説明

車両の電源供給装置及び電源供給方法

【課題】自動車用半導体ヒューズの低消費電流化を図ると共に通電電流が非常に小さい場合のスイッチングを可能とする車両の電源供給装置及び電源供給方法を提供する。
【解決手段】電源と負荷との間に半導体リレーが配置された車両の電源供給装置において、第1の半導体リレー11と、第2の半導体リレー12と、第1の半導体リレー駆動用の昇圧器114を有しかつ第1の半導体リレー及び第2の半導体リレーを制御する制御部100と、を備え、車両の定常状態においては昇圧器を介して第1の半導体リレーを駆動して負荷に電力を供給すると共に、車両の特定の状態を検出した場合に第1の半導体リレーの駆動に変えて第2の半導体リレーを駆動させるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用半導体ヒューズを用いた車両の電源供給装置及び電源供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車用半導体ヒューズとしては、NchFETが使用され、このNchFETをハイサイド(負荷の上流側)で駆動するためチャージポンプが用いられている。NchFETを上流側で駆動する為のチャージポンプは駐車時の消費電流としては非常に大きいため、例えばIG(イグニッション)リレーの下流やリア灯火系等、駐車中には負荷駆動しなくて良い部位にしか適応されていなかった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これは、IG下流に半導体ヒューズが設定されれば、駐車中は電源自体が遮断されてしまうため消費電流が発生しないためである。また、灯火系に関しては、駐車中に点灯させる必要はないので、駆動用のFETをOFFさせることができ、駐車時の消費電流を下げることが可能となるためである。
【0004】
即ち、何れの車両電装品も駐車中には駆動する必要がなく、駆動しなければFETがOFFしてることになり電流経路も絶たれているため、GNDがショートしてもショート電流は流れないようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−10471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
駐車中に通電が必要なシステムとして、ドアロック施錠/解錠のECU、室内イルミネーション駆動等の機能を有しているボディECUや、ナビゲーションや、駐車中にシート位置をメモリしておくためのシートECUや、ハンドル周りのスイッチを制御するコンビスイッチECU等がある。
【0007】
これらのシステムは、定常時には電流が大きいためNchFETで駆動するが、駐車時でもメモリの内容を保持する必要があったり、スイッチが押されるか監視するために通電が必要があったりするためである。
【0008】
しかしながら、NchFETを駆動するためのチャージポンプは、上述したように駐車時の消費電流としては非常に大きいため、ドアロック解除やトランクロック解除等の機能を持ったボディECU等の駐車中に使用しなければならないシステムのスイッチング素子には使用されて来なかった。
【0009】
一方、車両の高性能化に伴い、車両の駐車中においてもこれらドアロック解除やトランクロック解除等の機能を持ったボディECU等に電力を供給する必要が高まっている。ここで、上述したNchFETは、チャージポンプを必要とするため、これまで駐車時消費電流が発生しない部位にしか使用されてこなかった。しかしながら、通電電流が非常に近い小さい場合の駐車時においては、消費電流の大きいチャージポンプとNchFETとの組み合わせを用いることなくスイッチングを可能にすると共に、バッテリサイズの小型化を達成することが求められてきた。また、このような要請を満たす素子自体の適用範囲を広げることにより量産効果により使用する素子の数量が増えコストダウンにつなげることも望まれてきた。
【0010】
本発明の目的は、自動車用半導体ヒューズの低消費電流化を図ると共に通電電流が非常に小さい場合のスイッチングを可能にする車両の電源供給装置及び電源供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る車両の電源供給装置は、
電源と負荷との間に半導体リレーが配置された車両の電源供給装置において、
第1の半導体リレーと、第2の半導体リレーと、前記第1の半導体リレーは駆動用の昇圧器を有しかつ前記第1の半導体リレー及び第2の半導体リレーを制御する制御部と、を備え、
