説明

車両の自動ブレーキ制御装置

【課題】本発明は、より多くの場面で被害軽減の大きな効果を得ることができる車両の自動ブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】ミリ波レーダからの検出信号より障害物判定部(3a)にて障害物が移動物であるか静止物であるか或いは移動物から静止物となったものか等の障害物の状態を判定(S12,S16)し、判定結果をブレーキ制御部へ供給し、ブレーキ制御部では、自車と障害物の相対速度と障害物の状態とに基づいて、移動物及び移動状態から静止状態となった静止物については移動物用ブレーキ制御を行い(S14)、静止物については静止物用ブレーキ制御を行い(S18)、衝突予測時間算出部にて算出された衝突予測時間が各々の制御により設定された作動タイミングとなった時に警告灯、スピーカ或いは油圧アクチュエータへ作動信号を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両前方の路面上に存在する障害物、前方を走行中の先行車、或いは前方で道路を横断中の他車等(以下、これらを障害物と総称する)と自車との関係に基づき、運転者のブレーキ操作に関係なくブレーキを作動させる車両の自動ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミリ波レーダ装置等を用いて自車両前方の路上に存在する障害物を検知し、その障害物の検知情報に基づいて自車両の障害物への衝突を予知した場合に、自車両のブレーキや乗員が着用しているシートベルトを巻き取るシートベルトプリテンショナ等を作動させるレーダ装置が知られている。
【0003】
レーダ装置は、送信した電波が物体で反射し、その反射波の例えば受信強度(反射強度ともいう)に基づき、その物体が自車両と衝突する可能性がある障害物であるかを認識及び追尾し続け、その障害物との衝突が予知されたときに自車両のブレーキやシートベルトプリテンショナ等を作動させている。
【0004】
しかしながら、自車両と衝突する可能性がない物体にまでも衝突する可能性がある障害物であるとする誤認識を起こす可能性がある。このような誤認識は、特に静止物について生じ易く、誤認識が生じた場合には、自車両がその静止物の手前までくると、突然ブレーキが作動したり、乗員がシートベルトにより拘束されたりするおそれがある。
【0005】
この様なことから、レーダ装置により検知した物体が、自車両と衝突する可能性がある障害物であるか否かの判定を行うために反射波の受信強度の閾値を、予め静止物や移動物(先行車両等)のように物体の種類に応じて複数設定し、複数の閾値を使い分けることにより、検知した物体が自車両と衝突する可能性がある障害物であるか否かを正確に判定することができる車両の障害物検知装置が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−280144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の車両の障害物検知装置では、予め静止物や移動物のように物体の種類に応じて反射波の受信強度の閾値を複数設定し、反射波の受信強度より検知した物体が自車両と衝突する可能性がある障害物が静止物であるか移動物であるかを認識し、ブレーキの作動制御をすることで衝突時における被害軽減を図るようにしている。
【0008】
しかしながら、静止物は、移動物と比較しレーダ装置等での検出が難しく、障害物となり得る静止物であるか否かの判定が困難である。このことから、静止物では、ブレーキ作動の制御タイミングを移動物と比較し遅くなるようにしている。
よって、障害物が静止物である場合には、ブレーキ作動が遅くなることによりブレーキ作動による被害軽減の効果が十分に得られないことがあり、好ましいことではない。
【0009】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、より多くの場面で被害軽減の大きな効果を得ることができる車両の自動ブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1の車両の自動ブレーキ制御装置は、自車の前方の障害物を検出する障害物検出手段と、前記障害物検出手段の検出結果に基づき、前記障害物の状態を判定する障害物判定手段と、運転者のブレーキペダル操作に関係なく車両のブレーキを作動可能なブレーキ作動手段と、前記障害物判定手段の判定結果に基づき、前記障害物が静止状態である時には、静止物用ブレーキ制御で前記ブレーキ作動手段の制御を開始し、前記障害物が移動状態である時には、前記静止物用ブレーキ制御よりも早い時期に前記ブレーキ作動手段の制御を開始する移動物用ブレーキ制御で前記車両に制動力を発生させるブレーキ制御手段を備え、前記ブレーキ制御手段は、前記障害物判定手段により前記障害物が移動状態から静止状態に変化した静止物であると判定されたときには、前記移動用ブレーキ制御にて前記ブレーキ作動手段を制御することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の車両の自動ブレーキ制御装置では、請求項1において、前記障害物判定手段により判定された障害物の状態を記憶する記憶手段を有し、前記障害物判定手段は、前記判定された障害物が静止物であっても、該障害物に関し移動状態が前記記憶手段により過去の状態情報として記憶されているとき、前記障害物が移動状態から静止状態に変化した静止物であると判定することを特徴とする。
