説明

車両の路面標識検出装置

【課題】 路面標識の認識精度を向上させる。
【解決手段】 検知ライン設定部24は外界撮像カメラ11から入力される画像データ上において、道路形状認識部23にて検知された自車両の走行路R内に、この走行路Rに沿って伸びる複数の検知ラインD,…,D,…,D(設定数nは任意の自然数であって、自然数kは1≦k≦n)を走行路Rの幅方向に所定間隔をおいて設定する。明るさ検知部25は各検知ラインD,…,D,…,D毎に長さ方向における明るさ(例えば、輝度や明度等)の変化を検知する。路面標識認識部26は、明るさ検知部25にて検知された各検知ラインD,…,D,…,D毎の長さ方向における明るさの変化位置に基づき、所定の路面標識(例えば、停止線等)の有無および路面標識までの距離を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の路面標識検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばナビゲーション装置の地図データを構成する各地点の座標値に基づき、自車両の現在位置から交差点や一時停止地点までの距離を算出し、自車両の乗員に交差点や一時停止地点が存在することを報知したり、減速等の運転操作の実行を促す警報を出力するナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
また、従来、例えば車載カメラの撮影画像に対する画像処理により自車両の進行方向における停止線の有無を検出する際に、車載ナビゲーションの地図データに基づき所定交差点(例えば、信号のない交差点等)の有無を判定することで、停止線の検出精度を向上させる装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−47981号公報
【特許文献2】特開2000−46574号公報
【特許文献3】特開2004−86363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術に係るナビゲーション装置において、地図データやGPS(Global Positioning System)信号等の測位信号に基づく算出処理によって自車両の現在位置から交差点や一時停止地点までの距離を検出する場合には、所望の算出精度を確保することが困難であり、例えば車両を一時停止地点で一時停止させる際に、この一時停止地点を超えないように停止させることができなくなる虞がある。
また、上記従来技術に係る装置において、撮影画像の画像処理に基づき停止線の有無を検出する場合には、例えば予め記憶している所定パターン(例えば輪郭等)に基づき画像データ上の検索を行い、所定パターンとの類似性に応じて検知対象物を抽出する等の煩雑な処理が必要となることに加えて、このような画像処理では、たとえ所定交差点の有無の判定結果を参照したとしても、停止線と、他の路面標識(例えば、ゼブラライン等)あるいは他の路面標識の一部とを明確に識別することが困難であるという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、停止線等の路面標識の認識精度を向上させることが可能な車両の路面標識検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の車両の路面標識検出装置は、自車両の進行方向の走行路を含む所定領域を撮影する撮影手段(例えば、実施の形態での外界撮像カメラ11)と、前記撮影手段により撮影された撮影画像において、前記走行路に沿って伸びる複数の検知ラインを設定する検知ライン設定手段(例えば、実施の形態での検知ライン設定部24)と、該検知ラインの長さ方向における明るさの変化を検知する明るさ検知手段(例えば、実施の形態での明るさ検知部25)と、該明るさ検知手段の検知結果に基づき、前記走行路上の路面標識を認識する路面標識認識手段(例えば、実施の形態での路面標識認識部26)とを備えることを特徴としている。
【0005】
上記構成の車両の路面標識検出装置によれば、撮影手段により撮影された撮影画像に対して、例えば各種の路面標識を検知対象物とした特徴量算出および形状判別等の煩雑な認識処理を実行する必要無しに、撮影画像上に設定した検知ラインの長さ方向における明るさの変化を検知するだけの単純な処理によって所望の路面標識の存在を容易に検知することができる。
【0006】
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の路面標識検出装置では、前記路面標識認識手段は、前記明るさ検知手段により検知された複数の検知ラインの長さ方向における明るさの変化位置に基づき、前記走行路上の路面標識を認識することを特徴としている。
