説明

車両ドアサッシュのフレーム構造

【課題】車両ドアの窓開口を形成するドアサッシュと、該ドアサッシュにガイドされる窓ガラスのガラスランとを有する車両ドアサッシュのフレーム構造において、ドアサッシュとガラスランと結合性、組立性に優れ、長期に渡り両者の間に雨水が浸入するおそれがないドアサッシュのフレーム構造を得る。
【解決手段】金属材料から形成することが技術的に常識であったドアサッシュを合成樹脂材料から構成し、合成樹脂製のガラスランとともに、一体に成形した車両ドアサッシュのフレーム構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアサッシュのフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両ボディのドア開口を開閉する車両ドアは一般に、ドア本体(インナパネルとアウタパネル)の上部に、窓開口を形成するドアサッシュを一体に設けている。ドアサッシュは従来、金属製の立柱サッシュとアッパサッシュとからなり、このドアサッシュに対して昇降ガラス用の合成樹脂製ガラスランを後に固定していた。
【特許文献1】特開2002−36879号公報
【特許文献2】特開2007−302186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、金属製のドアサッシュと合成樹脂製のガラスランとの間には、隙間が生じやすく、雨水が浸入するおそれがある。また、ドアサッシュは特に断面形状が複雑で、ロール成形、押出成形のいずれによっても製造が困難であり、別に製造したガラスランとの組付作業も困難である。さらに長期の使用により、ドアサッシュからガラスランが脱落するおそれがある。ドアサッシュには、ガラスランに加えてウェザーストリップを保持することが多く、ドアサッシュとウェザーストリップとの間にも同様の問題がある。
【0004】
本発明は、ドアサッシュとガラスランと結合性、組立性に優れ、長期に渡り両者の間に雨水が浸入するおそれがないドアサッシュのフレーム構造を得ることを目的とする。
【0005】
本発明は、従来金属材料から形成することが技術的に常識であったドアサッシュを合成樹脂材料から構成すれば、異種合成樹脂材料からなるガラスランとの一体性を高めることができ、その成形性、組立性も飛躍的に高めることができるとの着眼に基づいてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両ドアの窓開口を形成するドアサッシュと、該ドアサッシュにガイドされる窓ガラスのガラスランとを有する車両ドアサッシュのフレーム構造において、ドアサッシュとガラスランをともに合成樹脂材料から構成し、一体に成形したことを特徴としている。
【0007】
ドアサッシュとガラスランの成形手段には自由度があるが、具体的には例えば、異種合成樹脂材料の二色押出成形によって一体成形することができる。
【0008】
本発明のフレーム構造では、合成樹脂材料からなるウェザーストリップも一体に成形することができる。ウェザーストリップは、ドアサッシュ及びガラスランと一緒に、三色押出成形によって一体成形することが可能である。
【0009】
合成樹脂製のドアサッシュには、その意匠面に色つき合成樹脂材料を同時押出成形することができる。同様に、その意匠面に、金属材料を同時押出成形(複合成形)またはインサートモールドすることができる。
【0010】
本発明は、別の態様では、以上のいずれかの車両ドアサッシュのフレーム構造を有する車両ドアである。
【0011】
さらに別の態様では、以上の車両ドアを有する車両である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両ドアサッシュのフレーム構造は、ドアサッシュ及びこのドアサッシュに支持されるガラスランを合成樹脂材料から構成して一体に成形したので、ドアサッシュとガラスランの成形性、一体性、組立性に優れる。また、ドアサッシュを樹脂化することで、ウェザーストリップ、意匠面、ベルトモールの樹脂一体化の可能性が広がるため、樹脂化サッシュとして技術展開の裾野が広く、併せて軽量化の効果も得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明による車両ドアサッシュのフレーム構造を適用する乗用車の側面形状を示している。車両ボディBのドア開口(ボディ開口)Aを開閉する車両ドア10は、ドア本体(インナパネルとアウタパネル)11の上部に窓開口12を形成するドアサッシュ(窓枠)13を備えている。
【0014】
ドアサッシュ13は、合成樹脂材料からなるもので、窓ガラスWの上縁を受け入れる曲折したアッパサッシュ部13Aと、車両ボディBのセンターピラー16に沿い窓ガラスWの上下方向縁部を受け入れる立柱サッシュ部13Bとを有している。アッパサッシュ部13Aと立柱サッシュ部13Bの下方は、ドア本体11内に延びて該ドア本体11に固定されるドア内固定部13A’と13B’を構成している。