【0012】
また、請求項3の車両の自動ブレーキ制御装置では、請求項1または2において、前記自車の速度と前記障害物検出手段にて検出された前記障害物の移動速度との相対速度と前記障害物の状態に応じて予め規定された作動タイミングとの関係を示すブレーキ作動マップを備え、前記ブレーキ制御手段は、前記ブレーキ作動マップに基づき前記ブレーキ作動手段の制御を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、障害物が静止物であっても障害物判定手段が移動状態から静止状態となった障害物と判定した場合には、障害物が移動状態であるのと同様に静止物用ブレーキ制御よりも早い時期にブレーキ作動手段の制御を開始して車両に制動力を発生させている。
【0014】
これにより、制御開始時に障害物であるか否かの判別が困難な静止物であっても、障害物検出手段により検出された障害物が移動状態から静止状態となったことが障害物判定手段により判定された場合には、一旦移動状態が検出されていることで通常の静止物よりも障害物であることを的確に判断することが可能であり、移動物と同様に早い時期にブレーキを作動させることができる。
【0015】
従って、静止物であっても早い時期にブレーキを作動させることができるので、自車の速度の低減量を増大させ、より多くの場面で、衝突を回避でき、或いは衝突時における被害軽減を図ることができる。
また、請求項2の発明によれば、障害物判定手段は、判定した障害物に関し移動状態が記憶手段により過去の状態情報として記憶されているとき、当該障害物が移動状態から静止状態に変化した静止物であると判定する。
【0016】
従って、障害物が移動状態から静止状態に変化した静止物であることを容易に判定することができる。
また、請求項3の発明によれば、相対速度と予め規定された作動タイミングとの関係を示すブレーキ作動マップに基づきブレーキ作動手段の制御を開始して車両に制動力を発生させている。
【0017】
従って、簡単な構成で、障害物の状態により、適正な時期にブレーキを作動させることができるので、更に被害を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るブレーキ作動マップである。
【図3】本発明の実施形態に係る自動ブレーキ制御装置のブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】図3に続く、本発明の実施形態に係る自動ブレーキ制御装置の移動物用ブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】図3に続く、本発明の実施形態に係る自動ブレーキ制御装置の静止物用ブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置の概略構成図であり、以下、当該自動ブレーキ制御装置の構成を説明する。
図1に示すように、自動ブレーキ制御装置は、ミリ波レーダ(障害物検出手段)1、車速センサ2、自動ブレーキ用電子コントロールユニット(以下、自動ブレーキ用ECU)3、警告灯4、スピーカ5、油圧アクチュエータ(ブレーキ作動手段)6及びブレーキ装置7から構成される。なお、それぞれの構成要素は、電気的に接続される。
【0020】
ミリ波レーダ1は、図示しない自車の車両前方に設置され、ミリ波帯の電波を用いて車両前方の障害物を検出し、該障害物までの距離及び該障害物の速度を測定するものである。
自動ブレーキ用ECU3は、ミリ波レーダ1及び車速を検出する車速センサ2からの検出情報に基づきブレーキ装置7を作動させる油圧アクチュエータ6の制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)及び中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成される。
【0021】
自動ブレーキ用ECU3の入力側には、ミリ波レーダ1及び車速センサ2等のセンサ類が電気的に接続されており、これら各種センサ類からの検出情報が入力される。
一方、自動ブレーキ用ECU3の出力側には、警報を視覚的に伝える警告灯4と警報を聴覚的に伝えるスピーカ5と油圧アクチュエータ6が電気的に接続されている。
【0022】
これより、図1に示す通り自動ブレーキ用ECU3は、ミリ波レーダ1からの検出信号である障害物の移動速度と車速センサ2からの検出信号である自車の車速から自車と障害物との相対速度を相対速度算出部(相対速度算出手段)3bにより算出し、算出結果を障害物判定部(障害物判定手段)3a、衝突予測時間算出部(衝突予測時間算出手段)3c及びブレーキ制御部(ブレーキ制御手段)3eへ供給する。
