車両の車体前部構造
【課題】軽衝突時におけるクーリングユニットのリペアビリティ確保と、高速衝突時における効果的な衝突エネルギー吸収とを実現する。
【解決手段】車幅方向に延びるシュラウドアッパー部9の車幅方向両端を車両両サイドのエプロンレインフォースメント3に連結する。クーリングユニット37を内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部11をシュラウドアッパー部9に一体に連結してシュラウド5を構成する。車両前方からの軽衝突時にその衝撃を受けたバンパーレインフォースメント7がシュラウドロアー部11に衝突することで、シュラウドロアー部11をシュラウドアッパー部9から切り離す。車両前方からの高速衝突時に作用する衝撃によりシュラウドアッパー部9を変形させて衝突エネルギーを吸収する。
【解決手段】車幅方向に延びるシュラウドアッパー部9の車幅方向両端を車両両サイドのエプロンレインフォースメント3に連結する。クーリングユニット37を内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部11をシュラウドアッパー部9に一体に連結してシュラウド5を構成する。車両前方からの軽衝突時にその衝撃を受けたバンパーレインフォースメント7がシュラウドロアー部11に衝突することで、シュラウドロアー部11をシュラウドアッパー部9から切り離す。車両前方からの高速衝突時に作用する衝撃によりシュラウドアッパー部9を変形させて衝突エネルギーを吸収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クーリングユニットを内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部を有するシュラウドを備えた車両の車体前部構造の改良に関し、特に衝突対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クーリングユニットを内側に収容保持するシュラウドが車両両サイドのフロントサイドフレームに連結支持された車両の車体前部構造が開示されている。
【0003】
このような構造では、車両が正面衝突した際に、その衝撃でバンパーレインフォースメントが後退してシュラウドに衝突すると、上記クーリングユニットが損傷することから、上記の特許文献1では、シュラウドをバンパーレインフォースメントの衝突によりフロントサイドフレームから切り離して後退させたり、あるいはシュラウドとフロントサイドフレームとの連結箇所をバンパーレインフォースメントの衝突により撓み変形させて後退させることにより、衝突エネルギーを吸収して衝撃を緩和し、クーリングユニットが損傷しないようにしてリペアビリティを確保している。
【特許文献1】特開2002−240744号公報(第5頁、第6頁、図2、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両前方からの高速衝突時には、車体前部に非常に大きな衝撃が作用することから、この衝撃を緩和する手立てを講ずることが望まれる。
【0005】
例えば、車両前方からの衝撃は、車体前部中央に位置するシュラウドに大きく作用することから、シュラウドで高速衝突時の衝突エネルギーを吸収できるようにすることが考えられる。
【0006】
しかし、上記の特許文献1によるシュラウドの切離しや、シュラウドの連結箇所の撓み変形では、軽衝突時には有効ではあるが、高速衝突時の衝撃で後退するシュラウドを車体剛性メンバーであるフロントサイドフレームで効率良く受けることができない。さりとて、シュラウドの剛性を高め、該シュラウドをフロントサイドフレームにリジッドに連結すると、高速衝突時の衝撃をフロントサイドフレームに効率良く伝えることができる反面、軽衝突時であっても、シュラウドに保持されているクーリングユニットが衝撃を直接受けて損傷してしまう。
【0007】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軽衝突時におけるクーリングユニットのリペアビリティ確保と、高速衝突時における効果的な衝突エネルギー吸収とを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、この発明は、衝突エネルギーの吸収を二段階に行うようにしたことを特徴とし、具体的には、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、車幅方向両端が車両両サイドの車体剛性メンバーに連結された車幅方向に延びるシュラウドアッパー部と、該シュラウドアッパー部と一体に連結され、クーリングユニットを内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部とからなるシュラウドを備え、上記シュラウドロアー部は、車両前方からの軽衝突時にその衝撃を受けたバンパーレインフォースメントが衝突することで上記シュラウドアッパー部から切り離され、上記シュラウドアッパー部は、車両前方からの高速衝突時に作用する衝撃により変形して衝突エネルギーを吸収するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、車幅方向両端側が第1分岐部と第2分岐部とに二股に分岐し、上記第1分岐部が車両両サイドの車体剛性メンバーに連結され、上記第2分岐部が上記車体剛性メンバーの車両前方に所定の間隔をあけて対峙した車幅方向に延びるシュラウドアッパー部と、該シュラウドアッパー部と一体に連結され、クーリングユニットを内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部とからなるシュラウドを備え、上記シュラウドアッパー部は、車両前方からの軽衝突時にその衝撃を受けたバンパーレインフォースメントが上記シュラウドロアー部に衝突することで上記第1分岐部が破断して車体剛性メンバーから切り離され、車両前方からの高速衝突時に作用する衝撃により上記第2分岐部が車体剛性メンバーに衝突することで変形して衝突エネルギーを吸収するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、車両の正面衝突が軽衝突である場合、バンパーレインフォースメントがその衝撃を受けてシュラウドロアー部に衝突し、該シュラウドロアー部がシュラウドアッパー部から切り離されて後退し、衝突エネルギーが吸収されてシュラウドロアー部に作用する衝撃が緩和される。よって、シュラウドロアー部の破損が防止され、該シュラウドロアー部に保持されているクーリングユニットの損傷も防止されてリペアリビティが確保される。
