操舵角偏差を算出する操舵角偏差算出回路6と、操舵角偏差を縮小させるための操舵支援トルクを算出するトルク指令値算出装置10と、トルク指令値算出装置10が算出した操舵支援トルクをステアリングホイールへ出力するEPS14と、操舵角偏差が縮小傾向にある状態では操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合いよりも大きく、操舵角偏差が拡大傾向にある状態では操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合い以下となるように、トルク指令値算出装置10が算出した操舵支援トルクを減衰させる減衰指令信号を算出し、算出した減衰指令信号により操舵支援トルクを減衰させるトルク指令減衰回路12を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵操作の支援となる情報を、ステアリングホイールを介して運転者に提供する、車両の操舵支援装置及び操舵支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車両を走行車線内に位置させることを目的として、運転者に、ステアリングホイール(操舵輪)を介して、操舵操作の支援となる情報を提供する操舵支援装置がある。このような操舵支援装置としては、例えば、特許文献1に記載されているものがある。
特許文献1に記載されている操舵支援装置は、目標とする操舵角と現在の操舵角との舵角偏差の大小に応じて、折れ線関数で定義したモータ電流の目標値を出力する技術であって、運転者が負担する操舵操作を低減するための技術である。このような操舵支援装置は、ステアリングホイールを制御して操舵操作における運転者の負担軽減を図る際に、ステアリングホイールへ十分な推進力(操舵支援トルク)を出力することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−78942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の操舵支援装置では、舵角偏差が小さくなるとモータ電流の値を小さくするため、現在の操舵角が目標とする操舵角を超えてしまった場合には、目標とする操舵角への収束が悪化するという問題が発生するおそれがある。目標とする操舵角への収束が悪化すると、狭路やS字路、クランク路を走行する場合等、厳密な操舵角を発生させたい状況や、目標とする操舵角を素早い操舵で実現させたい状況では、確実な操舵支援を行うことが困難であるという問題が発生するおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、操舵支援の確実性を向上させることが可能な、車両の操舵支援装置及び操舵支援方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、ステアリングホイールへ出力する操舵支援トルクを、自車両の目標状態と自車両の現在の状態との乖離度である状態乖離度を縮小させるために算出する。その際、状態乖離度が縮小傾向にある状態では操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合いよりも大きくなるように、操舵支援トルクを減衰させる減衰指令信号を算出する。これに加え、状態乖離度が拡大傾向にある状態では操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合い以下となるように、操舵支援トルクを減衰させる減衰指令信号を算出する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自車両の現在状態が目標状態に近くなるほど、操舵支援トルクの減衰力が、ステアリングホイールに強く作用することとなる。このため、自車両の操舵角を、目標とする操舵角へ素早く収束させることが可能となり、操舵支援の確実性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第一実施形態の操舵支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】トルク指令値算出装置及びトルク指令減衰回路を介して出力するトルク指令値の出力則を説明するための説明図である。
【図3】第一実施形態の操舵支援装置が行う処理を示すフローチャートである。
【図4】第二実施形態の操舵支援装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第二実施形態の操舵支援装置を備えた自車両の概略構成を示す図である。
【図6】トルク指令値算出装置及びトルク指令減衰回路を介して出力するトルク指令値の出力則を説明するための説明図である。
【図7】第二実施形態の操舵支援装置が行う処理を示すフローチャートである。
【図8】第三実施形態の操舵支援装置の構成を示すブロック図である。
【図9】障害物と自車両との関係を示す図である。
【図10】トルク指令値算出装置及びトルク指令減衰回路を介して出力するトルク指令値の出力則を説明するための説明図である。
【図11】第三実施形態の操舵支援装置が行う処理を示すフローチャートである。
【図12】第四実施形態の操舵支援装置の構成を示すブロック図である。
【図13】トルク指令減衰回路を介して出力するトルク指令値の出力則を説明するための説明図である。
【図14】第四実施形態の操舵支援装置が行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、本発明に関する実施形態として、四つの実施形態(第一から第四実施形態)について記載する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0009】
(構成)
図1は、本実施形態の操舵支援装置1の構成を示すブロック図である。
図1中に示すように、本実施形態の操舵支援装置1は、目標操舵角算出装置2と、操舵角センサ4と、操舵角偏差算出回路6と、操舵角速度センサ8と、トルク指令値算出装置10と、トルク指令減衰回路12と、EPS14を備えている。
目標操舵角算出装置2は、撮像回路16と、画像処理回路18と、目標経路算出回路20と、目標操舵角算出回路22を備えている。
【0010】
撮像回路16は、例えば、CCDカメラ等を有して形成されており、自車両の周囲(例えば、自車両の進行方向である車両前後方向前方)の環境を画像として取得する。そして、撮像回路16は、取得した画像を含む情報信号を、画像処理回路18へ出力する。
画像処理回路18は、撮像回路16から入力された情報信号に基づき、撮像回路16が取得した画像に対するエッジ検出等を行ない、さらに、オブジェクトの認識を行なうことにより、路上のうち、自車両が走行可能な領域を検出する。そして、画像処理回路18は、検出した領域を含む情報信号を、目標経路算出回路20へ出力する。
【0011】
ここで、オブジェクトの認識を行う対象とは、具体的に、走行車線の境界を示す路上の白線や、壁、路上に存在する障害物や他車両、歩行者等である。そして、これらのオブジェクトが存在しない領域が、路上のうち、自車両が走行可能な領域となる。
目標経路算出回路20は、画像処理回路18から入力された情報信号に基づき、画像処理回路18が検出した領域において、自車両が辿るべき目標経路を算出し、この算出した目標経路を含む情報信号を、目標操舵角算出回路22へ出力する。
【0012】
目標経路を算出する際には、具体的に、まず、画像処理回路18が検出した、自車両が走行可能な領域から、自車両の左右にそれぞれ存在する、走行可能な領域とその他の領域との境界(車幅方向左側の境界と車幅方向右側の境界)を検出する。そして、路上の走行可能な領域における、車幅方向左側の境界と車幅方向右側の境界とを結んだ直線の中点を複数求め、これらの中点の集合を、目標経路として算出する。
【0013】
目標操舵角算出回路22は、目標経路算出回路20から入力された情報信号に基づき、目標経路算出回路20が算出した目標経路から、ステアリングホイールの目標とする回転角度(操舵操作量)である目標操舵角を算出する。そして、目標操舵角算出回路22は、算出した目標操舵角を含む情報信号を、操舵角偏差算出回路6へ出力する。
したがって、本実施形態では、自車両の目標状態を、ステアリングホイールの目標とする回転角度である目標操舵角とする。なお、以下の説明では、目標操舵角を、「目標操舵角θ*」と記載する場合がある。
【0014】
目標操舵角θ*を算出する際には、具体的に、まず、自車両の走行路上において、自車両の現在位置からt秒後に通過すると予測される目標経路上の点を、目標点として設定する。そして、走行路上における自車両の現在位置と、現在位置におけるステアリングホイールの回転角度から、設定した目標点に到達するために必要な操舵角を算出し、この算出した操舵角を目標操舵角θ*とする。
【0015】
ここで、本実施形態では、予め、目標操舵角算出回路22に、車両運動モデルを記憶させておき、この車両運動モデルを、目標操舵角θ*の算出に用いる。このため、より正確な目標操舵角θ*の算出が可能となっている。
なお、車両運動モデルとは、例えば、自車両の走行時における、操舵角と速度に応じて生じる車両の運動(ヨーレート等)を示すモデルであり、車両に個別のパラメータである。
【0016】
以上により、目標操舵角算出装置2は、目標操舵角θ*を算出し、この算出した目標操舵角θ*を含む情報信号を、操舵角偏差算出回路6へ出力する。これにより、目標操舵角算出装置2は、操舵支援装置1を備えた自車両の目標状態である目標操舵角θ*を含む情報信号を、操舵角偏差算出回路6へ提供する。
操舵角センサ4は、例えば、ステアリングホイールを回転可能に支持するステアリングコラムに設けてあり、運転者による、ステアリングホイールの現在の回転角度(操舵操作量)である現在操舵角を検出する。そして、この検出したステアリングホイールの現在操舵角を含む情報信号を、操舵角偏差算出回路6へ出力する。
【0017】
したがって、本実施形態では、自車両の現在の状態である現在状態を、ステアリングホイールの現在の回転角度である現在操舵角とする。なお、以下の説明では、現在操舵角を、「現在操舵角θ」と記載する場合がある。
なお、近年の車両は、標準的に、ステアリングホイールの操舵角を検出可能なセンサを備えている場合が多い。このため、本実施形態では、操舵角センサ4として、車両に既存の、ステアリングホイールの操舵角を検出可能なセンサを用いた場合について説明する。
【0018】
操舵角偏差算出回路6は、目標操舵角算出装置2及び操舵角センサ4から入力された情報信号に基づき、目標操舵角算出装置2が算出した目標操舵角θ*と操舵角センサ4が検出した現在操舵角θとの差分である操舵角偏差を算出する。
したがって、本実施形態では、目標状態と現在状態との乖離度である状態乖離度を、目標操舵角θ*と現在操舵角θとの差分である操舵角偏差とする。なお、以下の説明では、操舵角偏差を、「操舵角偏差δθ」と記載する場合がある。
【0019】
ここで、操舵角偏差δθを算出する際には、現在操舵角θから目標操舵角θ*を減算する。したがって、操舵角偏差δθは、以下の式(1)により算出される。
δθ=θ−θ* … (1)
また、操舵角偏差算出回路6は、算出した操舵角偏差δθを含む情報信号を、トルク指令値算出装置10及びトルク指令減衰回路12へ出力する。
【0020】
操舵角速度センサ8は、操舵角センサ4と同様、例えば、ステアリングホイールを回転可能に支持するステアリングコラムに設けてあり、自車両の運転者による、ステアリングホイールの現在の操舵時における回転角速度である操舵角速度を検出する。そして、この検出した操舵角速度を含む情報信号を、トルク指令減衰回路12へ出力する。なお、以下の説明では、操舵角速度を、「操舵角速度θ’1」と記載する場合がある。
【0021】
なお、近年の車両は、標準的に、ステアリングホイールの操舵角速度を検出可能なセンサを備えている場合が多い。このため、本実施形態では、操舵角速度センサ8として、車両に既存の、ステアリングホイールの操舵角速度を検出可能なセンサを用いた場合について説明する。
トルク指令値算出装置10は、操舵角偏差算出回路6から入力された情報信号に基づき、操舵角偏差算出回路6が算出した操舵角偏差δθを縮小させるための操舵支援トルクの指令値である、トルク指令信号を算出する。そして、トルク指令値算出装置10は、算出したトルク指令信号を生成して、トルク指令減衰回路12へ出力する。なお、以下の説明では、トルク指令信号を、「トルク指令値To1」と記載する場合がある。
