車両構成部品及び車両
【課題】簡単な構成で、操舵動作に応じた進行方向をドライバに対して直接的に認識させることができる車両構成部品を得る。
【解決手段】車両のステアリングホイール18における複数の操舵角の各々について、操舵角で走行したときの道路面流線であって、かつ、ドライバの眼位置から見たときに、ステアリングホイール18の特徴点18A上を通る道路面流線を、インスツルメントパネル14の表面に投影して表示する。インスツルメントパネル14の表面に投影表示された道路面流線のうち、ドライバの眼位置から、ステアリングホイール18の特徴点18A上を通る道路面流線を見ることにより、ステアリングホイール18の操舵角で走行したときの道路面流線が分かる。
【解決手段】車両のステアリングホイール18における複数の操舵角の各々について、操舵角で走行したときの道路面流線であって、かつ、ドライバの眼位置から見たときに、ステアリングホイール18の特徴点18A上を通る道路面流線を、インスツルメントパネル14の表面に投影して表示する。インスツルメントパネル14の表面に投影表示された道路面流線のうち、ドライバの眼位置から、ステアリングホイール18の特徴点18A上を通る道路面流線を見ることにより、ステアリングホイール18の操舵角で走行したときの道路面流線が分かる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両構成部品及び車両に係り、特に、ドライバの前方視界内における前方景色の下に配置される車両構成部品及び該車両構成部品を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転における旋回時の操舵動作は、車両の旋回(進行)方向と道路形状の差から得られる道路偏差に応じて修正操舵を加えることにより実現される。このような操舵動作では、操舵角度を与えた結果として発生する旋回方向を補正する操作を連続的に繰り返す必要がある。また、これらの操舵動作は経験則に基づくため、相対的に経験が少ない高速度での運転などでは運転者への負担が高くなる。
【0003】
ここで、操舵動作と車両の進行方向の関係を明らかにする従来技術として、操舵角度に応じた旋回半径をメーター表示することにより進行方向を明示する装置が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、将来予測位置を予測して表示する装置として、将来位置を前方道路ヘレーザー投影する装置や、将来位置や旋回道路との接線となるタンジェントポイントをフロントガラスヘ投影する装置、車載ディスプレイに走行環境と走行軌跡を合成表示する装置が知られている(特許文献2〜特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−218007号公報
【特許文献2】特開2007−83832号公報
【特許文献3】特開2005−228139号公報
【特許文献4】特開2009−012717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術では、旋回半径を知ることはできるが、進行方向を直接的に認識することは困難である、という問題がある。また、上記の特許文献2〜4に記載の技術では、表示装置や、将来位置を予測するための演算装置、センサなどが必要となる、という問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、簡単な構成で、操舵動作に応じた進行方向をドライバに対して直接的に認識させることができる車両構成部品及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の車両構成部品は、ドライバの前方視界内における前方景色の下に配置される車両構成部品であって、車両のステアリングにおける複数の操舵角の各々について、前記操舵角で走行したときの道路面流線であって、かつ、予め定められたドライバの眼位置から見たときに、前記ステアリングの基準点上を通る道路面流線を、前記ドライバの眼位置への投影方向で、前記車両構成部品の表面に投影して表示することを特徴としている。
【0009】
本発明の車両構成部品によれば、ドライバの前方視界内における前方景色の下に配置される車両構成部品の表面に投影表示された道路面流線のうち、ドライバの眼位置から、ステアリングの基準点上を通る道路面流線を見ることにより、ステアリングの操舵角で走行したときの道路面流線が分かる。
【0010】
このように、簡単な構成で、操舵動作に応じた進行方向をドライバに対して直接的に認識させることができる。
【0011】
本発明に係る車両構成部品は、車両のステアリングにおける複数の操舵角の各々について、操舵角及び所定の車速に対応する旋回半径で走行したときの道路面流線を、ドライバの眼位置への投影方向で、車両構成部品の表面に投影して表示するようにすることができる。
【0012】
また、上記の車両構成部品では、複数の旋回半径の各々について、旋回半径に応じて定められた車速と、旋回半径とに基づいて、操舵角が各々決定され、決定された複数の操舵角の各々について、道路面流線を、ドライバの眼位置への投影方向で、車両構成部品の表面に投影して表示するようにすることができる。
【0013】
上記の車速を、複数の旋回半径の各々について、旋回半径に対応する横加速度に応じて定めるようにすることができる。
【0014】
本発明に係る車両構成部品では、車両構成部品の表面上における複数の誘導線の配置位置の各々について、配置位置に誘導線を配置した場合に誘導線上にステアリングの基準点が位置するときの操舵角に基づいて、対応する速度及び旋回半径が決定され、配置位置の各々に対する操舵角の各々について、操舵角に対応する旋回半径で走行したときの道路面流線を、ドライバの眼位置への投影方向で、車両構成部品の表面に投影して表示するようにすることができる。
【0015】
本発明に係る車両構成部品では、前方景色と車両構成部品との境界線上に、目印を設け、目印は、ドライバの眼位置から路面へ向かって境界線を投影した投影線と、車両の左右方向の端部に対応する位置を通る線であって、かつ、車両の前後方向と平行な線との交点を、ドライバの眼位置へ向けて境界線上に投影したときの境界線上の位置に配置されるようにすることができる。これによって、簡単な構成で、車両の横幅位置をドライバに対して直接的に認識させることができる。
【0016】
本発明に係る車両構成部品では、ドライバの前方視界内における車両構成部品の表面上に、目印を設け、目印は、ドライバの眼位置から目印を路面へ投影した位置が、車両の左右方向の端部に対応する位置を通る線であって、かつ、車両の前後方向と平行な線上となるように配置されるようにすることができる。これによって、簡単な構成で、車両の横幅位置をドライバに対して直接的に認識させることができる。
【0017】
上記の目印を、前記車両の左右方向の両端部の各々に対応して複数設けるようにすることができる。
【0018】
本発明に係る車両は、上記の車両構成部品と、ステアリングとを備えて構成されている。
【0019】
本発明の車両によれば、ドライバの前方視界内における前方景色の下に配置される車両構成部品の表面に投影表示された道路面流線のうち、ドライバの眼位置から、ステアリングの基準点上を通る道路面流線を見ることにより、ステアリングの操舵角で走行したときの道路面流線が分かる。
【0020】
このように、簡単な構成で、操舵動作に応じた進行方向をドライバに対して直接的に認識させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、簡単な構成で、操舵動作に応じた進行方向をドライバに対して直接的に認識させることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態の車両内部の一部を示す概略図である。
【図2】直進道路を走行しているときのドライバの前方視界を示すイメージ図である。
【図3】旋回路を走行しているときのドライバの前方視界を示すイメージ図である。
【図4】旋回半径と操舵角との関係を示すグラフである。
【図5】インスツルメントパネルの表面に誘導線を表示した様子を示すイメージ図である。
【図6】旋回半径と横向き加速度との関係を示すグラフである。
【図7】旋回半径と操舵角との関係を示すグラフである。
【図8】ドライバとステアリングホイールとインスツルメントパネルとの配置を示す斜視図である。
【図9】配置基準点の座標を示す図である。
【図10】ドライバとステアリングホイールとインスツルメントパネルとの配置を示す斜視図である。
【図11】インスツルメントパネルの表面に誘導線を表示した様子を示すイメージ図である。
【図12】試験コースを走行した時の誘導線の有無による操舵動作を測定した結果を示すグラフである。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係るインスツルメントパネルの表面に誘導線を表示した様子を示すイメージ図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係るインスツルメントパネルに設けられたメータカバーの表面に誘導線を表示した様子を示すイメージ図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態に係る車両内部の一部を示す概略図である。
【図16】車幅マークの設計方法を説明するための上面図である。
【図17】本発明の第5の実施の形態に係る車両内部の一部を示す概略図である。
【図18】車幅マークの設計方法を説明するための上面図である。
【図19】本発明の第6の実施の形態に係る車両内部の一部を示す概略図である。
【図20】車幅マークの設計方法を説明するための上面図である。
