説明

車両側部構造

【課題】ドアの開閉動作の繰り返しにより、インパクトビームの端部を固定するブラケットとドアとのスポット溶接での応力の発生を抑制する。
【解決手段】フロントサイドドア16の内部にインパクトビーム28が配置されており、その後端部28Bはブラケット32に固定されている。ブラケット32のインパクトビーム28の上部と下部には、複数の取付部33が設けられており、取付部33とドアインナパネル42の平面部42Aとがスポット溶接44A〜Dで接合されている。ドアインナパネル42の車両幅方向内側には、インパクトビーム28の上部と下部のスポット溶接44B、44Cの位置を結んだ線Lの後方であって、下部のスポット溶接44Bより上方にクッションゴム52が設けられている。クッションゴム52は、スポット溶接44を挟んで前方側のウェザーストリップ54と反対側に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアの内部に車両前後方向に沿ってインパクトビームを備えた車両側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、サイドドアの閉鎖時の位置を規制するため、車体側のリンフォースとドア受け面とを接合した端部と重なる位置にドアストッパを配設した構造が開示されている。
【特許文献1】特開2003−81137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記先行技術による場合、サイドドアの開閉動作を繰り返すと、インパクトビームのブラケットとインナパネルとのスポット溶接部に応力が発生する。
【0004】
すなわち、インパクトビームは慣性を持っているため、サイドドアを閉めた瞬間でも車室内側に変位してくる。それに対して、インナパネルはウェザーストリップからの入力(ウェザーストリップの反力)により車室外側へ変形するため、両者を結合しているブラケットとインナパネルのスポット溶接部で応力が発生する。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、サイドドアの開閉動作を繰り返しても、インパクトビームのブラケットとサイドドアとのスポット溶接部に生じる応力を低減できる車両側部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る車両側部構造は、ボディー本体に対して開閉可能に設けられ、閉止時に車両幅方向内側の縁部が前記ボディー本体と対向するドアと、前記ドアの内部に車両前後方向に沿って配置されたインパクトビームと、前記ドアの内部の車両幅方向内側に、前記インパクトビームの少なくとも上部と下部でスポット溶接され、前記インパクトビームの後端部を固定するブラケットと、前記上部と前記下部のスポット溶接位置を結んだ線より車両後方であって、前記下部のスポット溶接位置より上方の前記縁部及び前記ボディー本体における当該縁部との対向部の少なくとも一方に取付けられ、前記ドアの閉止時に前記縁部側又は前記ボディー本体側に当接する衝撃緩和部材と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両側部構造において、前記衝撃緩和部材が、車両上下方向に対して前記上部のスポット溶接位置より下方に配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両側部構造において、前記ドアの車両幅方向内側にウェザーストリップを備え、前記ブラケットのスポット溶接位置を挟んで車両前方側に前記ウェザーストリップが配置され、車両後方側に前記衝撃緩和部材が配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両側部構造において、前記衝撃緩和部材が、前記縁部に取付けられ、前記ドアの閉止時に前記衝撃緩和部材が前記ボディー本体に当接することを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両側部構造において、前記衝撃緩和部材が、前記ボディー本体に取付けられ、前記ドアの閉止時に前記衝撃緩和部材が前記縁部に当接することを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車両側部構造において、前記衝撃緩和部材がクッションゴムであることを特徴とする。