【0012】
一方、車両の正面衝突が高速衝突である場合、大きな衝撃がシュラウドアッパー部に作用する。この際、シュラウドアッパー部は、その車幅方向両端が車両両サイドの車体剛性メンバーに連結されているため、上記大きな衝撃を真正面から受けて変形し、衝突エネルギーが吸収されて衝撃が緩和される。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、車両の正面衝突が軽衝突である場合、バンパーレインフォースメントがその衝撃を受けてシュラウドロアー部に衝突する。その衝撃はシュラウドアッパー部に伝わって車幅方向両端側の第1分岐部が破断し、シュラウドロアー部に作用するシュラウドアッパー部が車体剛性メンバーから切り離されてシュラウド全体が後退し、衝突エネルギーが吸収されて衝撃が緩和される。よって、シュラウドロアー部の破損が防止され、該シュラウドロアー部に保持されているクーリングユニットの損傷も防止されてリペアリビティが確保される。
【0014】
一方、車両の正面衝突が高速衝突である場合、大きな衝撃がシュラウドアッパー部に作用する。この際、車幅方向両端側の第2分岐部が車両剛性メンバーに車両前方から衝突し、シュラウドアッパー部が上記大きな衝撃を真正面から受けて変形し、衝撃エネルギーが吸収されて衝撃が緩和される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1及び図2はこの発明の実施形態1に係る車両の車体前部構造を示す。同図において、1は、車両両サイドで車両前後方向に延びる一対のフロントサイドフレーム(車体剛性メンバー)、3は、該各フロントサイドフレーム1の上方で車両前後方向に延びる一対のエプロンレインフォースメント(車体剛性メンバー)である。上記両フロントサイドフレーム1の車両前端間には、シュラウド5が配置され、該シュラウド5の車両前方には、バンパーレインフォースメント7が車幅方向に延びるように接近配置されている。
【0017】
上記シュラウド5は、図3,図4及び図6に示すように、略弓状に湾曲して車幅方向に延びる断面略コ字状の金属製シュラウドアッパー部9と、矩形枠状の樹脂製シュラウドロアー部11とからなり、上記シュラウドアッパー部9の表面は、樹脂層13で部分的に覆われ、かつ裏面には樹脂リブ15が格子状に形成されている。また、上記シュラウドアッパー部9前面の車幅方向中央には、ボンネットの掛止具(図示せず)を掛止する被掛止具17が取り付けられ、上記シュラウドアッパー部9の車幅方向両端には、ボルト挿通孔9aが上下方向に貫通形成されている。一方、上記エプロンレインフォースメント3の車両前端にもボルト挿通孔3aが上下方向に貫通形成され、エプロンレインフォースメント3の車両前端をシュラウドアッパー部9の車幅方向両端に挿入した状態で、ボルト19を上方から上記ボルト挿通孔9a,3aに挿通して下方に突出した軸部にナット21を螺合させることで、シュラウドアッパー部9の車幅方向両端が両エプロンレインフォースメント3の車両前端に連結されている(図2及び図7参照)。これにより、シュラウドアッパー部9は、車両前方からの高速衝突時に作用する大きな衝撃を真正面から受けて変形し、衝撃エネルギーを吸収して衝撃を緩和するようになっている。
【0018】
一方、上記シュラウドロアー部11は、上枠23、下枠25及び両側枠27で構成され、上記上枠23の車幅方向中程が略3分の1の領域に亘って上記シュラウドアッパー部9の樹脂層13と一体になっており、これにより、シュラウドロアー部11がシュラウドアッパー部9と一体に連結されている。この連結部は、その両側部分に比べて車両前後方向の幅が狭くなっている(図4及び図7参照)。また、シュラウドアッパー部9の車幅方向両端側は、シュラウドロアー部11よりも側方に延出していて、該延出部にヘッドランプ(図示せず)が取り付けられるようになっている。さらに、上記上枠23のシュラウドアッパー部9との連結部両端には、U字状の溝29が上面部から正面部にかけて形成され、該溝29に対応する正面部の上下寸法が短くなっていて、当該箇所が他の箇所よりも強度的に弱い脆弱部31を構成している。これにより、シュラウドロアー部11は、車両前方からの軽衝突時にその衝撃を受けたバンパーレインフォースメント7が衝突することで、上記脆弱部31が破断して上記シュラウドアッパー部9から切り離され、衝撃エネルギーを吸収してシュラウドロアー部11に作用する衝撃を緩和するようになっている。
【0019】
また、上記上枠23の車幅方向両端寄りには、ピン挿通孔23a(図6参照)が上下方向に貫通形成されているとともに、上記下枠25の車幅方向両端寄りにも、ピン挿通孔25a(図4参照)が上下方向に貫通形成されている。また、上記両側枠27には、ボルト挿通孔27a(図1〜4参照)が上下方向に間隔をあけて2個ずつ貫通形成されている。
【0020】
上記シュラウドロアー部11には、ラジエーター33及びクーラーコンデンサー35からなるクーリングユニット37が内側に収容保持されている。具体的には、上記ラジエーター33上面の車幅方向両端寄りには、取付ピン39(図3及び図6参照)が上方に突設されているとともに、上記ラジエーター33下面の車幅方向両端寄りにも、取付ピン39(図3参照)が下方に突設され、これら取付ピン39を上記上枠23及び下枠25の各ピン挿通孔23a,25aに挿通して環状マウントラバー41を各取付ピン39に嵌着することにより、ラジエーター33をシュラウドロアー部11に収容保持するようになっている。なお、図1では上記取付ピン39は省略している。また、上記クーラーコンデンサー35は、図6にも示すように、取付ブラケット43によりラジエーター33に車両前方に接近するように取り付けられ、ラジエーター33を介してシュラウドロアー部11に収容保持されている。
【0021】
