説明

車両変速機用操作装置

【課題】軸方向が互いに交差する2方向への回動操作が可能な操作手段を有する構造で、検出手段が検出する移動体の位置精度を向上できる車両変速機操作装置を得る。
【解決手段】ノブ90がセレクト操作方向に回動操作された場合には、スライダ40がスライダ支持部34のガイド溝36に案内されてスライドする。しかしながら、ノブ90がシフト操作方向に回動操作された場合にはるセレクトレバー50の幅方向端面により押圧された回動プレート122が側壁部24を押圧してシャフト56周りにスライダ支持体20を回動操作させる。このため、ノブ90がシフト操作方向に回動操作された際には、スライダ40が軸部28周りに回動されるだけで、ノブ90の回動が他の向きへの移動に変換されない。これにより、シフト操作方向へのノブ90の回動操作に関しては、部品間のガタの影響が少なく、スライダ40に設けられた永久磁石152の位置精度を高くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の変速機を操作するための車両変速機用操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたシフトレバー装置では、シフトレバーがシフト方向及びセレクト方向に回動可能に設けられており、シフトレバーがシフト方向に操作されると、センサユニットの樹脂ケースが前後方向に直線的にスライドし、シフトレバーがセレクト方向に操作されると、樹脂ケースを前後方向にスライド可能に内側ホルダが上下方向に直線的にスライドする。樹脂ケースにはマグネットが設けられていると共に、内側ホルダを上下方向にスライド可能に支持する外側ホルダには複数のホールICが設けられており、ホールICがマグネットを検出することでシフトレバーのシフト位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−138235の公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構成では、シフトレバーのシフト方向への回動を樹脂ケースの前後方向の直線的な移動に変換して、シフトレバーのセレクト方向への回動を内側ホルダの上下方向への直線的な移動に変換している。このような2方向の回動を、2方向の直線移動に変換する構成にすると、部品間のガタが大きく、最終的な樹脂ケースの位置精度を高めることが難しい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、軸方向が互いに交差する2方向への回動操作が可能な操作手段を有する構造で、検出手段が検出する移動体の位置精度を向上できる車両変速機操作装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車両変速機用操作装置は、第1操作範囲内で所定の中心軸周りに第1操作方向へ回動操作可能で且つ前記第1操作範囲内の所定位置で前記第1操作範囲に繋がった第2操作範囲内で軸方向が前記第2操作方向の中心軸に対して交差した中心軸周りに第2操作方向へ回動操作可能な操作手段と、前記操作手段に連結されて前記操作手段に伴われて前記第2操作方向へ回動すると共に、前記第1操作方向への前記操作手段の回動操作により前記第2操作方向の中心軸及び前記第1操作方向の中心軸の各々に対して交差する向きへスライドするスライダと、前記スライダに取り付けられた移動体と、前記第2操作範囲内に設定された特定の操作位置に前記操作手段が到達した場合に前記第1操作方向に前記移動体が対向するように設けられ、前記移動体が対向することで前記移動体を検出して所定の検出信号を出力する複数の検出手段と、を備え、前記複数の検出手段から出力された検出信号に基づき車両の変速機を操作するように設定されている。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車両変速機用操作装置によれば、操作手段が第2操作方向へ回動操作可能で、しかも、中心軸がこの第2操作方向の中心軸に対して交差した第1操作方向に回動操作可能とされ、第1操作方向への操作手段の操作範囲内の複数の所定位置から操作手段の第2操作方向への回動操作が可能である。
【0008】
