車両の駆動力制御装置
【課題】マニュアル変速モードが選択されている場合においても、運転モード毎の駆動力特性の差をドライバに実感させることができる車両の駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】駆動力特性のモードMを複数備えたパワートレイン10において、当該パワートレイン10を構成する無段変速機3の制御モードとしてマニュアル変速モードが選択されているときの自動アップシフト回転数Nuを、パワートレイン10が発生させる駆動力特性のモードM毎に異なる値に設定する。これにより、基本的には変速についてドライバの意思を尊重するマニュアル変速モードにおいても、各モードMにおける駆動力特性の特徴(本実施形態においてはエンジン1の出力特性の相違をベースとする駆動力特性の特徴)を明確に差異付けることができる。
【解決手段】駆動力特性のモードMを複数備えたパワートレイン10において、当該パワートレイン10を構成する無段変速機3の制御モードとしてマニュアル変速モードが選択されているときの自動アップシフト回転数Nuを、パワートレイン10が発生させる駆動力特性のモードM毎に異なる値に設定する。これにより、基本的には変速についてドライバの意思を尊重するマニュアル変速モードにおいても、各モードMにおける駆動力特性の特徴(本実施形態においてはエンジン1の出力特性の相違をベースとする駆動力特性の特徴)を明確に差異付けることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の制御モードとして、予め設定された複数の変速段の何れかを手動によって選択可能なマニュアル変速モードを備えた車両の駆動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載されるパワートレインにおいては、ドライバのアクセル操作に対して発生させる駆動力特性が異なる複数のモードを備え、これらのモードを選択的に切り換えることにより、燃費向上を重視した走行やスポーツ性を重視した走行等を実現する技術が数多く提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、駆動力特性として、アクセル開度に対して出力トルクが略リニアに変化するノーマルモードと、エンジントルクをセーブしてイージードライブ性と低燃費性との双方を両立させるセーブモードと、エンジンの低回転域から高回転域までレスポンスに優れる出力特性を実現したパワー重視のパワーモードとを設定し、センターコンソールに設けられているシャトルスイッチからの操作入力に応じて、ドライバの好みに応じた運転モードを選択可能とした技術が開示されている。
【0004】
ところで、この種のパワートレインを構成する自動変速機においては、変速モードとして、予め設定された変速特性に従って変速比を自動で制御する自動変速モードに加え、予め設定された複数の変速段の何れかを手動で選択することによって所定の固定変速比に変速可能なマニュアル変速モードを備えたものが広く知られている。この場合、マニュアル変速モードにおける変速比は、基本的には、ドライバが選択した変速段の固定変速比で保持されるが、例えば、エンジンの過回転防止を目的として、自動変速機の入力回転数が予め設定された一定の自動アップシフト回転数を超えた場合等には自動で高速段側の変速比に変速される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3872507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような自動変速機を備えたパワートレインにおいて、マニュアル変速モードの選択時に行われる自動変速を、単に一定の自動アップシフト回転数等に基づいて行っただけでは、運転モード毎の駆動力特性の差をドライバに実感させることが困難な場合がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、マニュアル変速モードが選択されている場合においても、運転モード毎の駆動力特性の差をドライバに実感させることができる車両の駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アクセル操作に対してパワートレインが発生させる駆動力特性として複数のモードを備え、且つ、前記パワートレインを構成する自動変速機の制御モードとして、予め設定された変速特性に従って変速比を自動で制御する自動変速モードと、予め設定された複数の変速段の何れかを手動で選択可能なマニュアル変速モードと、を備えた車両の駆動力制御装置であって、前記マニュアル変速モードの選択時に前記自動変速機の入力回転数が予め設定された自動アップシフト回転数を越えた際に変速比を高速段側に自動で変速させる自動アップシフト制御手段を備え、前記自動アップシフト制御手段には、前記自動アップシフト回転数として、前記駆動力特性のモード毎に異なる回転数が設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両の駆動力制御装置によれば、マニュアル変速モードが選択されている場合においても、運転モード毎の駆動力特性の差をドライバに実感させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両に搭載されるパワートレインの概略構成図
【図2】エンジンのノーマルモードマップ、セーブモードマップ、及び、パワーモードマップをそれぞれ示す概念図
【図3】エンジンのスロットル制御ルーチンを示すフローチャート
【図4】自動変速用マップを示す概念図
【図5】手動変速用マップを示す概念図
【図6】無段変速機の変速制御ルーチンを示すフローチャート
【図7】駆動力特性のモードとしてノーマルモード、セーブモード、及び、パワーモードが選択された各マニュアル変速モード時における自動アップシフト及びダウンシフトによる変速比の推移の一例を示す説明図
【図8】駆動力特性の各モードが選択されたマニュアル変速モード時においてアクセル踏込操作に対する車速の推移の一例を示す説明図
【図9】マニュアル変速モード時におけるダウンシフトによる変速比の推移の変形例を示す説明図
【図10】手動変速用マップの変形例を示す概念図
【図11】エンジンのスロットル制御ルーチンの変形例を示すフローチャート
【図12】駆動力特性の各モードが選択されたマニュアル変速モード時においてアクセル踏込操作に対する車速の推移の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1は車両に搭載されるパワートレインの概略構成図、図2(a)〜(c)はエンジンのノーマルモードマップ、セーブモードマップ、及び、パワーモードマップをそれぞれ示す概念図、図3はエンジンのスロットル制御ルーチンを示すフローチャート、図4は自動変速用マップを示す概念図、図5は手動変速用マップを示す概念図、図6は無段変速機の変速制御ルーチンを示すフローチャート、図7(a)〜(c)は駆動力特性のモードとしてノーマルモード、セーブモード、及び、パワーモードが選択された各マニュアル変速モード時における自動アップシフト及びダウンシフトによる変速比の推移の一例を示す説明図、図8は駆動力特性の各モードが選択されたマニュアル変速モード時においてアクセル踏込操作に対する車速の推移の一例を示す説明図、図9はマニュアル変速モード時におけるダウンシフトによる変速比の推移の変形例を示す説明図、図10は手動変速用マップの変形例を示す概念図、図11はエンジンのスロットル制御ルーチンの変形例を示すフローチャート、図12は駆動力特性の各モードが選択されたマニュアル変速モード時においてアクセル踏込操作に対する車速の推移の一例を示す説明図である。
【0012】
図1において符号1はエンジンを示し、このエンジン1は、電磁クラッチ或いはトルクコンバータ等の発進クラッチ2を介して自動変速機の一例である無段変速機3が連設されることにより、パワートレイン10の要部を構成する。
【0013】
無段変速機3は、発進クラッチ2に連設する前後進切換装置4を有し、この前後進切換装置4から延出するプーリ入力軸5bにはプライマリプーリ5aが軸支されている。また、プーリ入力軸5bに対して平行に配置されたプーリ出力軸5cにはセカンダリプーリ5dが軸支され、これらプライマリプーリ5aとセカンダリプーリ5dとの間には、駆動ベルト5eが巻装されている。さらに、プーリ出力軸5cには、終減速装置6の減速歯車群6aを介してディファレンシャル装置6bが連設され、このディファレンシャル装置6bには、前輪或いは後輪の駆動輪7aを軸着する駆動軸7が連設されている。
【0014】
また、プライマリプーリ5aにはプライマリ油圧室5fが併設され、このプライマリ油圧室5fに油圧制御回路8から供給されるプライマリ油圧により、プライマリプーリ5aの溝幅が調整される。一方、セカンダリプーリ5dにはセカンダリ油圧室5gが併設され、このセカンダリ油圧室5gに油圧制御回路8から供給されるセカンダリ油圧により、トルク伝達に必要な張力が駆動ベルト5eに付与される。油圧制御回路8は後述するトランスミッション制御装置(T/M_ECU)20において制御され、この油圧制御を通じて両プーリ5a,5dの溝幅が互いに反比例状態に制御されることにより、無段変速機3は所望の変速比を実現する。
【0015】
T/M_ECU20は、CAN(Controller Area Network)通信等の車内通信回線23を通じて、エンジン制御装置(E/G_ECU)21、及び、統合制御装置(統合_ECU)22等の各種制御装置と相互通信可能に接続されている。各ECU20〜22は、マイクロコンピュータ等を主体に構成され、周知のCPU、ROM、RAM及びEEPROM等の不揮発性記憶手段等を有している。
【0016】
T/M_ECU20の入力側には、例えば、プライマリプーリ5aの回転数(プライマリ回転数Np)を検出するプライマリ回転数センサ38、セカンダリプーリ5dの回転数(セカンダリ回転数Ns)を検出するセカンダリ回転数センサ39、セレクト操作部36で選択されたレンジを検出するインヒビタスイッチ37等が接続されている。また、T/M_ECU20の出力側には、油圧制御回路8等のアクチュエータ類が接続されている。
【0017】
ここで、本実施形態において、セレクト操作部36は、例えば、パーキング(P)レンジ、リバース(R)レンジ、ニュートラル(N)レンジ、及び、ドライブ(D)レンジが設定されたメインゲート36aと、マニュアル(M)レンジが設定されたサブゲート36bとを有する。これら各ゲート36a,36b上の各レンジはセレクトレバー36cを通じて選択可能となっており、選択されたレンジはインヒビタスイッチ37で検出される。また、サブゲート36bには、マニュアルレンジを挟んだ両側に、アップシフト(+)位置とダウンシフト(−)位置とが設定され、さらに、これらアップシフト位置及びダウンシフト位置には、後述するマニュアルスイッチ40が併設されている。そして、マニュアルレンジの選択中にセレクトレバー36cがアップシフト位置或いはダウンシフト位置に操作されると、マニュアルスイッチ40は、アップシフト信号或いはダウンシフト信号を出力する。なお、マニュアルスイッチ40は、例えば、ステアリングに配設されるパドルスイッチ等で構成されてもよい。