【0022】
本実施形態では、一例として、トルク指令値To1を、図2(a)中に示すマップと、以下に示す式(2)を用いて算出する場合について説明する。なお、図2は、トルク指令値算出装置10及びトルク指令減衰回路12を介して出力するトルク指令値To1の出力則を説明するための説明図である。
o1=K1×δθ=K1×(θ−θ*) … (2)
なお、上記の式(2)中において、「K1」は、目標操舵角算出回路22に記憶させた目標操舵角への収束の速さに対応する係数である。この係数は、固定の定数或いは、車速等に応じた変数として設定する。また、上記の式(2)中に示されているように、トルク指令値To1は、操舵角偏差δθに比例する値となる。
【0023】
トルク指令減衰回路12は、操舵角偏差算出回路6、操舵角速度センサ8及びトルク指令値算出装置10から入力された情報信号に基づき、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To1を減衰させる減衰指令信号を算出する。そして、この算出した減衰指令信号によりトルク指令値To1を減衰させたトルク減衰指令値を生成して、EPS14へ出力する。
【0024】
ここで、トルク指令減衰回路12は、減衰指令信号を算出する際に、以下に説明する比較に基づく分岐を行う。
具体的には、操舵角偏差算出回路6が算出した操舵角偏差δθと、図2中に示す予め設定した操舵角偏差係数ξとを比較する。また、操舵角偏差δθと操舵角偏差係数ξとの比較結果により、現在操舵角θと目標操舵角θ*とを比較する。
なお、「操舵角偏差係数ξ」とは、例えば、図2中に示すように、目標操舵角θ*を基準とした、トルク減衰指令値を生成する際に用いる係数(減衰トルク係数C1)を最小値(Cl1)以上とする閾値であり、固定の定数或いは車速等に応じた変数として設定する。
【0025】
そして、操舵角偏差δθと操舵角偏差係数ξとの比較結果、または、現在操舵角θと目標操舵角θ*との比較結果に応じて、三種類のうち一種類のトルク減衰指令値T1を生成する。
トルク減衰指令値T1を生成したトルク指令減衰回路12は、この生成したトルク減衰指令値T1を含む指令信号を、EPS14へ出力する。
【0026】
以下、操舵角偏差δθと操舵角偏差係数ξとの比較結果、または、現在操舵角θと目標操舵角θ*との比較結果と、これらの結果に応じて生成される三種類のトルク減衰指令値T1との関係について説明する。
操舵角偏差δθと操舵角偏差係数ξとを比較した結果、操舵角偏差δθが操舵角偏差係数ξ以上である場合、トルク指令減衰回路12は、最小減衰トルク信号Tmin1を算出する。なお、最小減衰トルク信号Tmin1とは、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To1を減衰させる減衰指令信号のうち、トルク指令値To1(トルク指令信号)の減衰度合いが最小のものである。
【0027】
そして、トルク指令減衰回路12は、算出した最小減衰トルク信号Tmin1を、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To1に加算して、トルク減衰指令値T1を生成する。この場合、トルク減衰指令値T1は、以下の式(3)で表される値となる。
1=To1+Tmin1 … (3)
【0028】
なお、本実施形態では、一例として、最小減衰トルク信号Tmin1を、図2(b)中に示す値の減衰トルク係数C1(Cl1)と、以下に示す式(4)を用いて算出する場合について説明する。また、図2(b)中に示す「Cl1」は、減衰トルク係数C1の最小値である。
min1=Cl1×θ’1 … (4)
ここで、操舵角偏差δθが操舵角偏差係数ξ以上である場合とは、現在操舵角θが目標操舵角θ*から離れる方向へ変化しており、操舵角偏差δθが拡大傾向にある状態である。
【0029】
すなわち、操舵支援トルク減衰手段12は、操舵角偏差算出回路6が算出した操舵角偏差δθが拡大傾向にある状態では、トルク指令信号の減衰度合いが予め設定した減衰度合い以下となるように、減衰指令信号を算出する。なお、本実施形態では、操舵角偏差算出回路6が算出した操舵角偏差δθが拡大傾向にある状態では、トルク指令信号(トルク指令値To1)の減衰度合いが最小となるように、減衰指令信号(最小減衰トルク信号Tmin1)を算出する場合を説明する。
【0030】
一方、操舵角偏差δθと操舵角偏差係数ξとを比較した結果、操舵角偏差δθが、操舵角偏差係数ξ未満である場合、トルク指令減衰回路12は、目標操舵角算出装置2が算出した目標操舵角θ*と、操舵角センサ4が検出した現在操舵角θとを比較する。この比較は、現在操舵角θが、目標操舵角θ*へ近づく方向へ変化している場合、すなわち、運転者が、自車両を目標に向けて操舵している場合に行なう。
【0031】
そして、現在操舵角θと目標操舵角θ*とを比較した結果、現在操舵角θが目標操舵角θ*を通過していない場合、トルク指令減衰回路12は、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To1を減衰させる中間減衰トルク信号Ta1を算出する。なお、中間減衰トルク信号Ta1とは、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To1を減衰させる減衰指令信号のうち、トルク指令値To1(トルク指令信号)の減衰度合いが最小と最大の中間の大きさのものである。
【0032】
ここで、操舵角偏差δθが、操舵角偏差係数ξ未満であり、さらに、現在操舵角θが目標操舵角θ*を通過していない場合とは、現在操舵角θが目標操舵角θ*へ近づく方向へ変化している状態において、現在操舵角θが目標操舵角θ*と一致していない状態である。これは、操舵角偏差δθが縮小傾向にある状態である。
すなわち、トルク指令減衰回路12は、操舵角偏差算出回路6が算出した操舵角偏差δθが縮小傾向にある状態では、トルク指令信号の減衰度合いが、予め設定した減衰度合いよりも大きくなるように、減衰指令信号を算出する。具体的には、最小減衰トルク信号Tmin1よりもトルク指令信号(トルク指令値To1)の減衰度合いが大きい、減衰指令信号(中間減衰トルク信号Ta1)を算出する。
【0033】
ここで、「予め設定した減衰度合い」は、例えば、自車両の車速に応じて、予め設定する値であり、例えば、車速が低いほど大きく設定する。また、「予め設定した減衰度合い」としては、例えば、自車両の車両特性(ステアリング特性等)に応じて、予め設定してもよい。
ここで、中間減衰トルク信号Ta1の算出は、自車両の運転者によるステアリングホイールの回転方向を参照して行なう。
【0034】
具体的には、ステアリングホイールの回転方向が右方向である場合には、図2(b)中に示す値の減衰トルク係数C1(Cl1、Ch1)と、以下に示す式(5)を用いて、中間減衰トルク信号Ta1を算出する。なお、ステアリングホイールの回転方向が右方向である場合とは、自車両を右折させる方向(図2(b)中に示す「右操舵」)に対応している。また、図2(b)中に示す「Ch1」は、減衰トルク係数C1の最大値である。
【0035】
【数1】

【0036】
一方、ステアリングホイールの回転方向が左方向である場合には、図2(b)中に示す値の減衰トルク係数C1(Cl1、Ch1)と、以下に示す式(6)を用いて、中間減衰トルク信号Ta1を算出する。なお、ステアリングホイールの回転方向が左方向である場合とは、自車両を左折させる方向(図2(b)中に示す「左操舵」)に対応している。
【0037】
【数2】

【0038】
そして、中間減衰トルク信号Ta1を算出したトルク指令減衰回路12は、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To1に、中間減衰トルク信号Ta1を加算して、トルク減衰指令値T1を生成する。この場合、トルク減衰指令値T1は、以下の式(7)で表される値となる。
1=To1+Ta1 … (7)
【0039】
一方、現在操舵角θと目標操舵角θ*とを比較した結果、現在操舵角θが目標操舵角θ*を通過している場合、トルク指令減衰回路12は、最大減衰トルク信号Tmax1を算出する。
ここで、「現在操舵角θが目標操舵角θ*を通過している場合」とは、現在操舵角θが目標操舵角θ*を通過した時点と、現在操舵角θが目標操舵角θ*を通過した後、現在操舵角θが目標操舵角θ*から離れる方向へ変化している場合を含む。また、現在操舵角θが目標操舵角θ*を通過する過程において、現在操舵角θが目標操舵角θ*と一致した時点は、操舵角偏差δθ(状態乖離度)が0となった時点となる。
【0040】
なお、最大減衰トルク信号Tmax1とは、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To1を減衰させる減衰指令信号のうち、トルク指令値To1(トルク指令信号)の減衰度合いが最大のものである。
そして、トルク指令減衰回路12は、算出した最大減衰トルク信号Tmax1を、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To1に加算して、トルク減衰指令値T1を生成する。この場合、トルク減衰指令値T1は、以下の式(8)で表される値となる。
1=To1+Tmax1 … (8)
【0041】
なお、本実施形態では、一例として、最大減衰トルク信号Tmax1を、図2(b)中に示す値の減衰トルク係数C1(Ch1)と、以下に示す式(9)を用いて算出する場合について説明する。
max1=Ch1×θ’1 … (9)
ここで、操舵角偏差δθが、操舵角偏差係数ξ未満であり、さらに、現在操舵角θが目標操舵角θ*を通過している場合とは、操舵角偏差δθが減少して0となった状態と、操舵角偏差δθが0となった状態から操舵角偏差δθが増加した状態を含んでいる。
【0042】
すなわち、トルク指令減衰回路12は、トルク指令信号(トルク指令値To1)の減衰度合いが最大となるように、操舵角速度θ’1に、予め設定した係数のうち最大の値である減衰トルク係数Ch1を積算して、減衰指令信号(最大減衰トルク信号Tmax1)を算出する。ここで、最大減衰トルク信号Tmax1の算出は、操舵角偏差δθ(状態乖離度)が0となった時点で行なう。これに加え、最大減衰トルク信号Tmax1の算出は、操舵角偏差δθが0となった時点から操舵角偏差δθが増加した状態で行なう。
【0043】
以上により、トルク指令減衰回路12は、操舵角速度θ’1に応じて、トルク指令値To1(トルク指令信号)の減衰度合いが変化するように、減衰指令信号(Tmin1、Ta1、Tmax1)を算出する(式(4)〜(6)及び(9)を参照)。
EPS14は、公知の電動パワーステアリング(Electric Power Steering)であり、ステアリングホイールに操舵支援トルクを出力可能な電動モータを有している。
【0044】
また、EPS14は、トルク指令減衰回路12から入力された指令信号に基づき、電動モータを制御して、トルク指令減衰回路12が生成したトルク減衰指令値T1に応じた操舵支援トルクを、ステアリングホイールへ出力する。
なお、通常、EPS14が行なう電動モータの制御は、電動モータに供給する電流を制御することによって行う。本実施形態においても、電動モータに供給する電流を制御することによって、電動モータの制御を行い、トルク減衰指令値T1に相当する操舵支援トルクを、ステアリングホイールへ出力する。
【0045】
(動作)
次に、図1及び図2を参照しつつ、図3を用いて、本実施形態の操舵支援装置1が行なう動作の一例について説明する。
図3は、本実施形態の操舵支援装置1が行う処理を示すフローチャートである。
図3中に示すフローチャートは、自車両が走行しており、自車両の運転者によって、操舵支援装置1を作動させるスイッチが操作(ON)された状態からスタートする(図3中に示す「スタート」)。
【0046】
操舵支援装置1を作動させると、目標操舵角算出装置2は、例えば、10[msec]毎等、所定のサンプリング時間毎に、目標操舵角θ*を算出(ステップS100に示す「目標操舵角算出」)する(ステップS100)。そして、目標操舵角θ*を算出した目標操舵角算出装置2は、算出した目標操舵角θ*を含む情報信号を、操舵角偏差算出回路6へ出力する。ステップS100において、目標操舵角θ*を算出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS102へ移行する。