上記バンパーレインフォースメント7の車幅方向両端には、図5にも示すように、車両前方からの衝撃により潰れるクラッシュ管45が取り付けられ、該クラッシュ管45には、車幅方向内側に延出する延出部47aを有する取付板47の基部47bが固定され、該基部47bにはボルト挿通孔47cが4個貫通形成されている。一方、上記各フロントサイドフレーム1の車両前端にも、取付板49が固定され、該取付板49にもボルト挿通孔49aが4個貫通形成され、上記両取付板47,49を突き合わせた状態で、ボルト51を上記ボルト挿通孔47c,49aに挿通して軸部をナット53(図7参照)に螺合させることで、上記バンパーレインフォースメント7の車幅方向両端がクラッシュ管45を介して上記両フロントサイドフレーム1の車両前端に連結されている。また、上記取付板47の延出部47a端部にも、ボルト挿通孔47dが上下方向に間隔をあけて2個貫通形成され、上記延出部47a先端を上記シュラウドロアー部11の両側枠27上下方向中程に車両前方から対応させた状態で、ボルト55を上記延出部47aのボルト挿通孔47dと上記側枠27のボルト挿通孔27aとに挿通して軸部をナット57(図5参照)に螺合させることで、上記シュラウドロアー部11が取付板47を介して上記両フロントサイドフレーム1の車両前端に連結されている。図5中、59はバンパーフェースである。これにより、車両前方からの軽衝突時にその衝撃をバンパーレインフォースメント7が受けると、該バンパーレインフォースメント7が車幅方向両端のクラッシュ管45を潰しながら車両後方に後退し、上記両取付板47の延出部47a先端(シュラウドロアー部11の側枠27)に衝突して該延出部47aが基端を起点に車両後方に撓み変形し、この延出部47aの撓み変形によりシュラウドロアー部11が車両後方に移動して脆弱部31が破断するようになっている(図7(a)及び(b)参照)。
【0022】
このように、実施形態1では、車両の正面衝突が軽衝突である場合、上述の如くシュラウドロアー部11の脆弱部31が破断し、上枠23のシュラウドアッパー部9との連結部分を残してシュラウドロアー部11がシュラウドアッパー部9から切り離されて車両後方に後退するので、この後退動作により衝突エネルギーを吸収してシュラウドロアー部11に作用する衝撃を緩和することができる。これにより、シュラウドロアー部11は破損せず、該シュラウドロアー部11に保持されているクーリングユニット37も損傷しないので、クーリングユニット37のリペアリビティを確保することができる。
【0023】
また、実施形態1では、車両の正面衝突が高速衝突である場合、シュラウドアッパー部9の車幅方向両端が車両両サイドのエプロンレインフォースメント3の車両先端に連結されているので、上記シュラウドアッパー部9が大きな衝撃を真正面から受けて変形し、この変形により衝撃エネルギーを吸収して衝撃を緩和することができる。
【0024】
(実施形態2)
図8及び図9は実施形態2に係る車両の車体前部構造を示す。実施形態2では、下記の(1)〜(5)の点で実施形態1と異なっているほかは、実施形態1と同じであるので、以下、異なる点のみ説明し、同一構成箇所は実施形態1の説明及び図面に譲ることとする。なお、図9では、被掛止部17を省略している。
【0025】
<実施形態1と異なる点>
(1) フロントサイドフレーム1の車両先端とエプロンレインフォースメント3の車両先端とが連結ブラケット61で連結され、これら三者により車両剛性メンバーを構成している。
【0026】
(2) シュラウドアッパー部9が直線形状であり、かつヘッドランプ取付部がなく、また、車幅方向両端を両フロントサイドフレーム1の車両先端に上方から重ねた状態で、ボルトを上方から上記ボルト挿通孔9a,3aに挿通して下方に突出した軸部にナットを螺合させることで、シュラウドアッパー部9の車幅方向両端を両エプロンレインフォースメント3の車両前端に連結するようにしている。
【0027】
(3) シュラウドアッパー部9とシュラウドロアー部11の上枠23とが車幅方向全体に亘って樹脂製連結部63で連結され、該連結部63と上記上枠23との間に略V字状の溝29が車幅方向全体に形成され、当該箇所が他の箇所よりも強度的に弱い脆弱部31を構成している。
【0028】
(4) クーラーコンデンサー35がラジエーター33の車両後方に配置されている。
【0029】
(5) ボルト挿通孔65aを有する取付ブラケット65がバンパーレインフォースメント7の車幅方向両端寄りに固定され、上記取付ブラケット65をシュラウドロアー部11の両側枠27上下方向中程に車両前方から対応させた状態で、ボルト55を上記取付ブラケット65のボルト挿通孔65aと上記側枠27のボルト挿通孔27aとに挿通して軸部をナット(図示せず)に螺合させることで、シュラウドロアー部11が取付ブラケット65、バンパーレインフォースメント7、クラッシュ管45及び取付板47を介して両フロントサイドフレーム1の車両前端に連結されている。したがって、取付板47には実施形態1の如き延出部47aはない。
【0030】
そして、実施形態2では、車両の正面衝突が軽衝突である場合、シュラウドアッパー部9とシュラウドロアー部11の上枠23との間の連結部63にある脆弱部31が破断し、シュラウドロアー部11全体がシュラウドアッパー部9から切り離されて車両後方に後退するようになっている。したがって、この後退動作により衝突エネルギーを吸収してシュラウドロアー部11に作用する衝撃を緩和することができる。これにより、シュラウドロアー部11は破損せず、該シュラウドロアー部11に保持されているクーリングユニット37も損傷しないので、クーリングユニット37のリペアリビティを確保することができる。
【0031】
また、実施形態2では、車両の正面衝突が高速衝突である場合、シュラウドアッパー部9の車幅方向両端が車両両サイドのエプロンレインフォースメント3の車両先端に連結されているので、上記シュラウドアッパー部9が大きな衝撃を真正面から受けて変形し、この変形により衝撃エネルギーを吸収して衝撃を緩和することができる。この際、上記大きな衝撃は、連結ブラケット61を経てフロントサイドフレーム1に分散されるので、シュラウドアッパー部9への衝撃によるダメージが軽減される。
【0032】
(実施形態3)