【図21】階調表示により誘導線を表示した様子を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
図1は、第1の実施の形態の車両10のドライバシートより前方の内部の一部を示す概略図である。車両10は、ウインドシールドガラス12、及びインスツルメントパネル14を有する。ウインドシールドガラス12を通して目視できるドライバの前方視界内における前方景色は、ウインドシールドガラス12の下端部を遮るインスツルメントパネル14により下端が遮られ、インスツルメントパネル14の上辺によって、前方景色と前方景色の下端を遮る車両構成部品との境界である見切り線16を形成している。また、車両10は、ドライバから見て、インスツルメントパネル14の手前側に、ステアリングホイール18を有する。
【0025】
ここで、本実施の形態の原理について説明する。
【0026】
図2は、ドライバの眼位置から見たときの、直線路を走行している時の道路面の流線を示したもので、無限遠点が進行方向になり、そこを原点とする流線が発生し、運転者方向には流線が直線的に向かって来る。また、道路左右方向にずれるにつれて、無限遠点からの流線は運転者から離れていく。直進路では、無限遠点を原点とした放射状の流線として道路面の動きが認識される。
【0027】
図3は、ドライバの眼位置から見たときの、カーブを旋回している時の操舵角と流線との関係を示したものである。旋回運動になることにより、道路延長が左右方向に移動し、流線の原点になる。流線形状は、旋回半径に応じた走行軌跡の、視点位置への投影形状になる。運転者方向への流線は、直進時と同様に、原点から向かって来る形状であり、それに旋回半径の成分が加算された形状である。左右方向にずれた流線は、直進時と異なり、旋回の成分により、操舵方向では運転者に近づく運動になる(図3の道路面流線を参照)。その流線方向は旋回方向を示しており、車両の進行方向と一致している。
【0028】
そこで、図3に示すように、操舵角に応じた旋回半径の道路面流線を、内装品に投影表示することにより、旋回(進行)方向を示す誘導線を表示することができる。誘導線が、道路面の流線に連続することにより、旋回方向をドライバに認識させることができる。操舵角と旋回方向の関係をつかみやすくするため、例えばステアリングホイール18の頂点(操舵角が0である時のステアリングホイール18の頂点)18Aを特徴点として、運転者の視点から見て、この特徴点上を通る道路面流線が、インスツルメントパネル14の表面に投影されて、誘導線が配置される。また、認識し易いように、ステアリングホイール18の頂点18Aを、特徴点としてステアリングホイール18に明示するようにしてもよい。
【0029】
図4は、操舵角と旋回半径との関係を示したもので、旋回半径は、操舵角と車両の諸元と速度とによって定まる。例えば、操舵角が小さいほど、旋回半径が大きくなる。なお、車両諸元は、誘導線を表示する車両の大きさなどの設計値によって定まる。
【0030】
表示する誘導線に対応する操舵角と旋回半径は、旋回時の横向き加速度を指標として用いて決定される。例えば、旋回半径が小さいほど、横向き加速度が大きくなるように、操舵角が決定される。また、旋回半径と横向き加速度とは、車両の設計特性に応じて決定される。内装品であるインスツルメントパネル14の表面に表示する誘導線のイメージを、図5に示した。なお、誘導線をインスツルメントパネル14の表面に印刷するようにしてもよいし、複数の誘導線を表わす模様形状を、インスツルメントパネル14の表面に形成するようにしてもよい。
【0031】
表示される誘導線は、複数の旋回半径の各々に対するものであり、各誘導線に対応する道路面流線の操舵角と旋回半径との関係は、以下の(1)式、(2)式で表され、また、各誘導線に対応する道路面流線の旋回半径と横向き加速度との関係は、以下の(3)式で表される。
【0032】
【数1】
【0033】
ただし、Aはスタビリティファクタであり、Kfは前輪コーナリングパワーであり、Krは後輪コーナリングパワーである。また、Lは、ホイルベース(Lf+Lr)であり、Lfは、前輪−重心距離であり、Lrは後輪−重心距離であり、Mは車両重量である。また、Ngは、操舵ギア比であり、Rは旋回半径であり、Saは操舵角であり、Vは車両速度であり、Yaは横向き加速度である。
【0034】
上記のように、車両のステアリングにおける複数の操舵角の各々について、対応する操舵角、車速、横加速度、及び旋回半径で走行したときの道路面流線であって、かつ、ドライバの眼位置から見たときにステアリングホイール18の特徴点上を通る道路面流線を、ドライバの眼位置への投影方向で、インスツルメントパネル14の表面に投影して表示することにより、操舵角と旋回方向の関係を明示的に認識でき、操舵によって生じる旋回(進行)方向を事前に予測する効果や、定常旋回での操舵安定が得られる。
【0035】
次に、インスツルメントパネル14の表面に表示する誘導線の設計方法について説明する。設計は、次の手順で行う。
【0036】
(1)誘導線として表示する旋回半径の設定
(2)旋回半径ごとの設計速度を設定
(3)旋回半径と設計速度から操舵角を算出
(4)誘導線をインスツルメントパネル14上面に配置する位置を操舵角との関係から設定
(5)旋回軌跡を誘導線として構成部品上面に配置
【0037】
上記の手順(1)〜(5)について、以下に具体的に説明する。
【0038】
まず、手順(1)では、誘導線として表示する旋回半径を設定する。
【0039】
中高速度での使用を目的として、最小半径50R(R6と称する)を設定し、順に倍半径100R、200R、400R、800R、1600R(R5〜R1と称する)を設定して、6本の誘導線に対する旋回半径を設定する。
【0040】
次に、手順(2)では、旋回半径ごとの設計速度を設定する。
【0041】
旋回半径に応じた横向き加速度と旋回半径に応じた速度とに基づいて、誘導線ごとの設計速度を決める。
【0042】
旋回半径が大きく、高速走行時の使用が多いと考えられるR1、R2に対しては、法定速度(100km/h)を設定する。
【0043】
また、旋回半径が小さいR4、R5、R6は、乗員が旋回の大きさを感ずる要因となる旋回時の横向き加速度(旋回G)に基づき、たとえば0.25Gを発生する速度を、上記(3)式から算出して設定する。
【0044】
旋回半径R3に対しては、R2、R3、R4の旋回半径の減少に応じ、旋回Gが増加するような設計速度を設定し、旋回感を連続させるように設定した。
【0045】
図6に、速度が25km/h,50km/h,75km/h,100km/hの各々である場合における旋回半径と横向き加速度(旋回G)の関係を示した。例えば、上記図6に示すように、設定した旋回半径R1〜R6に対して、横向き加速度を設定し、設定した横向き加速度を用いて、速度を設定する。
【0046】
なお、設計速度は以下のように設定してもよい。例えば、旋回半径の減少につれて、横向き加速度を連続的に増加するような速度を設定してもよい(上記図6の旋回G連続増加を参照)。また、横向き加速度を車両設計用途に応じて設定し、設定した横向き加速度に応じて、速度を設定してもよい。例えば、車両設計用途が市街地走行主体であれば、横向き加速度が低Gとなるように設定し、高速走行主体であれば、横向き加速度が高Gとなるように設定してもよい。
【0047】
手順(3)では、旋回半径と設計速度とから操舵角を算出する。
【0048】
旋回半径、設計速度、車両諸元から、上記(1)式、(2)式を用いて、6本の誘導線の各々に対して、以下のように旋回時の操舵角度Saを求める。
【0049】
Sa1:4度(1600R,100km/h,0.05G)
Sa2:8度(800R,100km/h,0.1G)
Sa3:14度(400R,90km/h,0.15G)
Sa4:25度(200R,80km/h,0.25G)
Sa5:38度(100R,60km/h,0.25G)
Sa6:55度(50R,40km/h,0.25G)
【0050】
図7に、速度が25km/h,50km/h,75km/h,100km/hの各々である場合及び静特性とした場合の旋回半径と操舵角度との関係を示した。また、図中に、上記のSa1〜Sa6を示した。
【0051】
手順(4)では、誘導線を、インスツルメントパネル14の上面に配置する位置を、操舵角との関係から設定する。
【0052】
操舵角と誘導線との対応が分かり易いように誘導線を配置する。ステアリングホイール18の特徴点18Aを、たとえば操舵角0度時のステアリングホイール18の頂点とすると、操舵時の特徴点の角度が、操舵角となる。
【0053】
ドライバとステアリングホイール18とインスツルメントパネル14との配置を図8に示す。
【0054】
予め設定されたドライバの眼の位置からみて、ステアリングホイール18の特徴点18Aを、インスツルメントパネル14の上面に投影した点(配置基準点Xsi,Ysi)上を通るように誘導線が配置されることにより、その操舵角と誘導線(旋回半径)とが対応する。
【0055】
ここで、誘導線の配置基準点(Xsi,Ysi)は、以下の(4)式〜(8)式に従って求められる。
【0056】
【数2】
【0057】
ただし、Aeはステアリング特徴点18Aの眼からの俯角であり、Asはステアリング特徴点18Aの眼からの方位角である。また、Liは、眼から、ステアリング特徴点18Aのインスツルメントパネル14への投影点までの水平距離であり、Lsは、眼から、ステアリング特徴点18Aまでの水平距離である。また、Rsはステアリング半径であり、Saは操舵角度であり、Xsi,Ysiは誘導線の配置基準点の座標値(ステアリング特徴点18Aのインスツルメントパネル14への投影点)である。Ziは、インスツルメントパネル14上面から眼位置までの垂直高さであり、Zsは、ステアリング特徴点18Aから眼位置までの垂直高さである。なお、ステアリングホイール18には垂直軸から20度程度の傾斜角度があるが、簡単化のため、Zs,Lsにおいてその影響を省略した。実際の算出においては、傾斜角度の影響を含めるようにしてもよい。