【0047】
ステップS102では、操舵角センサ4により、運転者による現在操舵角θを検出(ステップS102に示す「操舵角検出」)する。そして、現在操舵角θを検出した操舵角センサ4は、検出したステアリングホイールの現在操舵角を含む情報信号を、操舵角偏差算出回路6へ出力する。ステップS102において、現在操舵角θを検出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS104の処理へ移行する。
【0048】
ステップS104では、操舵角偏差算出回路6により、目標操舵角θ*と現在操舵角θとの差分である操舵角偏差δθを算出(ステップS104に示す「操舵角偏差算出」)する。そして、操舵角偏差δθを算出した操舵角偏差算出回路6は、算出した操舵角偏差δθを含む情報信号を、トルク指令値算出装置10及びトルク指令減衰回路12へ出力する。ステップS104において、操舵角偏差δθを算出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS106へ移行する。
【0049】
ステップS106では、トルク指令値算出装置10により、トルク指令値To1を算出(ステップS106に示す「トルク指令値To1算出」)する。そして、トルク指令値To1を算出したトルク指令値算出装置10は、算出したトルク指令値To1を含む情報信号を、トルク指令減衰回路12へ出力する。ステップS106において、トルク指令値To1を算出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS108へ移行する。
【0050】
ステップS108では、操舵角速度センサ8により、操舵角速度θ’1を検出(ステップS108に示す「操舵角速度検出」)する。そして、操舵角速度θ’1を検出した操舵角速度センサ8は、検出した操舵角速度θ’1を含む情報信号を、トルク指令減衰回路12へ出力する。ステップS108において、操舵角速度θ’1を検出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS110へ移行する。
【0051】
ステップS110では、トルク指令減衰回路12により、操舵角偏差算出回路6が算出した操舵角偏差δθが、操舵角偏差係数ξ未満である(ステップS110に示す「操舵角偏差<ξ?」)か否かを判定する。
ステップS110において、操舵角偏差δθが操舵角偏差係数ξ以上である(図中に示す「NO」)と判定すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS112へ移行する。
【0052】
一方、ステップS110において、操舵角偏差δθが、操舵角偏差係数ξ未満である(図中に示す「YES」)と判定すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS114へ移行する。
ステップS112では、トルク指令減衰回路12により、EPS14へ出力する指令信号に含むトルク減衰指令値T1を生成し、この生成したトルク減衰指令値T1を含む指令信号を、EPS14へ出力する。
【0053】
ここで、トルク減衰指令値T1は、上述した式(3)を用いて生成(ステップS112に示す「T1=To1+Tmin1」)する。
ステップS112において、トルク減衰指令値T1(=To1+Tmin1)を含む指令信号をEPS14へ出力すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS122へ移行する。
【0054】
ステップS114では、ステップS102で検出した現在操舵角θが、ステップS100で算出した目標操舵角θ*を通過したか否か(ステップS114に示す「目標操舵角を通過?」)を判定する。なお、ステップS114で行なう判定は、ステップS102で検出した現在操舵角θが、ステップS100で算出した目標操舵角θ*へ向けて一方向に回転している場合に行なう。
【0055】
ステップS114において、現在操舵角θが目標操舵角θ*を通過していない(図中に示す「NO」)と判定すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS116へ移行する。
一方、ステップS114において、現在操舵角θが目標操舵角θ*を通過した(図中に示す「YES」)と判定すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS120へ移行する。
【0056】
ステップS116では、トルク指令減衰回路12により、中間減衰トルク信号Ta1を算出(ステップS116に示す「減衰トルクTa1算出」)する。ステップS116において、中間減衰トルク信号Ta1を算出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS118へ移行する。
ステップS118では、トルク指令減衰回路12により、EPS14へ出力する指令信号に含むトルク減衰指令値T1を生成し、この生成したトルク減衰指令値T1を含む指令信号を、EPS14へ出力する。
【0057】
ここで、トルク減衰指令値T1は、上述した式(7)を用いて生成(ステップS118に示す「T1=To1+Ta1」)する。
ステップS118において、トルク減衰指令値T1(=To1+Ta1)を含む指令信号をEPS14へ出力すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS122へ移行する。
ステップS120では、トルク指令減衰回路12により、EPS14へ出力する指令信号に含むトルク減衰指令値T1を生成し、この生成したトルク減衰指令値T1を含む指令信号を、EPS14へ出力する。
【0058】
ここで、トルク減衰指令値Tは、上述した式(8)を用いて生成(ステップS120に示す「T1=To1+Tmax1」)する。
ステップS120において、トルク減衰指令値T1(=To1+Tmax1)を含む指令信号をEPS14へ出力すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS122へ移行する。
ステップS122では、EPS14において、トルク指令減衰回路12から入力された指令信号に基づいて、電動モータに供給する電流を制御する。これにより、ステップS122では、トルク指令減衰回路12が生成したトルク減衰指令値T1に相当する操舵支援トルクがステアリングホイールへ出力されるように、EPS14を制御(ステップS122に示す「EPSを制御」)する。
【0059】
このとき、操舵支援装置1が行う処理が、上述したステップS112からステップS122へ移行した場合は、トルク指令値To1の減衰度合いが最小となるため、ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクは最大の減衰度合いを反映した値となる。
ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクが最大の減衰度合いを反映した値となると、自車両の運転者には、ステアリングホイールを介して、大きな操舵支援トルクが提供される。このため、自車両の現在の走行経路が目標とする走行経路から離れており、自車両が走行車線内から逸脱しそうな状態であっても、操舵操作の負担を低減することが可能となるとともに、自車両を走行車線内に位置させることが可能となる。
【0060】
また、操舵支援装置1が行う処理が、上述したステップS118からステップS122へ移行した場合は、トルク指令値To1の減衰度合いが最小値よりも大きくなるため、ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクは最大値よりも小さくなる。
ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクが最大値よりも小さくなると、自車両の運転者には、ステアリングホイールを介して、最大値よりも小さな操舵支援トルクが提供される。このため、自車両の現在の走行経路を目標とする走行経路へ近づけるために適切な操舵支援トルクが提供され、操舵操作の負担を低減することが可能となるとともに、自車両を走行車線内に位置させることが可能となる。
【0061】
また、操舵支援装置1が行う処理が、上述したステップS120からステップS122へ移行した場合は、トルク指令値To1の減衰度合いが最大となるため、ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクは最小値となる。
ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクが最小値となると、自車両の運転者には、ステアリングホイールを介して、小さな操舵支援トルクが提供される。このため、自車両の現在の走行経路を目標とする走行経路とした後に、自車両の走行経路が目標とする走行経路から離れることを抑制可能な操舵支援トルクが提供され、操舵操作の負担を低減することが可能となる。
【0062】
ステップS122においてEPS14を制御し、トルク指令減衰回路12が生成したトルク減衰指令値T1に応じた操舵支援トルクを、ステアリングホイールへ出力すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS100の処理に復帰する。
なお、上述したように、本実施形態の操舵支援装置1の動作で実施する操舵支援方法は、自車両の目標状態と自車両の現在の状態との乖離度である状態乖離度を縮小させるための操舵支援トルクをステアリングホイールへ出力する。この際、算出した状態乖離度が縮小傾向にある状態では操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合いよりも大きくなるように、操舵支援トルクを減衰させる。これに加え、算出した状態乖離度が拡大傾向にある状態では操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合い以下となるように、操舵支援トルクを減衰させる。
【0063】
以上により、目標操舵角算出装置2は、自車両の目標状態を提供する目標状態提供手段を形成し、操舵角センサ4は、自車両の現在の状態である現在状態を検出する現在状態検出手段を形成している。同様に、操舵角偏差算出回路6は、目標状態提供手段が算出した目標状態と現在状態検出手段が検出した現在状態との乖離度である状態乖離度を算出する、状態乖離度算出手段を形成している。
【0064】
また、操舵角速度センサ8は、自車両が有するステアリングホイールの、現在の回転角速度を操舵角速度として検出する操舵角速度検出手段を形成している。同様に、トルク指令値算出装置10は、状態乖離度算出手段が算出した状態乖離度を縮小させるための操舵支援トルクを算出する操舵支援トルク算出手段を形成している。
また、トルク指令減衰回路12は、操舵支援トルク算出手段が算出した操舵支援トルクを減衰させる減衰指令信号を算出し、この算出した減衰指令信号により操舵支援トルクを減衰させる操舵支援トルク減衰手段を形成している。同様に、EPS14は、操舵支援トルク算出手段が算出した操舵支援トルクをステアリングホイールへ出力する操舵特性制御手段を形成している。
【0065】
(第一実施形態の効果)
(1)操舵支援トルク減衰手段が、状態乖離度が縮小傾向にある状態では、操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合いよりも大きくなるように、減衰指令信号を算出する。また、状態乖離度が拡大傾向にある状態では、操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合い以下となるように、減衰指令信号を算出する。
このため、自車両の運転者がステアリングホイールを操舵する際に、操舵負荷の低い操舵操作が可能となる。また、自車両の現在状態が目標状態に近くなるほど、操舵支援トルクへの減衰力が、ステアリングホイールに強く作用することとなる。