車両の定常状態においては前記昇圧器を介して前記第1の半導体リレーを駆動して前記負荷に電力を供給すると共に、車両の特定の状態を検出した場合に前記第1の半導体リレーの駆動に変えて前記第2の半導体リレーを駆動させることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の請求項5に係る車両の電源供給方法は、
電源と負荷との間に半導体リレーが配置された車両の電源供給方法において、
第1の半導体リレーと、第2の半導体リレーと、前記第1の半導体リレーは駆動用の昇圧器を有しかつ前記第1の半導体リレー及び第2の半導体リレーを制御する制御部と、を備えた車両の電源供給装置を用意し、
前記電源供給装置を介して車両が定常状態にあるか特定の状態にあるかを判断し、
車両が定常状態にあると前記電源供給装置が判断した場合、前記昇圧器を介して前記第1の半導体リレーを駆動して前記負荷に電力を供給すると共に、車両が特定の状態にあると前記電源供給装置が判断した場合、前記第1の半導体リレーの駆動に変えて前記第2の半導体リレーを駆動させることを特徴としている。
【0013】
車両の定常状態においては、昇圧器を介して第1の半導体リレーを駆動させ、車両の特定の状態を検出した場合には第1の半導体リレーの駆動に変えて第2の半導体リレーを駆動させるようにしたので、車両の特定の状態において、消費電流の非常に大きい昇圧器を介して第1の半導体リレーを駆動する必要がなく、半導体リレーの駆動の低消費電力化を図ることが可能となる。
【0014】
また、車両の特定の状態における半導体リレーの使用の要請にも応えることができ、係る半導体リレーの量産化に伴うコストダウンを達成することも可能となる。
【0015】
また、車両の状態の如何に係わらず昇圧器を介して常に半導体リレーを駆動させる必要がなくなるので、バッテリの消費電力の低減を図り、ひいてはバッテリの小型化を実現することが可能となる。
【0016】
また、本発明の請求項2に係る車両の電源供給装置は、請求項1に記載の車両の電源供給装置において、
前記制御部は、電線保護監視部を更に備え、
車両の特定の状態を検出した場合に前記電線保護監視部の監視機能を停止させることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の請求項6に係る車両の電源供給方法は、請求項5に記載の車両の電源供給方法において、
前記制御部は、電線保護監視部を更に備え、
車両の特定の状態を検出した場合に前記電線保護監視部の監視機能を停止させることを特徴としている。
【0018】
車両の特定の状態を検出したときに電線保護監視部の監視機能を停止させることで、車両の定常状態においてのみ電線保護監視部が作用するようになる。電線保護監視部は、例えば車両の走行中など車両自体が振動を受けるような状態において生じ易い電線の短絡等を監視するのを主な機能としているので、車両の定常状態においてのみ、即ち電線保護監視部を必要にして十分な状態においてのみ機能させることができる。その結果、バッテリの消費電力の低減を図り、ひいてはバッテリの小型化を実現することが可能となる。
【0019】
また、本発明の請求項3に係る車両の電源供給装置は、請求項1又は請求項2に記載の車両の電源供給装置において、
前記制御部は、前記第1の半導体リレーを制御する第1の半導体リレー制御部と、前記第2の半導体リレーを制御する第2の半導体リレー制御部とを備え、
車両の特定の状態において前記第1の半導体リレー制御部をOFFさせることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の請求項7に係る車両の電源供給方法は、請求項5又は請求項6に記載の車両の電源供給方法において、
前記制御部は、前記第1の半導体リレーを制御する第1の半導体リレー制御部と、前記第2の半導体リレーを制御する第2の半導体リレー制御部とを備え、
車両の特定の状態において前記第1の半導体リレー制御部をOFFさせることを特徴としている。
【0021】
車両の特定の状態において第1の半導体リレー制御部をオフさせることで、この状態で消費電流の非常に大きい昇圧器を介して第1の半導体リレーを駆動させる必要がなくなり、バッテリの消費電力の低減を図り、ひいてはバッテリの小型化を実現することが可能となる。
【0022】
また、本発明の請求項4に係る車両の電源供給装置は、請求項1乃至請求項3に記載の車両の電源供給装置において、