【0058】
配置基準点(投影点位置)の算出結果を図9に示した。複数の誘導線の各々における、投影点位置と旋回半径と舵角は、以下のように設定される。
【0059】
投影点位置 : 旋回半径、 舵角
(Xsi1,Ysi1): 1600R, 4度
(Xsi2,Ysi2): 800R, 8度
(Xsi3,Ysi3): 400R, 14度
(Xsi4,Ysi4): 200R, 25度
(Xsi5,Ysi5): 100R, 38度
(Xsi6,Ysi6): 50R, 55度
【0060】
手順(5)では、旋回軌跡(道路面流線)を、インスツルメントパネル14の上面に投影して、誘導線として配置する。
【0061】
図10に、旋回軌跡(道路面流線)を、インスツルメントパネル14の表面へ誘導線として投影して配置した様子を示した。
【0062】
操舵角Sa(上記図8参照)によって車両重心点の旋回半径Rが定まる。また、ステアリング特徴点18Aを道路面へ延長投影した位置を通る道路面流線(旋回半径Rgの軌跡(Xg,Yg))を、投影点Xsi,Ysiを基準としてインスツルメントパネル14の表面に投影して、(Xgi,Ygi)に誘導線を配置する(下記(9)式〜(12)式参照)。簡単化のため、旋回半径Rの軌跡(Xr,Yr)を、インスツルメントパネル14の表面に投影して配置しても良い(下記(13)式〜(15)式参照)。
【0063】
【数3】
【0064】
【数4】
【0065】
ただし、Rは車両重心旋回半径であり、Rgは誘導軌跡(道路面流線)の旋回半径であり、Xg,Ygは、誘導軌跡の座標配列(Rgによる基準軸からの座標値配列)であり、Xgi,Ygiは誘導線の座標配列(誘導軌跡投影)である。また、Xsi,Ysiは、誘導線の配置基準点の座標値(眼からの特徴点の投影点)であり、Xi,Yiは、インスツルメントパネル14上面の座標位置(基準軸からの座標)であり、Xr,Yrは、車両重心軌跡の座標配列であり、Yeは、車両重心から眼までの横距離である。また、Zeは、眼の道路面からの垂直高さであり、Ziは、インスツルメントパネル14上面の眼からの垂直高さである。なお、X,Y座標配列は、連続した対になる位置座標の配列である。
【0066】
図11に、インスツルメントパネル14の表面へ道路面流線を投影して誘導線を配置した実施例を示した。配置基準点の位置を「○」で表示し、配置基準点の位置が表示外である場合を「⇒」で表示した。
【0067】
上記図7に示された様に、旋回半径が小さくなるほど、旋回半径に対する操舵角度の変化量は多くなる。そこで、上記図11に示すように、その影響を考慮して、旋回半径が小さい誘導線の幅を広くすることにより、操舵角変化に対応している。また、「⇒」は配置基準点がインスツルメントパネル14上にないことを示しているため、ステアリングホイール18の特徴点18Aの延長上に誘導線は無く、このような配置では誘導線を仮想して特徴点18Aとの対応をとっている。このような配置でも、誘導線の幅を広くすることにより、合わせやすさを向上させている。
【0068】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0069】
車両10の走行中に、ドライバは、ステアリングホイール18を操舵する。このとき、ドライバの眼位置からインスツルメントパネル14の上面を見たときに、ステアリングホイール18の特徴点18A上を通る誘導線から、前方に誘導線を延長して道路面流線を仮想し、旋回方向(進行方向)を認識する。
【0070】
次に、本実施の形態に係る誘導線をインスツルメントパネル14の上面に表示した場合の実験結果について説明する。
【0071】
図12は、旋回路である試験コースを走行した時の誘導線の有無による操舵動作を測定した結果を示している。一定区間を走行した時の操舵量指標として、操舵角速度を示し、車両の運動指標として、道路横方向の偏差速度及び偏差量の各々の二乗平均値を示しており、誘導線のない条件での値を1として正規化した値(比)を示している。誘導線を表示することにより、操舵速度はほぼ同じであるが、偏差速度及び偏差量が減少しており、車両の横方向のふらつきが減り、安定した走行ができていることがわかった。
【0072】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る車両によれば、インスツルメントパネルの表面に表示された誘導線のうち、ドライバの眼位置から、ステアリングの特徴点上を通る誘導線を見ることにより、ステアリングの操舵角で走行したときの道路面流線が分かるため、簡単な構成で、操舵動作に応じた進行方向をドライバに対して直接的に認識させることができる。また、操舵角度に応じた車両の旋回方向が明確に認識できるため、その操舵動作の負担が軽減され、車両の運転が容易に行えるようになる。
【0073】
また、ドライバは誘導線とステアリング特徴点とを交差させることにより、車両の将来の走行軌跡は定まり、誘導線の延長方向に車両が旋回していくため、操舵角度と車両進行方向の関係が容易に認識でき、旋回や高速走行時の車線変更での操舵動作を安定させることができる。また、誘導線は旋回軌跡の延長となるため、誘導線形状から旋回運動としての車両運動を予測できる。
【0074】
また、インスツルメントパネルの表面に誘導線を配置しているため、道路に沿って車両を走行させる運転操作を支援するための情報を、運転者に過度に意識させることなく表示することができる。
【0075】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
第2の実施の形態では、ステアリング特徴点の位置が、ステアリングの形状によって明示されている点と、エアーダクトの形状を利用して誘導線が表示されている点とが、第1の実施の形態と異なっている。
【0077】
図13に示すように、ステアリング18のステアリング特徴点18A(頂点)に絞り形状が形成され、ステアリング特徴点18Aの位置が明示されている。また、インスツルメントパネル14とウインドシールドガラス12との間に、エアーダクト200が設けられている。エアーダクト200の形状が、インスツルメントパネル14の表面上にも連続するように形成されている。インスツルメントパネル14の表面上にも連続するエアーダクト200の形状によって、誘導線が表示されている。
【0078】
なお、第2の実施の形態に係る車両の他の構成及び作用について、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0080】
第3の実施の形態では、インスツルメントパネルに設けられているメータカバーの上面を色分けすることによって、誘導線が表示されている点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0081】
図14に示すように、インスツルメントパネル14に設けられているメータカバー300の上面が、左右方向に並んだ複数の領域に分割され、隣接する分割領域では異なる色が使用されている。色分けされた分割領域の境界線によって、誘導線が表示されている。
【0082】
なお、第3の実施の形態に係る車両の他の構成及び作用について、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0083】
次に、第4の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0084】
第4の実施の形態では、インスツルメントパネルと前方景色との境界線(見切り線)上に、車幅マークが表示されている点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0085】
まず、本実施の形態の原理について説明する。
【0086】
上述した第1の実施の形態〜第3の実施の形態のように設計した誘導線に応じた操舵角によって、旋回運動における適切な旋回半径を実現できる。しかし、旋回半径が大きく、上記図2に示すような直進道路に近い走行路では、操舵角はほぼ0度になる。誘導線で表示すると、視点前方中央の直線となるが、路面不正や横風などの外乱に対応するための修正操舵と誘導線とに偏差が発生する。このとき、道路車線内(横方向の幅4m程度)に車両を維持するための操舵操作を考えると、道路車線幅に対する車両の横方向位置の認識が重要になる。
【0087】
そこで、本実施の形態では、図15に示すように、車両の横幅位置を示す2つの車幅マーク400を、ドライバから見たときの、前方景色とインスツルメントパネル14との境界線(見切り線)上に設ける。なお、誘導線は、メータカバー300の表面上の造形により表示されている。
【0088】
車幅マーク400は、車両の横幅位置とドライバ視点とを結んだ、見切り線上の投影位置に設けられている。車幅マーク400は、見切り線上に配置されるように、インスツルメントパネル14の上面、またはウインドシールドガラス12に表示される。なお、車幅マーク400は、設置または印刷により表示される。
【0089】
次に、見切り線上に表示する車幅マーク400の設計方法について図16を用いて説明する。
【0090】
まず、ドライバの視線位置448を定め、定めたドライバの視線位置448から路面へ向かって、見切り線を投影した路面上の投影線450を求める。そして、車両の左右方向の両端位置(横幅位置)を通る、前後方向と平行な2つの線452の各々と、見切り線を投影した投影線450との交点454を求める。
【0091】
求めた交点454の各々を、ドライバの視線位置448へ向けて投影したときの見切り線上の位置を求め、求められた各位置に、車幅マーク400を配置する。
【0092】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0093】