障害物判定部3aは、相対速度算出部3bにより算出した自車と障害物との相対速度に基づき、障害物判定部(障害物判定手段)3aにて障害物が移動物であるか静止物であるか或いは移動物から静止物となったものであるか等の障害物の状態を判定し、判定結果をブレーキ制御部3eへ供給する。ここに、障害物判定部3aにて判定された障害物が移動物であるか静止物であるかの判定結果は記憶部(記憶手段)3dに暫時記憶され、判定された障害物が移動物から静止物となったものであることは記憶部3dに記憶された当該障害物の過去の状態情報に基づき容易に判定される。具体的には、障害物判定部3aにて判定された障害物が静止物であっても、当該障害物の移動状態が記憶部3dに過去の状態情報として記憶されているときには、当該障害物が移動状態から静止状態に変化した静止物であると判定される。
【0023】
衝突予測時間算出部3cは、ミリ波レーダ1からの検出信号である自車と障害物との距離と相対速度算出部3bにて算出された相対速度に基づき自車と障害物との衝突予測時間を算出し、算出結果をブレーキ制御部3eへ供給する。
【0024】
ブレーキ制御部3eは、相対速度算出部3bにて算出された自車と障害物の相対速度及び障害物判定部3aにて判定された障害物の状態に基づいてブレーキ制御を行う。具体的には、ブレーキ制御部3eでは、障害物が障害物判定部3aにて移動物或いは移動状態から静止状態となった静止物であると判定されたときには移動物用ブレーキ制御を行い、障害物が静止物であると判定されたときには静止物用ブレーキ制御を行い、衝突予測時間算出部3cにて算出された衝突予測時間が各々の制御により設定された作動タイミングとなった時に警告灯4、スピーカ5へ作動信号を供給し警報を作動させ、或いはブレーキ装置7の作動が必要であれば油圧アクチュエータ6へ作動信号を供給しブレーキ装置7を作動させる。
【0025】
以下、このように構成された本発明の実施形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置の作用及び効果について詳細に説明する。
図2は、ブレーキ作動マップであり、横軸は相対速度Rv、縦軸はブレーキの作動タイミングを示し、マップ内の太い一点鎖線は移動物と静止物共通の警報開始タイミング、太い鎖線は移動物の緩制動開始タイミング、細い鎖線は静止物の緩制動開始タイミング、太い実線は移動物の緊急制動開始タイミング、細い実線は静止物の緊急制動開始タイミングを示す。なお、ブレーキ作動マップは、実験等に基づき予め設定され自動ブレーキ用ECU3の記憶装置に記憶されている。また、図3は、自動ブレーキ用ECU3が実行する自動ブレーキ制御装置のブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートであり、また、図4は、図3に続く自動ブレーキ制御装置の移動物用ブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートであり、また、図5は、図3に続く自動ブレーキ制御装置の静止物用ブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0026】
図3に示すように、ステップS10では、ミリ波レーダ1にて検出物が障害物であるか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で障害物であれば、ステップS12に進み、判別結果が偽(No)でブレーキ制御を実施せず再度ステップS10に戻り再度判別をする。
ステップS12では、ミリ波レーダ1からの検出信号である障害物の移動速度と車速センサ2からの検出信号である自車の車速から相対速度算出部3bにて算出された自車と障害物との相対速度に基づき、障害物判定部3aにて障害物が移動物であるか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で移動物であればステップS14に進み、移動物用ブレーキ制御を開始し、判別結果が偽(No)で静止物であれば、ステップS16に進む。
【0027】
ステップS16では、上記記憶部3dの記憶情報に基づき、障害物判定部3aにて静止物が静止する前の移動状態時に検出したものか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で静止物が静止する前の移動状態時に検出したもの、即ち判定された障害物が静止物であっても記憶部3dに過去に状態情報として記憶されたものであって、移動状態から静止状態に変化したものであればステップS14に進み、移動物用ブレーキ制御を開始し、判別結果が偽(No)で移動状態時に検出されていなければステップS18に進み、静止物用ブレーキ制御を開始する。
【0028】
