説明

車両制動装置

【課題】より効果的にブレーキ振動を低減することができる車両制動装置を提供すること。
【解決手段】本発明による車両制動装置1は、ペダル2の操作量に応じて基礎油圧から操作油圧を発生するマスターシリンダ5と、操作油圧に基づいて制御油圧を発生する制御手段9aと、制御油圧を検出する制御油圧検出手段9bと、操作量を検出する操作量検出手段9cと、所定周期間内の制御油圧又は操作量の平均値を算出する算出手段9dとを備えるとともに、制御手段9aが平均値に基づいて制御油圧を発生することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダルの操作量に基づく踏力ブレーキと、その他のパラメータに基づくブレーキとを組み合わせて車両の制動を行う車両制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両における車両制動装置としては、ペダルの操作量に基づいてマスターシリンダで基礎油圧から操作油圧を発生して、この操作油圧から制御油圧を発生させて、各車輪に備えられたディスクブレーキに制御油圧を供給して、ディスクブレーキが備えるシリンダ及びピストンにより構成される液室に制御油圧が供給されて、ピストンが制御油圧に基づいてシリンダから押し出される動作によりブレーキパッドがディスクロータに押し付けられることにより、車両の制動が行われている。このような、車両制動装置として、例えば特許文献1に記載されているようなものがある。
【特許文献1】特開2004−114747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような特許文献1に示す車両制動装置においては、ブレーキ振動が問題となる。このブレーキ振動は主としてディスクロータが一回転中に発生するトルク変動によって発生する。トルク変動の発生要因は種々のものがあるが、路面外乱によりペダルに作用する踏力変動や、制御油圧が変動することに起因するトルク変動がその主たる発生要因であるが、これらに対する対策は従来あまりなされておらず、ブレーキ振動をより効果的に低減できていないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑み、より効果的にブレーキ振動を低減することができる車両制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するため、本発明による車両制動装置は、
ペダルの操作量に応じて基礎油圧から操作油圧を発生するマスターシリンダと、
前記操作油圧に基づいて制御油圧を発生する制御手段と、
前記制御油圧を検出する制御油圧検出手段と、
前記操作量を検出する操作量検出手段と、
所定周期間内の前記制御油圧又は前記操作量の平均値を算出する算出手段と、
を備えるとともに、
前記制御手段が前記平均値に基づいて前記制御油圧を発生することを特徴とする。
【0006】
なお前記ペダルとはブレーキペダルを指し、前記操作量とはストロークセンサにより検出したストロークセンサ値であってもよいし、前記ブレーキペダルの踏面又はアームに接触式のタッチセンサ、応力感知式のセンサ、光学式の赤外線センサを設けて検出した検出値であってもよい。
【0007】
また、前記制御手段、前記制御油圧検出手段、前記操作量検出手段、前記算出手段は例えばブレーキECU(Electronic Control Unit)により適宜構成することができる。前記所定周期とは、ブレーキECUのサンプリング周期の整数倍である。
【0008】
本発明による車両制動装置によれば、
ブレーキ状態量である、前記操作量又は前記制御油圧を検出して、何れか一方の所定周期間における前記平均値を前記算出手段が算出して、前記制御手段が前記制御油圧を所定周期間における前記平均値となるように制御することができるので、路面外乱により発生する前記ペダルに入力される踏力の変動や、前記制御油圧の変動に起因する、制動のトルク変動を抑制して、ブレーキ振動を低減することができる。
【0009】
なお、前記操作量又は前記制御油圧の変動が、前記路面外乱による高周波のものでない場合には、前記算出手段が前記平均値を算出しないようにすること、前記操作量又は前記制御油圧の前記所定周期間における最大値と最小値の差が制御閾値以下である場合に、前記路面外乱によるものであると判定して、前記算出手段が前記平均値を算出することは適宜実行することができる。