図10〜図13は実施形態3に係る車両の車体前部構造を示す。実施形態3では、上記の(1)、(4)及び(5)の点は実施形態2と同じである。また、上記の(2)及び(3)の点で実施形態2と異なり、さらに、下記の(6)及び(7)の点で実施形態1,2と異なっている。そのほかは、実施形態1,2と同じであるので、以下、異なる点のみ説明し、同一構成箇所は実施形態1,2の説明及び図面に譲ることとする。
【0033】
<実施形態1,2と異なる点>
(6) シュラウドアッパー部9が、直線形状に形成された金属製矩形環状の第1フレーム部67と、該第1フレーム部67の後面に一体に形成された略コ字状の樹脂製第2フレーム部69とからなり、該第2フレーム部69にU字状の樹脂製シュラウドロアー部11が一体に形成されている。上記第2フレーム部69は、シュラウドロアー部11を成形する際に該シュラウドロアー部11と一体に形成されるものであり、あたかもシュラウドロアー部11が矩形状でその一部を第2フレーム部69が構成しているかのようである。
【0034】
(7) シュラウドアッパー部9の車幅方向両端側が、第1分岐部71と第2分岐部73とに上下方向に二股に分岐している。具体的には、上記第1分岐部71は、第2フレーム部69の車幅方向両端で車両後方に直角に屈曲した部分で形成されてボルト挿通孔71aを有し、該第1分岐部71が車両両サイドのエプロンレインフォースメント3の車両先端に上方から重ねられた状態で、ボルト19を上方からボルト挿通孔71a,3aに挿通して下方に突出した軸部にナット21を螺合させることで、第2フレーム部69の車幅方向両端が両エプロンレインフォースメント3の車両前端に連結されている(図12参照)。また、第1分岐部71の基端に略V字状の溝29が形成され、当該箇所が他の箇所よりも強度的に弱い脆弱部31を構成している。上記第2分岐部73は、第1フレーム部67の車幅方向両端で車両後方に直角に屈曲した部分で形成され、該第2分岐部73が連結ブラケット61の車両前方に所定の間隔をあけて対峙している。
【0035】
そして、実施形態3では、車両の正面衝突が軽衝突である場合、バンパーレインフォースメント7がその衝撃を受けてシュラウドロアー部11に衝突し、その衝撃がシュラウドアッパー部9に伝わって第2フレーム部69の第1分岐部71における脆弱部31が破断し、シュラウドアッパー部9(第2フレーム部69)がエプロンレインフォースメント3から切り離されてシュラウド5全体が後退するようになっている。したがって、この後退動作により衝突エネルギーを吸収してシュラウドロアー部11に作用する衝撃を緩和することができる。これにより、シュラウドロアー部11は破損せず、該シュラウドロアー部11に保持されているクーリングユニット37も損傷しないので、クーリングユニット37のリペアリビティを確保することができる。
【0036】
また、実施形態3では、車両の正面衝突が高速衝突である場合、シュラウドアッパー部9(第1フレーム部67)の車幅方向両端側が連結ブラケット61に車両前方から対峙しているので、シュラウドアッパー部9が高速衝突時に作用する大きな衝撃で車両後方に後退して第2分岐部73が連結ブラケット61に車両前方から衝突し、上記シュラウドアッパー部9が大きな衝撃を真正面から受けて変形して、この変形により衝撃エネルギーを吸収して衝撃を緩和することができる。この際、上記大きな衝撃は、連結部63を経てフロントサイドフレーム1に分散されるので、シュラウドアッパー部9への衝撃によるダメージが軽減される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、クーリングユニットを内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部を有するシュラウドを備えた車両の車体前部構造について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態1に係る車体前部構造の分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係る車体前部構造の組立斜視図である。
【図3】実施形態1におけるシュラウドの正面図である。
【図4】実施形態1におけるシュラウドを背面側から見た斜視図である。
【図5】図2のA部を拡大して示す横断平面図である。
【図6】図3のVI−VI線における断面図である。
【図7】(a)は図2のB矢視図、(b)は軽衝突時にシュラウドロアー部が後退した状態を示す図7(a)対応図である。
【図8】実施形態2の図1相当図である。
【図9】図8のIX−IX線に対応する組立状態の断面図である。
【図10】実施形態3の図1相当図である。
【図11】図10のXI−XI線に対応する組立状態の断面図である。
【図12】(a)は図7(a)相当図、(b)は図7(b)相当図である。
【図13】(a)は図12(a)の平面図、(b)は図12(b)の平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 フロントサイドフレーム(車体剛性メンバー)
3 エプロンレインフォースメント(車体剛性メンバー)
5 シュラウド
7 バンパーレインフォースメント
9 シュラウドアッパー部
11 シュラウドロアー部
37 クーリングユニット
61 連結ブラケット(車体剛性メンバー)
71 第1分岐部
73 第2分岐部
【技術分野】
【0001】
この発明は、クーリングユニットを内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部を有するシュラウドを備えた車両の車体前部構造の改良に関し、特に衝突対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クーリングユニットを内側に収容保持するシュラウドが車両両サイドのフロントサイドフレームに連結支持された車両の車体前部構造が開示されている。
【0003】
このような構造では、車両が正面衝突した際に、その衝撃でバンパーレインフォースメントが後退してシュラウドに衝突すると、上記クーリングユニットが損傷することから、上記の特許文献1では、シュラウドをバンパーレインフォースメントの衝突によりフロントサイドフレームから切り離して後退させたり、あるいはシュラウドとフロントサイドフレームとの連結箇所をバンパーレインフォースメントの衝突により撓み変形させて後退させることにより、衝突エネルギーを吸収して衝撃を緩和し、クーリングユニットが損傷しないようにしてリペアビリティを確保している。
