説明

車両前部構造

【課題】 ヒータを設けることなくアウトサイドミラーの視認性を向上することができる車両前部構造を得る。
【解決手段】 車両前部構造10は、夜間等に前方に向けて光を照射するためのヘッドランプ装置12の車幅方向外側に、後方視認用のアウトサイドミラー装置14が隣接して配置されている。ヘッドランプ装置12には、前方に開口する外気取入口26が設けられている。車両前部構造10は、外気取入口26から取り入れた空気を、ヘッドランプ装置12を経由してアウトサイドミラー装置14のミラー36に導く経路を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドランプ装置とアウトサイドミラーを含む車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、その前部であるAピラーの下端近傍に後方視認用のアウトサイドミラー装置が設けられたものがある。アウトサイドミラーは、車体ではなくドアに取り付けられている。このようなアウトサイドミラーの曇り止め対策が考えられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1記載の技術では、アウトサイドミラーを構成するミラーの背面に面状ヒータを密着している。
【特許文献1】実開平7−28740号公報
【特許文献2】実開平4−110660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の技術では、アウタサイドミラーの曇り除去のためにヒータに頼っており、またヒータを作動するために電力を必要とする。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、ヒータに頼ることなくアウトサイドミラーの視認性を向上することができる車両前部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る車両前部構造は、前方に光を照射するためのヘッドランプ装置と、前記ヘッドランプ装置の側方に隣接して設けられた後方視認用のアウトサイドミラー装置と、前記ヘッドランプ装置からアウトサイドミラー装置へ空気を導く連通路と、前記連通路に連通され、前記ヘッドランプ装置に空気を取り入れる空気取入口と、を備えている。
【0006】
請求項1記載の車両前部構造では、車両前部でヘッドランプ装置とアウトサイドミラー装置とが隣接して配置されている。そして、空気取入口からヘッドランプ装置に取り入れられた空気は連通路を通じてアウトサイドミラー装置に導かれる。この空気によってミラーの曇り又はミラー表面に付着した水滴等を除去することができる。特に、ヘッドランプ装置の点灯中には、ヘッドランプ装置を通過する空気が加熱されるため、ミラーの曇りを除去する構成においては、該曇りが効果的に除去される。
【0007】
このように、請求項1記載の車両前部構造では、ヒータに頼ることなくアウトサイドミラーの視認性を向上することができる。
【0008】
請求項2記載の発明に係る車両前部構造は、請求項1記載の車両前部構造において、前記連通路は、前記アウトサイドミラー装置を構成するミラーの表面に空気を導く。
【0009】
請求項2記載の車両前部構造では、ミラーの表面にヘッドランプ装置を経由した空気が導かれ、この空気流によってミラーに付着している雨滴等の水滴が除去される。
【0010】
請求項3記載の発明に係る車両前部構造は、請求項1又は請求項2記載の車両前部構造において、前記アウトサイドミラー装置は、ミラーの背面側をミラーハウジングが覆って構成されており、前記連通路は、前記ヘッドランプ装置から前記ミラーとミラーハウジングとの間の空間に空気を導く。
【0011】
請求項3記載の車両前部構造では、ミラーの背面側におけるミラーハウジング空間内にヘッドランプ装置を経由した空気が導かれ、この空気の有する熱によって主にミラーの曇りが除去される。例えば、連通路(ミラー側への空気導入路)を、ミラーの表面及び背面の双方に空気を導くように、ミラーの外縁の厚み方向両側に開口する(ミラーを厚み方向に跨いで位置する)構成とすれば、請求項2に従属する構成を簡単な構造で実現することができる。
【0012】
なお、本請求項3における連通路は、空気取入口から導入した空気をアウトサイドミラー装置に導く過程で、この空気がヘッドランプ近傍を通過する(通過する空気を点灯中のヘッドランプによって加熱させる)ことができる空気経路を形成すれば足りる。したがって、本発明(他の請求項の発明を含む)の連通路及び空気取入口は、ヘッドランプ装置(の本体)に一体に設けられる構成には限定されることがない。
【0013】
請求項4記載の発明に係る車両前部構造は、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車両前部構造において、前記空気取入口は、前記ヘッドランプ装置を構成するランプハウジングに外気を導入するための外気取入口を含んで構成されている。