【0010】
ここで、前記車両制動装置において、
車輪毎のホイールシリンダと前記ホイールシリンダに前記制御油圧を供給する油圧配管を含み、
前記ホイールシリンダと前記油圧配管との間に電磁弁を備えるとともに、
前記制御手段が、前記制御油圧が制動閾値未満である場合に、前記電磁弁を閉とし、前記油圧配管に前記制御油圧を供給する、
ことを特徴とすることが好ましい。
【0011】
なお、前記油圧配管はホースであってもよい。
【0012】
つまり、前記制御手段により前記制御油圧が前記油圧配管に供給されない場合においては、前記油圧配管に作動液が充填されておらず、剛性が小さくなり振動しやすくなる結果、車体やブレーキ部品との位相差が発生して、作動液に脈動が発生することとなるが、本発明の前記車両制動装置によれば、前記制御油圧が前記制動閾値未満であって、非制動時である場合においても、前記制御手段の制御に基づいて、前記電磁弁を閉として各車輪のホイールシリンダに前記制御油圧の作動液が供給されないことを担保した上で、前記油圧配管に前記制御油圧の作動液を供給して、前記油圧配管に作動液を充填して剛性を高めて、振動しにくくすることができ、これによってもブレーキ振動を抑制し低減することができる。
【0013】
さらに、前記車両制動装置において、
前記油圧配管内の前記制御油圧の作動液の液量を調節する調節手段を備え、
前記制御油圧が制動閾値未満である場合に、前記調整手段が前記液量を一定とすること、
を特徴とすることが好ましい。
【0014】
前記車両制動装置によれば、前記調整手段により前記油圧配管内の前記制御油圧の作動液の液量すなわち体積を一定なものとし、前記油圧配管内の前記作動液の充填率を一定に保ち、前記油圧配管すなわちホースの剛性を高めて、振動しにくくすることができ、ブレーキ振動を抑制し低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より効果的にブレーキ振動を低減することができる車両制動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明に係る車両制動装置の一実施形態を示すブロック図である。また図2は、本発明に係わる車両制動装置の一実施形態を油圧配管について主として示す模式図である。
【0018】
図1に示すように車両制動装置1は、ブレーキペダル2と、ブレーキペダル2に設けられてブレーキペダル2のストローク値を検出するストロークセンサ3を備え、さらに、図2に示すように、ブレーキペダル2に運転者により入力された踏力を倍力する、エンジンの負圧を利用して負圧を生成する負圧生成パイプに連通されたバキュームブースタ4と、その倍力された踏力により基礎油圧から操作油圧を発生するマスターシリンダ5と、基礎油圧を貯留するリザーバ6と、制御油圧を検出する制御油圧センサ7と、車輪速センサ8と、ブレーキECU9(Brake Electronic Control Unit)と、アクチュエータ10とから構成される。
【0019】
車輪速センサ8は前後左右(FR、FL、RR、RL)の車輪に対応させて四箇所設けられてそれぞれの車輪速を検出して、検出結果をブレーキECU9に出力するものである。
【0020】
アクチュエータ10の油圧配管の入口には、操作油圧又は基礎油圧が供給される。アクチュエータ10は、FR系統とFL系統が備えられる。FR系統は例えば右前輪FRと左後輪RLを油圧制動し、FL系統は左前輪FLと右後輪RRを油圧制動するものであって、両者の構成は同一であるため、FR系統のみを図1において図示して説明する。
【0021】
アクチュエータ10は油圧配管と、保持弁11と、保持弁12と、減圧弁13と、減圧弁14と、リザーバ15とを備えて構成される。
【0022】
油圧配管は入口から下流側に向けて分岐点Aにおいてまず分岐され、マスターシリンダ5内の操作油圧又は基礎油圧(運転者がペダル2に踏力を付与しない場合は操作油圧=基礎油圧)を下流側に供給する。
【0023】
油圧配管の分岐点Aから左側に分岐した後の下流側には分岐点Bが設けられて、分岐点Bの下流側の一方には右前輪FR用の保持弁11が、他方には左後輪RL用の保持弁12が設けられる。一方、分岐点Aから右側に分岐した油圧配管はリザーバ15に連通される。
【0024】
保持弁11の下流側には分岐点Cが設けられ分岐点Cの下流側の一方の油圧配管には右前輪FRのホイールシリンダ16が連通され、他方の配管の分岐点Cの下流は減圧弁13を介してリザーバ15に連通される。