【特許文献1】特開2002−240744号公報(第5頁、第6頁、図2、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両前方からの高速衝突時には、車体前部に非常に大きな衝撃が作用することから、この衝撃を緩和する手立てを講ずることが望まれる。
【0005】
例えば、車両前方からの衝撃は、車体前部中央に位置するシュラウドに大きく作用することから、シュラウドで高速衝突時の衝突エネルギーを吸収できるようにすることが考えられる。
【0006】
しかし、上記の特許文献1によるシュラウドの切離しや、シュラウドの連結箇所の撓み変形では、軽衝突時には有効ではあるが、高速衝突時の衝撃で後退するシュラウドを車体剛性メンバーであるフロントサイドフレームで効率良く受けることができない。さりとて、シュラウドの剛性を高め、該シュラウドをフロントサイドフレームにリジッドに連結すると、高速衝突時の衝撃をフロントサイドフレームに効率良く伝えることができる反面、軽衝突時であっても、シュラウドに保持されているクーリングユニットが衝撃を直接受けて損傷してしまう。
【0007】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軽衝突時におけるクーリングユニットのリペアビリティ確保と、高速衝突時における効果的な衝突エネルギー吸収とを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、この発明は、衝突エネルギーの吸収を二段階に行うようにしたことを特徴とし、具体的には、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、車幅方向両端が車両両サイドの車体剛性メンバーに連結された車幅方向に延びるシュラウドアッパー部と、該シュラウドアッパー部と一体に連結され、クーリングユニットを内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部とからなるシュラウドを備え、上記シュラウドロアー部は、車両前方からの軽衝突時にその衝撃を受けたバンパーレインフォースメントが衝突することで上記シュラウドアッパー部から切り離され、上記シュラウドアッパー部は、車両前方からの高速衝突時に作用する衝撃により変形して衝突エネルギーを吸収するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、車幅方向両端側が第1分岐部と第2分岐部とに二股に分岐し、上記第1分岐部が車両両サイドの車体剛性メンバーに連結され、上記第2分岐部が上記車体剛性メンバーの車両前方に所定の間隔をあけて対峙した車幅方向に延びるシュラウドアッパー部と、該シュラウドアッパー部と一体に連結され、クーリングユニットを内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部とからなるシュラウドを備え、上記シュラウドアッパー部は、車両前方からの軽衝突時にその衝撃を受けたバンパーレインフォースメントが上記シュラウドロアー部に衝突することで上記第1分岐部が破断して車体剛性メンバーから切り離され、車両前方からの高速衝突時に作用する衝撃により上記第2分岐部が車体剛性メンバーに衝突することで変形して衝突エネルギーを吸収するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、車両の正面衝突が軽衝突である場合、バンパーレインフォースメントがその衝撃を受けてシュラウドロアー部に衝突し、該シュラウドロアー部がシュラウドアッパー部から切り離されて後退し、衝突エネルギーが吸収されてシュラウドロアー部に作用する衝撃が緩和される。よって、シュラウドロアー部の破損が防止され、該シュラウドロアー部に保持されているクーリングユニットの損傷も防止されてリペアリビティが確保される。
【0012】
一方、車両の正面衝突が高速衝突である場合、大きな衝撃がシュラウドアッパー部に作用する。この際、シュラウドアッパー部は、その車幅方向両端が車両両サイドの車体剛性メンバーに連結されているため、上記大きな衝撃を真正面から受けて変形し、衝突エネルギーが吸収されて衝撃が緩和される。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、車両の正面衝突が軽衝突である場合、バンパーレインフォースメントがその衝撃を受けてシュラウドロアー部に衝突する。その衝撃はシュラウドアッパー部に伝わって車幅方向両端側の第1分岐部が破断し、シュラウドロアー部に作用するシュラウドアッパー部が車体剛性メンバーから切り離されてシュラウド全体が後退し、衝突エネルギーが吸収されて衝撃が緩和される。よって、シュラウドロアー部の破損が防止され、該シュラウドロアー部に保持されているクーリングユニットの損傷も防止されてリペアリビティが確保される。
【0014】
一方、車両の正面衝突が高速衝突である場合、大きな衝撃がシュラウドアッパー部に作用する。この際、車幅方向両端側の第2分岐部が車両剛性メンバーに車両前方から衝突し、シュラウドアッパー部が上記大きな衝撃を真正面から受けて変形し、衝撃エネルギーが吸収されて衝撃が緩和される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1及び図2はこの発明の実施形態1に係る車両の車体前部構造を示す。同図において、1は、車両両サイドで車両前後方向に延びる一対のフロントサイドフレーム(車体剛性メンバー)、3は、該各フロントサイドフレーム1の上方で車両前後方向に延びる一対のエプロンレインフォースメント(車体剛性メンバー)である。上記両フロントサイドフレーム1の車両前端間には、シュラウド5が配置され、該シュラウド5の車両前方には、バンパーレインフォースメント7が車幅方向に延びるように接近配置されている。
【0017】