【0018】
E/G_ECU21の入力側には、例えば、クランク軸の回転からエンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ30、エアクリーナの直下流等に配設されて吸入空気量Qを検出する吸入空気量センサ31、アクセルペダルの踏込量から実アクセル開度θaccを検出するアクセル開度センサ32、吸気通路15に介装された電子制御式のスロットル弁16の開度θthを検出するスロットル開度センサ33等が接続されている。また、E/G_ECU21の出力側には、例えば、所定に計量された燃料を噴射するインジェクタ17、スロットル弁16に設けられているスロットルアクチュエータ16a等のエンジン駆動を制御するアクチュエータ類が接続されている。
【0019】
統合_ECU22の入力側には、アクセル操作に対してパワートレイン10が発生させる駆動力特性の制御モードを選択的に切り換えるためのモード選択スイッチ35、上述のマニュアルスイッチ40等が接続されている。
【0020】
ここで、本実施形態において、パワートレイン10の駆動力特性のモードとしては、例えば、ノーマルモードM1、セーブモードM2、及び、パワーモードM3からなる3つのモードMが設定されており、統合_ECU22は、モード選択スイッチ35を通じてドライバにより選択された何れかのモード情報を、車内通信回線23を介してT/M_ECU20及びE/G_ECU21等に出力する。なお、本実施形態のモード選択スイッチ35は、プッシュスイッチを併設する中点自動復帰式のシャトルスイッチが採用され、例えば、ドライバによる左側への回転動作がなされたときノーマルモードM1を判定し、押圧操作がなされたときセーブモードM2を判定し、右側への回転動作がなされたときパワーモードM3を判定する。
【0021】
E/G_ECU21のメモリ内には、例えば、エンジン出力特性を示すマップとして、3種類のモードマップMpe1,Mpe2,Mpe3が予め設定されて格納されている。図2(a)〜(c)に示すように、各モードマップは、アクセル開度θaccとエンジン回転数Neとを格子軸とし、各格子点にエンジン出力指示値(目標トルク)を格納する3次元マップで構成されている。
【0022】
これらの各モードマップMpe1,Mpe2,Mpe3は、基本的には、ドライバによるモード選択スイッチ35の操作によって選択される。すなわち、E/G_ECU21は、モード選択スイッチ35にてノーマルモードM1が選択されている場合にノーマルモードマップMpe1を選択し、セーブモードM2が選択されている場合にセーブモードマップMpe2を選択し、パワーモードM3が選択されている場合にパワーモードマップMpe3を選択する。
【0023】
そして、E/G_ECU21は、選択したモードマップMpeと各センサ類からの検出信号等に基づき、インジェクタ17に対する燃料噴射タイミング、及び燃料噴射パルス幅(パルス時間)を設定する。さらに、E/G_ECU21は、スロットルアクチュエータ16aに対してスロットル開度信号を出力し、スロットル弁16の開度を制御する。
【0024】
ここで、図2(a)に示すノーマルモードマップMpe1は、アクセル開度θaccが比較的小さい領域で目標トルクがリニアに変化する特性に設定されており、スロットル弁16の開度θthが全開付近で最大目標トルクとなるように設定されている。
【0025】
また、図2(b)に示すセーブモードマップMpe2は、ノーマルモードマップMpe1に比し、目標トルクの上昇が抑えられており、アクセルペダルを全踏しても、スロットル弁16は全開せず、相対的にアクセルペダルの踏み込みに対し、スロットル弁16の開度変化がノーマルモードよりも小さくなる。従って、ノーマルモードと同じアクセルペダルの踏み込み量であっても、スロットル開度θeが小さく、出力トルクの上昇が抑制される。その結果、セーブモードマップMpe2に基づき出力トルクを抑制した走行を行うことで、アクセルペダルを思い切り踏み込む等のアクセルワークを楽しむことができる。さらに、目標トルクの上昇が抑えられているため、イージードライブ性と低燃費性との双方をバランス良く両立させることができ、例えば、3リッタエンジンを搭載する車両であっても、2リッタエンジン相当の十分な出力を確保しながらスムーズな出力特性とし、特に街中等の実用領域における扱いやすさを重視した目標トルクが設定される。
【0026】
また、図2(c)に示すパワーモードマップMpe3は、略全運転領域でアクセル開度θaccの変化に対する目標トルクの変化率が大きく設定されている。従って、例えば、3リッタエンジンを搭載する車両であれば、3リッタエンジンの有するポテンシャルを最大限に発揮できるような目標トルクが設定される。
【0027】
T/M_ECU20のメモリ内には、例えば、上述のモードマップMpe1〜Mpe3にそれぞれ適合した変速特性にて無段変速機3の変速比を自動制御するための自動変速用マップMpt1〜Mpt3(図4参照)と、無段変速機3の変速比を予め設定された変速段(例えば、1〜6速の変速段)の固定変速比に制御するための手動変速用マップMptm(図5参照)とが予め設定されて格納されている。そして、T/M_ECU20は、選択した変速用マップMptと各センサ類からの検出信号等に基づき、油圧制御回路8から各油圧室5f,油圧室5gに供給する各油圧の制御を通じて無段変速機3の変速比を制御する。
【0028】
これらのマップのうち、自動変速用マップMpt1〜Mpt3は、セレクト操作部36でドライブレンジが選択されて無段変速機3に対する制御モードが自動変速制モードとなっているとき、モード選択スイッチ35で選択されたモードMに応じて選択的に用いられる。すなわち、T/M_ECU20は、エンジン1の各モードマップMpeに対応すべく、モード選択スイッチ35においてノーマルモードM1が選択されているとき自動変速用マップMpt1選択し、セーブモードM2が選択されているとき自動変速用マップMpt2を選択し、パワーモードM3が選択されているとき自動変速用マップMpt3を選択する。そして、T/M_ECU20は、例えば、選択した自動変速用マップMptを参照して現在の車速V及びアクセル開度θaccに基づく目標プライマリ回転数Nptを設定し、プライマリ回転数Npが目標プライマリ回転数Nptに収束するよう変速比を制御する。
【0029】
ここで、例えば、図4に示すように、各自動変速用マップMpt1〜Mpt3は、最大変速比であるLowから最小変速比であるオーバードライブ(OB)の間に、車速Vと目標プライマリ回転数Nptとの関係を示す変速特性ラインがアクセル開度θacc毎に設定されたマップで構成されている。この場合、各自動変速用マップMpt1〜Mpt3上の各変速特性ラインは、上述したエンジン出力特性のモードマップMpe1〜Mpe3にそれぞれ適合すべく、基本的には、車速V及びアクセル開度θaccが同一条件である場合に、モードM2での変速特性ラインがモードM1での変速特性ラインよりも相対的に低い目標プライマリ回転数Npを演算し、モードM3での変速特性ラインがモードM2での変速特性ラインよりも相対的に高い目標プライマリ回転数Npを演算するよう設定されている。
【0030】
これにより、セレクト操作部36でドライブレンジが選択された自動変速モードでの制御時には、エンジン1の出力特性に応じた適切な変速制御が行われ、モード選択スイッチ35で選択されたモード毎にそれぞれ特徴的な特性の駆動力をパワートレイン10で発生させることが可能となっている。
【0031】
一方、セレクト操作部36のレンジがドライブレンジからマニュアルレンジに変更されて無段変速機3の制御モードが自動変速モードからマニュアル変速モードに変更されると、T/M_ECU20は、変速制御用のマップとして手動変速用マップMptmを選択する。
【0032】
そして、T/M_ECU20は、基本的には、統合_ECU22を介してマニュアルスイッチ40からのアップシフト信号が入力される毎に、無段変速機3の変速比を現在の変速比よりも高速段側の固定変速比へと順次アップシフトさせる。或いは、T/M_ECU20は、統合_ECU22を介してマニュアルスイッチ40からのダウンシフト信号が入力される毎に、無段変速機3の変速比を現在の変速比よりも低速段側の固定変速比へと順次ダウンシフトさせる。
【0033】
但し、エンジン1の過回転防止等を目的として、T/M_ECU20は、無段変速機3の入力回転数であるプライマリ回転数Npが予め設定された自動アップシフト回転数Nuを越えたとき、変速比を高速段側の固定変速比へと自動で変速させる。また、所定の加速性能を確保してドライバビリティを向上すること等を目的として、T/M_ECU20は、プライマリ回転数Npが予め設定された自動ダウンシフト回転数Ndを下回ったとき、変速比を低速段側の固定変速比へと自動で変速させる。
【0034】
ここで、自動アップシフト回転数Nu及び自動ダウンシフト回転数Ndは、駆動力特性のモードM毎にそれぞれ異なる回転数に設定されている。
【0035】
具体的には、本実施形態の自動アップシフト回転数Nuは、例えば、アクセル操作に対する応答性が高い駆動力特性のモードであるほど高い回転数に設定され、パワーモードM3に対応する回転数が最も高く、次いで、ノーマルモードM1、セーブモードM2の順に低くなるよう設定されている。例えば、過回転防止等を目的としてエンジン1に許容された最大回転数が7000[rpm]であり且つ発進クラッチ2が締結された前進時のエンジン回転数Neとプライマリ回転数Npとが1:1で対応している場合において、各モードMに対応する自動アップシフト回転数Nuは、パワーモードM3に対応する自動アップシフト回転数Nu(M=M3)が7000[rpm]、ノーマルモードM1に対応する自動アップシフト回転数Nu(M=M1)が6000[rpm]、セーブモードM2に対応する自動アップシフト回転数Nu(M=M2)が5000[rpm]にそれぞれ設定されている。
【0036】
また、本実施形態の自動ダウンシフト回転数Ndは、例えば、アクセル操作に対する応答性が高い駆動力特性のモードであるほど高く設定されており、パワーモードM3に対応する回転数が最も高く、次いで、ノーマルモードM1、セーブモードM2の順に低くなるよう設定されている。例えば、各モードMに対応する自動ダウンシフト回転数Ndは、パワーモードM3に対応する自動ダウンシフト回転数Nd(M=M3)が3000[rpm]、ノーマルモードM1に対応する自動ダウンシフト回転数Nd(M=M1)が2000[rpm]、セーブモードM2に対応する自動ダウンシフト回転数Nd(M=M2)が1000[rpm]にそれぞれ設定されている。
【0037】
