車両用のブレーキ装置
【課題】回生協調に対応しブレーキ応答遅れを抑制することができるブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ブレーキ装置は、回生トルク取得部により取得された回生トルクに応じたブレーキ液圧である制御液圧を発生させる制御液圧発生部15bと、ブレーキペダル11の操作量に応じたブレーキ液圧である反力液圧を発生させる反力液圧発生部12と、反力液圧発生部12に接続される反力液圧入力室20aと、制御液圧発生部15bに接続される制御液圧入力室20cと、サーボ室13eに接続されるサーボ液圧出力室20bと、が形成され、反力液圧から制御液圧を差し引いた液圧に応じたサーボ液圧をサーボ液圧出力室20bに発生させる機械式レギュレータ15cと、を備えている。
【解決手段】ブレーキ装置は、回生トルク取得部により取得された回生トルクに応じたブレーキ液圧である制御液圧を発生させる制御液圧発生部15bと、ブレーキペダル11の操作量に応じたブレーキ液圧である反力液圧を発生させる反力液圧発生部12と、反力液圧発生部12に接続される反力液圧入力室20aと、制御液圧発生部15bに接続される制御液圧入力室20cと、サーボ室13eに接続されるサーボ液圧出力室20bと、が形成され、反力液圧から制御液圧を差し引いた液圧に応じたサーボ液圧をサーボ液圧出力室20bに発生させる機械式レギュレータ15cと、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用のブレーキ装置の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1に示されているように、車両用のブレーキ装置においては、回生制動が行われない通常の制動制御中においては、要求制動力(ブレーキペダルの操作量に応じた)に相当する制御液圧が発生されている。一方、回生制動も行われている回生協調制御中においては、回生制動力分を減じて制御液圧が発生されており、すなわち回生制動力と制御液圧による液圧制動力との合計により要求制動力を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−167915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載のブレーキ装置の回生協調制御においては、ブレーキペダル24の操作量をストロークセンサ25により検出し、検出した操作量に基づいて増圧リニア制御弁等を制御することにより、ブレーキペダル24の操作量に応じた制動力を発生させる。そのため、制動力の発生がブレーキペダル24の操作に対して遅れること(ブレーキ応答遅れ)が考えられる。さらにこれに対処するためには、大容量のポンプやアキュムレータを設置(または追加)することも考えられるが、装置自体の大型化、高コスト化を招くこととなる。
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、回生協調に対応しブレーキ応答遅れを抑制することができるブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、ブレーキ操作部材の操作に応じてマスタシリンダ内にブレーキ液圧を発生させる車両用のブレーキ装置において、マスタシリンダ内にマスタ室およびサーボ室を形成し、サーボ室のブレーキ液圧であるサーボ液圧に駆動されてマスタシリンダ内をブレーキ操作部材の操作に拘わらず摺動可能に構成され、マスタ室にブレーキ液圧を発生させるマスタピストン部と、回生トルクを取得する回生トルク取得部と、回生トルク取得部により取得された回生トルクに応じた制御液圧を発生させる制御液圧発生部と、ブレーキ操作部材の操作量に応じたブレーキ液圧である反力液圧を機械的に発生させる反力液圧発生部と、反力液圧発生部に接続される反力液圧入力室と、制御液圧発生部に接続される制御液圧入力室と、サーボ室に接続されるサーボ液圧出力室と、が形成され、反力液圧による力から制御液圧による力を差し引いた力に応じたサーボ液圧をサーボ液圧出力室に機械的に発生させる機械式レギュレータと、を備えていることである。
【0007】
当該請求項1に係る発明は、例えば、ブレーキ操作部材の操作に応じてマスタシリンダ内にブレーキ液圧を発生させる車両用のブレーキ装置において、マスタシリンダ内にサーボ室を形成し、当該サーボ室のブレーキ液圧であるサーボ液圧に駆動されてマスタシリンダ内を摺動するマスタピストンと、マスタピストンに固定されている出力ロッドと、ブレーキ操作部材の操作により、マスタシリンダ内に反力室を形成しつつ、ブレーキ操作部材の操作量(以下「ブレーキ操作量」という)に応じて、出力ロッドに当接することなくマスタシリンダ内を摺動し、または、出力ロッドと一体となってマスタシリンダ内を摺動する入力ピストンと、回生トルクを取得する回生トルク取得部と、回生トルク取得部により取得された回生トルクに応じたブレーキ液圧である制御液圧を発生させる制御液圧発生部と、反力室に接続され、ブレーキ操作部材の操作量に応じたブレーキ液圧である反力液圧を発生させる反力液圧発生部と、反力液圧発生部に接続される反力液圧入力室と、制御液圧発生部に接続される制御液圧入力室と、サーボ室に接続されるサーボ液圧出力室と、が形成され、反力液圧から制御液圧を差し引いた液圧に応じたサーボ液圧をサーボ液圧出力室に発生させる機械式レギュレータと、を備えて構成することが可能である。
【0008】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、反力液圧入力室は制御液圧発生部に接続されており、制御液圧発生部と反力液圧入力室との間に設けられ、当該制御液圧発生部から反力液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する制御液圧入力制御弁と、反力液圧発生部と反力液圧入力室との間に設けられ、当該反力液圧発生部から反力液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する反力液圧入力制御弁と、車両状態を検出する車両状態検出手段と、制御液圧入力制御弁を開弁させ反力液圧入力制御弁を閉弁させるとともに、車両状態検出手段により検出されている車両状態に応じた制御液圧を制御液圧発生部により発生させて、ブレーキ操作部材の操作量に拘わらず自動的に反力液圧入力室を加圧する自動加圧制御手段と、を備えていることである。
【0009】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、制御液圧入力制御弁は常閉型の電磁弁であり、反力液圧入力制御弁は常開型の電磁弁であることである。
【0010】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、回生トルクを発生させることができない回生異常を検出する回生異常検出手段と、回生異常検出手段により回生異常であることが検出された場合に、制御液圧発生部による制御液圧を大気圧にして当該大気圧を制御液圧入力室に供給するとともに、反力液圧発生部による反力液圧を反力液圧入力室に供給する回生異常検出時制御手段と、を備えていることである。
【0011】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバと、反力液圧発生部とリザーバとの間に設けられ、当該反力液圧発生部と当該リザーバとの間のブレーキ液の流れを制御する反力液圧制御弁とを備え、反力液圧発生部とリザーバとの間のブレーキ液の流れが開放された状態で、反力液圧がブレーキ操作部材の操作量に拘わらず大気圧になることである。
【0012】
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項5において、反力液圧制御弁は常開型の電磁弁であることである。
【0013】
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、制御液圧発生部は、ブレーキ液を蓄圧するアキュムレータと、制御液圧入力室とアキュムレータとを接続する液圧増圧経路と、液圧増圧経路に設けられアキュムレータから制御液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する増圧制御弁と、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバと、制御液圧入力室とリザーバとを接続する液圧減圧経路と、液圧減圧経路に設けられ制御液圧入力室からリザーバへのブレーキ液の流れを制御する減圧制御弁と、を有して構成され、減圧制御弁は常開型の電磁弁であり、増圧制御弁は常閉型の電磁弁であることである。
【0014】
請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、制御液圧発生部は、ブレーキ液を蓄圧するアキュムレータと、制御液圧入力室とアキュムレータとを接続する液圧増圧経路と、液圧増圧経路に設けられアキュムレータから制御液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する増圧制御弁と、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバと、制御液圧入力室とリザーバとを接続する液圧減圧経路と、液圧減圧経路に設けられ制御液圧入力室からリザーバへのブレーキ液の流れを制御する減圧制御弁と、を有して構成され、増圧制御弁および減圧制御弁のいずれかに異常を検出する制御液圧発生部異常検出手段と、制御液圧発生部異常検出手段により増圧制御弁および減圧制御弁のいずれかに異常があることが検出された場合に、増圧制御弁を閉弁させ、減圧制御弁を開弁させる制御液圧発生部異常検出時制御手段と、を備えていることである。
【発明の効果】
【0015】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、ブレーキ操作部材が操作されると、反力液圧発生部によって、ブレーキ操作部材の操作量に応じたブレーキ液圧である反力液圧が機械的に発生される。この発生された反力液圧は、機械式レギュレータの反力液圧入力室に供給される。これにより、機械式レギュレータのサーボ液圧出力室にサーボ圧が発生し、当該サーボ圧がマスタシリンダのサーボ室に供給され、マスタ室にブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧が発生する。
【0016】
一方、制御液圧発生部は、回生トルクを取得する回生トルク取得部により取得された回生トルクに応じたブレーキ液圧である制御液圧を発生させる。この発生された制御液圧が、機械式レギュレータの制御液圧入力室に供給されると、機械式レギュレータにおいては、反力液圧入力室に供給されている反力液圧から、制御液圧入力室に供給されている制御液圧を差し引いた液圧に応じたサーボ液圧がサーボ液圧出力室に発生する。
