説明

車両クルーズコントロールを制御する方法及びシステム

本発明は、車両クルーズコントロールを制御する方法であって、前記方法は、クルーズコントロールを作動状態にすると共に、車両設定目標速度(Vcc設定目標速度)を維持するように設定して、車両を運転するステップと、坂の上り坂を走行中に、車両の減速によって、車両設定目標速度より低い第1車速(Vmin)まで車速が低下し、しかも減速が0に減少した、又は車両設定目標速度まで車速を高めるために車両が加速し始めた第1車両位置(A)を登録するステップと、頂上から第1距離(y、y)を過ぎた地点での、頂上から下り坂の第2位置(C、C)における所望の車速(Vbcc超過速度)を登録するステップと、前記所望の車速に基づいて、第1距離(y、y)を走行中に最小限化又はゼロ燃料消費で、所望の車速に達することができるように、車両が頂上を通過しなければならない、頂上での車両最低速度(Vmin1、Vmin2、Vmin3)を計算するステップと、車両が、頂上を通過するとき車両最低速度(Vmin1、Vmin2、Vmin3)に達するように、第1車両位置(A)から頂上(B)までの第2距離(x)を走行中の車速を制御するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の車両クルーズコントロールを制御する方法に関する。本発明はまた、請求項12の前文に記載の、クルーズコントロールを制御する方法を目的とする車両クルーズコントロールシステムにも関する。
【0002】
本発明はまた、コンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品及びコンピュータの記憶媒体にも関し、これらはすべて、本方法を実行するためのコンピュータと共に用いられるものである。
【背景技術】
【0003】
自動車、例えば乗用車、トラック、牽引車及びバスは、いわゆるクルーズコントロールシステムを搭載しており、これは速度制御システムとも称され、車速を自動的に制御することを目的とするものである。こうしたクルーズコントロールシステムは、実際の車速を監視する手段、例えば車速センサーを備えている。クルーズコントロールシステムは、設定した目標速度と実際の車速を比較する。目標速度は、例えば、ドライバーが設定スイッチを作動させるとき、優勢な実際車速として、クルーズコントロールシステムに入力することができる。クルーズコントロールシステムは、実際の車速と目標速度を比較することにより、誤差信号を生成する。次に、誤差信号が実質的に0になるまで、すなわち、実際の車速が目標速度と等しくなるまで、エンジン回転数を変更するために、誤差信号を用いて、例えば、燃料ポンプ又は車両スロットルに連結させたアクチュエータを制御する。
【0004】
特許文献1及び特許文献2は、クルーズコントロールシステムをさらに発展させた従来技術の2つの例を開示している。ここで、クルーズコントロールシステムは、現在の車両位置と、これから通る道路地形についての情報、すなわち、例えば、続く道路の勾配又は高さの値を用いて、燃料効率を高める方法で、スロットル開口部を制御する予測型クルーズコントロールシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1439976号明細書
【特許文献2】米国特許第6,990,401号明細書
【特許文献3】欧州特許第1494887号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、車速を制御するために、現在の車両位置と、これから通る道路地形に関する情報が、クルーズコントロールシステムによって用いられる、クルーズコントロールシステムをさらに発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の第1の目的は、妥当な未来の車両走行の範囲内で、車両を加速して、車速を回復するために、地球の引力を利用することができる状況で、不必要な加速を回避することができる、クルーズコントロールの改善された方法を提供することである。これは、冒頭に記載した方法により達成され、その特徴は、請求項1に定義されている。この目的はまた、冒頭に記載したシステムによっても達成され、その特徴は、請求項12に定義されている。
【0008】
本発明の方法は、車両の運転中にクルーズコントロールを制御する方法である。この方法は、
−クルーズコントロールを作動状態にすると共に、車両設定目標速度を維持するように設定して、車両を運転するステップと、