このように、本実施形態において、T/M_ECU20は、自動アップシフト制御手段、及び、自動ダウンシフト制御手段としての各機能を実現する。
【0038】
次に、E/G_ECU21で実行されるエンジンのスロットル制御について、図2に示すスロットル制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは設定時間毎に実行されるもので、ルーチンがスタートすると、E/G_ECU21は、先ず、ステップS101において、現在設定されているモードMを読み込んだ後、ステップS102に進む。
【0039】
ステップS101からステップS102に進むと、E/G_ECU21は、モード選択スイッチ35がON操作されたか否かを調べ、操作されていないと判定した場合、ステップS107に進む。
【0040】
一方、ステップ102において、モード選択スイッチ35がON操作されたと判定した場合、E/G_ECU21は、ステップS103に進み、ドライバが何れのモードを選択したか否かを判別する。
【0041】
そして、ステップS103において、ドライバによりノーマルモードM1が選択されたと判断したとき、E/G_ECU21は、ステップS104に進み、モードMをノーマルモードM1にセットした後(M←M1)、ステップS107に進む。
【0042】
また、ステップS103において、ドライバによりセーブモードM2が選択されたと判断したとき、E/G_ECU21は、ステップS105に進み、モードMをセーブモードM2にセットした後(M←M2)、ステップS107に進む。
【0043】
また、ステップS103において、ドライバによりパワーモードM3が選択されたと判断したとき、E/G_ECU21は、ステップS106に進み、モードMをパワーモードM3にセットした後(M←M3)ステップS107に進む。
【0044】
ステップS102、ステップS104、ステップS105、或いは、ステップS106からステップS107に進むと、E/G_ECU21は、現在選択されているモードMに対応するモードマップMpeを読み込み、現在のエンジン回転数Neとアクセル開度θaccとに基づきモードマップMpeを補間計算付きで参照して目標トルクτeを決定する。
【0045】
ステップS107からステップS108に進むと、E/G_ECU21は、目標トルクτeに対応する目標スロットル開度θeを求め、続くステップS109において、スロットル開度θthが目標スロットル開度θeに収束するようにスロットルアクチュエータ16aをフィードバック制御した後、ルーチンを抜ける。
【0046】
その結果、ドライバがアクセルペダルを操作すると、アクセル開度θaccとエンジン回転数Neとをパラメータとして、ドライバが選択したモードMに従ってスロットル弁16が開閉動作し、モードM毎に異なる出力特性でエンジン1が駆動される。
【0047】
次に、T/M_ECU20で実行される無段変速機の変速制御について、図6に示す変速制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは設定時間毎に実行されるもので、ルーチンがスタートすると、T/M_ECU20は、先ず、ステップS201において、現在セレクト操作部36で選択されているレンジが走行レンジ(すなわち、ドライブレンジ或いはマニュアルレンジ)であるか否かを調べる。
【0048】
そして、ステップS201において、現在のレンジが走行レンジ以外であると判定した場合、T/M_ECU20は、そのまま、ルーチンを抜ける。
【0049】
一方、ステップS201において現在のレンジが走行レンジであると判定した場合、T/M_ECU20は、ステップS202に進み、現在のレンジがドライブレンジであるか否か、すなわち、無段変速機3の制御のモードとして自動変速モードが選択されているか否かを調べる。
【0050】
そして、ステップS202において、現在のレンジがドライブレンジであり、制御モードとして自動変速モードが選択されていると判定した場合、T/M_ECU20は、ステップS203に進み、自動変速用マップに基づく自動変速制御を行った後、ルーチンを抜ける。すなわち、ステップS203において、T/M_ECU20は、自動変速用マップMpt1〜Mpt3の中から、モード選択スイッチ35によって現在選択されているモードMに対応する自動変速用マップMptを選択する。そして、T/M_ECU20は、選択した自動変速用マップMptを参照して車速Vとアクセル開度θaccとに基づく目標プライマリ回転数Nptを算出し、油圧制御回路8から各油圧室5f,5gに供給する各油圧の制御を通じて、プライマリ回転数Npを目標プライマリ回転数Nptに収束させる自動変速制御を行う。
【0051】
一方、ステップS202において、現在のレンジがマニュアルレンジであり、制御モードとしてマニュアル変速モードが選択されていると判定した場合、T/M_ECU20は、ステップ204に進み、手動変速用マップMptmとともに、モード選択スイッチ35によって現在選択されているモードMに対応する自動アップシフト回転数Nu及び自動ダウンシフト回転数Ndを読み込む。
【0052】
そして、ステップS204からステップS205に進むと、T/M_ECU20は、マニュアルスイッチ40からの信号に基づいてドライバによるアップシフト操作が行われたか否かを調べ、アップシフト操作が行われたと判定した場合にはステップS206に進み、アップシフト操作が行われていないと判定した場合にはステップS207に進む。
【0053】
ステップS205からステップS206に進むと、T/M_ECU20は、手動変速用マップMptm上に現在の変速段よりも高速段側に変速段が存在するか否かを調べ、高速段側に変速段が存在する場合、油圧制御回路8から各油圧室5f,5gに供給する各油圧の制御を通じて、無段変速機3の変速比を現在よりも1段高速段側の変速段の固定変速比へとアップシフトさせた後、ステップS207に進む。
【0054】
一方、ステップS205或いはステップS206からステップS207に進むと、T/M_ECU20は、マニュアルスイッチ40からの信号に基づき、ドライバによるダウンシフト操作が行われたか否かを調べる。
【0055】
そして、T/M_ECU20は、ステップS207において、ダウンシフト操作が行われたと判定した場合にはステップS208に進み、ダウンシフト操作が行われていないと判定した場合にはステップS209に進む。
【0056】
ステップS207からステップS208に進むと、T/M_ECU20は、手動変速用マップMptm上に現在の変速段よりも低速段側に変速段が存在するか否かを調べ、低速段側に変速段が存在する場合、油圧制御回路8から各油圧室5f,5gに供給する各油圧の制御を通じて、無段変速機3の変速比を現在よりも1段低速段側の変速段の固定変速比へとダウンシフトさせた後、ステップS209に進む。
【0057】
ステップS207或いはステップS208からステップS209に進むと、T/M_ECU20は、プライマリ回転数Npが現在選択されている自動アップシフト回転数Nu以上であるか否かを調べ、プライマリ回転数Npが自動アップシフト回転数Nu以上であると判定した場合にはステップS210に進み、プライマリ回転数Npが自動アップシフト回転数未満であると判定した場合にはステップS211に進む。
【0058】
ステップS209からステップS210に進むと、T/M_ECU20は、手動変速用マップMptm上に現在の変速段よりも高速段側の変速段が存在するか否かを調べ、高速段側に変速段が存在する場合、油圧制御回路8から各油圧室5f,5gに供給する各油圧の制御を通じて、無段変速機3の変速比を現在よりも1段高速段側の変速段の固定変速比へとアップシフトさせた後、ステップS211に進む。
【0059】
ステップS209或いはステップS210からステップS211に進むと、T/M_ECU20は、プライマリ回転数Npが現在選択されている自動ダウンシフト回転数Nd以下であるか否かを調べ、プライマリ回転数Npが現在選択されている自動ダウンシフト回転数Nd以下であると判定した場合にはステップS212に進み、自動ダウンシフト回転数Ndよりも高いと判定した場合にはそのままルーチンを抜ける。
【0060】
ステップS211からステップS212に進むと、T/M_ECU20は、手動変速用マップMptm上に現在の変速段よりも低速段側の変速段が存在するか否かを調べ、低速段側に変速段が存在する場合、油圧制御回路8から各油圧室5f,5gに供給する各油圧の制御を通じて、無段変速機3の変速比を現在よりも1段低速段側の変速段の固定変速比へとダウンシフトさせた後、ルーチンを抜ける。
【0061】
このような実施形態によれば、駆動力特性のモードMを複数備えたパワートレイン10において、当該パワートレイン10を構成する無段変速機3の制御モードとしてマニュアル変速モードが選択されているときの自動アップシフト回転数Nuを、パワートレイン10が発生させる駆動力特性のモードM毎に異なる値に設定することにより、基本的には変速についてドライバの意思を尊重するマニュアル変速モードにおいても、各モードMにおける駆動力特性の特徴(本実施形態においてはエンジン1の出力特性の相違をベースとする駆動力特性の特徴)を明確に差異付けることができる。
【0062】
具体的には、例えば、過回転防止のために許容されるエンジン1の最大回転数Nemaxに対応するプライマリ回転数Npmax以下の範囲内において、自動アップシフト回転数Nuを、アクセル操作に対する応答性が高い駆動力特性のモードMであるほど高く設定することにより、マニュアル変速モードの選択時においても、ドライバのフィーリング等に合致させつつ、駆動力特性の各モードMによる特徴を明確に差異付けることができる。すなわち、例えば、駆動力特性のモードMとしてノーマルモードM1、セーブモードM2、及び、パワーモードM3の3つのモードMを備えている場合において、パワーモードM3に対応する自動アップシフト回転数Nuが最も高く、次いで、ノーマルモードM1、セーブモードM2の順に自動アップシフト回転数Nuが低くなるよう設定することにより、マニュアル変速モードの選択時においても、モードM毎に異なるエンジン1の出力特性と相俟って、ドライバのフィーリングに合致した駆動力特性での走行を実現することができる。例えば、図7(a)〜(c)中に太実線で示すように、マニュアル変速モードの選択時において、ドライバが同一の走行状態からアクセルペダルを踏み込んだ場合にも、セーブモードM2の選択時(図7(b)参照)にはノーマルモードM1の選択時(図7(a)参照)よりも相対的に早いタイミングで自動アップシフトが順次行われ、パワーモードM3の選択時(図7(c)参照)にはノーマルモードM1の選択時よりも相対的に遅いタイミングで自動アップシフトが順次行われる。これにより、例えば、図8に示すように、マニュアル変速モードの選択時においても、駆動力特性のモードM毎に明確に異なる加速性能を実現することができる。
【0063】
