車両の走行安全装置
【課題】見通しの悪い交差点等において、運転者が前方の安全を確認しようとしている場合に、運転者に衝突の可能性のある移動物体の存在を知らせる。
【解決手段】車両の走行安全装置は、車両に設けられ、該車両の周辺の物体を検出する物体検出手段と、車両の走行状態を検出するための走行状態検出手段と、検出された物体のうち、車両の進行経路に接近してくる移動物体を特定する移動物体特定手段と、運転者の前方への乗り出しの有無を判定する乗り出し判定手段と、接近してくる移動物体があり、かつ運転者が前方へ乗り出しているときに、運転者に移動物体の接近を知らせる報知手段と、を備える。
【解決手段】車両の走行安全装置は、車両に設けられ、該車両の周辺の物体を検出する物体検出手段と、車両の走行状態を検出するための走行状態検出手段と、検出された物体のうち、車両の進行経路に接近してくる移動物体を特定する移動物体特定手段と、運転者の前方への乗り出しの有無を判定する乗り出し判定手段と、接近してくる移動物体があり、かつ運転者が前方へ乗り出しているときに、運転者に移動物体の接近を知らせる報知手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行安全装置に関し、より具体的には、車両と当該車両に接近してくる移動物体との衝突を回避するための安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点での出合い頭の車両の衝突事故は、今も昔も数多く発生している。そのうち、運転者の前方左右の確認不足が主因となって発生する、側方から接近してくる車両との衝突事故は跡を絶たない。特に見通しの悪い交差点ではその傾向は顕著である。
【0003】
特許文献1は、車両用衝突警報装置を開示する。この車両用衝突警報装置は、車両の衝突が予知された場合に、その衝突方向を車両のルームミラーやサイドミラーに設けた発光手段を光らせることにより運転者に知らせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】公開特許公報 特開2007−314016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明では、車両の衝突が予知されたときに一律に発光手段を光らせるので、例えば運転者が既に接近車両を認識している場合は、運転者はその発光がかえって煩わしいと感じてしまう。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の課題を改善し、見通しの悪い交差点等において、運転者が前方の安全を確認しようとしている場合にのみ、運転者に衝突の可能性のある移動物体の存在を知らせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両の走行安全装置を提供する。その走行安全装置は、車両に設けられ、該車両の周辺の物体を検出する物体検出手段と、車両の走行状態を検出するための走行状態検出手段と、検出された物体のうち、車両の進行経路に接近してくる移動物体を特定する移動物体特定手段と、運転者の前方への乗り出しの有無を判定する乗り出し判定手段と、接近してくる移動物体があり、かつ運転者が前方へ乗り出しているときに、運転者に移動物体の接近を知らせる報知手段と、を備える。
【0008】
本発明によれば、運転者が見通しの悪い交差点等で前方の確認をしているまさにその時に運転者に接近してくる移動物体の存在を的確に知らしめることにより、運転者の前方確認をアシストして移動物体との衝突を回避することができる。逆に、運転者の動作から既に接近する移動物体に気付いていると思われるような場合には報知が行われないため、運転者は必ずしも必要としない報知による煩わしさから解放される。
【0009】
本発明の一形態によると、移動物体特定手段は、接近してくる移動物体の進行経路を推定することを含み、車両の走行安全装置は、車両の走行状態および進行経路と前記接近してくる移動物体の進行経路の情報から、車両と移動物体の衝突危険度を判定する手段をさらに備え、報知手段は、衝突危険度が所定の範囲にある場合、移動物体の接近の報知をおこなう。
【0010】
この本発明の一形態によれば、車両と移動物体の衝突危険度がある程度高い場合に移動物体の接近の報知をおこなうので、衝突危険度が低いような場合には、あえてその報知をしないことにより、運転者を報知による煩わしさから解放させることができる。すなわち、移動物体の接近の報知の有効性が高いと思われる場合にのみ運転者にその報知をおこなうことができる。
【0011】
本発明の一形態によると、走行状態検出手段は、車両が進行しようとしているかを検出し、報知手段は、車両が進行しようとしている場合に、移動物体の接近の報知をおこなう。
【0012】
この本発明の一形態によれば、車両が交差点等へまさに進行しようとしているときに、移動物体の接近の報知をおこなうので、運転者が必要とする情報をタイムリーに提供することができる。逆に、車両が進行しようとしていない場合は、運転者を必ずしも必要としない報知による煩わしさから解放させることができる。
【0013】
本発明の一形態によると、報知手段は発光手段を含み、当該発光手段は、運転者が前方へ乗り出しているときのみに運転者が発光を視認できるように、前記車両内で、前方へ乗り出した運転者の頭の位置に向けて発光するように設けられる。
【0014】
この本発明の一形態によれば、たとえ、乗り出し判定手段が乗り出しの有無を誤判定したとしても、運転者が実際に前方に乗り出さないと発光手段の発光を認識できないので、運転者は誤判定による報知の煩わしさから解放される。また、乗り出し判定手段の誤判定の精度を必要以上に高くしなくて済むので、結果として、走行安全装置を廉価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に従う、走行安全装置のブロック図である。
【図2】交差点での車両接近の様子を示す図である。
【図3】シートベルト周りの図である。
【図4】シートベルトセンサユニットの構成例を示す図である。
【図5】シートベルトの引出し量と運転者の前方への乗り出しとの関係を示す図である。
【図6】荷重センサを示す図である。
【図7】荷重センサ出力の差分と運転者の乗り出し量との関係を示す図である。
【図8】本発明の報知装置の構成を示す図である。
【図9】本発明の車両内での報知装置の配置を示す図である。
【図10】本発明の移動物体接近の報知をする場合の制御フローである。
【図11】本発明の衝突の危険度を考慮した制御フローである。
【図12】本発明の減速度と車両が接近移動物体と衝突するまでの推定時間との関係を示す図である。
【図13】本発明の自車両の行動を考慮した制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に従う、車両に搭載される、車両の走行安全装置100のブロック図である。走行安全装置100は、処理装置10と、外界センサ12と、車両状態センサ14と、運転者乗り出しセンサ16と、ナビゲーション装置18と、報知装置20とを備えている。
【0017】
処理装置10は、中央処理装置(CPU)およびメモリを備えるコンピュータである電子制御装置(ECU)である。図には、処理装置10によって実現される機能がブロックとして表されている。この実施形態では、処理装置10は、物体情報取得部30、自車両情報取得部32、運転者乗り出し判定部34、接近移動物体特定部36、衝突危険度判定部38、および衝突回避制御部40を備える。処理装置10の各機能の詳細については後述する。なお、処理装置10は、ナビゲーション装置18の一部として一体的にあるいは付随する装置として構成してもよい。
【0018】
外界センサ12は、この実施形態では、車両の前部に設けられ、車両の周辺に存在する物体を検出する。好ましくは、外界センサ12は、例えば図2の符号56で例示されるように、車両の進行経路に接近してくる移動する物体を検出するため、車両の前方の左および(または)右の所定領域を検知するように、車両の前部の左端部および(または)右端部(たとえば、フロントバンパの左端部および(または)右端部)あるいは前端中央部に設けられる。外界センサ12は、たとえばミリ波などの電磁波によるレーダ装置あるいは車両の周辺を撮像する撮像装置によって構成することができる。
【0019】