−坂の上り坂を走行中に、車両の減速によって、車両設定目標速度より低い第1車速まで車速が低下し、この減速が0まで減少したか、あるいは、車両設定目標速度まで車速を高めるために車両がちょうど加速し始めた第1車両位置を登録するステップと、
−頂上から第1距離を過ぎた地点での、頂上から下り坂の第2位置における所望の車速を登録するステップと、
−所望の車速に基づいて、第1距離を走行中に最小限化又はゼロ燃料消費で、所望の車速に達することができるように、車両が頂上を通過しなければならない、頂上での車両最低速度を計算するステップと、
−車両が、頂上を通過するとき車両最低速度に達するように、第1車両位置から頂上までの第2距離を走行中の車速を制御するステップとを含む。
【0009】
本発明の第1の別の実施形態によれば、第2車両位置は、
−頂上から所定の車両走行時間が経過した地点と、
−頂上から所定の距離を過ぎた地点と、
−下り坂の終点と、
−頂上から、車両走行抵抗がマイナスからプラスに変わると推定される距離を過ぎた地点とのうちの1つであってよい。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、本方法は、第2距離を走行中に、最小限化燃料消費で、頂上で車両最低速度に達するために、第2距離を走行中に必要な車両加速又は減速を計算するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、本方法は、
−直接ギア作動車速よりわずかに低い第1車速を登録するステップと、
−所定の車両条件を登録したとき、車両最低速度を直接ギア作動車速と等しくなるように設定して、車両最低速度まで車両を加速した後、直接ギアを作動させるステップと、
−第2距離の残り部分を走行中に、直接ギアを作動させて車両を運転するステップとをさらに含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、所定の車両条件は、
−直接ギア作動車速よりわずかに低いとは、直接ギア作動車速と第1車速との速度差が毎時5km以下であることを意味すること、
−第2距離は所定の値より大きいこと、
−第2距離走行中に直接ギアを作動させて車両を運転する推定時間は、所定の値より大きいことのうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、第2距離走行中、車速は車両設定目標速度より低く維持される。
【0014】
本発明の別の実施形態では、車両最高超過速度が車両クルーズコントロールについて設定されるが、車両最高超過速度は、車両設定目標速度と少なくとも等しいか、あるいはこれより高く、所望の車速は車両最高超過速度と等しい。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、車両最低未満速度が設定され、該速度は、車両設定目標速度と所定の関係を有する。別の実施形態によれば、所定の関係は、
−車両最低未満速度は、車両設定目標速度の所定のパーセンテージであること、
−車両最低未満速度は、車両設定目標速度より所定の量だけ低いことのうちの1つである。
【0016】
本発明の別の実施形態では、頂上、第2位置及び車両最低速度は、坂における現在の車両位置と、これから通る道路地形に関する情報を用いて予測される。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、第2距離が所定の値より短い場合には、車両最低速度は、第1車速と等しくなるように設定される。
【0018】
本発明はまた、制御ユニット、ドライバー入力インターフェース、車両位置確認装置、並びに道路地形確認装置を含む(含むが、必ずしもこれらに限定されるわけではない)車両クルーズコントロールシステムに関する。このシステムは、制御ユニットが、前述した方法を実施すると共に、車両位置確認装置及び道路地形確認装置からの情報を用いて、車両最低速度を計算するように設計されていることを特徴とする。
【0019】
本発明のさらに有利な実施形態は、請求項1に続く従属請求項から明らかになる。
【0020】
本発明について、添付の図面を参照しながら、以下にさらに詳しく説明する。これらの図面は、例示を目的として、本発明の別の好ましい実施形態、さらには技術的背景を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両の速度グラフと、それに対応する運転状況を概略的に示す図であり、該速度図は、本発明の様々な実施形態によるクルーズコントロールを開示している。
【図2】車両の速度グラフと、それに対応する運転状況を概略的に示す図であり、該速度図は、本発明の様々な実施形態によるクルーズコントロールを開示している。
