車両の衝撃吸収構造
【課題】車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、サイドメンバの変形による衝撃吸収が十分に達成される車両の衝撃吸収構造、を提供する。
【解決手段】車両の衝撃吸収構造は、エンジンルームに配置され、車両前後方向に延び、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に折れポイントとなる結合部200を有するサイドメンバ20と、車両前後方向において結合部200と重なるようにサイドメンバ20に固定され、ウォータポンプ670を支持するためのウォータポンプブラケット90とを有する。ウォータポンプブラケット90には、切り欠き212および切り欠き214と、切り欠き形状を有するボルト用孔213とが形成されている。
【解決手段】車両の衝撃吸収構造は、エンジンルームに配置され、車両前後方向に延び、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に折れポイントとなる結合部200を有するサイドメンバ20と、車両前後方向において結合部200と重なるようにサイドメンバ20に固定され、ウォータポンプ670を支持するためのウォータポンプブラケット90とを有する。ウォータポンプブラケット90には、切り欠き212および切り欠き214と、切り欠き形状を有するボルト用孔213とが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、車両の衝撃吸収構造に関し、より特定的には、サイドメンバに、車両衝突時に折れポイントとなる易変形部が設けられた車両の衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の衝撃吸収構造に関連して、たとえば、特開2001−304339号公報には、ハイブリッド車等のウォータポンプ回転に伴う車室内への伝達音を低減し、静粛性を高めて快適な居住性を実現することを目的とした車両ポンプ用防振装置が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示されたハイブリッド車においては、ウォータポンプを支持するためのブラケットが、車両のサイドメンバ上に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−304339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両前方からエンジンルームに過大な外力が加わった場合に、エンジンルーム内のサイドメンバを折れ変形させることによってその衝撃を吸収することが可能である。しかしながら、上述の特許文献1に開示されたハイブリッド車においては、ウォータポンプを支持するためのブラケットがサイドメンバに固定されているため、このブラケットがサイドメンバの変形を阻害する場合がある。この場合、サイドメンバの変形による衝撃吸収が十分に達成されないおそれがある。
【0005】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、サイドメンバの変形による衝撃吸収が十分に達成される車両の衝撃吸収構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った車両の衝撃吸収構造は、エンジンルームに配置され、車両前後方向に延びるサイドメンバと、ウォータポンプを支持するためのブラケットとを備える。サイドメンバは、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に折れポイントとなる易変形部を有する。ブラケットは、車両前後方向において易変形部と重なるようにサイドメンバに固定されている。ブラケットには、切り欠きが形成されている。
【0007】
このように構成された車両の衝撃吸収構造によれば、ブラケットに切り欠きを形成することにより、サイドメンバに固定されるブラケットの剛性を局所的に低減させる。これにより、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、易変形部においてサイドメンバを容易に折れ変形させることができる。結果、サイドメンバの変形による衝撃吸収を十分に達成することができる。
【0008】
また好ましくは、切り欠きは、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、ブラケットの変形を促す形態に形成されている。このように構成された車両の衝撃吸収構造によれば、ブラケットによってサイドメンバの変形が阻害されることを抑制できる。
【0009】
また好ましくは、易変形部は、車両前後方向におけるサイドメンバの一部範囲に形成されている。切り欠きは、車両前後方向において、易変形部と重なる位置に形成されている。このように構成された車両の衝撃吸収構造によれば、ブラケットの剛性を車両前後方向において易変形部と重なる位置で低減させる。これにより、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、易変形部においてサイドメンバを容易に折れ変形させることができる。
【0010】
また好ましくは、ブラケットには、ブラケットをサイドメンバに締結するためのボルトが挿入されるボルト用孔が形成される。切り欠きは、ボルト用孔の周縁の一部範囲が切り欠かれた形態で形成されている。このように構成された車両の衝撃吸収構造によれば、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、ボルト用孔の切り欠き部分を通じてボルトをブラケットから分離させる。これにより、ブラケットとサイドメンバとの締結が解除されるため、ブラケットによってサイドメンバの変形が阻害されることを抑制できる。
【0011】
また好ましくは、車両の衝撃吸収構造は、サイドメンバに固定され、電力の制御を行なうパワー制御ユニットを支持するためのトレイをさらに備える。易変形部は、車両前後方向におけるサイドメンバの一部範囲に形成されている。トレイは、その周縁が折り曲げられることによって形成され、車両前後方向において易変形部と重なる位置で切り欠かれたフランジ部を有する。
【0012】
このように構成された車両の衝撃吸収構造によれば、トレイの剛性を車両前後方向において易変形部と重なる位置で低減させる。これにより、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、易変形部においてサイドメンバを容易に折れ変形させることができる。
【0013】
また好ましくは、車両の衝撃吸収構造は、エンジンルーム内で支持され、電力の制御を行なうパワー制御ユニットをさらに備える。ブラケットは、車両前後方向に延びる基部と、基部から車両前方に連なって形成され、ウォータポンプを支持するための支持部とを有する。ブラケットは、基部と支持部との間で、パワー制御ユニットとは反対側に折れ曲がって形成されている。
【0014】
このように構成された車両の衝撃吸収構造によれば、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、基部と支持部との間でブラケットをパワー制御ユニットとは反対側に折れ変形させることができる。これにより、ウォータポンプとパワー制御ユニットとの衝突を回避することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上に説明したように、この発明に従えば、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、サイドメンバの変形による衝撃吸収が十分に達成される車両の衝撃吸収構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ハイブリッド自動車の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1中のPCUの主要部の構成を示す回路図である。
【図3】この発明の実施の形態における車両の衝撃吸収構造を示す斜視図である。
【図4】図3中の矢印IVに示す方向から見たエンジンルーム内を示す側面図である。
【図5】図3中のサイドメンバに固定されたインバータトレイおよびウォータポンプブラケットを示す斜視図である。
【図6】図5中のVI−VI線上に沿ったインバータトレイを示す断面図である。
【図7】図5中のVII−VII線上に沿ったインバータトレイを示す断面図である。
【図8】図5中の2点鎖線VIIIに示す箇所に設けられたPCUの離脱構造を示す斜視図である。
【図9】図5中の2点鎖線IXに示す箇所に設けられたPCUの離脱構造を示す斜視図である。
【図10】図5中の2点鎖線Xに示す箇所に設けられたPCUの離脱構造を示す斜視図である。
【図11】図3中のサイドメンバを車両前後方向に延在する平面により切断した場合の形状を示す断面図である。
【図12】図3中のウォータポンプブラケットを示す斜視図である。
【図13】図3中のサイドメンバに固定されたインバータトレイおよびウォータポンプブラケットを模式的に示す平面図である。
【図14】図3中のサイドメンバに固定されたインバータトレイおよびウォータポンプブラケットを模式的に示す側面図である。
【図15】ハイブリッド自動車が前面衝突を起こした場合のサイドメンバの変形を示す平面図である。
【図16】ハイブリッド自動車が前面衝突を起こした場合のウォータポンプブラケットの変形の過程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0018】
図1は、ハイブリッド自動車の概略構成を示すブロック図である。図1を参照して、ハイブリッド自動車500は、その駆動系をなす主要な構造として、エンジン510と、モータジェネレータ520と、動力分割機構620と、ディファレンシャル機構610と、ドライブシャフト630と、前輪である駆動輪640L,640Rと、パワー制御ユニット(PCU:Power Control Unit)660と、バッテリ560とを有する。
【0019】
エンジン510およびモータジェネレータ520によって、ハイブリッド自動車500の駆動源530が構成されている。
【0020】
ハイブリッド自動車500の車両前側の位置には、エンジンルーム710が形成されている。エンジン510、モータジェネレータ520およびPCU660は、エンジンルーム710に収容されている。
【0021】
PCU660は、フロントバンパ560に対して車両後方に隣り合って配置されている。PCU660は、車両幅方向における車両中心に対していずれか一方に片寄った位置に配置されている。PCU660とフロントバンパ560との間には、たとえば、ラジエータ等の、PCU660と比較して低剛性の構造物が配置されている。
【0022】
モータジェネレータ520とPCU660との間は、ケーブル810により電気的に接続されている。PCU660とバッテリ560との間は、ケーブル820により電気的に接続されている。
【0023】
エンジン510およびモータジェネレータ520は、動力分割機構620を介してディファレンシャル機構610に連結されている。なお、図中では、エンジン510、モータジェネレータ520、動力分割機構620およびディファレンシャル機構610が、別々に示されているが、これらの装置は一体の構造物として設けられている。ディファレンシャル機構610は、ドライブシャフト630を介して駆動輪640L,640Rに連結されている。
【0024】
モータジェネレータ520は、3相交流同期形の電動発電機であって、PCU660から供給される交流電力によって駆動力を発生する。モータジェネレータ520は、ハイブリッド自動車500の減速時などにおいては発電機としても使用され、その発電作用(回生発電)により交流電力を発電し、発電した交流電力をPCU660に出力する。
【0025】