車両10の走行中に、ドライバは、ステアリングホイール18を操舵する。このとき、ドライバの眼位置からメータカバー300の上面を見たときに、ステアリングホイール18の特徴点18A上を通る誘導線から、前方に誘導線を延長して道路面流線を仮想し、旋回方向(進行方向)を認識する。
【0094】
また、ドライバの眼位置から、見切り線上に左右に配置された車幅マーク400を見たときに、車幅マークと道路上に示された車線とから、車線内での車両位置を認識する。
【0095】
以上説明したように、第4の実施の形態に係る車両によれば、誘導線と車幅マークとを複合表示することにより、これから進む旋回路での操舵角と旋回方向や、車線内の横方向位置などの操舵情報を、ドライバに認識させることができ、各種の走行路形状や場面での操舵や車両の挙動を安定させることができる。
【0096】
また、車幅マークにより、簡単な構成で、車両の横幅位置をドライバに対して直接的に認識させることができる。また、車幅マークにより道路車線幅に対する車両位置や、旋回開始時の動き始めの認識感度を向上させることができる。少ない車両のふらつき量で車両位置を知覚することができ、早めの少ない修正操舵により横方向位置の安定化が可能となる。
【0097】
次に、第5の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態及び第4の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0098】
第5の実施の形態では、ボンネット上に、車幅マークが表示されている点が、第4の実施の形態と異なっている。
【0099】
図17に示すように、車両の横幅位置を示す2つの車幅マーク500を、ドライバの前方視界内における前方景色を下から遮るボンネット510上に設ける。
【0100】
車幅マーク500は、車両の横幅位置とドライバ視点とを結んだ、ボンネット510上の投影位置に設けられている。車幅マーク500として、例えば、フロントウォシャー吹き出し口などの造形物を用いることができる。なお、車幅マーク500は、印刷により表示されてもよい。
【0101】
次に、ボンネット510上に表示する車幅マーク500の設計方法について図18を用いて説明する。
【0102】
まず、ドライバの視線位置448を定める。そして、車両の左右方向の両端位置(横幅位置)を通る、前後方向と平行な2つの線452の各々について、ボンネット510のドライバの前方視界内となる部分を通るように、線452上の位置と、ドライバの視線位置448とを結ぶ。結んだ各線上のボンネット510上の位置を各々求め、求められた各位置に、車幅マーク500を配置する。
【0103】
なお、第5の実施の形態に係る車両の他の構成及び作用について、第4の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0104】
次に、第6の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態及び第4の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0105】
第6の実施の形態では、インスツルメントパネル上に、車幅マークが表示されている点が、第4の実施の形態と異なっている。
【0106】
図19に示すように、車両の横幅位置を示す2つの車幅マーク600を、インスツルメントパネル14上に設ける。
【0107】
車幅マーク600は、車両の横幅位置とドライバ視点とを結んだ、インスツルメントパネル14上の投影位置に設けられている。車幅マーク600として、インスツルメントパネル14上の造形物を用いることができる。なお、車幅マーク600は、印刷により表示されてもよい。
【0108】
次に、インスツルメントパネル14上に表示する車幅マーク600の設計方法について図20を用いて説明する。
【0109】
まず、ドライバの視線位置448を定める。そして、車両の左右方向の両端位置(横幅位置)を通る、前後方向と平行な2つの線452の各々について、インスツルメントパネル14の上面の、ドライバの前方視界内となる部分を通るように、線452上の位置と、ドライバの視線位置448とを結ぶ。結んだ各線上のインスツルメントパネル14上の位置を各々求め、求められた各位置に、車幅マーク600を配置する。
【0110】
なお、第6の実施の形態に係る車両の他の構成及び作用について、第4の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
なお、上記の第4の実施の形態〜第6の実施の形態において、車両の左右方向の両端位置(横幅位置)を通る、前後方向と平行な2つの線452を用いて車幅マークの配置を設計する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、車両の左右方向の両端付近の位置を通る、前後方向の2つの線を用いて車幅マークの配置を設計するようにしてもよい。
【0112】
また、上記の第1の実施の形態〜第6の実施の形態では、インスツルメントパネル14の表面に、誘導線を配置した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ドライバの前方視界内における前方景色の下に配置される車両構成部品であれば、他の構成部品の表面に、誘導線を配置するようにしてもよい。
【0113】
また、誘導線を線として表示する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、誘導線を表示するように、インスツルメントパネル表面の色諧調、形状、シボ密度、大きさなどを設定したり、変化させたりするようにしてもよい。例えば、図21に示すように、誘導線の配置位置を操舵角間隔に応じて設定し、階調表示により、誘導線を表示するようにしてもよい。
【0114】
また、上記の設計手順の説明では、簡単化のため、インスツルメントパネル14の表面を水平平板としたが、これに限定されるものではなく、インスツルメントパネル14の傾斜面、変形面において、誘導線を配置するようにしてもよい。この場合には、眼、ステアリングホイール18、インスツルメントパネル14の配置に応じて、道路面流線を表面に投影することにより実現すればよい。
【0115】
また、設計手順において、インスツルメントパネル14の表面上の誘導線の配置位置を先に設定した上で、旋回半径を設計するようにしてもよい。例えば、設定した複数の配置位置の各々について、配置位置に誘導線を配置した場合における、誘導線上にステアリング特徴点18Aが位置するときの操舵角を求め、操舵角に対応する速度及び旋回半径を求め、配置位置を道路面に投影したときの位置を通り、かつ、求められた旋回半径の道路面流線を、インスツルメントパネル14の表面上へ投影して、誘導線を配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0116】
10 車両
12 ウインドシールドガラス
14 インスツルメントパネル
18 ステアリングホイール
18A ステアリング特徴点
200 エアーダクト
300 メータカバー
400、500、600 車幅マーク
510 ボンネット
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両構成部品及び車両に係り、特に、ドライバの前方視界内における前方景色の下に配置される車両構成部品及び該車両構成部品を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転における旋回時の操舵動作は、車両の旋回(進行)方向と道路形状の差から得られる道路偏差に応じて修正操舵を加えることにより実現される。このような操舵動作では、操舵角度を与えた結果として発生する旋回方向を補正する操作を連続的に繰り返す必要がある。また、これらの操舵動作は経験則に基づくため、相対的に経験が少ない高速度での運転などでは運転者への負担が高くなる。
【0003】
ここで、操舵動作と車両の進行方向の関係を明らかにする従来技術として、操舵角度に応じた旋回半径をメーター表示することにより進行方向を明示する装置が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、将来予測位置を予測して表示する装置として、将来位置を前方道路ヘレーザー投影する装置や、将来位置や旋回道路との接線となるタンジェントポイントをフロントガラスヘ投影する装置、車載ディスプレイに走行環境と走行軌跡を合成表示する装置が知られている(特許文献2〜特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−218007号公報
【特許文献2】特開2007−83832号公報
【特許文献3】特開2005−228139号公報
【特許文献4】特開2009−012717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術では、旋回半径を知ることはできるが、進行方向を直接的に認識することは困難である、という問題がある。また、上記の特許文献2〜4に記載の技術では、表示装置や、将来位置を予測するための演算装置、センサなどが必要となる、という問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、簡単な構成で、操舵動作に応じた進行方向をドライバに対して直接的に認識させることができる車両構成部品及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の車両構成部品は、ドライバの前方視界内における前方景色の下に配置される車両構成部品であって、車両のステアリングにおける複数の操舵角の各々について、前記操舵角で走行したときの道路面流線であって、かつ、予め定められたドライバの眼位置から見たときに、前記ステアリングの基準点上を通る道路面流線を、前記ドライバの眼位置への投影方向で、前記車両構成部品の表面に投影して表示することを特徴としている。