所定位置から操作手段を第2操作方向へ回動操作すると、この操作手段に連結されたスライダが操作手段と共に第2操作方向へ回動する。この第2操作方向への操作手段の操作範囲内に設定された特定の操作位置に操作手段が到達すると、スライダに取り付けられた移動体の第1操作方向側で検出手段が移動体と対向して移動体を検出する。このように移動体を検出した検出手段からは所定の検出信号が出力され、この検出信号に基づき車両の変速機における所定のシフトレンジ又は所定のギヤが選択される。
【0009】
ここで、本発明に係る車両変速機用操作装置では、操作手段が第1操作方向に回動操作された際にはスライダがスライド移動するものの、操作手段が第2操作された際には操作手段と共にスライダが第2操作方向に回動する。このため、操作手段の回動を直線的なスライドに変換する構成が少なくてよく、スライダにおけるガタが少なく、移動体の位置精度が高い。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係る車両変速機用操作装置は、請求項1に記載の本発明において、前記第1操作方向への回動が規制されて前記操作手段が前記第1操作方向に相対的に回動可能に連結されて前記操作手段に伴われて前記第2操作方向へ回動すると共に、前記スライダを前記スライド可能に支持するスライダ支持手段と、前記スライダ支持手段に対して前記第1操作方向へ回動可能に連結されると共に、前記操作手段に係合して前記操作手段に伴われて前記第1操作方向へ回動する回動部材と、前記回動部材に係合した状態で前記スライダに係合し、前記回動部材が前記第1操作方向に回動することで、前記回動部材との係合部分を軸に回動して前記スライダとの係合部分が前記スライダをスライドさせるスライダ操作部材と、を備えている。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係る車両変速機用操作装置によれば、スライダをスライド可能に支持するスライダ支持手段は第1操作方向への回動が規制された状態で操作手段が第1操作方向に回動可能に連結されている。一方、このスライダ支持手段には回動部材が第1操作方向へ回動可能に連結されている。この回動部材は操作手段に係合しており、操作手段が第1操作方向に回動操作されると、回動部材がスライダ支持手段に対して第1操作方向に回動する。
【0012】
この回動部材にはスライダ操作部材が係合している。このスライダ操作部材はスライダにも係合しており、操作手段の第1操作方向への回動操作により回動部材がスライダ支持手段に対して第1操作方向に回動すると、スライダ操作部材が回動部材との係合部分を軸に回動し、これにより、スライダ操作部材のスライダとの係合部分がスライダをスライドさせる。このようにして、操作手段の第1操作方向への回動操作でスライダがスライドする。
【発明の効果】
【0013】
以上、説明したように、本発明に係る車両変速機操作装置は、軸方向が互いに交差する2方向への回動操作が可能な操作手段を有しつつも、検出手段が検出する移動体の位置精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両変速機操作装置の分解斜視図である。
【図2】操作手段がセレクト操作範囲の一端側に位置した状態でのスライダの状態を示す正面図である。
【図3】操作手段がセレクト操作範囲の他端側に位置した状態でのスライダの状態を示す図2に対応した正面図である。
【図4】操作手段がセレクト操作範囲の他端側に位置した状態でのスライダの状態を示す側面図である。
【図5】操作手段がセレクト操作範囲の他端側からシフト操作範囲の一端側へ移動した状態を示す図4に対応した側面図である。
【図6】操作手段がセレクト操作範囲の他端側からシフト操作範囲の他端側へ移動した状態を示す図4に対応した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係る車両変速機用操作装置としてのシフト操作装置10の構成が分解斜視図により示されている。
【0016】
この図に示されるように、シフト操作装置10はケース本体14とカバー16とにより構成されたケース12を備えている。ケース本体14は一端が開口した箱状に形成されている。カバー16はケース本体14側へ向けて開口した箱状に形成されており、ケース本体14の開口端を閉止するようにねじ等の締結手段によりケース本体14に一体的に固定されている。