PCU660は、バッテリ560から供給される直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ520を駆動制御する。PCU660は、モータジェネレータ520によって発電された交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ560を充電する。なお、PCU660の構造については、後で詳細に説明する。
【0026】
動力分割機構620は、たとえばプラネタリギヤ(図示せず)を含んで構成されている。
【0027】
エンジン510および/またはモータジェネレータ520から出力された動力は、動力分割機構620からディファレンシャル機構610を介してドライブシャフト630に伝達される。ドライブシャフト630に伝達された駆動力は、駆動輪640L,640Rに回転力として伝達されて、ハイブリッド自動車500を走行させる。この場合、モータジェネレータ520は、電動機として作動する。
【0028】
一方、ハイブリッド自動車500の減速時などにおいては、駆動輪640L,640Rもしくはエンジン510によってモータジェネレータ520が駆動される。この場合、モータジェネレータ520が発電機として作動する。モータジェネレータ520によって発電された電力は、PCU660を介してバッテリ560に蓄えられる。
【0029】
図2は、図1中のPCUの主要部の構成を示す回路図である。図2を参照して、PCU660は、コンバータ760と、インバータ770と、制御装置780と、コンデンサC1,C2と、電源ラインPL1〜PL3と、出力ライン740U,740V,740Wとを有する。コンバータ760は、バッテリ560とインバータ770との間に接続され、インバータ770は、出力ライン740U,740V,740Wを介してモータジェネレータ520と接続されている。
【0030】
バッテリ560は、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の2次電池である。バッテリ560は、発生した直流電圧をコンバータ760に供給し、また、コンバータ760から受ける直流電圧によって充電される。
【0031】
コンバータ760は、パワートランジスタQ1,Q2と、ダイオードD1,D2と、リアクトルLとからなる。パワートランジスタQ1,Q2は、電源ラインPL2,PL3間に直列に接続され、制御装置780からの制御信号をベースに受ける。ダイオードD1,D2は、それぞれパワートランジスタQ1,Q2のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ1,Q2のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続されている。リアクトルLの一端は、バッテリ560の正極と接続される電源ラインPL1に接続され、リアクトルLの他端は、パワートランジスタQ1,Q2の接続点に接続されている。
【0032】
コンバータ760は、リアクトルLを用いてバッテリ560から受ける直流電圧を昇圧し、その昇圧した昇圧電圧を電源ラインPL2に供給する。コンバータ760は、インバータ770から受ける直流電圧を降圧してバッテリ560を充電する。
【0033】
インバータ770は、U相アーム750U、V相アーム750VおよびW相アーム750Wからなる。各相アームは、電源ラインPL2,PL3間に並列に接続される。U相アーム750Uは、直列に接続されたパワートランジスタQ3,Q4を含み、V相アーム750Vは、直列に接続されたパワートランジスタQ5,Q6を含み、W相アーム750Wは、直列に接続されたパワートランジスタQ7,Q8を含む。ダイオードD3〜D8は、それぞれパワートランジスタQ3〜Q8のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ3〜Q8のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続される。各相アームにおける各パワートランジスタの接続点は、出力ライン740U,740V,740Wを介してモータジェネレータ520の各相コイルの反中性点側にそれぞれ接続されている。
【0034】
インバータ770は、制御装置780からの制御信号に基づいて、電源ラインPL2から受ける直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ520へ出力する。インバータ770は、モータジェネレータ520によって発電された交流電圧を直流電圧に整流して電源ラインPL2に供給する。
【0035】
コンデンサC1は、電源ラインPL1,PL3間に接続され、電源ラインPL1の電圧レベルを平滑化する。コンデンサC2は、電源ラインPL2,PL3間に接続され、電源ラインPL2の電圧レベルを平滑化する。
【0036】
制御装置780は、モータトルク指令値、モータジェネレータ520の各相電流値、およびインバータ770の入力電圧に基づいてモータジェネレータ520の各相コイル電圧を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ3〜Q8をオン/オフするPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成してインバータ770へ出力する。
【0037】
制御装置780は、上述したモータトルク指令値およびモータ回転数に基づいてインバータ770の入力電圧を最適にするためのパワートランジスタQ1,Q2のデューティ比を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ1,Q2をオン/オフするPWM信号を生成してコンバータ760へ出力する。
【0038】
制御装置780は、モータジェネレータ520によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ560を充電するため、コンバータ760およびインバータ770におけるパワートランジスタQ1〜Q8のスイッチング動作を制御する。
【0039】
PCU660においては、コンバータ760は、制御装置780からの制御信号に基づいて、バッテリ560から受ける直流電圧を昇圧して電源ラインPL2に供給する。そして、インバータ770は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ520へ出力する。
【0040】
インバータ770は、モータジェネレータ520の回生動作によって発電された交流電圧を直流電圧に変換して電源ラインPL2へ出力する。コンバータ760は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を降圧してバッテリ560を充電する。
【0041】
インバータ770に供給される電圧は、たとえば、500V以上の高電圧であり、車両衝突時においてもインバータ770を保護する必要がある。
【0042】
続いて、図1中のハイブリッド自動車500に適用される車両の衝撃吸収構造の構成について詳細に説明する。
【0043】
図3は、この発明の実施の形態における車両の衝撃吸収構造を示す斜視図である。図中には、図1中に示すエンジンルーム710の内部(エンジンルーム710内の車両左側部分)が示されている。図4は、図3中の矢印IVに示す方向から見たエンジンルーム内を示す側面図である。図5は、図3中のサイドメンバに固定されたインバータトレイおよびウォータポンプブラケットを示す斜視図である。
【0044】
図3から図5を参照して、エンジンルーム710の内部には、ハイブリッド自動車500のフレーム(車枠)を構成するサイドメンバ20が設けられている。サイドメンバ20は、ハイブリッド自動車500の外板として設けられたサイドパネルに隣り合って設けられている。サイドメンバ20は、車両前後方向に延びている。サイドメンバ20は、金属製の高剛性体であり、たとえば、筒状の高張力鋼板(ハイテン)から形成されている。ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こした場合、図1中のフロントバンパ560から入力された衝撃エネルギは、サイドメンバ20が変形することによって効率よく吸収される。
【0045】
サイドメンバ20は、頂面20aおよび内側面20bを有する。頂面20aは、鉛直上方向に面する。内側面20bは、車両の内側、言い換えれば、ハイブリッド自動車500の外板を構成するサイドパネルと向い合う側とは反対側に面する。
【0046】
エンジンマウント30には、図1中のモータジェネレータ520が吊り下げられた状態で支持されている。エンジンマウント30は、一体に設けられた図1中のエンジン510およびモータジェネレータ520の重力を受けている。エンジンマウント30は、金属製の高剛性体である。エンジンマウント30は、頂面30aを有する。頂面30aは、鉛直上方向に面する。
【0047】
エンジンマウント30は、サイドメンバ20に連結されている。エンジンマウント30は、サイドメンバ20から車両幅方向に延出する。エンジンマウント30は、サイドメンバ20から、サイドメンバ20が延びる方向に略直交する方向に延出する。エンジンマウント30は、サイドメンバ20の内側面20bに締結されている。
【0048】
PCU660は、その外観をなすケース体31を有する。ケース体31は、略直方体形状を有する。ケース体31は、金属から形成されており、たとえば、アルミニウムから形成されている。ケース体31は、前面31a、後面31bおよび外側面31cを有する。前面31aおよび後面31bは、それぞれ、車両前方側および車両後方側に面する。外側面31cは、車両の外側、言い換えれば、ハイブリッド自動車500の外板を構成するサイドパネルと向い合う側に面する。
【0049】
PCU660は、頂部32および底部33を有する。底部33は、後で詳細に説明するインバータトレイ50に固定されている。歩行者保護の観点から、PCU660とエンジンルーム710を覆うボンネットとの間の隙間を十分に確保すべく、PCU660は、その頂部32が車両前方に傾く姿勢に支持されている。
【0050】
本実施の形態における車両の衝撃吸収構造は、トレイとしてのインバータトレイ50を有する。PCU660は、インバータトレイ50を介してサイドメンバ20およびエンジンマウント30に支持されている。
【0051】
インバータトレイ50上には、PCU660が載置されている。インバータトレイ50およびPCU660は、エンジンマウント30と隣り合って配置されている。インバータトレイ50およびPCU660は、エンジンマウント30の車両前方側に配置されている。PCU660は、エンジンマウント30と高さ方向において重なる位置に配置されている。
【0052】
インバータトレイ50は、金属製の板材により形成されている。インバータトレイ50は、PCU660の重量を受ける受け皿形状を有する。インバータトレイ50は、エンジンルーム710内を平面的に見て、角部51、角部52および角部53を有する略三角形形状を有する。
【0053】
インバータトレイ50は、角部52および角部53から角部51に向けて、車両前方側から後方側に延在するように形成されている。インバータトレイ50は、角部52および角部53から角部51に向けて、鉛直上方向に傾斜しながら延在するように形成されている。すなわち、インバータトレイ50は、角部52および角部53が相対的に低い位置に位置決めされ、角部51が相対的に高い位置に位置決めされるように設けられている。角部51は、エンジンマウント30の頂面30a上に載置され、角部52は、サイドメンバ20の頂面20a上に載置されている。角部53は、エンジンルーム710内の空間に自由端として配置されている。
【0054】
インバータトレイ50は、ガイド部54を有する。ガイド部54は、上記のインバータトレイ50が鉛直上方向に傾斜しながら角部51に向けて延在する部分により構成されている。
【0055】
インバータトレイ50は、サイドメンバ20に対して片持ちの状態で固定されている。より具体的には、平面的に見て略三角形形状を有するインバータトレイ50のうちの一角をなす角部52が、ボルト101およびボルト102によってサイドメンバ20の頂面20aに締結されている。