【図3】車両の速度グラフと、それに対応する運転状況を概略的に示す図であり、該速度図は、本発明の様々な実施形態によるクルーズコントロールを開示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
車速を自動的に制御するクルーズコントロールシステムは、公知の技術の車両に設置することができる。このクルーズコントロールシステムは、入力信号を連続的に処理して、例えば、推進ユニットを制御する推進ユニット制御装置及び/又は設定車速を維持するように、該車両の制動装置を制御するブレーキ制御ユニットに、出力信号を送達する制御ユニットを含む。車両クルーズコントロールシステムは、少なくとも、公知の技術によるドライバー入力インターフェース、車両位置確認装置、並びに道路地形確認装置をさらに含む。この制御ユニットは、車両位置確認装置及び道路地形確認装置を用いて、以下に記載する本発明の機能のステップを実施するように設計される。道路地形確認装置の例として、ルート確認装置及び電子マップ装置がある。
【0023】
図1は、坂2を走行する車両1を示す。該車両のクルーズコントロールは、Vcc設定目標速度を維持するように設定されている。従って、クルーズコントロールシステムの制御ユニットは、Vcc設定目標速度を維持するように設計されている。また、車両最高超過速度Vbcc超過速度は、車速がVbcc超過速度に近づいたら、制御ユニットが車両の制動を開始するように設計されている。この機能性は、それ自体公知であり、ブレーキクルーズコントロールとも呼ばれる。車両クルーズコントロールの車両最高超過速度Vbcc超過速度は、車両設定目標速度と少なくとも等しいか、又はこれより高くなるように設定することができる。図示した実施例では、Vbcc超過速度は、Vcc設定目標速度より高い。車両が坂を上り始めると、車速は、結果として、登り坂走行中に車両の推進ユニットが全動力を供給しているにも関わらず、上り坂3の勾配のために、及び/又は高負荷車両並びに/若しくは推進力の不足のために、Vcc設定目標速度から低下し始める。やがて上り坂3の勾配は減少し始め、ある位置Aで、車両の減速は0まで減少する。位置Aから先は、推進ユニットによって供給される全動力が車両を加速し始めるのに十分となる。従って、車速は、位置Aで上昇し始める。位置Aはまた、坂2を走行中に車両最低速度Vminがどこで発生したかも示す。公知の技術によれば、位置Bに現れる頂上又はこれに続く下り坂5を知らずに、制御ユニットは単純に、可能な限り早くVcc設定目標速度を回復するために推進ユニットを制御する。速度曲線4は、この例を示すものである。曲線4は、位置Bのすぐ後のある地点でVcc設定目標速度に達することを示している。位置Bを過ぎると、車両は下方に向かって走行し、下り坂5の勾配が車両をさらに加速し、Vcc設定目標速度を超えてVbcc超過速度まで達する。従って、制御ユニットは、Vbcc超過速度を超過しないように、制動を開始する。坂2を走行中に車速を制御する、より燃料効率的な方法は、曲線6に沿うものであろう。曲線6に従って車速を制御することができるようにするためには、既述した従来技術の例である特許文献1及び特許文献2のように、制御ユニットが、次の走行ルートに関する情報を入手できなければならない。本発明は、予測型クルーズコントロールシステムのさらなる発展形に関する。
【0024】
図1を参照して、本発明の実施形態によれば、クルーズコントロールシステムにおける制御ユニットは、クルーズコントロールを作動状態にし、車両設定目標速度Vcc設定目標速度を維持するように設定すると共に、
−坂2の上り坂3を走行中に、車両の減速によって、車両設定目標速度より低い第1車速Vminまで車速が低下し、しかも減速が0まで減少した、あるいは、車両設定目標速度まで車速を高めるために車両が加速し始めた第1車両位置Aを登録するステップと、
−頂上Bから第1距離yを過ぎた地点での、頂上から下り坂の第2位置Cにおける所望の車速(図示した例ではVbcc超過速度)を登録するステップと、
−所望の車速に基づいて、第1距離yを走行中に最小限化又はゼロ燃料消費で、所望の車速に達することができるように、車両が頂上Bを通過しなければならない、頂上での車両最低速度Vmin1を計算するステップと、
−車両が、頂上を通過するとき車両最低速度Vmin1に達するように、第1車両位置Aから頂上Bまでの第2距離xを走行中の車速を制御するステップとを実施するように設定して、車両を運転するようにプログラムされている。
【0025】