【0007】
上記構成の車両の路面標識検出装置によれば、複数の検知ラインの長さ方向における明るさの変化位置が所望の路面標識の形状を成すか否かを判定することで所望の路面標識の有無を容易に検知することができる。しかも、予め撮影手段により撮影された撮影画像上の適宜の位置に対して、自車両からの実際の距離の情報を記憶しておくことで、所望の路面標識の存在に加えて、認識した路面標識までの距離を検知することができる。
【0008】
さらに、請求項3に記載の本発明の車両の路面標識検出装置は、予め走行路の半径あるいは曲率を含む走行路の形状を記憶する自車両に搭載されたデータ記憶手段(例えば、実施の形態での地図データ記憶部14)または自車両の外部から前記走行路の形状を取得するデータ取得手段を備え、前記検知ライン設定手段は、前記データ取得手段により取得された前記走行路の形状に応じて前記複数の検知ラインの設定数を設定することを特徴としている。
【0009】
上記構成の車両の路面標識検出装置によれば、例えばカーブ形状等の走行路の形状に応じて、適切な設定数の検知ラインを設定することができ、隣り合う検知ライン間の間隔が過剰に狭くなってしまったり、所望の路面標識の線幅を超えて過剰に広くなってしまうことを防止することができる。
【0010】
さらに、請求項4に記載の本発明の車両の路面標識検出装置では、前記検知ライン設定手段は、前記走行路の半径が小さくなることに伴い、あるいは、前記走行路の曲率が大きくなることに伴い、前記複数の検知ラインの設定数を減少させることを特徴としている。
【0011】
上記構成の車両の路面標識検出装置によれば、隣り合う検知ライン間の間隔が過剰に狭くなってしまうことを防止することができる。
【0012】
さらに、請求項5に記載の本発明の車両の路面標識検出装置では、前記検知ライン設定手段は、前記走行路の幅方向に所定間隔をおいて前記複数の検知ラインを設定することを特徴としている。
【0013】
上記構成の車両の路面標識検出装置によれば、例えば検知対象とされる所望の路面標識の線幅等に応じて、隣り合う検知ライン間の間隔を適切に設定することができる。
【0014】
さらに、請求項6に記載の本発明の車両の路面標識検出装置では、前記路面標識は停止線であることを特徴としている。
【0015】
上記構成の車両の路面標識検出装置によれば、相対的に重要度が高い停止線を的確に検知することができる。
【0016】
さらに、請求項7に記載の本発明の車両の路面標識検出装置では、前記検知ライン設定手段は、隣り合う前記検知ライン間の間隔を、前記停止線以外の路面標識の走行路幅方向の線幅よりも小さな値に設定することを特徴としている。
【0017】
上記構成の車両の路面標識検出装置によれば、停止線以外の路面標識であっても的確に検知することができる。
【0018】
さらに、請求項8に記載の本発明の車両の路面標識検出装置では、前記路面標識認識手段は、前記明るさ検知手段により検知された複数の検知ラインの長さ方向における明るさの変化位置が、所定数以上の検知ラインにおいて同等の距離位置である場合に、前記走行路上の路面標識は停止線であると認識することを特徴としている。
【0019】
上記構成の車両の路面標識検出装置によれば、複数の検知ラインの長さ方向における明るさの変化位置が、所定数以上の検知ラインにおいて同等の距離位置である場合には、走行路の幅方向に伸びる単一の線状領域からなる停止線を検知したと判断することができる。
【0020】
さらに、請求項9に記載の本発明の車両の路面標識検出装置では、前記路面標識認識手段は、前記明るさ検知手段により検知された単一の検知ラインの長さ方向における複数の明るさの変化位置において、隣り合う前記変化位置間の間隔が所定値以内である場合に、前記走行路上の路面標識は停止線であると認識することを特徴としている。
【0021】
上記構成の車両の路面標識検出装置によれば、単一の検知ラインの長さ方向において複数の明るさの変化位置が検知される場合であっても、隣り合う変化位置間の間隔が所定値以内である場合には、走行路の幅方向に伸びる単一の線状領域からなる停止線を検知したと判断することができる。
【0022】
また、請求項10に記載の本発明の車両の路面標識検出装置は、自車両の進行方向の走行路を含む所定領域であって、前記走行路に沿って互いに異なる前記所定領域を撮影する複数の撮影手段(例えば、実施の形態での外界撮像カメラ11,…,11)と、前記複数の撮影手段により撮影された複数の撮影画像毎に、明るさの変化を検知する明るさ検知手段(例えば、実施の形態での明るさ検知部25)と、該明るさ検知手段の検知結果に基づき、前記走行路上の路面標識を認識する路面標識認識手段(例えば、実施の形態での路面標識認識部26)とを備えることを特徴としている。