【0014】
請求項4記載の車両前部構造では、外気取入口からヘッドランプ装置のランプハウジングに取り入れた外気を、ランプの点灯に伴う発熱によってランプハウジング内にて加熱又は乾燥して、すなわち曇り除去に適した状態にしてアウトサイドミラー装置に導くことができる。
【0015】
請求項5記載の発明に係る車両前部構造は、請求項4記載の車両前部構造において、前記外気取入口から前記ランプハウジングに導入した外気を車室内に導く車室連通路をさらに備えた。
【0016】
請求項5記載の車両前部構造では、外気取入口から導入した空気を、車室連通路を通じて車室内(車載空調装置の外気取入口を含む)に導くことができる。これにより、車両前部のエアボックス等を廃止することも可能である。
【0017】
請求項6記載の発明に係る車両前部構造は、請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の車両前部構造において、前記ヘッドランプ装置に設けた光源が発した光を、前記アウトサイドミラー装置を構成するミラーの表面に導く光経路をさらに備えた。
【0018】
請求項6記載の車両前部構造では、ヘッドランプ装置から光経路を通じてアウトサイドミラー装置のミラーに光を導くことができる。これにより、この光をミラーに反射させて報知機能を果たしたり、足元照明機能を果たしたりすることが可能となる。なお、光経路は、その一部又は全部が透明又は半透明である空気以外の物質にて構成されても良いことは言うまでもない。また、ヘッドランプ装置からアウトサイドミラー装置へ空気を導く連通路が光経路を兼ねる構成としても良い。
【0019】
請求項7記載の発明に係る車両前部構造は、前方に光を照射するためのヘッドランプ装置と、前記ヘッドランプ装置の側方に隣接して設けられた後方視認用のアウトサイドミラー装置と、前記ヘッドランプ装置に設けた光源が発した光を、前記アウトサイドミラー装置を構成するミラーの表面に導く光経路と、を備えている。
【0020】
請求項7記載の車両前部構造では、ヘッドランプ装置から光経路を通じてアウトサイドミラー装置のミラーに光を導くことができる。これにより、この光をミラーに反射させて報知機能を果たしたり、足元照明機能を果たしたりすることが可能となる。なお、光経路は、その一部又は全部が透明又は半透明である空気以外の物質にて構成されても良いことは言うまでもない。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明に係る車両前部構造は、ヒータに頼ることなくアウトサイドミラーの視認性を向上することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の第1の実施形態に係る車両前部構造10について、図1乃至図4に基づいて説明する。なお、図中矢印Aは車両の前方向を、矢印Bは車幅方向外側をそれぞれ示す。
【0023】
図3には、車両前部構造10を含む自動車Sの前部が斜視図にて示されており、図1には、車両前部構造10が図3の1−1線に沿った平面断面図として示されている。なお、図1に示す仮想直線Lは、図3の1−1線の鉛直部分に相当する。
【0024】
これらの図に示される如く、自動車Sの前部には、ヘッドランプ装置12が設けられている。ヘッドランプ装置12は、フロントウインドシールドガラスGの下縁の前下方直近の左右両端(各図では、左側のみ図示している)に配置されている。そして、ヘッドランプ装置12の車幅方向外端は、自動車SのAピラーPの下端部近傍に位置している。
【0025】
このヘッドランプ装置12の車幅方向外側には、アウトサイドミラー装置14が隣接している。この第1の実施形態では、アウトサイドミラー装置14は、ヘッドランプ装置12に取り付けられており、AピラーP(フェンダ及びドア)よりも車幅方向外側に張り出して設けられている。以下、ヘッドランプ装置12及びアウトサイドミラー装置14について具体的に説明する。
【0026】
ヘッドランプ装置12は、ランプハウジング16を備えている。ランプハウジング16は、全体として略直方体は弧状に形成されており、アウタレンズ18によって前側開口端を閉塞されて複数の灯室20を形成するリフレクタ21を収容している。なお、リフレクタ21を一体に形成する構造としても良い。各灯室20内にはそれぞれ光源であるバルブ22が配設されている。この第1の実施形態では、車幅方向外側のバルブ22がロービーム用の光源とされると共に、車幅方向内側のバルブ22がハイビーム用の光源とされている。
【0027】