従って、制御ユニットは、下り坂5での第1距離yを走行中、引力によって車両を所望の車速まで加速することができるように十分に、第2距離xを走行中に、車両を加速する。このようにして、下り坂5を走行中の車両の制動と、第2距離xを走行中の車両加速を最小限にすることができる。図1に示す実施例では、第1車速Vminを計算すると、車両最低速度Vmin1と等しくなり、従って、加速は、第2距離xを走行中に、0であることに留意されたい。図からわかるように、車速は、第2距離xを走行中、車両設定目標速度より低く維持されている。
【0026】
図2は、別の坂22を示しており、これは、坂の最初の2/3、すなわち下り坂25における位置zまでは図1の坂2と同じである。下り坂25は、下り坂5より速く平坦になっている。図からわかるように、比較を容易にするために、第1位置Cを有する下り坂5も図2に示している。本発明を図2の坂22に適用すると、制御ユニットが、第1車両位置A(坂2と同じである)を登録する。第1車速Vminについて同じ値が登録される。制御ユニットはさらに、頂上Bから第1距離yを過ぎた地点にある、頂上から下り坂の第2位置Cについての所望の車速(ここでもやはりVbcc超過速度)を登録する。従って、この下り坂の勾配は、より早く平坦になることから、第1距離yは、yと比較して短く、その結果、CはCと比較して高い位置にある。これは、所望の車速に、図1に示す実施例と比較して早く到達しなければならないことを意味する。制御ユニットは、位置Cでの所望の車速に基づいて、頂上での車両最低速度Vmin2を計算するが、この速度は、位置Cで所望の車速に到達することができるように、Vmin1と比較してやや高くなければならない。次いで、制御ユニットは、車両が頂上を通過するとき、車両最低速度Vmin2に達するように、第1車両位置Aから頂上Bまでの第2距離x(図1における距離xと等しい)を走行中に車速を制御する。図2の実施例では、これは、車両をVminからVmin2まで加速することを意味する。本発明の車速の制御は、図2においては曲線26によって説明する。
【0027】
この利点は、位置Aから位置Bまでの加速が最小限になり、次に現れる下り坂に合わせて調整されることである。従って、次に現れる下り坂をより有効に利用して、所望の車速まで車速を回復させる。これによって、燃料消費の減少がもたらされる。
【0028】
下り坂が、下り坂5より険しかった場合には、制御ユニットは、位置Aでの第1車速Vminより低い頂上Bでの車両最低速度を計算したであろう。従って、車両は、第2距離xを走行中に、減速しなければならないことになる。本発明の別の実施形態では、車両最低未満速度を設定することができる。車両最低未満速度は、手動で、又は制御ユニットによって自動的に設定することができる。制御ユニットは、車両設定目標速度Vcc設定目標速度と所定の関係で、車両最低未満速度を設定するようにプログラムすることができる。所定の関係は、例えば、
−車両最低未満速度は、車両設定目標速度の所定のパーセンテージであること、
−車両最低未満速度は、車両設定目標速度より低い、所定の量の毎時kmであることのうちの1つであってよい。
【0029】
本発明のさらに別の実施形態によれば、第2車両位置C又はCは、
−頂上Bから所定の車両走行時間が経過した地点と、
−頂上から所定の距離を過ぎた地点と、
−下り坂の終点と、
−頂上から、車両走行抵抗がマイナスからプラスに変わると推定される距離を過ぎた地点とのうちの1つであってよい。最後に挙げたものは、車速増加がゼロまで降下するのと同じ位置である。図1〜3では、C又はCはこのような位置を目標としている。
【0030】
本発明の別の実施形態では、制御ユニットは、第2距離を走行中に、最小限化燃料消費で、頂上で車両最低速度に達するために、第2距離xを走行中の必要な車両加速又は減速を計算するステップをさらに実施するようにプログラムすることができる。例えば、図2に示すように、距離xを走行中に、Vmin2までの加速は、主として距離xの最初の半分を走行中に起こる。距離xの後の半分を走行中に、車速Vmin2が維持される。本発明のこの実施形態によれば、より穏やかな加速を計算して、距離xを走行中に適用することができる。例えば、制御ユニットは、距離x全体を走行中に車両を加速することができる。すなわち、より低い加速度で、頂上BでやはりVmin2に達することができる。
【0031】
図3は、図1に示したのと同じ坂2を示す。従って、位置A、B、C、x及びyは図2及び図3において同じである。同じVcc設定目標速度及びVbcc超過速度をいずれの実施例でも用いる。
【0032】