加えて、マニュアル変速モードが選択されているときの自動ダウンシフト回転数Ndについても、駆動力特性のモードM毎に異なる値に設定することにより、各モードMにおける駆動力特性の特徴を明確に差異付けることができる。
【0064】
具体的には、例えば、自動ダウンシフト回転数Ndを、アクセル操作に対する応答性が高いモードMであるほど高く設定することにより、マニュアル変速モードの選択時においても、ドライバのフィーリング等に合致させつつ、駆動力特性の各モードMによる特徴を明確に差異付けることができる。すなわち、例えば、パワーモードM3に対応する自動ダウンシフト回転数Ndが最も高く、次いで、ノーマルモードM1、セーブモードM2の順に自動ダウンシフト回転数Ndが低くなるよう設定することにより、例えば、図7(a)〜(c)中に太破線で示すように、マニュアル変速モードの選択時において、ドライバが同一の走行状態からアクセルペダルを開放した場合やブレーキペダルを踏み込んだ場合にも、セーブモードM2の選択時(図7(b)参照)にはノーマルモードM1の選択時(図7(a)参照)よりも相対的に遅いタイミングで自動ダウンシフトが順次行われ、パワーモードM3の選択時(図7(c)参照)にはノーマルモードM1の選択時よりも相対的に早いタイミングで自動ダウンシフトが順次行われる。これにより、例えば、セーブモードM2の選択時には、減速時のエンジン回転数Neを早期に低回転数側へと変化させることができる。一方、例えば、パワーモードM3の選択時には、減速時においても比較的高いエンジン回転数Neを維持することができ、減速から加速へと転じたとき等にも高い加速性能を実現することができる。
【0065】
ここで、マニュアル変速モードの選択時における自動ダウンシフト制御は、上述のような各変速段に基づく段階的な制御に限定されるものではなく、プライマリ回転数Npが自動ダウンシフト回転数Ndとなったときの変速比を連続的に変速させるものであってもよい。この場合、例えば、パワーモードM3を選択時の自動ダウンシフトについて図9に太破線で例示するように、マニュアル変速モードの選択時に、減速等によってプライマリ回転数Npが自動ダウンシフト回転数Ndに到達したとき、T/M_ECU20は、油圧制御回路8から各油圧室5f,5gに供給する各油圧の制御を通じて、プライマリ回転数Npを自動ダウンシフト回転数Ndに収束させることで低速段側への自動ダウンシフトを実現する。なお、このような自動ダウンシフト制御中にドライバのアクセル操作等によって減速状態から加速状態へと移行した際には、例えば、図9に太実線で示すように、予め設定された変速段の固定変速比にとらわれることなく現時点での変速比を保持し、ドライバによる新たなアップシフト操作或いはダウンシフト操作等が行われた際に高速段側或いは低速段側の固定変速比に変速させることが望ましい。勿論、このような制御は、自動ダウンシフト制御に限定されるものではなく、自動シフトアップ制御にも適用することが可能である。
【0066】
また、上述の実施形態においては、各モードMに対応する自動アップシフト回転数Nuの全てを、エンジン1に許容される最大回転数Nemax以下の値に設定した一例について説明したが、自動アップシフトを禁止したい運転モードにおいては、図10に示すように、自動アップシフト回転数Nuを、最大回転数Nemaxよりも高い回転数に設定することも可能である。
【0067】
このような制御は、図11に示すエンジンのスロットル制御ルーチンのフローチャートに従い、スロットル制御を通じてエンジン1の出力トルクを制限することによって実現可能である。ここでは、自動アップシフトを禁止したい運転モードとしてパワーモードM3の場合を例にとり説明するが、他の運転モードにおいても同様である。すなわち、ルーチンがスタートすると、E/G_ECU21は、ステップS301〜ステップS306において、図3に示すステップ201〜ステップS206と同様の処理を行う。
【0068】
ステップS302、ステップS304、ステップS305、或いは、ステップS306からステップS307に進むと、E/G_ECU21は、現在選択されているモードMがパワーモードM3であるか否かを調べる。
【0069】
そして、E/G_ECU21は、ステップS307において、モードMがパワーモードM3であると判定した場合にはステップS308に進み、モードMがパワーモードM3以外であると判定した場合にはステップS309に進む。
【0070】
ステップS307からステップS308に進むと、E/G_ECU21は、現在のエンジン回転数Neが最大回転数Ne未満であるか否かを調べ、最大回転数Nemax以上であると判定した場合にはステップS310に進み、エンジン回転数Neを最大回転数Nemaxに収束させるための目標トルクτeを演算した後、ステップS311に進む。なお、この目標トルクτeは、例えば、予め設定されたマップ等を参照して演算した値や、目標トルクτeの前回値から設定値Δτeだけ減算した値等を用いることが可能である。
【0071】
一方、ステップS308において、現在のエンジン回転数Neが最大回転数Nemax未満であると判定した場合、E/G_ECU21は、ステップS309に進む。
【0072】
ステップS307、或いは、ステップS308からステップS309に進むと、E/G_ECU21は、現在選択されているモードMに対応するモードマップMpeを読み込み、現在のエンジン回転数Neとアクセル開度θaccとに基づきモードマップMpeを補完計算付きで参照して目標トルクτeを決定した後、ステップS311に進む。
【0073】
そして、ステップS309或いはステップS310からステップS311に進むと、E/G_ECU21は、ステップS311及びステップS312において、上述の図3に示したステップS108及びステップS109と同様の処理を行った後、ルーチンを抜ける。
【0074】
このような制御を行えば、マニュアル変速モードの選択時において、最もスポーティなモードであるパワーモードM3が選択された際には、エンジン1を過回転から保護しつつ、ドライバの変速意思を尊重すべく実質的な自動アップシフトを禁止することができる(図10中の太実線参照)。この場合、例えば、図12に示すように、ドライバがアクセルペダルを踏み続けた場合、パワーモードM3を選択時の車速Vは、変速段毎に定まる所定車速までは各モードMの中で最も高い加速度で上昇し、その後一定となる。そして、更なる加速はドライバのアップシフト操作に委ねられることとなる。
【0075】
なお、上述の実施形態においては、エンジン1の出力特性を相違させることをベースとした制御の一例について説明したが、本発明はこれに限定されないことは勿論である。例えば、エンジンの出力特性は単一のまま、自動変速機の変速特性のみをモード毎に異ならせる制御において、マニュアル変速モードの選択時の自動アップシフト回転数Nu等をモードM毎に異ならせることも可能である。
【0076】
また、駆動力特性のモードについても3種類に限定されるものではなく、本発明が適用可能な自動変速機についても無段変速機に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0077】
1 … エンジン
2 … 発進クラッチ
3 … 無段変速機(自動変速機)
4 … 前後進切換装置
5a … プライマリプーリ
5b … プーリ入力軸
5c … プーリ出力軸
5d … セカンダリプーリ
5e … 駆動ベルト
5f … プライマリ油圧室
5g … セカンダリ油圧室
6 … 終減速装置
6a … 減速歯車群
6b … ディファレンシャル装置
7 … 駆動軸
7a … 駆動輪
8 … 油圧制御回路
10 … パワートレイン
15 … 吸気通路
16 … スロットル弁
16a … スロットルアクチュエータ
17 … インジェクタ
20 … トランスミッション制御装置(自動アップシフト制御手段、自動ダウンシフト制御装置)
21 … エンジン制御装置(過回転防止手段)
22 … 統合制御装置
23 … 車内通信回線
30 … エンジン回転数センサ
31 … 吸入空気量センサ
32 … アクセル開度センサ
33 … スロットル開度センサ
35 … モード選択スイッチ
36 … セレクト操作部
36a … メインゲート
36b … サブゲート
36c … セレクトレバー
37 … インヒビタスイッチ
38 … プライマリ回転数センサ
39 … セカンダリ回転数センサ
40 … マニュアルスイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の制御モードとして、予め設定された複数の変速段の何れかを手動によって選択可能なマニュアル変速モードを備えた車両の駆動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載されるパワートレインにおいては、ドライバのアクセル操作に対して発生させる駆動力特性が異なる複数のモードを備え、これらのモードを選択的に切り換えることにより、燃費向上を重視した走行やスポーツ性を重視した走行等を実現する技術が数多く提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、駆動力特性として、アクセル開度に対して出力トルクが略リニアに変化するノーマルモードと、エンジントルクをセーブしてイージードライブ性と低燃費性との双方を両立させるセーブモードと、エンジンの低回転域から高回転域までレスポンスに優れる出力特性を実現したパワー重視のパワーモードとを設定し、センターコンソールに設けられているシャトルスイッチからの操作入力に応じて、ドライバの好みに応じた運転モードを選択可能とした技術が開示されている。
【0004】