【0009】
本発明の車両構成部品によれば、ドライバの前方視界内における前方景色の下に配置される車両構成部品の表面に投影表示された道路面流線のうち、ドライバの眼位置から、ステアリングの基準点上を通る道路面流線を見ることにより、ステアリングの操舵角で走行したときの道路面流線が分かる。
【0010】
このように、簡単な構成で、操舵動作に応じた進行方向をドライバに対して直接的に認識させることができる。
【0011】
本発明に係る車両構成部品は、車両のステアリングにおける複数の操舵角の各々について、操舵角及び所定の車速に対応する旋回半径で走行したときの道路面流線を、ドライバの眼位置への投影方向で、車両構成部品の表面に投影して表示するようにすることができる。
【0012】
また、上記の車両構成部品では、複数の旋回半径の各々について、旋回半径に応じて定められた車速と、旋回半径とに基づいて、操舵角が各々決定され、決定された複数の操舵角の各々について、道路面流線を、ドライバの眼位置への投影方向で、車両構成部品の表面に投影して表示するようにすることができる。
【0013】
上記の車速を、複数の旋回半径の各々について、旋回半径に対応する横加速度に応じて定めるようにすることができる。
【0014】
本発明に係る車両構成部品では、車両構成部品の表面上における複数の誘導線の配置位置の各々について、配置位置に誘導線を配置した場合に誘導線上にステアリングの基準点が位置するときの操舵角に基づいて、対応する速度及び旋回半径が決定され、配置位置の各々に対する操舵角の各々について、操舵角に対応する旋回半径で走行したときの道路面流線を、ドライバの眼位置への投影方向で、車両構成部品の表面に投影して表示するようにすることができる。
【0015】
本発明に係る車両構成部品では、前方景色と車両構成部品との境界線上に、目印を設け、目印は、ドライバの眼位置から路面へ向かって境界線を投影した投影線と、車両の左右方向の端部に対応する位置を通る線であって、かつ、車両の前後方向と平行な線との交点を、ドライバの眼位置へ向けて境界線上に投影したときの境界線上の位置に配置されるようにすることができる。これによって、簡単な構成で、車両の横幅位置をドライバに対して直接的に認識させることができる。
【0016】
本発明に係る車両構成部品では、ドライバの前方視界内における車両構成部品の表面上に、目印を設け、目印は、ドライバの眼位置から目印を路面へ投影した位置が、車両の左右方向の端部に対応する位置を通る線であって、かつ、車両の前後方向と平行な線上となるように配置されるようにすることができる。これによって、簡単な構成で、車両の横幅位置をドライバに対して直接的に認識させることができる。
【0017】
上記の目印を、前記車両の左右方向の両端部の各々に対応して複数設けるようにすることができる。
【0018】
本発明に係る車両は、上記の車両構成部品と、ステアリングとを備えて構成されている。
【0019】
本発明の車両によれば、ドライバの前方視界内における前方景色の下に配置される車両構成部品の表面に投影表示された道路面流線のうち、ドライバの眼位置から、ステアリングの基準点上を通る道路面流線を見ることにより、ステアリングの操舵角で走行したときの道路面流線が分かる。
【0020】
このように、簡単な構成で、操舵動作に応じた進行方向をドライバに対して直接的に認識させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、簡単な構成で、操舵動作に応じた進行方向をドライバに対して直接的に認識させることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態の車両内部の一部を示す概略図である。
【図2】直進道路を走行しているときのドライバの前方視界を示すイメージ図である。
【図3】旋回路を走行しているときのドライバの前方視界を示すイメージ図である。
【図4】旋回半径と操舵角との関係を示すグラフである。
【図5】インスツルメントパネルの表面に誘導線を表示した様子を示すイメージ図である。
【図6】旋回半径と横向き加速度との関係を示すグラフである。
【図7】旋回半径と操舵角との関係を示すグラフである。
【図8】ドライバとステアリングホイールとインスツルメントパネルとの配置を示す斜視図である。
【図9】配置基準点の座標を示す図である。
【図10】ドライバとステアリングホイールとインスツルメントパネルとの配置を示す斜視図である。
【図11】インスツルメントパネルの表面に誘導線を表示した様子を示すイメージ図である。
【図12】試験コースを走行した時の誘導線の有無による操舵動作を測定した結果を示すグラフである。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係るインスツルメントパネルの表面に誘導線を表示した様子を示すイメージ図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係るインスツルメントパネルに設けられたメータカバーの表面に誘導線を表示した様子を示すイメージ図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態に係る車両内部の一部を示す概略図である。
【図16】車幅マークの設計方法を説明するための上面図である。
【図17】本発明の第5の実施の形態に係る車両内部の一部を示す概略図である。
【図18】車幅マークの設計方法を説明するための上面図である。
【図19】本発明の第6の実施の形態に係る車両内部の一部を示す概略図である。
【図20】車幅マークの設計方法を説明するための上面図である。
【図21】階調表示により誘導線を表示した様子を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
図1は、第1の実施の形態の車両10のドライバシートより前方の内部の一部を示す概略図である。車両10は、ウインドシールドガラス12、及びインスツルメントパネル14を有する。ウインドシールドガラス12を通して目視できるドライバの前方視界内における前方景色は、ウインドシールドガラス12の下端部を遮るインスツルメントパネル14により下端が遮られ、インスツルメントパネル14の上辺によって、前方景色と前方景色の下端を遮る車両構成部品との境界である見切り線16を形成している。また、車両10は、ドライバから見て、インスツルメントパネル14の手前側に、ステアリングホイール18を有する。
【0025】
ここで、本実施の形態の原理について説明する。
【0026】
図2は、ドライバの眼位置から見たときの、直線路を走行している時の道路面の流線を示したもので、無限遠点が進行方向になり、そこを原点とする流線が発生し、運転者方向には流線が直線的に向かって来る。また、道路左右方向にずれるにつれて、無限遠点からの流線は運転者から離れていく。直進路では、無限遠点を原点とした放射状の流線として道路面の動きが認識される。
【0027】
図3は、ドライバの眼位置から見たときの、カーブを旋回している時の操舵角と流線との関係を示したものである。旋回運動になることにより、道路延長が左右方向に移動し、流線の原点になる。流線形状は、旋回半径に応じた走行軌跡の、視点位置への投影形状になる。運転者方向への流線は、直進時と同様に、原点から向かって来る形状であり、それに旋回半径の成分が加算された形状である。左右方向にずれた流線は、直進時と異なり、旋回の成分により、操舵方向では運転者に近づく運動になる(図3の道路面流線を参照)。その流線方向は旋回方向を示しており、車両の進行方向と一致している。
【0028】
そこで、図3に示すように、操舵角に応じた旋回半径の道路面流線を、内装品に投影表示することにより、旋回(進行)方向を示す誘導線を表示することができる。誘導線が、道路面の流線に連続することにより、旋回方向をドライバに認識させることができる。操舵角と旋回方向の関係をつかみやすくするため、例えばステアリングホイール18の頂点(操舵角が0である時のステアリングホイール18の頂点)18Aを特徴点として、運転者の視点から見て、この特徴点上を通る道路面流線が、インスツルメントパネル14の表面に投影されて、誘導線が配置される。また、認識し易いように、ステアリングホイール18の頂点18Aを、特徴点としてステアリングホイール18に明示するようにしてもよい。
【0029】
図4は、操舵角と旋回半径との関係を示したもので、旋回半径は、操舵角と車両の諸元と速度とによって定まる。例えば、操舵角が小さいほど、旋回半径が大きくなる。なお、車両諸元は、誘導線を表示する車両の大きさなどの設計値によって定まる。
【0030】
表示する誘導線に対応する操舵角と旋回半径は、旋回時の横向き加速度を指標として用いて決定される。例えば、旋回半径が小さいほど、横向き加速度が大きくなるように、操舵角が決定される。また、旋回半径と横向き加速度とは、車両の設計特性に応じて決定される。内装品であるインスツルメントパネル14の表面に表示する誘導線のイメージを、図5に示した。なお、誘導線をインスツルメントパネル14の表面に印刷するようにしてもよいし、複数の誘導線を表わす模様形状を、インスツルメントパネル14の表面に形成するようにしてもよい。
【0031】
表示される誘導線は、複数の旋回半径の各々に対するものであり、各誘導線に対応する道路面流線の操舵角と旋回半径との関係は、以下の(1)式、(2)式で表され、また、各誘導線に対応する道路面流線の旋回半径と横向き加速度との関係は、以下の(3)式で表される。
【0032】
【数1】
【0033】