前記車両の特定の状態は車両の駐車状態であることを特徴としている。
【0023】
例えばドアロック、ドアロック解除等を含むボディECU、室内イルミネーション駆動等の機能を有しているボディECU、ナビゲーション、駐車中にシート位置をメモリしておくためのシートECU、ハンドル周りのスイッチを制御するコンビスイッチECU等には、駐車時でもメモリの内容を保持したりスイッチが押されるか監視したりするために通電が必要となる。この際、本発明によると、車両の特定の状態が駐車状態であることで、消費電流の大きい昇圧器を介して駆動させる必要のない第2の半導体リレーを電源供給として用いることができる。その結果、車両が駐車状態にある際に常にこれらのデバイスを作動させながらバッテリの消費電力の低減を図ることができ、ひいてはバッテリの小型化を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、自動車用半導体ヒューズの低消費電流化を図ると共に通電電流が非常に小さい場合のスイッチングを可能とする車両の電源供給装置及び電源供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の電源供給装置のブロック構成図である。
【図2】図1に示したブロック構成図のうち、マイコンと第1半導体リレー駆動制御部のみが作動している状態を示すブロック図である。
【図3】図1に示したブロック構成図のうち、マイコンと第2半導体リレー駆動制御部のみが作動している状態を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両の電源供給装置の電源供給方法を説明するフローチャートである。
【図5】図1に示した車両の電源供給装置の変形例を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の電源供給装置及び電源供給方法について図面に基づいて説明する。
【0027】
最初に、本発明の一実施形態に係る車両の電源供給装置1の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両の電源供給装置のブロック構成図である。また、図2は、図1に示したブロック構成図のうち、マイコン130と第1半導体リレー駆動制御部110のみが作動している状態を示すブロック図である。また、図3は、図1に示したブロック構成図のうち、マイコン130と第2半導体リレー駆動制御部120のみが作動している状態を示すブロック図である。
【0028】
図1乃至図3に示すように、車両のバッテリに接続された12Vの電源ラインと車両の各負荷21,22,・・・との間には従来のNchFETからなり過電流に対処するヒューズとしての役目を果たす第1の半導体リレー11に加えてPchFETからなり通電電流が非常に小さい場合のスイッチング素子としての役目を果たす第2の半導体リレー12がこの第1の半導体リレー11と並列に接続されている。また、第1の半導体リレー11と第2の半導体リレー12とを駆動する制御部100は、マイコン130と、第1半導体リレー駆動制御部110と、第2半導体リレー駆動制御部120とから構成されている。そして、これらマイコン130、第1半導体リレー駆動制御部110、及び第2半導体リレー駆動制御部120には、バッテリ(図示せず)の12Vから降圧した5V電源15から電力が供給されるようになっている。
【0029】
NchFET11とPchFET12は、上述のマイコン130、第1半導体リレー駆動制御部110及び第2半導体リレー駆動制御部120によって択一的に駆動されるようになっている。なお、第1半導体リレー駆動制御部110と第2半導体リレー駆動制御部120は、本実施形態の場合、カスタムICとして構成されている。また、NchFET11とPchFET12に接続された複数の負荷21,22,・・・は、例えば車両の定常状態(車両の運転中やエンジンのアイドリング時等の状態)において駆動させる必要のあるイグニッション、パワーステアリング駆動ソレノイド、ヘッドライトやテールライト等の灯火類、ドアロック施錠/解除装置等であると共に、車両の特定の状態である非定常状態(車両の駐車状態)においてメモリの内容を保持したりスイッチが押されるか監視したりするために通電が必要となるドアロック、ドアロック解除等を含むボディECU、室内イルミネーション駆動等の機能を有しているボディECU、ナビゲーション、駐車中にシート位置をメモリしておくためのシートECU、ハンドル周りのスイッチを制御するコンビスイッチECU等である。なお、負荷21は車両のバッテリからの電力供給を必要とするものを広く含み、例えばECUも負荷の一つとして定義付けすることができる。