【0025】
同様に、保持弁12の下流側には分岐点Dが設けられ分岐点Dの下流側の一方の油圧配管には左後輪RLのホイールシリンダ17が連通され、他方の配管の分岐点Dの下流は減圧弁14を介してリザーバ15に連通される。保持弁11及び保持弁12は操作油圧を供給油圧としてホイールシリンダ16、17に供給する。
【0026】
分岐点Cとホイールシリンダ16との間の油圧配管、分岐点Dとホイールシリンダ17との間の油圧配管には制御油圧センサ7がそれぞれ設けられる。
【0027】
ブレーキECU9は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであって、制御手段9a、制御油圧検出手段9b、操作量検出手段9c、算出手段9dを構成するものである。
【0028】
ブレーキECU9の制御手段9aは、図1に示すストロークセンサ3の検出したストロークセンサ値に基づき、アクチュエータ10が含む保持弁11、12及び減圧弁13、14を適宜制御して制御油圧をホイールシリンダ16、17に供給して油圧制動を行う。
【0029】
ブレーキECU9の制御油圧検出手段9bは、制御油圧検出センサ7から四つの車輪のホイールシリンダ16、17における制御油圧センサ値Pを取得する。ブレーキECU9の算出手段9dは、所定周期間nにおける制御油圧センサ値Pnの最大値Pnmaxと最小値Pmminの差が制御閾値Plim以下であり、制御油圧センサ値Pnの変動の周波数fを検出して、周波数fがノイズであるおそれの高い100Hz以上の周波数より小さいつまり100Hz未満であれば、制御油圧を保持する油圧保持が実行されている場合であり、路面外乱による制御油圧センサ値Pnの変動が発生していると判定する。
【0030】
ブレーキECU9の算出手段9dは、上述した判定が工程である場合に、所定周期間nにおける制御油圧センサ値Pnの平均値AVE(Pn)を算出し、ブレーキECU9の制御手段9aは、アクチュエータ10の含む保持弁11、12及び減圧弁13、14を適宜制御して、制御油圧が平均値AVE(Pn)となるように制御する。
【0031】
さらに、ブレーキECU9の操作量検出手段9cは、ストロークセンサ3の検出したストロークセンサ値を検出する。ブレーキECU9の制御手段9aは、転動輪の車輪速センサ8の検出した車輪速の平均値を求めて車速Vを演算し、それぞれの車速Vから車輪速を減じた値を車速Vで除してスリップ率を求め、制御手段9aによる制動が行われて、ある車輪のスリップ率が目標スリップ率より大きくなる場合には、該当する車輪に対応する減圧弁13又は14を適宜開とする制御をしてホイールシリンダ16又は17の内部のホイールシリンダ圧を減圧して、ロックを抑制するABS制御を行う。
【0032】
以下、本実施例1の車両制動装置1の制御内容を、フローとフローチャートを用いて説明する。図3は、本発明による車両制動装置1の制御の流れを示すフローであり、図4は本発明による車両制動装置の制御内容を示すフローチャートである。
【0033】
図3に示す、ステップC1において、ブレーキ状態量として、制御油圧P、ストロークセンサ値を検出する。本実施例では踏力Fは検出していないが、適宜の手段により踏力Fも加えて検出してもよい。つづいて、ステップC2において、本実施例における制御開始判定を、制御油圧、踏力、ストロークに基づいて行い、ステップC3において、ノイズ判定、制御油圧センサ値Pnの平均値AVE(Pn)を演算する処理を行い、ステップC4において、ブレーキECU9の制御手段9aが、制御油圧、踏力、ストロークのいずれか、ここでは制御油圧を平均値AVE(P)に基づいて行い、ステップC5において、制御を終了する判定を行う。
【0034】
図4に示すステップS1において、ブレーキECU9の算出手段9dは、車輪速センサ8から転動輪の車輪速を検出して平均して車速Vを検出し、ステップS2において、車速Vがゼロより大きいか否かを判定し、肯定である場合にはステップS3にすすみ、否定である場合には、ステップS1に戻る。
【0035】
ステップS3において、ブレーキECU9の制御油圧検出手段9bは、所定周期間nの開始時間tnと終了時間tn+1間のブレーキ状態量として、制御油圧センサ値Pnを計測し検出する。ステップS4において、ブレーキECU9の算出手段9dは、計測した制御油圧センサ値Pnの周波数分析を行って周波数fを求める。
【0036】