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、ボディー本体に対してドアが開閉可能に設けられており、ドアの閉止時には、ドアの車両幅方向内側の縁部がボディー本体と対向している。ドアの内部には、側面衝突時においてドアの変形を抑制するためのインパクトビームが車両前後方向に沿って配置されている。ドアの内部の車両幅方向内側には、ブラケットがインパクトビームの少なくとも上部と下部でスポット溶接されており、ブラケットにインパクトビームの後端部が固定されている。ドアの縁部及びボディー本体における縁部との対向部の少なくとも一方には、上部と下部のスポット溶接位置を結んだ線より車両後方であって、下部のスポット溶接位置より上方に衝撃緩和部材が取付けられており、ドアの閉止時に衝撃緩和部材が縁部側又はボディー本体側に当接する。
【0013】
一般的に、インパクトビームは、ドアを閉止した瞬間でも慣性を持っているために車室内側へ変位しており、また、ドアの車両幅方向内側の縁部は、ウェザーストリップ等からの入力により車室外側へ変形するため、ドアの車両幅方向内側とインパクトビームのブラケットとの相対変位が大きくなりやすい。本発明では、ドアの閉止時に衝撃緩和部材が、上部と下部のスポット溶接位置を結んだ線より車両後方であって、下部のスポット溶接位置より上方でドアの縁部側又はボディー本体側と当接し、ドアの閉止時の衝撃が緩和される。その際、衝撃緩和部材からドアへの入力(衝撃緩和部材の反力)により、ドアの車両幅方向内側とインパクトビームのブラケットとの相対角度が大きくなることが抑制され、スポット溶接での応力の発生が低減される。このため、ドアの開閉動作を繰り返しても、ドアの内部の車両幅方向内側とブラケットとのスポット溶接部の接合状態は良好に維持される。
【0014】
請求項2記載の本発明によれば、衝撃緩和部材は、車両上下方向に対して上部のスポット溶接位置より下方に配置されている。すなわち、衝撃緩和部材は上部と下部のスポット溶接位置の間に配置されることになる。このため、ドアの閉止時に、衝撃緩和部材によって上部と下部の両方のスポット溶接での応力の発生が低減される。
【0015】
請求項3記載の本発明によれば、ブラケットのスポット溶接位置を挟んで車両前方側にウェザーストリップが配置され、車両後方側に衝撃緩和部材が配置されている。
【0016】
一般的に、インパクトビームは、ドアを閉止した瞬間でも慣性を持っているため、車室内側へ変位しており、また、ドアの車両幅方向内側の縁部は、スポット溶接位置より車両前方側のウェザーストリップからの入力(ウェザーストリップの反力)により車室外側へ変形するため、ドアの前方の車両幅方向内側とインパクトビームのブラケットとの相対変位が大きくなりやすい。本発明では、ドアの閉止時に、衝撃緩和部材がブラケットのスポット溶接位置を挟んでウェザーストリップと反対側の車両後方側でボディー本体と当接するため、衝撃緩和部材からドアへの入力(衝撃緩和部材の反力)により、ドアの車両幅方向内側とインパクトビームのブラケットとの相対角度が大きくなることが抑制される。このため、ドアの内部の車両幅方向内側とブラケットとのスポット溶接での応力の発生が低減される。
【0017】
請求項4記載の本発明によれば、衝撃緩和部材がドアの縁部に取付けられており、ドアの閉止時に衝撃緩和部材がボディー本体に当接する。このため、衝撃緩和部材からドアへの入力により、ドアの車両幅方向内側とブラケットとの相対角度が大きくなることが抑制され、スポット溶接での応力の発生が低減される。
【0018】
請求項5記載の本発明によれば、衝撃緩和部材がボディー本体に取付けられており、ドアの閉止時に衝撃緩和部材がドアの縁部に当接する。このため、衝撃緩和部材からドアへの入力により、ドアの車両幅方向内側とブラケットとの相対角度が大きくなることが抑制され、スポット溶接での応力の発生が低減される。
【0019】
請求項6記載の本発明によれば、従来から用いられているドアとボディー本体との干渉防止用のクッションゴムを衝撃緩和部材として使用することができる。このため、新たな部品を追加する必要がなく、低コスト化が可能である。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両側部構造は、ドアの開閉動作を繰り返したときに、ドアの内部の車両幅方向内側とブラケットとのスポット溶接に生じる応力を低減できる。
【0021】