障害物が静止物であっても障害物判定部3aにて一旦移動物であると判定されて記憶されているものであれば、この障害物は通常の静止物よりも障害物と的確に判断することができる。故に、ここでは、静止物が静止する前の移動状態時に検出したものであって移動状態から静止状態に変化したものである場合には、移動物用ブレーキ制御を開始し、障害物がそれ以外の通常の静止物である場合には、静止物用ブレーキ制御を開始する。
【0029】
[移動物用ブレーキ制御]
ステップS20では、車速センサ2にて自車の車速Vaを検出し、ステップS22に進む。
ステップS22では、ミリ波レーダ1にて障害物の移動速度Vbを検出し、ステップS24に進む。
ステップS24では、ミリ波レーダ1にて自車と障害物との距離Daを検出し、ステップS26に進む。
【0030】
ステップS26では、相対速度算出部3bにて自車の速度Vaと障害物の移動速度Vbより相対速度Rvを算出し、ステップS28に進む。
ステップS28では、ブレーキ制御部3eにて図2のブレーキ作動マップに基づき相対速度Rvに対する障害物が移動物である場合の警報開始タイミングTw(例えば2sec)、緩制動開始タイミングTsa(例えば1.5sec)及び緊急制動開始タイミングTea(例えば1.0sec)を設定し、ステップS30に進む。
【0031】
ステップS30では、衝突予測時間算出部3cにて相対速度Rvと自車と移動物との距離Daより衝突予測時間TTCを算出し、ステップS32に進む。
ステップS32では、ブレーキ制御部3eにて衝突予測時間TTCが緊急制動開始タイミングTea以下であるか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で衝突予測時間TTCが緊急制動開始タイミングTea以下であれば、ステップS38に進み緊急制動(例えば、フルブレーキング)を開始し、ステップS20へ戻り、判別結果が偽(No)で衝突予測時間TTCが緊急制動開始タイミングTeaより大きければ、ステップS34に進む。
【0032】
ステップS34では、ブレーキ制御部3eにて衝突予測時間TTCが緩制動開始タイミングTsa以下であるか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で衝突予測時間TTCが緩制動開始タイミングTsa以下であれば、ステップS40に進み緩制動(例えば、減速度約0.3Gでの減速)を開始し、ステップS20へ戻り、判別結果が偽(No)で衝突予測時間TTCが緩制動開始タイミングTsaより大きければ、ステップS36に進む。
【0033】
ステップS36では、ブレーキ制御部3eにて衝突予測時間TTCが警報開始タイミングTw以下であるか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で衝突予測時間TTCが警報開始タイミングTw以下であれば、ステップS42に進み警報(例えば、警告灯の点灯、警告音の発話)を開始し、ステップS20へ戻り、判別結果が偽(No)で衝突予測時間TTCが警報開始タイミングTwより大きければ、当該ルーチンを抜ける。
【0034】
[静止物用ブレーキ制御]
ステップS50では、車速センサ2にて自車の車速Vaを検出し、ステップS52に進む。
ステップS52では、ミリ波レーダ1にて自車と障害物との距離Daを検出し、ステップS54に進む。
ステップS54では、相対速度算出部3bにて自車の速度Vaを相対速度Rvと設定し、ステップS56に進む。
【0035】
ステップS56では、ブレーキ制御部3eにて図2のブレーキ作動マップに基づき相対速度Rvに対する障害物が静止物である場合の警報開始タイミングTw(例えば2sec)、緩制動開始タイミングTsb(例えば1.2sec)及び緊急制動開始タイミングTeb(例えば0.8sec)を設定し、ステップS58に進む。
ステップS58では、衝突予測時間算出部3cにて相対速度Rvと自車と移動物との距離Daより衝突予測時間TTCを算出し、ステップS60に進む。
【0036】
ステップS60では、ブレーキ制御部3eにて衝突予測時間TTCが緊急制動開始タイミングTeb以下であるか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で衝突予測時間TTCが緊急制動開始タイミングTeb以下であれば、ステップS66に進み緊急制動を開始し、ステップS50へ戻り、判別結果が偽(No)で衝突予測時間TTCが緊急制動開始タイミングTebより大きければ、ステップS62に進む。
【0037】
ステップS62では、ブレーキ制御部3eにて衝突予測時間TTCが緩制動開始タイミングTsb以下であるか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で衝突予測時間TTCが緩制動開始タイミングTsb以下であれば、ステップS68に進み緩制動を開始し、ステップS50へ戻り、判別結果が偽(No)で衝突予測時間TTCが緩制動開始タイミングTsbより大きければ、ステップS64に進む。
【0038】