【0056】
インバータトレイ50のガイド部54は、エンジンマウント30に固定されている。より具体的には、インバータトレイ50の角部51が、ボルト103によってエンジンマウント30の頂面30aに締結されている。インバータトレイ50がエンジンマウント30に固定された状態で、ガイド部54は、エンジンマウント30に向かって延び、その延びる先で頂面30aに固定されている。
【0057】
図6は、図5中のVI−VI線上に沿ったインバータトレイを示す断面図である。図7は、図5中のVII−VII線上に沿ったインバータトレイを示す断面図である。
【0058】
図5から図7を参照して、インバータトレイ50には、その剛性を向上させることを目的として、フランジ部56およびフランジ部57が形成されている。フランジ部56は、角部51と角部53とを結ぶインバータトレイ50の周縁が折り返されることにより形成されている。フランジ部57は、角部51と角部52とを結ぶインバータトレイ50の周縁が折り返されることにより形成されている。
【0059】
インバータトレイ50には、さらに同じ目的で、ビード部58およびビード部59が形成されている。ビード部58およびビード部59は、インバータトレイ50を形成する金属製の板材を塑性変形させることによって形成されている。ビード部58およびビード部59は、その表面がPCU660に向けて突出するように形成されている。ビード部58およびビード部59は、ガイド部54が延びる方向、すなわち、車両前方から後方に向けて線状に延びるように形成されている。より具体的には、ビード部58は、角部53から角部51に向かって線状に延び、ビード部59は、角部52から角部51に向かって線状に延びるように形成されている。
【0060】
ビード部58は、角部51においてエンジンマウント30の頂面30a上に達する位置まで延びている。ボルト103は、頭部104を有する(図7を参照のこと)。頭部104は、頂面30a上に配置されている。ビード部58は、角部51において頭部104に隣り合う位置まで延びて形成されている。
【0061】
ハイブリッド自動車500においては、車両が前面衝突し、PCU660に車両前方から過大な衝撃が加わった場合に、PCU660がインバータトレイ50から容易に離脱する構造が採られている。以下、そのPCU660の離脱構造について説明する。
【0062】
図5を参照して、インバータトレイ50には、ボルト用孔121およびボルト用孔122が形成されている。ボルト用孔121は、角部51の近傍に配置されている。ボルト用孔121は、角部52および角部53とともに三角形の角部をなす位置に配置されている。ボルト用孔122は、角部52に形成されている。インバータトレイ50には、スタッドボルト123が設けられている。スタッドボルト123は、角部53に配置されている。
【0063】
本実施の形態では、ボルト用孔121、ボルト用孔122およびスタッドボルト123が配置された3箇所で、PCU660がインバータトレイ50に固定されており、各箇所にPCU660を離脱させるための構造が設けられている。
【0064】
図8は、図5中の2点鎖線VIIIに示す箇所に設けられたPCUの離脱構造を示す斜視図である。図8を参照して、PCU660は、トレイ側ブラケット61およびPCU側ブラケット62を介して、インバータトレイ50の角部53に固定されている。
【0065】
トレイ側ブラケット61は、インバータトレイ50に固定されている。より具体的には、トレイ側ブラケット61は、角部53に設けられたスタッドボルト123を利用してインバータトレイ50に固定されている。トレイ側ブラケット61は、インバータトレイ50に対して1箇所で固定されている。このため、トレイ側ブラケット61は、過大な外力が加えられた場合に、スタッドボルト123によって固定された位置を支点に回動可能となるように設けられている。
【0066】
PCU側ブラケット62は、PCU660に固定されている。より具体的には、PCU側ブラケット62は、ボルト113およびボルト114によりPCU660に固定されている。PCU側ブラケット62は、ケース体31の前面31aに固定されている。PCU側ブラケット62は、PCU660の底部33に固定されている。
【0067】
トレイ側ブラケット61とPCU側ブラケット62とは、過大な外力を受けた場合に分離可能となるように結合されている。より具体的には、PCU側ブラケット62には、ボルト用孔118が形成されている。ボルト用孔118は、孔の外周の一部範囲をPCU側ブラケット62の周縁に開放した形態により形成されている。言い換えれば、ボルト用孔118は、孔の外周の一部範囲を切り欠いた形態により形成されている。トレイ側ブラケット61とPCU側ブラケット62とは、ボルト用孔118に挿通されたボルト112によって互いに固定されている。
【0068】
図9は、図5中の2点鎖線IXに示す箇所に設けられたPCUの離脱構造を示す斜視図である。図9を参照して、PCU660には、バー71と、バー71に溶接されたブラケット72とが固定されている。PCU660は、バー71およびブラケット72を介して、インバータトレイ50の角部51の近傍に固定されている。
【0069】
バー71は、ケース体31の後面31bに固定され、ブラケット72は、バー71から車両後方に向けて延出するように設けられている。ブラケット72には、ボルト用孔117が形成されている。ボルト用孔117は、孔の車両前方側の範囲がブラケット72の周縁まで開放した形態により形成されている。言い換えれば、ボルト用孔117は、孔の車両前方側の範囲を切り欠いた形態により形成されている。ブラケット72は、ボルト用孔117と、図5中のボルト用孔121とに挿通されたボルト116によって、インバータトレイ50に固定されている。
【0070】
図10は、図5中の2点鎖線Xに示す箇所に設けられたPCUの離脱構造を示す斜視図である。図10を参照して、PCU660には、ブラケット81が固定されている。PCU660は、ブラケット81を介して、インバータトレイ50の角部52に固定されている。
【0071】
ブラケット81は、ケース体31の外側面31cに固定され、外側面31cから車両側方に向けて延出するように設けられている。ブラケット81には、ボルト用孔132が形成されている。ボルト用孔132は、孔の車両前方側に薄肉部82を形成する形態により形成されている。ブラケット81は、ボルト用孔132と、図5中のボルト用孔122とに挿通されたボルト131によって、インバータトレイ50に固定されている。
【0072】
ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こし、PCU660に車両前方から過大な衝撃が加わった場合、PCU660は、インバータトレイ50から容易に離脱する。
【0073】
すなわち、図8中に示す離脱構造においては、ハイブリッド自動車500の前面衝突時、PCU660に対して矢印151に示す方向から外力が加わると、PCU660が車両後方に向けて移動するとともに、トレイ側ブラケット61が矢印152に示す方向に回転する。これにより、ボルト112がボルト用孔118の切り欠き部分を通じてPCU側ブラケット62と分離する。結果、角部53において、PCU660は、トレイ側ブラケット61をインバータトレイ50に残し、PCU側ブラケット62を引き連れたまま、インバータトレイ50から離脱する。
【0074】
図9中に示す離脱構造においては、ハイブリッド自動車500の前面衝突時、PCU660に対して矢印153に示す方向から外力が加わると、PCU660が車両後方に向けて移動するとともに、ボルト116がボルト用孔117の切り欠き部分を通じてブラケット72と分離する。結果、角部51の近傍において、PCU660がインバータトレイ50から離脱する。
【0075】
図10中に示す離脱構造においては、ハイブリッド自動車500の前面衝突時、PCU660に対して矢印154に示す方向から外力が加わると、PCU660が車両後方に向けて移動するとともに、ボルト131がブラケット81の薄肉部82を破断しながらブラケット81と分離する。結果、角部52において、PCU660がインバータトレイ50から離脱する。
【0076】
PCU660は、インバータトレイ50からの離脱後、ガイド部54によってエンジンマウント30からずれる方向に移動する。結果、PCU660とエンジンマウント30との衝突を回避し、PCU660を適切に保護することができる。
【0077】
なお、PCU660の離脱構造は、以上に説明した構造に限定されず、一定以上の外力がPCU660に加わった場合にPCU660をインバータトレイ50から容易に離脱可能とする構造が適宜、採用される。
【0078】
図11は、図3中のサイドメンバを車両前後方向に延在する平面により切断した場合の形状を示す断面図である。図11を参照して、サイドメンバ20は、車両前後方向に分割された2つのメンバ部材26,28を結合することによって形成されている。
【0079】
より具体的には、メンバ部材26およびメンバ部材28は、車両前後方向に延びる筒形状を有する。メンバ部材26およびメンバ部材28の端部には、それぞれ、鍔状に広がるフランジ部27およびフランジ部29が形成されている。メンバ部材26およびメンバ部材28は、フランジ部27とフランジ部29とが突き合され、溶接により接合されることによって、互いに結合されている。
【0080】
メンバ部材26およびメンバ部材28の結合部200(フランジ部27とフランジ部29との接合面)においては、他の位置と比べてサイドメンバ20の剛性が小さくなり、車両前方から加わる衝撃に対して折れ変形を起こし易くなる。このため、本実施の形態においては、メンバ部材26およびメンバ部材28の結合部200により、ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こした場合のサイドメンバ20の折れポイントが構成されている。
【0081】
図3から図5を参照して、本実施の形態における車両の衝撃吸収構造は、ウォータポンプ670を支持するためのウォータポンプブラケット90を有する。ウォータポンプブラケット90は、車両前後方向において図11中の結合部200と重なるようにサイドメンバ20に固定されている。
【0082】
ウォータポンプブラケット90は、複数のボルトを用いて、サイドメンバ20およびインバータトレイ50に対して締結されている。ウォータポンプブラケット90は、インバータトレイ50の下方に配置されている。ウォータポンプブラケット90は、インバータトレイ50を介して、PCU660の重量を受ける。ウォータポンプブラケット90は、エンジンマウント30の車両前方側に配置されている。
【0083】
ウォータポンプ670は、図1中のモータジェネレータ520や、PCU660内に設けられたインバータ770を冷却するための冷却水を強制循環するポンプとして使用されている。ウォータポンプ670は、ウォータポンプブラケット90により支持された状態で、PCU660よりも下方に配置されている。ウォータポンプ670は、ウォータポンプブラケット90により支持された状態で、PCU660の前面31aから車両前方側に突出する位置に配置されている。すなわち、車両前後方向において、ウォータポンプ670は、PCU660よりも車両前側に配置されている。
【0084】
図12は、図3中のウォータポンプブラケットを示す斜視図である。図13は、図3中のサイドメンバに固定されたインバータトレイおよびウォータポンプブラケットを模式的に示す平面図である。図14は、図3中のサイドメンバに固定されたインバータトレイおよびウォータポンプブラケットを模式的に示す側面図である。
【0085】
図12から図14を参照して、ウォータポンプブラケット90は、第1ブラケット部分91と、第1ブラケット部分91に接合された第2ブラケット部分94とから構成されている。
【0086】