その結果、自車両の操舵角を、目標とする操舵角へ素早く収束させることが可能となり、厳密な操舵角を発生させたい状況や、目標とする操舵角を素早い操舵で実現させたい状況において、操舵支援の確実性を向上させることが可能となる。
【0066】
(2)目標状態を目標操舵角とし、現在状態を現在操舵角とし、状態乖離度を目標操舵角と現在操舵角との差分としているため、目標操舵角と現在操舵角との差異を素早く収束させることが可能な操舵支援装置を、自車両の運転者に提供することが可能となる。
その結果、目標とする操舵角を素早い操舵で実現させたい状況において、操舵支援の確実性を向上させることが可能となる。
【0067】
(3)操舵角速度検出手段が、ステアリングホイールの現在の回転角速度を、操舵角速度として検出し、操舵支援トルク減衰手段が、操舵角速度検出手段が検出した操舵角速度に応じて、操舵支援トルクの減衰度合いが変化するように、減衰指令信号を算出している。
その結果、自車両の運転者に、操舵操作が滑らかであり、また、操舵操作における違和感の少ない操舵支援装置1を提供することが可能となる。
【0068】
(4)操舵支援トルク減衰手段が、操舵角速度検出手段が検出した操舵角速度に予め設定した係数を積算して、減衰指令信号を算出している。これに加え、操舵支援トルク減衰手段が、状態乖離度算出手段が算出した状態乖離度が0となった時点で操舵支援トルクの減衰度合いが最大となるように、減衰指令信号を算出している。
その結果、自車両の運転者は、ステアリングホイールを操作する際に発生する触覚的な感覚によって、自車両が目標状態に到達したことを理解することが可能となる。
【0069】
(5)操舵角速度検出手段が検出する操舵角速度に積算する予め設定した係数として、予め設定した係数のうち最大の値を用いる。これは、状態乖離度算出手段が算出した状態乖離度が減少して0となった時点に加え、状態乖離度が0となった時点から状態乖離度が増加した場合に限定して行なう。
その結果、自車両の運転者が、ステアリングホイールを操作する際に発生する触覚的な感覚で、自車両が目標状態を通過したことを理解することが可能となる。
【0070】
(6)本実施形態の操舵支援方法では、自車両の目標状態と自車両の現在の状態との乖離度である状態乖離度を縮小させるための操舵支援トルクをステアリングホイールへ出力する。この際、算出した状態乖離度が縮小傾向にある状態では操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合いよりも大きくなるように、操舵支援トルクを減衰させる。これに加え、算出した状態乖離度が拡大傾向にある状態では操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合い以下となるように、操舵支援トルクを減衰させる。
【0071】
このため、自車両の運転者がステアリングホイールを操舵する際に、操舵負荷の低い操舵が可能となる。また、自車両の現在状態が目標状態に近くなるほど、操舵支援トルクへの減衰力が、ステアリングホイールに強く作用する。
その結果、自車両の操舵角を、目標とする操舵角へ素早く収束させることが可能となり、厳密な操舵角を発生させたい状況や、目標とする操舵角を素早い操舵で実現させたい状況において、操舵支援の確実性を向上させることが可能となる。
【0072】
(変形例)
(1)本実施形態の操舵支援装置1では、トルク指令減衰回路12が、操舵角速度センサ8が検出した操舵角速度θ’1に応じて、トルク指令値To1の減衰度合いが変化するように、減衰指令信号を算出したが、これに限定するものではない。すなわち、操舵角速度センサ8が検出した操舵角速度θ’1を用いずに、減衰指令信号を算出してもよい。この場合、操舵支援装置1の構成を、操舵角速度センサ8を備えていない構成としてもよい。
【0073】
(2)本実施形態の操舵支援装置1では、トルク指令減衰回路12が、操舵角偏差δθが0となった時点でトルク指令値To1の減衰度合いが最大となるように、最大減衰トルク信号Tmax1を算出したが、これに限定するものではない。すなわち、操舵角偏差δθが0となったか否かに関わらず、操舵角偏差δθが、操舵角偏差係数ξ未満であるか否かの判定に基づいて、減衰指令信号を算出してもよい。
【0074】
(3)本実施形態の操舵支援装置1では、操舵角偏差δθが減少して0となった時点に加え、操舵角偏差δθが0となった時点から操舵角偏差δθが増加した場合に、減衰トルク係数Ch1を操舵角速度θ’1に積算したが、これに限定するものではない。すなわち、操舵角偏差δθが減少して0となった時点に加え、操舵角偏差δθが0となった時点から操舵角偏差δθが増加した場合に、減衰トルク係数Ch1を超える値を操舵角速度θ’1に積算してもよい。
【0075】
(4)本実施形態の操舵支援装置1では、自車両の走行中において、運転者が操舵支援装置1を作動させるスイッチを操作することにより、操舵支援装置1を作動させたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、自車両の周囲の環境を撮像した画像を参照して、自車両が走行する道路(走行路)が、操舵支援装置1を作動させることが好ましい道路であるか否かを判定し、運転者の操作に因らず、操舵支援装置1を作動させてもよい。この場合、自車両の周囲の環境を撮像した画像は、例えば、撮像回路16が有するCCDカメラ等を用いて取得する。
【0076】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、上述した第一実施形態と同様の構成については、説明を省略する場合がある。
(構成)
図4は、本実施形態の操舵支援装置1の構成を示すブロック図である。
図4中に示すように、本実施形態の操舵支援装置1は、磁気センサ24と、目標経路検出回路26と、横位置偏差算出回路28と、操舵角速度センサ8と、トルク指令値算出装置10と、トルク指令減衰回路12と、電動モータ30を備えている。
【0077】
磁気センサ24は、図5中に示すように、操舵支援装置1を備えた自車両Vの車両前後方向前方側(例えば、前輪よりも前方側)に複数配置されており、これら複数の磁気センサ24は、自車両Vの車幅方向に沿って、一列に配列されている。なお、図5は、本実施形態の操舵支援装置1を備えた自車両Vの概略構成を示す図である。また、図5中では、自車両Vの車幅方向の中心線を、符号「CL」を付した破線により示している。
【0078】
各磁気センサ24は、自車両Vが走行する走行路(道路)に埋め込まれた磁気ネイル(図示せず)に反応し、磁気ネイルとの距離に比例する磁力の強さを含む情報信号を、目標経路検出回路26へ出力する。なお、図5中には、各磁気センサ24が検出した磁力の強さを、自車両Vの車幅方向に沿って連続的に示している。
なお、本実施形態では、自車両Vが走行する走行路が、その中心に、継続的に磁気を発生する複数の磁気ネイルが、走行路の長さ方向に沿って所定の間隔で埋め込まれている道路であることを前提としている。
目標経路検出回路26は、各磁気センサ24から入力された情報信号に基づき、自車両Vが辿るべき経路、すなわち、自車両Vが目標とする走行経路である目標走行経路を検出し、この検出した目標走行経路を含む情報信号を、横位置偏差算出回路28へ出力する。
【0079】
目標走行経路を検出する際には、具体的に、各磁気センサ24が出力した情報信号を比較して、各磁気センサ24のうち、最も強い情報信号を出力した磁気センサ24を特定する。そして、最も強い情報信号を出力した磁気センサ24の位置を、目標走行経路上の一点として検出する。これは、各磁気センサ24のうち、最も強い情報信号を出力した磁気センサ24の位置は、磁気ネイル、すなわち、自車両Vが走行する走行路の中心と上下方向で重なるためである。なお、図5中では、各磁気センサ24のうち、最も強い情報信号を出力した磁気センサ24と上下方向で重なっている点の集合、すなわち、目標走行経路を示す線を、符号「TL」を付した実線により示している。
【0080】
横位置偏差算出回路28は、目標経路検出回路26から入力された情報信号に基づき、各磁気センサ24のうち、最も強い情報信号を出力した磁気センサ24の位置と自車両Vの車幅方向の中心線CLとの車幅方向の距離を、横位置偏差として算出する。なお、以下の説明では、横位置偏差を、「横位置偏差d」と記載する場合がある(図5を参照)。また、図5中では、各磁気センサ24のうち、最も強い情報信号を出力した磁気センサ24を、符号「24max」を付して示している。したがって、図5中に示すように、横位置偏差dは、目標走行経路を示す線TLと自車両Vの車幅方向の中心線CLとの、自車両Vの車幅方向への距離となる。
【0081】
そして、横位置偏差dを算出した横位置偏差算出回路28は、算出した横位置偏差dを含む情報信号を、トルク指令値算出装置10へ出力する。
したがって、本実施形態では、自車両Vの目標状態を、自車両Vが目標とする走行経路である目標走行経路とする。
また、本実施形態では、自車両Vの現在の状態である現在状態を、目標走行経路に対する、自車両Vの現在の走行経路上における相対位置とする。
【0082】
同様に、本実施形態では、目標状態と現在状態との乖離度である状態乖離度を、目標走行経路に対する自車両Vの現在の相対位置から目標走行経路までの距離である、横位置偏差dとする。
操舵角速度センサ8は、上述した第一実施形態と同様、自車両Vの運転者による、ステアリングホイールの現在の操舵時における回転角速度である操舵角速度を検出し、この検出した操舵角速度を含む情報信号を、トルク指令減衰回路12へ出力する。なお、以下の説明では、操舵角速度を、「操舵角速度θ’2」と記載する場合がある。
【0083】
トルク指令値算出装置10は、横位置偏差算出回路28から入力された情報信号に基づき、ステアリングホイールへ出力する操舵支援トルクの指令値であるトルク指令信号を算出する。そして、トルク指令値算出装置10は、算出したトルク指令信号を生成して、トルク指令減衰回路12へ出力する。なお、以下の説明では、トルク指令値を、「トルク指令値To2」と記載する場合がある。
【0084】
本実施形態では、一例として、トルク指令値To2を、図6(a)中に示すマップと、以下に示す式(10)を用いて算出する場合について説明する。なお、図6は、トルク指令値算出装置10及びトルク指令減衰回路12を介して出力するトルク指令値To2の出力則を説明するための説明図である。
o2=K2×d2 … (10)
ここで、上記の式(10)中では、d<0のときは、K2<0である。同様に、d>0のときは、K2>0である。
【0085】
なお、上記の式(10)中において、「K2」は、予めトルク指令値算出装置10に記憶させた、目標操舵角への収束の速さに対応する係数である。この係数は、固定の定数或いは、車速等に応じた変数として設定する。また、上記の式(10)に示されるように、トルク指令値To2は、横位置偏差dの二乗に比例する値である。
トルク指令減衰回路12は、操舵角速度センサ8及びトルク指令値算出装置10から入力された情報信号に基づき、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To2を減衰させる減衰指令信号を算出する。そして、この算出した減衰指令信号によりトルク指令値To2を減衰させたトルク減衰指令値を生成して、電動モータ30へ出力する。
【0086】
ここで、トルク指令減衰回路12は、減衰指令信号を算出する際に、以下に説明する比較に基づく分岐を行う。
具体的には、横位置偏差算出回路28が算出した横位置偏差dの値に基づき、自車両Vが目標走行経路を通過したか否かを判定する。そして、判定結果に応じて、電動モータ30へ出力する指令信号に含む、二種類のうち一種類のトルク減衰指令値T2を生成する。
トルク減衰指令値T2を生成したトルク指令減衰回路12は、この生成したトルク減衰指令値T2を含む指令信号を、電動モータ30へ出力する。
【0087】
以下、横位置偏差算出回路28が算出した横位置偏差dの値に基づく、自車両Vが目標走行経路を通過したか否かの判定と、この判定結果に応じて生成される二種類のトルク減衰指令値T2との関係について説明する。
横位置偏差dの値に基づいて、自車両Vが目標走行経路を通過したか否かの判定は、自車両Vが右方向または左方向に移動した結果として、横位置偏差dが縮小する方向へ変化している場合を前提として行なう。
【0088】