【0017】
そして、この発生されたサーボ液圧は、マスタシリンダ内のサーボ室に供給される。これにより、ブレーキ操作部材の操作に応じたサーボ液圧によってマスタピストン部が駆動され、マスタシリンダ内のマスタ室に、ブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧が発生する。
【0018】
このように、ブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧をマスタシリンダ内のマスタ室に機械的に発生させた上で、回生トルクに応じたブレーキ液圧を差し引くことにより回生協調に対応させているため、ブレーキ操作部材のストロークなどを検出する検出装置を設けた従来のブレーキ装置と比較して、ブレーキ応答遅れを抑制することができる。
【0019】
回生トルクが0である場合すなわちブレーキ操作部材は操作されているが回生制動は行われていない場合には、制御液圧は発生されないため、サーボ液圧ひいてはマスタ室のブレーキ液圧は反力液圧に応じた液圧となる。一方、回生トルクが0でない場合すなわちブレーキ操作部材は操作され回生制動が行われている場合には、制御液圧は発生されるため、サーボ液圧ひいてはマスタ室のブレーキ液圧は反力液圧からその制御液圧を差し引いた液圧に応じた液圧となる。
【0020】
請求項2に記載の発明では、自動加圧制御手段により、制御液圧入力制御弁が開弁され反力液圧入力制御弁が閉弁されるとともに、制御液圧発生部で車両状態に応じた制御液圧が発生されると、当該制御液圧が機械式レギュレータの反力液圧入力室に供給され、反力液圧発生部の反力液圧が反力液圧入力室に供給されることはない。これにより、ブレーキ操作量に拘わらず、車両状態に応じたサーボ圧がサーボ液圧出力室に発生し、当該サーボ圧がマスタシリンダ内のサーボ室に供給され、マスタ室に車両状態に応じたブレーキ液圧が発生する。よって、車両状態に応じた自動加圧制御を行うことが可能である。例えば、自動加圧制御が必要な状態で車両状態に応じた自動加圧制御を実行することが考えられる。具体的には、ESC制御が必要な状態で車両状態としてのヨーレートに応じた自動加圧制御を自動的に実行したり、トラクションコントロールが必要な状態で車両状態としての車輪の空転に応じて自動加圧制御を自動的に実行したりする。また、自動加圧制御の実行モードへの切り替えスイッチがオンされた状態であることを条件に、自動加圧制御を実行することが考えられる。
【0021】
請求項3に記載の発明では、制御液圧入力制御弁が常閉型の電磁弁であり反力液圧入力制御弁が常開型の電磁弁であるため、電源失陥時に制御液圧入力制御弁が閉弁し反力液圧入力制御弁が開弁する。その結果、反力液圧発生部から機械式レギュレータの反力液圧入力室へのブレーキ液の流れは開放され、制御液圧発生部から反力液圧入力室へのブレーキ液の流れは遮断される。このように電源失陥時に、自動加圧制御を自動的に終了させるとともに、機械的に発生させた反力液圧によりブレーキ操作量に応じたブレーキ力を確保することができる。
【0022】
請求項4に記載の発明では、回生異常検出時に、制御液圧発生部により制御液圧が大気圧にされ、機械式レギュレータの制御液圧入力室に大気圧が供給され、反力液圧入力室に反力液圧発生部の反力液圧が供給される。これにより、サーボ液圧出力室に反力液圧に応じたサーボ液圧が発生し、当該サーボ液圧がマスタシリンダのサーボ室に供給され、マスタ室にブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧が発生する。このように、回生異常時に、機械的に発生させた反力液圧により回生トルク分の液圧を応答性よく補充することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明では、反力液圧制御弁を制御して反力室とリザーバとの間のブレーキ液の流れを開放すると、ブレーキ操作部材の操作に伴ってブレーキ操作部材に連動する部材(12c)が摺動しても反力液圧ひいてはサーボ液圧が発生されず、マスタピストン部はサーボ液圧により駆動されない。そのため、マスタピストン部は、ブレーキ操作に応じて、ブレーキ操作部材に連動する部材と一体となって摺動する。これにより、ブレーキ操作部材の操作力がマスタピストン部に伝わり、反力液圧がブレーキ操作部材に作用することはない。このように、ブレーキ操作部材の操作力は倍力されないが、操作力のみによる制動力は確実に確保することができる。
【0024】
このように操作力のみによる制動力を確実に確保すべき状態は、制御液圧発生部に異常がある場合であり、制御液圧発生部に異常がある状態としては、例えば、制御液圧発生部がアキュムレータと当該アキュムレータ内にブレーキ液を蓄圧するポンプと当該ポンプを駆動する電気モータとを有して構成されている場合には、アキュムレータ内の液圧が所定の閾値以下となっている状態や、ポンプに異常がある状態や、電気モータに異常がある場合が考えられる。
【0025】
請求項6に記載した発明では、請求項5において、反力液圧制御弁は常開型の電磁弁である。これにより、電気系が異常となっても、反力液圧制御弁は開弁されるので、ブレーキ操作部材の操作力のみによる制動力は確実に確保することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明では、電源失陥時に、制御液圧発生部において、常閉型の増圧制御弁が閉弁されてアキュムレータから液圧増圧経路を介する制御液圧入力室へのブレーキ液の流れが遮断される一方、常開型の減圧制御弁が開弁されて制御液圧入力室から液圧減圧経路を介するリザーバへのブレーキ液の流れが開放される。また機械式レギュレータの反力液圧入力室には、反力液圧発生部により発生された反力液圧が供給される。これにより、機械式レギュレータにおいて、制御液圧入力室の液圧は大気圧となり、反力液圧入力室の液圧は反力液圧に応じた液圧となるため、サーボ液圧出力室には反力液圧に応じたサーボ圧が発生する。このように、電源失陥時に、機械的に発生させた反力液圧により回生トルク分の液圧を応答性よく補充することができる。
【0027】
請求項8に記載の発明では、制御液圧発生部において、増圧制御弁および減圧制御弁のいずれかに異常があることが検出された場合に、増圧制御弁が閉弁されてアキュムレータから液圧増圧経路を介する制御液圧入力室へのブレーキ液の流れが遮断される一方、減圧制御弁が開弁されて制御液圧入力室から液圧減圧経路を介するリザーバへのブレーキ液の流れが開放される。また機械式レギュレータの反力液圧入力室には、反力液圧発生部により発生された反力液圧が供給される。これにより、機械式レギュレータにおいて、制御液圧入力室の液圧は大気圧となり、反力液圧入力室の液圧は反力液圧に応じた液圧となるため、サーボ液圧出力室には反力液圧に応じたサーボ圧が発生する。このように、制御液圧発生部の増圧制御弁および減圧制御弁のいずれかに異常がある場合、すなわち回生協調制御が不能である場合に、機械的に発生させた反力液圧により回生トルク分の液圧を応答性よく補充することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるブレーキ装置を適用した第1の実施形態を示す概要図である。
【図2】図1に示すブレーキ装置を示す概要図である。
【図3】図1に示すブレーキ装置において、反力液圧制御弁がオンされた状態を示す概要図である。
【図4】図1に示すブレーキ装置において、ブレーキペダルが踏まれた状態を示す概要図である。
【図5】図1に示すブレーキ装置において、ブレーキペダルが踏まれた状態であり、かつ、回生トルクに応じた制御液圧が供給されている状態を示す概要図である。
【図6】図1に示すブレーキECUで実行される制御プログラムを示すフローチャートである。
【図7】車速と回生トルク量との相関関係を示すマップである。
【図8】回生トルク量と目標制御液圧との相関関係を示すマップである。
【図9】アキュムレータ圧と目標制御液圧との差圧と、増圧制御弁のデューティ駆動値との相関関係を示すマップである。
【図10】目標制御液圧と、減圧制御弁のデューティ駆動値との相関関係を示すマップである。
【図11】本発明によるブレーキ装置の作動を示すタイムチャートである。上段から順番に車速、総制動力、回生トルクおよびホイールシリンダ圧(W/C圧)を示している。
【図12】本発明によるブレーキ装置を適用した第2の実施形態を示す概要図である。
【図13】図12に示すブレーキECUで実行される制御プログラムを示すフローチャートである。
【図14】本発明によるブレーキ装置において機械式レギュレータの変形例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1)第1の実施形態
以下、本発明に係る車両用のブレーキ装置をハイブリッド車に適用した第1の実施形態を図面を参照して説明する。図1はそのハイブリッド車の構成を示す概要図であり、図2はブレーキ装置の構成を示す概要図である。車両用のブレーキ装置は、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル11の操作に応じてマスタシリンダ13内にブレーキ液圧を発生させる。
【0030】
ハイブリッド車は、図1に示すように、ハイブリッドシステムによって駆動輪例えば左右前輪Wfl,Wfrを駆動させる車両である。ハイブリッド車は、エンジン1およびモータ2を備えている。エンジン1の駆動力は、動力分割機構3および動力伝達機構4を介して駆動輪に伝達されるようになっており、モータ2の駆動力は、動力伝達機構4を介して駆動輪に伝達されるようになっている。
【0031】
ハイブリッド車は、インバータ6を備えている。インバータ6は、モータ2および発電機5と直流電源としてのバッテリ7との間で電圧を変換するものである。エンジンECU8は、ハイブリッドECU9からの指令に基づいてエンジン1の回転数を調整する。ハイブリッドECU9は、インバータ6を通してモータ2および発電機5を制御する。ハイブリッドECU9はバッテリ7が接続されており、バッテリ7の充電状態、充電電流などを監視している。
【0032】
上述したモータ2、インバータ6およびバッテリ7から回生ブレーキ装置Aが構成されている。回生ブレーキ装置Aは、車両の速度に基づいた回生制動力をモータ2によって駆動される左右前輪Wfl,Wfrに発生させるものである。また、上述したブレーキ操作部材であるブレーキペダル11、反力液圧発生部12、マスタシリンダ13、リザーバ14、サーボ液圧調整装置15、制動液圧調整装置16、ブレーキECU17、およびホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrからブレーキ装置Bが構成されている。ブレーキ装置Bは、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに液圧制動力を直接付与して車両を制動させる。