第1ブラケット部分91は、頂部92および側部93を有する。側部93は、頂部92の周縁から折れ曲がって形成されている。頂部92は、サイドメンバ20の頂面20a上に配置され、側部93は、サイドメンバ20の内側面20b上に配置されている。頂部92および側部93は、それぞれ、頂面20aおよび内側面20bに対して締結されている。
【0087】
第2ブラケット部分94は、基部97および支持部98を有する。基部97は、第1ブラケット部分91に接合されている。基部97は、段差を有しながら車両前後方向に延びて形成されている。基部97は、インバータトレイ50の底部分に締結されている。支持部98は、基部97から車両前方に連なって形成されている。支持部98には、ウォータポンプ670を嵌合支持するための嵌合孔211が形成されている。
【0088】
ウォータポンプブラケット90は、基部97と支持部98との間で角度α(図14を参照のこと)をなすように折れ曲がって形成されている。ウォータポンプブラケット90は、基部97と支持部98との間でPCU660とは反対側に折れ曲がった形状、すなわち、基部97から支持部98に向けて鉛直下斜め方向に折れ曲がった形状を有する。
【0089】
第2ブラケット部分94には、折り返し部95が形成されている。折り返し部95は、基部97および支持部98の周縁が折り返されることによって形成されている。折り返し部95は、サイドメンバ20の内側面20b上に配置され、複数箇所で内側面20bに対して締結されている。第2ブラケット部分94には、その剛性を向上させることを目的として、フランジ部96が形成されている。フランジ部96は、折り返し部95が形成された周縁とは対向する、基部97および支持部98の周縁が折り返されることによって形成されている。
【0090】
本実施の形態における車両の衝撃吸収構造においては、ウォータポンプブラケット90に、切り欠き212および切り欠き214が形成されている。切り欠き212および切り欠き214は、ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こした場合に、ウォータポンプブラケット90の折れ変形を促す形態に形成されている。切り欠き212および切り欠き214は、車両前後方向において、サイドメンバ20の結合部200と重なる位置に形成されている。
【0091】
より具体的には、切り欠き212は、第1ブラケット部分94の周縁を切り欠いた形態に形成されている。切り欠き212は、側部93との境界に位置する頂部92の周縁に形成されている。切り欠き212は、サイドメンバ20の表面上に形成されている。切り欠き214は、第2ブラケット部分94の周縁を切り欠いた形態に形成されている。切り欠き214は、フランジ部96の周縁に形成されている。切り欠き214は、サイドメンバ20の表面から離れた位置に形成されている。切り欠き212および切り欠き214は、車両前後方向において互いに重なる位置に形成されている。
【0092】
ウォータポンプブラケット90には、ボルト用孔213が形成されている。ボルト用孔213は、折り返し部95に形成されており、ウォータポンプブラケット90をサイドメンバ20に締結するためのボルト107が挿入されている。ボルト用孔213は、サイドメンバ20の結合部200よりも車両前方側に形成されている。ボルト用孔213は、車両側方が貫通方向となるように形成されている。
【0093】
ボルト用孔213は、孔の外周の一部範囲をウォータポンプブラケット90の周縁に開放した形態により形成されている。言い換えれば、ボルト用孔213は、孔の外周の一部範囲を切り欠いた形態により形成されている。
【0094】
さらに、本実施の形態における車両の衝撃吸収構造においては、インバータトレイ50に形成されたフランジ部56が、車両前後方向においてサイドメンバ20の結合部200と重なる位置で切り欠かれた形状を有する(図13中の部分55)。
【0095】
図15は、ハイブリッド自動車が前面衝突を起こした場合のサイドメンバの変形を示す平面図である。図15を参照して、ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こし、矢印206に示すように車両前方からエンジンルーム710内に過大な外力が加わった場合を想定する。この場合、サイドメンバ20が結合部200において車両側方に向けて折れ変形を起こすことにより(2点鎖線にて示すサイドメンバ20H)、前面衝突時の衝撃を吸収し、車室内への部品の侵入を防ぐ。この際、サイドメンバ20に固定されたウォータポンプブラケット90が、サイドメンバ20の剛性を高めるように作用し、サイドメンバ20の上記折れ変形を阻害するおそれがある。
【0096】
これに対して、本実施の形態における車両の衝撃吸収構造においては、ウォータポンプブラケット90の、車両前後方向において結合部200と重なる位置に、切り欠き212および切り欠き214が形成されている。このような構成により、切り欠き212および切り欠き214が形成された位置でウォータポンプブラケット90の剛性を意図的に低減させ、サイドメンバ20の折れ変形を容易とできる。
【0097】
図14を参照して、さらに、ウォータポンプブラケット90には、切り欠き形状を有するボルト用孔213が形成されている。このような構成により、サイドメンバ20が屈曲し始めると、ボルト107がボルト用孔213の切り欠き部分を通じてウォータポンプブラケット90から離脱し、ボルト107によるウォータポンプブラケット90とサイドメンバ20との締結が解除される。結果、サイドメンバ20に対するウォータポンプブラケット90の拘束が解かれ、サイドメンバ20の折れ変形をさらに容易とできる。本実施の形態では、サイドメンバ20の変形が車両前方から後方へと進行することを考慮して、結合部200よりも車両前方側に配置されたボルト用孔213を切り欠き形状としている。
【0098】
図15を参照して、また、インバータトレイ50には、車両前後方向においてサイドメンバ20の結合部200と重なる位置で切り欠かれた形状のフランジ部56が形成されている。このような構成により、インバータトレイ50が結合部200におけるサイドメンバ20の折れ変形の妨げとなることを、効果的に抑制できる。
【0099】
図16は、ハイブリッド自動車が前面衝突を起こした場合のウォータポンプブラケットの変形の過程を示す側面図である。図16を参照して、本実施の形態における車両の衝撃吸収構造においては、ウォータポンプブラケット90が、基部97と支持部98との間でPCU660とは反対側に折れ曲がった形状を有する。
【0100】
このような構成により、ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こし、矢印206に示すように車両前方からエンジンルーム710内に過大な外力が加わった場合に、支持部98がPCU660から遠ざかる方向に移動するように、ウォータポンプブラケット90を基部97と支持部98との間で折れ変形させることができる。これにより、ウォータポンプ670とPCU660との衝突を回避することができる。
【0101】
以上に説明した、この発明の実施の形態における車両の衝撃吸収構造の構成についてまとめて説明すると、車両の衝撃吸収構造は、エンジンルーム710に配置され、車両前後方向に延び、車両前方からエンジンルーム710に外力が加わった場合に折れポイントとなる結合部200を有するサイドメンバ20と、車両前後方向において結合部200と重なるようにサイドメンバ20に固定され、ウォータポンプ670を支持するためのブラケットとしてのウォータポンプブラケット90とを有する。ウォータポンプブラケット90には、切り欠き212および切り欠き214と、切り欠き形状を有するボルト用孔213とが形成されている。
【0102】
このように構成された、この発明の実施の形態における車両の衝撃吸収構造によれば、ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こし、エンジンルーム710内に車両前方から衝撃が加わった場合に、サイドメンバ20を折れポイントである結合部200で意図通り変形させることができる。これにより、エンジンルーム710に加わった衝撃エネルギを効率よく吸収し、車室内への部品の侵入を防ぐことができる。
【0103】
また、本実施の形態では、ウォータポンプブラケット90の板厚を小さくする場合や、フランジ部96自身を廃止する場合と比較して、切り欠き212,214およびボルト用孔213に形成された切り欠き部分が、ウォータポンプブラケット90全体を低剛性化させるということがない。このため、ウォータポンプブラケット90の、ウォータポンプ670で発生する振動の増幅を抑える機能を大幅に低減させず、NV(Noise and vibration)性能の維持を図ることができる。また、ウォータポンプ670や、たとえば20kg以上の重量を有するPCU660を支持するブラケットとしての剛性を、十分に確保することができる。さらに、ウォータポンプブラケット90やインバータトレイ50の軽量化を図るという効果も得られる。
【0104】
なお、本実施の形態では、エンジンとバッテリとを備えるハイブリッド自動車に本発明を適用したが、これに限定されず、燃料電池とバッテリとを備える燃料電池ハイブリッド自動車(FCHV:Fuel Cell Hybrid Vehicle)、または電気自動車(EV:Electric Vehicle)に本発明を適用することもできる。本実施の形態におけるハイブリッド自動車では、燃費最適動作点で内燃機関を駆動するのに対して、燃料電池ハイブリッド自動車では、発電効率最適動作点で燃料電池を駆動する。また、バッテリの使用に関しては、両方のハイブリッド自動車で基本的に変わらない。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
20 サイドメンバ、26,28 メンバ部材、30 エンジンマウント、50 インバータトレイ、56,57 フランジ部、90 ウォータポンプブラケット、107 ボルト、200 結合部、213 ボルト用孔、500 ハイブリッド自動車、520 モータジェネレータ、710 エンジンルーム。
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、車両の衝撃吸収構造に関し、より特定的には、サイドメンバに、車両衝突時に折れポイントとなる易変形部が設けられた車両の衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の衝撃吸収構造に関連して、たとえば、特開2001−304339号公報には、ハイブリッド車等のウォータポンプ回転に伴う車室内への伝達音を低減し、静粛性を高めて快適な居住性を実現することを目的とした車両ポンプ用防振装置が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示されたハイブリッド車においては、ウォータポンプを支持するためのブラケットが、車両のサイドメンバ上に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−304339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両前方からエンジンルームに過大な外力が加わった場合に、エンジンルーム内のサイドメンバを折れ変形させることによってその衝撃を吸収することが可能である。しかしながら、上述の特許文献1に開示されたハイブリッド車においては、ウォータポンプを支持するためのブラケットがサイドメンバに固定されているため、このブラケットがサイドメンバの変形を阻害する場合がある。この場合、サイドメンバの変形による衝撃吸収が十分に達成されないおそれがある。