ステップS5において、ブレーキECU9の算出手段9dは所定周期間nにおける制御油圧センサ値Pnの最大値Pnmaxと最小値Pnminを記録して、ステップS6において周波数fが100Hz未満であるか否かを判定し、肯定である場合には路面外乱による変動であると判定してステップS7にすすみ、否定である場合にはノイズであると判定して、ステップS3の手前に戻る。
【0037】
ステップS7において、ブレーキECU9の算出手段9dは、最大値Pnmaxと最小値Pnminの差の絶対値が制御閾値Plim=0.15MPa以下であるか否かを判定し、肯定である場合にはステップS8にすすみ、否定である場合には、ステップS1に戻る。
【0038】
ステップS8において、ブレーキECU9の算出手段9dは、開始時間tnから終了時間tn+1までの所定周期間nにおける制御油圧センサ値Pnの平均値AVE(Pn)を所定周期間n中に取得して合計した制御油圧センサ値Pnの合計値ΣPnを所定周期間nにおけるサンプリング数mにより除して求め、ステップS9において、ブレーキECU9の制御手段9aは制御油圧が平均値AVE(Pn)となるようにアクチュエータ10を適宜制御する。
【0039】
つづいて、ステップS10において車両の減速を車速Vの変化により検出して、ステップS11において、次の所定周期間n+1における開始時間tn+1から終了時間tn+2までのブレーキ状態量として、制御油圧センサ値Pn+1を計測し検出し、ステップS12において、所定周期間n+1における最大値Pn+1maxと最小値Pn+1minとの差の絶対値が制御閾値Plim以下であるか否かを判定し、肯定である場合にはステップS10に戻り、否定である場合にはステップS13にすすんで、制御を終了する。
【0040】
なお、車両制動装置1において踏力ΔF、制御油圧ΔPの入力変動を発生させる要因は、図5に示すようなものとなる。図5はブレーキ振動の発生要因となるトルク変動すなわち入力変動の発生要因F1の解析結果を示す模式図である。
【0041】
まず、F2に示すように、ホイールシリンダ16、17を構成するシリンダとピストンの内部の作動液つまりはオイル量が変化することに起因し、F3に示すように、制動中において、走行路面の凹凸等の外乱によって、ドライバーのブレーキ操作が変動することに起因する。
【0042】
なお、F4に示すようにブレーキペダル2のペダルストロークの変化に対する踏力Fひいては制御油圧Pの感度が良すぎることも要因として挙げられるが、この要因に対して感度を鈍くする等の対策を行うと、初期の制動の効きやフィーリングの悪化を招くため、対策を行うメリットは薄い。
【0043】
さらに、F5に示すように路面等からの外乱からの入力に対する油圧配管やホイールシリンダ16、17、図示しないブレーキディスク、パッド、ホイールシリンダ17、18を保持するキャリパ等のブレーキ装置を構成する部品等が揺すられて、内部のオイルが脈動することも要因として挙げられる。
【0044】
また、F6に示すように、シリンダやピストンが変形して作動油としてのオイルの消費液量が変化することも要因としてあげられるが、シリンダ変形を抑制する対策として、例えば、シリンダに爪付根部をロータ側に段差として付与すると、その背反として制動時の鳴きが大きくなり、同じくシリンダ変形を抑制する対策として、キャリパトルク受け部付根部ロータ側に段差を追加すると、これも背反として、鳴きの発生やフィーリングの悪化を招くこととなり、対策を行うメリットが薄い。
【0045】
さらに、ピストン変形に対して対策を行うことは、常用的な踏力は200N以下であり、制御油圧も4.0MPa以下であることを鑑みれば、ピストンの変形は考えにくく考慮に入れる必要はない。
【0046】
また、F7に示すように、ロータの摺動面が波状になっていることについては、ロータの周方向における肉厚差Δtが存在することが考えられるが、これに対する対策は従来技術においてもなされている。
【0047】
そこで、以上述べた制御内容により実現される本実施例1の車両制動装置1においては、図5において示した要因のうち、F3とF5を主に抑制することを技術思想としている。
【0048】
さらに、本実施例1の車両制動装置1における制御事例と作用効果について図6を用いて説明する。図6は本発明に係わる車両制動装置における制御結果を示す模式図である。図6中横軸は時間を示し、横軸は破線毎に所定周期間を区分して示す。縦軸上段は制御油圧センサ値Pを示し、縦軸下段は車速Vを示す。