ただし、Aはスタビリティファクタであり、Kfは前輪コーナリングパワーであり、Krは後輪コーナリングパワーである。また、Lは、ホイルベース(Lf+Lr)であり、Lfは、前輪−重心距離であり、Lrは後輪−重心距離であり、Mは車両重量である。また、Ngは、操舵ギア比であり、Rは旋回半径であり、Saは操舵角であり、Vは車両速度であり、Yaは横向き加速度である。
【0034】
上記のように、車両のステアリングにおける複数の操舵角の各々について、対応する操舵角、車速、横加速度、及び旋回半径で走行したときの道路面流線であって、かつ、ドライバの眼位置から見たときにステアリングホイール18の特徴点上を通る道路面流線を、ドライバの眼位置への投影方向で、インスツルメントパネル14の表面に投影して表示することにより、操舵角と旋回方向の関係を明示的に認識でき、操舵によって生じる旋回(進行)方向を事前に予測する効果や、定常旋回での操舵安定が得られる。
【0035】
次に、インスツルメントパネル14の表面に表示する誘導線の設計方法について説明する。設計は、次の手順で行う。
【0036】
(1)誘導線として表示する旋回半径の設定
(2)旋回半径ごとの設計速度を設定
(3)旋回半径と設計速度から操舵角を算出
(4)誘導線をインスツルメントパネル14上面に配置する位置を操舵角との関係から設定
(5)旋回軌跡を誘導線として構成部品上面に配置
【0037】
上記の手順(1)〜(5)について、以下に具体的に説明する。
【0038】
まず、手順(1)では、誘導線として表示する旋回半径を設定する。
【0039】
中高速度での使用を目的として、最小半径50R(R6と称する)を設定し、順に倍半径100R、200R、400R、800R、1600R(R5〜R1と称する)を設定して、6本の誘導線に対する旋回半径を設定する。
【0040】
次に、手順(2)では、旋回半径ごとの設計速度を設定する。
【0041】
旋回半径に応じた横向き加速度と旋回半径に応じた速度とに基づいて、誘導線ごとの設計速度を決める。
【0042】
旋回半径が大きく、高速走行時の使用が多いと考えられるR1、R2に対しては、法定速度(100km/h)を設定する。
【0043】
また、旋回半径が小さいR4、R5、R6は、乗員が旋回の大きさを感ずる要因となる旋回時の横向き加速度(旋回G)に基づき、たとえば0.25Gを発生する速度を、上記(3)式から算出して設定する。
【0044】
旋回半径R3に対しては、R2、R3、R4の旋回半径の減少に応じ、旋回Gが増加するような設計速度を設定し、旋回感を連続させるように設定した。
【0045】
図6に、速度が25km/h,50km/h,75km/h,100km/hの各々である場合における旋回半径と横向き加速度(旋回G)の関係を示した。例えば、上記図6に示すように、設定した旋回半径R1〜R6に対して、横向き加速度を設定し、設定した横向き加速度を用いて、速度を設定する。
【0046】
なお、設計速度は以下のように設定してもよい。例えば、旋回半径の減少につれて、横向き加速度を連続的に増加するような速度を設定してもよい(上記図6の旋回G連続増加を参照)。また、横向き加速度を車両設計用途に応じて設定し、設定した横向き加速度に応じて、速度を設定してもよい。例えば、車両設計用途が市街地走行主体であれば、横向き加速度が低Gとなるように設定し、高速走行主体であれば、横向き加速度が高Gとなるように設定してもよい。
【0047】
手順(3)では、旋回半径と設計速度とから操舵角を算出する。
【0048】
旋回半径、設計速度、車両諸元から、上記(1)式、(2)式を用いて、6本の誘導線の各々に対して、以下のように旋回時の操舵角度Saを求める。
【0049】
Sa1:4度(1600R,100km/h,0.05G)
Sa2:8度(800R,100km/h,0.1G)
Sa3:14度(400R,90km/h,0.15G)
Sa4:25度(200R,80km/h,0.25G)
Sa5:38度(100R,60km/h,0.25G)
Sa6:55度(50R,40km/h,0.25G)
【0050】
図7に、速度が25km/h,50km/h,75km/h,100km/hの各々である場合及び静特性とした場合の旋回半径と操舵角度との関係を示した。また、図中に、上記のSa1〜Sa6を示した。
【0051】
手順(4)では、誘導線を、インスツルメントパネル14の上面に配置する位置を、操舵角との関係から設定する。
【0052】
操舵角と誘導線との対応が分かり易いように誘導線を配置する。ステアリングホイール18の特徴点18Aを、たとえば操舵角0度時のステアリングホイール18の頂点とすると、操舵時の特徴点の角度が、操舵角となる。
【0053】
ドライバとステアリングホイール18とインスツルメントパネル14との配置を図8に示す。
【0054】
予め設定されたドライバの眼の位置からみて、ステアリングホイール18の特徴点18Aを、インスツルメントパネル14の上面に投影した点(配置基準点Xsi,Ysi)上を通るように誘導線が配置されることにより、その操舵角と誘導線(旋回半径)とが対応する。
【0055】
ここで、誘導線の配置基準点(Xsi,Ysi)は、以下の(4)式〜(8)式に従って求められる。
【0056】
【数2】
【0057】
ただし、Aeはステアリング特徴点18Aの眼からの俯角であり、Asはステアリング特徴点18Aの眼からの方位角である。また、Liは、眼から、ステアリング特徴点18Aのインスツルメントパネル14への投影点までの水平距離であり、Lsは、眼から、ステアリング特徴点18Aまでの水平距離である。また、Rsはステアリング半径であり、Saは操舵角度であり、Xsi,Ysiは誘導線の配置基準点の座標値(ステアリング特徴点18Aのインスツルメントパネル14への投影点)である。Ziは、インスツルメントパネル14上面から眼位置までの垂直高さであり、Zsは、ステアリング特徴点18Aから眼位置までの垂直高さである。なお、ステアリングホイール18には垂直軸から20度程度の傾斜角度があるが、簡単化のため、Zs,Lsにおいてその影響を省略した。実際の算出においては、傾斜角度の影響を含めるようにしてもよい。
【0058】
配置基準点(投影点位置)の算出結果を図9に示した。複数の誘導線の各々における、投影点位置と旋回半径と舵角は、以下のように設定される。
【0059】
投影点位置 : 旋回半径、 舵角
(Xsi1,Ysi1): 1600R, 4度
(Xsi2,Ysi2): 800R, 8度
(Xsi3,Ysi3): 400R, 14度
(Xsi4,Ysi4): 200R, 25度
(Xsi5,Ysi5): 100R, 38度
(Xsi6,Ysi6): 50R, 55度
【0060】
手順(5)では、旋回軌跡(道路面流線)を、インスツルメントパネル14の上面に投影して、誘導線として配置する。
【0061】
図10に、旋回軌跡(道路面流線)を、インスツルメントパネル14の表面へ誘導線として投影して配置した様子を示した。
【0062】
操舵角Sa(上記図8参照)によって車両重心点の旋回半径Rが定まる。また、ステアリング特徴点18Aを道路面へ延長投影した位置を通る道路面流線(旋回半径Rgの軌跡(Xg,Yg))を、投影点Xsi,Ysiを基準としてインスツルメントパネル14の表面に投影して、(Xgi,Ygi)に誘導線を配置する(下記(9)式〜(12)式参照)。簡単化のため、旋回半径Rの軌跡(Xr,Yr)を、インスツルメントパネル14の表面に投影して配置しても良い(下記(13)式〜(15)式参照)。
【0063】
【数3】
【0064】
【数4】
【0065】
ただし、Rは車両重心旋回半径であり、Rgは誘導軌跡(道路面流線)の旋回半径であり、Xg,Ygは、誘導軌跡の座標配列(Rgによる基準軸からの座標値配列)であり、Xgi,Ygiは誘導線の座標配列(誘導軌跡投影)である。また、Xsi,Ysiは、誘導線の配置基準点の座標値(眼からの特徴点の投影点)であり、Xi,Yiは、インスツルメントパネル14上面の座標位置(基準軸からの座標)であり、Xr,Yrは、車両重心軌跡の座標配列であり、Yeは、車両重心から眼までの横距離である。また、Zeは、眼の道路面からの垂直高さであり、Ziは、インスツルメントパネル14上面の眼からの垂直高さである。なお、X,Y座標配列は、連続した対になる位置座標の配列である。
【0066】
図11に、インスツルメントパネル14の表面へ道路面流線を投影して誘導線を配置した実施例を示した。配置基準点の位置を「○」で表示し、配置基準点の位置が表示外である場合を「⇒」で表示した。
【0067】
上記図7に示された様に、旋回半径が小さくなるほど、旋回半径に対する操舵角度の変化量は多くなる。そこで、上記図11に示すように、その影響を考慮して、旋回半径が小さい誘導線の幅を広くすることにより、操舵角変化に対応している。また、「⇒」は配置基準点がインスツルメントパネル14上にないことを示しているため、ステアリングホイール18の特徴点18Aの延長上に誘導線は無く、このような配置では誘導線を仮想して特徴点18Aとの対応をとっている。このような配置でも、誘導線の幅を広くすることにより、合わせやすさを向上させている。
【0068】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0069】
車両10の走行中に、ドライバは、ステアリングホイール18を操舵する。このとき、ドライバの眼位置からインスツルメントパネル14の上面を見たときに、ステアリングホイール18の特徴点18A上を通る誘導線から、前方に誘導線を延長して道路面流線を仮想し、旋回方向(進行方向)を認識する。
【0070】
次に、本実施の形態に係る誘導線をインスツルメントパネル14の上面に表示した場合の実験結果について説明する。
【0071】