ここで、レーダ装置は、任意の既知の適切なレーダ装置で実現されることができる。レーダ装置は、たとえば、自車両の外界に設定された検出対象領域を、複数の角度領域に分割し、各角度領域を走査するように電磁波の発信信号を発信する。各発信信号が、自車両の外部の物体(たとえば、他車両や構造物など)によって反射されることで生じた反射信号を受信し、レーダ装置から該物体までの距離や方位を示す信号を生成し、処理装置10に出力する。
【0020】
撮像装置は、任意の既知の適切な撮像装置で実現することができる。撮像装置は、1つまたは複数のカメラにより撮像された画像を取得し、該画像データを処理装置10に出力する。
【0021】
車両状態センサ14は、自車両の状態を各種パラメータとして検出する複数のセンサの総称として記載されている。車両状態センサ14は、例えば、自車両の速度を検出するセンサ、アクセルペダルやブレーキペダルの位置を検出するセンサ、ブレーキの油圧を検出するセンサ等を含む。自車両の速度を検出するセンサは、任意の既知の適切な手段により実現することができ、たとえば、自車両の駆動輪の回転速度(車輪速)を検出する車輪速センサや、自車両の速度を検出する車速センサや、車体に作用する加速度を検知する加速度センサにより実現することができる。アクセルペダルやブレーキペダルの位置を検出するセンサは、ペダルの踏み込み量に応じて移動するペダルの駆動部の位置を検出する機械式あるいは光電式スイッチなどで実現される。車両状態センサ14の出力(検出信号)は処理装置10に入力される。
【0022】
運転者乗り出しセンサ16は、車両の運転席における運転者の乗り出し量を検出する。運転者乗り出しセンサ16としては、例えばシートベルトセンサや荷重センサ等が該当する。運転者乗り出しセンサ16の出力(検出信号)は処理装置10に入力される。運転者乗り出しセンサ16による運転者の乗り出し量の検出の詳細については後述する。
【0023】
ナビゲーション装置18は、出力部、入力部、記憶手段等を備え、出力部はディスプレイとスピーカを含む。記憶手段には、地図データと当該地図データの道路情報が格納される。その道路情報には、各道路についての属性を示す属性情報(道路の種別、道路の形状等)が含まれる。ナビゲーション装置18は、GPS信号やジャイロセンサの信号から車両の現在位置を算出する。ナビゲーション装置18は、車両状態センサ14から自車両の速度信号を得て、走行に最適なルート等を選定する。ナビゲーション装置18は、リアルタイムな交通情報を所定のサーバから取得する通信機能を有する通信部(図示なし)を備えることができる。交通情報には、例えば渋滞、工事、交通規制等に関する情報が含まれる。ナビゲーション装置18で得られた情報(車両の位置、予定走行ルート、道路の種別、道路の形状等)は、適宜必要に応じて処理装置10へ送られる。
【0024】
報知装置20は、処理装置10からの制御信号を受けて、車両の運転者に報知を行う。報知装置20は、より具体的には、触覚的伝達装置、視覚的伝達装置、聴覚的伝達装置のうち、任意の1つまたは複数の装置を用いて実現することができる。本発明は、このうち特に視覚的伝達装置を用いて報知をおこなうところに特徴がある。
【0025】
触覚的伝達装置は、たとえばシートベルト装置や操舵制御装置などであって、処理装置10から出力される制御信号に応じて、たとえばシートベルトに所定の張力を発生させて、運転者に知覚可能な締め付け力を作用させたり、ステアリングホイールに運転者が触覚的に知覚可能な振動を発生させることにより、運転者に知らせる。
【0026】
視覚的伝達装置は、たとえば表示装置などであって、処理装置10からの制御信号に応じて上述した所定の報知や警報を表示したり、所定の警告灯を点滅ないし点灯させることによって、運転者に知らせる。この視覚的伝達装置についてはさらに後述する。
【0027】
聴覚的伝達装置は、たとえばスピーカなどであって、処理装置10からの制御信号に応じて、上述した所定の報知や警報を音声として出力することによって、運転者に知らせる。
【0028】
ここで、図1の処理装置10の各機能について説明する。物体情報取得部30は、外界センサ11の出力信号を所定時間間隔で取得し、該出力信号に基づいて、車両周辺に存在する物体のそれぞれについて、該物体の位置、速度および進行方向を含む物体情報を取得する。外界センサ11がレーダ装置の場合には、レーダ装置から出力される信号に基づいて、該物体の位置を求めることができる。外界センサ11が撮像装置の場合には、該撮像装置から出力される画像データから、撮像されている物体を抽出し、該物体の該画像内における位置に基づいて、該物体の位置を求めることができる。該物体の位置を追跡することにより、該物体の速度および進行方向を求めることができる。例えば、所定時間における該物体の位置の移動距離を該所定時間で除算することによって、物体の速度を求めることができる。
【0029】
自車両情報取得部32は、車両状態センサ12の各種出力信号を、上記の所定時間間隔で取得し、該出力信号に基づいて、自車両の速度を含む自車両情報を取得する。自車両情報取得部32は、さらにナビゲーション装置18から、現在の位置や予定走行ルートなどを取得する。
【0030】
接近移動物体特定部36は、物体情報取得部30で取得された車両周辺に存在する物体の情報から、自車両の進行経路に接近してくる移動物体を特定する。例えば、移動物体の進行方向および速度と自車両の進行方向および速度に基づいて、接近してくる移動物体、言い換えれば交差する可能性のある移動物体を特定する。
【0031】
図2は交差点に進行してくる車両と移動物体(車両)の接近の様子を示す図である。図2の縦方向の道路上の車両50は交差点の手前の「止まれ」表示の前で一時停止した後、走行を再開したばかりであるとする。車両50は交差点を矢印58の方向に進行する。車両50の左先端部には外界センサ56が設置されている。なお、図の外界センサ56はわかりやすくするために誇張して大きく描かれているが、実際には車両の表面から突出しないように設置される。
【0032】
図2の水平方向の道路上では2つの車両52、54が交差点に向かって走行している。物体情報取得部30は、外界センサ56からの検出信号に基づき、2つの車両52、54の走行方向と速度を検出する。車両52を例にとると、走行方向60における速度が検出される。物体情報取得部30は、同時に車両52が走行方向60に沿って走行した場合の自車両50との距離Dを求める。接近移動物体特定部36は、これらの情報を物体情報取得部30から取得して、接近してくる車両52、54を特定し、その接近車両の位置、走行方向、速度などの情報を得る。そして、自車両50と車両52が距離Dの地点まで来るまでの時間を求めて、その時間を比較して、両車両が交差する可能性があるか否かを判定する。その可能性がある移動物体を接近移動物体として特定する。
【0033】
運転者乗り出し判定部34は、運転者乗り出しセンサ16が検出した運転者の乗り出し量から運転者の前方への乗り出しの有無を判定する。この運転者の前方への乗り出しの有無は、詳細は後述するように、報知装置20による報知をおこなわせるか否かの判断基準(条件)となる。
【0034】
最初に、図3〜図5を参照しながら、運転者乗り出しセンサ16の一実施例であるシートベルトセンサ80を用いて、運転者の前方への乗り出しの有無を判定する方法について説明する。
【0035】
図3は、シートベルト周りの図である。シートベルト74は、シートベルト74の巻き取り器78から引き出され、バックル76が装着部81の開口82に挿入される。シートベルトセンサ80は、シートベルト74の巻き取り器78内に設けられ、シートベルト74の移動量、すなわち引出し量(m)あるいは巻き取り量(m)を検出する。シートベルトセンサ80の出力信号は処理装置10に送られる。シートベルトセンサ80は、巻き取り器78内に例えば1つのセンサユニットとして設置される。
【0036】
図4は、そのセンサユニットの構成例を示す図である。センサユニットは、磁気ディスク90と2つのホール素子(IC)92、94を含む。磁気ディスク90の外周部には、円周方向に沿ってN極とS極が交互に配置されている。シートベルトの移動(引き出しまたは巻き取り)に応じて、磁気ディスク90は中心軸CTの周りで回転する。磁気ディスク90の回転の際に、ホール素子92、94は、A相パルスS1、B相パルスS2を出力する。波形96、98はパルスS1、S2の出力例である。パルスS1、S2の1周期は、磁気ディスク21の外周部のN極とS極の1セットがホール素子92または94の前を横切ったときの出力に相当する。