ところで、この種のパワートレインを構成する自動変速機においては、変速モードとして、予め設定された変速特性に従って変速比を自動で制御する自動変速モードに加え、予め設定された複数の変速段の何れかを手動で選択することによって所定の固定変速比に変速可能なマニュアル変速モードを備えたものが広く知られている。この場合、マニュアル変速モードにおける変速比は、基本的には、ドライバが選択した変速段の固定変速比で保持されるが、例えば、エンジンの過回転防止を目的として、自動変速機の入力回転数が予め設定された一定の自動アップシフト回転数を超えた場合等には自動で高速段側の変速比に変速される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3872507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような自動変速機を備えたパワートレインにおいて、マニュアル変速モードの選択時に行われる自動変速を、単に一定の自動アップシフト回転数等に基づいて行っただけでは、運転モード毎の駆動力特性の差をドライバに実感させることが困難な場合がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、マニュアル変速モードが選択されている場合においても、運転モード毎の駆動力特性の差をドライバに実感させることができる車両の駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アクセル操作に対してパワートレインが発生させる駆動力特性として複数のモードを備え、且つ、前記パワートレインを構成する自動変速機の制御モードとして、予め設定された変速特性に従って変速比を自動で制御する自動変速モードと、予め設定された複数の変速段の何れかを手動で選択可能なマニュアル変速モードと、を備えた車両の駆動力制御装置であって、前記マニュアル変速モードの選択時に前記自動変速機の入力回転数が予め設定された自動アップシフト回転数を越えた際に変速比を高速段側に自動で変速させる自動アップシフト制御手段を備え、前記自動アップシフト制御手段には、前記自動アップシフト回転数として、前記駆動力特性のモード毎に異なる回転数が設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両の駆動力制御装置によれば、マニュアル変速モードが選択されている場合においても、運転モード毎の駆動力特性の差をドライバに実感させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両に搭載されるパワートレインの概略構成図
【図2】エンジンのノーマルモードマップ、セーブモードマップ、及び、パワーモードマップをそれぞれ示す概念図
【図3】エンジンのスロットル制御ルーチンを示すフローチャート
【図4】自動変速用マップを示す概念図
【図5】手動変速用マップを示す概念図
【図6】無段変速機の変速制御ルーチンを示すフローチャート
【図7】駆動力特性のモードとしてノーマルモード、セーブモード、及び、パワーモードが選択された各マニュアル変速モード時における自動アップシフト及びダウンシフトによる変速比の推移の一例を示す説明図
【図8】駆動力特性の各モードが選択されたマニュアル変速モード時においてアクセル踏込操作に対する車速の推移の一例を示す説明図
【図9】マニュアル変速モード時におけるダウンシフトによる変速比の推移の変形例を示す説明図
【図10】手動変速用マップの変形例を示す概念図
【図11】エンジンのスロットル制御ルーチンの変形例を示すフローチャート
【図12】駆動力特性の各モードが選択されたマニュアル変速モード時においてアクセル踏込操作に対する車速の推移の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1は車両に搭載されるパワートレインの概略構成図、図2(a)〜(c)はエンジンのノーマルモードマップ、セーブモードマップ、及び、パワーモードマップをそれぞれ示す概念図、図3はエンジンのスロットル制御ルーチンを示すフローチャート、図4は自動変速用マップを示す概念図、図5は手動変速用マップを示す概念図、図6は無段変速機の変速制御ルーチンを示すフローチャート、図7(a)〜(c)は駆動力特性のモードとしてノーマルモード、セーブモード、及び、パワーモードが選択された各マニュアル変速モード時における自動アップシフト及びダウンシフトによる変速比の推移の一例を示す説明図、図8は駆動力特性の各モードが選択されたマニュアル変速モード時においてアクセル踏込操作に対する車速の推移の一例を示す説明図、図9はマニュアル変速モード時におけるダウンシフトによる変速比の推移の変形例を示す説明図、図10は手動変速用マップの変形例を示す概念図、図11はエンジンのスロットル制御ルーチンの変形例を示すフローチャート、図12は駆動力特性の各モードが選択されたマニュアル変速モード時においてアクセル踏込操作に対する車速の推移の一例を示す説明図である。
【0012】
図1において符号1はエンジンを示し、このエンジン1は、電磁クラッチ或いはトルクコンバータ等の発進クラッチ2を介して自動変速機の一例である無段変速機3が連設されることにより、パワートレイン10の要部を構成する。
【0013】
無段変速機3は、発進クラッチ2に連設する前後進切換装置4を有し、この前後進切換装置4から延出するプーリ入力軸5bにはプライマリプーリ5aが軸支されている。また、プーリ入力軸5bに対して平行に配置されたプーリ出力軸5cにはセカンダリプーリ5dが軸支され、これらプライマリプーリ5aとセカンダリプーリ5dとの間には、駆動ベルト5eが巻装されている。さらに、プーリ出力軸5cには、終減速装置6の減速歯車群6aを介してディファレンシャル装置6bが連設され、このディファレンシャル装置6bには、前輪或いは後輪の駆動輪7aを軸着する駆動軸7が連設されている。
【0014】
また、プライマリプーリ5aにはプライマリ油圧室5fが併設され、このプライマリ油圧室5fに油圧制御回路8から供給されるプライマリ油圧により、プライマリプーリ5aの溝幅が調整される。一方、セカンダリプーリ5dにはセカンダリ油圧室5gが併設され、このセカンダリ油圧室5gに油圧制御回路8から供給されるセカンダリ油圧により、トルク伝達に必要な張力が駆動ベルト5eに付与される。油圧制御回路8は後述するトランスミッション制御装置(T/M_ECU)20において制御され、この油圧制御を通じて両プーリ5a,5dの溝幅が互いに反比例状態に制御されることにより、無段変速機3は所望の変速比を実現する。
【0015】
T/M_ECU20は、CAN(Controller Area Network)通信等の車内通信回線23を通じて、エンジン制御装置(E/G_ECU)21、及び、統合制御装置(統合_ECU)22等の各種制御装置と相互通信可能に接続されている。各ECU20〜22は、マイクロコンピュータ等を主体に構成され、周知のCPU、ROM、RAM及びEEPROM等の不揮発性記憶手段等を有している。
【0016】
T/M_ECU20の入力側には、例えば、プライマリプーリ5aの回転数(プライマリ回転数Np)を検出するプライマリ回転数センサ38、セカンダリプーリ5dの回転数(セカンダリ回転数Ns)を検出するセカンダリ回転数センサ39、セレクト操作部36で選択されたレンジを検出するインヒビタスイッチ37等が接続されている。また、T/M_ECU20の出力側には、油圧制御回路8等のアクチュエータ類が接続されている。
【0017】
ここで、本実施形態において、セレクト操作部36は、例えば、パーキング(P)レンジ、リバース(R)レンジ、ニュートラル(N)レンジ、及び、ドライブ(D)レンジが設定されたメインゲート36aと、マニュアル(M)レンジが設定されたサブゲート36bとを有する。これら各ゲート36a,36b上の各レンジはセレクトレバー36cを通じて選択可能となっており、選択されたレンジはインヒビタスイッチ37で検出される。また、サブゲート36bには、マニュアルレンジを挟んだ両側に、アップシフト(+)位置とダウンシフト(−)位置とが設定され、さらに、これらアップシフト位置及びダウンシフト位置には、後述するマニュアルスイッチ40が併設されている。そして、マニュアルレンジの選択中にセレクトレバー36cがアップシフト位置或いはダウンシフト位置に操作されると、マニュアルスイッチ40は、アップシフト信号或いはダウンシフト信号を出力する。なお、マニュアルスイッチ40は、例えば、ステアリングに配設されるパドルスイッチ等で構成されてもよい。
【0018】
E/G_ECU21の入力側には、例えば、クランク軸の回転からエンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ30、エアクリーナの直下流等に配設されて吸入空気量Qを検出する吸入空気量センサ31、アクセルペダルの踏込量から実アクセル開度θaccを検出するアクセル開度センサ32、吸気通路15に介装された電子制御式のスロットル弁16の開度θthを検出するスロットル開度センサ33等が接続されている。また、E/G_ECU21の出力側には、例えば、所定に計量された燃料を噴射するインジェクタ17、スロットル弁16に設けられているスロットルアクチュエータ16a等のエンジン駆動を制御するアクチュエータ類が接続されている。
【0019】
統合_ECU22の入力側には、アクセル操作に対してパワートレイン10が発生させる駆動力特性の制御モードを選択的に切り換えるためのモード選択スイッチ35、上述のマニュアルスイッチ40等が接続されている。
【0020】
ここで、本実施形態において、パワートレイン10の駆動力特性のモードとしては、例えば、ノーマルモードM1、セーブモードM2、及び、パワーモードM3からなる3つのモードMが設定されており、統合_ECU22は、モード選択スイッチ35を通じてドライバにより選択された何れかのモード情報を、車内通信回線23を介してT/M_ECU20及びE/G_ECU21等に出力する。なお、本実施形態のモード選択スイッチ35は、プッシュスイッチを併設する中点自動復帰式のシャトルスイッチが採用され、例えば、ドライバによる左側への回転動作がなされたときノーマルモードM1を判定し、押圧操作がなされたときセーブモードM2を判定し、右側への回転動作がなされたときパワーモードM3を判定する。
【0021】
E/G_ECU21のメモリ内には、例えば、エンジン出力特性を示すマップとして、3種類のモードマップMpe1,Mpe2,Mpe3が予め設定されて格納されている。図2(a)〜(c)に示すように、各モードマップは、アクセル開度θaccとエンジン回転数Neとを格子軸とし、各格子点にエンジン出力指示値(目標トルク)を格納する3次元マップで構成されている。
【0022】
これらの各モードマップMpe1,Mpe2,Mpe3は、基本的には、ドライバによるモード選択スイッチ35の操作によって選択される。すなわち、E/G_ECU21は、モード選択スイッチ35にてノーマルモードM1が選択されている場合にノーマルモードマップMpe1を選択し、セーブモードM2が選択されている場合にセーブモードマップMpe2を選択し、パワーモードM3が選択されている場合にパワーモードマップMpe3を選択する。
【0023】
そして、E/G_ECU21は、選択したモードマップMpeと各センサ類からの検出信号等に基づき、インジェクタ17に対する燃料噴射タイミング、及び燃料噴射パルス幅(パルス時間)を設定する。さらに、E/G_ECU21は、スロットルアクチュエータ16aに対してスロットル開度信号を出力し、スロットル弁16の開度を制御する。
【0024】
ここで、図2(a)に示すノーマルモードマップMpe1は、アクセル開度θaccが比較的小さい領域で目標トルクがリニアに変化する特性に設定されており、スロットル弁16の開度θthが全開付近で最大目標トルクとなるように設定されている。
【0025】