【0023】
上記構成の車両の路面標識検出装置によれば、複数の撮影手段の各検知対象エリアを、例えば自車両の走行路の長さ方向に沿った互いに異なる領域に設定することで、走行路の長さ方向に対する解像度を増大させることができ、例えば停止線等の相対的に単純な形状の路面標識に限らす、相対的に複雑な形状の路面標識を検知することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明の車両の路面標識検出装置によれば、撮影手段により撮影された撮影画像に対して、例えば各種の路面標識を検知対象物とした特徴量算出および形状判別等の煩雑な認識処理を実行する必要無しに、撮影画像上に設定した検知ラインの長さ方向における明るさの変化を検知するだけの単純な処理によって所望の路面標識の存在を容易に検知することができる。
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の路面標識検出装置によれば、所望の路面標識の有無を容易に検知することができ、しかも、予め撮影手段により撮影された撮影画像上の適宜の位置に対して、自車両からの実際の距離の情報を記憶しておくことで、所望の路面標識の存在に加えて、認識した路面標識までの距離を検知することができる。
【0025】
さらに、請求項3に記載の本発明の車両の路面標識検出装置によれば、例えばカーブ形状等の走行路の形状に応じて、適切な設定数の検知ラインを設定することができ、隣り合う検知ライン間の間隔が過剰に狭くなってしまったり、所望の路面標識の線幅を超えて過剰に広くなってしまうことを防止することができる。
さらに、請求項4に記載の本発明の車両の路面標識検出装置によれば、隣り合う検知ライン間の間隔が過剰に狭くなってしまうことを防止することができる。
【0026】
さらに、請求項5に記載の本発明の車両の路面標識検出装置によれば、例えば検知対象とされる所望の路面標識の線幅等に応じて、隣り合う検知ライン間の間隔を適切に設定することができる。
さらに、請求項6に記載の本発明の車両の路面標識検出装置によれば、相対的に重要度が高い停止線を的確に検知することができる。
【0027】
さらに、請求項7に記載の本発明の車両の路面標識検出装置によれば、停止線以外の路面標識であっても的確に検知することができる。
さらに、請求項8に記載の本発明の車両の路面標識検出装置によれば、停止線を適切に検知することができる。
さらに、請求項9に記載の本発明の車両の路面標識検出装置によれば、単一の検知ラインの長さ方向において複数の明るさの変化位置が検知される場合であっても、停止線を適切に検知することができる。
また、請求項10に記載の本発明の車両の路面標識検出装置によれば、複数の撮影手段の各検知対象エリアを、例えば自車両の走行路の長さ方向に沿った互いに異なる領域に設定することで、走行路の長さ方向に対する解像度を増大させることができ、例えば停止線等の相対的に単純な形状の路面標識に限らす、相対的に複雑な形状の路面標識を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の路面標識検出装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車両の路面標識検出装置10は、例えば、外界撮像カメラ11と、自車両情報検出部13と、地図データ記憶部14と、処理装置15と、報知装置17とを備えて構成されている。
【0029】
外界撮像カメラ11は、例えば可視光領域にて撮像可能なCCDカメラやC−MOSカメラ等からなるカメラ本体および画像処理部とを備えて構成されている。
カメラ本体は、例えばフロントウィンドウの車室内側でルームミラー近傍の位置に配置され、フロントウィンドウ越しに自車両の進行方向前方の所定検知範囲の外界を撮影する。
画像処理部は、カメラにより撮影して得た画像に対して、例えばフィルタリングや二値化処理等の所定の画像処理を行い、二次元配列の画素からなる画像データを生成して処理装置15へ出力する。
【0030】
自車両情報検出部13は、自車両情報として、例えば自車両の走行速度(車速)を検出する車速センサや、例えば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号等の測位信号や自車両の外部の情報発信装置から発信される位置信号や例えば道路上に配置された基点マーカとの磁気作用等、さらには、適宜のジャイロセンサや加速度センサ等の検出結果に基づいて自車両の現在位置や進行方向を検出する位置センサや、ヨー角(車両重心の上下方向軸回りの回転角度)やヨーレート(車両重心の上下方向軸回りの回転角速度)や操舵角(運転者が入力した操舵角度の方向と大きさ)を検出する各センサや、方向指示器やアクセル、ブレーキのオン/オフ状態を検知する各センサ等を備えて構成されている。