【0049】
開始時間tnから終了時間tn+1までの所定周期間nにおいては、制御油圧センサ値Pnの最大値Pnmaxと最小値Pnminとの差が制御閾値Plim以上であり、通常の制動であると判定し、本実施例1のブレーキECU9の算出手段9dによる平均値AVE(Pn)演算と、制御手段9aによる制御油圧を平均値AVE(Pn)とする補正制御は行わない。
【0050】
開始時間tn+1から終了時間tn+2までは、制御油圧センサ値Pn+1の最大値Pn+1maxと最小値Pn+1minとの差が制御閾値Plim以下であり、油圧保持中であって制御油圧センサ値Pn+1の変動は、路面外乱によるものと判定し、本実施例1による平均値演算と制御油圧補正制御を実行する。
【0051】
開始時間tn+3以降においては車速Vがゼロであって、車両は走行していないため、本実施例1による平均値演算と制御油圧補正制御は実行せず補正制御を解除する。
【0052】
このように、以上述べた制御内容により実現される本実施例1の車両制動装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。つまり、ブレーキ状態量である制御油圧としての制御油圧センサ値Pを検出して、所定周期間nにおける平均値AVE(P)をブレーキECU9の算出手段9dが算出して、制御手段9aが制御油圧を所定周期間nにおける平均値AVE(Pn)となるように制御することができるので、路面外乱により発生する制御油圧の変動に起因する、制動のトルク変動を抑制して、ブレーキ振動を低減することができる。
【0053】
上述した実施例1の車両制動装置1においては、さらに、ホイールシリンダ16、17の手前の油圧配管を構成するホースに電磁弁と液量調節機構を追加することもできる。以下それについての実施例2について述べる。
【実施例2】
【0054】
図7は、本発明に係る車両制動装置の一実施形態を示すブロック図である。また図8は、本発明に係わる車両制動装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【0055】
本実施例2による車両制動装置21は、図1及び図2に示したような実施例1の車両制動装置1が含む構成要素に加えて、図2において分岐点Cからホイールシリンダ16の間の油圧配管と、分岐点Dからホイールシリンダ17の間の油圧配管を構成するホース18と、ホイールシリンダ16、17の間にアクチュエータ10の一部として電磁弁19を配設して、ホース18とホイールシリンダ16、17との間を連通遮断可能として、ブレーキECU9の制御手段9aの制御に基づいて、制御油圧検出手段9bが検出した制御油圧センサ値Pが制動閾値未満でゼロとみなせる場合以外において、電磁弁19を閉とし、制御油圧を有する作動液をホース18に充填することとしている。
【0056】
本実施例2による車両制動装置21の制御内容は以下に示すようなものとなる。つまり、図8に示すように、ステップS21において、ブレーキECU9の制御油圧検出手段9bが検出した制御油圧センサ値P>0か否かを判定し、肯定である場合にはステップS22に進み、電磁弁19をブレーキECU9の制御手段9aの制御に基づいて開とし、否定である場合には、ステップS25に進んで、電磁弁19をブレーキECU9の制御手段9aの制御に基づいて閉とする。
【0057】
ステップS22の処理を終了した後において、ステップS23において、アクチュエータ10の含む保持弁11、12と減圧弁13、14が制御手段9aにより適宜制御され、制動が実行されて、ステップS24において、電磁弁19は引き続き開とされる。
【0058】
ステップS25の処理が終了した後においては、ステップS26において、アクチュエータ10が制御手段9aにより適宜制御されて、ホース18に制御油圧である作動油が充填される。
【0059】
すなわち、制御油圧がホース18に供給されない場合においては、ホース18に作動液が充填されていないために、ホース18全体としての剛性が小さくなって路面外乱に起因して振動が発生しやすくなることにより、ホース18と車体やブレーキ部品との位相差が発生して、作動液に脈動が発生することとなるが、本実施例2による車両制動装置21によれば、以下のような作用効果に基づいてこの脈動を防止することができる。
【0060】