また、図2(b)に示すセーブモードマップMpe2は、ノーマルモードマップMpe1に比し、目標トルクの上昇が抑えられており、アクセルペダルを全踏しても、スロットル弁16は全開せず、相対的にアクセルペダルの踏み込みに対し、スロットル弁16の開度変化がノーマルモードよりも小さくなる。従って、ノーマルモードと同じアクセルペダルの踏み込み量であっても、スロットル開度θeが小さく、出力トルクの上昇が抑制される。その結果、セーブモードマップMpe2に基づき出力トルクを抑制した走行を行うことで、アクセルペダルを思い切り踏み込む等のアクセルワークを楽しむことができる。さらに、目標トルクの上昇が抑えられているため、イージードライブ性と低燃費性との双方をバランス良く両立させることができ、例えば、3リッタエンジンを搭載する車両であっても、2リッタエンジン相当の十分な出力を確保しながらスムーズな出力特性とし、特に街中等の実用領域における扱いやすさを重視した目標トルクが設定される。
【0026】
また、図2(c)に示すパワーモードマップMpe3は、略全運転領域でアクセル開度θaccの変化に対する目標トルクの変化率が大きく設定されている。従って、例えば、3リッタエンジンを搭載する車両であれば、3リッタエンジンの有するポテンシャルを最大限に発揮できるような目標トルクが設定される。
【0027】
T/M_ECU20のメモリ内には、例えば、上述のモードマップMpe1〜Mpe3にそれぞれ適合した変速特性にて無段変速機3の変速比を自動制御するための自動変速用マップMpt1〜Mpt3(図4参照)と、無段変速機3の変速比を予め設定された変速段(例えば、1〜6速の変速段)の固定変速比に制御するための手動変速用マップMptm(図5参照)とが予め設定されて格納されている。そして、T/M_ECU20は、選択した変速用マップMptと各センサ類からの検出信号等に基づき、油圧制御回路8から各油圧室5f,油圧室5gに供給する各油圧の制御を通じて無段変速機3の変速比を制御する。
【0028】
これらのマップのうち、自動変速用マップMpt1〜Mpt3は、セレクト操作部36でドライブレンジが選択されて無段変速機3に対する制御モードが自動変速制モードとなっているとき、モード選択スイッチ35で選択されたモードMに応じて選択的に用いられる。すなわち、T/M_ECU20は、エンジン1の各モードマップMpeに対応すべく、モード選択スイッチ35においてノーマルモードM1が選択されているとき自動変速用マップMpt1選択し、セーブモードM2が選択されているとき自動変速用マップMpt2を選択し、パワーモードM3が選択されているとき自動変速用マップMpt3を選択する。そして、T/M_ECU20は、例えば、選択した自動変速用マップMptを参照して現在の車速V及びアクセル開度θaccに基づく目標プライマリ回転数Nptを設定し、プライマリ回転数Npが目標プライマリ回転数Nptに収束するよう変速比を制御する。
【0029】
ここで、例えば、図4に示すように、各自動変速用マップMpt1〜Mpt3は、最大変速比であるLowから最小変速比であるオーバードライブ(OB)の間に、車速Vと目標プライマリ回転数Nptとの関係を示す変速特性ラインがアクセル開度θacc毎に設定されたマップで構成されている。この場合、各自動変速用マップMpt1〜Mpt3上の各変速特性ラインは、上述したエンジン出力特性のモードマップMpe1〜Mpe3にそれぞれ適合すべく、基本的には、車速V及びアクセル開度θaccが同一条件である場合に、モードM2での変速特性ラインがモードM1での変速特性ラインよりも相対的に低い目標プライマリ回転数Npを演算し、モードM3での変速特性ラインがモードM2での変速特性ラインよりも相対的に高い目標プライマリ回転数Npを演算するよう設定されている。
【0030】
これにより、セレクト操作部36でドライブレンジが選択された自動変速モードでの制御時には、エンジン1の出力特性に応じた適切な変速制御が行われ、モード選択スイッチ35で選択されたモード毎にそれぞれ特徴的な特性の駆動力をパワートレイン10で発生させることが可能となっている。
【0031】
一方、セレクト操作部36のレンジがドライブレンジからマニュアルレンジに変更されて無段変速機3の制御モードが自動変速モードからマニュアル変速モードに変更されると、T/M_ECU20は、変速制御用のマップとして手動変速用マップMptmを選択する。
【0032】
そして、T/M_ECU20は、基本的には、統合_ECU22を介してマニュアルスイッチ40からのアップシフト信号が入力される毎に、無段変速機3の変速比を現在の変速比よりも高速段側の固定変速比へと順次アップシフトさせる。或いは、T/M_ECU20は、統合_ECU22を介してマニュアルスイッチ40からのダウンシフト信号が入力される毎に、無段変速機3の変速比を現在の変速比よりも低速段側の固定変速比へと順次ダウンシフトさせる。
【0033】
但し、エンジン1の過回転防止等を目的として、T/M_ECU20は、無段変速機3の入力回転数であるプライマリ回転数Npが予め設定された自動アップシフト回転数Nuを越えたとき、変速比を高速段側の固定変速比へと自動で変速させる。また、所定の加速性能を確保してドライバビリティを向上すること等を目的として、T/M_ECU20は、プライマリ回転数Npが予め設定された自動ダウンシフト回転数Ndを下回ったとき、変速比を低速段側の固定変速比へと自動で変速させる。
【0034】
ここで、自動アップシフト回転数Nu及び自動ダウンシフト回転数Ndは、駆動力特性のモードM毎にそれぞれ異なる回転数に設定されている。
【0035】
具体的には、本実施形態の自動アップシフト回転数Nuは、例えば、アクセル操作に対する応答性が高い駆動力特性のモードであるほど高い回転数に設定され、パワーモードM3に対応する回転数が最も高く、次いで、ノーマルモードM1、セーブモードM2の順に低くなるよう設定されている。例えば、過回転防止等を目的としてエンジン1に許容された最大回転数が7000[rpm]であり且つ発進クラッチ2が締結された前進時のエンジン回転数Neとプライマリ回転数Npとが1:1で対応している場合において、各モードMに対応する自動アップシフト回転数Nuは、パワーモードM3に対応する自動アップシフト回転数Nu(M=M3)が7000[rpm]、ノーマルモードM1に対応する自動アップシフト回転数Nu(M=M1)が6000[rpm]、セーブモードM2に対応する自動アップシフト回転数Nu(M=M2)が5000[rpm]にそれぞれ設定されている。
【0036】
また、本実施形態の自動ダウンシフト回転数Ndは、例えば、アクセル操作に対する応答性が高い駆動力特性のモードであるほど高く設定されており、パワーモードM3に対応する回転数が最も高く、次いで、ノーマルモードM1、セーブモードM2の順に低くなるよう設定されている。例えば、各モードMに対応する自動ダウンシフト回転数Ndは、パワーモードM3に対応する自動ダウンシフト回転数Nd(M=M3)が3000[rpm]、ノーマルモードM1に対応する自動ダウンシフト回転数Nd(M=M1)が2000[rpm]、セーブモードM2に対応する自動ダウンシフト回転数Nd(M=M2)が1000[rpm]にそれぞれ設定されている。
【0037】
このように、本実施形態において、T/M_ECU20は、自動アップシフト制御手段、及び、自動ダウンシフト制御手段としての各機能を実現する。
【0038】
次に、E/G_ECU21で実行されるエンジンのスロットル制御について、図2に示すスロットル制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは設定時間毎に実行されるもので、ルーチンがスタートすると、E/G_ECU21は、先ず、ステップS101において、現在設定されているモードMを読み込んだ後、ステップS102に進む。
【0039】
ステップS101からステップS102に進むと、E/G_ECU21は、モード選択スイッチ35がON操作されたか否かを調べ、操作されていないと判定した場合、ステップS107に進む。
【0040】
一方、ステップ102において、モード選択スイッチ35がON操作されたと判定した場合、E/G_ECU21は、ステップS103に進み、ドライバが何れのモードを選択したか否かを判別する。
【0041】
そして、ステップS103において、ドライバによりノーマルモードM1が選択されたと判断したとき、E/G_ECU21は、ステップS104に進み、モードMをノーマルモードM1にセットした後(M←M1)、ステップS107に進む。
【0042】
また、ステップS103において、ドライバによりセーブモードM2が選択されたと判断したとき、E/G_ECU21は、ステップS105に進み、モードMをセーブモードM2にセットした後(M←M2)、ステップS107に進む。
【0043】
また、ステップS103において、ドライバによりパワーモードM3が選択されたと判断したとき、E/G_ECU21は、ステップS106に進み、モードMをパワーモードM3にセットした後(M←M3)ステップS107に進む。
【0044】
ステップS102、ステップS104、ステップS105、或いは、ステップS106からステップS107に進むと、E/G_ECU21は、現在選択されているモードMに対応するモードマップMpeを読み込み、現在のエンジン回転数Neとアクセル開度θaccとに基づきモードマップMpeを補間計算付きで参照して目標トルクτeを決定する。
【0045】
ステップS107からステップS108に進むと、E/G_ECU21は、目標トルクτeに対応する目標スロットル開度θeを求め、続くステップS109において、スロットル開度θthが目標スロットル開度θeに収束するようにスロットルアクチュエータ16aをフィードバック制御した後、ルーチンを抜ける。
【0046】
その結果、ドライバがアクセルペダルを操作すると、アクセル開度θaccとエンジン回転数Neとをパラメータとして、ドライバが選択したモードMに従ってスロットル弁16が開閉動作し、モードM毎に異なる出力特性でエンジン1が駆動される。
【0047】
次に、T/M_ECU20で実行される無段変速機の変速制御について、図6に示す変速制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは設定時間毎に実行されるもので、ルーチンがスタートすると、T/M_ECU20は、先ず、ステップS201において、現在セレクト操作部36で選択されているレンジが走行レンジ(すなわち、ドライブレンジ或いはマニュアルレンジ)であるか否かを調べる。
【0048】
そして、ステップS201において、現在のレンジが走行レンジ以外であると判定した場合、T/M_ECU20は、そのまま、ルーチンを抜ける。
【0049】
一方、ステップS201において現在のレンジが走行レンジであると判定した場合、T/M_ECU20は、ステップS202に進み、現在のレンジがドライブレンジであるか否か、すなわち、無段変速機3の制御のモードとして自動変速モードが選択されているか否かを調べる。
【0050】