【0017】
カバー16の内側にはスライダ支持体20が設けられている。スライダ支持体20は本体22を備えている。本体22は各々の厚さ方向に互いに対向する一対の側壁部24を備えている。これらの側壁部24の幅方向両側端部は縦壁部26により一体的に繋がっている。これらの縦壁部26からは側壁部24の幅方向外方へ向けて軸部28が突出している(図1では一方の軸部28のみを図示)。一方の縦壁部26に形成された軸部28はカバー16の底壁30に形成された軸受部32に回動自在に支持されており、他方の縦壁部26に形成された軸部28はケース本体14に形成された図示しない軸受部に回動自在に支持されている。これにより、スライダ支持体20は軸部28周りにシフト操作方向へ回動可能とされている。
【0018】
また、両側壁部24の幅方向一方の側(カバー16の底壁30とは反対側)にはスライダ支持部34が形成されている。スライダ支持部34は長手方向が側壁部24の長手方向に沿い幅方向が側壁部24の厚さ方向に沿った板状に形成されており、その幅方向両端部にはガイド溝36がスライダ支持部34の長手方向に沿って連続して形成されている。このスライダ支持部34にはスライダ40が取り付けられている。
【0019】
スライダ40は本体42を備えている。本体42は幅方向がスライダ支持部34の幅方向に沿い厚さ方向がスライダ支持部34の厚さ方向に沿った板状に形成されており、この本体42の幅方向両端部からは鉤状の係合部44が連続して形成されている。これらの係合部44は先端側が係合部44の幅方向内側へ屈曲されており、この係合部44の先端がスライダ支持部34のガイド溝36に入り込んでいる。これにより、スライダ支持部34の幅方向及び厚さ方向に沿ったスライダ40の変位が規制された状態でスライダ40は底壁30の長手方向にスライド可能とされている。
【0020】
また、カバー16の内側には回動部材としてのセレクトレバー50が設けられている。セレクトレバー50は幅方向が両側壁部24の対向方向に沿い厚さ方向が側壁部24の幅方向に沿った角棒形状に形成されている。セレクトレバー50の幅寸法は両側壁部24の間隔よりも小さく設定されており、セレクトレバー50の長手方向中間部よりも一端側は両側壁部24の間を通過している。両側壁部24の間を通過したセレクトレバー50の長手方向一端側は基端側がカバー16に入り込んだ操作手段としてのノブ90に嵌合しており、ノブ90がシャフト56周りに第1操作方向としてのセレクト操作方向へ回動操作されることでセレクトレバー50がシャフト56周りに回動する。
【0021】
また、セレクトレバー50の長手方向中間部にはセレクトレバー50の幅方向に貫通した貫通孔52が形成されている。この貫通孔52に対応して両側壁部24には各側壁部24の厚さ方向に貫通した貫通孔54が形成されている。両側壁部24の貫通孔54とセレクトレバー50の貫通孔52とは同軸的に並んだ状態で両側壁部24の貫通孔54とセレクトレバー50の貫通孔52とをシャフト56が貫通配置されている。これにより、セレクトレバー50はスライダ支持体20に対してシャフト56周りにセレクト操作方向へ回動可能とされている。
【0022】
一方、セレクトレバー50における貫通孔52よりも長手方向他端側は断面円形の中空形状に形成されてセレクトレバー50の長手方向他端部にて開口している。このセレクトレバー50の長手方向他端側の内側には圧縮コイルばね100が収容されている。さらに、圧縮コイルばね100よりもセレクトレバー50の長手方向他端側ではセレクトレバー50の内側にディテントピン102が収容されている。ディテントピン102の先端側はセレクトレバー50の長手方向他端よりも外側へ突出しており、セレクトレバー50の長手方向他端部の側方に設けられたディテントブロック104のディテント溝106内に入り込んでいる。
【0023】
ディテント溝106はノブ90の操作パターンを、軸部28の軸方向及びシャフト56の軸方向の双方に対して直交する向きを軸方向とする軸周りに180度反転させた形状の相似形状に形成されており、ディテント溝106内にディテントピン102が入り込んでいることにより、ノブ90のシフ操作方向及びセレクト操作方向への操作範囲がディテント溝106の形状に対応した所定の操作パターンに規制されている。さらに、このディテント溝106は底部が適宜傾斜している。