図4に示される如く、このランプハウジング16の車幅方向外端には、互いに対向する平板状に形成された上下一対の軸受部24が設けられており、各軸受部24には互いに同軸となる軸孔24Aが設けられている。この一対の軸受部24がアウトサイドミラー装置14を後述する支軸46廻りに回転可能に軸支するようになっている。
【0028】
また、ランプハウジング16には、アウタレンズ18の下側で前方に開口する外気取入口26と、一対の軸受部24間で開口する外気排出口28と、各灯室20の下側を通り外気取入口26と外気排出口28とを連通するランプ側連通路30(図2参照)とが設けられている。図2に示される如く、ランプ側連通路30は、ランプハウジング16の下壁を構成する底壁30Aと、底壁30Aに略平行な上壁30Bと、底壁30Aと上壁30Bとを連結する背壁30Cとに挟まれた空間であり、上壁30Bによって各灯室20と区画されている。このランプ側連通路30の略前向き開口部分が外気取入口26とされ、ランプ側連通路30の車幅方向外向き開口部分が外気排出口28とされている。
【0029】
図4に示される如く、外気取入口26は、軸受部24を除くランプハウジング16の車幅方向略全長に亘り設けられており、外気排出口28は、ランプハウジング16における一対の軸受部24間に位置する側壁16Aの前後方向の略全長に亘り設けられている。側壁16Aは、ランプハウジング16における軸受部24の基端(車幅方向内)側に位置する壁であり、平面視略円弧状の湾曲面とされている。
【0030】
さらに、図2に示される如く、ランプ側連通路30は、その下壁30Aに水抜き孔32が設けられており、この水抜き孔32を経由してランプハウジング16外に連通している。水抜き孔32から排出される水は、車体に設けたガイド溝等の排水路等によって路面に案内されるようになっている。ランプ側連通路30は、水抜き孔32、外気取入口26、及び外気排出口28以外の部分が全て壁面で覆われ各灯室20とは水密状態で仕切られている。
【0031】
さらにまた、図3に示される如く、一対の軸受部24間における前向きの開口部分は、その下端を除きアウタレンズ18にて閉塞される構成である。この部分をアウタレンズとは別の部材(ダミーレンズ等)にて閉塞しても良い。また、この一対の軸受部24間における前向きの開口部分の下端(アウタレンズ18下方)には、外観上空気取入口26と同様の形成され空気取入口26の車幅方向外端にデザイン的に連続する意匠部分(図4に想像線にて示す部分)が設けられている。
【0032】
このランプハウジング16すなわちヘッドランプ装置12は、フロントウインドシールドガラスGの下縁の前下方直近における車幅方向端部で車体に固定されている。車体におけるランプハウジング16の固定部位は、例えばエアボックス(カウルボックス)を構成するパネル部材とされている。図3に示される如く、ランプハウジング16の上面は、アウタレンズ18の上縁とフロントウインドシールドガラスGの下縁とを連続的に繋ぐガーニッシュ34にて覆われている。
【0033】
図1に示される如く、アウトサイドミラー装置14は、ミラーハウジング36を備えている。ミラーハウジング36内には、後方視認用のミラー40が該ミラーハウジング36の後向き開口端を閉塞するように配設されている。ミラー40は、その背面側に設けられた鏡面角度調節装置(図示省略)を介して、ミラーハウジング36に鏡面角度が調節可能に支持されている。また、図3に示される如く、この第1の実施形態では、ミラーハウジング36には、サイドターンシグナルランプ38が組み込まれている。サイドターンシグナルランプ38は、前方及び側方から視認可能とされている。
【0034】
図4に示される如く、ミラーハウジング36の使用状態(図1に実線にて示されるる者幅方向外側への突出状態)における車幅方向内端に位置する側壁36Aには、空気受入口42が設けられている。側壁36A、空気受入口42は、それぞれ寸法形状がランプハウジング16の側壁16A、外気排出口28に略対応して形成されている。そして、空気受入口42は、図1に示す平面視でミラー40の使用状態における車幅方向内端40Aを、ミラー板厚方向に跨ぐように(使用状態で車両前後方向に亘って)配置されている。これにより、空気受入口42はミラー40の表面側及び背面側の双方に空気を導くことが可能な配置とされている。
【0035】
また、ミラーハウジング36の側壁36Aにおける上下の縁部からは、互いに対向する平板状に形成された上下一対の軸受部44が延設されている。各軸受部44には互いに同軸となる軸孔44Aが設けられている。各軸孔44Aは、ランプハウジング16の一対の軸孔24Aに嵌合して固着された支軸46に遊嵌されるようになっている。これにより、アウトサイドミラー装置14は、ヘッドランプ装置12に対し支軸46廻りの回動可能に軸支される構成である。すなわち、支軸46は、一対の軸受部44間の空間でかつ側壁16A、34A間に挟まれた空間R(図1参照)内に配設されている。この空間R内には、例えばミラーハウジング36を支軸46に回動してドアDに対し開閉するための電動式ミラー開閉装置(図示省略)が設けられる。支軸46は、空間Rを通過する空気の流動抵抗を低減するために、例えば軸線方向に2分割されて外気排出口28と空気受入口42との間に位置しない(中間部分をなくした)構成としても良い。また、この場合、支軸46は、例えば、軸受部24又は軸受部44に一体に設けられても良い。