そして、ステップS202において、現在のレンジがドライブレンジであり、制御モードとして自動変速モードが選択されていると判定した場合、T/M_ECU20は、ステップS203に進み、自動変速用マップに基づく自動変速制御を行った後、ルーチンを抜ける。すなわち、ステップS203において、T/M_ECU20は、自動変速用マップMpt1〜Mpt3の中から、モード選択スイッチ35によって現在選択されているモードMに対応する自動変速用マップMptを選択する。そして、T/M_ECU20は、選択した自動変速用マップMptを参照して車速Vとアクセル開度θaccとに基づく目標プライマリ回転数Nptを算出し、油圧制御回路8から各油圧室5f,5gに供給する各油圧の制御を通じて、プライマリ回転数Npを目標プライマリ回転数Nptに収束させる自動変速制御を行う。
【0051】
一方、ステップS202において、現在のレンジがマニュアルレンジであり、制御モードとしてマニュアル変速モードが選択されていると判定した場合、T/M_ECU20は、ステップ204に進み、手動変速用マップMptmとともに、モード選択スイッチ35によって現在選択されているモードMに対応する自動アップシフト回転数Nu及び自動ダウンシフト回転数Ndを読み込む。
【0052】
そして、ステップS204からステップS205に進むと、T/M_ECU20は、マニュアルスイッチ40からの信号に基づいてドライバによるアップシフト操作が行われたか否かを調べ、アップシフト操作が行われたと判定した場合にはステップS206に進み、アップシフト操作が行われていないと判定した場合にはステップS207に進む。
【0053】
ステップS205からステップS206に進むと、T/M_ECU20は、手動変速用マップMptm上に現在の変速段よりも高速段側に変速段が存在するか否かを調べ、高速段側に変速段が存在する場合、油圧制御回路8から各油圧室5f,5gに供給する各油圧の制御を通じて、無段変速機3の変速比を現在よりも1段高速段側の変速段の固定変速比へとアップシフトさせた後、ステップS207に進む。
【0054】
一方、ステップS205或いはステップS206からステップS207に進むと、T/M_ECU20は、マニュアルスイッチ40からの信号に基づき、ドライバによるダウンシフト操作が行われたか否かを調べる。
【0055】
そして、T/M_ECU20は、ステップS207において、ダウンシフト操作が行われたと判定した場合にはステップS208に進み、ダウンシフト操作が行われていないと判定した場合にはステップS209に進む。
【0056】
ステップS207からステップS208に進むと、T/M_ECU20は、手動変速用マップMptm上に現在の変速段よりも低速段側に変速段が存在するか否かを調べ、低速段側に変速段が存在する場合、油圧制御回路8から各油圧室5f,5gに供給する各油圧の制御を通じて、無段変速機3の変速比を現在よりも1段低速段側の変速段の固定変速比へとダウンシフトさせた後、ステップS209に進む。
【0057】
ステップS207或いはステップS208からステップS209に進むと、T/M_ECU20は、プライマリ回転数Npが現在選択されている自動アップシフト回転数Nu以上であるか否かを調べ、プライマリ回転数Npが自動アップシフト回転数Nu以上であると判定した場合にはステップS210に進み、プライマリ回転数Npが自動アップシフト回転数未満であると判定した場合にはステップS211に進む。
【0058】
ステップS209からステップS210に進むと、T/M_ECU20は、手動変速用マップMptm上に現在の変速段よりも高速段側の変速段が存在するか否かを調べ、高速段側に変速段が存在する場合、油圧制御回路8から各油圧室5f,5gに供給する各油圧の制御を通じて、無段変速機3の変速比を現在よりも1段高速段側の変速段の固定変速比へとアップシフトさせた後、ステップS211に進む。
【0059】
ステップS209或いはステップS210からステップS211に進むと、T/M_ECU20は、プライマリ回転数Npが現在選択されている自動ダウンシフト回転数Nd以下であるか否かを調べ、プライマリ回転数Npが現在選択されている自動ダウンシフト回転数Nd以下であると判定した場合にはステップS212に進み、自動ダウンシフト回転数Ndよりも高いと判定した場合にはそのままルーチンを抜ける。
【0060】
ステップS211からステップS212に進むと、T/M_ECU20は、手動変速用マップMptm上に現在の変速段よりも低速段側の変速段が存在するか否かを調べ、低速段側に変速段が存在する場合、油圧制御回路8から各油圧室5f,5gに供給する各油圧の制御を通じて、無段変速機3の変速比を現在よりも1段低速段側の変速段の固定変速比へとダウンシフトさせた後、ルーチンを抜ける。
【0061】
このような実施形態によれば、駆動力特性のモードMを複数備えたパワートレイン10において、当該パワートレイン10を構成する無段変速機3の制御モードとしてマニュアル変速モードが選択されているときの自動アップシフト回転数Nuを、パワートレイン10が発生させる駆動力特性のモードM毎に異なる値に設定することにより、基本的には変速についてドライバの意思を尊重するマニュアル変速モードにおいても、各モードMにおける駆動力特性の特徴(本実施形態においてはエンジン1の出力特性の相違をベースとする駆動力特性の特徴)を明確に差異付けることができる。
【0062】
具体的には、例えば、過回転防止のために許容されるエンジン1の最大回転数Nemaxに対応するプライマリ回転数Npmax以下の範囲内において、自動アップシフト回転数Nuを、アクセル操作に対する応答性が高い駆動力特性のモードMであるほど高く設定することにより、マニュアル変速モードの選択時においても、ドライバのフィーリング等に合致させつつ、駆動力特性の各モードMによる特徴を明確に差異付けることができる。すなわち、例えば、駆動力特性のモードMとしてノーマルモードM1、セーブモードM2、及び、パワーモードM3の3つのモードMを備えている場合において、パワーモードM3に対応する自動アップシフト回転数Nuが最も高く、次いで、ノーマルモードM1、セーブモードM2の順に自動アップシフト回転数Nuが低くなるよう設定することにより、マニュアル変速モードの選択時においても、モードM毎に異なるエンジン1の出力特性と相俟って、ドライバのフィーリングに合致した駆動力特性での走行を実現することができる。例えば、図7(a)〜(c)中に太実線で示すように、マニュアル変速モードの選択時において、ドライバが同一の走行状態からアクセルペダルを踏み込んだ場合にも、セーブモードM2の選択時(図7(b)参照)にはノーマルモードM1の選択時(図7(a)参照)よりも相対的に早いタイミングで自動アップシフトが順次行われ、パワーモードM3の選択時(図7(c)参照)にはノーマルモードM1の選択時よりも相対的に遅いタイミングで自動アップシフトが順次行われる。これにより、例えば、図8に示すように、マニュアル変速モードの選択時においても、駆動力特性のモードM毎に明確に異なる加速性能を実現することができる。
【0063】
加えて、マニュアル変速モードが選択されているときの自動ダウンシフト回転数Ndについても、駆動力特性のモードM毎に異なる値に設定することにより、各モードMにおける駆動力特性の特徴を明確に差異付けることができる。
【0064】
具体的には、例えば、自動ダウンシフト回転数Ndを、アクセル操作に対する応答性が高いモードMであるほど高く設定することにより、マニュアル変速モードの選択時においても、ドライバのフィーリング等に合致させつつ、駆動力特性の各モードMによる特徴を明確に差異付けることができる。すなわち、例えば、パワーモードM3に対応する自動ダウンシフト回転数Ndが最も高く、次いで、ノーマルモードM1、セーブモードM2の順に自動ダウンシフト回転数Ndが低くなるよう設定することにより、例えば、図7(a)〜(c)中に太破線で示すように、マニュアル変速モードの選択時において、ドライバが同一の走行状態からアクセルペダルを開放した場合やブレーキペダルを踏み込んだ場合にも、セーブモードM2の選択時(図7(b)参照)にはノーマルモードM1の選択時(図7(a)参照)よりも相対的に遅いタイミングで自動ダウンシフトが順次行われ、パワーモードM3の選択時(図7(c)参照)にはノーマルモードM1の選択時よりも相対的に早いタイミングで自動ダウンシフトが順次行われる。これにより、例えば、セーブモードM2の選択時には、減速時のエンジン回転数Neを早期に低回転数側へと変化させることができる。一方、例えば、パワーモードM3の選択時には、減速時においても比較的高いエンジン回転数Neを維持することができ、減速から加速へと転じたとき等にも高い加速性能を実現することができる。
【0065】
ここで、マニュアル変速モードの選択時における自動ダウンシフト制御は、上述のような各変速段に基づく段階的な制御に限定されるものではなく、プライマリ回転数Npが自動ダウンシフト回転数Ndとなったときの変速比を連続的に変速させるものであってもよい。この場合、例えば、パワーモードM3を選択時の自動ダウンシフトについて図9に太破線で例示するように、マニュアル変速モードの選択時に、減速等によってプライマリ回転数Npが自動ダウンシフト回転数Ndに到達したとき、T/M_ECU20は、油圧制御回路8から各油圧室5f,5gに供給する各油圧の制御を通じて、プライマリ回転数Npを自動ダウンシフト回転数Ndに収束させることで低速段側への自動ダウンシフトを実現する。なお、このような自動ダウンシフト制御中にドライバのアクセル操作等によって減速状態から加速状態へと移行した際には、例えば、図9に太実線で示すように、予め設定された変速段の固定変速比にとらわれることなく現時点での変速比を保持し、ドライバによる新たなアップシフト操作或いはダウンシフト操作等が行われた際に高速段側或いは低速段側の固定変速比に変速させることが望ましい。勿論、このような制御は、自動ダウンシフト制御に限定されるものではなく、自動シフトアップ制御にも適用することが可能である。
【0066】
また、上述の実施形態においては、各モードMに対応する自動アップシフト回転数Nuの全てを、エンジン1に許容される最大回転数Nemax以下の値に設定した一例について説明したが、自動アップシフトを禁止したい運転モードにおいては、図10に示すように、自動アップシフト回転数Nuを、最大回転数Nemaxよりも高い回転数に設定することも可能である。
【0067】
このような制御は、図11に示すエンジンのスロットル制御ルーチンのフローチャートに従い、スロットル制御を通じてエンジン1の出力トルクを制限することによって実現可能である。ここでは、自動アップシフトを禁止したい運転モードとしてパワーモードM3の場合を例にとり説明するが、他の運転モードにおいても同様である。すなわち、ルーチンがスタートすると、E/G_ECU21は、ステップS301〜ステップS306において、図3に示すステップ201〜ステップS206と同様の処理を行う。
【0068】
ステップS302、ステップS304、ステップS305、或いは、ステップS306からステップS307に進むと、E/G_ECU21は、現在選択されているモードMがパワーモードM3であるか否かを調べる。