請求項2記載の本発明に係る車両側部構造は、上部と下部のスポット溶接位置の間に配置した衝撃緩和部材により、上部と下部の両方のスポット溶接に生じる応力を低減できる。
【0022】
請求項3記載の本発明に係る車両側部構造は、車両前方側のウェザーストリップに対してスポット溶接位置を挟んで車両後方側に衝撃緩和部材を配置するので、ドアの車両幅方向内側とブラケットとの相対変位が大きくなることをよりいっそう抑制できる。
【0023】
請求項4記載の本発明に係る車両側部構造は、ドアの縁部に設けられた衝撃緩和部材によって、ドアの閉止時に衝撃緩和部材からドアへ入力することができる。
【0024】
請求項5記載の本発明に係る車両側部構造は、ボディー本体に設けられた衝撃緩和部材によって、ドアの閉止時に衝撃緩和部材からドアへより確実に入力することができる。
【0025】
請求項6記載の本発明に係る車両側部構造は、新たな部品を追加する必要がなく、低コスト化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図7を用いて、本発明に係る車両側部構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0027】
図1及び図2には、本実施形態に係るブラケットを用いてインパクトビームをフロントサイドドアの内部に取付けた状態が示されている。図1に示されるように、車両10のボディー本体11の側部には、フロントドア開口部12とリアドア開口部14とが形成されている。フロントドア開口部12には、フロントサイドドア16がヒンジ18によって開閉可能に取付けられており、リアドア開口部14には、リアサイドドア20がヒンジ22によって開閉可能に取付けられている。また、フロントサイドドア16の内部には、車体前後方向に沿って上部と下部に2本のインパクトビーム26、28が配設されている。
【0028】
図2に示されるように、下部のインパクトビーム28の前端部28Aと後端部28Bは、それぞれブラケット30、32を介してフロントサイドドア16を構成するドアインナパネル42に取付けられている。また、上部のインパクトビーム26の前端部26Aと後端部26Bは、それぞれブラケット34、36を介してドアインナパネル42に取付けられている。
【0029】
図3〜図5には、本実施形態の主要部であるインパクトビーム28の後端部28Bを固定するブラケット32付近の構造が示されている。これらの図に示されるように、ブラケット32の車両上下方向の中央部付近には車両幅方向外側へ突出する凸状部32Aが形成されており、この凸状部32Aの車両幅方向外側に略半円状の凹部32Bが形成されている。インパクトビーム28はパイプ材で構成されており、インパクトビーム28の後端部28Bは、ブラケット32の凹部32Bにアーク溶接38によって接合されている。
【0030】
図5に示されるように、フロントサイドドア16は、車室外側に配置される金属製のドアアウタパネル40と、車室内側に配置されてヘミング加工によりドアアウタパネル40と一体化されて閉断面を構成する金属製のドアインナパネル42と、を含んで構成されている(図5ではフロントサイドドア16の下部のみ図示する)。
【0031】
図3及び図4に示されるように、ドアインナパネル42の縁部には、車両幅方向外側へ延出された平面部42Aが形成されている。ブラケット32の車両前後方向の後端側には、凹状に窪んだ複数の取付部33が形成されている。これらの取付部33は、車両幅方向内側が略平面状に形成されており、インパクトビーム28の上部に2箇所、下部に2箇所配置されている。ブラケット32の取付部33は、ドアインナパネル42の平面部42Aに面接触状態で配置されてスポット溶接44A、44B、44C、44Dにより固定されている。本実施形態では、インパクトビーム28の上部に2個のスポット溶接44A、44Bが、インパクトビーム28の下部に2個のスポット溶接44C、44Dが車両上下方向にほぼ直線状に配置されている。なお、スポット溶接の位置を説明する場合は、44の後にA〜Dの符号を付し、位置を説明する必要がない場合は44の後のA〜Dを省略する。
【0032】
図6に示されるように、ドアインナパネル42には、平面部42Aより車両前方側に、この平面部42Aに対して略直角方向に屈曲された段差部42Bを介して車両幅方向内側へ突出する突出部42Cが設けられている。また、突出部42Cの車両幅方向内側には、車室内側に延出された樹脂製のドアトリム46が設けられている。
【0033】