【0036】
以上により、アウトサイドミラー装置14は、ヘッドランプ装置12すなわち車体に対し、ミラー40を略後方に向ける使用位置(図1に実線にて示す位置)と、ミラー40をドアDに沿わせる格納位置(図1に想像線にて示す位置)とを取り得る構成とされている。格納位置に位置するアウトサイドミラー装置14は、ドアDを開方向に操作するときに、電動式ミラー開閉装置によって自動的に又はドアによって押圧されつつ、使用位置に復帰するようになっている。また、支軸46を介して一体的に連結されたアウトサイドミラー装置14とヘッドランプ装置12とは、1モジュールとして自動車Sの車体に組み付けられる構成である。
【0037】
使用位置に位置するアウトサイドミラー装置14は、その空気受入口42をヘッドランプ装置12の外気排出口28と対向させており、外気取入口26、ランプ側連通路30、空間Rを経由した外気を空気受入口42からミラーハウジング36内に導入する構成とされている。ミラーハウジング36内に導入された外気は、ミラー40の表面及び背面に接触しつつ流れるようになっている。なお、ミラー40の背面側に導かれた外気は、ミラー40とミラーハウジング36との隙間、又はミラーハウジング36の下壁等に設けた空気排出口から排出されるようになっている。また、外気をミラー40の表面、背面の広範囲に亘り接触させるために、整流部材や空気ガイド板等を設けるようにしても良い。
【0038】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0039】
上記構成の車両前部構造10では、自動車Sの走行に伴って外気取入口26から外気が導入される。この外気は、ランプ側連通路30、外気排出口28、空間R、及び空気受入口42を経由してミラー40の表面及び背面に吹き付けられる。ミラー40の表面に吹き付けられる空気流によって、例えば雨天時にミラー40の表面に雨滴等が付着することが防止され、またミラー表面に付着していた雨滴等は吹き飛ばされて除去される。一方、ミラー40の背面に吹き付けられる空気流によって、該ミラー40に空気の熱が伝達され又は空気との摩擦でミラー40が加熱され、ミラー40が曇ることが防止され、また曇りが生じていた場合には該曇りが除去される。
【0040】
また、ヘッドランプ装置12の灯火中には、バルブ22が発生する熱によってランプ側連通路30内を流れる外気が加熱され、この加熱された外気がミラー40の表面の及び背面に吹き付けられる。このため、ヒータに頼ることなくミラー40の曇りを確実に防止することができる。また、ミラー40表面の雨滴除去性も向上する。
【0041】
このように、第1の実施形態に係る車両前部構造10では、ヒータに頼ることなくアウトサイドミラー装置14の視認性を向上することができる。特に、車両走行に伴って外気取入口26から導入される外気をミラー40の視認性向上に供するため、空気を駆動するファンや圧縮気等の手段を必要とすることもない。そして、この外気をヘッドランプ装置12のランプ側連通路30を通過させる構造であるため、外気は、ランプ側連通路30の通過に伴い加熱又は乾燥され、雨滴除去及び曇り除去(特に曇り除去)に一層適した状態でアウトサイドミラー装置14に導かれる。なお、ミラー36の曇り止めを確実に行なうために、手元スイッチの操作等によって昼間でもバルブ22を点灯するようにしても良い。
【0042】
(他の実施形態)
以下、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の実施形態と基本的に同一の部品・部分を有する場合には、第1の実施形態又は前出の実施形態と同一の符号を付して図示及び説明を省略することがある。
【0043】
図5には、車両前部構造50が図2に対応する断面図にて示されており、図6には、第2の実施形態に係る車両前部構造50が図3に対応する斜視図にて示されている。なお、図5は、図6の5−5線に沿う断面図でとされている。これらの図に示される如く、車両前部構造50では、外気取入口26に代えて外気取入口52が設けられ、ランプ側連通路30に代えてランプ側連通路54が設けられたランプハウジング56を備えている。
【0044】
外気取入口52は、最も車幅方向内側に位置する灯室20の車幅方向内側に隣接して配置され、外観上は灯室20を模して形成されている。そして、アウタレンズ18に代えて設けられたアウタレンズ58が、ランプハウジング56における外気取入口52の開口端52Aに沿う貫通孔58Aを有する構成とされることで、ランプハウジング56内には外気取入口52から外気が進入するようになっている。