車両は、トランスミッションを介して車両の駆動輪に駆動可能に接続された推進ユニットを含んでもよい。ギア式トランスミッションは、入力軸と、該入力軸と歯車で噛み合う少なくとも1つの歯車を有する中間軸と、該中間軸と歯車で噛み合う歯車を備えた主軸とを含む。主軸はさらに、例えば、推進軸を介して駆動輪に連結された出力軸にさらに接続されている。各々の歯車対は、ギアボックス内の別の歯車対とは異なるギア比を有する。様々なギア対が推進ユニットから駆動輪にトルクを伝達するため、様々な速度伝達比が得られる。このようなトランスミッションにおいて相互作用し、かつ回転する2つの歯車間では、噛み合っている歯車の各々の歯同士で摩擦損が起こる。
【0033】
ギア式トランスミッションでは、最高ギア(最低ギア比)はいわゆる直接ギアである。これは、直接ギアが作動しているとき、ギアボックス内の入力軸及び主軸(又は出力軸)が互いに直接接続されていることを意味する。つまり、ギアを一切入れることなく、トルクはトランスミッションを介して直接伝達される。あるいは、速度伝達比は1:1であると言うこともできる。従って、噛み合うギア同士の間に損失は起こらない。言い換えれば、直接ギアは、全体として、速度伝達比が歯車対を介して得られる他の間接ギアより燃料節約型のギアである。特許文献3は、直接ギアを含むトランスミッションを備える従来技術の一例を開示している。
【0034】
本発明の別の実施形態において、図3を参照すると、制御ユニットは、前述のステップに加えて、
−第1車両位置Aでの直接ギア作動車速よりわずかに低い第1車速Vminを登録するステップと、
−所定の車両条件を登録したとき、車両最低速度を直接ギア作動車速と等しくなるように設定して、車両最低速度Vmin3まで車両を加速した後、直接ギアを作動させるステップと、
−第2距離xの残り部分を走行中に、直接ギアを作動させて車両を運転するステップとを実施するようにさらにプログラムされている。
【0035】
この利点は、間接ギアではなく、直接ギアを作動させて車両を運転することにより、さらに燃料を節約できることである。距離xを走行中の車両加速に伴う燃料費が存在する。従って、この加速、ひいては直接ギアの噛み合いを開始するために、正しい車両条件が優勢でなければならない。すなわち、直接ギアを作動させて、距離xの一部を運転することにより節約される燃料の量は、距離xを走行中の加速によって消費された余分な燃料の量より大きいと推定されなければならない。所定の車両条件は、例えば、
−直接ギア作動車速Vmin3よりわずかに低いとは、直接ギア作動車速と第1車速Vminとの差が毎時5km以下であることを意味すること、
−第2距離xは所定の値より大きいこと、
−第2距離xを走行中に、直接ギアを作動させて車両を運転する推定時間は、所定の値より大きいことのうちの少なくとも1つを含む。
【0036】
前述した4つの条件の値は、車両の製造者によって予め設定される。さらに進んだ実施形態では、制御ユニットは、直接ギアを作動させた場合、頂上BまでVmin1の間接ギアで運転を続けるのと比較して、どれくらいの燃料が消費されるかの推定値を計算するようにプログラムすることができる。推定の結果によって、直接ギアを作動させるか否かが決定される。
【0037】
前述した実施形態では、頂上、第2位置及び車両最低速度を予測することができるように、制御ユニットが、現在の車両位置と、次の車両位置(又は坂の道路地形)の両方についての情報を利用することに留意されたい。
【0038】
また、前述した実施形態では、距離y又はyを走行中に、推進ユニットからのゼロ推進力を命令する制御ユニットによって、燃料消費が最小限になることにも留意されたい。ゼロ推進力は、例えば、車両の駆動輪に駆動可能に接続された推進ユニット(例えば、エンジンブレーキ)、又は非推進的に接続された推進ユニット(すなわち、例えばフリーホイーリング)のいずれの場合も含む。従って、距離y又はyの走行中は、引力だけで車両を加速する。2つのケースには車両走行抵抗に有意な差があることから、頂上での車両最低速度の計算は、推進ユニットが、駆動可能に接続されているか、又は非推進的に接続されているかを考慮しなければならない。
【0039】
本発明の別の実施形態では、制御ユニットは、第2距離xが所定の値より短い場合に、車両最低速度を第1速度Vminと等しくするようにプログラムされている。この主な利点は、これ以上の不必要な加速を回避できることである。
【0040】
さらに別の実施形態では、車速がVbcc超過速度に近づいたら、車両の制動を開始するために、車両は、車両最高超過速度Vbcc超過速度を設定する可能性を備えていなくてもよい。その代わり、ブレーキクルーズコントロールを備えていないこのような車両では、所望の車速は、車両設定目標速度Vcc設定目標速度と同じであってよい。