上記シュラウド5は、図3,図4及び図6に示すように、略弓状に湾曲して車幅方向に延びる断面略コ字状の金属製シュラウドアッパー部9と、矩形枠状の樹脂製シュラウドロアー部11とからなり、上記シュラウドアッパー部9の表面は、樹脂層13で部分的に覆われ、かつ裏面には樹脂リブ15が格子状に形成されている。また、上記シュラウドアッパー部9前面の車幅方向中央には、ボンネットの掛止具(図示せず)を掛止する被掛止具17が取り付けられ、上記シュラウドアッパー部9の車幅方向両端には、ボルト挿通孔9aが上下方向に貫通形成されている。一方、上記エプロンレインフォースメント3の車両前端にもボルト挿通孔3aが上下方向に貫通形成され、エプロンレインフォースメント3の車両前端をシュラウドアッパー部9の車幅方向両端に挿入した状態で、ボルト19を上方から上記ボルト挿通孔9a,3aに挿通して下方に突出した軸部にナット21を螺合させることで、シュラウドアッパー部9の車幅方向両端が両エプロンレインフォースメント3の車両前端に連結されている(図2及び図7参照)。これにより、シュラウドアッパー部9は、車両前方からの高速衝突時に作用する大きな衝撃を真正面から受けて変形し、衝撃エネルギーを吸収して衝撃を緩和するようになっている。
【0018】
一方、上記シュラウドロアー部11は、上枠23、下枠25及び両側枠27で構成され、上記上枠23の車幅方向中程が略3分の1の領域に亘って上記シュラウドアッパー部9の樹脂層13と一体になっており、これにより、シュラウドロアー部11がシュラウドアッパー部9と一体に連結されている。この連結部は、その両側部分に比べて車両前後方向の幅が狭くなっている(図4及び図7参照)。また、シュラウドアッパー部9の車幅方向両端側は、シュラウドロアー部11よりも側方に延出していて、該延出部にヘッドランプ(図示せず)が取り付けられるようになっている。さらに、上記上枠23のシュラウドアッパー部9との連結部両端には、U字状の溝29が上面部から正面部にかけて形成され、該溝29に対応する正面部の上下寸法が短くなっていて、当該箇所が他の箇所よりも強度的に弱い脆弱部31を構成している。これにより、シュラウドロアー部11は、車両前方からの軽衝突時にその衝撃を受けたバンパーレインフォースメント7が衝突することで、上記脆弱部31が破断して上記シュラウドアッパー部9から切り離され、衝撃エネルギーを吸収してシュラウドロアー部11に作用する衝撃を緩和するようになっている。
【0019】
また、上記上枠23の車幅方向両端寄りには、ピン挿通孔23a(図6参照)が上下方向に貫通形成されているとともに、上記下枠25の車幅方向両端寄りにも、ピン挿通孔25a(図4参照)が上下方向に貫通形成されている。また、上記両側枠27には、ボルト挿通孔27a(図1〜4参照)が上下方向に間隔をあけて2個ずつ貫通形成されている。
【0020】
上記シュラウドロアー部11には、ラジエーター33及びクーラーコンデンサー35からなるクーリングユニット37が内側に収容保持されている。具体的には、上記ラジエーター33上面の車幅方向両端寄りには、取付ピン39(図3及び図6参照)が上方に突設されているとともに、上記ラジエーター33下面の車幅方向両端寄りにも、取付ピン39(図3参照)が下方に突設され、これら取付ピン39を上記上枠23及び下枠25の各ピン挿通孔23a,25aに挿通して環状マウントラバー41を各取付ピン39に嵌着することにより、ラジエーター33をシュラウドロアー部11に収容保持するようになっている。なお、図1では上記取付ピン39は省略している。また、上記クーラーコンデンサー35は、図6にも示すように、取付ブラケット43によりラジエーター33に車両前方に接近するように取り付けられ、ラジエーター33を介してシュラウドロアー部11に収容保持されている。
【0021】
上記バンパーレインフォースメント7の車幅方向両端には、図5にも示すように、車両前方からの衝撃により潰れるクラッシュ管45が取り付けられ、該クラッシュ管45には、車幅方向内側に延出する延出部47aを有する取付板47の基部47bが固定され、該基部47bにはボルト挿通孔47cが4個貫通形成されている。一方、上記各フロントサイドフレーム1の車両前端にも、取付板49が固定され、該取付板49にもボルト挿通孔49aが4個貫通形成され、上記両取付板47,49を突き合わせた状態で、ボルト51を上記ボルト挿通孔47c,49aに挿通して軸部をナット53(図7参照)に螺合させることで、上記バンパーレインフォースメント7の車幅方向両端がクラッシュ管45を介して上記両フロントサイドフレーム1の車両前端に連結されている。また、上記取付板47の延出部47a端部にも、ボルト挿通孔47dが上下方向に間隔をあけて2個貫通形成され、上記延出部47a先端を上記シュラウドロアー部11の両側枠27上下方向中程に車両前方から対応させた状態で、ボルト55を上記延出部47aのボルト挿通孔47dと上記側枠27のボルト挿通孔27aとに挿通して軸部をナット57(図5参照)に螺合させることで、上記シュラウドロアー部11が取付板47を介して上記両フロントサイドフレーム1の車両前端に連結されている。図5中、59はバンパーフェースである。これにより、車両前方からの軽衝突時にその衝撃をバンパーレインフォースメント7が受けると、該バンパーレインフォースメント7が車幅方向両端のクラッシュ管45を潰しながら車両後方に後退し、上記両取付板47の延出部47a先端(シュラウドロアー部11の側枠27)に衝突して該延出部47aが基端を起点に車両後方に撓み変形し、この延出部47aの撓み変形によりシュラウドロアー部11が車両後方に移動して脆弱部31が破断するようになっている(図7(a)及び(b)参照)。
【0022】
このように、実施形態1では、車両の正面衝突が軽衝突である場合、上述の如くシュラウドロアー部11の脆弱部31が破断し、上枠23のシュラウドアッパー部9との連結部分を残してシュラウドロアー部11がシュラウドアッパー部9から切り離されて車両後方に後退するので、この後退動作により衝突エネルギーを吸収してシュラウドロアー部11に作用する衝撃を緩和することができる。これにより、シュラウドロアー部11は破損せず、該シュラウドロアー部11に保持されているクーリングユニット37も損傷しないので、クーリングユニット37のリペアリビティを確保することができる。
【0023】
また、実施形態1では、車両の正面衝突が高速衝突である場合、シュラウドアッパー部9の車幅方向両端が車両両サイドのエプロンレインフォースメント3の車両先端に連結されているので、上記シュラウドアッパー部9が大きな衝撃を真正面から受けて変形し、この変形により衝撃エネルギーを吸収して衝撃を緩和することができる。
【0024】