【0005】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、サイドメンバの変形による衝撃吸収が十分に達成される車両の衝撃吸収構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った車両の衝撃吸収構造は、エンジンルームに配置され、車両前後方向に延びるサイドメンバと、ウォータポンプを支持するためのブラケットとを備える。サイドメンバは、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に折れポイントとなる易変形部を有する。ブラケットは、車両前後方向において易変形部と重なるようにサイドメンバに固定されている。ブラケットには、切り欠きが形成されている。
【0007】
このように構成された車両の衝撃吸収構造によれば、ブラケットに切り欠きを形成することにより、サイドメンバに固定されるブラケットの剛性を局所的に低減させる。これにより、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、易変形部においてサイドメンバを容易に折れ変形させることができる。結果、サイドメンバの変形による衝撃吸収を十分に達成することができる。
【0008】
また好ましくは、切り欠きは、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、ブラケットの変形を促す形態に形成されている。このように構成された車両の衝撃吸収構造によれば、ブラケットによってサイドメンバの変形が阻害されることを抑制できる。
【0009】
また好ましくは、易変形部は、車両前後方向におけるサイドメンバの一部範囲に形成されている。切り欠きは、車両前後方向において、易変形部と重なる位置に形成されている。このように構成された車両の衝撃吸収構造によれば、ブラケットの剛性を車両前後方向において易変形部と重なる位置で低減させる。これにより、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、易変形部においてサイドメンバを容易に折れ変形させることができる。
【0010】
また好ましくは、ブラケットには、ブラケットをサイドメンバに締結するためのボルトが挿入されるボルト用孔が形成される。切り欠きは、ボルト用孔の周縁の一部範囲が切り欠かれた形態で形成されている。このように構成された車両の衝撃吸収構造によれば、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、ボルト用孔の切り欠き部分を通じてボルトをブラケットから分離させる。これにより、ブラケットとサイドメンバとの締結が解除されるため、ブラケットによってサイドメンバの変形が阻害されることを抑制できる。
【0011】
また好ましくは、車両の衝撃吸収構造は、サイドメンバに固定され、電力の制御を行なうパワー制御ユニットを支持するためのトレイをさらに備える。易変形部は、車両前後方向におけるサイドメンバの一部範囲に形成されている。トレイは、その周縁が折り曲げられることによって形成され、車両前後方向において易変形部と重なる位置で切り欠かれたフランジ部を有する。
【0012】
このように構成された車両の衝撃吸収構造によれば、トレイの剛性を車両前後方向において易変形部と重なる位置で低減させる。これにより、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、易変形部においてサイドメンバを容易に折れ変形させることができる。
【0013】
また好ましくは、車両の衝撃吸収構造は、エンジンルーム内で支持され、電力の制御を行なうパワー制御ユニットをさらに備える。ブラケットは、車両前後方向に延びる基部と、基部から車両前方に連なって形成され、ウォータポンプを支持するための支持部とを有する。ブラケットは、基部と支持部との間で、パワー制御ユニットとは反対側に折れ曲がって形成されている。
【0014】
このように構成された車両の衝撃吸収構造によれば、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、基部と支持部との間でブラケットをパワー制御ユニットとは反対側に折れ変形させることができる。これにより、ウォータポンプとパワー制御ユニットとの衝突を回避することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上に説明したように、この発明に従えば、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、サイドメンバの変形による衝撃吸収が十分に達成される車両の衝撃吸収構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ハイブリッド自動車の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1中のPCUの主要部の構成を示す回路図である。
【図3】この発明の実施の形態における車両の衝撃吸収構造を示す斜視図である。
【図4】図3中の矢印IVに示す方向から見たエンジンルーム内を示す側面図である。
【図5】図3中のサイドメンバに固定されたインバータトレイおよびウォータポンプブラケットを示す斜視図である。
【図6】図5中のVI−VI線上に沿ったインバータトレイを示す断面図である。
【図7】図5中のVII−VII線上に沿ったインバータトレイを示す断面図である。
【図8】図5中の2点鎖線VIIIに示す箇所に設けられたPCUの離脱構造を示す斜視図である。
【図9】図5中の2点鎖線IXに示す箇所に設けられたPCUの離脱構造を示す斜視図である。
【図10】図5中の2点鎖線Xに示す箇所に設けられたPCUの離脱構造を示す斜視図である。
【図11】図3中のサイドメンバを車両前後方向に延在する平面により切断した場合の形状を示す断面図である。
【図12】図3中のウォータポンプブラケットを示す斜視図である。
【図13】図3中のサイドメンバに固定されたインバータトレイおよびウォータポンプブラケットを模式的に示す平面図である。
【図14】図3中のサイドメンバに固定されたインバータトレイおよびウォータポンプブラケットを模式的に示す側面図である。
【図15】ハイブリッド自動車が前面衝突を起こした場合のサイドメンバの変形を示す平面図である。
【図16】ハイブリッド自動車が前面衝突を起こした場合のウォータポンプブラケットの変形の過程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0018】
図1は、ハイブリッド自動車の概略構成を示すブロック図である。図1を参照して、ハイブリッド自動車500は、その駆動系をなす主要な構造として、エンジン510と、モータジェネレータ520と、動力分割機構620と、ディファレンシャル機構610と、ドライブシャフト630と、前輪である駆動輪640L,640Rと、パワー制御ユニット(PCU:Power Control Unit)660と、バッテリ560とを有する。
【0019】
エンジン510およびモータジェネレータ520によって、ハイブリッド自動車500の駆動源530が構成されている。
【0020】
ハイブリッド自動車500の車両前側の位置には、エンジンルーム710が形成されている。エンジン510、モータジェネレータ520およびPCU660は、エンジンルーム710に収容されている。
【0021】
PCU660は、フロントバンパ560に対して車両後方に隣り合って配置されている。PCU660は、車両幅方向における車両中心に対していずれか一方に片寄った位置に配置されている。PCU660とフロントバンパ560との間には、たとえば、ラジエータ等の、PCU660と比較して低剛性の構造物が配置されている。
【0022】
モータジェネレータ520とPCU660との間は、ケーブル810により電気的に接続されている。PCU660とバッテリ560との間は、ケーブル820により電気的に接続されている。
【0023】
エンジン510およびモータジェネレータ520は、動力分割機構620を介してディファレンシャル機構610に連結されている。なお、図中では、エンジン510、モータジェネレータ520、動力分割機構620およびディファレンシャル機構610が、別々に示されているが、これらの装置は一体の構造物として設けられている。ディファレンシャル機構610は、ドライブシャフト630を介して駆動輪640L,640Rに連結されている。
【0024】
モータジェネレータ520は、3相交流同期形の電動発電機であって、PCU660から供給される交流電力によって駆動力を発生する。モータジェネレータ520は、ハイブリッド自動車500の減速時などにおいては発電機としても使用され、その発電作用(回生発電)により交流電力を発電し、発電した交流電力をPCU660に出力する。
【0025】
PCU660は、バッテリ560から供給される直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ520を駆動制御する。PCU660は、モータジェネレータ520によって発電された交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ560を充電する。なお、PCU660の構造については、後で詳細に説明する。
【0026】
動力分割機構620は、たとえばプラネタリギヤ(図示せず)を含んで構成されている。
【0027】
エンジン510および/またはモータジェネレータ520から出力された動力は、動力分割機構620からディファレンシャル機構610を介してドライブシャフト630に伝達される。ドライブシャフト630に伝達された駆動力は、駆動輪640L,640Rに回転力として伝達されて、ハイブリッド自動車500を走行させる。この場合、モータジェネレータ520は、電動機として作動する。
【0028】
一方、ハイブリッド自動車500の減速時などにおいては、駆動輪640L,640Rもしくはエンジン510によってモータジェネレータ520が駆動される。この場合、モータジェネレータ520が発電機として作動する。モータジェネレータ520によって発電された電力は、PCU660を介してバッテリ560に蓄えられる。
【0029】
図2は、図1中のPCUの主要部の構成を示す回路図である。図2を参照して、PCU660は、コンバータ760と、インバータ770と、制御装置780と、コンデンサC1,C2と、電源ラインPL1〜PL3と、出力ライン740U,740V,740Wとを有する。コンバータ760は、バッテリ560とインバータ770との間に接続され、インバータ770は、出力ライン740U,740V,740Wを介してモータジェネレータ520と接続されている。
【0030】
バッテリ560は、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の2次電池である。バッテリ560は、発生した直流電圧をコンバータ760に供給し、また、コンバータ760から受ける直流電圧によって充電される。
【0031】
コンバータ760は、パワートランジスタQ1,Q2と、ダイオードD1,D2と、リアクトルLとからなる。パワートランジスタQ1,Q2は、電源ラインPL2,PL3間に直列に接続され、制御装置780からの制御信号をベースに受ける。ダイオードD1,D2は、それぞれパワートランジスタQ1,Q2のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ1,Q2のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続されている。リアクトルLの一端は、バッテリ560の正極と接続される電源ラインPL1に接続され、リアクトルLの他端は、パワートランジスタQ1,Q2の接続点に接続されている。
【0032】
コンバータ760は、リアクトルLを用いてバッテリ560から受ける直流電圧を昇圧し、その昇圧した昇圧電圧を電源ラインPL2に供給する。コンバータ760は、インバータ770から受ける直流電圧を降圧してバッテリ560を充電する。
【0033】