【0024】
ディテントピン102は圧縮コイルばね100の付勢力によりディテント溝106の底部に圧接しているが、ディテント溝106内の所定位置にディテントピン102が到達すると、ディテントピン102はディテント溝106の底部からの押圧反力により圧縮コイルばね100の付勢力に抗してセレクトレバー50内に入り込む。これにより、圧縮コイルばね100の付勢力が増加すると、圧縮コイルばね100の付勢力で所定の位置までディテント溝106が移動させられ、ノブ90が所定のシフト位置に戻されるようになっている。
【0025】
一方、カバー16の内側にはスライダ操作部材120が設けられている。スライダ操作部材120は厚さ方向がスライダ支持体20の厚さ方向に沿った一対の回動プレート122を備えている。回動プレート122の各々はシャフト56の軸方向と同じ向きを軸方向とする軸周りに鉤状に屈曲している。これらの回動プレート122の一端は厚さ方向が側壁部24の幅方向に沿った板状の連結片124により一体的に繋がっている。これらの回動プレート122は厚さ方向に互いに対向しており、両回動プレート122の互いに対向する面の間隔はセレクトレバー50の幅寸法よりも僅かに大きく設定されている。
【0026】
また、一方の回動プレート122の厚さ方向外側(他方の回動プレート122とは反対側)の面から他方の回動プレート122の厚さ方向外側(一方の回動プレート122とは反対側)の面までの間隔は、両側壁部24の間隔よりも僅かに小さく設定されている(すなわち、上記のような寸法関係になるように回動プレート122の厚さ寸法等が設定されている)。
【0027】
スライダ操作部材120は両側壁部24の間に配置されており、更に、スライダ操作部材120の両回動プレート122の間をセレクトレバー50が通過している。このため、ノブ90が軸部28周りに第2操作方向としてのシフト操作方向へ回動操作されると、セレクトレバー50が回動プレート122を介して側壁部24を押圧して軸部28周りにスライダ支持体20を回動させる。
【0028】
両回動プレート122の屈曲部分には回動プレート122の厚さ方向に貫通した貫通孔126が同軸的に形成されている。これらの貫通孔126に対応して両側壁部24には側壁部24の厚さ方向に貫通した貫通孔128が形成されている。
【0029】
一方の側壁部24の貫通孔128に対しては、この側壁部24の外側から支持ピン130が嵌挿される。この一方の側壁部24の貫通孔128に嵌挿された支持ピン130の先端側は一方の側壁部24よりも両側壁部24の対向方向内側に突出して、スライダ操作部材120の一方の回動プレート122に形成された貫通孔126に嵌挿される。また、他方の側壁部24の貫通孔128に対しては、この側壁部24の外側から支持ピン130が嵌挿される。この他方の側壁部24の貫通孔128に嵌挿された支持ピン130の先端側は他方の側壁部24よりも両側壁部24の対向方向内側に突出して、スライダ操作部材120の他方の回動プレート122に形成された貫通孔126に嵌挿される。このように、両支持ピン130がそれぞれの回動プレート122の貫通孔126に嵌挿されることで、支持ピン130周りにスライダ操作部材120が回動可能に支持される。
【0030】
また、回動プレート122の他端部には切欠部132が形成されている。支持ピン130を介してスライダ操作部材120がスライダ支持体20に機械的に連結された状態で、両回動プレート122の切欠部132の内側にはセレクトレバー50の幅方向両端面から互いに同軸的に突出形成された係合ピン134が嵌まり込んでおり、シャフト56周りにセレクトレバー50が回動すると、係合ピン134が切欠部132の内周部を押圧して支持ピン130周りにスライダ操作部材120を回動させるようになっている。
【0031】
これに対して、連結片124にはスライダ操作部138が形成されている。スライダ操作部138はガイド溝36に形成された貫通孔140を通過してスライダ40の本体42に形成された係合孔142に嵌まり込んでおり、支持ピン130周りにスライダ操作部材120が回動すると、スライダ操作部138が係合孔142の内周部を押圧してスライダ40をスライドさせるようになっている。
【0032】