【0069】
そして、E/G_ECU21は、ステップS307において、モードMがパワーモードM3であると判定した場合にはステップS308に進み、モードMがパワーモードM3以外であると判定した場合にはステップS309に進む。
【0070】
ステップS307からステップS308に進むと、E/G_ECU21は、現在のエンジン回転数Neが最大回転数Ne未満であるか否かを調べ、最大回転数Nemax以上であると判定した場合にはステップS310に進み、エンジン回転数Neを最大回転数Nemaxに収束させるための目標トルクτeを演算した後、ステップS311に進む。なお、この目標トルクτeは、例えば、予め設定されたマップ等を参照して演算した値や、目標トルクτeの前回値から設定値Δτeだけ減算した値等を用いることが可能である。
【0071】
一方、ステップS308において、現在のエンジン回転数Neが最大回転数Nemax未満であると判定した場合、E/G_ECU21は、ステップS309に進む。
【0072】
ステップS307、或いは、ステップS308からステップS309に進むと、E/G_ECU21は、現在選択されているモードMに対応するモードマップMpeを読み込み、現在のエンジン回転数Neとアクセル開度θaccとに基づきモードマップMpeを補完計算付きで参照して目標トルクτeを決定した後、ステップS311に進む。
【0073】
そして、ステップS309或いはステップS310からステップS311に進むと、E/G_ECU21は、ステップS311及びステップS312において、上述の図3に示したステップS108及びステップS109と同様の処理を行った後、ルーチンを抜ける。
【0074】
このような制御を行えば、マニュアル変速モードの選択時において、最もスポーティなモードであるパワーモードM3が選択された際には、エンジン1を過回転から保護しつつ、ドライバの変速意思を尊重すべく実質的な自動アップシフトを禁止することができる(図10中の太実線参照)。この場合、例えば、図12に示すように、ドライバがアクセルペダルを踏み続けた場合、パワーモードM3を選択時の車速Vは、変速段毎に定まる所定車速までは各モードMの中で最も高い加速度で上昇し、その後一定となる。そして、更なる加速はドライバのアップシフト操作に委ねられることとなる。
【0075】
なお、上述の実施形態においては、エンジン1の出力特性を相違させることをベースとした制御の一例について説明したが、本発明はこれに限定されないことは勿論である。例えば、エンジンの出力特性は単一のまま、自動変速機の変速特性のみをモード毎に異ならせる制御において、マニュアル変速モードの選択時の自動アップシフト回転数Nu等をモードM毎に異ならせることも可能である。
【0076】
また、駆動力特性のモードについても3種類に限定されるものではなく、本発明が適用可能な自動変速機についても無段変速機に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0077】
1 … エンジン
2 … 発進クラッチ
3 … 無段変速機(自動変速機)
4 … 前後進切換装置
5a … プライマリプーリ
5b … プーリ入力軸
5c … プーリ出力軸
5d … セカンダリプーリ
5e … 駆動ベルト
5f … プライマリ油圧室
5g … セカンダリ油圧室
6 … 終減速装置
6a … 減速歯車群
6b … ディファレンシャル装置
7 … 駆動軸
7a … 駆動輪
8 … 油圧制御回路
10 … パワートレイン
15 … 吸気通路
16 … スロットル弁
16a … スロットルアクチュエータ
17 … インジェクタ
20 … トランスミッション制御装置(自動アップシフト制御手段、自動ダウンシフト制御装置)
21 … エンジン制御装置(過回転防止手段)
22 … 統合制御装置
23 … 車内通信回線
30 … エンジン回転数センサ
31 … 吸入空気量センサ
32 … アクセル開度センサ
33 … スロットル開度センサ
35 … モード選択スイッチ
36 … セレクト操作部
36a … メインゲート
36b … サブゲート
36c … セレクトレバー
37 … インヒビタスイッチ
38 … プライマリ回転数センサ
39 … セカンダリ回転数センサ
40 … マニュアルスイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセル操作に対してパワートレインが発生させる駆動力特性として複数のモードを備え、且つ、前記パワートレインを構成する自動変速機の制御モードとして、予め設定された変速特性に従って変速比を自動で制御する自動変速モードと、予め設定された複数の変速段の何れかを手動で選択可能なマニュアル変速モードと、を備えた車両の駆動力制御装置であって、
前記マニュアル変速モードの選択時に前記自動変速機の入力回転数が予め設定された自動アップシフト回転数を越えた際に変速比を高速段側に自動で変速させる自動アップシフト制御手段を備え、
前記自動アップシフト制御手段には、前記自動アップシフト回転数として、前記駆動力特性のモード毎に異なる回転数が設定されていることを特徴とする車両の駆動力制御装置。
【請求項2】
前記自動アップシフト回転数は、前記アクセル操作に対する応答性が高い前記駆動力特性のモードであるほど高く設定されていることを特徴とする請求項1記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項3】
エンジン回転数をエンジンに許容される最大回転数以下に制限する過回転防止手段を有し、該過回転防止手段により制限されたエンジン回転数よりも高い回転数に前記自動アップシフト回転数を設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項4】
前記過回転防止手段は、前記アクセル操作に対する応答性が最も高い前記駆動力特性のモードが選択されているときのエンジン回転数を前記最大回転数以下に制限することを特徴とする請求項3記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項5】
前記過回転防止手段は、エンジンの出力トルクを制限することによってエンジン回転数を前記最大回転数以下に制限することを特徴とする請求項3又は4記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項6】
アクセル操作に対してパワートレインが発生させる駆動力特性として複数のモードを備
え、且つ、前記パワートレインを構成する自動変速機の制御モードとして、予め設定された変速特性に従って変速比を自動で制御する自動変速モードと、予め設定された複数の変速段の何れかを手動で選択可能なマニュアル変速モードと、を備えた車両の駆動力制御装置であって、
前記マニュアル変速モードの選択時に前記自動変速機の入力回転数が予め設定された自動ダウンシフト回転数を下回った際に変速比を低速段側に自動で変速させる自動ダウンシフト制御手段を備え、
前記自動ダウンシフト制御手段には、前記自動ダウンシフト回転数として、前記駆動力特性のモード毎に異なる回転数が設定されていることを特徴とする車両の駆動力制御装置。
【請求項7】
前記自動ダウンシフト回転数は、前記アクセル操作に対する応答性が高い前記駆動力特性のモードであるほど高く設定されていることを特徴とする請求項6記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項1】
アクセル操作に対してパワートレインが発生させる駆動力特性として複数のモードを備え、且つ、前記パワートレインを構成する自動変速機の制御モードとして、予め設定された変速特性に従って変速比を自動で制御する自動変速モードと、予め設定された複数の変速段の何れかを手動で選択可能なマニュアル変速モードと、を備えた車両の駆動力制御装置であって、
前記マニュアル変速モードの選択時に前記自動変速機の入力回転数が予め設定された自動アップシフト回転数を越えた際に変速比を高速段側に自動で変速させる自動アップシフト制御手段を備え、
前記自動アップシフト制御手段には、前記自動アップシフト回転数として、前記駆動力特性のモード毎に異なる回転数が設定されていることを特徴とする車両の駆動力制御装置。
【請求項2】
前記自動アップシフト回転数は、前記アクセル操作に対する応答性が高い前記駆動力特性のモードであるほど高く設定されていることを特徴とする請求項1記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項3】
エンジン回転数をエンジンに許容される最大回転数以下に制限する過回転防止手段を有し、該過回転防止手段により制限されたエンジン回転数よりも高い回転数に前記自動アップシフト回転数を設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項4】
前記過回転防止手段は、前記アクセル操作に対する応答性が最も高い前記駆動力特性のモードが選択されているときのエンジン回転数を前記最大回転数以下に制限することを特徴とする請求項3記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項5】
前記過回転防止手段は、エンジンの出力トルクを制限することによってエンジン回転数を前記最大回転数以下に制限することを特徴とする請求項3又は4記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項6】
アクセル操作に対してパワートレインが発生させる駆動力特性として複数のモードを備
え、且つ、前記パワートレインを構成する自動変速機の制御モードとして、予め設定された変速特性に従って変速比を自動で制御する自動変速モードと、予め設定された複数の変速段の何れかを手動で選択可能なマニュアル変速モードと、を備えた車両の駆動力制御装置であって、
前記マニュアル変速モードの選択時に前記自動変速機の入力回転数が予め設定された自動ダウンシフト回転数を下回った際に変速比を低速段側に自動で変速させる自動ダウンシフト制御手段を備え、
前記自動ダウンシフト制御手段には、前記自動ダウンシフト回転数として、前記駆動力特性のモード毎に異なる回転数が設定されていることを特徴とする車両の駆動力制御装置。
【請求項7】
前記自動ダウンシフト回転数は、前記アクセル操作に対する応答性が高い前記駆動力特性のモードであるほど高く設定されていることを特徴とする請求項6記載の車両の駆動力制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−97783(P2012−97783A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244255(P2010−244255)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]