【0037】
ホール素子92、94は所定の距離をおいて置かれているので、パルス96、98には位相差ΔFが生ずる。図4では、パルスS2の位相が遅れているが、磁気ディスク90の回転方向が逆になると、パルスS1の位相が遅れることになる。磁気ディスク90の回転方向は、シートベルトの移動方向に対応しているので、パルスS1、S2のどちらの位相が遅れているかを検知することによって、シートベルトが引き出されているのか巻き取られているのかを判断することができる。さらに、シートベルトの移動量(m)は磁気ディスク90の回転量に相関し、かつ磁気ディスク90の回転量はパルス96、98の長さ(パルス数)に相関するので、パルス96、98のパルス数をカウントすることにより、シートベルトの移動量(m)を算出することができる。すなわち、1パルス=ベルト長ΔL(m)が成り立つ。
【0038】
次に運転者乗り出し判定部34による、シートベルトセンサ80が検出したシートベルト74の引出し量から運転者の前方への乗り出しの有無を判定する方法を説明する。図5は、シートベルトの引出し量と運転者の前方への乗り出しとの関係を示す図である。(a)は運転者を横から見た図であり、(b)は運転者を上から見た図である。図5は右ハンドルを想定している。図5において、ハンドル84、ダッシュボード85、フロントウィンドウシールド86、シート87に対して、運転者の位置が符号A、B、B1、B2で示されている。
【0039】
通常の走行状態では符号Aに示すように、運転者は通常シート87に背をもたれて正面を見ながら運転する。この場合のシートベルト74の引出し量は、所定長さL1以下である場合が多い。
【0040】
車両が例えば図2で例示したような交差点、特に見通しの悪い交差点に入るような場合、運転者は符号B、B1、B2に示すように、シート87から背を離して、身を前方(正面、右側あるいは左側)に乗り出して前方を注視することがある。この場合、運転者が身を乗り出す分だけシートベルト74は余計に巻き取り器78(図3)から引き出され、その引き出し量は、運転者の身を乗りだす方向(例えば、図5(b)のB1とB2)で違いがあるが、少なくともL1より長い所定長さL2以上になる場合が多い。
【0041】
この引き出し量L1、L2は予め運転者の動作をモニターして決められる。ここで、しきい値Lthを、
L1<Lth<L2
の関係を満たすように設定する。そして、シートベルト74の引き出し量Lが、
L≧Lth
となる場合に、運転者の前方への乗り出しがあると判定し、逆にLがLthよりも小さい場合は、その乗り出しが無いと判定する。なお、左ハンドルの場合も同様である。このように、シートベルトの引き出し量から運転者の前方への乗り出しの有無を判定する。このシートベルト74の引き出し量のしきい値Lthは、予め処理装置10のメモリ(図示なし)に保管される。
【0042】
次に、図6と図7を参照しながら、運転者乗り出しセンサ16の他の実施例である荷重センサ102を用いて、運転者の前方への乗り出しの有無を判定する方法について説明する。
【0043】
図6は、荷重センサ102を示す図である。荷重センサ102は、シート104の内部に設置される。荷重センサ102は、圧電素子や歪みゲージを用いたタイプが使われる。荷重センサ102は、2つの荷重検出部106、108と差動出力部110を含む。検出部106はシート104の前方に設けられ、検出部108はシート104の後方に設けられる。検出部は少なくともシートの前と後に1つづつあればよく、3つ以上設けてもよい。荷重検出部106、108は、荷重(圧力)に応じた検出信号P1、P2を差動出力部110に送る。差動出力部110は、検出信号P1とP2の差分出力ΔP(=P1−P2)を処理装置10へ送る。
【0044】
図7は、差分ΔPと運転者の乗り出し量との関係を示す図である。図7の関係は予め求められ、処理装置10のメモリに格納されている。図7において、乗り出し量は、運転者が通常の運転時にシートに背をもたれている状態から前方へ移動したときの移動長さ(cm)として求められる。例えば、図5(b)において、位置Aから位置B1、B2への運転者の頭の移動量D(cm)として求められる。図7において、乗り出し量がD1(cm)以上の場合に、運転者が身を乗り出しているとする。そのD1(cm)に対応する差分出力ΔPが判定のしきい値ΔPthとなる。運転者乗り出し判定部34は、図7の関係を用いて、差動出力部110から送られてきた差分出力ΔPがしきい値ΔPth以上の場合に、運転者が前方へ身を乗り出していると判定する。
【0045】
衝突危険度判定部38は、接近移動物体特定部36において特定された接近移動物体の情報(走行方向、速度)と、自車両情報特定部32からの自車両の情報(走行方向、速度)と、ナビゲーション装置18から得られる自車両の情報(位置、予定走行ルート等)とから、自車両と特定された接近車両との衝突の危険度を判定する。この衝突の危険度の判定については後述する。
【0046】
衝突回避制御部40は、衝突危険度判定部38が判定した衝突危険度に応じて、報知装置20の制御信号を作り、報知装置20に送る。
【0047】
ここで、図8と図9を参照しながら、視覚的伝達装置としての報知装置20の一実施形態について説明する。図8は報知装置20の構成を示す図である。図9は車両内での報知装置20の配置を示す図である。図8の報知装置20は、3つの発光素子201から構成される。発光素子201は、指向性のある光源からなり、例えば狭角タイプのLEDが該当する。ここで狭角タイプとは、例えば光強度の半値角が約7度〜15度程度を意味する。発光素子201は処理装置10(図1)に接続され、所定のタイミング、発光時間、周期、あるいは強度で発光するように制御される。
【0048】
図8の構成では、各発光素子201の光軸205が、光の投射方向に揃うように、3つの発光素子201が連結されている。遮光フード203は、後述するように、運転者の体の位置に応じて発光素子の光を見えなくするために、発光素子201に接合される。なお、発光素子の数は3つに限られず任意に設定でき、1つでもよく、あるいはアレイ状の形態(LEDアレイ等)を用いてもよい。発光素子201の発光色は、運転者の注意を引きやすい色(例えば赤色)が望ましいが、これに限られず目立ちやすい他の色(橙色、緑色、白色等)であってもよい。また、遮光フード203の代わりに、発光素子201の表面部分に遮光パターンを形成してもよい。
【0049】
図9は図5と同様、右ハンドルの運転者A、Bの前方への乗り出しの様子を示す。図9において、報知装置20は、運転席前方の右側と左側のフロントウィンドウシールド86近くのダッシュボード85の上にそれぞれ設置される。車室の両側に報知装置20を設けるのは、いずれか一方を発光させることにより、左右どちらから移動物体が接近してくるかを運転者に知らせるためである。
【0050】
図9の領域207は、報知装置20が発光した際の光の投射範囲を示す。運転者がシートに背をもたれた通常の状態Aでは、投射範囲207の光を視認することはできない。運転者が前方へ身を乗り出した状態Bにおいて投射範囲207の光を視認することができる。このように、投射範囲207は、運転者が前方へ体を乗り出した状態Bで初めて見えるように設定される。その設定は、図8の報知装置20の発光素子の光軸205と遮蔽フード207の位置を調整することによりおこなわれる。より具体的には、例えば、運転者の頭の位置が図9のBの位置にあるときに、発光素子の光軸205がその頭の方向に延びる(沿う)ように、光軸205と遮蔽フード207の位置が予め調整される。あるいは、簡単な駆動機構を発光素子に設けて、運転者の乗り出し量に連動して発光素子の光軸205が動くようにしてもよい。
【0051】
運転者は、シートに背をもたれた通常の状態Aでは報知装置20の発光を視認することができないので、既に接近移動物体を認知している場合等における報知の煩わしさから解放される。つまり、見通しが良好であり報知が不要の場合、運転者は図9のAの状態であるので報知装置20の発光は視認されず、煩わしくない。
【0052】
次に、走行安全装置100の動作について、図10から図12を参照しながら説明する。図10は、移動物体接近の報知をする場合の制御フローである。ステップS101において、外界センサ12は、車両の周辺に存在する物体を検知する。ステップS103において、車両状態センサ14は、自車両の状態(速度、アクセルペダルの位置、ブレーキペダルの位置、ブレーキの油圧等)を検知する。ステップS105において、処理装置10(接近移動物体特定部36)は、検知された周辺物体の情報および自車両の情報から、接近してくる移動物体を特定する。ステップS107において、接近移動物体があるか判定し、ない場合は制御フローが終了する(117)。