【0033】
図1に示すように、ブレーキECU17はハイブリッドECU9に互いに通信可能に接続されており、車両の全制動力が油圧ブレーキだけの車両と同等となるようにモータ2が行う回生ブレーキと油圧ブレーキの協調制御(回生協調制御)を行なう。具体的には、ブレーキECU17は、運転者の制動要求すなわち制動操作状態に応じたブレーキ液圧を、ハイブリッドECU9から回生ブレーキ装置Aの目標値すなわち目標回生制動力を取得して、調圧する。また、ブレーキECU17は、運転者の制動要求以上の回生制動を行う場合には、ハイブリッドECU9に回生制動力の上限値を出力する。運転者の制動要求は、ブレーキペダル11のストローク(またはマスタシリンダ圧)に基づいて導出すればよい。回生制動力の上限値を導出する上限値処理の説明は割愛する。
【0034】
図2に示すように、ブレーキペダル11の近傍には、ブレーキペダル11が踏み込まれているか否か(ブレーキペダル11が操作中であるか否か)すなわち制動中であるか否かを検出するブレーキスイッチ11aが設けられている。このブレーキスイッチ11aはブレーキECU17に接続されており、検出信号がブレーキECU17に出力されるようになっている。
【0035】
ブレーキペダル11はプッシュロッド18を介して反力液圧発生部12に接続されている。反力液圧発生部12は、ボディー12aと、ボディー12a内を液密に摺動可能な入力ピストン12cと、入力ピストン12c内を同入力ピストン12cと相対移動可能かつ液密に摺動する出力ロッド12dと、ストロークシミュレータ12gとを備えている。
【0036】
反力液圧発生部12のボディー12aは、マスタシリンダ13のボディー13aに一体的に構成されている。ボディー12a内の空間(後述する穴12b)とボディー13a(後述するシリンダ穴13b)とは、隔壁12a1により隔てられている。ボディー12aには、入力ピストン12cの摺動方向(軸方向)に沿って延在する穴12bが形成されている。入力ピストン12cは、ボディー12aの穴12b内に配設されている。これにより、上述の如く入力ピストン12cがボディー12a内を液密に摺動可能となっている。入力ピストン12cの一端側には、プッシュロッド18が接続されている。プッシュロッド18には、フランジ部材18aが固定されている。フランジ部材18aとボディー12aとの間には付勢部材18b(例えばスプリング)が介装されている。付勢部材18bは、フランジ部材18aがボディー12aから離れる方向に付勢するものである。図に示していないが、入力ピストン12cは穴12bから抜けないようになっている。ブレーキペダル11が踏み込まれていないとき、入力ピストン12cは付勢部材18bの図示右方向への付勢力を受けながら所定位置(初期位置)に位置決めされている。
【0037】
入力ピストン12cは、有底筒状であり、軸方向に沿って延在する穴12c1が、入力ピストン12cの摺動方向のプッシュロッド18とは反対側に開口している。
【0038】
出力ロッド12dの入力ピストン12c側の部分は、入力ピストン12cの穴12c1内に配設されている。これにより、上述の如く出力ロッド12dが入力ピストン12c内を同入力ピストン12cと相対移動可能にかつ液密に摺動可能となっている。入力ピストン12cの穴12c1内において、出力ロッド12dとの間には離間室12eが形成され、ボディー12aの穴12b内において、入力ピストン12c、出力ロッド12dおよび隔壁12a1との間には反力室12fが形成されている。
【0039】
出力ロッド12dは、隔壁12a1により支持されている。詳しくは、出力ロッド12dは、隔壁12a1を貫通し、入力ピストン12cと反対側で第1ピストン13cに固定されている。
【0040】
入力ピストン12cには離間室12eに開口するポート12c2が形成され、ボディー12aにはポート12c2が開口し入力ピストン12cの摺動方向に延びる連通溝12a2が形成されるとともに連通溝12a2およびリザーバ14に開口するポート12a3が形成されている。これにより、離間室12eは、ポート12c2、連通溝12a2およびポート12a3を介してリザーバ14に連通している。
【0041】
反力室12fは、ポート12a4を介してリザーバ14に連通するとともに、ポート12a5に接続された液圧油路12hを介してストロークシミュレータ12gに接続されている。ポート12a4は、ブレーキペダル11が踏み込まれていない状態では反力室12fとリザーバ14とを連通する状態となり、ブレーキペダル11が踏み込まれた状態では入力ピストン12cにより閉鎖される位置に配設されている。
【0042】
ストロークシミュレータ12gは、一般的によく知られているものであり、ブレーキペダル11の操作状態に応じた大きさのストロークをブレーキペダル11に発生させるものである。ストロークシミュレータ12gはハウジング12g1内を液密に摺動するピストン12g2と、ハウジング12g1とピストン12g2との間に形成された液圧室12g3と、ピストン12g2を液圧室12g3の容積を減少させる方向に付勢するスプリング12g4を備えている。
【0043】
ブレーキペダル11が踏み込まれると、ポート12a4が入力ピストン12cにより閉塞されるため、反力室12fのブレーキ液はストロークシミュレータ12gに送出され、ブレーキペダル11の操作量に応じた反力液圧がストロークシミュレータ12gにおいて発生される。
【0044】
マスタシリンダ13は、ドライバによるブレーキ操作部材であるブレーキペダル11の操作力に応じて液圧(マスタシリンダ圧)を形成してホイールシリンダWC**に供給し、その液圧によって車輪W**に液圧制動力を発生させ得る装置である。
【0045】
マスタシリンダ13は、タンデム式のマスタシリンダであり、ボディー13aを備えている。ボディー13aには、シリンダ穴13bが形成されている。シリンダ穴13b内には、第1および第2ピストン13c,13dが液密に摺動可能に並べて配設されている。特許請求の範囲に記載のマスタピストン部は、第1ピストン13cおよび出力ロッド12dから構成される。
【0046】
ボディー13aのシリンダ穴13b内において、第1ピストン13cと隔壁12a1との間には、サーボ室13eが形成されている。マスタピストン13cは、サーボ室13eのブレーキ液圧であるサーボ液圧に駆動されてボディー13a内を摺動する。なお、第1ピストン13cと隔壁12a1とが当接するそれぞれの当接面は、両部材が当接してもサーボ室13eの容積が確保されるような構成となっている。
【0047】
ボディー13aのシリンダ穴13b内において、第1ピストン13cと第2ピストン13dとの間には、第1液圧室(マスタ室)13fが形成され、第2ピストン13dと底壁13a1との間には、第2液圧室(マスタ室)13gが形成されている。第1液圧室13f内には、第1ピストン13cと第2ピストン13dとの間に介装されて第1液圧室13fを拡張する方向に付勢する付勢部材13h(例えばスプリング)が配設されている。第2液圧室13g内には、第2ピストン13dと底壁13a1との間に介装されて第2液圧室13gを拡張する方向に付勢する付勢部材13i(例えばスプリング)が配設されている。
【0048】
サーボ室13eに液圧が供給されていないとき(例えばブレーキペダル11が踏み込まれていないとき)、第1ピストン13cは付勢部材13hによって付勢されて所定位置にあり、第2ピストン13dは付勢部材13iによって付勢されて所定位置にある(図2参照)。第1ピストン13cの所定位置は、第1ピストン13cが隔壁12a1に当接して位置決めされる位置であり、第1ピストン13cがポート13kを閉塞する直前位置となっている。第2ピストン13dの所定位置は、第2ピストン13dがポート13lを閉塞する直前位置に位置決め固定される位置である。
【0049】
マスタシリンダ13のボディー13aには、サーボ室13eと機械式レギュレータ15cとを連通するためのポート13jと、第1液圧室13fとリザーバ14とを連通するためのポート13kと、第2液圧室13gとリザーバ14とを連通するためのポート13lと、第1液圧室13fとホイールシリンダWC**とを制動液圧調整装置16を介して連通するためのポート13mと、第2液圧室13gとホイールシリンダ**とを制動液圧調整装置16を介して連通するためのポート13nと、が設けられている。
【0050】
サーボ液圧調整装置15は、圧力供給装置15a、制御液圧発生部15bおよび機械式レギュレータ15cを備えており、圧力供給装置15aからの圧力を受けた機械式レギュレータ15cによりブレーキペダル11の操作量に応じたサーボ液圧を形成してマスタシリンダ13のサーボ室13eに供給するものである。
【0051】
圧力供給装置15aは、ブレーキ液の液圧を比較的高圧で蓄圧する高圧力源であるアキュムレータ15a1と、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバ14と、リザーバ14のブレーキ液を吸入しアキュムレータ15a1に圧送するポンプ15a2と、ポンプ15a2を駆動させる電動モータ15a3を備えている。圧力供給装置15aは、アキュムレータ15a1に蓄圧されているブレーキ液の液圧(アキュムレータ圧)を圧力センサ15a4により検出することで、当該アキュムレータ圧を制御する。リザーバ14が貯留するブレーキ液は、略大気圧であればよく厳密に大気圧でなくてもよい。
【0052】
制御液圧発生部15bは、実回生実行値や車両状態やブレーキペダル11のストローク量に応じた制御液圧を発生させるものである。制御液圧発生部15bは、リザーバ14と、アキュムレータ15a1と、制御液圧入力室20cとアキュムレータ15a1とを接続する液圧増圧経路15b1と、液圧増圧経路15b1に設けられアキュムレータ15a1から制御液圧入力室20cへのブレーキ液の流れを制御する増圧制御弁15b2と、制御液圧入力室20cとリザーバ14とを接続する液圧減圧経路15b3と、液圧減圧経路15b3に設けられ制御液圧入力室20cからリザーバ14へのブレーキ液の流れを制御する減圧制御弁15b4と、を有して構成されている。
【0053】
増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4は、ブレーキECU17からの指令を受けて作動する電磁弁である。増圧制御弁15b2は常閉型のリニア電磁弁であり、減圧制御弁15b4は常開型のリニア電磁弁である。
【0054】
