説明

車両後部構造

【課題】燃料タンクを車体に確実に搭載することができる車両後部構造を提供する。
【解決手段】車体後部に左右一対に設けられたキックアップ部9を有するリアサイドメンバ3,3と、取付フランジ35が突設された燃料タンク31とを備え、前記取付フランジ35を、前記キックアップ部9の後端に形成された屈曲部47の前後を跨いで固定することにより、前記燃料タンク31を車体に搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両が後面衝突を起こした場合に、車体後部に搭載された燃料タンクを落下させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1では、略円筒状の燃料タンクと、該燃料タンクを保持してサイドメンバの下面に固定される燃料タンク保持部とからなる燃料タンクモジュールを備えている。前記燃料タンクを燃料タンク保持部の上に載置し、燃料タンク保持部をサイドメンバに締結することにより、燃料タンクの下部を燃料タンク保持部で保持し、左右両端部をサイドメンバで保持するようにしている。
【0004】
そして、車両の後部から衝突荷重が入力された場合には、燃料タンク保持部がサイドメンバから外れて下方に落下するため、後面衝突時に十分な荷重吸収スペースを確保するようにしている。
【特許文献1】特開2004−149038公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来技術においては、燃料タンクを燃料タンク保持部で抱き込むようにしており、燃料タンク保持部に後面衝突対応で燃料タンクが離脱できるようにくびれ部を設けており、そのくびれ部が経時劣化して下方に撓み変形を起こすおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、燃料タンクを車体に確実に搭載し後面衝突時のエネルギー吸収を行なうことができる車両後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両後部構造は、車体後部に左右一対に設けられたキックアップ部を有するリアサイドメンバと、取付フランジが突設された燃料タンクとを備え、前記取付フランジを、前記キックアップ部の後端に形成された屈曲部の前後を跨いで固定することにより、前記燃料タンクを車体に搭載したことを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両後部構造によれば、燃料タンクをリアサイドメンバのキックアップ部の後端に形成された屈曲部の前後を跨いで固定するため、リアサイドメンバのキックアップ部の後端の剛性が向上する。よって、経時劣化によって燃料タンク保持部の保持剛性を劣化させることなく車体後部に衝突荷重が入力された場合、リアサイドメンバのキックアップ部の前端が屈曲変形をすることで衝突エネルギーの吸収を行うことができる。また、背景技術で説明したような燃料タンク保持部等の取付部材を別途に設ける必要がなくなるため、車両重量の軽減及びコスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0010】
図1は本発明の実施形態による車体後部構造を斜め後方から見た斜視図、図2は図1における燃料タンクを示す斜視図、図3は、図1における車体部材を示す斜視図、図4は図1の側面を概略的に示す側面図、図5は図1の下部を概略的に示す底面図、及び図6は図5のA−A線による断面図であり、上下を逆に配置している。
【0011】
図1及び図3に示すように、車体後部1には、車両前後方向に沿って左右一対のリアサイドメンバ3,3が延設されている。該リアサイドメンバ3は、内部が中空に形成された角筒状の車体骨格部材であり、車幅方向に所定間隔をおいて配設されている。具体的には、リアサイドメンバ3は、フロアパネル5の下面に沿って後方に延びる前部7と、該前部7の後端から後方斜め上方に延びるキックアップ部9と、該キックアップ部9の後端から前記前部7と略平行に延びる後部11とから構成されている。
【0012】
また、リアサイドメンバ3の前部7には、フロアパネル5が配設されている。具体的には、リアサイドメンバ3の前部7の上にフロアパネル5の後端部5aが載置されて取り付けられている。また、フロアパネル5の車幅方向中央部には、車両前後方向に沿って上方に突出するフロアトンネル13が形成されている。
【0013】