インバータ770は、U相アーム750U、V相アーム750VおよびW相アーム750Wからなる。各相アームは、電源ラインPL2,PL3間に並列に接続される。U相アーム750Uは、直列に接続されたパワートランジスタQ3,Q4を含み、V相アーム750Vは、直列に接続されたパワートランジスタQ5,Q6を含み、W相アーム750Wは、直列に接続されたパワートランジスタQ7,Q8を含む。ダイオードD3〜D8は、それぞれパワートランジスタQ3〜Q8のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ3〜Q8のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続される。各相アームにおける各パワートランジスタの接続点は、出力ライン740U,740V,740Wを介してモータジェネレータ520の各相コイルの反中性点側にそれぞれ接続されている。
【0034】
インバータ770は、制御装置780からの制御信号に基づいて、電源ラインPL2から受ける直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ520へ出力する。インバータ770は、モータジェネレータ520によって発電された交流電圧を直流電圧に整流して電源ラインPL2に供給する。
【0035】
コンデンサC1は、電源ラインPL1,PL3間に接続され、電源ラインPL1の電圧レベルを平滑化する。コンデンサC2は、電源ラインPL2,PL3間に接続され、電源ラインPL2の電圧レベルを平滑化する。
【0036】
制御装置780は、モータトルク指令値、モータジェネレータ520の各相電流値、およびインバータ770の入力電圧に基づいてモータジェネレータ520の各相コイル電圧を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ3〜Q8をオン/オフするPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成してインバータ770へ出力する。
【0037】
制御装置780は、上述したモータトルク指令値およびモータ回転数に基づいてインバータ770の入力電圧を最適にするためのパワートランジスタQ1,Q2のデューティ比を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ1,Q2をオン/オフするPWM信号を生成してコンバータ760へ出力する。
【0038】
制御装置780は、モータジェネレータ520によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ560を充電するため、コンバータ760およびインバータ770におけるパワートランジスタQ1〜Q8のスイッチング動作を制御する。
【0039】
PCU660においては、コンバータ760は、制御装置780からの制御信号に基づいて、バッテリ560から受ける直流電圧を昇圧して電源ラインPL2に供給する。そして、インバータ770は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ520へ出力する。
【0040】
インバータ770は、モータジェネレータ520の回生動作によって発電された交流電圧を直流電圧に変換して電源ラインPL2へ出力する。コンバータ760は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を降圧してバッテリ560を充電する。
【0041】
インバータ770に供給される電圧は、たとえば、500V以上の高電圧であり、車両衝突時においてもインバータ770を保護する必要がある。
【0042】
続いて、図1中のハイブリッド自動車500に適用される車両の衝撃吸収構造の構成について詳細に説明する。
【0043】
図3は、この発明の実施の形態における車両の衝撃吸収構造を示す斜視図である。図中には、図1中に示すエンジンルーム710の内部(エンジンルーム710内の車両左側部分)が示されている。図4は、図3中の矢印IVに示す方向から見たエンジンルーム内を示す側面図である。図5は、図3中のサイドメンバに固定されたインバータトレイおよびウォータポンプブラケットを示す斜視図である。
【0044】
図3から図5を参照して、エンジンルーム710の内部には、ハイブリッド自動車500のフレーム(車枠)を構成するサイドメンバ20が設けられている。サイドメンバ20は、ハイブリッド自動車500の外板として設けられたサイドパネルに隣り合って設けられている。サイドメンバ20は、車両前後方向に延びている。サイドメンバ20は、金属製の高剛性体であり、たとえば、筒状の高張力鋼板(ハイテン)から形成されている。ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こした場合、図1中のフロントバンパ560から入力された衝撃エネルギは、サイドメンバ20が変形することによって効率よく吸収される。
【0045】
サイドメンバ20は、頂面20aおよび内側面20bを有する。頂面20aは、鉛直上方向に面する。内側面20bは、車両の内側、言い換えれば、ハイブリッド自動車500の外板を構成するサイドパネルと向い合う側とは反対側に面する。
【0046】
エンジンマウント30には、図1中のモータジェネレータ520が吊り下げられた状態で支持されている。エンジンマウント30は、一体に設けられた図1中のエンジン510およびモータジェネレータ520の重力を受けている。エンジンマウント30は、金属製の高剛性体である。エンジンマウント30は、頂面30aを有する。頂面30aは、鉛直上方向に面する。
【0047】
エンジンマウント30は、サイドメンバ20に連結されている。エンジンマウント30は、サイドメンバ20から車両幅方向に延出する。エンジンマウント30は、サイドメンバ20から、サイドメンバ20が延びる方向に略直交する方向に延出する。エンジンマウント30は、サイドメンバ20の内側面20bに締結されている。
【0048】
PCU660は、その外観をなすケース体31を有する。ケース体31は、略直方体形状を有する。ケース体31は、金属から形成されており、たとえば、アルミニウムから形成されている。ケース体31は、前面31a、後面31bおよび外側面31cを有する。前面31aおよび後面31bは、それぞれ、車両前方側および車両後方側に面する。外側面31cは、車両の外側、言い換えれば、ハイブリッド自動車500の外板を構成するサイドパネルと向い合う側に面する。
【0049】
PCU660は、頂部32および底部33を有する。底部33は、後で詳細に説明するインバータトレイ50に固定されている。歩行者保護の観点から、PCU660とエンジンルーム710を覆うボンネットとの間の隙間を十分に確保すべく、PCU660は、その頂部32が車両前方に傾く姿勢に支持されている。
【0050】
本実施の形態における車両の衝撃吸収構造は、トレイとしてのインバータトレイ50を有する。PCU660は、インバータトレイ50を介してサイドメンバ20およびエンジンマウント30に支持されている。
【0051】
インバータトレイ50上には、PCU660が載置されている。インバータトレイ50およびPCU660は、エンジンマウント30と隣り合って配置されている。インバータトレイ50およびPCU660は、エンジンマウント30の車両前方側に配置されている。PCU660は、エンジンマウント30と高さ方向において重なる位置に配置されている。
【0052】
インバータトレイ50は、金属製の板材により形成されている。インバータトレイ50は、PCU660の重量を受ける受け皿形状を有する。インバータトレイ50は、エンジンルーム710内を平面的に見て、角部51、角部52および角部53を有する略三角形形状を有する。
【0053】
インバータトレイ50は、角部52および角部53から角部51に向けて、車両前方側から後方側に延在するように形成されている。インバータトレイ50は、角部52および角部53から角部51に向けて、鉛直上方向に傾斜しながら延在するように形成されている。すなわち、インバータトレイ50は、角部52および角部53が相対的に低い位置に位置決めされ、角部51が相対的に高い位置に位置決めされるように設けられている。角部51は、エンジンマウント30の頂面30a上に載置され、角部52は、サイドメンバ20の頂面20a上に載置されている。角部53は、エンジンルーム710内の空間に自由端として配置されている。
【0054】
インバータトレイ50は、ガイド部54を有する。ガイド部54は、上記のインバータトレイ50が鉛直上方向に傾斜しながら角部51に向けて延在する部分により構成されている。
【0055】
インバータトレイ50は、サイドメンバ20に対して片持ちの状態で固定されている。より具体的には、平面的に見て略三角形形状を有するインバータトレイ50のうちの一角をなす角部52が、ボルト101およびボルト102によってサイドメンバ20の頂面20aに締結されている。
【0056】
インバータトレイ50のガイド部54は、エンジンマウント30に固定されている。より具体的には、インバータトレイ50の角部51が、ボルト103によってエンジンマウント30の頂面30aに締結されている。インバータトレイ50がエンジンマウント30に固定された状態で、ガイド部54は、エンジンマウント30に向かって延び、その延びる先で頂面30aに固定されている。
【0057】
図6は、図5中のVI−VI線上に沿ったインバータトレイを示す断面図である。図7は、図5中のVII−VII線上に沿ったインバータトレイを示す断面図である。
【0058】
図5から図7を参照して、インバータトレイ50には、その剛性を向上させることを目的として、フランジ部56およびフランジ部57が形成されている。フランジ部56は、角部51と角部53とを結ぶインバータトレイ50の周縁が折り返されることにより形成されている。フランジ部57は、角部51と角部52とを結ぶインバータトレイ50の周縁が折り返されることにより形成されている。
【0059】
インバータトレイ50には、さらに同じ目的で、ビード部58およびビード部59が形成されている。ビード部58およびビード部59は、インバータトレイ50を形成する金属製の板材を塑性変形させることによって形成されている。ビード部58およびビード部59は、その表面がPCU660に向けて突出するように形成されている。ビード部58およびビード部59は、ガイド部54が延びる方向、すなわち、車両前方から後方に向けて線状に延びるように形成されている。より具体的には、ビード部58は、角部53から角部51に向かって線状に延び、ビード部59は、角部52から角部51に向かって線状に延びるように形成されている。
【0060】
ビード部58は、角部51においてエンジンマウント30の頂面30a上に達する位置まで延びている。ボルト103は、頭部104を有する(図7を参照のこと)。頭部104は、頂面30a上に配置されている。ビード部58は、角部51において頭部104に隣り合う位置まで延びて形成されている。
【0061】
ハイブリッド自動車500においては、車両が前面衝突し、PCU660に車両前方から過大な衝撃が加わった場合に、PCU660がインバータトレイ50から容易に離脱する構造が採られている。以下、そのPCU660の離脱構造について説明する。
【0062】
図5を参照して、インバータトレイ50には、ボルト用孔121およびボルト用孔122が形成されている。ボルト用孔121は、角部51の近傍に配置されている。ボルト用孔121は、角部52および角部53とともに三角形の角部をなす位置に配置されている。ボルト用孔122は、角部52に形成されている。インバータトレイ50には、スタッドボルト123が設けられている。スタッドボルト123は、角部53に配置されている。
【0063】
本実施の形態では、ボルト用孔121、ボルト用孔122およびスタッドボルト123が配置された3箇所で、PCU660がインバータトレイ50に固定されており、各箇所にPCU660を離脱させるための構造が設けられている。
【0064】
図8は、図5中の2点鎖線VIIIに示す箇所に設けられたPCUの離脱構造を示す斜視図である。図8を参照して、PCU660は、トレイ側ブラケット61およびPCU側ブラケット62を介して、インバータトレイ50の角部53に固定されている。