この場合において、自車両Vが目標走行経路上に到達することで、一時的に横位置偏差dが無くなった状態(d=0)から、更に、同方向へ移動し続けることで、横位置偏差dが増加し始めた(d>0)か否かを検出する。すなわち、自車両Vが、目標走行経路上の横位置偏差dが「0」である点(零点)を通過した後、更に、同じ方向へ移動しているか否かを検出する。
そして、一時的に横位置偏差dが無くなった状態(d=0)から、横位置偏差dが増加し始めた(d>0)場合に、自車両Vが目標走行経路を通過したと判定する。
【0089】
自車両Vが目標走行経路を通過したと判定した場合、トルク指令減衰回路12は、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To2を減衰させる中間減衰トルク信号Ta2を算出する。なお、中間減衰トルク信号Ta2とは、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To2を減衰させる減衰指令信号のうち、トルク指令値To2(トルク指令信号)の減衰度合いが最小と最大の中間の大きさのものである。
【0090】
ここで、中間減衰トルク信号Ta2の算出は、自車両Vの移動方向を参照して行なう。
具体的には、図6(b)中に示す値の減衰トルク係数C2(Cl2)と、以下に示す式(11)を用いて、中間減衰トルク信号Ta2を算出する。
a2=Cl2×θ’2 … (11)
そして、中間減衰トルク信号Ta2を算出したトルク指令減衰回路12は、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To2に、中間減衰トルク信号Ta2を加算して、トルク減衰指令値T2を生成する。この場合、トルク減衰指令値T2は、以下の式(12)で表される値となる。
2=To2+Ta2 … (12)
【0091】
一方、自車両Vが目標走行経路を通過していないと判定した場合、トルク指令減衰回路12は、トルク指令減衰回路12は、最大減衰トルク信号Tmax2を算出する。なお、最大減衰トルク信号Tmax2とは、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To2を減衰させる減衰指令信号のうち、トルク指令値To2(トルク指令信号)の減衰度合いが最大のものである。
【0092】
そして、トルク指令減衰回路12は、算出した最大減衰トルク信号Tmax2を、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To2に加算して、トルク減衰指令値T2を生成する。この場合、トルク減衰指令値T2は、以下の式(13)で表される値となる。
2=To2+Tmax2 … (13)
なお、本実施形態では、一例として、最大減衰トルク信号Tmax2を、図6(b)中に示す値の減衰トルク係数C2(Ch2)と、以下に示す式(14)を用いて算出する場合について説明する。
max2=Ch2×θ’2 … (14)
【0093】
電動モータ30は、公知の電動パワーステアリングが有する構成であり、供給する電流を制御することによって、ステアリングホイールへ操舵支援トルクを出力可能に形成されている。
また、電動モータ30は、トルク指令減衰回路12から入力された指令信号に基づき、電動モータを制御して、トルク指令減衰回路12が生成したトルク減衰指令値T2に応じた操舵支援トルクを、ステアリングホイールへ出力する。
【0094】
(動作)
次に、図4から図6を参照しつつ、図7を用いて、本実施形態の操舵支援装置1が行なう動作の一例について説明する。
図7は、本実施形態の操舵支援装置1が行う処理を示すフローチャートである。
図7中に示すフローチャートは、自車両が走行しており、自車両の運転者によって、操舵支援装置1を作動させるスイッチが操作(ON)された状態からスタートする(図7中に示す「スタート」)。
操舵支援装置1を作動させると、目標経路検出回路26は、例えば、10[msec]毎等、所定のサンプリング時間毎に、自車両が辿るべき目標走行経路を検出する(ステップS200)。そして、目標走行経路を検出した目標経路検出回路26は、検出した目標走行経路を含む情報信号を、横位置偏差算出回路28へ出力する。
【0095】
目標走行経路を含む情報信号の入力を受けた横位置偏差算出回路28は、横位置偏差dを算出する(ステップS200)。そして、横位置偏差dを算出した横位置偏差算出回路28は、算出した横位置偏差dを含む情報信号を、トルク指令値算出装置10へ出力する。
したがって、ステップS200では、目標経路検出回路26により目標走行経路を検出し、さらに、横位置偏差算出回路28により横位置偏差dを算出(ステップS200に示す「目標経路の検出及び横位置偏差を算出」)する。ステップS200において、目標走行経路の検出及び横位置偏差dの算出を行なうと、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS202へ移行する。
【0096】
ステップS202では、トルク指令値算出装置10により、トルク指令値To2を算出(ステップS202に示す「トルク指令値To2算出」)する。そして、トルク指令値To2を算出したトルク指令値算出装置10は、算出したトルク指令値To2を含む情報信号を、トルク指令減衰回路12へ出力する。ステップS202において、トルク指令値To2を算出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS204の処理へ移行する。
【0097】
ステップS204では、操舵角速度センサ8により、操舵角速度θ’2を検出(ステップS204に示す「操舵角速度検出」)する。そして、操舵角速度θ’2を検出した操舵角速度センサ8は、検出した操舵角速度θ’2を含む情報信号を、トルク指令減衰回路12へ出力する。ステップS204において、操舵角速度θ’2を検出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS206へ移行する。
【0098】
ステップS206では、トルク指令減衰回路12により、自車両Vが目標走行経路上の横位置偏差dが「0」である点(零点)を通過した後、更に、同じ方向へ移動しているか否か(ステップS206に示す「零点を通過しているか?」)を検出する。これにより、ステップS206では、自車両Vが目標走行経路を通過したか否かを判定する。
ステップS206において、自車両Vが目標経路を通過していない(図中に示す「NO」)と判定すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS208へ移行する。
【0099】
一方、ステップS206において、自車両Vが目標経路を通過した(図中に示す「YES」)と判定すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS212へ移行する。
ステップS208では、トルク指令減衰回路12により、中間減衰トルク信号Ta2を算出(ステップS208に示す「減衰トルクTa2算出」)する。ステップS208において、中間減衰トルク信号Ta2を算出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS210へ移行する。
【0100】
ステップS210では、トルク指令減衰回路12により、電動モータ30へ出力する指令信号に含むトルク減衰指令値T2を生成し、この生成したトルク減衰指令値T2を含む指令信号を、電動モータ30へ出力する。
ここで、トルク減衰指令値T2は、上述した式(12)を用いて生成(ステップS210に示す「T2=To2+Ta2」)する。
ステップS210において、トルク減衰指令値T2を含む指令信号を電動モータ30へ出力すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS214へ移行する。
【0101】
ステップS212では、トルク指令減衰回路12により、電動モータ30へ出力する指令信号に含むトルク減衰指令値T2を生成し、この生成したトルク減衰指令値T2を含む指令信号を、電動モータ30へ出力する。
ここで、トルク減衰指令値T2は、上述した式(13)を用いて生成(ステップS212に示す「T2=To2+Tmax2」)する。
ステップS212において、トルク減衰指令値T2を含む指令信号を電動モータ30へ出力すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS214へ移行する。
【0102】
ステップS214では、電動モータ30に対し、トルク指令減衰回路12から入力された指令信号に基づいて制御された電流を供給する。これにより、ステップS214では、トルク指令減衰回路12が生成したトルク減衰指令値T2に相当する操舵支援トルクがステアリングホイールへ出力されるように、電動モータ30を制御(ステップS214に示す「電動モータを制御」)する。
このとき、操舵支援装置1が行う処理が、上述したステップS210からステップS214へ移行した場合は、トルク指令値To2の減衰度合いが最小値よりも大きくなるため、ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクは最大値よりも小さくなる。
【0103】
ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクが最大値よりも小さくなると、自車両の運転者には、ステアリングホイールを介して、最大値よりも小さな操舵支援トルクが提供される。このため、自車両の現在の走行経路を目標とする走行経路へ近づけるために適切な操舵支援トルクが提供され、操舵操作の負担を低減することが可能となるとともに、自車両を走行車線内に位置させることが可能となる。
また、操舵支援装置1が行う処理が、上述したステップS212からステップS214へ移行した場合は、トルク指令値To2の減衰度合いが最大となるため、ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクは最小値となる。
【0104】
ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクが最小値となると、自車両の運転者には、ステアリングホイールを介して、小さな操舵支援トルクが提供される。このため、自車両の現在の走行経路を目標とする走行経路とした後に、自車両の走行経路が目標とする走行経路から離れることを抑制可能な操舵支援トルクが提供され、操舵操作の負担を低減することが可能となる。
ステップS214において電動モータ30を制御し、トルク指令減衰回路12が生成したトルク減衰指令値T2に応じた操舵支援トルクを、ステアリングホイールへ出力すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS200の処理に復帰する。
【0105】
以上により、磁気センサ24、目標経路検出回路26及び横位置偏差算出回路28の組み合わせは、上述した現在状態検出手段、目標状態提供手段及び状態乖離度算出手段の組み合わせを形成している。同様に、操舵角速度センサ8は、上述した操舵角速度検出手段を形成し、トルク指令値算出装置10は、上述した操舵支援トルク算出手段を形成している。また、トルク指令減衰回路12は、上述した操舵支援トルク減衰手段を形成し、電動モータ30は、上述した操舵特性制御手段を形成している。
【0106】
(第二実施形態の効果)
(1)本実施形態では、目標状態を目標走行経路とし、現在状態を目標走行経路に対する自車両の現在の走行経路上における相対位置とし、状態乖離度を、相対位置から目標走行経路までの距離としている。
このため、目標とする走行経路と現在の自車両の位置との相対距離を素早く収束させることが可能な操舵支援装置を、自車両の運転者に提供することが可能となる。
その結果、自車両の走行軌跡におけるオーバーシュートが少なく、確実に走行経路を追従するための操舵操作を支援することが可能な操舵支援装置を、自車両の運転者に提供することが可能となる。これは、厳密な操舵を運転者に要求する場面において、自車両の目標経路からの離脱が最小限になるように、自車両を目標走行経路に押し戻す方向へ、ステアリングホイールに強いトルクを発生させた場合に、特に効果的である。
【0107】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、上述した第一実施形態と同様の構成については、説明を省略する場合がある。