【0045】
ランプ側連通路54は、この第2の実施形態では、各灯室20の上側に配置されている。具体的には、ランプ側連通路54は、ランプハウジング56の上壁を構成する天壁54Aと、天壁54Aに略平行な底壁54Bと、天壁54Aと底壁54Bとを連結する背壁54Cとに挟まれた空間であり、底壁54Bによって各灯室20と区画されている。なお、ランプ側連通路54の前端部は、図示しない蓋部材又はガーニッシュ34にて被覆(閉塞)されるようになっている。
【0046】
このランプ側連通路54は、各灯室20とは水密状態で仕切られた状態で、車幅方向内端部分が外気取入口52の上縁側に連通されている。また、図示は省略するが、水抜き孔は、外気取入口52を構成する筒状壁の下縁部分に形成されている。また、図示は省略するが、外気排出口28、空気受入口42は、何れも側壁16A、36A(これらの側壁については図4参照)の上端側に配置されている。
【0047】
第2の実施形態に係る車両前部構造50の他の構成は車両前部構造10と同様である。したがって、この第2の実施形態に係る車両前部構造50によっても、第1の実施形態に係る車両前部構造10と同様の効果を得ることができる。なお、第2の実施形態において、ランプ側連通路54を灯室20の下側に配置しても良いことは言うまでもない。また、ランプ側連通路54を灯室20の背面側(車室側)に配置しても良い。
【0048】
図7には、第3の実施形態に係る車両前部構造60が図2に対応する断面図にて示されている。この図に示される如く、ランプ側連通路30が車室内に連通した外気導入ダクト62に連通する車室側開口30Dを第1の実施形態の構成に加えて有する点で、車両前部構造10とは異なる。図示は省略するが、外気導入ダクト62は、空調装置の外気取入口等に連通している。これにより、空調用ブロアの作動によって、外気取入口26からランプハウジング16(ランプ側連通路30)を経由して車室内に外気が導かれる構成である。
【0049】
第3の実施形態に係る車両前部構造60の他の構成は車両前部構造10と同様である。したがって、この第3の実施形態に係る車両前部構造60によっても、第1の実施形態に係る車両前部構造10と同様の効果を得ることができる。また、車両前部構造60では、ランプ側連通路30には水抜き孔32が設けられているため、通常エアボックス内に設けられている水抜き構造を外気導入ダクト62に設ける必要がない。さらに進んで、ランプ側連通路30を空調装置の外気取入口に直接連通して、外気導入ダクト62(エアボックスに相当する部分)を不要とすることもできる。また、外気取入口26から車室(空調装置の外気取入口)まで、短かい経路で連通することができる。さらにこの短い経路を直線的に形成することも可能である。なお、第3の実施形態において、外気取入口26に代えて図5及び図6に示す外気取入口52を設け、ランプ側連通路30に代えて図6に示すランプ側連通路54を設けても良い。
【0050】
図8には、本発明の第4の実施形態に係る車両前部構造70が図1に対応する断面図にて示されている。この図に示される如く、ヘッドランプ装置12は、バルブ22の他にバルブ72を備えている。バルブ72は、点滅可能な発光源であり、ランプ側連通路30内で外気排出口28に近接して(臨んで)配置されている。そして、バルブ72が発した光は、外気排出口28、空間R、空気受入口42を通じてミラー40の表面に導かれるようになっている。これにより、バルブ72が発光すると、その光がミラー40にて反射される構成である。図8では、この光の導入、反射経路を矢印Cにて示している。
【0051】
このバルブ72は、自動車Sにおける遠隔操作によってドアロックの施解錠を行なう所謂キーレスエントリー装置の信号を受けて点灯するようになっている。具体的には、夜間等の自動車Sの周囲が暗い場合に遠隔操作による解錠信号がキーレスエントリー装置のECU(図示省略)に入力されると、バルブ72は、このECUを介して所定時間だけ電力が供給されて該所定時間だけ発光する構成である。また、このバルブ72の発光に連動して、ミラー40にて反射したバルブ72の光が乗車しようとする人の足元を照らすように、アウトサイドミラー装置14の鏡面角度調節装置が作動する構成とされている。
【0052】
第4の実施形態に係る車両前部構造70の他の構成は車両前部構造10と同様である。したがって、この第4の実施形態に係る車両前部構造70によっても、第1の実施形態に係る車両前部構造10と同様の効果を得ることができる。また、車両前部構造70では、夜間等に遠隔操作でロアロックが解除されると、バルブ72が発光した光がミラー40に反射されてドア下方の路面すなわち足元を自動的に照射する。これにより、アウトサイドミラー装置14におけるミラーハウジング36内の限られた空間内に足元照明用の光源を設けることなく、足元照明機能を実現することができる。