制御液圧発生部15bは、アキュムレータ15a1から制御液圧入力室20cに供給される液圧を増圧制御弁15b2によって調整すること、およびリザーバ14へのブレーキ液の排出(制御液圧入力室20cからリザーバ14に排出される液圧)を減圧制御弁15b4によって調整することにより、制御液圧を発生させる。なお、後述する制御液圧入力室20cやサーボ室13eの液圧を検出する圧力センサを設け、その圧力センサの検出信号をブレーキECU17に出力して制御液圧発生部15bにおいて制御液圧をフィードバック制御するようにしてもよい。
【0055】
機械式レギュレータ15cには、反力液圧発生部12、制御液圧発生部15bおよびマスタシリンダ13が接続されており、反力液圧による力から制御液圧による力を差し引いた力に応じた液圧であるサーボ圧を発生させるものである。機械式レギュレータ15cは、ハウジング21、調圧ピストン22、スプリング23、シリンダ部材24、環状部材25、弁体26、およびスプリング27を有して構成されている。
【0056】
機械式レギュレータ15cのハウジング21には、シリンダ穴21aが形成されると共に、高圧入力ポート21b、ドレンポート21c、反力液圧入力ポート21d、出力ポート21eおよび制御液圧入力ポート21fが形成されている。
【0057】
高圧入力ポート21bは液圧油路31を介してアキュムレータ15a1に接続されている。ドレンポート21cは液圧油路32を介してリザーバ14に接続されている。反力液圧入力ポート21dは液圧油路12hに接続されている液圧油路33を介して反力液圧発生部12の反力室12fおよびストロークシミュレータ12gに接続されている。出力ポート21eは液圧油路34を介してマスタシリンダ13のサーボ室13eに接続されている。
【0058】
制御液圧入力ポート21fは制御液圧発生部15bに接続されている。すなわち、制御液圧入力ポート21fは液圧増圧経路15b1を介してアキュムレータ15a1に接続されるとともに、液圧減圧経路15b3を介してリザーバ14に接続されている。本実施形態では、液圧増圧経路15b1と液圧減圧経路15b3とが1つとなって制御液圧入力ポート21fに接続されているが、液圧増圧経路15b1および液圧減圧経路15b3を制御液圧入力ポート21fに個別に接続してもよい。
【0059】
シリンダ穴21aには、調圧ピストン22が液密に摺動自在に配設されている。調圧ピストン22は、大径部22aと、大径部22aより小径である小径部22bと、小径部22bより小径であり小径部22bから突設された突設部22cとが一体的に形成されるように構成されている。調圧ピストン22の大径部22aの一側端(小径部22bが形成されていない側の端面)および小径部22bの他側端(突設部22cが形成されている側の端面)の各面積は、機械式レギュレータ15cが高圧入力ポート21bに加えられている液圧により反力液圧入力ポート21dに加えられている圧力に応じた液圧を出力ポート21eから出力することができるように設定されている。
【0060】
シリンダ部材24は穴24bを有する有底筒状に形成さている。シリンダ部材24は、その底部(隔壁部)24aを調圧ピストン22側に向けてシリンダ穴21a内に固定されている。隔壁部24aには貫通孔24a1が形成されている。シリンダ穴21a内において、調圧ピストン22の大径部22aの一側端(図示右端)とハウジング21の右閉塞端との間には反力液圧入力室20aが形成されている。また、調圧ピストン22の小径部22bの突設部22c側の他側端(図示左端側)とシリンダ部材24との間にはサーボ液圧出力室20bが形成されている。また、シリンダ部材24とハウジング21の左閉塞端との間には高圧入力室20dが形成されている。反力液圧入力室20aは反力液圧入力ポート21dに連通し、サーボ液圧出力室20bは出力ポート21eに連通し、高圧入力室20dは入力ポート21bに連通している。サーボ液圧出力室20bと高圧入力室20dとは隔壁部24aの貫通孔24a1を介して連通している。調圧ピストン22にはドレンポート21cに連通する連通路22dが形成されている。連通路22dは、突設部22cの先端から大径部22aの周側面に形成された連通溝22a1までを連通するように構成されている。環状に形成された連通溝22a1は、ドレンポート21cに臨んで配設されており、調圧ピストン22が往復動してもドレンポート21cとの連通が確保されるようになっている。
【0061】
調圧ピストン22の小径部22bの周側面とシリンダ穴21aの内周側面との間には、両部材22b,21aの間を液密に摺動可能である環状部材25が配設されている。調圧ピストン22の大径部22aの小径部22b側の他側端(図示左端)と環状部材25の一側端との間には制御液圧入力室20cが形成されている。制御液圧入力室20cは、環状部材25の外周側面に形成された連通溝25aを介して制御液圧入力ポート21fに連通している。環状に形成された連通溝25aは、制御液圧入力ポート21fに臨んで配設されており、環状部材25が往復動しても制御液圧入力ポート21fとの連通が確保されるようになっている。
【0062】
サーボ液圧出力室20bには、シリンダ部材24と環状部材25との間にスプリング23が配設されている。スプリング23は、環状部材25をシリンダ部材24から離間する方向に付勢し、ひいてはサーボ液圧出力室20bの容積を増大させる方向に調圧ピストン22を付勢している。
【0063】
反力液圧入力室20aに液圧が付与されていない場合(例えばブレーキペダル11の非作動時など)、スプリング23の付勢力によって調圧ピストン22は図示右方向に付勢され調圧ピストン22の一側端(右端)はシリンダ穴21aの右閉塞端に当接して位置決め固定される。このとき、後述する減圧弁は開状態となるため、出力ポート21eはサーボ液圧出力室20bおよび連通路22dを介してドレンポート21cに連通する。
【0064】
シリンダ部材24の穴24bには、ボール状の弁体26が移動自在に配設され、シリンダ部材24および弁体26を含んで圧力制御弁が構成されている。詳しくは、シリンダ部材24の隔壁部24aの弁体26側には、弁孔である貫通孔24a1の周辺に弁座24a2が形成されており、弁体26が弁座24a2に着脱可能になっている。貫通孔24a1は、調圧ピストン22の突設部22cが進退可能に形成されており、貫通孔24a1の内径は突設部22cの外径より大きく設定されている。調圧ピストン22の突設部22cの連通孔22dの開口端には、同連通孔22d周辺に弁体26の弁座22d1が形成されている。ハウジング21の左閉塞端と弁体26との間にはスプリング27が配設され、弁体26はスプリング27により弁座24a2側に付勢されている。これにより、常態では弁体26が弁座24a2に着座し、サーボ液圧出力室20bの容積を減少させる方向(図示左方向)へ所定距離だけ調圧ピストン22が摺動した状態では、弁体26が弁座24a2および弁座22d1に着座し、調圧ピストン22の突設部22cが図示左方向に更に摺動した状態では、弁座22d1に着座した状態の弁体26が突設部22cにより押されて弁座24a2から離脱するようになっている。また、弁座24a2から弁体26が離脱しかつ弁座22d1に弁体26が着座した状態の調圧ピストン22がサーボ液圧出力室20bの容積を増加させる方向(図示右方向)に摺動したときに、弁体26は弁座24a2に着座し、調圧ピストン22が図示右方向に更に摺動したときに、弁体26から弁座22d1が離脱するようになっている。
【0065】
このように、弁体26、弁座24a2及びスプリング27は、増圧弁を構成し、サーボ液圧出力室20bと高圧入力室20dとの間を連通又は遮断し、サーボ液圧出力室20b内の液圧(サーボ液圧)を増圧する。また、弁体26及び弁座22d1は減圧弁を構成し、サーボ液圧出力室20bと連通路22d(リザーバ14)との間を連通又は遮断し、サーボ液圧出力室20b内の液圧(サーボ液圧)を減圧する。
【0066】
このように構成された機械式レギュレータ15cの作動を図3−5を参照して説明する。
(反力液圧による調圧作動)
反力液圧入力室20aが増圧され、調圧ピストン22の大径部22aの小径部22bとは反対側の一側端に作用する力(=圧力×面積)が、調圧ピストン22の小径部22bの大径部22aとは反対側の他側端に作用する力(=圧力×面積)とスプリング23による付勢力の総和より大きくなれば、調圧ピストン22は左方向への移動を開始する。さらに、調圧ピストン22が左方向へ移動されると、弁座22d1が弁体26に当接して、減圧弁は閉状態となる。さらに、調圧ピストン22が左方向へ移動されて、調圧ピストン22がスプリング27の付勢力に抗して弁体26が左方向に移動されると、弁体26が弁座24a2から離脱して、増圧弁は開状態となる(図4参照)。
【0067】
増圧弁が開状態とされると、アキュムレータ15a1からの高圧の液圧が高圧入力ポート21b、高圧入力室20d、および貫通孔24a1を通ってサーボ液圧出力室20bに供給される。サーボ液圧出力室20b内の液圧が上昇して、大径部22aの一側端に作用する力が、調圧ピストン22の小径部22bの他側端に作用する力とスプリング23による付勢力の総和より小さくなれば、調圧ピストン22は右方向への移動を開始する。その後、弁体26が弁座24a2に着座して増圧弁が閉状態となり、狙いのブレーキ液圧となる。一方、ブレーキ操作量が減少する場合は、弁座22d1は弁体26から離脱して減圧弁が開状態となる。これにより、サーボ液圧出力室20bは連通路22dを介してドレンポート21c(リザーバ14)に連通するため、サーボ液圧出力室20b内の液圧は低下する。
【0068】
そして、サーボ液圧出力室20b内の液圧が低下して、調圧ピストン22の大径部22aの一側端に作用する力が、調圧ピストン22の小径部22bの他側端に作用する力とスプリング23による付勢力の総和より大きくなれば、調圧ピストン22は左方向への移動を再び開始する。このような調圧ピストン22の左右方向の移動によって、機械式レギュレータ15cは高圧入力ポート21bに加えられている圧力により反力液圧入力室20aに供給される液圧に応じた液圧を出力ポート21eから出力することができる。
【0069】
(制御液圧による調圧作動)
回生トルクが必要となった場合には、制御液圧発生部15bによりその回生トルクに応じたブレーキ液圧(制御液圧)を発生させ、その制御液圧を制御液圧入力ポート21fを介して制御液圧入力室20cに供給させる。これにより、環状部材25はシリンダ部材24に当接し、調圧ピストン22が環状部材25に対して右方向に移動する力が作用する。大径部22aの一側端に作用する力が、制御液圧とスプリング23による付勢力を差し引いた液圧に応じたサーボ液圧をサーボ液圧出力室20bに発生させている。
【0070】