(実施形態2)
図8及び図9は実施形態2に係る車両の車体前部構造を示す。実施形態2では、下記の(1)〜(5)の点で実施形態1と異なっているほかは、実施形態1と同じであるので、以下、異なる点のみ説明し、同一構成箇所は実施形態1の説明及び図面に譲ることとする。なお、図9では、被掛止部17を省略している。
【0025】
<実施形態1と異なる点>
(1) フロントサイドフレーム1の車両先端とエプロンレインフォースメント3の車両先端とが連結ブラケット61で連結され、これら三者により車両剛性メンバーを構成している。
【0026】
(2) シュラウドアッパー部9が直線形状であり、かつヘッドランプ取付部がなく、また、車幅方向両端を両フロントサイドフレーム1の車両先端に上方から重ねた状態で、ボルトを上方から上記ボルト挿通孔9a,3aに挿通して下方に突出した軸部にナットを螺合させることで、シュラウドアッパー部9の車幅方向両端を両エプロンレインフォースメント3の車両前端に連結するようにしている。
【0027】
(3) シュラウドアッパー部9とシュラウドロアー部11の上枠23とが車幅方向全体に亘って樹脂製連結部63で連結され、該連結部63と上記上枠23との間に略V字状の溝29が車幅方向全体に形成され、当該箇所が他の箇所よりも強度的に弱い脆弱部31を構成している。
【0028】
(4) クーラーコンデンサー35がラジエーター33の車両後方に配置されている。
【0029】
(5) ボルト挿通孔65aを有する取付ブラケット65がバンパーレインフォースメント7の車幅方向両端寄りに固定され、上記取付ブラケット65をシュラウドロアー部11の両側枠27上下方向中程に車両前方から対応させた状態で、ボルト55を上記取付ブラケット65のボルト挿通孔65aと上記側枠27のボルト挿通孔27aとに挿通して軸部をナット(図示せず)に螺合させることで、シュラウドロアー部11が取付ブラケット65、バンパーレインフォースメント7、クラッシュ管45及び取付板47を介して両フロントサイドフレーム1の車両前端に連結されている。したがって、取付板47には実施形態1の如き延出部47aはない。
【0030】
そして、実施形態2では、車両の正面衝突が軽衝突である場合、シュラウドアッパー部9とシュラウドロアー部11の上枠23との間の連結部63にある脆弱部31が破断し、シュラウドロアー部11全体がシュラウドアッパー部9から切り離されて車両後方に後退するようになっている。したがって、この後退動作により衝突エネルギーを吸収してシュラウドロアー部11に作用する衝撃を緩和することができる。これにより、シュラウドロアー部11は破損せず、該シュラウドロアー部11に保持されているクーリングユニット37も損傷しないので、クーリングユニット37のリペアリビティを確保することができる。
【0031】
また、実施形態2では、車両の正面衝突が高速衝突である場合、シュラウドアッパー部9の車幅方向両端が車両両サイドのエプロンレインフォースメント3の車両先端に連結されているので、上記シュラウドアッパー部9が大きな衝撃を真正面から受けて変形し、この変形により衝撃エネルギーを吸収して衝撃を緩和することができる。この際、上記大きな衝撃は、連結ブラケット61を経てフロントサイドフレーム1に分散されるので、シュラウドアッパー部9への衝撃によるダメージが軽減される。
【0032】
(実施形態3)
図10〜図13は実施形態3に係る車両の車体前部構造を示す。実施形態3では、上記の(1)、(4)及び(5)の点は実施形態2と同じである。また、上記の(2)及び(3)の点で実施形態2と異なり、さらに、下記の(6)及び(7)の点で実施形態1,2と異なっている。そのほかは、実施形態1,2と同じであるので、以下、異なる点のみ説明し、同一構成箇所は実施形態1,2の説明及び図面に譲ることとする。
【0033】
<実施形態1,2と異なる点>
(6) シュラウドアッパー部9が、直線形状に形成された金属製矩形環状の第1フレーム部67と、該第1フレーム部67の後面に一体に形成された略コ字状の樹脂製第2フレーム部69とからなり、該第2フレーム部69にU字状の樹脂製シュラウドロアー部11が一体に形成されている。上記第2フレーム部69は、シュラウドロアー部11を成形する際に該シュラウドロアー部11と一体に形成されるものであり、あたかもシュラウドロアー部11が矩形状でその一部を第2フレーム部69が構成しているかのようである。
【0034】
(7) シュラウドアッパー部9の車幅方向両端側が、第1分岐部71と第2分岐部73とに上下方向に二股に分岐している。具体的には、上記第1分岐部71は、第2フレーム部69の車幅方向両端で車両後方に直角に屈曲した部分で形成されてボルト挿通孔71aを有し、該第1分岐部71が車両両サイドのエプロンレインフォースメント3の車両先端に上方から重ねられた状態で、ボルト19を上方からボルト挿通孔71a,3aに挿通して下方に突出した軸部にナット21を螺合させることで、第2フレーム部69の車幅方向両端が両エプロンレインフォースメント3の車両前端に連結されている(図12参照)。また、第1分岐部71の基端に略V字状の溝29が形成され、当該箇所が他の箇所よりも強度的に弱い脆弱部31を構成している。上記第2分岐部73は、第1フレーム部67の車幅方向両端で車両後方に直角に屈曲した部分で形成され、該第2分岐部73が連結ブラケット61の車両前方に所定の間隔をあけて対峙している。
【0035】
そして、実施形態3では、車両の正面衝突が軽衝突である場合、バンパーレインフォースメント7がその衝撃を受けてシュラウドロアー部11に衝突し、その衝撃がシュラウドアッパー部9に伝わって第2フレーム部69の第1分岐部71における脆弱部31が破断し、シュラウドアッパー部9(第2フレーム部69)がエプロンレインフォースメント3から切り離されてシュラウド5全体が後退するようになっている。したがって、この後退動作により衝突エネルギーを吸収してシュラウドロアー部11に作用する衝撃を緩和することができる。これにより、シュラウドロアー部11は破損せず、該シュラウドロアー部11に保持されているクーリングユニット37も損傷しないので、クーリングユニット37のリペアリビティを確保することができる。
【0036】