【0065】
トレイ側ブラケット61は、インバータトレイ50に固定されている。より具体的には、トレイ側ブラケット61は、角部53に設けられたスタッドボルト123を利用してインバータトレイ50に固定されている。トレイ側ブラケット61は、インバータトレイ50に対して1箇所で固定されている。このため、トレイ側ブラケット61は、過大な外力が加えられた場合に、スタッドボルト123によって固定された位置を支点に回動可能となるように設けられている。
【0066】
PCU側ブラケット62は、PCU660に固定されている。より具体的には、PCU側ブラケット62は、ボルト113およびボルト114によりPCU660に固定されている。PCU側ブラケット62は、ケース体31の前面31aに固定されている。PCU側ブラケット62は、PCU660の底部33に固定されている。
【0067】
トレイ側ブラケット61とPCU側ブラケット62とは、過大な外力を受けた場合に分離可能となるように結合されている。より具体的には、PCU側ブラケット62には、ボルト用孔118が形成されている。ボルト用孔118は、孔の外周の一部範囲をPCU側ブラケット62の周縁に開放した形態により形成されている。言い換えれば、ボルト用孔118は、孔の外周の一部範囲を切り欠いた形態により形成されている。トレイ側ブラケット61とPCU側ブラケット62とは、ボルト用孔118に挿通されたボルト112によって互いに固定されている。
【0068】
図9は、図5中の2点鎖線IXに示す箇所に設けられたPCUの離脱構造を示す斜視図である。図9を参照して、PCU660には、バー71と、バー71に溶接されたブラケット72とが固定されている。PCU660は、バー71およびブラケット72を介して、インバータトレイ50の角部51の近傍に固定されている。
【0069】
バー71は、ケース体31の後面31bに固定され、ブラケット72は、バー71から車両後方に向けて延出するように設けられている。ブラケット72には、ボルト用孔117が形成されている。ボルト用孔117は、孔の車両前方側の範囲がブラケット72の周縁まで開放した形態により形成されている。言い換えれば、ボルト用孔117は、孔の車両前方側の範囲を切り欠いた形態により形成されている。ブラケット72は、ボルト用孔117と、図5中のボルト用孔121とに挿通されたボルト116によって、インバータトレイ50に固定されている。
【0070】
図10は、図5中の2点鎖線Xに示す箇所に設けられたPCUの離脱構造を示す斜視図である。図10を参照して、PCU660には、ブラケット81が固定されている。PCU660は、ブラケット81を介して、インバータトレイ50の角部52に固定されている。
【0071】
ブラケット81は、ケース体31の外側面31cに固定され、外側面31cから車両側方に向けて延出するように設けられている。ブラケット81には、ボルト用孔132が形成されている。ボルト用孔132は、孔の車両前方側に薄肉部82を形成する形態により形成されている。ブラケット81は、ボルト用孔132と、図5中のボルト用孔122とに挿通されたボルト131によって、インバータトレイ50に固定されている。
【0072】
ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こし、PCU660に車両前方から過大な衝撃が加わった場合、PCU660は、インバータトレイ50から容易に離脱する。
【0073】
すなわち、図8中に示す離脱構造においては、ハイブリッド自動車500の前面衝突時、PCU660に対して矢印151に示す方向から外力が加わると、PCU660が車両後方に向けて移動するとともに、トレイ側ブラケット61が矢印152に示す方向に回転する。これにより、ボルト112がボルト用孔118の切り欠き部分を通じてPCU側ブラケット62と分離する。結果、角部53において、PCU660は、トレイ側ブラケット61をインバータトレイ50に残し、PCU側ブラケット62を引き連れたまま、インバータトレイ50から離脱する。
【0074】
図9中に示す離脱構造においては、ハイブリッド自動車500の前面衝突時、PCU660に対して矢印153に示す方向から外力が加わると、PCU660が車両後方に向けて移動するとともに、ボルト116がボルト用孔117の切り欠き部分を通じてブラケット72と分離する。結果、角部51の近傍において、PCU660がインバータトレイ50から離脱する。
【0075】
図10中に示す離脱構造においては、ハイブリッド自動車500の前面衝突時、PCU660に対して矢印154に示す方向から外力が加わると、PCU660が車両後方に向けて移動するとともに、ボルト131がブラケット81の薄肉部82を破断しながらブラケット81と分離する。結果、角部52において、PCU660がインバータトレイ50から離脱する。
【0076】
PCU660は、インバータトレイ50からの離脱後、ガイド部54によってエンジンマウント30からずれる方向に移動する。結果、PCU660とエンジンマウント30との衝突を回避し、PCU660を適切に保護することができる。
【0077】
なお、PCU660の離脱構造は、以上に説明した構造に限定されず、一定以上の外力がPCU660に加わった場合にPCU660をインバータトレイ50から容易に離脱可能とする構造が適宜、採用される。
【0078】
図11は、図3中のサイドメンバを車両前後方向に延在する平面により切断した場合の形状を示す断面図である。図11を参照して、サイドメンバ20は、車両前後方向に分割された2つのメンバ部材26,28を結合することによって形成されている。
【0079】
より具体的には、メンバ部材26およびメンバ部材28は、車両前後方向に延びる筒形状を有する。メンバ部材26およびメンバ部材28の端部には、それぞれ、鍔状に広がるフランジ部27およびフランジ部29が形成されている。メンバ部材26およびメンバ部材28は、フランジ部27とフランジ部29とが突き合され、溶接により接合されることによって、互いに結合されている。
【0080】
メンバ部材26およびメンバ部材28の結合部200(フランジ部27とフランジ部29との接合面)においては、他の位置と比べてサイドメンバ20の剛性が小さくなり、車両前方から加わる衝撃に対して折れ変形を起こし易くなる。このため、本実施の形態においては、メンバ部材26およびメンバ部材28の結合部200により、ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こした場合のサイドメンバ20の折れポイントが構成されている。
【0081】
図3から図5を参照して、本実施の形態における車両の衝撃吸収構造は、ウォータポンプ670を支持するためのウォータポンプブラケット90を有する。ウォータポンプブラケット90は、車両前後方向において図11中の結合部200と重なるようにサイドメンバ20に固定されている。
【0082】
ウォータポンプブラケット90は、複数のボルトを用いて、サイドメンバ20およびインバータトレイ50に対して締結されている。ウォータポンプブラケット90は、インバータトレイ50の下方に配置されている。ウォータポンプブラケット90は、インバータトレイ50を介して、PCU660の重量を受ける。ウォータポンプブラケット90は、エンジンマウント30の車両前方側に配置されている。
【0083】
ウォータポンプ670は、図1中のモータジェネレータ520や、PCU660内に設けられたインバータ770を冷却するための冷却水を強制循環するポンプとして使用されている。ウォータポンプ670は、ウォータポンプブラケット90により支持された状態で、PCU660よりも下方に配置されている。ウォータポンプ670は、ウォータポンプブラケット90により支持された状態で、PCU660の前面31aから車両前方側に突出する位置に配置されている。すなわち、車両前後方向において、ウォータポンプ670は、PCU660よりも車両前側に配置されている。
【0084】
図12は、図3中のウォータポンプブラケットを示す斜視図である。図13は、図3中のサイドメンバに固定されたインバータトレイおよびウォータポンプブラケットを模式的に示す平面図である。図14は、図3中のサイドメンバに固定されたインバータトレイおよびウォータポンプブラケットを模式的に示す側面図である。
【0085】
図12から図14を参照して、ウォータポンプブラケット90は、第1ブラケット部分91と、第1ブラケット部分91に接合された第2ブラケット部分94とから構成されている。
【0086】
第1ブラケット部分91は、頂部92および側部93を有する。側部93は、頂部92の周縁から折れ曲がって形成されている。頂部92は、サイドメンバ20の頂面20a上に配置され、側部93は、サイドメンバ20の内側面20b上に配置されている。頂部92および側部93は、それぞれ、頂面20aおよび内側面20bに対して締結されている。
【0087】
第2ブラケット部分94は、基部97および支持部98を有する。基部97は、第1ブラケット部分91に接合されている。基部97は、段差を有しながら車両前後方向に延びて形成されている。基部97は、インバータトレイ50の底部分に締結されている。支持部98は、基部97から車両前方に連なって形成されている。支持部98には、ウォータポンプ670を嵌合支持するための嵌合孔211が形成されている。
【0088】
ウォータポンプブラケット90は、基部97と支持部98との間で角度α(図14を参照のこと)をなすように折れ曲がって形成されている。ウォータポンプブラケット90は、基部97と支持部98との間でPCU660とは反対側に折れ曲がった形状、すなわち、基部97から支持部98に向けて鉛直下斜め方向に折れ曲がった形状を有する。
【0089】
第2ブラケット部分94には、折り返し部95が形成されている。折り返し部95は、基部97および支持部98の周縁が折り返されることによって形成されている。折り返し部95は、サイドメンバ20の内側面20b上に配置され、複数箇所で内側面20bに対して締結されている。第2ブラケット部分94には、その剛性を向上させることを目的として、フランジ部96が形成されている。フランジ部96は、折り返し部95が形成された周縁とは対向する、基部97および支持部98の周縁が折り返されることによって形成されている。
【0090】
本実施の形態における車両の衝撃吸収構造においては、ウォータポンプブラケット90に、切り欠き212および切り欠き214が形成されている。切り欠き212および切り欠き214は、ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こした場合に、ウォータポンプブラケット90の折れ変形を促す形態に形成されている。切り欠き212および切り欠き214は、車両前後方向において、サイドメンバ20の結合部200と重なる位置に形成されている。
【0091】
より具体的には、切り欠き212は、第1ブラケット部分94の周縁を切り欠いた形態に形成されている。切り欠き212は、側部93との境界に位置する頂部92の周縁に形成されている。切り欠き212は、サイドメンバ20の表面上に形成されている。切り欠き214は、第2ブラケット部分94の周縁を切り欠いた形態に形成されている。切り欠き214は、フランジ部96の周縁に形成されている。切り欠き214は、サイドメンバ20の表面から離れた位置に形成されている。切り欠き212および切り欠き214は、車両前後方向において互いに重なる位置に形成されている。
【0092】
ウォータポンプブラケット90には、ボルト用孔213が形成されている。ボルト用孔213は、折り返し部95に形成されており、ウォータポンプブラケット90をサイドメンバ20に締結するためのボルト107が挿入されている。ボルト用孔213は、サイドメンバ20の結合部200よりも車両前方側に形成されている。ボルト用孔213は、車両側方が貫通方向となるように形成されている。
【0093】