【0030】
ここで、第1半導体リレー駆動制御部110は、レギュレータ111、NchFETオン/オフ入力手段112と、FETゲート駆動手段113と、チャージポンプ114と、電流モニタ出力手段115と、電流検出アンプ116とを備えている。
【0031】
また、第2半導体リレー駆動制御部120は、PchFETオン/オフ入力手段122と、FETゲート駆動手段123とを備えている。
【0032】
また、マイコン130は、多重通信手段131と、NchFETオン/オフ出力手段132と、電線保護機能手段133と、PchFETオン/オフ出力手段134と、を備えている。なお、マイコン130は、第1半導体リレー駆動制御部110と第2半導体リレー駆動制御部120との切り替えを行うと共に、マイコン130の多重通信手段131に接続された多数のECU51,52,・・・との通信を行うようになっている。
【0033】
レギュレータ111は、5V電源15の電圧安定化を図る。NchFETオン/オフ入力手段112は、車両が特定の状態(即ち、本実施形態においては車両が停車してイグニッションスイッチオフとしての状態)となった情報をマイコン130のNchFETオン/オフ出力手段132から受け取り、車両が特定の状態(駐車状態)以外の定常状態においてチャージポンプ114によって例えば20Vなどドレイン電圧の12Vよりも大きい電圧でFETゲート駆動手段113を駆動させ、NchFET11を作動状態(アクティブ)にする。電流検出アンプ116は、NchFETの両端に接続され、NchFET作動時に例えばショート(短絡)等によって生じる異常電流が流れると、電流モニタ出力手段115を介してマイコン130の電線保護機能手段131に電流異常の発生を伝えるようになっている。
【0034】
また、マイコン130のPchFETオン/オフ出力手段134は、マイコン130のNchFETをオン/オフ出力手段132のオンオフと反転する情報を同期して出力するようになっており、車両が特定の状態(駐車状態)においてこの出力を第2半導体リレー駆動制御部120のPchFETオン/オフ入力手段122に入力させて、FETゲート駆動手段123を駆動させ、PchFET12を駆動させるようになっている。この際、PchFET12のゲートに印加される電圧は12Vより小さければ良く、GNDラインから得られる0Vでも良い。
【0035】
また、マイコン130の多重通信手段131は、上述したように複数のECU51,52,・・・間の通信を行う役目を果たしている。また、NchFETオン/オフ出力手段132は、上述した第1半導体リレー駆動制御部110において説明したように、マイコン130に接続された各ECU51,52,・・・等の情報に基づき、車両が定常状態からイグニッションオフとなり駐車状態と移行したことを検出して、この情報を第1半導体リレー駆動制御部110に伝えたり、車両が駐車状態からイグニッションオンとなり定常状態に移行したことを検出して、この情報を第1半導体リレー駆動制御部110に伝えるようになっている。
【0036】
また、PchFETオン/オフ出力手段134は、上述した第2半導体リレー駆動制御部120において説明したように、マイコン130に接続された各ECU51,52,・・・等の情報に基づき、車両が定常状態からイグニッションオフとなり駐車状態と移行したことを検出して、この情報を第2半導体リレー駆動制御部120に伝えたり、車両が駐車状態からイグニッションオフとなり定常状態に移行したことを検出して、この情報を第2半導体リレー駆動制御部120に伝えるようになっている。
【0037】
また、電線保護機能手段133は、上述した第1半導体リレー駆動制御部110において説明したように、NchFET11の動作時、即ち車両の定常状態であって車両走行中に加わった振動等から車両の電線が短絡するような状態になるのを、第1半導体リレー駆動制御部110の電流検出アンプ116と電流モニタ出力手段115を介して監視している。
【0038】
NchFET11は、通常用いられるスイッチング素子であるが、ゲートの端子に与える電圧をドレインの電圧よりも高くしなければスイッチング動作が行えない特質を有しており、チャージポンプ114はこのNchFET11を正しく作動させるようにNchFET11のドレインの電圧である12Vよりも大きな電圧(例えば20V)をゲートの端子に印加するように昇圧している。