【0031】
地図データ記憶部14は、例えばハードディスク装置等の磁気ディスク装置や、例えばCD−ROMやCD−RやMOやDVD等の光ディスク装置等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からなる。そして、地図データ記憶部14は、例えばナビゲーション装置(図示略)や表示装置において地図を表示するための地図データとして、例えば道路の幅員データや複数の道路の交差角度や交差点の形状や位置等の道路情報を格納している。
【0032】
処理装置15は、例えば、自車両位置情報抽出部21と、自車両速度情報抽出部22と、道路形状認識部23と、検知ライン設定部24と、明るさ検知部25と、路面標識認識部26と、走行支援判定部27とを備えて構成されている。
【0033】
自車両位置情報抽出部21は、自車両情報検出部13にて検出した自車両情報から自車両の現在の位置情報を抽出する。
自車両速度情報抽出部22は、自車両情報検出部13にて検出した自車両情報から自車両の現在の速度情報を抽出する。
なお、自車両位置情報抽出部21および自車両速度情報抽出部22は、必要に応じて、例えば自車両情報検出部13での検出動作に要する時間を考慮して自車両の位置情報や速度情報の変動を補正し、自車両の現在の位置情報や速度情報を推定可能である。
【0034】
道路形状認識部23は、地図データ記憶部14に格納された地図データと、外界撮像カメラ11から入力される画像データとに基づき、自車両の進行方向の道路形状、例えば直線路やカーブ形状や交差点等の有無、道路の車線数等を検出する。
ここで、地図データ記憶部14に格納された地図データは、例えば、地図表示用のデータや車両の現在位置に基づくマップマッチングの処理に必要とされる道路座標データに加えて、経路探索や経路誘導等の処理に必要とされるデータ、例えば交差点等の所定位置の緯度及び経度に係るノードデータと、各ノード間の道路に係るリンクデータとを備えている。
【0035】
例えば、自車両の進行方向前方の道路上にカーブ形状および交差点が存在する場合、例えば図2に示すように、複数のノードデータN1,…,N4と、各ノード間を接続するリンクデータL1,L2,L3とが設定され、さらに、例えば交差点の位置を示すノードデータN2に対しては、緯度及び経度に加えて、信号の有無や複数の道路の交差角度や形状等の交差点情報が付加され、各リンクデータL1,L2,L3には、例えば道路種別(例えば、国道、県道等)、道路幅員情報(例えば、幅員データ等)、道路構造情報(例えば、車線数等)が付加されている。さらに、例えばカーブ形状に対応するリンクデータL1に対しては、緯度及び経度からなる形状補間点C1,C2で設定されている。
そして、道路形状認識部23は、地図データに含まれるノードデータとリンクデータとに基づき、例えば図2に示すように、曲率Rや極性や旋回角やカーブの長さ等のカーブの形状を認識すると共に、自車両Pの現在位置から交差点までの距離CL等を検知する。
【0036】
検知ライン設定部24は、外界撮像カメラ11から入力される画像データ上において、例えば図3(a)に示すように、道路形状認識部23にて検知された自車両の走行路R内に、この走行路Rに沿って伸びる複数の検知ラインD,…,D,…,D(設定数nは任意の自然数であって、自然数kは1≦k≦n)を、例えば走行路Rの幅方向に所定間隔(例えば、30cm間隔等)をおいて設定する。
ここで、検知ライン設定部24は、隣り合う複数の検知ラインD,…,D,…,D間の間隔を、停止線以外の路面標識(例えば、最高速度等の規制標識等)の走行路幅方向の線幅よりも小さな値に設定する。
さらに、検知ライン設定部24は、検知された走行路Rの形状に応じて複数の検知ラインD,…,D,…,Dの設定数nを設定する。
例えば図4に示すように、走行路Rがカーブ形状である場合には、画像データ上において走行路Rの遠方ほど各検知ラインD,…,D,…,D間の間隔が狭くなることから、例えば直線路等に比べて、各検知ラインD,…,D,…,Dの設定数nを低減するようになっている。つまり、検知ライン設定部24は、走行路Rの半径が小さくなることに伴い、あるいは、走行路Rの曲率が大きくなることに伴い、複数の検知ラインD,…,D,…,Dの設定数nを減少させる。
【0037】
明るさ検知部25は、検知ライン設定部24にて設定された各検知ラインD,…,D,…,D毎に対して、各検知ラインD,…,D,…,Dの長さ方向における明るさ(例えば、輝度や明度等)の変化を検知する。