このスライダ40のケース本体14側には移動体としての永久磁石152が取り付けられている。永久磁石152のスライダ40とは反対側では基板154がケース本体14に取り付けられている。この基板154の永久磁石152と対向する側の面には各々が検出手段としての複数の磁気センサ156が、軸部28を中心とする同心円周上に設けられている。これらの磁気センサ156は永久磁石152が対向することで所定のレベルの検出信号を出力し、この検出信号が車両の自動変速機を制御する制御手段(ECU)に入力されると、制御手段が検出信号を出力した磁気センサ156に対応するシフトレンジに変更する。
【0033】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、図2から図6の各図を用いて本シフト操作装置10の動作について説明し、シフト操作装置10の動作の説明に基づき本シフト操作装置10の作用並びに効果について説明する。なお、図2から図6の各図では、その図におけるシフト操作装置10の動作をわかり易くするため、図1に示される各構成のうち要部を除いて省略している。
【0034】
本実施の形態に係るシフト操作装置10では、ディテント溝106におけるセレクト操作範囲の一端にディテントピン102が位置している状態で、図2に示されるように、複数の磁気センサ156の何れか1つが永久磁石152と対向している。
【0035】
この状態で、図3に示されるように、ディテント溝106におけるセレクト操作範囲の他端にディテントピン102が移動するようにシャフト56周りにノブ90(図2及び図3では図示省略)、ひいてはセレクトレバー50を回動させると、スライダ操作部材120が支持ピン130周りに図3の矢印A方向へ回動し、スライダ操作部138がスライダ40をノブ90側へスライドさせる。これにより、それまで永久磁石152と対向していた磁気センサ156に対して概ねノブ90側で隣り合う別の磁気センサ156が永久磁石152と対向する。これにより、先ず、ノブ90がセレクト操作方向へ回動操作されたことが検出される。
【0036】
次いで、図4に示されるようなディテント溝106(図2から図6においては図示省略)におけるセレクト操作範囲の他端にディテントピン102が移動した状態から、軸部28周りの一方へノブ90が回動操作されて、図5に示されるようにディテントピン102がディテント溝106におけるシフト操作範囲の一端に到達すると、それまで永久磁石152と対向していた磁気センサ156に対して軸部28周りの一方の側で隣り合う別の磁気センサ156が永久磁石152と対向する。これにより、ノブ90がシフト操作方向一方の側へ回動操作されたことが検出される。
【0037】
これに対して、図4に示されるようなディテント溝106におけるセレクト操作範囲の他端にディテントピン102が移動した状態から、軸部28周りの他方へノブ90が回動操作されて、図6に示されるようにディテントピン102がディテント溝106におけるシフト操作範囲の他端に到達すると、それまで永久磁石152と対向していた磁気センサ156に対して軸部28周りの他方の側で隣り合う別の磁気センサ156が永久磁石152と対向する。これにより、ノブ90がシフト操作方向一方の側へ回動操作されたことが検出される。
【0038】
このようにして永久磁石152を検出した磁気センサ156からの検出信号が車両の自動変速機を制御する制御手段(ECU)に入力されることにより、制御手段が自動変速機を操作して、自動変速機に予め設定された複数のシフトレンジのうち、永久磁石152を検出した(すなわち、永久磁石152が対向した)磁気センサ156に対応するシフトレンジが選択されて、このシフトレンジに変更される。
【0039】
ここで、本実施の形態に係るシフト操作装置10では、ノブ90がセレクト操作方向に回動操作された場合には、スライダ40がスライダ支持部34のガイド溝36に案内されてスライドする構成である。しかしながら、本シフト操作装置10ではノブ90がシフト操作方向に回動操作された場合にはるセレクトレバー50の幅方向端面により押圧されたスライダ操作部材120の回動プレート122が側壁部24を押圧してシャフト56周りにスライダ支持体20を回動操作させるだけである。
【0040】
このため、ノブ90を軸部28周りのシフト操作方向に回動操作した際には、そのままスライダ40が軸部28周りに回動されるだけで、特に、ノブ90の回動が他の向きへの移動に変換されることがない。これにより、シフト操作方向へのノブ90の回動操作に関しては、部品間のガタの影響が少なく、スライダ40に設けられた永久磁石152の位置精度を高くできる。