さらに、リアサイドメンバ3の下部には、サスペンションメンバ15が配設されている。該サスペンションメンバ15は、リアサイドメンバ3の後部同士を連結する正面視コ字状のサスペンションメンバ本体17と、該サスペンションメンバ本体17の左右の下端部及びサスペンションメンバ15の前部同士を連結する連結体19とを備えている。前記サスペンションメンバ本体17は、リアサイドメンバ3の後部から下方に延びる縦メンバ21と、該縦メンバ21の下端同士を左右に連結する横メンバ23とからコ字状に一体に形成されている。また、前記フロアパネル5のフロアトンネル13の下面には、レインフォース25が接合されている。該レインフォース25と、サスペンションメンバ本体17の横メンバ23の中央部とは、車両前後方向に沿った連結メンバ27によって橋渡しされている。なお、サスペンションメンバ15の下方には、縦メンバ21の下端部及び横メンバ23の後端部に跨ってディファレンシャルギヤを収容したディファレンシャルケース29(図4参照)が配設されている。
【0014】
また、図2、図4及び図5に示すように、本実施形態による燃料タンク31は、箱形状の燃料タンク本体33と、該燃料タンク本体33の側面に設けられた取付フランジ35とから一体に形成されている。また、燃料タンク本体33は、上下方向の長さが長いタンク本体前部37と、上下方向の長さが短いタンク本体後部39とから構成されている。また、タンク本体前部37の上面37a及び下面37bは、図5に示すように、車両後方に向かうにつれて車幅方向の長さが短くなる略台形状に形成されており、タンク本体後部39の上面39a及び下面39bは、略矩形状に形成されている。
【0015】
そして、前記取付フランジ35は、タンク本体前部37の側面に形成されたフランジ前部41と、タンク本体後部39の側面に形成されたフランジ後部43とから側面視略への字状に屈曲して形成されている。また、前記フランジ前部41は、リアサイドメンバ3のキックアップ部9に沿って後方斜め上方に延びており、フランジ後部43は、リアサイドメンバ3の後部39に沿って延びている。また、前記フランジ前部41は、図5及び図6に示すように、リアサイドメンバ3のキックアップ部9の下面にボルト45を介して締結され、前記フランジ後部43は、リアサイドメンバ3の後部11の下面にボルト45を介して締結されている。このように、燃料タンク31の取付フランジ35は、リアサイドメンバ3のキックアップ部9の後端に形成された屈曲部47の前後を跨いで固定されている。
【0016】
また、図5に示すように、燃料タンク31の右側の側面には、リアサイドメンバ3の下部を通ってフィラーチューブ49が配索されている。
【0017】
ここで、本実施形態による車体後部1に衝突荷重が入力された場合の車体後部1の変形挙動を簡単に説明する。図7は本発明の実施形態による車体後部に車両前方に向かう衝突荷重が入力された状態を示す側面図、図8は図7のリアサイドメンバが変形している状態を示す側面図である。
【0018】
まず、図7に示すように、リアサイドメンバ3の後端に車両前方に向けて衝突荷重Fが入力されると、リアサイドメンバ3の後部は車両前後方向に圧壊変形する。そして、リアサイドメンバ3のキックアップ部9の後端に形成された屈曲部47を折り曲げようとする方向に曲げモーメントMが掛かる。
【0019】
しかし、前記屈曲部47の前後を跨いで取付フランジ35が固定されているため、屈曲部47の曲げ剛性は非常に高くなっている。従って、前記曲げモーメントMに対抗するモーメントmが生じる。さらに、衝突荷重Fの入力によって、燃料タンク31がリアサイドメンバ3に対して相対的に後方に移動しようとする慣性力Iが生じる。すると、この慣性力Iによっても、モーメントmが更に増大する。
【0020】
従って、リアサイドメンバ3のキックアップ部9の前端に形成された屈曲部51を起点としてリアサイドメンバ3が車両前方に屈曲変形する。
【0021】
一方、図8に示すように、サスペンションメンバ15は、連結体19及び連結メンバ27が折れ曲がり、ディファレンシャルギヤを収容したディファレンシャルケース29が燃料タンク31に対して離反する。
【0022】
以下に、本発明の実施形態による作用効果について説明する。
【0023】