【0053】
接近移動物体がある場合、ステップS109において、運転者乗り出しセンサ16は、車両の運転席における運転者の乗り出し量を検出する。具体的には、上述したように、乗り出し量は、シートベルトの引き出し量Lあるいは荷重センサの差分出力値ΔPとして検出される。例えば、シートベルトセンサ80の場合、既に図3と図4を用いて説明したように、パルス96、98の数をカウントすることにより算出する。パルス数のカウントは、シートベルト74が、巻き取り器78に完全に巻き取られた(格納された)とき、あるいは巻き取り器78から引き出されて装着されたときのカウント(長さ)を基準(ゼロ)として行う。
【0054】
ステップS111において、処理装置10(運転者の乗り出し判定部34)は、検知された乗り出し量から運転者の前方への乗り出しの有無を判定する。その判定方法は、図5あるいは図7を参照しながら既に説明した通りである。ステップS113において、処理装置10(衝突危険度判定部38)は、運転者の前方への乗り出しがない場合、制御フローが終了させる(117)。運転者が接近移動物体を認識している可能性が高く危険度が低いと推定でき、あえて報知をしなくてもよいと考えられるからである。
【0055】
運転者の前方への乗り出しがある場合、処理装置10(衝突危険度判定部38)は、運転者が接近移動物体を確認しようとしており、もし運転者の前方確認不足となる場合に、接近移動物体と衝突の可能性があると判定する。そして、ステップS115において、移動物体の接近が運転者に報知される。具体的には、処理装置10(衝突回避制御部40)は、報知装置20に対して移動物体の接近の報知を指示し、報知装置20はその報知を行う。その際、車両の進行方向に対して左側から移動物体が接近する場合は、車室の左側の報知装置が発光してその左からの接近を知らせ、逆に右側から接近する場合は車室の右側の報知装置が発光してその右からの接近を知らせる。これにより、運転者は左右どちらから移動物体が接近してくるかを瞬時に把握することができる。
【0056】
このように、本発明によれば、移動物体の接近に際して、運転者が見通しの悪い交差点等の前で身を乗り出して前方を確認しようとしている場合に、運転者に報知をおこなってその接近(方向も)を知らせることができる。また、その接近に気がついていると推定される場合は、報知をおこなわず、運転者を余計な報知によるわずらわしさから解放させることができる。
【0057】
図11は、移動物体接近において、衝突の危険度(減速度)を考慮した上で報知をおこなう場合の制御フローである。図11のフローは、図10のステップS107とステップS109の間で実行される。接近移動物体が特定された後、ステップS201において、減速度Gaを算出する。減速度Gaは、自車両が接近移動物体との衝突を回避するための減速の加速度を意味する。図2を参照して具体的に説明すると、走行する自車両50が接近車両52との衝突を回避するためには、距離Dの位置までに自車両50が停止する必要がある。そのためには、自車両50は、自車両50が初速度V0で走行するとした場合、負の加速度a、
a=V02/2D (1)
で減速走行する必要がある。(1)式の加速度aを重力加速度gを用いて表わした、
ag=V02/(2D・g) (2)
が、減速度Ga(G)(=ag)となる。
【0058】
ステップS203において、減速度Ga(G)が所定の閾値Gth_almより大きいかを判定する。図12は閾値Gth_almについて説明するための図である。図2と図12を参照しながらこの閾値Gth_almについて説明する。図12において、グラフの縦軸は減速度Ga(G)であり、横軸は車両が接近移動物体と衝突するまでの推定時間(s)である。横軸右端の衝突時を基準(ゼロ)として、それよりも前の時間であることを示すために負の値で時間を示している。図2の例では、距離Dの位置が衝突時となるので推定時間ゼロとなり、その位置から離れる(図の手前に来る)につれて負の時間が大きくなる。
【0059】
図12において、車両接近の報知を行う閾値Gth_almを約0.16Gと定めると、衝突までの推定時間は約1.35sとなる。この設定は、車両の制動性能や安全性能等を考慮して、予め任意の値に設定される。なお、図12には、報知のみならず、警報あるいは制動制御もおこなえるように、閾値を例えばGth_alm1、Gth_alm2と段階的に設定することもできることを参考までに示してある。その場合、衝突までの時間が短くなるにつれて、報知から警報、さらには制動制御へと進むことが可能となる。
【0060】
図11に戻って、ステップS203において、減速度Gaが閾値Gth_alm以上である場合、図10のステップS109(運転者の乗り出し量の検出)に進み、以下上述したステップS115までを実行する。これにより、移動物体の接近に際して、減速度Gaから求め衝突までの推定時間が所定の時間よりも短い場合であって、言い換えれば衝突の危険度がある程度大きいと予想される場合であって、かつ運転者が前方への身を乗り出しているときに、運転者に報知をおこなってその接近を知らせることができる。その結果、運転者を必ずしも必要としない報知によるわずらわしさからさらに解放させることができる。
【0061】
図13は、移動物体接近において、自車両の行動を考慮した上で報知をおこなう場合の制御フローである。図13のフローは、図2のように車両が交差点に向かう場合において、図10のステップS107とステップS109の間で実行される。接近移動物体が特定された後、ステップS301において、自車両の行動を検出する。その検出は、処理装置10(自車両情報取得部32)が、車両状態センサ14から取得したアクセルペダルやブレーキペダルの位置、ブレーキの油圧等の情報に基づいておこなう。
【0062】
図13のステップS303において、自車両が交差点に進行しようとしているかを判定する。例えば、処理装置10は、ブレーキペダルが開放され、かつアクセルペダルが所定量以上踏み込まれている場合、あるいはブレーキペダルの位置に拘わらずアクセルペダルが所定量以上踏み込まれている場合、自車両が交差点に進行しようとしていると判定する。自車両が進行しようとしていない場合は報知のための制御処理は終了する。
【0063】
自車両が進行しようとしている場合、図10のステップS109(運転者の乗り出し量の検出)に進み、以下上述したステップS115までを実行する。これにより、移動物体の接近に際して、自車両がまさに進行しようしている場合であって、かつ運転者が前方への身を乗り出しているときに、運転者に報知をおこなってその接近を知らせることができる。その結果、運転者を必ずしも必要としない報知によるわずらわしさからさらに解放させることができる。
【0064】
上述した実施形態は一例でありこれに限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で多様な変形が可能である。本発明は、基本的にシートベルトを有するあらゆる車両に適用することが可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行安全装置に関し、より具体的には、車両と当該車両に接近してくる移動物体との衝突を回避するための安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点での出合い頭の車両の衝突事故は、今も昔も数多く発生している。そのうち、運転者の前方左右の確認不足が主因となって発生する、側方から接近してくる車両との衝突事故は跡を絶たない。特に見通しの悪い交差点ではその傾向は顕著である。
【0003】