例えば明るさ検知部25は、図3(b)に示すように、各検知ラインD,…,D,…,Dの長さ方向における適宜の位置を所定の基準位置からの画素数によって記述し、この画素数に応じた輝度の変化(例えば、輝度の増大および減少等)を検知する。即ち、基準位置からの画素数は自車両(特に、外界撮像カメラ11)からの距離に相当し、輝度の変化が生じている位置の自車両からの距離を検知することとなる。
なお、図3(b)においては、各検知ラインD,…,D,…,Dの輝度に対して、走行路内における各検知ラインD,…,D,…,Dの幅方向の位置に応じたオフセットが設定されている。また、この画像データ上の画素数と、この画素数に対応する実際の走行路上の位置に対する所定の基準位置からの距離とに対しては、例えば図3(c)に示すように、予め実測データ等に基づき算出された所定の対応関係が記憶されている。
【0038】
路面標識認識部26は、明るさ検知部25にて検知された各検知ラインD,…,D,…,Dの長さ方向における明るさの変化に基づき、路面標識(例えば、停止線等)の有無を検知する。
例えば、路面標識認識部26は、図3(b)に示すように、各検知ラインD,…,D,…,D毎に所定値以上の輝度の増大が検知される画素数に対応する位置が、所定数以上の検知ラインにおいて同等の距離位置である場合には、走行路の幅方向に沿って伸びる停止線Sを検知したと判断する。
ただし、路面標識認識部26は、例えば図5(a),(b)に示すように、所定数以上の検知ラインに亘って同等の距離位置に相対的に高い輝度の領域が検知された場合であっても、走行路の長さ方向に沿った、この領域の長さWが所定値以上である場合には、停止線Sの線幅を超える日照領域Q等を検知したと判断する。また、複数の検知ラインの同等の距離位置に相対的に高い輝度の領域が検知された場合でも、これらの検知ライン間の距離が所定値を超えて離れている場合には、例えば図8(b)に示すように、横断歩道の存在を予告する菱形標識Tを検知したと判断する。つまり、所定数以上の検知ラインに亘って同等の距離位置に相対的に高い輝度の領域が検知された場合、さらに、各検知ラインの長さ方向で隣り合う明るさの変化位置間の間隔が所定の値以内である場合には、停止線Sを検知したと判断する。
【0039】
走行支援判定部27は、路面標識認識部26にて認識された自車両の進行方向前方に存在する路面標識と、道路形状認識部23にて検知された自車両の進行方向の道路形状と、自車両位置情報抽出部21にて抽出された自車両の現在の位置情報と、自車両速度情報抽出部22にて抽出された自車両の現在の速度情報とに基づき、走行支援レベルを設定し、この走行支援レベルに応じて、報知装置17を作動させる。例えば、走行支援判定部27は、路面標識認識部26にて路面標識として停止線の存在が検知された状態で、自車両の現在位置から停止線までの距離および自車両の現在の速度が、停止線で自車両が停止するために要する所定の閾値に近い値となることに伴い、走行支援レベルが高くなるように設定する。
【0040】
報知装置17は、例えば、視覚的伝達装置と、聴覚的伝達装置とを備えて構成されている。
視覚的伝達装置は、例えば表示装置等であって、走行支援判定部27から入力される走行支援レベルに応じて、例えば表示装置に情報を表示したり、所定の表示灯を点滅させる。
聴覚的伝達装置は、例えばスピーカ等であって、走行支援判定部27から入力される走行支援レベルに応じて、所定の報知音や音声等を出力する。
【0041】
本実施の形態による車両の路面標識検出装置10は上記構成を備えており、次に、この車両の路面標識検出装置10の動作について添付図面を参照しながら説明する。
【0042】
先ず、図6に示すステップS01においては、外界撮像カメラ11から出力される画像データを取得する。
次に、ステップS02においては、自車両の現在の位置情報と、地図データ記憶部14に格納されている地図データとに基づき、自車両の進行方向前方に所定の道路形状(例えば、交差点等)が存在するか否かを検知する。
次に、ステップS03においては、検知された道路形状の自車両の走行路内に、この走行路に沿って伸びる複数の検知ラインD,…,D,…,Dを、例えば走行路の幅方向に所定間隔(例えば、30cm間隔等)をおいて設定する。
次に、ステップS04においては、設定された各検知ラインD,…,D,…,D毎に対して、各検知ラインD,…,D,…,Dの長さ方向における明るさ(例えば、輝度や明度等)の変化を検知する
【0043】
そして、ステップS05においては、検知された各検知ラインD,…,D,…,Dの長さ方向における明るさの変化に基づき、路面標識(例えば、停止線等)の有無を検知する。
次に、ステップS06においては、検知した路面標識の画像データ上の位置と、実際の走行路上の位置との所定の対応関係を示すデータからなるテーブル等を参照して、検知した路面標識までの実際の距離を算出する。