また、実施形態3では、車両の正面衝突が高速衝突である場合、シュラウドアッパー部9(第1フレーム部67)の車幅方向両端側が連結ブラケット61に車両前方から対峙しているので、シュラウドアッパー部9が高速衝突時に作用する大きな衝撃で車両後方に後退して第2分岐部73が連結ブラケット61に車両前方から衝突し、上記シュラウドアッパー部9が大きな衝撃を真正面から受けて変形して、この変形により衝撃エネルギーを吸収して衝撃を緩和することができる。この際、上記大きな衝撃は、連結部63を経てフロントサイドフレーム1に分散されるので、シュラウドアッパー部9への衝撃によるダメージが軽減される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、クーリングユニットを内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部を有するシュラウドを備えた車両の車体前部構造について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態1に係る車体前部構造の分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係る車体前部構造の組立斜視図である。
【図3】実施形態1におけるシュラウドの正面図である。
【図4】実施形態1におけるシュラウドを背面側から見た斜視図である。
【図5】図2のA部を拡大して示す横断平面図である。
【図6】図3のVI−VI線における断面図である。
【図7】(a)は図2のB矢視図、(b)は軽衝突時にシュラウドロアー部が後退した状態を示す図7(a)対応図である。
【図8】実施形態2の図1相当図である。
【図9】図8のIX−IX線に対応する組立状態の断面図である。
【図10】実施形態3の図1相当図である。
【図11】図10のXI−XI線に対応する組立状態の断面図である。
【図12】(a)は図7(a)相当図、(b)は図7(b)相当図である。
【図13】(a)は図12(a)の平面図、(b)は図12(b)の平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 フロントサイドフレーム(車体剛性メンバー)
3 エプロンレインフォースメント(車体剛性メンバー)
5 シュラウド
7 バンパーレインフォースメント
9 シュラウドアッパー部
11 シュラウドロアー部
37 クーリングユニット
61 連結ブラケット(車体剛性メンバー)
71 第1分岐部
73 第2分岐部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向両端が車両両サイドの車体剛性メンバーに連結された車幅方向に延びるシュラウドアッパー部と、
該シュラウドアッパー部と一体に連結され、クーリングユニットを内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部とからなるシュラウドを備え、
上記シュラウドロアー部は、車両前方からの軽衝突時にその衝撃を受けたバンパーレインフォースメントが衝突することで上記シュラウドアッパー部から切り離され、
上記シュラウドアッパー部は、車両前方からの高速衝突時に作用する衝撃により変形して衝突エネルギーを吸収するように構成されていることを特徴とする車両の車体前部構造。
【請求項2】
車幅方向両端側が第1分岐部と第2分岐部とに二股に分岐し、上記第1分岐部が車両両サイドの車体剛性メンバーに連結され、上記第2分岐部が上記車体剛性メンバーの車両前方に所定の間隔をあけて対峙した車幅方向に延びるシュラウドアッパー部と、
該シュラウドアッパー部と一体に連結され、クーリングユニットを内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部とからなるシュラウドを備え、
上記シュラウドアッパー部は、車両前方からの軽衝突時にその衝撃を受けたバンパーレインフォースメントが上記シュラウドロアー部に衝突することで上記第1分岐部が破断して車体剛性メンバーから切り離され、車両前方からの高速衝突時に作用する衝撃により上記第2分岐部が車体剛性メンバーに衝突することで変形して衝突エネルギーを吸収するように構成されていることを特徴とする車両の車体前部構造。
【請求項1】
車幅方向両端が車両両サイドの車体剛性メンバーに連結された車幅方向に延びるシュラウドアッパー部と、
該シュラウドアッパー部と一体に連結され、クーリングユニットを内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部とからなるシュラウドを備え、
上記シュラウドロアー部は、車両前方からの軽衝突時にその衝撃を受けたバンパーレインフォースメントが衝突することで上記シュラウドアッパー部から切り離され、
上記シュラウドアッパー部は、車両前方からの高速衝突時に作用する衝撃により変形して衝突エネルギーを吸収するように構成されていることを特徴とする車両の車体前部構造。
【請求項2】
車幅方向両端側が第1分岐部と第2分岐部とに二股に分岐し、上記第1分岐部が車両両サイドの車体剛性メンバーに連結され、上記第2分岐部が上記車体剛性メンバーの車両前方に所定の間隔をあけて対峙した車幅方向に延びるシュラウドアッパー部と、
該シュラウドアッパー部と一体に連結され、クーリングユニットを内側に収容保持する枠状シュラウドロアー部とからなるシュラウドを備え、
上記シュラウドアッパー部は、車両前方からの軽衝突時にその衝撃を受けたバンパーレインフォースメントが上記シュラウドロアー部に衝突することで上記第1分岐部が破断して車体剛性メンバーから切り離され、車両前方からの高速衝突時に作用する衝撃により上記第2分岐部が車体剛性メンバーに衝突することで変形して衝突エネルギーを吸収するように構成されていることを特徴とする車両の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−972(P2010−972A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163192(P2008−163192)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】
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