図12は、旋回路である試験コースを走行した時の誘導線の有無による操舵動作を測定した結果を示している。一定区間を走行した時の操舵量指標として、操舵角速度を示し、車両の運動指標として、道路横方向の偏差速度及び偏差量の各々の二乗平均値を示しており、誘導線のない条件での値を1として正規化した値(比)を示している。誘導線を表示することにより、操舵速度はほぼ同じであるが、偏差速度及び偏差量が減少しており、車両の横方向のふらつきが減り、安定した走行ができていることがわかった。
【0072】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る車両によれば、インスツルメントパネルの表面に表示された誘導線のうち、ドライバの眼位置から、ステアリングの特徴点上を通る誘導線を見ることにより、ステアリングの操舵角で走行したときの道路面流線が分かるため、簡単な構成で、操舵動作に応じた進行方向をドライバに対して直接的に認識させることができる。また、操舵角度に応じた車両の旋回方向が明確に認識できるため、その操舵動作の負担が軽減され、車両の運転が容易に行えるようになる。
【0073】
また、ドライバは誘導線とステアリング特徴点とを交差させることにより、車両の将来の走行軌跡は定まり、誘導線の延長方向に車両が旋回していくため、操舵角度と車両進行方向の関係が容易に認識でき、旋回や高速走行時の車線変更での操舵動作を安定させることができる。また、誘導線は旋回軌跡の延長となるため、誘導線形状から旋回運動としての車両運動を予測できる。
【0074】
また、インスツルメントパネルの表面に誘導線を配置しているため、道路に沿って車両を走行させる運転操作を支援するための情報を、運転者に過度に意識させることなく表示することができる。
【0075】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
第2の実施の形態では、ステアリング特徴点の位置が、ステアリングの形状によって明示されている点と、エアーダクトの形状を利用して誘導線が表示されている点とが、第1の実施の形態と異なっている。
【0077】
図13に示すように、ステアリング18のステアリング特徴点18A(頂点)に絞り形状が形成され、ステアリング特徴点18Aの位置が明示されている。また、インスツルメントパネル14とウインドシールドガラス12との間に、エアーダクト200が設けられている。エアーダクト200の形状が、インスツルメントパネル14の表面上にも連続するように形成されている。インスツルメントパネル14の表面上にも連続するエアーダクト200の形状によって、誘導線が表示されている。
【0078】
なお、第2の実施の形態に係る車両の他の構成及び作用について、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0080】
第3の実施の形態では、インスツルメントパネルに設けられているメータカバーの上面を色分けすることによって、誘導線が表示されている点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0081】
図14に示すように、インスツルメントパネル14に設けられているメータカバー300の上面が、左右方向に並んだ複数の領域に分割され、隣接する分割領域では異なる色が使用されている。色分けされた分割領域の境界線によって、誘導線が表示されている。
【0082】
なお、第3の実施の形態に係る車両の他の構成及び作用について、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0083】
次に、第4の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0084】
第4の実施の形態では、インスツルメントパネルと前方景色との境界線(見切り線)上に、車幅マークが表示されている点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0085】
まず、本実施の形態の原理について説明する。
【0086】
上述した第1の実施の形態〜第3の実施の形態のように設計した誘導線に応じた操舵角によって、旋回運動における適切な旋回半径を実現できる。しかし、旋回半径が大きく、上記図2に示すような直進道路に近い走行路では、操舵角はほぼ0度になる。誘導線で表示すると、視点前方中央の直線となるが、路面不正や横風などの外乱に対応するための修正操舵と誘導線とに偏差が発生する。このとき、道路車線内(横方向の幅4m程度)に車両を維持するための操舵操作を考えると、道路車線幅に対する車両の横方向位置の認識が重要になる。
【0087】
そこで、本実施の形態では、図15に示すように、車両の横幅位置を示す2つの車幅マーク400を、ドライバから見たときの、前方景色とインスツルメントパネル14との境界線(見切り線)上に設ける。なお、誘導線は、メータカバー300の表面上の造形により表示されている。
【0088】
車幅マーク400は、車両の横幅位置とドライバ視点とを結んだ、見切り線上の投影位置に設けられている。車幅マーク400は、見切り線上に配置されるように、インスツルメントパネル14の上面、またはウインドシールドガラス12に表示される。なお、車幅マーク400は、設置または印刷により表示される。
【0089】
次に、見切り線上に表示する車幅マーク400の設計方法について図16を用いて説明する。
【0090】
まず、ドライバの視線位置448を定め、定めたドライバの視線位置448から路面へ向かって、見切り線を投影した路面上の投影線450を求める。そして、車両の左右方向の両端位置(横幅位置)を通る、前後方向と平行な2つの線452の各々と、見切り線を投影した投影線450との交点454を求める。
【0091】
求めた交点454の各々を、ドライバの視線位置448へ向けて投影したときの見切り線上の位置を求め、求められた各位置に、車幅マーク400を配置する。
【0092】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0093】
車両10の走行中に、ドライバは、ステアリングホイール18を操舵する。このとき、ドライバの眼位置からメータカバー300の上面を見たときに、ステアリングホイール18の特徴点18A上を通る誘導線から、前方に誘導線を延長して道路面流線を仮想し、旋回方向(進行方向)を認識する。
【0094】
また、ドライバの眼位置から、見切り線上に左右に配置された車幅マーク400を見たときに、車幅マークと道路上に示された車線とから、車線内での車両位置を認識する。
【0095】
以上説明したように、第4の実施の形態に係る車両によれば、誘導線と車幅マークとを複合表示することにより、これから進む旋回路での操舵角と旋回方向や、車線内の横方向位置などの操舵情報を、ドライバに認識させることができ、各種の走行路形状や場面での操舵や車両の挙動を安定させることができる。
【0096】
また、車幅マークにより、簡単な構成で、車両の横幅位置をドライバに対して直接的に認識させることができる。また、車幅マークにより道路車線幅に対する車両位置や、旋回開始時の動き始めの認識感度を向上させることができる。少ない車両のふらつき量で車両位置を知覚することができ、早めの少ない修正操舵により横方向位置の安定化が可能となる。
【0097】
次に、第5の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態及び第4の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0098】
第5の実施の形態では、ボンネット上に、車幅マークが表示されている点が、第4の実施の形態と異なっている。
【0099】
図17に示すように、車両の横幅位置を示す2つの車幅マーク500を、ドライバの前方視界内における前方景色を下から遮るボンネット510上に設ける。
【0100】
車幅マーク500は、車両の横幅位置とドライバ視点とを結んだ、ボンネット510上の投影位置に設けられている。車幅マーク500として、例えば、フロントウォシャー吹き出し口などの造形物を用いることができる。なお、車幅マーク500は、印刷により表示されてもよい。
【0101】
次に、ボンネット510上に表示する車幅マーク500の設計方法について図18を用いて説明する。
【0102】
まず、ドライバの視線位置448を定める。そして、車両の左右方向の両端位置(横幅位置)を通る、前後方向と平行な2つの線452の各々について、ボンネット510のドライバの前方視界内となる部分を通るように、線452上の位置と、ドライバの視線位置448とを結ぶ。結んだ各線上のボンネット510上の位置を各々求め、求められた各位置に、車幅マーク500を配置する。
【0103】
なお、第5の実施の形態に係る車両の他の構成及び作用について、第4の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0104】
次に、第6の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態及び第4の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0105】
第6の実施の形態では、インスツルメントパネル上に、車幅マークが表示されている点が、第4の実施の形態と異なっている。
【0106】
図19に示すように、車両の横幅位置を示す2つの車幅マーク600を、インスツルメントパネル14上に設ける。
【0107】
車幅マーク600は、車両の横幅位置とドライバ視点とを結んだ、インスツルメントパネル14上の投影位置に設けられている。車幅マーク600として、インスツルメントパネル14上の造形物を用いることができる。なお、車幅マーク600は、印刷により表示されてもよい。
【0108】