車両用のブレーキ装置は、液圧油路12hと液圧油路32とを接続する液圧油路35を備えている。液圧油路35は、反力室12fおよびストロークシミュレータ12gをリザーバ14に接続するためのものである。液圧油路35には、反力室12fおよびストロークシミュレータ12gとリザーバ14との間のブレーキ液の流れを制御する反力液圧制御弁35aが配設されている。反力液圧制御弁35aは常開型の電磁弁であり、ブレーキECU17の指令に従って制御されるものである。
【0071】
制動液圧調整装置16は、一般的によく知られているものであり、マスタシリンダカット弁(マスタシリンダと保持弁および減圧弁と間を連通・遮断するもの)、保持弁、減圧弁、リザーバタンク、ポンプ、および電動モータなどを有して構成されている。制動液圧調整装置16は、ブレーキECU17からの指令を受けて、ブレーキペダル11の操作の有無に拘わらず、マスタシリンダ13からのブレーキ液圧を供給され各ホイールシリンダWC**に付与するブレーキ液圧すなわち車輪W**に付与する制動液圧を互いに独立して調整するESC制御(Electronic Stability Control;横滑りを防止する制御)を実行する。なお、制動液圧調整装置16は、ESC制御だけでなく、ABS制御(アンチロックブレーキ制御)、トラクションコントロール制御なども実行することができる。
【0072】
次に、上述したように構成された車両用のブレーキ装置の作動について図6のフローチャートに沿って説明する。ブレーキECU17は、例えば車両のイグニションスイッチ(図示省略)がオン状態にあるとき、上記フローチャートに対応したプログラムを所定の短時間毎に実行する。ブレーキECU17は、アキュムレータ圧が維持されるように、モータによるポンプの駆動制御を実行しつつ、圧力センサ15a4によりアキュムレータ圧(Acc圧)を検出し、そのアキュムレータ圧が0MPaより大きいか否か(すなわち圧力供給装置15aが正常に作動しているか否か)を判定する(ステップ102)。なお、ステップ102の代わりにまたはステップ102とともに、ポンプ15a2もしくはモータ15a3が異常であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0073】
ブレーキECU17は、アキュムレータ圧が0MPa(大気圧)以下である場合には、ステップ102で「NO」と判定し、全ての制御弁(ソレノイド;増圧制御弁15b2、減圧制御弁15b4、反力液圧制御弁35a、制御液圧入力制御弁36a、反力液圧入力制御弁33a)をオフ(非通電)する(ステップ104)とともに、ハイブリッドECU9(図6中では「HV」と記載している。)に回生要求無を指示する(ステップ106)。ハイブリッドECU9では、回生要求無を受けて、回生制動を発生させる制御(回生制御)が実行されない。これにより、車両には、回生制動力が付与されず、液圧制動力のみが付与されることとなる。
【0074】
ブレーキECU17は、アキュムレータ圧が0MPa0より大きい場合には、ステップ102で「YES」と判定し、ステップ108以降の処理を実行する。ステップ108においては、各制御弁の通電モニタ状態に基づいて各制御弁が異常であるか否かを判定する。
【0075】
ブレーキECU17は、各制御弁が異常であると判定した場合には、ステップ110で「NO」と判定し、全ての制御弁(ソレノイド;増圧制御弁15b2、減圧制御弁15b4、反力液圧制御弁35a、制御液圧入力制御弁36a、反力液圧入力制御弁33a)をオフ(非通電)する(ステップ104)とともに、ハイブリッドECU9に回生要求無を指示する(ステップ106)。これにより、制御弁が異常である場合、すなわち正常な制御を行うことができない場合には、不適切なブレーキ制御の実行を防止することができる。
【0076】
ブレーキECU17は、各制御弁が正常であると判定した場合には、ステップ110で「YES」と判定し、ステップ112以降の処理を実行する。ブレーキECU17は、ステップ112において、反力液圧制御弁35aをオン(通電)する(図3参照)。これにより、反力液圧制御弁35aが通電されて閉状態にされることで、ブレーキペダル11の操作量に応じた反力液圧がストロークシミュレータ12gにより発生可能な状態となる。
【0077】
なお、図2,3は、ブレーキペダル11が操作されていない状態(非制動状態;初期状態)を示す図である。初期状態においては、入力ピストン12cは初期位置(図2,3に示す位置)にある。反力液圧は発生されないので、機械式レギュレータ15cの調圧ピストン22は初期位置(図2,3に示す位置)にある。サーボ液圧出力室20bは、連通路22d、ドレンポート21cおよび液圧油路32を介してリザーバ14に連通しているので、サーボ液圧は大気圧と等しい。よって、第1ピストン(マスタピストン部)13cおよび第2ピストン13dも初期位置(図2,3に示す位置)にある。マスタシリンダ13からの制動液圧はホイールシリンダWC**に付与されない。
【0078】
ブレーキECU17は、ステップ114において、車両が制動中であるか否かを判定する。車両が制動中であるか否かの判定は、ブレーキスイッチ11aの検出信号に基づいて判定される。ブレーキスイッチ11aがオン信号であれば、ブレーキペダル11が踏まれているので、制動中であると判定することができる。
【0079】
ブレーキECU17は、制動中でないと判定した場合には、ステップ114で「NO」と判定し、ステップ106と同様にハイブリッドECU9に回生要求無を指示する(ステップ116)。これにより、車両に回生制動力が付与されることを禁止することができる。さらに、ブレーキECU17は、ステップ118において、制御液圧発生部15bの増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4をオフ(非通電)する(ステップ118)ことで、増圧制御弁15b2は閉状態となり減圧制御弁15b4は開状態となる。これにより、制御液圧発生部15bから制御液圧が供給されることを確実に防止することができる。
【0080】
一方、制動中であると判定した場合には、ブレーキECU17は、ステップ114で「YES」と判定し、ハイブリッドECU9に回生要求有を指示する(ステップ120)。ハイブリッドECU9は、回生要求が有るので、回生制動を発生させる制御(回生制御)を実行する。このとき、回生トルク量は、ハイブリッドECU9にて回生トルク量と車速との相関関係を示すマップ(図7に示す)と検出される車速とに基づいて決定される。このマップにおいては、車速が所定速度Vb(例えば5km/h)未満であるときには、車速が大きくなるほど回生トルク量は大きくなり、車速が所定速度Vb以上であり所定速度Va(例えば20km/h)未満であるときには、回生トルク量は一定であり、車速が所定速度Va以上であるときには、回生トルク量は車速が大きくなるにしたがって小さくなるように設定されている。なお、ステップ120において、ストローク量(ブレーキ操作量)を検出し、その検出値に基づいて回生上限値を算出し、回生上限値をハイブリッドECU9に指示してもよい。これにより、ハイブリッドECU9の回生効率は総制動力が変動せず最大になる。バッテリ7が満充電状態である場合などそれ以上回生制御をすることができない状況である場合には、回生制御は実行されない。すなわち、回生トルク量は0となる。
【0081】
さらに、ブレーキECU17は、ステップ122において、ハイブリッドECU9から決定された回生トルク量を取得(受信)する。ブレーキECU17は、取得した回生トルク量が0でないか否か(ハイブリッドECU9からの回生トルク量があるか否か)をハイブリッドECU9から取得した回生トルク量に基づいて判定する。取得した回生トルク量が0である場合には、ブレーキECU17は、ステップ124で「NO」と判定し、ステップ118において制御液圧発生部15bの増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4をオフ(非通電)する。これにより、車両には回生制動力が付与されず液圧制動力のみが付与されることとなる。なお、入力した回生トルク量が0である場合は、上述したように回生制御をすることができない状況である場合、例えばバッテリ7が満充電である場合である。
【0082】
このとき、図4に示すように、ブレーキペダル11が踏み増しされると、ブレーキペダル11の操作量に応じた反力液圧がストロークシミュレータ12gにより発生される。この反力液圧が機械式レギュレータ15cの反力液圧入力室20aに供給される。反力液圧入力室20aの容積が拡大するため調圧ピストン22が左方向に移動され、弁座22d1が弁体26に着座することで減圧弁が閉状態となりさらに弁体26が弁座24a2から離脱することで増圧弁が開状態となる。アキュムレータ15a1からのアキュムレータ圧が、液圧油路31、高圧入力ポート21b、高圧入力室20dおよび貫通孔24a1を介してサーボ液圧出力室20bに導入される。その結果、調圧ピストン22の両端にかかる力がバランスすることで、反力液圧入力室20aに供給されている反力液圧に応じたサーボ液圧がサーボ液圧出力室20bひいてはサーボ室13eに発生し、ブレーキペダル11の操作に応じたブレーキ液圧がマスタシリンダ13内に発生する。
【0083】
一方、入力した回生トルク量が0でない場合(回生トルク量がある場合)には、ブレーキECU17は、ステップ124で「YES」と判定し、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4を駆動させて、取得した回生トルク量に応じた制御液圧を発生させる。すなわち、ブレーキECU17は、回生トルク量に応じた目標制御液圧をマップから導出し(ステップ126)、その導出した目標制御液圧に応じて増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4を駆動させる(ステップ128)。
【0084】
具体的には、ステップ126においては、ブレーキECU17は、目標制御液圧を、目標制御液圧と回生トルク量との相関関係を示すマップ(図8に示す)とハイブリッドECU9から入力した回生トルク量とに基づいて導出する。例えば図8に示すマップにおいては、回生トルク量が大きくなるにしたがって目標制御液圧が大きくなるように設定されている。
【0085】
ステップ128においては、最初に、ブレーキECU17は、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のデューティ駆動値(Duty駆動値)を導出する。増圧制御弁15b2のデューティ駆動値は、アキュムレータ圧と目標制御液圧との差圧と増圧制御弁15b2のデューティ駆動値との相関関係を示すマップ(図9に示す)およびアキュムレータ圧と目標制御液圧との差圧に基づいて導出される。このマップにおいては、目標制御液圧が0であるときには、差圧はアキュムレータ圧と同一となり、目標制御液圧がアキュムレータ圧であるときには、差圧は0となる。よって、差圧が大きくなるにしたがってデューティ駆動値が小さくなるように設定されている。すなわち、差圧が小さいほど駆動電流を大きくして増圧制御弁の開度を大きくするようになっている。