【0039】
一方、PchFET12は、、ゲートの端子に与える電圧がドレインよりも低くて良い特質を有している。そのため、PchFET12を正しく作動させるにあたってこのゲートの端子に12Vよりも小さい電圧を加えれば良く、GNDにつないで0Vとしても良い。その結果、PchFETを駆動するにあたっては、チャージポンプ114が不要となる。
【0040】
即ち、車両の駐車中にメモリの内容を保持したりスイッチが押されるか監視するために通電が必要となるドアロック、ドアロック解除等を含むボディECU、室内イルミネーション駆動等の機能を有しているボディECU、ナビゲーション、駐車中にシート位置をメモリしておくためのシートECU、ハンドル周りのスイッチを制御するコンビスイッチECU等に比較的大きくない電流が流れる状態において、スイッチング素子にNchFETを用いることは、チャージポンプを必要とすることからも明らかなオーバースペックとなるが、本発明はそのような点を回避し、車両の駐車中に必要かつ十分な電流のみ消費するようにしている。その結果、車両を長期間に亘って駐車していても、これらのシステムに関するスイッチングをPchFETが果たすことができ、かつバッテリ上がりなどの不具合を防止することが可能となる。
【0041】
続いて、本発明に係る車両の電源供給装置の電源供給方法を図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0042】
最初に、バッテリOFF(ステップS101)からバッテリON(ステップS102)に移行して車両の定常状態となる(ステップS103)。このステップS103の定常状態においては、電線保護監視中の状態となり、NchFETがON(チャージポンプがON)となり、PchFETがOFFとなる。これは、図2に示す状態、即ち第1半導体リレー駆動制御部110とマイコン130のみが実線でアクティブ(作動状態)となっており、第2半導体リレー駆動制御部120が点線でノンアクティブ(非作動状態)となっている状態に相当する。
【0043】
続いて、駐車状態に移行したか否かを判定する(ステップS104)。この場合の駐車状態移行の判断を行うに当たって、例えばスマート/ワイヤレスドアロックが作動したか、又はこれに加えてスマートエリア範囲から外れたか、又は一定時間(例えば30分)スイッチ変化がない場合等に基づいてこれを判断する。なお、このステップS104で駐車以外と判断した場合は、ステップS103のルーチンに戻る。
【0044】
一方、ステップS104において駐車状態に移行したと判断したときは、負荷(ECU)駐車時消費電流モードに移行したか否かを判断する(ステップS105)。ここで、ステップS105の負荷(ECU)駐車時消費電流モードに移行したか否かの判断条件の一例としては、負荷の消費電流を監視して判断したり、駐車状態判定からの経過時間から判断する。そして、ステップS105において負荷(ECU)駐車時消費電流モードに移行していないと判断した場合は、このステップS105の判断ルーチンを繰り返す。
【0045】
続いて、ステップS105で負荷(ECU)駐車時消費電流モードに移行したと判断した場合は、電線保護監視機能を停止する。(ステップS106)。そして、PchFETをONにする(ステップS107)。そして、NchFETをOFFにする(ステップS108)。そして、チャージポンプをOFFにする(ステップS109)。そして、マイコンSTOPモードに移行する(ステップS110)。なお、上述したステップS107乃至ステップS110について、実質的には同時に行われる。これは、図3に示す状態、即ち第2半導体リレー駆動制御部120とマイコン130のみが実線でアクティブ(作動状態)となっており、第1半導体リレー駆動制御部110が点線でノンアクティブ(非作動状態)となっている状態に相当する。
【0046】
続いて、駐車状態以外に移行したか否かを判定する(ステップS120)。ここで、ステップS120において駐車状態以外に移行したか否かを判定するにあたって、一例としてはスマートエリア侵入か、ドアアンロックか、ドア開か、又は駐車状態以外に移行する何れかのスイッチ変化があった場合等に基づいて判定する。そして、ステップS120で駐車状態以外に移行していないと判定した場合、即ち車両が駐車中であると判定した場合はステップS120を繰り返す。
【0047】