(構成)
図8は、本実施形態の操舵支援装置1の構成を示すブロック図である。
図8中に示すように、本実施形態の操舵支援装置1は、レーザーセンサ32と、障害物検出回路34と、回避目標点算出回路36と、方向角算出回路38を備えている。これに加え、本実施形態の操舵支援装置1は、操舵角速度センサ8と、トルク指令値算出装置10と、トルク指令減衰回路12と、電動モータ30を備えている。
【0108】
レーザーセンサ32は、例えば、自車両の車両前後方向の前面に配置されており、自車両の車両前後方向前方に対してレーザーを照射する。また、レーザーセンサ32は、照射後に走行経路上の障害物等により反射されたレーザーを受信して、レーザーを照射及び受信した時間と、レーザーを受信した方向を含む情報信号を、障害物検出回路34へ出力する。なお、「障害物等」とは、例えば、障害物や他車両、歩行者である。
【0109】
障害物検出回路34は、レーザーセンサ32から入力された情報信号に基づき、自車両の走行経路上に存在する障害物を検出し、この検出した障害物を含む情報信号を、回避目標点算出回路36へ出力する。
ここで、障害物検出回路34により、自車両の走行経路上に存在する障害物を検出する際には、まず、レーザーセンサ32から入力された情報信号が含む、レーザーを照射及び受信した時間を参照する。そして、レーザーを照射した時間と受信した時間とのタイムラグから自車両と障害物との距離を算出し、この算出した距離が所定の距離未満である場合に、自車両の走行経路上に障害物が存在すると判定する。なお、前述した「所定の距離」は、予め設定してもよく、また、自車両の走行速度に応じて増減させてもよい。
【0110】
回避目標点算出回路36は、障害物検出回路34から入力された情報信号に基づき、自車両が障害物を回避する際に自車両を移動させるための回避目標点を算出し、この算出した回避目標点を含む情報信号を、方向角算出回路38へ出力する。なお、回避目標点の算出は、障害物検出回路34から入力された情報信号に、自車両の走行経路上に障害物が存在すると判定した結果が含まれている場合に行なう。
【0111】
ここで、自車両の走行経路上に障害物が存在する場合、その障害物を回避するための走行経路は、自車両の走行経路よりも右側または左側に存在する。
このため、目標点を算出する際には、自車両が障害物を回避するための回避方向を設定した後、この設定した回避方向において、自車両を通過させる際の目標位置となる回避目標点を算出する。
【0112】
以下、自車両が障害物を回避するための回避方向を設定する手順について説明する。
回避方向を設定する際には、レーザーセンサ32が出力した情報信号を参照して、図9中に示すように、自車両Vから見た、障害物OBの左右の端部(角部分)の位置を算出する。そして、自車両Vの中心点CPを基準とした、自車両Vの進行方向に対する、障害物OBの左側端部の位置への角度α1と、障害物OBの右側端部の位置への角度α2を検出し、角度α1と角度α2とを比較する。なお、図9は、障害物OBと自車両Vとの関係を示す図である。また、図9中では、自車両Vが目標とする走行経路を示す線を、符号「RL」を付した実線により示し、自車両Vの現在の走行経路を示す線を、符号「PL」を付した実線により示している。
【0113】
そして、角度α1と角度α2とを比較した結果、角度が小さい方の端部がある側を、自車両Vが障害物OBを回避するための回避方向として設定する。なお、本実施形態では、一例として、図9中に示すように、α1>α2の場合を説明する。これに伴い、本実施形態では、自車両Vが障害物OBを回避するための回避方向を、右方向と設定した場合について説明する。
【0114】
次に、自車両Vを通過させる際の目標位置となる回避目標点を算出する手順について説明する。
回避目標点を算出する際には、図9中に示すように、障害物OBの、回避方向と同じ側の端部(角部分)から、設定した回避方向と同じ方向に、自車両Vの車幅wの1/2以上(w/2以上)の長さを加算した位置を、回避目標点として算出する。なお、以下の説明では、回避目標点を、「回避目標点Pt」と記載する場合がある(図9を参照)。
【0115】
方向角算出回路38は、回避目標点算出回路36から入力された情報信号に基づき、自車両Vの進行方向に対する、回避目標点Ptへの差分方向角β(図9を参照)を算出し、算出した差分方向角βを含む情報信号を、トルク指令値算出装置10へ出力する。
ここで、差分方向角βは、自車両Vの進行方向における、自車両Vと障害物OBとの距離を「L」として、以下に示す式(15)を用いて算出する(図9を参照)。
【0116】
【数3】

【0117】
したがって、本実施形態では、自車両Vの目標状態を、自車両Vが進行していた方向に対する自車両Vが目標とする走行経路までの角度である、目標方向角とする。
また、本実施形態では、自車両Vの現在の状態である現在状態を、自車両Vが進行していた方向に対する自車両Vの現在の角度である、現在方向角とする。
同様に、本実施形態では、目標状態と現在状態との乖離度である状態乖離度を、目標方向角と現在方向角との差分である差分方向角βとする。
【0118】
操舵角速度センサ8は、上述した第一実施形態と同様、自車両Vの運転者による、ステアリングホイールの現在の操舵時における回転角速度である操舵角速度を検出し、この検出した操舵角速度を含む情報信号を、トルク指令減衰回路12へ出力する。なお、以下の説明では、操舵角速度を、「操舵角速度θ’3」と記載する場合がある。
【0119】
トルク指令値算出装置10は、横位置偏差算出回路28から入力された情報信号に基づき、ステアリングホイールへ出力する操舵支援トルクの指令値であるトルク指令信号を算出する。そして、トルク指令値算出装置10は、算出したトルク指令信号を生成して、トルク指令減衰回路12へ出力する。なお、以下の説明では、トルク指令値を、「トルク指令値To3」と記載する場合がある。
【0120】
本実施形態では、一例として、トルク指令値を、図10(a)中に示すマップと、以下に示す式(16)を用いて算出する場合について説明する。なお、図10は、トルク指令値算出装置10及びトルク指令減衰回路12を介して出力するトルク指令値の出力則を説明するための説明図である。
o3=K3×β … (16)
なお、上記の式(16)中において、「K3」は、予めトルク指令値算出装置10に記憶させた、目標操舵角への収束の速さに対応する係数である。この係数は、固定の定数或いは、車速等に応じた変数として設定する。
また、上記の式(16)に示されるように、トルク指令値To3は、差分方向角βに比例する値である。
【0121】
トルク指令減衰回路12は、操舵角速度センサ8及びトルク指令値算出装置10から入力された情報信号に基づき、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To3を減衰させる減衰指令信号を算出する。そして、この算出した減衰指令信号によりトルク指令値To3を減衰させたトルク減衰指令値を生成して、電動モータ30へ出力する。
ここで、トルク指令減衰回路12は、減衰指令信号を算出する際に、以下に説明する比較に基づく分岐を行う。
【0122】
具体的には、方向角算出回路38が算出した差分方向角βと、図10中に示す予め設定した差分方向角係数ψとを比較する。また、差分方向角βと差分方向角係数ψとの比較結果により、自車両Vの進行方向が、回避目標点Ptを通過したか否かを判定する。
なお、「差分方向角係数ψ」とは、例えば、図10中に示すように、差分方向角βが「0」である状態を基準とした、トルク減衰指令値を生成する際に用いる係数(減衰トルク係数C3)を最大値(Ch3)以下とする閾値である。また、「差分方向角係数ψ」は、固定の定数或いは車速等に応じた変数として設定する。
【0123】
そして、差分方向角βと差分方向角係数ψとの比較結果、または、自車両Vの進行方向が、回避目標点Ptを通過したか否かの判定結果に応じて、三種類のうち一種類のトルク減衰指令値T3を生成する。
トルク減衰指令値T3を生成したトルク指令減衰回路12は、この生成したトルク減衰指令値T3を含む指令信号を、電動モータ30へ出力する。
【0124】
以下、差分方向角βと差分方向角係数ψとの比較結果、または、自車両Vの進行方向が、回避目標点Ptを通過したか否かの判定結果と、これらの結果に応じて生成される三種類のトルク減衰指令値T3との関係について説明する。
差分方向角βと差分方向角係数ψとを比較した結果、差分方向角βが差分方向角係数ψ以上である場合、トルク指令減衰回路12は、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To3を減衰する必要が無いと判定し、トルク指令値To3を、トルク減衰指令値T3として生成する。この場合、トルク減衰指令値T3は、以下の式(17)で表される値となる。
3=To3 … (17)
【0125】
一方、差分方向角βと差分方向角係数ψとを比較した結果、差分方向角βが差分方向角係数ψ未満である場合、トルク指令減衰回路12は、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To3を減衰する必要が有ると判定する。
トルク指令値To3を減衰する必要が有ると判定すると、トルク指令減衰回路12は、操舵角速度センサ8から入力された情報信号から、トルク指令値To3を減衰するために必要な、操舵角速度θ’3を検出する。
【0126】
操舵角速度θ’3を検出したトルク指令減衰回路12は、自車両Vが障害物OBを回避するための旋回運動を行い、この旋回運動に伴って差分方向角βが縮小している場合に、自車両Vの進行方向が、回避目標点Ptを通過したか否かを判定する。すなわち、障害物OBを回避するための旋回運動を行なっている自車両Vの進行方向が、差分方向角βが「0」である点(零点)を通過したか否かを判定する。
【0127】
そして、障害物OBを回避するための旋回運動を行なっている自車両Vの進行方向が、回避目標点Ptを通過していない場合、トルク指令減衰回路12は、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To3を減衰させる中間減衰トルク信号Ta3を算出する。なお、中間減衰トルク信号Ta3とは、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To3を減衰させる減衰指令信号のうち、トルク指令値To3(トルク指令信号)の減衰度合いが最小と最大の中間の大きさのものである。
【0128】
ここで、中間減衰トルク信号Ta3の算出には、図10(b)中に示す値の減衰トルク係数C3と、と、以下に示す式(18)を用いる。
a3=C3×θ’3 … (18)
そして、中間減衰トルク信号Ta3を算出したトルク指令減衰回路12は、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To3に、中間減衰トルク信号Ta3を加算して、トルク減衰指令値T3を生成する。この場合、トルク減衰指令値T3は、以下の式(19)で表される値となる。
3=To3+Ta3 … (19)
【0129】
一方、障害物OBを回避するための旋回運動を行なっている自車両Vの進行方向が、回避目標点Ptを通過している場合、トルク指令減衰回路12は、最大減衰トルク信号Tmax3を算出する。なお、最大減衰トルク信号Tmax3とは、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To3を減衰させる減衰指令信号のうち、トルク指令値To3(トルク指令信号)の減衰度合いが最大のものである。
【0130】
そして、トルク指令減衰回路12は、算出した最大減衰トルク信号Tmax3を、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To3に加算して、トルク減衰指令値T3を生成する。この場合、トルク減衰指令値T3は、以下の式(20)で表される値となる。
3=To3+Tmax3 … (20)
なお、本実施形態では、一例として、最大減衰トルク信号Tmax3を、図10(b)中に示す値の減衰トルク係数C3(Ch3)と、以下に示す式(21)を用いて算出する場合について説明する。
max3=Ch3+θ’3 … (21)
【0131】