【0086】
また、減圧制御弁15b4のデューティ駆動値は、目標制御液圧と減圧制御弁15b4のデューティ駆動値との相関関係を示すマップ(図10に示す)および目標制御液圧に基づいて導出される。例えば図10に示すマップにおいては、差圧が大きくなるにしたがってデューティ駆動値が大きくなるように設定されている。すなわち、差圧が大きいほど駆動電流を大きくして減圧制御弁の開度を小さくするようになっている。
【0087】
次に、ブレーキECU17は、先に導出した増圧制御弁15b2のデューティ駆動値で増圧制御弁15b2を制御するとともに、先に導出した減圧制御弁15b4のデューティ駆動値で減圧制御弁15b4を制御する。
【0088】
このとき、図5に示すように、回生協調制御が行われる。回生トルクが必要となった場合、液圧制動力はその回生トルク分の制動力を減じてホイールシリンダWC**に供給することで、ブレーキペダル11に相当する総制動力を達成している。そこで、回生トルクに応じたブレーキ液圧を減じて発生すべく、制御液圧発生部15bからその回生トルクに応じたブレーキ液圧(制御液圧)が制御液圧入力ポート21fを介して制御液圧入力室20cに供給される。すなわち、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4が通電されてリニア制御される位置とされ、通電する電流に応じて出力圧力を調整することで、所望の制御液圧が制御液圧入力室20cに供給される。
【0089】
その結果、制御液圧による力(=環状面積×制御液圧)が、調圧ピストン22の小径部22b側(一端側)端に作用して調圧ピストン22が右方向に移動する。これにより、機械式レギュレータ15cでは、反力液圧による力から制御液圧による力を差し引いた力に相当する液圧に応じたサーボ液圧がサーボ液圧出力室20bに発生する。こうして、総制動力から回生トルク分の制動力を減じたブレーキ液圧がマスタシリンダ13に発生される。
【0090】
なお、ブレーキペダル11のストロークを検出するストロークセンサ、ブレーキペダル11の操作力を検出する踏力センサを設けた場合には、検出されるストロークや踏力に応じて回生トルクを導出するようにしてもよい。
【0091】
さらに、図11に示すタイムチャートを参照して説明する。走行中の車両において、時刻t1においてドライバによってブレーキペダル11が踏み込まれると、ブレーキペダル11の操作量に応じた総制動力が、踏み込みが解除されるまで車両に付与される。総制動力は回生トルクと液圧制動力との合計の制動力である。図11では、総制動力は一定であり、時刻t1から時刻t2までの期間には回生トルクが所定の比率で増大し、時刻t4から時刻t5までの期間には回生トルクが所定の比率で減少するものとする。
【0092】
時刻t1は制動が開始されるタイミングであり、時刻t2は、上記所定の比率で導出された回生トルクと、図7に示すマップおよび車速から導出した回生トルクとが同一となるタイミングである。時刻t2から時刻t4までの間においては、回生トルクは図7に示すマップと車速とから導出される。時刻t5以降であってブレーキペダル11が踏み込まれている間においては、車両は停止しているので回生トルクは発生させ得ない。
【0093】
ステップ126,128の処理で説明したように、回生トルクに相当する制御液圧が制御液圧発生部15bによって発生される。そして、機械式レギュレータ15cは、反力液圧から制御液圧を差し引いた液圧に応じたサーボ液圧をサーボ液圧出力室20bに発生させている。よって、総制動力から回生トルク分の制動力を減じたブレーキ液圧がマスタシリンダ13に発生され、時刻t1以降において図11に示すようにホイールシリンダWC**に供給される。
【0094】
なお、上述したステップ102,108,110の処理は、回生トルクを発生させることができない回生異常を検出する回生異常検出手段であり、上述したステップ104の処理は、回生異常検出手段により回生異常であることが検出された場合に、制御液圧発生部15bにより制御液圧として大気圧を発生させる回生異常検出時制御手段である。
【0095】
また、上述したステップ108,110の処理は、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のいずれかに異常を検出する制御液圧発生部異常検出手段であり、上述したステップ104の処理は、制御液圧発生部異常検出手段により増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のいずれかに異常があることが検出された場合に、増圧制御弁15b2を閉弁させ、減圧制御弁15b4を開弁させる制御液圧発生部異常検出時制御手段である。
【0096】
上述した本実施形態によれば、ブレーキペダル11が操作されると、反力液圧発生部12によって、ブレーキペダル11の操作量に応じたブレーキ液圧である反力液圧が機械的に発生される。この発生された反力液圧は、機械式レギュレータ15cの反力液圧入力室20aに供給される。これにより、機械式レギュレータ15cのサーボ液圧出力室20bにサーボ圧が発生し、当該サーボ圧がマスタシリンダ13のサーボ室13eに供給され、マスタ室13f、13gにブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧が発生する。
【0097】
一方、制御液圧発生部15bは、回生トルクを取得する回生トルク取得部(ステップ122)により取得された回生トルクに応じたブレーキ液圧である制御液圧を発生させる。この発生された制御液圧が、機械式レギュレータ15cの制御液圧入力室20cに供給されると、機械式レギュレータ15cにおいては、反力液圧入力室20aに供給されている反力液圧による力から、制御液圧入力室20cに供給されている制御液圧による力を差し引いた力に相当する液圧に応じたサーボ液圧がサーボ液圧出力室20bに発生する。
【0098】
そして、この発生されたサーボ液圧は、マスタシリンダ13内のサーボ室13eに供給される。これにより、ブレーキペダル11の操作に応じたサーボ液圧によってマスタピストン部13c、12dが駆動され、マスタシリンダ13内のマスタ室13g、13fに、ブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧が発生する。
【0099】
このように、ブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧をマスタシリンダ13内のマスタ室13g、13fに機械的に発生させた上で、回生トルクに応じたブレーキ液圧を差し引くことにより回生協調に対応させているため、ブレーキペダル11のストロークなどを検出する検出装置を設けた従来のブレーキ装置と比較して、ブレーキ応答遅れを抑制することができる。
【0100】
回生トルクが0である場合すなわちブレーキペダル11は操作されているが回生制動は行われていない場合には、制御液圧は発生されないため、サーボ液圧ひいてはマスタ室13f、13gのブレーキ液圧は反力液圧に応じた液圧となる。一方、回生トルクが0でない場合すなわちブレーキペダル11は操作され回生制動が行われている場合には、制御液圧は発生されるため、サーボ液圧ひいてはマスタ室13g、13fのブレーキ液圧は反力液圧からその制御液圧を差し引いた液圧に応じた液圧となる。
【0101】
また、機械式レギュレータ15cにて、制動力が確保され、回生トルクを取得してから調圧するため、ブレーキペダル11のストロークなどを検出する検出装置を設け回生協調用のブレーキ液圧を作り、急制動を検出して切り替えを行う従来の構成と比較して、ブレーキペダル11を操作する際に操作の応答性を確保することができる。
【0102】
さらに、回生協調制御中においては、回生制動力分の制御液圧を機械式レギュレータ15cの制御液圧入力室20cに加えることにより、マスタシリンダ13内に発生されるブレーキ液圧を回生制動力分減少させている。この回生協調制御中に、回生制動力が失われた場合には、加えられている液圧を減ずることによりその失われた分を補充することができる。このとき、減ずる方法は、従来のように増大する方法に比べて、大容量のポンプやアキュムレータを設置することなく、しかも早急に行うことができる。よって、回生制動力が失われた場合であっても、装置自体の大型化・高コスト化を招くことなく、かつ、制御液圧の増圧をすることなく、応答性よく要求制動力を確保することができるブレーキ装置を提供することができる。
【0103】
また、回生トルクを発生させることができない回生異常を検出する回生異常検出手段(ステップ102,108,110)と、回生異常検出手段により回生異常であることが検出された場合に、制御液圧発生部15bにより制御液圧として大気圧を発生させる回生異常検出時制御手段(ステップ104)と、を備えている。よって、回生異常検出時に、制御液圧発生部15bにより制御液圧が大気圧にされ、機械式レギュレータ15cの制御液圧入力室20cに大気圧が供給され、反力液圧入力室20aに反力液圧発生部12の反力液圧が供給される。これにより、サーボ液圧出力室20bに反力液圧に応じたサーボ液圧が発生し、当該サーボ液圧がマスタシリンダ13のサーボ室13eに供給され、マスタ室13f、13gにブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧が発生する。このように、回生異常時に、機械的に発生させた反力液圧により回生トルク分の液圧をブレーキペダルフィーリング(ストローク対踏力の特性)の変化なく応答性よく補充することができる。
【0104】
また、制御液圧発生部15bは、ブレーキ液を蓄圧するアキュムレータ15a1と、制御液圧入力室20cとアキュムレータ15a1とを接続する液圧増圧経路15b1と、液圧増圧経路15b1に設けられアキュムレータ15a1から制御液圧入力室20cへのブレーキ液の流れを制御する増圧制御弁15b2と、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバ14と、制御液圧入力室20cとリザーバ14とを接続する液圧減圧経路15b3と、液圧減圧経路15b3に設けられ制御液圧入力室20cからリザーバ14へのブレーキ液の流れを制御する減圧制御弁15b4と、を有して構成され、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のいずれかに異常を検出する制御液圧発生部異常検出手段(ステップ108,110)と、制御液圧発生部異常検出手段により増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のいずれかに異常があることが検出された場合に、増圧制御弁15b2を閉弁させ、減圧制御弁15b4を開弁させる制御液圧発生部異常検出時制御手段(ステップ104)と、を備えている。