ボルト用孔213は、孔の外周の一部範囲をウォータポンプブラケット90の周縁に開放した形態により形成されている。言い換えれば、ボルト用孔213は、孔の外周の一部範囲を切り欠いた形態により形成されている。
【0094】
さらに、本実施の形態における車両の衝撃吸収構造においては、インバータトレイ50に形成されたフランジ部56が、車両前後方向においてサイドメンバ20の結合部200と重なる位置で切り欠かれた形状を有する(図13中の部分55)。
【0095】
図15は、ハイブリッド自動車が前面衝突を起こした場合のサイドメンバの変形を示す平面図である。図15を参照して、ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こし、矢印206に示すように車両前方からエンジンルーム710内に過大な外力が加わった場合を想定する。この場合、サイドメンバ20が結合部200において車両側方に向けて折れ変形を起こすことにより(2点鎖線にて示すサイドメンバ20H)、前面衝突時の衝撃を吸収し、車室内への部品の侵入を防ぐ。この際、サイドメンバ20に固定されたウォータポンプブラケット90が、サイドメンバ20の剛性を高めるように作用し、サイドメンバ20の上記折れ変形を阻害するおそれがある。
【0096】
これに対して、本実施の形態における車両の衝撃吸収構造においては、ウォータポンプブラケット90の、車両前後方向において結合部200と重なる位置に、切り欠き212および切り欠き214が形成されている。このような構成により、切り欠き212および切り欠き214が形成された位置でウォータポンプブラケット90の剛性を意図的に低減させ、サイドメンバ20の折れ変形を容易とできる。
【0097】
図14を参照して、さらに、ウォータポンプブラケット90には、切り欠き形状を有するボルト用孔213が形成されている。このような構成により、サイドメンバ20が屈曲し始めると、ボルト107がボルト用孔213の切り欠き部分を通じてウォータポンプブラケット90から離脱し、ボルト107によるウォータポンプブラケット90とサイドメンバ20との締結が解除される。結果、サイドメンバ20に対するウォータポンプブラケット90の拘束が解かれ、サイドメンバ20の折れ変形をさらに容易とできる。本実施の形態では、サイドメンバ20の変形が車両前方から後方へと進行することを考慮して、結合部200よりも車両前方側に配置されたボルト用孔213を切り欠き形状としている。
【0098】
図15を参照して、また、インバータトレイ50には、車両前後方向においてサイドメンバ20の結合部200と重なる位置で切り欠かれた形状のフランジ部56が形成されている。このような構成により、インバータトレイ50が結合部200におけるサイドメンバ20の折れ変形の妨げとなることを、効果的に抑制できる。
【0099】
図16は、ハイブリッド自動車が前面衝突を起こした場合のウォータポンプブラケットの変形の過程を示す側面図である。図16を参照して、本実施の形態における車両の衝撃吸収構造においては、ウォータポンプブラケット90が、基部97と支持部98との間でPCU660とは反対側に折れ曲がった形状を有する。
【0100】
このような構成により、ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こし、矢印206に示すように車両前方からエンジンルーム710内に過大な外力が加わった場合に、支持部98がPCU660から遠ざかる方向に移動するように、ウォータポンプブラケット90を基部97と支持部98との間で折れ変形させることができる。これにより、ウォータポンプ670とPCU660との衝突を回避することができる。
【0101】
以上に説明した、この発明の実施の形態における車両の衝撃吸収構造の構成についてまとめて説明すると、車両の衝撃吸収構造は、エンジンルーム710に配置され、車両前後方向に延び、車両前方からエンジンルーム710に外力が加わった場合に折れポイントとなる結合部200を有するサイドメンバ20と、車両前後方向において結合部200と重なるようにサイドメンバ20に固定され、ウォータポンプ670を支持するためのブラケットとしてのウォータポンプブラケット90とを有する。ウォータポンプブラケット90には、切り欠き212および切り欠き214と、切り欠き形状を有するボルト用孔213とが形成されている。
【0102】
このように構成された、この発明の実施の形態における車両の衝撃吸収構造によれば、ハイブリッド自動車500が前面衝突を起こし、エンジンルーム710内に車両前方から衝撃が加わった場合に、サイドメンバ20を折れポイントである結合部200で意図通り変形させることができる。これにより、エンジンルーム710に加わった衝撃エネルギを効率よく吸収し、車室内への部品の侵入を防ぐことができる。
【0103】
また、本実施の形態では、ウォータポンプブラケット90の板厚を小さくする場合や、フランジ部96自身を廃止する場合と比較して、切り欠き212,214およびボルト用孔213に形成された切り欠き部分が、ウォータポンプブラケット90全体を低剛性化させるということがない。このため、ウォータポンプブラケット90の、ウォータポンプ670で発生する振動の増幅を抑える機能を大幅に低減させず、NV(Noise and vibration)性能の維持を図ることができる。また、ウォータポンプ670や、たとえば20kg以上の重量を有するPCU660を支持するブラケットとしての剛性を、十分に確保することができる。さらに、ウォータポンプブラケット90やインバータトレイ50の軽量化を図るという効果も得られる。
【0104】
なお、本実施の形態では、エンジンとバッテリとを備えるハイブリッド自動車に本発明を適用したが、これに限定されず、燃料電池とバッテリとを備える燃料電池ハイブリッド自動車(FCHV:Fuel Cell Hybrid Vehicle)、または電気自動車(EV:Electric Vehicle)に本発明を適用することもできる。本実施の形態におけるハイブリッド自動車では、燃費最適動作点で内燃機関を駆動するのに対して、燃料電池ハイブリッド自動車では、発電効率最適動作点で燃料電池を駆動する。また、バッテリの使用に関しては、両方のハイブリッド自動車で基本的に変わらない。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
20 サイドメンバ、26,28 メンバ部材、30 エンジンマウント、50 インバータトレイ、56,57 フランジ部、90 ウォータポンプブラケット、107 ボルト、200 結合部、213 ボルト用孔、500 ハイブリッド自動車、520 モータジェネレータ、710 エンジンルーム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームに配置され、車両前後方向に沿って延び、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に折れポイントとなる易変形部を有するサイドメンバと、
車両前後方向において前記易変形部と重なるように前記サイドメンバに固定され、ウォータポンプを支持するためのブラケットとを備え、
前記ブラケットには、切り欠きが形成されている、車両の衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記切り欠きは、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、前記ブラケットの変形を促す形態に形成されている、請求項1に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記易変形部は、車両前後方向における前記サイドメンバの一部範囲に形成され、
前記切り欠きは、車両前後方向において、前記易変形部と重なる位置に形成されている、請求項1または2に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項4】
前記ブラケットには、前記ブラケットを前記サイドメンバに締結するためのボルトが挿入されるボルト用孔が形成され、
前記切り欠きは、前記ボルト用孔の周縁の一部範囲が切り欠かれた形態で形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項5】
前記サイドメンバに固定され、電力の制御を行なうパワー制御ユニットを支持するためのトレイをさらに備え、
前記易変形部は、車両前後方向における前記サイドメンバの一部範囲に形成され、
前記トレイは、その周縁が折り曲げられることによって形成され、車両前後方向において前記易変形部と重なる位置で切り欠かれたフランジ部を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項6】
エンジンルーム内で支持され、電力の制御を行なうパワー制御ユニットをさらに備え、
前記ブラケットは、車両前後方向に延びる基部と、前記基部から車両前方に連なって形成され、ウォータポンプを支持するための支持部とを有し、前記基部と前記支持部との間で、前記パワー制御ユニットとは反対側に折れ曲がって形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項1】
エンジンルームに配置され、車両前後方向に沿って延び、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に折れポイントとなる易変形部を有するサイドメンバと、
車両前後方向において前記易変形部と重なるように前記サイドメンバに固定され、ウォータポンプを支持するためのブラケットとを備え、
前記ブラケットには、切り欠きが形成されている、車両の衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記切り欠きは、車両前方からエンジンルームに外力が加わった場合に、前記ブラケットの変形を促す形態に形成されている、請求項1に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記易変形部は、車両前後方向における前記サイドメンバの一部範囲に形成され、
前記切り欠きは、車両前後方向において、前記易変形部と重なる位置に形成されている、請求項1または2に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項4】
前記ブラケットには、前記ブラケットを前記サイドメンバに締結するためのボルトが挿入されるボルト用孔が形成され、
前記切り欠きは、前記ボルト用孔の周縁の一部範囲が切り欠かれた形態で形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項5】
前記サイドメンバに固定され、電力の制御を行なうパワー制御ユニットを支持するためのトレイをさらに備え、
前記易変形部は、車両前後方向における前記サイドメンバの一部範囲に形成され、
前記トレイは、その周縁が折り曲げられることによって形成され、車両前後方向において前記易変形部と重なる位置で切り欠かれたフランジ部を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項6】
エンジンルーム内で支持され、電力の制御を行なうパワー制御ユニットをさらに備え、
前記ブラケットは、車両前後方向に延びる基部と、前記基部から車両前方に連なって形成され、ウォータポンプを支持するための支持部とを有し、前記基部と前記支持部との間で、前記パワー制御ユニットとは反対側に折れ曲がって形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の車両の衝撃吸収構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−173569(P2010−173569A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20372(P2009−20372)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]