ステップS64では、ブレーキ制御部3eにて衝突予測時間TTCが警報開始タイミングTw以下であるか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で衝突予測時間TTCが警報開始タイミングTw以下であれば、ステップS70に進み警報を開始し、ステップS50へ戻り、判別結果が偽(No)で衝突予測時間TTCが警報開始タイミングTwより大きければ、当該ルーチンを抜ける。
【0039】
このように、本発明の実施形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置によれば、障害物判定部3aにてミリ波レーダ1で検出された障害物が移動物、静止物或いは移動物から変化した静止物の3種のいずれであるかを判別し、移動物と移動物から変化した静止物の2種である場合にはブレーキ制御部3eにて移動物用ブレーキ制御を行い、静止物である場合には静止物用ブレーキ制御を行うようにしている。
【0040】
これにより、従来静止物として扱われ静止物用ブレーキ制御を行っていた移動物から静止物に変化した障害物についても移動物と同様に扱い移動物用ブレーキ制御を適用することができる。
従って、移動状態から静止状態になった障害物であってもブレーキを早期に作動させ制動することができるので、自車の速度Vaの低減量を増大させ、より多くの場面で、衝突を回避でき、或いは衝突時において被害軽減の大きな効果を得ることができる。
【0041】
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の形態は実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態は、ミリ波レーダ1を用いて障害物を検出しているが、これに限定するものではなく超音波、カメラ等の画像認識装置でも良い。また、障害物が先行車等の車両であれば車車間通信及びGPS情報等で検出を行っても良い。
【0042】
また、ブレーキ装置7を作動させることにより車両を減速させ被害を軽減するようにしているが、ブレーキ装置7の換わり或いはこれと一緒に衝突時に乗員のシートベルトを巻き取るシートベルトプリテンショナを備え、このシートベルトプリテンショナを制御することにより乗員を保護することもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 ミリ波レーダ(障害物検出手段)
2 車速センサ
3 自動ブレーキ用ECU
3a 障害物判定部(障害物判定手段)
3b 相対速度算出部(相対速度算出手段)
3c 衝突予測時間算出部(衝突予測時間算出手段)
3d 記憶部(記憶手段)
3e ブレーキ制御部(ブレーキ制御手段)
6 油圧アクチュエータ(ブレーキ作動手段)
7 ブレーキ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の前方の障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段の検出結果に基づき、前記障害物の状態を判定する障害物判定手段と、
運転者のブレーキペダル操作に関係なく車両のブレーキを作動可能なブレーキ作動手段と、
前記障害物判定手段の判定結果に基づき、前記障害物が静止状態である時には、静止物用ブレーキ制御で前記ブレーキ作動手段の制御を開始し、前記障害物が移動状態である時には、前記静止物用ブレーキ制御よりも早い時期に前記ブレーキ作動手段の制御を開始する移動物用ブレーキ制御で前記車両に制動力を発生させるブレーキ制御手段を備え、
前記ブレーキ制御手段は、前記障害物判定手段により前記障害物が移動状態から静止状態に変化した静止物であると判定されたときには、前記移動用ブレーキ制御にて前記ブレーキ作動手段を制御することを特徴とする車両の自動ブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記障害物判定手段により判定された障害物の状態を記憶する記憶手段を有し、
前記障害物判定手段は、前記判定された障害物が静止物であっても、該障害物に関し移動状態が前記記憶手段により過去の状態情報として記憶されているとき、前記障害物が移動状態から静止状態に変化した静止物であると判定することを特徴とする、請求項1記載の車両の自動ブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記自車の速度と前記障害物検出手段にて検出された前記障害物の移動速度との相対速度と前記障害物の状態に応じて予め規定された作動タイミングとの関係を示すブレーキ作動マップを備え、
前記ブレーキ制御手段は、前記ブレーキ作動マップに基づき前記ブレーキ作動手段の制御を開始することを特徴とする、請求項1または2に記載の車両の自動ブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−126445(P2011−126445A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287666(P2009−287666)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】