つまり、本実施例2の車両制動装置21によれば、制御油圧センサ値Pが制動閾値未満であり非制動時である場合においても、ブレーキECU9の制御手段9aの制御に基づいて、電磁弁19を閉として各車輪のホイールシリンダ16、17に制御油圧である作動液が供給しないこととして、ホース18に制御油圧の作動液を供給して、ホース18に作動液を充填して剛性を高めて振動しにくくすることができ、これによりブレーキ振動を抑制し低減することができる。
【0061】
上述した実施例2の車両制動装置21において、さらに、ホイールシリンダ16、17の手前の油圧配管を構成するホース18に液量調節機構を追加することもできる。以下それについての実施例3について述べる。
【実施例3】
【0062】
図9は、本発明に係る車両制動装置の一実施形態を示すブロック図である。また図10は、本発明に係わる車両制動装置の一実施形態を油圧配管について主として示す模式図である。また図11は、本発明に係わる車両制動装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【0063】
本実施例3による車両制動装置31は、実施例2に示した電磁弁19と、図1及び図2に示したような車両制動装置1が含む構成要素に加えて、電磁弁19とホース18との間に液量調整機構32を設け、ホース18の液量調整機構32に隣接する表面に膨張検出装置33と設けて、構成される。
【0064】
液量調節機構32は、例えば図10に示すようなものであり、電磁弁19の備える作動油の流路と、ホース18とを連通する流路を備えて、流路から側方につまりホース18の径方向外側に画成された小部屋すなわち液室を備えて、液室のホース18と反対側にホース18の径方向に伸縮方向を有する圧電素子等のアクチュエータ34を備えて、アクチュエータ34のホース18側の面に、液室の側面と液密に接触する気密性のあるシール35を接着して形成される。膨張検出装置33は通常の歪みゲージをホース18の表面に貼付されて膨張量Xを検出しその出力端子はブレーキECU9に接続され、アクチュエータ34の伸縮方向の長さはブレーキECU9により膨張量Xに基づいて適宜制御される。
【0065】
本実施例3による車両制動装置31の制御内容は以下に示すようなものとなる。つまり、図11に示すように、ステップS31において、ブレーキECU9の制御油圧検出手段9bが膨張検出装置33に出力に基づいて制動時のホース18の膨張量Xlimを検出し、制御油圧センサ値Pを検出する。
【0066】
ステップS32において、制御油圧検出手段9bは、制御油圧センサ値P>0か否かを判定し、肯定である場合にはステップS33に進み、ブレーキECU9の操作量検出手段9cはストロークセンサ3の出力に基づいてストロークSを検出し、ストロークS>0であるか否かを判定し、肯定である場合には、ステップS34にすすんで、電磁弁19をブレーキECU9の制御手段9aの制御に基づいて開とし、否定である場合には、ステップS37にすすむ。ステップS37においては、電磁弁19をブレーキECU9の制御手段9aの制御に基づいて閉とする。
【0067】
ステップS34の処理を終了した後において、ステップS35において、アクチュエータ10の含む保持弁11、12と減圧弁13、14が制御手段9aにより適宜制御され、制動が実行され、ステップS36において、電磁弁19は引き続き開とされる。
【0068】
ステップS38の処理が終了した後においては、ステップS38において、アクチュエータ10が制御手段9aにより適宜制御されて、ホース18に制御油圧である作動油が充填される。さらに、ステップS39において、ブレーキECU9の制御油圧検出手段9bは膨張検出装置33によりホース18の膨張量Xを検出して、ステップS40においてX≧Xlimであるか否かを判定し、肯定である場合には、ステップS41にすすんで、ブレーキECU9の制御手段9aの制御に基づいてアクチュエータ10の制御すなわち入力電圧を保持し、膨張量Xと膨張量Xlimとの差分に基づいてアクチュエータ34は適宜伸長方向の長さが制御され、否定である場合には、ステップS38に戻る。
【0069】
本実施例3による車両制動装置31によれば、液量調整機構32が構成する調整手段によりホース18内の制御油圧の作動液の液量すなわち体積を一定なものとし、ホース18内の作動液の充填率を一定に保ち、ホース18の剛性を高めて、振動しにくくすることができ、ブレーキ振動を抑制し低減することができる。
【0070】