次に、ステップS07においては、自車両の走行情報として、例えば位置情報および速度情報等を取得する。
【0044】
次に、ステップS08においては、認識された自車両の進行方向前方に存在する路面標識と、検知された自車両の進行方向の道路形状と、取得した自車両の現在の位置情報および速度情報等とに基づき、走行支援レベルを設定する。
そして、ステップS09においては、設定された走行支援レベルが所定支援レベルよりも高いか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS10に進み、設定された走行支援レベルに応じて報知装置17を作動させ、一連の処理を終了する。
これにより、例えば図7に示す自車両Aのように、自車両の進行方向前方に存在する路面標識(例えば、停止線S等)に対する所定の手前位置において、例えば交差点の存在を報知したり、例えば減速操作の実行を促す警報等が出力される。
【0045】
上述したように、本実施の形態による車両の路面標識検出装置10によれば、外界撮像カメラ11から入力される画像データに対して、例えば各種の路面標識を検知対象物とした特徴量算出および形状判別等の煩雑な認識処理を実行する必要無しに、画像データ上に設定した複数の検知ラインD,…,D,…,D毎の長さ方向における明るさの変化を検知するだけの単純な処理によって所望の路面標識の存在および認識した路面標識までの距離を容易に検知することができる。
しかも、画像データ上において明るさの変化を検知する範囲、つまり複数の検知ラインD,…,D,…,Dを設定する範囲を走行路内に限定することで、例えば走行路外に存在するガードレール等の路面標識以外の物体を誤検知してしまうことを容易に防止することができる。
【0046】
なお、上述した実施の形態においては、路面標識として停止線Sを検知する場合について説明したが、これに限定されず、例えば図8(a),(b)に示す横断歩道または自転車横断帯の存在を示す菱形標識T等の他の路面標識を検知するように設定してもよい。例えば図8(a),(b)に示す菱形標識Tに対しては、相対的に高い輝度の領域が所定数以上の検知ラインに亘る同等の距離位置には検知されないことから、先ず、停止線S以外の路面標識であると判断される。そして、これらの相対的に高い輝度の領域の位置分布が所定形状(例えば、菱形等)に沿った分布となることが検知されることで、横断歩道の存在を示す菱形標識Tを検知したと判断される。
【0047】
なお、上述した実施の形態においては、単一の外界撮像カメラ11から出力される画像データに基づき路面標識を認識するとしたが、これに限定されず、例えば複数の外界撮像カメラ11,…,11を備え、これら複数の外界撮像カメラ11,…,11から出力される複数の画像データに基づき路面標識を認識してもよい。
この場合には、複数の外界撮像カメラ11,…,11の各検知対象エリアを、例えば自車両の走行路の長さ方向に沿った互いに異なる領域に設定することで、走行路の長さ方向に対する解像度を増大させることができ、例えば停止線等に比べて、相対的に複雑な形状の路面標識を検知することができる。
【0048】
なお、上述した実施の形態において、車両の路面標識検出装置10は、地図データ記憶部14を備えるとしたが、これに限定されず、例えば自車両の外部に設置された地図データサーバから適宜のタイミングで通信により地図データを取得する地図データ取得部を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の路面標識検出装置の構成図である。
【図2】自車両の進行方向前方の道路上に存在するカーブ形状および交差点を示す地図データのノードデータおよびリンクデータの一例を示す図である。
【図3】図3(a)は、道路形状認識部にて検知された自車両の走行路内に設定した複数の検知ラインD,…,D,…,Dの一例を示す図であり、図3(b)は、各検知ラインD,…,D,…,Dの長さ方向における輝度の変化の一例を示す図であり、図3(c)は、画像データ上の所定の基準位置から適宜の位置までの画素数と、この画素数に対応する実際の走行路上での距離との間の所定の対応関係の一例を示す図である。
【図4】道路形状認識部にて検知されたカーブ形状内に設定した複数の検知ラインD,…,D,…,Dの一例を示す図である。
【図5】図5(a)は、道路形状認識部にて検知された自車両の走行路内に設定した複数の検知ラインD,…,D,…,Dの一例を示す図であり、図5(b)は、各検知ラインD,…,D,…,Dの長さ方向における輝度の変化の一例を示す図である。