電動モータ30は、公知の電動パワーステアリングが有する構成であり、供給する電流を制御することによって、ステアリングホイールへ操舵支援トルクを出力可能に形成されている。
また、電動モータ30は、トルク指令減衰回路12から入力された指令信号に基づき、電動モータを制御して、トルク指令減衰回路12が生成したトルク減衰指令値T3に応じた操舵支援トルクを、ステアリングホイールへ出力する。
【0132】
(動作)
次に、図8から図10を参照しつつ、図11を用いて、本実施形態の操舵支援装置1が行なう動作の一例について説明する。
図11は、本実施形態の操舵支援装置1が行う処理を示すフローチャートである。
図11中に示すフローチャートは、自車両が走行しており、自車両の運転者によって、操舵支援装置1を作動させるスイッチが操作(ON)された状態からスタートする(図11中に示す「スタート」)。
【0133】
操舵支援装置1を作動させると、障害物検出回路34は、例えば、10[msec]毎等、所定のサンプリング時間毎に、自車両Vの走行経路上に存在する障害物OBを検出(ステップS300に示す「障害物検出」)する(ステップS300)。そして、障害物OBを検出した障害物検出回路34は、検出した障害物OBを含む情報信号を、回避目標点算出回路36へ出力する。ステップS300において、障害物OBの検出を行なうと、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS302へ移行する。
【0134】
ステップS302では、回避目標点算出回路36により、回避目標点Ptを算出(ステップS302に示す「目標点Pt算出」)する。そして、回避目標点Ptを算出した回避目標点算出回路36は、算出した回避目標点Ptを含む情報信号を、方向角算出回路38へ出力する。ステップS302において、回避目標点Ptを算出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS304の処理へ移行する。
【0135】
ステップS304では、方向角算出回路38により、自車両Vの進行方向に対する、回避目標点Ptの差分方向角βを算出(ステップS304に示す「方向角算出」)する。そして、差分方向角βを算出した方向角算出回路38は、算出した差分方向角βを含む情報信号を、トルク指令値算出装置10へ出力する。ステップS304において、差分方向角βを算出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS306へ移行する。
【0136】
ステップS306では、トルク指令値算出装置10により、電動モータ30に出力する操舵支援トルク量の指令値であるトルク指令値To3を算出(ステップS306に示す「トルク指令値To3算出」)する。そして、トルク指令値To3を算出したトルク指令値算出装置10は、算出したトルク指令値To3を含む情報信号を、トルク指令減衰回路12へ出力する。ステップS306において、トルク指令値To3を算出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS308へ移行する。
【0137】
ステップS308では、トルク指令減衰回路12により、方向角算出回路38が算出した差分方向角βが差分方向角係数ψ未満であるか否か(ステップS308に示す「方向角<ψ?」)を判定する。
ステップS308において、方向角算出回路38が算出した差分方向角βが、差分方向角係数ψ以上である(図中に示す「NO」)と判定すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS310へ移行する。
【0138】
一方、ステップS308において、方向角算出回路38が算出した差分方向角βが差分方向角係数ψ未満である(図中に示す「YES」)と判定すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS312へ移行する。
ステップS310では、トルク指令減衰回路12により、電動モータ30へ出力する指令信号に含むトルク減衰指令値T3を生成し、この生成したトルク減衰指令値T3を含む指令信号を、電動モータ30へ出力する。
【0139】
ここで、トルク減衰指令値T3は、上述した式(17)を用いて生成(ステップS310に示す「T3=To3」)する。
ステップS310において、トルク減衰指令値T3を含む指令信号を電動モータ30へ出力すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS322へ移行する。
ステップS312では、トルク指令減衰回路12により、操舵角速度センサ8から入力された情報信号から、操舵角速度θ’3を検出(ステップS312に示す「操舵角速度検出」)する。ステップS312において、操舵角速度θ’3を検出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS314へ移行する。
【0140】
ステップS314では、トルク指令減衰回路12により、障害物OBを回避するための旋回運動を行なっている自車両Vの進行方向が、差分方向角βが「0」である点(零点)を通過したか否か(ステップS314に示す「零点を通過しているか?」)を判定する。
ステップS314において、自車両Vの進行方向が回避目標点Ptを通過していない(図中に示す「NO」)と判定すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS316へ移行する。
【0141】
一方、ステップS314において、自車両Vの進行方向が回避目標点Ptを通過した(図中に示す「YES」)と判定すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS320へ移行する。
ステップS316では、トルク指令減衰回路12により、目標減衰トルクTa3を算出(ステップS316に示す「減衰トルクTa3算出」)する。ステップS316において、目標減衰トルクTa3を算出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS318へ移行する。
【0142】
ステップS318では、トルク指令減衰回路12により、電動モータ30へ出力する指令信号に含むトルク減衰指令値T3を生成し、この生成したトルク減衰指令値T3を含む指令信号を、電動モータ30へ出力する。
ここで、トルク減衰指令値T3は、上述した式(19)を用いて生成(ステップS318に示す「T3=To3+Ta3」)する。
ステップS318において、トルク減衰指令値T3を含む指令信号を電動モータ30へ出力すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS322へ移行する。
【0143】
ステップS320では、トルク指令減衰回路12により、電動モータ30へ出力する指令信号に含むトルク減衰指令値T3を生成し、この生成したトルク減衰指令値T3を含む指令信号を、電動モータ30へ出力する。
ここで、トルク減衰指令値T3は、上述した式(20)を用いて生成(ステップS320に示す「T3=To3+Tmax3」)する。
ステップS320において、トルク減衰指令値T3を含む指令信号を電動モータ30へ出力すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS322へ移行する。
【0144】
ステップS322では、電動モータ30に対し、トルク指令減衰回路12から入力された指令信号に基づいて制御された電流を供給する。これにより、ステップS322では、トルク指令減衰回路12が生成したトルク減衰指令値T3に相当する操舵支援トルクがステアリングホイールへ出力されるように、電動モータ30を制御(ステップS322に示す「電動モータを制御」)する。
このとき、操舵支援装置1が行う処理が、上述したステップS310からステップS322へ移行した場合は、トルク指令値To3は減衰されないため、ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクは、トルク指令値To3に相当する操舵支援トルクとなる。
【0145】
ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクが、トルク指令値To3に相当する操舵支援トルクとなると、自車両の運転者には、ステアリングホイールを介して、最大値の操舵支援トルクが提供される。このため、自車両の現在の走行経路が目標とする走行経路から離れており、自車両が走行車線内から逸脱しそうな状態であっても、操舵操作の負担を低減することが可能となるとともに、自車両を走行車線内に位置させることが可能となる。
【0146】
また、操舵支援装置1が行う処理が、上述したステップS318からステップS322へ移行した場合は、トルク指令値To3の減衰度合いが最小値よりも大きくなるため、ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクは最大値よりも小さくなる。
ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクが最大値よりも小さくなると、自車両の運転者には、ステアリングホイールを介して、最大値よりも小さな操舵支援トルクが提供される。このため、自車両の現在の走行経路を目標とする走行経路へ近づけるために適切な操舵支援トルクが提供され、操舵操作の負担を低減することが可能となるとともに、自車両を走行車線内に位置させることが可能となる。
【0147】
また、操舵支援装置1が行う処理が、上述したステップS320からステップS322へ移行した場合は、トルク指令値To3の減衰度合いが最大となるため、ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクは最小値となる。
ステアリングホイールへ出力される操舵支援トルクが最小値となると、自車両の運転者には、ステアリングホイールを介して、小さな操舵支援トルクが提供される。このため、自車両の現在の走行経路を目標とする走行経路とした後に、自車両の走行経路が目標とする走行経路から離れることを抑制可能な操舵支援トルクが提供され、操舵操作の負担を低減することが可能となる。
ステップS322において電動モータ30を制御し、トルク指令減衰回路12が生成したトルク減衰指令値T3に応じた操舵支援トルクを、ステアリングホイールへ出力すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS300の処理に復帰する。
【0148】
以上により、レーザーセンサ32障害物検出回路34及び回避目標点算出回路36の組み合わせは、上述した現在状態検出手段及び目標状態提供手段の組み合わせを形成している。同様に、方向角算出回路38は、上述した状態乖離度算出手段を形成し、操舵角速度センサ8は、上述した操舵角速度検出手段を形成している。また、トルク指令値算出装置10は、上述した操舵支援トルク算出手段を形成し、トルク指令減衰回路12は、上述した操舵支援トルク減衰手段を形成し、電動モータ30は、上述した操舵特性制御手段を形成している。
【0149】
(第三実施形態の効果)
(1)本実施形態では、目標状態を目標方向角とし、現在状態を現在方向角とし、状態乖離度を、目標方向角と現在方向角との差分としている。
このため、目標とする進行方向に対する現在の自車両の進行方向の乖離を素早く修正することが可能な操舵支援装置を、自車両の運転者に提供することが可能となる。
その結果、素早く確実な操舵操作が要求されるような場面においても、自車両の運転者にとって違和感の少ない操舵支援装置を、自車両の運転者に提供することが可能となる。
【0150】
(第四実施形態)
以下、本発明の第四実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、上述した第一実施形態と同様の構成については、説明を省略する場合がある。
(構成)
図12は、本実施形態の操舵支援装置1の構成を示すブロック図である。
図12中に示すように、本実施形態の操舵支援装置1は、目標操舵角算出装置2と、操舵角センサ4と、操舵角偏差算出回路6と、トルク指令値算出装置10と、算出精度推定部40と、トルク指令減衰回路12と、EPS14を備えている。