(1)本実施形態による車両後部構造は、車体後部1に左右一対に設けられたキックアップ部9を有するリアサイドメンバ3,3と、取付フランジ35が突設された燃料タンク31とを備え、前記取付フランジ35を、前記キックアップ部9の後端に形成された屈曲部47の前後を跨いで固定することにより、リアサイドメンバ3のキックアップ部9の後端の剛性が向上する。よって、経時劣化によって、燃料タンク保持部の保持剛性を劣化させることなく、車体後部に衝突荷重が入力された場合、リアサイドメンバ3のキックアップ部9の前端が屈曲変形をすることで、燃料タンクの破損を抑制しつつキックアップ部9の前端で衝突エネルギーの吸収を行うことができる。また、背景技術で説明したような燃料タンク保持部等の取付部材が不要となる為、車両の重量の軽減及びコストの低減を図ることができる。
【0024】
(2)また、取付けフランジ35をリアサイドメンバ下面に固定することで、床下から取付ける燃料タンクの取付作業性が向上する。
【0025】
(3)更に、燃料タンク31の後方かつ下方にディファレンシャルギアを配置したので、リアサイドメンバ3が屈曲変形すると、燃料タンク31が上方に移動することにより、燃料タンク31の下方の空いたスペースにディファレンシャルギアを移動させることで、ディファレンシャルギアを保護しつつ後面衝突でのエネルギー吸収を行うことができる。
【0026】
なお、本発明は、前述した実施形態には限定されず、本発明の技術思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。例えば、燃料タンク側部下側を車両幅方向に突出させて取付フランジを形成し、リアサイドメンバ側面部に前記取付フランジを取り付けるようにしてもよい。
【0027】
図9は、本発明の他の実施形態による燃料タンク31の取付部分を概略的に示す断面図である。
【0028】
図9に示すように、燃料タンク31に設けた取付フランジ55の前後方向中央部55cを下方に屈曲変形させ、取付フランジ55の前端55a及び後端55bをボルト45を介してリアサイドメンバ3の下面に締結する。すると、前記燃料タンク31の取付フランジ55とリアサイドメンバ3の下面との間に隙間53が生じ、該隙間53に、前記燃料タンク31に接続されたフィラーチューブ49を通して配索している。
【0029】
従って、フィラーチューブ49を保護しつつ確実に車体部材に保持することができる。また、保持するための別途の取付ブラケットも不要となるため、重量軽減及びコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態による車体後部構造を斜め後方から見た斜視図である。
【図2】図1における燃料タンクを示す斜視図である。
【図3】図1における車体部材を示す斜視図である。
【図4】図1の側面を概略的に示す側面図である。
【図5】図1の下部を概略的に示す底面図である。
【図6】図5のA−A線による断面図であり、上下を逆に配置している。
【図7】本発明の実施形態による車体後部に車両前方に向かう衝突荷重が入力された状態を示す側面図である。
【図8】図7のリアサイドメンバが変形している状態を示す側面図である。
【図9】本発明の他の実施形態による燃料タンクの取付部分を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…車体後部
3…リアサイドメンバ
9…キックアップ部
31…燃料タンク
35…取付フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部に左右一対に設けられたキックアップ部を有するリアサイドメンバと、
取付フランジが突設された燃料タンクとを備え、
前記取付フランジを、前記キックアップ部の後端に形成された屈曲部の前後を跨いで固定することにより、前記燃料タンクを車体に搭載したことを特徴とする車両後部構造。
【請求項2】
前記取付フランジを、前記リアサイドメンバの下面に固定したことを特徴とする請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記燃料タンクの後方かつ下方にディファレンシャルギヤを配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記燃料タンクの取付フランジとリアサイドメンバの下面との間に隙間を設け、該隙間に、前記燃料タンクに接続されたフィラーチューブを通して配索したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−265705(P2008−265705A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115363(P2007−115363)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】