一方、ステップS120で車両が駐車状態以外に移行したと判定した場合は、マイコンアクティブモードへ移行する(ステップS121)。そして、チャージポンプをONにし(ステップS122)、NchFETをONにし(ステップS123)、PchFETをOFFにし(ステップS124)、電線保護監視動作に移行する(ステップS125)。そして、この電線保護監視動作に移行した後には、ステップS103の定常状態、即ち電線保護監視中になると共に、図2に示したように第1半導体リレー駆動制御部110をアクティブにし、NchFET11をヒューズとして作動させる状態に移行する。
【0048】
以上説明したように、本発明に係る車両の電源供給装置及び電源供給方法によると、車両の定常状態においては、昇圧器を介して第1の半導体リレーを駆動させ、車両の特定の状態を検出した場合には第1の半導体リレーの駆動に変えて第2の半導体リレーを駆動させるようにしたので、車両の特定の状態における半導体リレーの駆動の低消費電力化を図ることが可能となる。また、車両の特定の状態における半導体リレーの使用の要請にも応えることができ、係る半導体リレーの量産化に伴うコストダウンを達成することも可能となる。
【0049】
また、車両の状態の如何に係わらず昇圧器を介して常に半導体リレーを駆動させる必要がなくなるので、バッテリの消費電力の低減を図り、ひいてはバッテリの小型化を実現することが可能となる。
【0050】
好ましくは、車両の特定の状態を検出したときに電線保護監視部の監視機能を停止させるのが良い。これによって、車両の定常状態においてのみ電線保護監視部が作用するようになる。電線保護監視部は、例えば車両の走行中など車両自体が振動を受けるような状態において生じ易い電線の短絡等を監視するのを主な機能としているので、車両の定常状態においてのみ、即ち電線保護監視部を必要にして十分な状態においてのみ機能させることができる。その結果、バッテリの消費電力の低減を図り、ひいてはバッテリの小型化を実現することが可能となる。
【0051】
また、好ましくは、制御部は、第1の半導体リレーを制御する第1の半導体リレー制御部と、第2の半導体リレーを制御する第2の半導体リレー制御部とを備え、車両の特定の状態において第1の半導体リレー制御部をOFFさせるのが良い。車両の特定の状態において第1の半導体リレー制御部をオフさせることで、バッテリの消費電力の低減を図り、ひいてはバッテリの小型化を実現することが可能となる。
【0052】
また、好ましくは、車両の特定の状態は車両の駐車状態であるのが良い。車両の特定の状態が駐車状態であることで、例えば車両の駐車中にメモリの内容を保持したりスイッチが押されるか監視するために通電が必要となるドアロック、ドアロック解除等を含むボディECU、室内イルミネーション駆動等の機能を有しているボディECU、ナビゲーション、駐車中にシート位置をメモリしておくためのシートECU、ハンドル周りのスイッチを制御するコンビスイッチECU等にのみ消費電流の大きい昇圧器を介して駆動させる必要のない第2の半導体リレーをスイッチング素子として用いることができるので、車両が駐車状態にある際に常にこれらのデバイスを作動させながらバッテリの消費電力の低減を図ることができ、ひいてはバッテリの小型化を実現することが可能となる。
【0053】
また、以上の説明に加えて本発明の特徴点を強調すると、車両の駐車中は通電電流が非常に低いため、NchFETのチャージポンプを停止させ、更にNchFETもOFFさせ、小型のPchFETに切り替え通電させることにある。従来の車両の電源供給装置は、NchFETをハイサイドで駆動するためチャージポンプを使用しているが、この理由として大電流駆動の場合、安価で低ON抵抗化されているNchFETをチャージポンプを用いてハイサイドで使用するのが一般的であることが挙げられる。しかしながら、本発明は、ドアロック、ドアロック解除等を含むボディECU、室内イルミネーション駆動等の機能を有しているボディECU、ナビゲーション、駐車中にシート位置をメモリしておくためのシートECU、ハンドル周りのスイッチを制御するコンビスイッチECU等に関しては、車両の特定の状態である非定常状態(車両の駐車状態)においてメモリの内容を保持したりスイッチが押されるか監視するために通電が必要となるが、その通電電流は大きくても数十mAとなり小さい電流になるため、駆動を小型のPchFETに切り替え、チャージポンプも停止させ消費電流を下げることに着目している点に特に技術的意義があると言える。
【0054】