ボディー本体11には、ドアインナパネル42の平面部42Aと段差部42Bと突出部42Cの後端部の形状に沿って、所定の間隔で対向するサイドメンバアウタ50が設けられている。ドアインナパネル42の平面部42Aには、インパクトビーム28の後端部28Bより車両後方側に円形状の開口43が形成されており、この開口43の車両幅方向内側に衝撃緩和部材としてのクッションゴム52が取付けられている。クッションゴム52は、サイドメンバアウタ50の平面部50Aと近接対向する頭部52Aと、開口43の車両幅方向外側に係止される爪部52Bとで構成されている。
【0034】
図3に示されるように、クッションゴム52は、インパクトビーム28に最も近い位置に配置された上部のスポット溶接44Bと、インパクトビーム28に最も近い位置に配置された下部のスポット溶接44Cとを結んだ線Lより車両後方であって、車両上下方向に対して上部のスポット溶接44Bと下部のスポット溶接44Cとの間に設けられている。
【0035】
図6に示されるように、ドアインナパネル42の車両幅方向内側には、平面部42Aと段差部42Bとの角部にゴム製のウェザーストリップ54が取付けられている。このウェザーストリップ54は、フロントサイドドア16の縁部に沿って取付けられており、フロントサイドドア16の閉止時にサイドメンバアウタ50の角部50Bに当接するように構成されている。このウェザーストリップ54は、ブラケット32のスポット溶接44A、44B、44C、44Dの位置より車両前方側に配置されており、スポット溶接44A、44B、44C、44Dの位置を挟んで車両後方側にクッションゴム52が配置されている。
【0036】
サイドメンバアウタ50の車両前方側の端部50Cには、ゴム製のオープニングウェザーストリップ56が取付けられている。オープニングウェザーストリップ56は、フロントサイドドア16の閉止時にドアトリム46と当接するように構成されている。なお、ウェザーストリップ54及びオープニングウェザーストリップ56はゴムに限らず、樹脂製のものを用いても良い。
【0037】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。ここでは、比較例として、図8に示されるように、フロントサイドドア106のドアインナパネル42にクッションゴムを設けない構成と比較しながら説明する。なお、図7及び図8では、本実施形態の作用並びに効果をわかり易くするために、フロントサイドドア16の閉止時の変形量を誇張して表現している。
【0038】
図6に示されているように、ボディー本体11のサイドメンバアウタ50に対してフロントサイドドア16が開閉可能に構成されている。フロントサイドドア16を閉止した状態では、ドアインナパネル42の平面部42Aに設けられたクッションゴム52がサイドメンバアウタ50の平面部50Aに近接対向し、ドアインナパネル42の平面部42Aと段差部42Bとの角部に設けられたウェザーストリップ54がサイドメンバアウタ50の角部50Bに当接している。また、サイドメンバアウタ50の端部50Cに設けられたオープニングウェザーストリップ56がドアトリム46に当接している。
【0039】
比較例のドア側部構造では、図8中の二点鎖線で示されるように、フロントサイドドア106を閉止した瞬間には、図8中の実線に比べてインパクトビーム28は慣性を持っているために車室内側へ変位しており、また、インパクトビーム28はブラケット32にアーク溶接38で固定されているため、ブラケット32も車室内側へ変位している。これに対して、ドアインナパネル42はウェザーストリップ54とサイドメンバアウタ50との接触時に、ウェザーストリップ54からの矢印F1方向への入力(ウェザーストリップ54の反力)により車室外側へ変形する。すなわち、ドアインナパネル42のスポット溶接44の位置より前方側が車室外側へ変形し、ドアインナパネル42とブラケット32との相対変位が大きくなる。このため、ドアインナパネル42にクッションゴムを設けない場合には、ドアインナパネル42とブラケット32(インパクトビーム28)との角度θ2の変化が大きくなり、ドアインナパネル42とブラケット32とを接合しているスポット溶接44に応力が発生する。このため、フロントサイドドア106の開閉動作を繰り返したときに、スポット溶接44に応力が発生する。
【0040】