【0053】
なお、上記第4の実施形態では、バルブ72を足元照明用の光源として用いる例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、遠隔操作によってドアロックが解除されたされたときに所定回数だけ点滅してドアロック解除操作者に対し自動車Sの位置等を報知する所謂アンサバック機能のための光源としてバルブ72を用いていても良く、バルブ72がアンサバック機能の後に足元照明機能を実行するように構成しても良い。また、バルブ72の光をミラー40の背面側に導いてサイドターンシグナルランプの光源として用いても良い。
【0054】
また、上記第4の実施形態では、足元照明専用のバルブ72を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、自動車Sのスモール(ポジション)ランプ用の光源からの光、ロービーム又はハイビーム用のバルブ22からの光をミラー40に導いて足元照明を行なう構成としても良い。これらの場合、ヘッドランプ装置12のバルブ22又はスモールランプ用光源の光を常にミラー40に反射させてしまうことがないように、例えば、足元照明機能の不使用時にミラー40への光照射を阻止する可動式の仕切部材を設けたり、足元照明機能を行なうときだけスモールランプ光源をランプ側連通路30に進出させる機構を設けたりすることが望ましい。
【0055】
さらに、上記第4の実施形態では、ヘッドランプ装置12から導入した空気をアウトサイドミラー装置14に導く経路、すなわちランプ側連通路30の一部、外気排出口28、空間R、空気受入口42を通じてバルブ72の光がアウトサイドミラー装置14に導かれる構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、バルブ72の光をアウトサイドミラー装置14に導く専用の経路を設けても良い。すなわち、ヘッドランプ装置12からアウトサイドミラー装置14へ空気を導く経路と、光を導く経路とが異なる経路であっても良い。光経路は、その一部が光を透過可能な透明又は半透明の部材にて閉塞されて空気の流れがない経路であって良く、適宜反射部材等を配置して非直線状の経路としても良い。前者の構成では、バルブ72を水密状態の灯室に配置することができる。
【0056】
なお、上記各実施形態では、アウトサイドミラー装置14がヘッドランプ装置12を介して車体に取り付けられる構成としたが、本発明はこれに限定されず、アウトサイドミラー装置14はヘッドランプ装置12から空気(熱)又は光を導入可能に該ヘッドランプ装置12に隣接して配置されていれば良い。したがって例えば、アウトサイドミラー装置14は、車体におけるAピラーPの根元又はドアDに取り付けられても良い。また、アウトサイドミラー装置14とヘッドランプ装置12との取り付け構造は、支軸46を介した上記構成に限定されることはなく、如何なる構造であっても良い。さらに、支軸46(に相当する部材)や電動式ミラー開閉装置を配設する空間Rは、アウトサイドミラー装置14とヘッドランプ装置12との間に設けられる構成には限定されず、例えば、ランプハウジング16内又はミラーハウジング36内に設けられても良い。
【0057】
また、上記各実施形態では、ヘッドランプ装置12からアウトサイドミラー装置14へ空気を導く構成としたが、本発明はこれに限定されず、ヘッドランプ装置12がミラー40にて反射する光を発するバルブ72(に相当する光源)を有する構成では、ヘッドランプ装置12からアウトサイドミラー装置14へ空気を導かない構成であっても良い。
【0058】
さらに、上記各実施形態では、ヘッドランプ装置12が外気を導入してアウトサイドミラー装置14に導く構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ヘッドランプ装置12が車室内の空気(暖房後の排気等)を導入してアウトサイドミラー装置14に導く構成としても良い。また例えば、バルブ22が点灯している場合には、ミラー40の曇り除去のために該バルブ22からの輻射熱を利用しても良い。これにより、空気流がなくてもミラー40の曇りを防止することができる。また、本発明は、ランプ側連通路30、54がランプハウジング16、56に一体に形成される構成には限定されず、例えば、ランプ側連通路30、54をランプハウジング16、56に隣接して配置された別部材にて構成しても良い。したがって、この別部材に外気取入口26を設けても良いことは言うまでもない。より具体的には、例えば底壁30Aと背壁30Cとを別部材に設けて構成することができる。
【0059】