【0105】
よって、制御液圧発生部15bにおいて、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のいずれかに異常があることが検出された場合に、増圧制御弁15b2が閉弁されてアキュムレータ15a1から液圧増圧経路15b1を介する制御液圧入力室20cへのブレーキ液の流れが遮断される一方、減圧制御弁15b4が開弁されて制御液圧入力室20cから液圧減圧経路15b3を介するリザーバ14へのブレーキ液の流れが開放される。また機械式レギュレータ15cの反力液圧入力室20aには、反力液圧発生部12により発生された反力液圧が供給される。これにより、機械式レギュレータ15cにおいて、制御液圧入力室20cの液圧は大気圧となり、反力液圧入力室20aの液圧は反力液圧に応じた液圧となるため、サーボ液圧出力室20bには反力液圧に応じたサーボ圧が発生する。このように、制御液圧発生部15bの増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のいずれかに異常がある場合、すなわち回生協調制御が不能である場合に、機械的に発生させた反力液圧により回生トルク分の液圧を応答性よく補充することができる。
【0106】
反力液圧制御弁35aを制御して反力室12fとリザーバ14との間のブレーキ液の流れを開放すると、ブレーキペダル11の操作に伴ってブレーキペダル11に連動する部材である入力ピストン12cが摺動しても反力液圧ひいてはサーボ液圧が発生されず、マスタピストン部13c、12dはサーボ液圧により駆動されない。そのため、マスタピストン部13c、12dは、ブレーキ操作に応じて、ブレーキペダル11に連動する入力ピストン12cと一体となって摺動する。これにより、ブレーキペダル11の操作力がマスタピストン部13c、12dに伝わり、反力液圧がブレーキペダル11に作用することはない。このように、ブレーキペダル11の操作力は倍力されないが、操作力のみによる制動力は確実に確保することができる。
【0107】
このように操作力のみによる制動力を確実に確保すべき状態は、制御液圧発生部15bに異常がある場合であり、制御液圧発生部15bに異常がある状態としては、例えば、制御液圧発生部15bがアキュムレータ15a1と当該アキュムレータ15a1内にブレーキ液を蓄圧するポンプ15a2と当該ポンプ15a2を駆動する電気モータ15a3とを有して構成されている場合には、アキュムレータ15a1内の液圧が所定の閾値以下となっている状態や、ポンプ15a2に異常がある状態や、電気モータ15a3に異常がある場合が考えられる。
【0108】
また、反力室12fはリザーバ14に接続されており、反力室12fとリザーバ14との間に設けられ、当該反力室12fと当該リザーバ14との間のブレーキ液の流れを制御する反力液圧制御弁35aと、アキュムレータ15a1を蓄圧するポンプ15a2のモータ15a3と、をさらに備え、アキュムレータ15a1が低圧であり、または、ポンプ15a2もしくはモータ15a3が異常である場合には、反力液圧制御弁35aを開弁させ反力室12fとリザーバ14とを連通させる。これにより、アキュムレータ15a1が低圧であり、または、ポンプ15a2もしくはモータ15a3が異常である場合には、ブレーキペダル11の操作力のみによる制動力は確実に確保することができる。
【0109】
また、反力液圧制御弁35aは常開型の電磁弁である。これにより、電気系が異常となっても、反力液圧制御弁35aは開弁されるので、ブレーキペダル11の操作力のみによる制動力は確実に確保することができる。
【0110】
また、減圧制御弁15b4は常開型のリニア電磁弁であり、増圧制御弁15b2は常閉型のリニア電磁弁である。よって、電源失陥時に、制御液圧発生部15bにおいて、常閉型の増圧制御弁15b2が閉弁されてアキュムレータ15a1から液圧増圧経路15b1を介する制御液圧入力室20cへのブレーキ液の流れが遮断される一方、常開型の減圧制御弁15b4が開弁されて制御液圧入力室20cから液圧減圧経路15b3を介するリザーバ14へのブレーキ液の流れが開放される。また機械式レギュレータ15cの反力液圧入力室20aには、反力液圧発生部12により発生された反力液圧が供給される。これにより、機械式レギュレータ15cにおいて、制御液圧入力室20cの液圧は大気圧となり、反力液圧入力室20aの液圧は反力液圧に応じた液圧となるため、サーボ液圧出力室20bには反力液圧に応じたサーボ圧が発生する。このように、電源失陥時に、機械的に発生させた反力液圧により回生トルク分の液圧を応答性よく補充することができる。
【0111】
2)第2の実施形態
次に、本発明に係るブレーキ装置の第2の実施形態について図12を参照して説明する。図12はブレーキ装置の構成を示す概要図である。本第2の実施形態は、第1の実施形態のブレーキ装置を自動加圧機能が追加されたものである。同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0112】
ブレーキ装置においては、液圧油路33に反力液圧入力制御弁33aが設けられている。反力液圧入力制御弁33aは、反力室12fと反力液圧入力室20aとの間に設けられ、反力室12fから反力液圧入力室20aへのブレーキ液の流れを制御する。反力液圧入力制御弁33aは常開型の電磁弁である。
【0113】
また、反力液圧入力室20aは制御液圧入力室20cに液圧油路36を介して接続されている。液圧油路36には制御液圧入力制御弁36aが設けられている。制御液圧入力制御弁36aは、制御液圧入力室20cと反力液圧入力室20aとの間に設けられ、制御液圧入力室20cから反力液圧入力室20aへのブレーキ液の流れを制御する。すなわち、アキュムレータ15a1は制御液圧入力制御弁36aを介して反力液圧入力室20aに接続されている。
【0114】
また、ブレーキ装置は、上述した制動液圧調整装置16に代えて制動液圧調整装置19を設けている。制動液圧調整装置19は、一般的によく知られているものであり、保持弁、減圧弁、リザーバタンク、ポンプ、および電動モータなどを有して構成されている。制動液圧調整装置19は、ブレーキECU17からの指令を受けて、マスタシリンダ13からのブレーキ液圧を供給され各ホイールシリンダWC**に付与するブレーキ液圧すなわち車輪W**に付与する制動液圧を調整するABS御(アンチロックブレーキ制御)を実行する。制動液圧調整装置19も、車輪速度センサS**を備えている。
【0115】
上述したように構成された車両用のブレーキ装置の作動について図13のフローチャートに沿って説明する。ブレーキECU17は、例えば車両のイグニションスイッチ(図示省略)がオン状態にあるとき、上記フローチャートに対応したプログラムを所定の短時間毎に実行する。ブレーキECU17は、車両状態を検出する(ステップ202)。例えば、車両状態は車両のアンダステア状態、オーバステア状態である。具体的には、実ヨーレートを検出し、舵角ヨーレートとの偏差(ヨーレート偏差)を演算し、そのヨーレート偏差に基づいてアンダステア状態であるかオーバステア状態であるかニュートラルステア状態を判定する。また、車両状態は駆動輪のスリップ状態がある。この場合には、駆動輪の車輪速度を車輪速度センサS**によって検出する。
【0116】
ブレーキECU17は、車両状態の検出結果に基づいて自動加圧制御が必要か否かを判定する(ステップ204)。ブレーキECU17は、自動加圧制御が必要でないと判定した場合には、ステップ204で「NO」と判定し、ステップ206で通常制御を行う。通常制御においては、反力液圧入力制御弁33aはオフ(非通電)されて開状態となり、制御液圧入力制御弁36aもオフ(非通電)されて閉状態となる。このとき、上述した第1の実施形態と同様に、機械式レギュレータ15cにおいては、反力室12fから反力液圧入力室20aに供給されている反力液圧から、制御液圧入力室20cに供給されている制御液圧を差し引いた液圧に応じたサーボ液圧がサーボ液圧出力室20bで発生される。詳述すると、回生トルクが0であるときすなわちブレーキペダル11は操作されているが回生制動は行われていない場合には、制御液圧は発生されないため、サーボ液圧は反力液圧に応じた液圧となる。一方、回生トルクが0でないときすなわちブレーキペダル11は操作され回生制動が行われている場合には、制御液圧は発生されるため、サーボ液圧は反力液圧からその制御液圧を差し引いた液圧に応じた液圧となる。
【0117】
ブレーキECU17は、自動加圧制御が必要であると判定した場合には、ステップ204で「YES」と判定し、ステップ208で自動加圧制御を行う。自動加圧制御においては、反力液圧入力制御弁33aはオン(通電)されて閉状態となり、制御液圧入力制御弁36aもオン(通電)されて開状態となる。これにより、制御液圧発生部15bから反力液圧入力室20aに制御液圧が供給されても、その供給された制御液圧が反力室12fに排出されることはない。
【0118】
制御液圧発生部15bからの制御液圧は、反力液圧入力室20aおよび制御液圧入力室20cの両入力室に供給されているが、受圧面積は反力液圧入力室20aの方が十分大きいため、調圧ピストン22は自動加圧制御に応じたサーボ液圧が発生する位置でバランスしてサーボ液圧が保持される。
【0119】
また、制御液圧発生部15bからの制御液圧は、ESC制御やトラクションコントロール制御に必要な所望の液圧に設定されている。増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4が制御されて、設定された所望の液圧が発生される。
【0120】
上述した第2の実施形態によれば、反力液圧入力室20aは制御液圧発生部15bに接続されており、制御液圧発生部15bと反力液圧入力室20aとの間に設けられ、当該制御液圧発生部15bから反力液圧入力室20aへのブレーキ液の流れを制御する制御液圧入力制御弁36aと、反力液圧発生部12と反力液圧入力室20aとの間に設けられ、当該反力液圧発生部12から反力液圧入力室20aへのブレーキ液の流れを制御する反力液圧入力制御弁33aと、車両状態を検出する車両状態検出手段(ステップ202)と、制御液圧入力制御弁36aを開弁させ反力液圧入力制御弁33aを閉弁させるとともに、車両状態検出手段(ステップ202)により検出されている車両状態に応じた制御液圧を制御液圧発生部15bにより発生させて、ブレーキペダル11の操作量に拘わらず自動的に反力液圧入力室20aを加圧する自動加圧制御手段(ステップ208)と、を備えている。