【0041】
図5は、本発明の一実施形態の装置500を示し、装置500は、不揮発性メモリ520、プロセッサー510並びに読出し及び書込みメモリ560を含む。メモリ520は、第1メモリ部分530を有し、ここに、装置500を制御するためのコンピュータプログラムが保存される。装置500を制御するためのメモリ部分530内のコンピュータプログラムは、オペレーティングシステムであってよい。
【0042】
装置500は、例えば、前述した制御ユニットのような制御ユニット内に収納することもできる。データ処理ユニット510は、例えば、マイクロコンピュータを含んでいてもよい。
【0043】
メモリ520は、第2メモリ部分540も有しており、ここには、本発明のクルーズコントロールシステムのプログラムが保存される。別の実施形態においては、このプログラムは、個別の不揮発性データ記憶媒体550、例えば、CD又は交換可能な半導体メモリ内に保存される。このプログラムは、実行可能な形態又は圧縮状態のいずれかで保存することもできる。
【0044】
以下において、データ処理ユニット510が特定の機能を実行することを説明する際、データ処理ユニット510は、メモリ540に保存されたプログラムの特定部分、又は不揮発性データ記憶媒体550に保存されたプログラムの特定部分を実行していることは、明らかであろう。
【0045】
データ処理ユニット510は、データバス514を介してメモリ550と通信するように調整されている。データ処理ユニット510はまた、データバス512を介してメモリ520とも通信するように調整されている。さらに、データ処理ユニット510は、データバス511を介してメモリ560とも通信するように調整されている。データ処理ユニット510はまた、データバス515を用いてデータポート590とも通信するように調整されている。
【0046】
本発明の方法は、データ処理ユニット510によって実行することができ、データ処理ユニット510は、メモリ540に保存されたプログラム又は不揮発性データ記憶媒体550に保存されたプログラムを実行する。
【0047】
本発明は、以上説明してきた実施形態に限定されるとみなすべきではなく、むしろ本発明の特許請求の範囲内で、多数の別の態様及び変更を考慮することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両クルーズコントロールを制御する方法であって、
−クルーズコントロールを作動状態にすると共に、車両設定目標速度(Vcc設定目標速度)を維持するように設定して、車両を運転するステップと、
−坂の上り坂を走行中に、車両の減速によって、車両設定目標速度より低い第1車速(Vmin)まで車速が低下し、しかも減速が0に減少した、又は車両設定目標速度まで車速を高めるために車両が加速し始めた第1車両位置(A)を登録するステップと、
−頂上から第1距離(y、y)を過ぎた地点での、頂上から下り坂の第2位置(C、C)における所望の車速(Vbcc超過速度)を登録するステップと、
−前記所望の車速に基づいて、第1距離(y、y)を走行中に最小限化又はゼロ燃料消費で、所望の車速に達することができるように、車両が頂上を通過しなければならない、頂上での車両最低速度(Vmin1、Vmin2、Vmin3)を計算するステップと、
−車両が、頂上を通過するとき車両最低速度(Vmin1、Vmin2、Vmin3)に達するように、第1車両位置(A)から頂上(B)までの第2距離(x)を走行中の車速を制御するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記第2車両位置(C、C)が、
−前記頂上(B)から所定の車両走行時間が経過した地点と、
−前記頂上から所定の距離を過ぎた地点と、
−前記下り坂の終点と、
−前記頂上から、車両走行抵抗がマイナスからプラスに変わると推定される距離を過ぎた地点とのうちの1つであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2距離(x)を走行中に最小限の燃料消費で、前記頂上で車両最低速度に達するように、前記第2距離(x)を走行中に必要な車両加速又は減速を計算するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
−第1車両位置(A)での直接ギア作動車速よりわずかに低い第1車速(Vmin)を登録するステップと、