一方、本実施形態の車両側部構造では、図7中の二点鎖線で示されるように、フロントサイドドア16を閉止した瞬間には、ドアインナパネル42の平面部42Aに設けられたクッションゴム52がサイドメンバアウタ50の平面部50Aに接触する。このとき、クッションゴム52はスポット溶接44A、44B、44C、44Dの位置より後方側であって、上部のスポット溶接44Bと下部のスポット溶接44Cとの間でサイドメンバアウタ50の平面部50Aに接触するため、クッションゴム52からの矢印F2方向への入力(クッションゴム52の反力)により、ドアインナパネル42とブラケット32との相対変位が減少する。すなわち、ドアインナパネル42とブラケット32(インパクトビーム28)との角度θ1の変化が小さくなり、ドアインナパネル42とブラケット32とを接合しているスポット溶接44での応力の発生が低減される。これによって、フロントサイドドア16の開閉動作を繰り返したときに、スポット溶接44に生じる応力を低減できる。
【0041】
図9には、本実施形態と比較例の車両側部構造におけるスポット溶接44での応力と経過時間との関係のグラフが示されている。このグラフに示されるように、比較例のスポット溶接44での応力に比べて、本実施形態のスポット溶接44での応力が小さいことが確認できる。
【0042】
本実施形態の車両側部構造では、特に3ドアの自動車などでドアインナパネル42の平面部42Aを大きく確保できない場合でも、ブラケット32の大型化や部品追加による補強、ドアインナパネル42の板厚を大きくするなどの対策をとる必要がなく、質量増加や部品数の増加などを抑制できる。また、クッションゴム52は、従来から用いられているフロントサイドドアとボディー本体との干渉防止用のクッションゴムを用い、このクッションゴム52をドアインナパネル42の平面部42Aの所定の位置に取付けた構成であるため、新たな部品を追加する必要がない。このため、低コストでブラケット32とドアインナパネル42とのスポット溶接44に生じる応力を低減できる。
【0043】
(第1実施形態のバリエーション)
上述した第1実施形態では、クッションゴム52が、車両上下方向に対してインパクトビーム28の下部のスポット溶接44Bとインパクトビーム28の上部のスポット溶接44Cとの間に設けられているが、この構成に限定されず、クッションゴム52は、インパクトビーム28の最下部のスポット溶接44Dより上方であれば、車両上下方向における他の位置に設けても良い。例えば、インパクトビーム28の最上部のスポット溶接44Aの上方に設けても良い。
【0044】
〔第2実施形態〕
次に、図10を用いて、本発明に係る車両側部構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0045】
図10に示されるように、フロントサイドドア16の平面部42Aと対向するサイドメンバアウタ50の平面部50Aに開口70が形成されており、この開口70の車両幅方向外側にクッションゴム72の頭部52Aが取付けられている。このクッションゴム72の形状は、図6に示すクッションゴム52と同じである。
【0046】
このような構成でも、フロントサイドドア16の閉止時にサイドメンバアウタ50のクッションゴム72がドアインナパネル42の平面部42Aと当接するため、ドアインナパネル42とブラケット32とを接合しているスポット溶接44での応力の発生が低減される。このため、フロントサイドドア16の開閉動作を繰り返したときに、スポット溶接44に生じる応力を低減できる。
【0047】
〔実施形態の補足説明〕
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、下部のインパクトビーム28を固定するブラケット32の後方側にクッションゴム52又はクッションゴム72を設けたが、この構成に限定するものではない。例えば、上部のインパクトビーム26を固定するブラケット36の後方側の所定の位置にクッションゴム52又はクッションゴム72を設けても良い。
【0048】
また、第1実施形態はドアインナパネル42にクッションゴム52を設ける構成、第2実施形態はサイドメンバアウタ50にクッションゴム72を設ける構成であるが、これに限定されず、ドアインナパネル42とサイドメンバアウタ50の両方にクッションゴムを設ける構成としても良い。