目標操舵角算出装置2と、操舵角センサ4と、操舵角偏差算出回路6と、トルク指令値算出装置10及びEPS14の構成については、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0151】
算出精度推定部40は、操舵角偏差算出回路6から入力された情報信号に基づいて状態乖離度の算出精度を推定し、この推定した算出精度を含む情報信号を、トルク指令減衰回路12へ出力する。
ここで、算出精度の推定は、例えば、撮像回路16が有するCCDカメラ等のセンサを使用する環境や、センサの性能変化に応じて行う。具体的には、夜間、雨天時、濃霧時等、センサを使用する環境が悪いほど、算出精度が低下していると推定する。これ以外に、センサの検出部に汚れが付着している場合等、センサの検出精度が低下している場合等に、算出精度が低下していると推定する。
【0152】
トルク指令減衰回路12は、トルク指令値算出装置10及び算出精度推定部40から入力された情報信号に基づき、トルク指令値算出装置10が算出したトルク指令値To1を減衰させる減衰指令信号を算出する。そして、この算出した減衰指令信号によりトルク指令値To1を減衰させたトルク減衰指令値を生成して、EPS14へ出力する。
【0153】
ここで、トルク指令減衰回路12は、減衰指令信号を算出する際に、以下に説明する処理を行う。
具体的には、算出精度推定部40が推定した算出精度を参照して、トルク減衰指令値T1を生成する。そして、トルク減衰指令値T1を生成したトルク指令減衰回路12は、この生成したトルク減衰指令値T1を含む指令信号を、EPS14へ出力する。
【0154】
以下、算出精度推定部40が推定した算出精度とトルク減衰指令値T1との関係について説明する。
トルク指令減衰回路12は、算出精度推定部40から情報信号の入力を受けると、入力された情報信号が含む算出精度を参照する。そして、例えば、図13中に示すマップを用い、算出精度推定部40が推定した算出精度が低い場合、算出精度推定部40が推定した算出精度が高い場合よりも、減衰トルクの係数を減少させる。なお、図13は、トルク指令減衰回路を介して出力するトルク指令値の出力則を説明するための説明図である。
これにより、操舵支援トルク減衰手段12は、算出精度推定部40が推定した算出精度が低い場合、算出精度推定部40が推定した算出精度が高い場合よりも操舵支援トルクの減衰度合いが増加するように、減衰指令信号を算出する。
【0155】
(動作)
次に、図12及び図13を参照しつつ、図14を用いて、本実施形態の操舵支援装置1が行なう動作の一例について説明する。
図14は、本実施形態の操舵支援装置1が行う処理を示すフローチャートである。
図14中に示すフローチャートは、自車両が走行しており、自車両の運転者によって、操舵支援装置1を作動させるスイッチが操作(ON)された状態からスタートする(図14中に示す「スタート」)。
【0156】
ステップS400からS406までの処理は、上述した第一実施形態のステップS100からS106までの処理と同様であるため、その説明を省略する。なお、ステップS406において、トルク指令値To1を算出すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS408へ移行する。
【0157】
ステップS408では、トルク指令減衰回路12により、トルク減衰指令値T1を生成(ステップS408に示す「算出精度に応じてトルク減衰指令値T1を生成」)する。そして、トルク減衰指令値T1を生成したトルク指令減衰回路12は、生成したトルク減衰指令値T1を含む指令信号を、EPS14へ出力する。ステップS408において、トルク減衰指令値T1を含む指令信号をEPS14へ出力すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS410へ移行する。
【0158】
ステップS410では、EPS14において、トルク指令減衰回路12から入力された指令信号に基づいて、電動モータに供給する電流を制御する。これにより、ステップS410では、トルク指令減衰回路12が生成したトルク減衰指令値T1に相当する操舵支援トルクがステアリングホイールへ出力されるように、EPS14を制御(ステップS410に示す「EPSを制御」)する。
ステップS410においてEPS14を制御し、トルク指令減衰回路12が生成したトルク減衰指令値T1に応じた操舵支援トルクを、ステアリングホイールへ出力すると、操舵支援装置1が行う処理は、ステップS400の処理に復帰する。
【0159】
以上により、目標操舵角算出装置2は、上述した目標状態提供手段を形成し、操舵角センサ4は、上述した現在状態検出手段を形成し、操舵角偏差算出回路6は、上述した状態乖離度算出手段を形成している。また、操舵角速度センサ8は、上述した操舵角速度検出手段を形成し、トルク指令値算出装置10は、上述した操舵支援トルク算出手段を形成している。さらに、トルク指令減衰回路12は、上述した操舵支援トルク減衰手段を形成し、EPS14は、上述した操舵特性制御手段を形成している。
【0160】
(第四実施形態の効果)
(1)本実施形態では、操舵支援トルク減衰手段が、算出精度推定部が推定した算出精度が低い場合、算出精度推定部が推定した算出精度が高い場合よりも、操舵支援トルクの減衰度合いが増加するように、減衰指令信号を算出する。
このため、算出精度が低い場合は、算出精度が高い場合よりも、自車両の運転者に対し、速やかな操舵を妨げない制御を行うことが可能となる。
その結果、素早く確実な操舵操作が要求されるような場面においても、運転者の意思を反映させることが可能となるため、自車両の運転者にとって違和感の少ない操舵支援装置を、自車両の運転者に提供することが可能となる。
【0161】
(変形例)
(1)本実施形態の操舵支援装置1では、状態乖離度算出手段を、操舵角偏差算出回路6で形成したが、これに限定するものではない。すなわち、状態乖離度算出手段を、横位置偏差算出回路28で形成してもよい。同様に、状態乖離度算出手段を、方向角算出回路38で形成してもよい。また、状態乖離度算出手段を、操舵角偏差算出回路6、横位置偏差算出回路28及び方向角算出回路38のうち、少なくとも二つを有する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0162】
1 操舵支援装置
2 目標操舵角算出装置
4 操舵角センサ
6 操舵角偏差算出回路
8 操舵角速度センサ
10 トルク指令値算出装置
12 トルク指令減衰回路
14 EPS
16 撮像回路
18 画像処理回路
20 目標経路算出回路
22 目標操舵角算出回路
24 磁気センサ
26 目標経路検出回路
28 横位置偏差算出回路
30 電動モータ
32 レーザーセンサ
34 障害物検出回路
36 回避目標点算出回路
38 方向角算出回路
40 算出精度推定部
V 自車両
OB 障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の目標状態を提供する目標状態提供手段と、
前記自車両の現在の状態である現在状態を検出する現在状態検出手段と、
前記目標状態提供手段が提供した目標状態と前記現在状態検出手段が検出した現在状態との乖離度である状態乖離度を算出する状態乖離度算出手段と、
前記状態乖離度算出手段が算出した状態乖離度を縮小させるための操舵支援トルクを算出する操舵支援トルク算出手段と、
前記操舵支援トルク算出手段が算出した前記操舵支援トルクを前記自車両が有するステアリングホイールへ出力する操舵特性制御手段と、
前記操舵支援トルク算出手段が算出した前記操舵支援トルクを減衰させる減衰指令信号を算出し、当該算出した減衰指令信号により前記操舵支援トルクを減衰させる操舵支援トルク減衰手段と、を備え、
前記操舵支援トルク減衰手段は、前記状態乖離度算出手段が算出した状態乖離度が縮小傾向にある状態では前記操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合いよりも大きく、前記状態乖離度算出手段が算出した状態乖離度が拡大傾向にある状態では前記操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合い以下となるように前記減衰指令信号を算出することを特徴とする車両の操舵支援装置。
【請求項2】
前記目標状態提供手段が提供する前記目標状態は、前記ステアリングホイールの目標とする回転角度である目標操舵角であり、
前記現在状態検出手段が検出する前記現在状態は、前記ステアリングホイールの現在の回転角度である現在操舵角であり、
前記状態乖離度算出手段が算出する前記状態乖離度は、前記目標状態提供手段が提供した前記目標操舵角と前記現在状態検出手段が検出した前記現在操舵角との差分であることを特徴とする請求項1に記載した車両の操舵支援装置。
【請求項3】
前記目標状態提供手段が提供する前記目標状態は、前記自車両が目標とする走行経路である目標走行経路であり、
前記現在状態検出手段が検出する前記現在状態は、前記目標走行経路に対する前記自車両の現在の走行経路上における相対位置であり、
前記状態乖離度算出手段が算出する前記状態乖離度は、前記現在状態検出手段が検出した前記相対位置から前記目標状態提供手段が提供した前記目標走行経路までの距離であることを特徴とする請求項1に記載した車両の操舵支援装置。
【請求項4】
前記目標状態提供手段が提供する前記目標状態は、前記自車両が進行していた方向に対する自車両が目標とする走行経路までの角度である目標方向角であり、
前記現在状態検出手段が検出する前記現在状態は、前記自車両が進行していた方向に対する自車両の現在の角度である現在方向角であり、
前記状態乖離度算出手段が算出する前記状態乖離度は、前記目標状態提供手段が提供した前記目標方向角と前記現在状態検出手段が検出した前記現在方向角との差分であることを特徴とする請求項1に記載した車両の操舵支援装置。
【請求項5】
前記ステアリングホイールの現在の回転角速度を操舵角速度として検出する操舵角速度検出手段を備え、
前記操舵支援トルク減衰手段は、前記操舵角速度検出手段が検出した前記操舵角速度に応じて前記操舵支援トルクの減衰度合いが変化するように、前記減衰指令信号を算出することを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項に記載した車両の操舵支援装置。
【請求項6】
前記操舵支援トルク減衰手段は、前記操舵角速度検出手段が検出した前記操舵角速度に予め設定した係数を積算し、且つ前記状態乖離度算出手段が算出した前記状態乖離度が0となった時点で前記操舵支援トルクの減衰度合いが最大となるように、前記減衰指令信号を算出することを特徴とする請求項5に記載した車両の操舵支援装置。
【請求項7】
前記状態乖離度算出手段による前記状態乖離度の算出精度を推定する算出精度推定部を備え、
前記操舵支援トルク減衰手段は、前記算出精度推定部が推定した算出精度が低い場合、前記算出精度推定部が推定した算出精度が高い場合よりも前記操舵支援トルクの減衰度合いが増加するように、前記減衰指令信号を算出することを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項に記載した車両の操舵支援装置。
【請求項8】
自車両の目標状態と前記自車両の現在の状態との乖離度である状態乖離度を算出し、
前記算出した状態乖離度を縮小させるための操舵支援トルクを算出し、当該算出した前記操舵支援トルクを前記自車両が有するステアリングホイールへ出力する際に、前記算出した状態乖離度が縮小傾向にある状態では前記操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合いよりも大きく、前記算出した状態乖離度が拡大傾向にある状態では前記操舵支援トルクの減衰度合いが予め設定した減衰度合い以下となるように、前記操舵支援トルクを減衰させる減衰指令信号を算出することを特徴とする車両の操舵支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−12007(P2012−12007A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122603(P2011−122603)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】