特許文献1は、車両用衝突警報装置を開示する。この車両用衝突警報装置は、車両の衝突が予知された場合に、その衝突方向を車両のルームミラーやサイドミラーに設けた発光手段を光らせることにより運転者に知らせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】公開特許公報 特開2007−314016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明では、車両の衝突が予知されたときに一律に発光手段を光らせるので、例えば運転者が既に接近車両を認識している場合は、運転者はその発光がかえって煩わしいと感じてしまう。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の課題を改善し、見通しの悪い交差点等において、運転者が前方の安全を確認しようとしている場合にのみ、運転者に衝突の可能性のある移動物体の存在を知らせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両の走行安全装置を提供する。その走行安全装置は、車両に設けられ、該車両の周辺の物体を検出する物体検出手段と、車両の走行状態を検出するための走行状態検出手段と、検出された物体のうち、車両の進行経路に接近してくる移動物体を特定する移動物体特定手段と、運転者の前方への乗り出しの有無を判定する乗り出し判定手段と、接近してくる移動物体があり、かつ運転者が前方へ乗り出しているときに、運転者に移動物体の接近を知らせる報知手段と、を備える。
【0008】
本発明によれば、運転者が見通しの悪い交差点等で前方の確認をしているまさにその時に運転者に接近してくる移動物体の存在を的確に知らしめることにより、運転者の前方確認をアシストして移動物体との衝突を回避することができる。逆に、運転者の動作から既に接近する移動物体に気付いていると思われるような場合には報知が行われないため、運転者は必ずしも必要としない報知による煩わしさから解放される。
【0009】
本発明の一形態によると、移動物体特定手段は、接近してくる移動物体の進行経路を推定することを含み、車両の走行安全装置は、車両の走行状態および進行経路と前記接近してくる移動物体の進行経路の情報から、車両と移動物体の衝突危険度を判定する手段をさらに備え、報知手段は、衝突危険度が所定の範囲にある場合、移動物体の接近の報知をおこなう。
【0010】
この本発明の一形態によれば、車両と移動物体の衝突危険度がある程度高い場合に移動物体の接近の報知をおこなうので、衝突危険度が低いような場合には、あえてその報知をしないことにより、運転者を報知による煩わしさから解放させることができる。すなわち、移動物体の接近の報知の有効性が高いと思われる場合にのみ運転者にその報知をおこなうことができる。
【0011】
本発明の一形態によると、走行状態検出手段は、車両が進行しようとしているかを検出し、報知手段は、車両が進行しようとしている場合に、移動物体の接近の報知をおこなう。
【0012】
この本発明の一形態によれば、車両が交差点等へまさに進行しようとしているときに、移動物体の接近の報知をおこなうので、運転者が必要とする情報をタイムリーに提供することができる。逆に、車両が進行しようとしていない場合は、運転者を必ずしも必要としない報知による煩わしさから解放させることができる。
【0013】
本発明の一形態によると、報知手段は発光手段を含み、当該発光手段は、運転者が前方へ乗り出しているときのみに運転者が発光を視認できるように、前記車両内で、前方へ乗り出した運転者の頭の位置に向けて発光するように設けられる。
【0014】
この本発明の一形態によれば、たとえ、乗り出し判定手段が乗り出しの有無を誤判定したとしても、運転者が実際に前方に乗り出さないと発光手段の発光を認識できないので、運転者は誤判定による報知の煩わしさから解放される。また、乗り出し判定手段の誤判定の精度を必要以上に高くしなくて済むので、結果として、走行安全装置を廉価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に従う、走行安全装置のブロック図である。
【図2】交差点での車両接近の様子を示す図である。
【図3】シートベルト周りの図である。
【図4】シートベルトセンサユニットの構成例を示す図である。
【図5】シートベルトの引出し量と運転者の前方への乗り出しとの関係を示す図である。
【図6】荷重センサを示す図である。
【図7】荷重センサ出力の差分と運転者の乗り出し量との関係を示す図である。
【図8】本発明の報知装置の構成を示す図である。
【図9】本発明の車両内での報知装置の配置を示す図である。
【図10】本発明の移動物体接近の報知をする場合の制御フローである。
【図11】本発明の衝突の危険度を考慮した制御フローである。
【図12】本発明の減速度と車両が接近移動物体と衝突するまでの推定時間との関係を示す図である。
【図13】本発明の自車両の行動を考慮した制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に従う、車両に搭載される、車両の走行安全装置100のブロック図である。走行安全装置100は、処理装置10と、外界センサ12と、車両状態センサ14と、運転者乗り出しセンサ16と、ナビゲーション装置18と、報知装置20とを備えている。
【0017】
処理装置10は、中央処理装置(CPU)およびメモリを備えるコンピュータである電子制御装置(ECU)である。図には、処理装置10によって実現される機能がブロックとして表されている。この実施形態では、処理装置10は、物体情報取得部30、自車両情報取得部32、運転者乗り出し判定部34、接近移動物体特定部36、衝突危険度判定部38、および衝突回避制御部40を備える。処理装置10の各機能の詳細については後述する。なお、処理装置10は、ナビゲーション装置18の一部として一体的にあるいは付随する装置として構成してもよい。
【0018】
外界センサ12は、この実施形態では、車両の前部に設けられ、車両の周辺に存在する物体を検出する。好ましくは、外界センサ12は、例えば図2の符号56で例示されるように、車両の進行経路に接近してくる移動する物体を検出するため、車両の前方の左および(または)右の所定領域を検知するように、車両の前部の左端部および(または)右端部(たとえば、フロントバンパの左端部および(または)右端部)あるいは前端中央部に設けられる。外界センサ12は、たとえばミリ波などの電磁波によるレーダ装置あるいは車両の周辺を撮像する撮像装置によって構成することができる。
【0019】
ここで、レーダ装置は、任意の既知の適切なレーダ装置で実現されることができる。レーダ装置は、たとえば、自車両の外界に設定された検出対象領域を、複数の角度領域に分割し、各角度領域を走査するように電磁波の発信信号を発信する。各発信信号が、自車両の外部の物体(たとえば、他車両や構造物など)によって反射されることで生じた反射信号を受信し、レーダ装置から該物体までの距離や方位を示す信号を生成し、処理装置10に出力する。
【0020】
撮像装置は、任意の既知の適切な撮像装置で実現することができる。撮像装置は、1つまたは複数のカメラにより撮像された画像を取得し、該画像データを処理装置10に出力する。
【0021】
車両状態センサ14は、自車両の状態を各種パラメータとして検出する複数のセンサの総称として記載されている。車両状態センサ14は、例えば、自車両の速度を検出するセンサ、アクセルペダルやブレーキペダルの位置を検出するセンサ、ブレーキの油圧を検出するセンサ等を含む。自車両の速度を検出するセンサは、任意の既知の適切な手段により実現することができ、たとえば、自車両の駆動輪の回転速度(車輪速)を検出する車輪速センサや、自車両の速度を検出する車速センサや、車体に作用する加速度を検知する加速度センサにより実現することができる。アクセルペダルやブレーキペダルの位置を検出するセンサは、ペダルの踏み込み量に応じて移動するペダルの駆動部の位置を検出する機械式あるいは光電式スイッチなどで実現される。車両状態センサ14の出力(検出信号)は処理装置10に入力される。
【0022】
運転者乗り出しセンサ16は、車両の運転席における運転者の乗り出し量を検出する。運転者乗り出しセンサ16としては、例えばシートベルトセンサや荷重センサ等が該当する。運転者乗り出しセンサ16の出力(検出信号)は処理装置10に入力される。運転者乗り出しセンサ16による運転者の乗り出し量の検出の詳細については後述する。
【0023】
ナビゲーション装置18は、出力部、入力部、記憶手段等を備え、出力部はディスプレイとスピーカを含む。記憶手段には、地図データと当該地図データの道路情報が格納される。その道路情報には、各道路についての属性を示す属性情報(道路の種別、道路の形状等)が含まれる。ナビゲーション装置18は、GPS信号やジャイロセンサの信号から車両の現在位置を算出する。ナビゲーション装置18は、車両状態センサ14から自車両の速度信号を得て、走行に最適なルート等を選定する。ナビゲーション装置18は、リアルタイムな交通情報を所定のサーバから取得する通信機能を有する通信部(図示なし)を備えることができる。交通情報には、例えば渋滞、工事、交通規制等に関する情報が含まれる。ナビゲーション装置18で得られた情報(車両の位置、予定走行ルート、道路の種別、道路の形状等)は、適宜必要に応じて処理装置10へ送られる。