【0015】
ドアサッシュ13は、図2、図3の断面形状に示すように、車両の外面に露出する意匠部21と、この意匠部21の幅方向の中間部分から車内側に延びる車幅部22と、この車幅部22の内側端部に厚肉に形成した厚肉強度部23とを有している。意匠部21、車幅部22、厚肉強度部23の間には、断面コ字状の空間24が形成されており、このコ字状空間24に、合成樹脂材料からなるガラスラン30が一体に成形されている。ガラスラン30自体は、ドアサッシュ13が金属材料からなる従来品においても一般的に用いられている部材であり、その形状、材料ともに各種が周知である。しかし、金属材料からなる従来のドアサッシュでは、ガラスラン30を保持するために特別な断面形状が必要であったが、ともに合成樹脂材料からなるドアサッシュ13とガラスラン30を一体成形すると、両者は強固に接合されるので、ドアサッシュ13にガラスラン30を保持するための特別な形状(抜止部、蟻溝等)は不要であり、単なるコ字状空間24として形成しても、長期に渡り脱落のおそれがない。
【0016】
また、ドアサッシュ13には、意匠部21と車幅部22とによってコ字状空間24の反対側に形成されたL字状空間25に、ウェザーストリップ31が一体に成形されている。ウェザーストリップ31自体は、ガラスラン30と同様に、形状、材料ともに各種が周知の部材である。このウェザーストリップ31は、ガラスラン30と同様にして、ドアサッシュ13に一体に成形することができる。ともに合成樹脂材料からなるドアサッシュ13とウェザーストリップ31を一体成形すると、両者は強固に接合されるため、ドアサッシュ13にウェザーストリップ31を保持するための特別な形状(抜止部、蟻溝等)は不要であり、単なるL字状空間24として形成しても、長期に渡り脱落のおそれがない。なお、図2では、車両ボディB(センターピラー16)側に、別のウェザーストリップ32が装着されている。
【0017】
以上のドアサッシュ13、ガラスラン30及びウェザーストリップ31は、三色成形によって同時に成形し、成形後、アッパサッシュ部13Aと立柱サッシュ部13Bに曲げ加工することができる。この際、アッパサッシュ部13Aに一体に成形されるガラスラン30及びウェザーストリップ31と、立柱サッシュ部に一体に成形されるガラスラン30及びウェザーストリップ31はそれぞれ、同一断面形状とし、あるいは、可変押出技術を用いて、特に立柱サッシュ部13Bについては、意匠部21の幅その他を徐々に変化させることも可能である。また、ガラスラン30及びウェザーストリップ31を有するアッパサッシュ部13Aと、別のガラスラン30及びウェザーストリップ31を有する立柱サッシュ部13Bは、別体として成形し、後に接合する態様でもよい。アッパサッシュ部13A側のガラスラン30及びウェザーストリップ31と、立柱サッシュ部13B側のガラスラン30及びウェザーストリップ31とは断面形状を異ならせてもよい。図4は、アッパサッシュ部13A側のガラスラン30の底部壁30aをアッパサッシュ部13Aのコ字状空間24の底壁から離間させてクッション性を持たせ、窓ガラスWが閉じるときのショックを軽減するようにした形状例である。
【0018】
ウェザーストリップ31は、二色成形したドアサッシュ13とガラスラン30に対して後工程で装着することもできる。図5は、この態様を示しており、ドアサッシュ13には、図2、図3のL字状空間25に代えて、ウェザーストリップ31を後に保持するための蟻溝25Aが形成されている。この実施形態では、ウェザーストリップ31を成形後のドアサッシュ13の蟻溝25Aに後に装着する。
【0019】
ドアサッシュ13とガラスラン30(及びウェザーストリップ31)を二色成形(三色成形)する場合の異種合成樹脂材料の組み合わせ例を挙げると次の通りである。
ドアサッシュ13の材料;PP、ABS
ガラスラン30の材料;TPO、EPDM
ウェザーストリップ31の材料;EPDM
【0020】
本発明によるドアサッシュのフレーム構造は、以上のように、ドアサッシュ13とガラスラン30(さらにウェザーストリップ31)をともに合成樹脂材料から構成して一体に成形したため、さらに技術的な展開が可能である。
【0021】
図6は、ドアサッシュ13の意匠部21の外表面に、着色樹脂材料26を二色成形した実施形態である。金属材料からなる従来のドアサッシュでは、立柱サッシュとアッパサッシュを接合後、着色樹脂テープ(サッ黒テープ)を接着することが行われていたが、ドアサッシュ13を樹脂化すると、着色樹脂材料26によって、この着色樹脂テープの代用ができ、工数の大幅な低減ができる。