さらにまた、上記各実施形態では、ヘッドランプ装置12は光源としてバルブ22、又はバルブ22及びバルブ72を備えた構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ヘッドランプ装置12の各種光源として発光ダイオード(LED)等の発光に伴う発熱が比較的小さい光源を用いても良いことは言うまでもない。また、本発明に係る車両前部構造10、50、60、70を構成するアウトサイドミラー装置16は、サイドターンシグナルランプ38が組み込まれていなくても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両前部構造の概略構成を示す平面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車両前部構造の概略構成を示す側断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車両前部構造の概略構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車両前部構造を構成するヘッドランプ装置とアウトサイドミラー装置とを分離して見た斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る車両前部構造の概略構成を示す側断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る車両前部構造の概略構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る車両前部構造の概略構成を示す側断面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る車両前部構造の概略構成を示す平面断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 車両前部構造
12 ヘッドランプ装置
14 アウタミラー装置
16 側方照射部
26 外気取入口(空気取入口)
28 外気排出口(連通路、光経路)
30 ランプ側連通路(連通路、車室連通路、光経路)
36 ミラーハウジング
40 ミラー
42 空気受入口(連通路、光経路)
50、60、70 車両前部構造
52 外気取入口(空気取入口)
54 ランプ側連通路(連通路、光経路)
62 ダクト(車室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に光を照射するためのヘッドランプ装置と、
前記ヘッドランプ装置の側方に隣接して設けられた後方視認用のアウトサイドミラー装置と、
前記ヘッドランプ装置からアウトサイドミラー装置へ空気を導く連通路と、
前記連通路に連通され、前記ヘッドランプ装置に空気を取り入れる空気取入口と、
を備えた車両前部構造。
【請求項2】
前記連通路は、前記アウトサイドミラー装置を構成するミラーの表面に空気を導く、請求項1記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記アウトサイドミラー装置は、ミラーの背面側をミラーハウジングが覆って構成されており、
前記連通路は、前記ヘッドランプ装置から前記ミラーとミラーハウジングとの間の空間に空気を導く、請求項1又は請求項2記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記空気取入口は、前記ヘッドランプ装置を構成するランプハウジングに外気を導入するための外気取入口を含んで構成されている、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記外気取入口から前記ランプハウジングに導入した外気を車室内に導く車室連通路をさらに備えた、請求項4記載の車両前部構造。
【請求項6】
前記ヘッドランプ装置に設けた光源が発した光を、前記アウトサイドミラー装置を構成するミラーの表面に導く光経路をさらに備えた、請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の車両前部構造。
【請求項7】
前方に光を照射するためのヘッドランプ装置と、
前記ヘッドランプ装置の側方に隣接して設けられた後方視認用のアウトサイドミラー装置と、
前記ヘッドランプ装置に設けた光源が発した光を、前記アウトサイドミラー装置を構成するミラーの表面に導く光経路と、
を備えた車両前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−69335(P2006−69335A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254487(P2004−254487)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】