【0024】
報知装置20は、処理装置10からの制御信号を受けて、車両の運転者に報知を行う。報知装置20は、より具体的には、触覚的伝達装置、視覚的伝達装置、聴覚的伝達装置のうち、任意の1つまたは複数の装置を用いて実現することができる。本発明は、このうち特に視覚的伝達装置を用いて報知をおこなうところに特徴がある。
【0025】
触覚的伝達装置は、たとえばシートベルト装置や操舵制御装置などであって、処理装置10から出力される制御信号に応じて、たとえばシートベルトに所定の張力を発生させて、運転者に知覚可能な締め付け力を作用させたり、ステアリングホイールに運転者が触覚的に知覚可能な振動を発生させることにより、運転者に知らせる。
【0026】
視覚的伝達装置は、たとえば表示装置などであって、処理装置10からの制御信号に応じて上述した所定の報知や警報を表示したり、所定の警告灯を点滅ないし点灯させることによって、運転者に知らせる。この視覚的伝達装置についてはさらに後述する。
【0027】
聴覚的伝達装置は、たとえばスピーカなどであって、処理装置10からの制御信号に応じて、上述した所定の報知や警報を音声として出力することによって、運転者に知らせる。
【0028】
ここで、図1の処理装置10の各機能について説明する。物体情報取得部30は、外界センサ11の出力信号を所定時間間隔で取得し、該出力信号に基づいて、車両周辺に存在する物体のそれぞれについて、該物体の位置、速度および進行方向を含む物体情報を取得する。外界センサ11がレーダ装置の場合には、レーダ装置から出力される信号に基づいて、該物体の位置を求めることができる。外界センサ11が撮像装置の場合には、該撮像装置から出力される画像データから、撮像されている物体を抽出し、該物体の該画像内における位置に基づいて、該物体の位置を求めることができる。該物体の位置を追跡することにより、該物体の速度および進行方向を求めることができる。例えば、所定時間における該物体の位置の移動距離を該所定時間で除算することによって、物体の速度を求めることができる。
【0029】
自車両情報取得部32は、車両状態センサ12の各種出力信号を、上記の所定時間間隔で取得し、該出力信号に基づいて、自車両の速度を含む自車両情報を取得する。自車両情報取得部32は、さらにナビゲーション装置18から、現在の位置や予定走行ルートなどを取得する。
【0030】
接近移動物体特定部36は、物体情報取得部30で取得された車両周辺に存在する物体の情報から、自車両の進行経路に接近してくる移動物体を特定する。例えば、移動物体の進行方向および速度と自車両の進行方向および速度に基づいて、接近してくる移動物体、言い換えれば交差する可能性のある移動物体を特定する。
【0031】
図2は交差点に進行してくる車両と移動物体(車両)の接近の様子を示す図である。図2の縦方向の道路上の車両50は交差点の手前の「止まれ」表示の前で一時停止した後、走行を再開したばかりであるとする。車両50は交差点を矢印58の方向に進行する。車両50の左先端部には外界センサ56が設置されている。なお、図の外界センサ56はわかりやすくするために誇張して大きく描かれているが、実際には車両の表面から突出しないように設置される。
【0032】
図2の水平方向の道路上では2つの車両52、54が交差点に向かって走行している。物体情報取得部30は、外界センサ56からの検出信号に基づき、2つの車両52、54の走行方向と速度を検出する。車両52を例にとると、走行方向60における速度が検出される。物体情報取得部30は、同時に車両52が走行方向60に沿って走行した場合の自車両50との距離Dを求める。接近移動物体特定部36は、これらの情報を物体情報取得部30から取得して、接近してくる車両52、54を特定し、その接近車両の位置、走行方向、速度などの情報を得る。そして、自車両50と車両52が距離Dの地点まで来るまでの時間を求めて、その時間を比較して、両車両が交差する可能性があるか否かを判定する。その可能性がある移動物体を接近移動物体として特定する。
【0033】
運転者乗り出し判定部34は、運転者乗り出しセンサ16が検出した運転者の乗り出し量から運転者の前方への乗り出しの有無を判定する。この運転者の前方への乗り出しの有無は、詳細は後述するように、報知装置20による報知をおこなわせるか否かの判断基準(条件)となる。
【0034】
最初に、図3〜図5を参照しながら、運転者乗り出しセンサ16の一実施例であるシートベルトセンサ80を用いて、運転者の前方への乗り出しの有無を判定する方法について説明する。
【0035】
図3は、シートベルト周りの図である。シートベルト74は、シートベルト74の巻き取り器78から引き出され、バックル76が装着部81の開口82に挿入される。シートベルトセンサ80は、シートベルト74の巻き取り器78内に設けられ、シートベルト74の移動量、すなわち引出し量(m)あるいは巻き取り量(m)を検出する。シートベルトセンサ80の出力信号は処理装置10に送られる。シートベルトセンサ80は、巻き取り器78内に例えば1つのセンサユニットとして設置される。
【0036】
図4は、そのセンサユニットの構成例を示す図である。センサユニットは、磁気ディスク90と2つのホール素子(IC)92、94を含む。磁気ディスク90の外周部には、円周方向に沿ってN極とS極が交互に配置されている。シートベルトの移動(引き出しまたは巻き取り)に応じて、磁気ディスク90は中心軸CTの周りで回転する。磁気ディスク90の回転の際に、ホール素子92、94は、A相パルスS1、B相パルスS2を出力する。波形96、98はパルスS1、S2の出力例である。パルスS1、S2の1周期は、磁気ディスク21の外周部のN極とS極の1セットがホール素子92または94の前を横切ったときの出力に相当する。
【0037】
ホール素子92、94は所定の距離をおいて置かれているので、パルス96、98には位相差ΔFが生ずる。図4では、パルスS2の位相が遅れているが、磁気ディスク90の回転方向が逆になると、パルスS1の位相が遅れることになる。磁気ディスク90の回転方向は、シートベルトの移動方向に対応しているので、パルスS1、S2のどちらの位相が遅れているかを検知することによって、シートベルトが引き出されているのか巻き取られているのかを判断することができる。さらに、シートベルトの移動量(m)は磁気ディスク90の回転量に相関し、かつ磁気ディスク90の回転量はパルス96、98の長さ(パルス数)に相関するので、パルス96、98のパルス数をカウントすることにより、シートベルトの移動量(m)を算出することができる。すなわち、1パルス=ベルト長ΔL(m)が成り立つ。
【0038】
次に運転者乗り出し判定部34による、シートベルトセンサ80が検出したシートベルト74の引出し量から運転者の前方への乗り出しの有無を判定する方法を説明する。図5は、シートベルトの引出し量と運転者の前方への乗り出しとの関係を示す図である。(a)は運転者を横から見た図であり、(b)は運転者を上から見た図である。図5は右ハンドルを想定している。図5において、ハンドル84、ダッシュボード85、フロントウィンドウシールド86、シート87に対して、運転者の位置が符号A、B、B1、B2で示されている。
【0039】
通常の走行状態では符号Aに示すように、運転者は通常シート87に背をもたれて正面を見ながら運転する。この場合のシートベルト74の引出し量は、所定長さL1以下である場合が多い。
【0040】
車両が例えば図2で例示したような交差点、特に見通しの悪い交差点に入るような場合、運転者は符号B、B1、B2に示すように、シート87から背を離して、身を前方(正面、右側あるいは左側)に乗り出して前方を注視することがある。この場合、運転者が身を乗り出す分だけシートベルト74は余計に巻き取り器78(図3)から引き出され、その引き出し量は、運転者の身を乗りだす方向(例えば、図5(b)のB1とB2)で違いがあるが、少なくともL1より長い所定長さL2以上になる場合が多い。
【0041】
この引き出し量L1、L2は予め運転者の動作をモニターして決められる。ここで、しきい値Lthを、
L1<Lth<L2