【0022】
図7は、ドアサッシュ13の意匠部21の外表面に、金属材料からなる意匠部材27を、同時押出成形またはインサートモールドした実施形態である。金属意匠部材27は、例えばステンレス材料から構成され、従来品ではドアサッシュにリベット結合するのが普通であった。ドアサッシュ13を樹脂化した本実施形態では、金属意匠部材27を同時押出成形(複合成形)またはインサートモールドすることができ、工数の削減ができる。また、脱落のおそれがない。
【0023】
この図7の構成は、特に立柱サッシュ部13Bの意匠部21の外面に、ガーニッシュと呼ばれる外観部品を装着する態様に応用することができる。図8は、立柱サッシュ部13Bの外面へのガーニッシュ28の装着部位をハッチングして示したものである。ガーニッシュ28としては、金属材料の他、合成樹脂材料も用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による車両ドアサッシュのフレーム構造を適用する車両ドアの一例を示す側面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】本発明による車両ドアサッシュのフレーム構造の別の実施形態を示す、図3の一部に対応する断面図である。
【図5】本発明による車両ドアサッシュのフレーム構造の別の実施形態を示す、図2に対応する断面図である。
【図6】本発明による車両ドアサッシュのフレーム構造の別の実施形態を示す、図3に対応する断面図である。
【図7】本発明による車両ドアサッシュのフレーム構造の別の実施形態を示す、図2に対応する断面図である。
【図8】本発明による車両ドアサッシュのフレーム構造の別の実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0025】
B 車両ボディ
A ドア開口(ボディ開口)
W 窓ガラス
10 車両ドア
11 ドア本体
12 窓開口
13 ドアサッシュ
13A アッパサッシュ部
13B 立柱サッシュ部
16 センターピラー
21 意匠部
22 車幅部
23 厚肉強度部
24 コ字状空間
25 L字状空間
25A 蟻溝
26 着色樹脂材料
27 金属意匠部材
28 ベルトモール
29 ドアミラー取付用三角部
30 ガラスラン
30a 底部壁
31 32 ウェザーストリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアの窓開口を形成するドアサッシュと、該ドアサッシュにガイドされる窓ガラスのガラスランとを有する車両ドアサッシュのフレーム構造において、
上記ドアサッシュとガラスランをともに合成樹脂材料から構成し、一体に成形したことを特徴とする車両ドアサッシュのフレーム構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両ドアサッシュのフレーム構造において、ドアサッシュとガラスランは、異種合成樹脂材料の二色押出成形によって一体成形されている車両ドアサッシュのフレーム構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両ドアサッシュのフレーム構造において、さらに合成樹脂材料からなるウェザーストリップも一体に成形されている車両ドアサッシュのフレーム構造。
【請求項4】
請求項3記載の車両ドアサッシュのフレーム構造において、ウェザーストリップは、ドアサッシュ及びガラスランと一緒に、三色押出成形によって一体成形されている車両ドアサッシュのフレーム構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の車両ドアサッシュのフレーム構造において、ドアサッシュは、意匠面に着色樹脂材料が同時押出成形されている車両ドアサッシュのフレーム構造。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の車両ドアサッシュのフレーム構造において、ドアサッシュは、意匠面に金属材料が同時押出成形またはインサートモールドされている車両ドアサッシュのフレーム構造。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載の車両ドアサッシュのフレーム構造を有する車両ドア。
【請求項8】
請求項7記載の車両ドアを有する車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−69931(P2010−69931A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236752(P2008−236752)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】