【図6】図1に示す車両の路面標識検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】進行方向前方の交差点に向かい接近する自車両の相対位置の変化の一例を示す図である。
【図8】図8(a)は、道路形状認識部にて検知された自車両の走行路内に設定した複数の検知ラインD,…,D,…,Dの一例を示す図であり、図8(b)は、各検知ラインD,…,D,…,Dの長さ方向における輝度の変化の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 車両の路面標識検出装置
11 外界撮像カメラ(撮影手段)
14 地図データ記憶部(データ記憶手段)
24 検知ライン設定部(検知ライン設定手段)
25 明るさ検知部(明るさ検知手段)
26 路面標識認識部(路面標識認識手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進行方向の走行路を含む所定領域を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された撮影画像において、前記走行路に沿って伸びる複数の検知ラインを設定する検知ライン設定手段と、
該検知ラインの長さ方向における明るさの変化を検知する明るさ検知手段と、
該明るさ検知手段の検知結果に基づき、前記走行路上の路面標識を認識する路面標識認識手段とを備えることを特徴とする車両の路面標識検出装置。
【請求項2】
前記路面標識認識手段は、前記明るさ検知手段により検知された複数の検知ラインの長さ方向における明るさの変化位置に基づき、前記走行路上の路面標識を認識することを特徴とする請求項1に記載の車両の路面標識検出装置。
【請求項3】
予め走行路の半径あるいは曲率を含む走行路の形状を記憶する自車両に搭載されたデータ記憶手段または自車両の外部から前記走行路の形状を取得するデータ取得手段を備え、
前記検知ライン設定手段は、前記データ取得手段により取得された前記走行路の形状に応じて前記複数の検知ラインの設定数を設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の路面標識検出装置。
【請求項4】
前記検知ライン設定手段は、前記走行路の半径が小さくなることに伴い、あるいは、前記走行路の曲率が大きくなることに伴い、前記複数の検知ラインの設定数を減少させることを特徴とする請求項3に記載の車両の路面標識検出装置。
【請求項5】
前記検知ライン設定手段は、前記走行路の幅方向に所定間隔をおいて前記複数の検知ラインを設定することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の車両の路面標識検出装置。
【請求項6】
前記路面標識は停止線であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1つに記載の車両の路面標識検出装置。
【請求項7】
前記検知ライン設定手段は、隣り合う前記検知ライン間の間隔を、前記停止線以外の路面標識の走行路幅方向の線幅よりも小さな値に設定することを特徴とする請求項6に記載の車両の路面標識検出装置。
【請求項8】
前記路面標識認識手段は、前記明るさ検知手段により検知された複数の検知ラインの長さ方向における明るさの変化位置が、所定数以上の検知ラインにおいて同等の距離位置である場合に、前記走行路上の路面標識は停止線であると認識することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の車両の路面標識検出装置。
【請求項9】
前記路面標識認識手段は、前記明るさ検知手段により検知された単一の検知ラインの長さ方向における複数の明るさの変化位置において、隣り合う前記変化位置間の間隔が所定値以内である場合に、前記走行路上の路面標識は停止線であると認識することを特徴とする請求項6から請求項8の何れか1つに記載の車両の路面標識検出装置。
【請求項10】
自車両の進行方向の走行路を含む所定領域であって、前記走行路に沿って互いに異なる前記所定領域を撮影する複数の撮影手段と、
前記複数の撮影手段により撮影された複数の撮影画像毎に、明るさの変化を検知する明るさ検知手段と、
該明るさ検知手段の検知結果に基づき、前記走行路上の路面標識を認識する路面標識認識手段とを備えることを特徴とする車両の路面標識検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−24105(P2006−24105A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203300(P2004−203300)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】