の関係を満たすように設定する。そして、シートベルト74の引き出し量Lが、
L≧Lth
となる場合に、運転者の前方への乗り出しがあると判定し、逆にLがLthよりも小さい場合は、その乗り出しが無いと判定する。なお、左ハンドルの場合も同様である。このように、シートベルトの引き出し量から運転者の前方への乗り出しの有無を判定する。このシートベルト74の引き出し量のしきい値Lthは、予め処理装置10のメモリ(図示なし)に保管される。
【0042】
次に、図6と図7を参照しながら、運転者乗り出しセンサ16の他の実施例である荷重センサ102を用いて、運転者の前方への乗り出しの有無を判定する方法について説明する。
【0043】
図6は、荷重センサ102を示す図である。荷重センサ102は、シート104の内部に設置される。荷重センサ102は、圧電素子や歪みゲージを用いたタイプが使われる。荷重センサ102は、2つの荷重検出部106、108と差動出力部110を含む。検出部106はシート104の前方に設けられ、検出部108はシート104の後方に設けられる。検出部は少なくともシートの前と後に1つづつあればよく、3つ以上設けてもよい。荷重検出部106、108は、荷重(圧力)に応じた検出信号P1、P2を差動出力部110に送る。差動出力部110は、検出信号P1とP2の差分出力ΔP(=P1−P2)を処理装置10へ送る。
【0044】
図7は、差分ΔPと運転者の乗り出し量との関係を示す図である。図7の関係は予め求められ、処理装置10のメモリに格納されている。図7において、乗り出し量は、運転者が通常の運転時にシートに背をもたれている状態から前方へ移動したときの移動長さ(cm)として求められる。例えば、図5(b)において、位置Aから位置B1、B2への運転者の頭の移動量D(cm)として求められる。図7において、乗り出し量がD1(cm)以上の場合に、運転者が身を乗り出しているとする。そのD1(cm)に対応する差分出力ΔPが判定のしきい値ΔPthとなる。運転者乗り出し判定部34は、図7の関係を用いて、差動出力部110から送られてきた差分出力ΔPがしきい値ΔPth以上の場合に、運転者が前方へ身を乗り出していると判定する。
【0045】
衝突危険度判定部38は、接近移動物体特定部36において特定された接近移動物体の情報(走行方向、速度)と、自車両情報特定部32からの自車両の情報(走行方向、速度)と、ナビゲーション装置18から得られる自車両の情報(位置、予定走行ルート等)とから、自車両と特定された接近車両との衝突の危険度を判定する。この衝突の危険度の判定については後述する。
【0046】
衝突回避制御部40は、衝突危険度判定部38が判定した衝突危険度に応じて、報知装置20の制御信号を作り、報知装置20に送る。
【0047】
ここで、図8と図9を参照しながら、視覚的伝達装置としての報知装置20の一実施形態について説明する。図8は報知装置20の構成を示す図である。図9は車両内での報知装置20の配置を示す図である。図8の報知装置20は、3つの発光素子201から構成される。発光素子201は、指向性のある光源からなり、例えば狭角タイプのLEDが該当する。ここで狭角タイプとは、例えば光強度の半値角が約7度〜15度程度を意味する。発光素子201は処理装置10(図1)に接続され、所定のタイミング、発光時間、周期、あるいは強度で発光するように制御される。
【0048】
図8の構成では、各発光素子201の光軸205が、光の投射方向に揃うように、3つの発光素子201が連結されている。遮光フード203は、後述するように、運転者の体の位置に応じて発光素子の光を見えなくするために、発光素子201に接合される。なお、発光素子の数は3つに限られず任意に設定でき、1つでもよく、あるいはアレイ状の形態(LEDアレイ等)を用いてもよい。発光素子201の発光色は、運転者の注意を引きやすい色(例えば赤色)が望ましいが、これに限られず目立ちやすい他の色(橙色、緑色、白色等)であってもよい。また、遮光フード203の代わりに、発光素子201の表面部分に遮光パターンを形成してもよい。
【0049】
図9は図5と同様、右ハンドルの運転者A、Bの前方への乗り出しの様子を示す。図9において、報知装置20は、運転席前方の右側と左側のフロントウィンドウシールド86近くのダッシュボード85の上にそれぞれ設置される。車室の両側に報知装置20を設けるのは、いずれか一方を発光させることにより、左右どちらから移動物体が接近してくるかを運転者に知らせるためである。
【0050】
図9の領域207は、報知装置20が発光した際の光の投射範囲を示す。運転者がシートに背をもたれた通常の状態Aでは、投射範囲207の光を視認することはできない。運転者が前方へ身を乗り出した状態Bにおいて投射範囲207の光を視認することができる。このように、投射範囲207は、運転者が前方へ体を乗り出した状態Bで初めて見えるように設定される。その設定は、図8の報知装置20の発光素子の光軸205と遮蔽フード207の位置を調整することによりおこなわれる。より具体的には、例えば、運転者の頭の位置が図9のBの位置にあるときに、発光素子の光軸205がその頭の方向に延びる(沿う)ように、光軸205と遮蔽フード207の位置が予め調整される。あるいは、簡単な駆動機構を発光素子に設けて、運転者の乗り出し量に連動して発光素子の光軸205が動くようにしてもよい。
【0051】
運転者は、シートに背をもたれた通常の状態Aでは報知装置20の発光を視認することができないので、既に接近移動物体を認知している場合等における報知の煩わしさから解放される。つまり、見通しが良好であり報知が不要の場合、運転者は図9のAの状態であるので報知装置20の発光は視認されず、煩わしくない。
【0052】
次に、走行安全装置100の動作について、図10から図12を参照しながら説明する。図10は、移動物体接近の報知をする場合の制御フローである。ステップS101において、外界センサ12は、車両の周辺に存在する物体を検知する。ステップS103において、車両状態センサ14は、自車両の状態(速度、アクセルペダルの位置、ブレーキペダルの位置、ブレーキの油圧等)を検知する。ステップS105において、処理装置10(接近移動物体特定部36)は、検知された周辺物体の情報および自車両の情報から、接近してくる移動物体を特定する。ステップS107において、接近移動物体があるか判定し、ない場合は制御フローが終了する(117)。
【0053】
接近移動物体がある場合、ステップS109において、運転者乗り出しセンサ16は、車両の運転席における運転者の乗り出し量を検出する。具体的には、上述したように、乗り出し量は、シートベルトの引き出し量Lあるいは荷重センサの差分出力値ΔPとして検出される。例えば、シートベルトセンサ80の場合、既に図3と図4を用いて説明したように、パルス96、98の数をカウントすることにより算出する。パルス数のカウントは、シートベルト74が、巻き取り器78に完全に巻き取られた(格納された)とき、あるいは巻き取り器78から引き出されて装着されたときのカウント(長さ)を基準(ゼロ)として行う。
【0054】
ステップS111において、処理装置10(運転者の乗り出し判定部34)は、検知された乗り出し量から運転者の前方への乗り出しの有無を判定する。その判定方法は、図5あるいは図7を参照しながら既に説明した通りである。ステップS113において、処理装置10(衝突危険度判定部38)は、運転者の前方への乗り出しがない場合、制御フローが終了させる(117)。運転者が接近移動物体を認識している可能性が高く危険度が低いと推定でき、あえて報知をしなくてもよいと考えられるからである。
【0055】
運転者の前方への乗り出しがある場合、処理装置10(衝突危険度判定部38)は、運転者が接近移動物体を確認しようとしており、もし運転者の前方確認不足となる場合に、接近移動物体と衝突の可能性があると判定する。そして、ステップS115において、移動物体の接近が運転者に報知される。具体的には、処理装置10(衝突回避制御部40)は、報知装置20に対して移動物体の接近の報知を指示し、報知装置20はその報知を行う。その際、車両の進行方向に対して左側から移動物体が接近する場合は、車室の左側の報知装置が発光してその左からの接近を知らせ、逆に右側から接近する場合は車室の右側の報知装置が発光してその右からの接近を知らせる。これにより、運転者は左右どちらから移動物体が接近してくるかを瞬時に把握することができる。
【0056】