さらに、ホース18の膨張率Xと制動時の膨張率Xlimを検出して、膨張率Xが制動時の膨張率Xlimに合致するように制御しているので、ホース18の剛性を高めて、振動しにくくすることができ、ブレーキ振動を抑制し低減することができる。
【0071】
また、図11に示したフローチャートのステップS33において、ストロークセンサ3の検出したストロークSを加味した上で、制動時であるか否かの判定を行っているので、路面外乱による脈動が制御油圧を発生させる作動油に発生している場合において、ステップS32における判定が肯定となった場合に、ステップS34が、脈動により誤って実行されてしまうことを防止して、脈動による誤作動を防止することができる。
【0072】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、車両制動装置に関するものであり、より効果的にブレーキ振動を低減することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る車両制動装置の一実施形態の制御系統を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る車両制動装置の一実施形態の制御系統を示すブロック図である。
【図3】本発明による車両制動装置の制御内容を示すフローである。
【図4】本発明による車両制動装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図5】本発明による車両制動装置の適用対象となるブレーキ振動の要因解析を示すチャートである。
【図6】本発明による車両制動装置の作用効果を示す模式図である。
【図7】本発明に係る車両制動装置の一実施形態を示す模式図である。
【図8】本発明による車両制動装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る車両制動装置の一実施形態を示す模式図である。
【図10】本発明に係る車両制動装置の一実施形態の一部を拡大して示す模式図である。
【図11】本発明による車両制動装置の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
1 車両制動装置
2 ブレーキペダル
3 ストロークセンサ
4 バキュームブースタ
5 マスターシリンダ
6 リザーバ
7 制御油圧センサ
8 車輪速センサ
9 ブレーキECU
9a 制御手段
9b 制御油圧検出手段
9c 操作量検出手段
9d 算出手段
10 アクチュエータ
11 保持弁
12 保持弁
13 減圧弁
14 減圧弁
15 リザーバ
16 ホイールシリンダ
17 ホイールシリンダ
21 車両制動装置
18 ホース
19 電磁弁
31 車両制動装置
32 液量調整機構
33 膨張検出装置
34 圧電素子等のアクチュエータ
35 シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルの操作量に応じて基礎油圧から操作油圧を発生するマスターシリンダと、前記操作油圧に基づいて制御油圧を発生する制御手段と、前記制御油圧を検出する制御油圧検出手段と、前記操作量を検出する操作量検出手段と、所定周期間内の前記制御油圧又は前記操作量の平均値を算出する算出手段とを備えるとともに、前記制御手段が前記平均値に基づいて前記制御油圧を発生することを特徴とする車両制動装置。
【請求項2】
車輪毎のホイールシリンダと前記ホイールシリンダに前記制御油圧を供給する油圧配管を含み、前記ホイールシリンダと前記油圧配管との間に電磁弁を備えるとともに、前記制御手段が、前記制御油圧が制動閾値未満である場合に、前記電磁弁を閉とし、前記油圧配管に前記制御油圧を供給することを特徴とする請求項1に記載の車両制動装置。
【請求項3】
前記油圧配管内の前記制御油圧の作動液の液量を調節する調節手段を備え、前記制御油圧が制動閾値未満である場合に、前記調整手段が前記液量を一定とすることを特徴とする請求項2に記載の車両制動装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−143545(P2010−143545A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326262(P2008−326262)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】