−所定の車両条件を登録したとき、車両最低速度を直接ギア作動車速と等しくなるように設定して、車両最低速度(Vmin3)まで車両を加速した後、直接ギアを作動させるステップと、
−第2距離(x)の残り部分を走行中に、直接ギアを作動させて車両を運転するステップとをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
所定の車両条件が、
−直接ギア作動車速(Vmin3)よりわずかに低いとは、直接ギア作動車速と第1車速(Vmin)との差が毎時5km以下であることを意味すること、
−第2距離(x)は所定の値より大きいこと、
−第2距離(x)を走行中に、直接ギアを作動させて車両を運転する推定時間は、所定の値より大きいことのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
第2距離を走行中、車速を前記車両設定目標速度より低く維持することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記車両クルーズコントロールの車両最高超過速度(Vbcc超過速度)を設定するが、車両最高超過速度は、前記車両設定目標速度と少なくとも等しいか、あるいは、これより高く、また、所望の車速が前記車両最高超過速度と等しいことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記車両設定目標速度(Vcc設定目標速度)と所定の関係を有する車両最低未満速度を設定することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記所定の関係が、
−前記車両最低未満速度は、前記車両設定目標速度の所定のパーセンテージであること
−前記車両最低未満速度は、前記車両設定目標速度より低い、所定の量であることのうちの1つであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
現在の車両位置と、前記坂でこれから通る道路地形についての情報を用いて、前記頂上、第2位置及び車両最低速度を予測することを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2距離(x)が所定の値より短い場合、前記車両最低速度が前記第1車速(Vmin)と等しくなるように設定されることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
制御ユニット、ドライバー入力インターフェース、車両位置確認装置、並びに道路地形確認装置を含む車両クルーズコントロールシステムであって、前記制御ユニットが、請求項1乃至11のいずれかに記載の方法のステップを実施すると共に、前記車両位置確認装置及び道路地形確認装置からの情報を用いて、前記車両最低速度(Vmin1Vmin2、Vmin3)を計算するように設計されていることを特徴とする、システム。
【請求項13】
プログラムをコンピュータで実行すると、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の全ステップを実施するプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
プログラム製品をコンピュータで実行すると、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の全ステップを実施するコンピュータ可読媒体に保存されるプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項15】
コンピュータ環境で用いるための記憶媒体、例えば、コンピュータメモリ(520)又は不揮発性データ記憶媒体(550)であって、前記メモリが、請求項1乃至11のいずれかに記載の方法を実施するコンピュータ可読プログラムコードを含む、記憶媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−532057(P2012−532057A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518510(P2012−518510)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050862
【国際公開番号】WO2011/002367
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(500277711)ボルボ ラストバグナー アーベー (163)
【Fターム(参考)】