このように、本発明によれば、移動物体の接近に際して、運転者が見通しの悪い交差点等の前で身を乗り出して前方を確認しようとしている場合に、運転者に報知をおこなってその接近(方向も)を知らせることができる。また、その接近に気がついていると推定される場合は、報知をおこなわず、運転者を余計な報知によるわずらわしさから解放させることができる。
【0057】
図11は、移動物体接近において、衝突の危険度(減速度)を考慮した上で報知をおこなう場合の制御フローである。図11のフローは、図10のステップS107とステップS109の間で実行される。接近移動物体が特定された後、ステップS201において、減速度Gaを算出する。減速度Gaは、自車両が接近移動物体との衝突を回避するための減速の加速度を意味する。図2を参照して具体的に説明すると、走行する自車両50が接近車両52との衝突を回避するためには、距離Dの位置までに自車両50が停止する必要がある。そのためには、自車両50は、自車両50が初速度V0で走行するとした場合、負の加速度a、
a=V02/2D (1)
で減速走行する必要がある。(1)式の加速度aを重力加速度gを用いて表わした、
ag=V02/(2D・g) (2)
が、減速度Ga(G)(=ag)となる。
【0058】
ステップS203において、減速度Ga(G)が所定の閾値Gth_almより大きいかを判定する。図12は閾値Gth_almについて説明するための図である。図2と図12を参照しながらこの閾値Gth_almについて説明する。図12において、グラフの縦軸は減速度Ga(G)であり、横軸は車両が接近移動物体と衝突するまでの推定時間(s)である。横軸右端の衝突時を基準(ゼロ)として、それよりも前の時間であることを示すために負の値で時間を示している。図2の例では、距離Dの位置が衝突時となるので推定時間ゼロとなり、その位置から離れる(図の手前に来る)につれて負の時間が大きくなる。
【0059】
図12において、車両接近の報知を行う閾値Gth_almを約0.16Gと定めると、衝突までの推定時間は約1.35sとなる。この設定は、車両の制動性能や安全性能等を考慮して、予め任意の値に設定される。なお、図12には、報知のみならず、警報あるいは制動制御もおこなえるように、閾値を例えばGth_alm1、Gth_alm2と段階的に設定することもできることを参考までに示してある。その場合、衝突までの時間が短くなるにつれて、報知から警報、さらには制動制御へと進むことが可能となる。
【0060】
図11に戻って、ステップS203において、減速度Gaが閾値Gth_alm以上である場合、図10のステップS109(運転者の乗り出し量の検出)に進み、以下上述したステップS115までを実行する。これにより、移動物体の接近に際して、減速度Gaから求め衝突までの推定時間が所定の時間よりも短い場合であって、言い換えれば衝突の危険度がある程度大きいと予想される場合であって、かつ運転者が前方への身を乗り出しているときに、運転者に報知をおこなってその接近を知らせることができる。その結果、運転者を必ずしも必要としない報知によるわずらわしさからさらに解放させることができる。
【0061】
図13は、移動物体接近において、自車両の行動を考慮した上で報知をおこなう場合の制御フローである。図13のフローは、図2のように車両が交差点に向かう場合において、図10のステップS107とステップS109の間で実行される。接近移動物体が特定された後、ステップS301において、自車両の行動を検出する。その検出は、処理装置10(自車両情報取得部32)が、車両状態センサ14から取得したアクセルペダルやブレーキペダルの位置、ブレーキの油圧等の情報に基づいておこなう。
【0062】
図13のステップS303において、自車両が交差点に進行しようとしているかを判定する。例えば、処理装置10は、ブレーキペダルが開放され、かつアクセルペダルが所定量以上踏み込まれている場合、あるいはブレーキペダルの位置に拘わらずアクセルペダルが所定量以上踏み込まれている場合、自車両が交差点に進行しようとしていると判定する。自車両が進行しようとしていない場合は報知のための制御処理は終了する。
【0063】
自車両が進行しようとしている場合、図10のステップS109(運転者の乗り出し量の検出)に進み、以下上述したステップS115までを実行する。これにより、移動物体の接近に際して、自車両がまさに進行しようしている場合であって、かつ運転者が前方への身を乗り出しているときに、運転者に報知をおこなってその接近を知らせることができる。その結果、運転者を必ずしも必要としない報知によるわずらわしさからさらに解放させることができる。
【0064】
上述した実施形態は一例でありこれに限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で多様な変形が可能である。本発明は、基本的にシートベルトを有するあらゆる車両に適用することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられ、該車両の周辺の物体を検出する物体検出手段と、
車両の走行状態を検出するための走行状態検出手段と、
検出された物体のうち、車両の進行経路に接近してくる移動物体を特定する移動物体特定手段と、
運転者の前方への乗り出しの有無を判定する乗り出し判定手段と、
接近してくる移動物体があり、かつ運転者が前方へ乗り出しているときに、当該運転者に移動物体の接近を知らせる報知手段と、
を備える、車両の走行安全装置。
【請求項2】
前記移動物体特定手段は、前記接近してくる移動物体の進行経路を推定することを含み、
前記車両の走行状態および進行経路と前記接近してくる移動物体の進行経路の情報から、前記車両と当該移動物体の衝突危険度を判定する手段をさらに備え、
前記報知手段は、当該衝突危険度が所定の範囲にある場合、前記移動物体の接近の報知をおこなう、請求項1に記載の車両の走行安全装置。
【請求項3】
前記走行状態検出手段は、前記車両が進行しようとしているかを検出し、
前記報知手段は、前記車両が進行しようとしている場合に、前記移動物体の接近の報知をおこなう、請求項1に記載の車両の走行安全装置。
【請求項4】
前記報知手段は発光手段を含み、当該発光手段は、前記運転者が前方へ乗り出しているときのみに当該運転者が発光を視認できるように、前記車両内で、前方へ乗り出した運転者の頭の位置に向けて発光するように設けられる、請求項1〜3のいずれかに記載の車両の走行安全装置。
【請求項1】
車両に設けられ、該車両の周辺の物体を検出する物体検出手段と、
車両の走行状態を検出するための走行状態検出手段と、
検出された物体のうち、車両の進行経路に接近してくる移動物体を特定する移動物体特定手段と、
運転者の前方への乗り出しの有無を判定する乗り出し判定手段と、
接近してくる移動物体があり、かつ運転者が前方へ乗り出しているときに、当該運転者に移動物体の接近を知らせる報知手段と、
を備える、車両の走行安全装置。
【請求項2】
前記移動物体特定手段は、前記接近してくる移動物体の進行経路を推定することを含み、
前記車両の走行状態および進行経路と前記接近してくる移動物体の進行経路の情報から、前記車両と当該移動物体の衝突危険度を判定する手段をさらに備え、
前記報知手段は、当該衝突危険度が所定の範囲にある場合、前記移動物体の接近の報知をおこなう、請求項1に記載の車両の走行安全装置。
【請求項3】
前記走行状態検出手段は、前記車両が進行しようとしているかを検出し、
前記報知手段は、前記車両が進行しようとしている場合に、前記移動物体の接近の報知をおこなう、請求項1に記載の車両の走行安全装置。
【請求項4】
前記報知手段は発光手段を含み、当該発光手段は、前記運転者が前方へ乗り出しているときのみに当該運転者が発光を視認できるように、前記車両内で、前方へ乗り出した運転者の頭の位置に向けて発光するように設けられる、請求項1〜3のいずれかに記載の車両の走行安全装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−108209(P2011−108209A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265739(P2009−265739)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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