【0049】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、衝撃緩和部材としてクッションゴム52、72を設けたが、ゴム製の部材に限定するものではない。例えば、フロントサイドドア16の閉止時の衝撃を緩和できる部材であれば、樹脂など他の材質や、他の形状のものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態に係る車両側部構造が適用された車体を示す概略側面図である。
【図2】第1実施形態に係る車両側部構造が適用されたフロントサイドドアを示す一部裁断側面図である。
【図3】第1実施形態に係る車両側部構造の全体構成を示す側面図である。
【図4】図3に示される車両側部構造の全体構成を示す斜視図である。
【図5】図3に示される車両側部構造の全体構成を車両上下方向に沿って切断した状態で示す断面図である。
【図6】図3に示される車両側部構造の全体構成を車両幅方向に沿って切断した状態で示す断面図である。
【図7】図6に示される車両側部構造のフロントサイドドアの閉止時の作用を示す図である。
【図8】比較例に係る車両側部構造のフロントサイドドアの閉止時の作用を示す図である。
【図9】第1実施形態と比較例におけるスポット溶接での応力と経過時間との関係を示すグラフである。
【図10】第2実施形態に係る車両側部構造の全体構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 車両
11 ボディー本体
16 フロントサイドドア
28 インパクトビーム
28B 後端部
32 ブラケット
40 ドアアウタパネル(ドア)
42 ドアインナパネル(ドア)
42A 平面部(縁部)
44A スポット溶接
44B スポット溶接
44C スポット溶接
44D スポット溶接
50 サイドメンバアウタ(ボディー本体)
52 クッションゴム(衝撃緩和部材)
54 ウェザーストリップ
72 クッションゴム(衝撃緩和部材)
L 線(上部と下部のスポット溶接位置を結んだ線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディー本体に対して開閉可能に設けられ、閉止時に車両幅方向内側の縁部が前記ボディー本体と対向するドアと、
前記ドアの内部に車両前後方向に沿って配置されたインパクトビームと、
前記ドアの内部の車両幅方向内側に、前記インパクトビームの少なくとも上部と下部でスポット溶接され、前記インパクトビームの後端部を固定するブラケットと、
前記上部と前記下部のスポット溶接位置を結んだ線より車両後方であって、前記下部のスポット溶接位置より上方の前記縁部及び前記ボディー本体における当該縁部との対向部の少なくとも一方に取付けられ、前記ドアの閉止時に前記縁部側又は前記ボディー本体側に当接する衝撃緩和部材と、
を有することを特徴とする車両側部構造。
【請求項2】
前記衝撃緩和部材が、車両上下方向に対して前記上部のスポット溶接位置より下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両側部構造。
【請求項3】
前記ドアの車両幅方向内側にウェザーストリップを備え、
前記ブラケットのスポット溶接位置を挟んで車両前方側に前記ウェザーストリップが配置され、車両後方側に前記衝撃緩和部材が配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両側部構造。
【請求項4】
前記衝撃緩和部材が、前記縁部に取付けられ、前記ドアの閉止時に前記衝撃緩和部材が前記ボディー本体に当接することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両側部構造。
【請求項5】
前記衝撃緩和部材が、前記ボディー本体に取付けられ、前記ドアの閉止時に前記衝撃緩和部材が前記縁部に当接することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両側部構造。
【請求項6】
前記衝撃緩和部材がクッションゴムであることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車両側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−105450(P2008−105450A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287404(P2006−287404)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】