【0041】
なお、本実施の形態では、セレクトレバー50の操作方向のうち、セレクト操作方向を第1操作方向、シフト操作方向を第2操作方向としたが、シフト操作方向が第1操作方向となり、セレクト操作方向が第2操作方向となるような構成に本発明を適用してもよい。
【0042】
また、本実施の形態では、移動体を永久磁石152とし、永久磁石152の磁気を検出する磁気センサ156を検出手段とした。しかしながら、移動体及び検出手段がこのような構成に限定されるものではなく、所謂「近接センサ」と称される構成であれば、検出手段への適用は基本的に可能で、検出手段に応じて移動体を適宜選択すればよい。
【0043】
例えば、移動体及び検出手段の何れか一方を発光素子、何れか他方を受光素子とし、発光素子と受光素子とが対向して発光素子により発せられた光を受光素子が受けた場合に受光素子から出力される検出信号に基づいて制御手段が自動変速機を操作する構成であってもよい。また、導電性を有する金属を移動体とし、周囲に高周波磁界を形成するコイルを含めて構成される渦電流センサを検出手段として、移動体である金属が渦電流センサのコイルに接近して対向することにより金属に生じる渦電流に起因する高周波磁界の変化に基づき制御手段が自動変速機を操作する構成であってもよい。
【0044】
さらに、検出手段に所謂「静電容量形近接センサ」を適用して、移動体が静電容量形近接センサと対向した際の2極間の静電容量の変化に基づき制御手段が自動変速機を操作する構成であってもよく、また、可変抵抗式の近接センサを適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 シフト操作装置(車両変速機操作装置)
20 スライダ支持体
40 スライダ
50 セレクトレバー(セレクト回動部材)
90 ノブ(操作手段)
120 スライダ操作部材
152 永久磁石(移動体)
156 磁気センサ(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1操作範囲内で所定の中心軸周りに第1操作方向へ回動操作可能で且つ前記第1操作範囲内の所定位置で前記第1操作範囲に繋がった第2操作範囲内で軸方向が前記第2操作方向の中心軸に対して交差した中心軸周りに第2操作方向へ回動操作可能な操作手段と、
前記操作手段に連結されて前記操作手段に伴われて前記第2操作方向へ回動すると共に、前記第1操作方向への前記操作手段の回動操作により前記第2操作方向の中心軸及び前記第1操作方向の中心軸の各々に対して交差する向きへスライドするスライダと、
前記スライダに取り付けられた移動体と、
前記第2操作範囲内に設定された特定の操作位置に前記操作手段が到達した場合に前記第1操作方向に前記移動体が対向するように設けられ、前記移動体が対向することで前記移動体を検出して所定の検出信号を出力する複数の検出手段と、
を備え、前記複数の検出手段から出力された検出信号に基づき車両の変速機を操作する車両変速機用操作装置。
【請求項2】
前記第1操作方向への回動が規制されて前記操作手段が前記第1操作方向に相対的に回動可能に連結されて前記操作手段に伴われて前記第2操作方向へ回動すると共に、前記スライダを前記スライド可能に支持するスライダ支持手段と、
前記スライダ支持手段に対して前記第1操作方向へ回動可能に連結されると共に、前記操作手段に係合して前記操作手段に伴われて前記第1操作方向へ回動する回動部材と、
前記回動部材に係合した状態で前記スライダに係合し、前記回動部材が前記第1操作方向に回動することで、前記回動部材との係合部分を軸に回動して前記スライダとの係合部分が前記スライダをスライドさせるスライダ操作部材と、
を備える車両変速機用操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−153301(P2012−153301A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15481(P2011−15481)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】