次に、インスツルメントパネル14上に表示する車幅マーク600の設計方法について図20を用いて説明する。
【0109】
まず、ドライバの視線位置448を定める。そして、車両の左右方向の両端位置(横幅位置)を通る、前後方向と平行な2つの線452の各々について、インスツルメントパネル14の上面の、ドライバの前方視界内となる部分を通るように、線452上の位置と、ドライバの視線位置448とを結ぶ。結んだ各線上のインスツルメントパネル14上の位置を各々求め、求められた各位置に、車幅マーク600を配置する。
【0110】
なお、第6の実施の形態に係る車両の他の構成及び作用について、第4の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
なお、上記の第4の実施の形態〜第6の実施の形態において、車両の左右方向の両端位置(横幅位置)を通る、前後方向と平行な2つの線452を用いて車幅マークの配置を設計する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、車両の左右方向の両端付近の位置を通る、前後方向の2つの線を用いて車幅マークの配置を設計するようにしてもよい。
【0112】
また、上記の第1の実施の形態〜第6の実施の形態では、インスツルメントパネル14の表面に、誘導線を配置した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ドライバの前方視界内における前方景色の下に配置される車両構成部品であれば、他の構成部品の表面に、誘導線を配置するようにしてもよい。
【0113】
また、誘導線を線として表示する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、誘導線を表示するように、インスツルメントパネル表面の色諧調、形状、シボ密度、大きさなどを設定したり、変化させたりするようにしてもよい。例えば、図21に示すように、誘導線の配置位置を操舵角間隔に応じて設定し、階調表示により、誘導線を表示するようにしてもよい。
【0114】
また、上記の設計手順の説明では、簡単化のため、インスツルメントパネル14の表面を水平平板としたが、これに限定されるものではなく、インスツルメントパネル14の傾斜面、変形面において、誘導線を配置するようにしてもよい。この場合には、眼、ステアリングホイール18、インスツルメントパネル14の配置に応じて、道路面流線を表面に投影することにより実現すればよい。
【0115】
また、設計手順において、インスツルメントパネル14の表面上の誘導線の配置位置を先に設定した上で、旋回半径を設計するようにしてもよい。例えば、設定した複数の配置位置の各々について、配置位置に誘導線を配置した場合における、誘導線上にステアリング特徴点18Aが位置するときの操舵角を求め、操舵角に対応する速度及び旋回半径を求め、配置位置を道路面に投影したときの位置を通り、かつ、求められた旋回半径の道路面流線を、インスツルメントパネル14の表面上へ投影して、誘導線を配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0116】
10 車両
12 ウインドシールドガラス
14 インスツルメントパネル
18 ステアリングホイール
18A ステアリング特徴点
200 エアーダクト
300 メータカバー
400、500、600 車幅マーク
510 ボンネット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバの前方視界内における前方景色の下に配置される車両構成部品であって、
車両のステアリングにおける複数の操舵角の各々について、前記操舵角で走行したときの道路面流線であって、かつ、予め定められたドライバの眼位置から見たときに、前記ステアリングの基準点上を通る道路面流線を、前記ドライバの眼位置への投影方向で、前記車両構成部品の表面に投影して表示することを特徴とする車両構成部品。
【請求項2】
車両のステアリングにおける複数の操舵角の各々について、前記操舵角及び所定の車速に対応する旋回半径で走行したときの前記道路面流線を、前記ドライバの眼位置への投影方向で、前記車両構成部品の表面に投影して表示する請求項1記載の車両構成部品。
【請求項3】
複数の旋回半径の各々について、前記旋回半径に応じて定められた車速と、前記旋回半径とに基づいて、前記操舵角が各々決定され、
前記決定された複数の操舵角の各々について、前記道路面流線を、前記ドライバの眼位置への投影方向で、前記車両構成部品の表面に投影して表示する請求項2記載の車両構成部品。
【請求項4】
前記車速を、複数の旋回半径の各々について、前記旋回半径に対応する横加速度に応じて定めた請求項3記載の車両構成部品。
【請求項5】
前記車両構成部品の表面上における複数の誘導線の配置位置の各々について、前記配置位置に誘導線を配置した場合に前記誘導線上にステアリングの基準点が位置するときの操舵角に基づいて、対応する速度及び旋回半径が決定され、
前記配置位置の各々に対する操舵角の各々について、前記操舵角に対応する旋回半径で走行したときの前記道路面流線を、前記ドライバの眼位置への投影方向で、前記車両構成部品の表面に投影して表示する請求項2記載の車両構成部品。
【請求項6】
前記前方景色と前記車両構成部品との境界線上に、目印を設け、
前記目印は、前記ドライバの眼位置から路面へ向かって前記境界線を投影した投影線と、前記車両の左右方向の端部に対応する位置を通る線であって、かつ、前記車両の前後方向と平行な線との交点を、前記ドライバの眼位置へ向けて前記境界線上に投影したときの前記境界線上の位置に配置される請求項1〜請求項5の何れか1項記載の車両構成部品。
【請求項7】
前記ドライバの前方視界内における前記車両構成部品の表面上に、目印を設け、
前記目印は、前記ドライバの眼位置から前記目印を路面へ投影した位置が、前記車両の左右方向の端部に対応する位置を通る線であって、かつ、前記車両の前後方向と平行な線上となるように配置される請求項1〜請求項5の何れか1項記載の車両構成部品。
【請求項8】
前記目印を、前記車両の左右方向の両端部の各々に対応して複数設けた請求項6又は7記載の車両構成部品。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか1項記載の車両構成部品と、
ステアリングと、
を備えた車両。
【請求項1】
ドライバの前方視界内における前方景色の下に配置される車両構成部品であって、
車両のステアリングにおける複数の操舵角の各々について、前記操舵角で走行したときの道路面流線であって、かつ、予め定められたドライバの眼位置から見たときに、前記ステアリングの基準点上を通る道路面流線を、前記ドライバの眼位置への投影方向で、前記車両構成部品の表面に投影して表示することを特徴とする車両構成部品。
【請求項2】
車両のステアリングにおける複数の操舵角の各々について、前記操舵角及び所定の車速に対応する旋回半径で走行したときの前記道路面流線を、前記ドライバの眼位置への投影方向で、前記車両構成部品の表面に投影して表示する請求項1記載の車両構成部品。
【請求項3】
複数の旋回半径の各々について、前記旋回半径に応じて定められた車速と、前記旋回半径とに基づいて、前記操舵角が各々決定され、
前記決定された複数の操舵角の各々について、前記道路面流線を、前記ドライバの眼位置への投影方向で、前記車両構成部品の表面に投影して表示する請求項2記載の車両構成部品。
【請求項4】
前記車速を、複数の旋回半径の各々について、前記旋回半径に対応する横加速度に応じて定めた請求項3記載の車両構成部品。
【請求項5】
前記車両構成部品の表面上における複数の誘導線の配置位置の各々について、前記配置位置に誘導線を配置した場合に前記誘導線上にステアリングの基準点が位置するときの操舵角に基づいて、対応する速度及び旋回半径が決定され、
前記配置位置の各々に対する操舵角の各々について、前記操舵角に対応する旋回半径で走行したときの前記道路面流線を、前記ドライバの眼位置への投影方向で、前記車両構成部品の表面に投影して表示する請求項2記載の車両構成部品。
【請求項6】
前記前方景色と前記車両構成部品との境界線上に、目印を設け、
前記目印は、前記ドライバの眼位置から路面へ向かって前記境界線を投影した投影線と、前記車両の左右方向の端部に対応する位置を通る線であって、かつ、前記車両の前後方向と平行な線との交点を、前記ドライバの眼位置へ向けて前記境界線上に投影したときの前記境界線上の位置に配置される請求項1〜請求項5の何れか1項記載の車両構成部品。
【請求項7】
前記ドライバの前方視界内における前記車両構成部品の表面上に、目印を設け、
前記目印は、前記ドライバの眼位置から前記目印を路面へ投影した位置が、前記車両の左右方向の端部に対応する位置を通る線であって、かつ、前記車両の前後方向と平行な線上となるように配置される請求項1〜請求項5の何れか1項記載の車両構成部品。
【請求項8】
前記目印を、前記車両の左右方向の両端部の各々に対応して複数設けた請求項6又は7記載の車両構成部品。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか1項記載の車両構成部品と、
ステアリングと、
を備えた車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−33160(P2012−33160A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148105(P2011−148105)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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