なお、図5は、図1に示した車両の電源供給装置の変形例を示すブロック構成図である。図1に示した車両の電源供給装置において、PchFETオン/オフ入力手段及びFETゲート駆動手段を省いて、車両の駐車時においてPchFETオン/オフ出力手段からからPchFETを直接駆動するようにしても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 車両の電源供給装置
11 NchFET(第1の半導体リレー)
12 PchFET(第2の半導体リレー)
15 5V電源
21,22,・・・ 負荷
51,52, ECU
100 制御部
110 第1半導体リレー駆動制御部
111 レギュレータ
112 NchFETオン/オフ入力手段
113 FETゲート駆動手段
114 チャージポンプ
115 電流モニタ出力手段
116 電流検出アンプ
120 第2半導体リレー駆動制御部
134 PchFETオン/オフ出力手段
122 PchFETオン/オフ入力手段
123 FETゲート駆動手段
130 マイコン
131 多重通信手段
132 NchFETオン/オフ出力手段
133 電線保護機能手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と負荷との間に半導体リレーが配置された車両の電源供給装置において、
第1の半導体リレーと、第2の半導体リレーと、前記第1の半導体リレー駆動用の昇圧器を有しかつ前記第1の半導体リレー及び第2の半導体リレーを制御する制御部と、を備え、
車両の定常状態においては前記昇圧器を介して前記第1の半導体リレーを駆動して前記負荷に電力を供給すると共に、車両の特定の状態を検出した場合に前記第1の半導体リレーの駆動に変えて前記第2の半導体リレーを駆動させることを特徴とする車両の電源供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、電線保護監視部を更に備え、
車両の特定の状態を検出した場合に前記電線保護監視部の監視機能を停止させることを特徴とする、請求項1に記載の車両の電源供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の半導体リレーを制御する第1の半導体リレー制御部と、前記第2の半導体リレーを制御する第2の半導体リレー制御部とを備え、
車両の特定の状態において前記第1の半導体リレー制御部をOFFさせることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の車両の電源供給装置。
【請求項4】
前記車両の特定の状態は車両の駐車状態であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の車両の電源供給装置。
【請求項5】
電源と負荷との間に半導体リレーが配置された車両の電源供給方法において、
第1の半導体リレーと、第2の半導体リレーと、前記第1の半導体リレー駆動用の昇圧器を有しかつ前記第1の半導体リレー及び第2の半導体リレーを制御する制御部と、を備えた車両の電源供給装置を用意し、
前記電源供給装置を介して車両が定常状態にあるか特定の状態にあるかを判断し、
車両が定常状態にあると前記電源供給装置が判断した場合、前記昇圧器を介して前記第1の半導体リレーを駆動して前記負荷に電力を供給すると共に、車両が特定の状態にあると前記電源供給装置が判断した場合、前記第1の半導体リレーの駆動に変えて前記第2の半導体リレーを駆動させることを特徴とする車両の電源供給方法。
【請求項6】
前記制御部は、電線保護監視部を更に備え、
車両の特定の状態を検出した場合に前記電線保護監視部の監視機能を停止させることを特徴とする、請求項5に記載の車両の電源供給方法。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1の半導体リレーを制御する第1の半導体リレー制御部と、前記第2の半導体リレーを制御する第2の半導体リレー制御部とを備え、
車両の特定の状態において前記第1の半導体リレー制御部をOFFさせることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の車両の電源供給方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−213389(P2010−213389A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54250(P2009−54250)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】