【0121】
よって、自動加圧制御手段(ステップ208)により、制御液圧入力制御弁36aが開弁され反力液圧入力制御弁33aが閉弁されるとともに、制御液圧発生部15bで車両状態に応じた制御液圧が発生されると、当該制御液圧が機械式レギュレータ15cの反力液圧入力室20aに供給され、反力液圧発生部12の反力液圧が反力液圧入力室20aに供給されることはない。これにより、ブレーキ操作量に拘わらず、車両状態に応じたサーボ圧がサーボ液圧出力室20bに発生し、当該サーボ圧がマスタシリンダ13内のサーボ室13eに供給され、マスタ室13f、13gに車両状態に応じたブレーキ液圧が発生する。よって、車両状態に応じた自動加圧制御を行うことが可能である。例えば、自動加圧制御が必要な状態で車両状態に応じた自動加圧制御を実行することが考えられる。具体的には、制動液圧調整装置19にて、ESC制御が必要な状態で車両状態としてのヨーレートに応じた自動加圧制御を自動的に実行したり、トラクションコントロールが必要な状態で車両状態としての車輪の空転に応じた自動加圧制御を自動的に実行したりする。また、自動加圧制御の実行モードへの切り替えスイッチがオンされた状態であることを条件に、自動加圧制御を実行することが考えられる。
【0122】
また、制御液圧入力制御弁36aが常閉型の電磁弁であり反力液圧入力制御弁33aが常開型の電磁弁であるため、電源失陥時に制御液圧入力制御弁36aが閉弁し反力液圧入力制御弁33aが開弁する。その結果、反力液圧発生部12から機械式レギュレータ15cの反力液圧入力室20aへのブレーキ液の流れは開放され、制御液圧発生部15bから反力液圧入力室20aへのブレーキ液の流れは遮断される。このように電源失陥時に、自動加圧制御を自動的に終了させるとともに、機械的に発生させた反力液圧によりブレーキ操作量に応じたブレーキ力を確保することができる。
【0123】
3)変形例
上述した第1および第2の実施形態において、機械式レギュレータ15cの変形例について図14を参照して説明する。図14に示す機械式レギュレータ115cは、環状部材25が削除された点、調圧ピストン122が主ピストン122aと副ピストン122fとを有して構成された点、およびシリンダ穴21hが形成された点が機械式レギュレータ15cと異なる点である。機械式レギュレータ15cと同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0124】
ハウジング21には、シリンダ穴21aとシリンダ穴21hが隔壁21iにより区画されて形成されている。シリンダ穴21aには、調圧ピストン122の主ピストン122aが液密かつ摺動可能に配設されている。シリンダ穴21hには、調圧ピストン122の副ピストン122fが液密かつ摺動可能に配設されている。隔壁21iには、主ピストン122aと副ピストン122fとを連結する連結部122eが液密かつ摺動可能に貫設されている。
【0125】
主ピストン122aの一側端(右端)と隔壁21iとの間には、反力液圧入力室20aが形成されている。主ピストン122aの他側端(左端)から突設部22cが突設されている。主ピストン122aの周側面には連通溝22a1が形成されている。
【0126】
副ピストン122fの他側端(左端)と隔壁21iとの間には、制御液圧入力室20cが形成されている。副ピストン122fの一側端(右端)とシリンダ穴21hの右閉塞端との間には、リザーバ14にポート21gを介して接続されている大気圧室20eが形成されている。
【0127】
このように構成された機械式レギュレータ115cの作動について説明する。反力液圧入力室20aが増圧され、主ピストン122aの一側端に作用する力が、主ピストン122aの他側端に作用する力とスプリング23による付勢力の総和より大きくなれば、調圧ピストン122は左方向への移動を開始する。さらに、調圧ピストン122が左方向へ移動されると、弁座22d1が弁体26に当接して、減圧弁は閉状態となる。さらに、調圧ピストン122が左方向へ移動されて、調圧ピストン122がスプリング27の付勢力に抗して弁体26が左方向に移動されると、弁体26が弁座24a2から離脱して、増圧弁は開状態となる。
【0128】
増圧弁が開状態とされると、アキュムレータ15a1からの高圧の液圧がサーボ液圧出力室20bに供給される。サーボ液圧出力室20b内の液圧が上昇して、主ピストン122aの一側端に作用する力が、主ピストン122aの他側端に作用する力とスプリング23による付勢力の総和とが等しくなれば、調圧ピストン122は右方向への移動を開始する。その後、弁体26が弁座24a2に着座して増圧弁が閉状態となり、増加していたサーボ液圧は保持される。さらに、弁座22d1は反力液圧入力室20a内の液圧が減少すると、弁体26から離脱して減圧弁が開状態となる。これにより、サーボ液圧出力室20bは連通路22dを介してドレンポート21c(リザーバ14)に連通するため、サーボ液圧出力室20b内の液圧は低下する。
【0129】
そして、サーボ液圧出力室20b内の液圧が低下して、主ピストン122aの一側端に作用する力が、主ピストン122aの他側端に作用する力とスプリング23による付勢力の総和より大きくなれば、調圧ピストン22は左方向への移動を再び開始する。このような調圧ピストン22の左右方向の移動の繰り返しによって、機械式レギュレータ115cは高圧入力ポート21bに加えられている圧力により反力液圧入力室20aに供給される液圧に応じた液圧を出力ポート21eから出力することができる。
なお、減圧制御弁15b4は常開型の電磁弁であるため、減圧制御弁15b4が非通電であるときには制御液圧入力室20cはリザーバ14に接続されているため、制御液圧入力室20cも大気圧になっており副ピストン122fの移動はスムーズに行われる。
【0130】
さらに、回生トルクが必要となった場合には、制御液圧発生部15bで発生されたその回生トルクに応じたブレーキ液圧(制御液圧)が制御液圧入力ポート21fを介して制御液圧入力室20cに供給される。その結果、制御液圧入力室20c内の制御液圧による力(環状面積×制御液圧)が調圧ピストン122に作用すると、調圧ピストン122は右方向に移動する。主ピストン122aの一側端に作用する力が、主ピストン122aの他側端に作用する力とスプリング23による付勢力と副ピストン122hの他側端に作用する力(=環状面積×制御液圧)の総和と等しくなる位置で、調圧ピストン22はバランスして位置決めされる。このとき、機械式レギュレータ15cは、反力液圧による力から制御液圧による力を差し引いた力に応じたサーボ液圧をサーボ液圧出力室20bに発生させている。
【符号の説明】
【0131】
1…エンジン、2…モータ、3…動力分割機構、4…動力伝達機構、5…発電機、6…インバータ、7…バッテリ、8…エンジンECU、9…ハイブリッドECU、11…ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)、11a…ブレーキスイッチ、12…反力液圧発生部、12c…入力ピストン、12d…出力ロッド(マスタピストン部)、12f…反力室、12g…ストロークシミュレータ、13…マスタシリンダ、13c…第1ピストン(マスタピストン部)、13e…サーボ室、13f、13g…第1および第2液圧室(マスタ室)、14…リザーバ、15…サーボ液圧調整装置、15a…圧力供給装置、15a1…アキュムレータ、15a2…ポンプ、15a3…電動モータ、15b…制御液圧発生部、15b2…増圧制御弁、15b4…減圧制御弁、15c,115c…機械式レギュレータ、16…制動液圧調整装置、17…ブレーキECU(回生トルク取得部、車両状態検出手段、自動加圧制御手段、回生異常検出手段、回生異常検出時制御手段、制御液圧発生部異常検出手段、制御液圧発生部異常検出時制御手段)、20a…反力液圧入力室、20b…サーボ液圧出力室、20c…制御液圧入力室、A…回生ブレーキ装置、B…ブレーキ装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用のブレーキ装置の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1に示されているように、車両用のブレーキ装置においては、回生制動が行われない通常の制動制御中においては、要求制動力(ブレーキペダルの操作量に応じた)に相当する制御液圧が発生されている。一方、回生制動も行われている回生協調制御中においては、回生制動力分を減じて制御液圧が発生されており、すなわち回生制動力と制御液圧による液圧制動力との合計により要求制動力を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−167915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載のブレーキ装置の回生協調制御においては、ブレーキペダル24の操作量をストロークセンサ25により検出し、検出した操作量に基づいて増圧リニア制御弁等を制御することにより、ブレーキペダル24の操作量に応じた制動力を発生させる。そのため、制動力の発生がブレーキペダル24の操作に対して遅れること(ブレーキ応答遅れ)が考えられる。さらにこれに対処するためには、大容量のポンプやアキュムレータを設置(または追加)することも考えられるが、装置自体の大型化、高コスト化を招くこととなる。
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、回生協調に対応しブレーキ応答遅れを抑制することができるブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、ブレーキ操作部材の操作に応じてマスタシリンダ内にブレーキ液圧を発生させる車両用のブレーキ装置において、マスタシリンダ内にマスタ室およびサーボ室を形成し、サーボ室のブレーキ液圧であるサーボ液圧に駆動されてマスタシリンダ内をブレーキ操作部材の操作に拘わらず摺動可能に構成され、マスタ室にブレーキ液圧を発生させるマスタピストン部と、回生トルクを取得する回生トルク取得部と、回生トルク取得部により取得された回生トルクに応じた制御液圧を発生させる制御液圧発生部と、ブレーキ操作部材の操作量に応じたブレーキ液圧である反力液圧を機械的に発生させる反力液圧発生部と、反力液圧発生部に接続される反力液圧入力室と、制御液圧発生部に接続される制御液圧入力室と、サーボ室に接続されるサーボ液圧出力室と、が形成され、反力液圧による力から制御液圧による力を差し引いた力に応じたサーボ液圧をサーボ液圧出力室に機械的に発生させる機械式レギュレータと、を備えていることである。
【0007】
当該請求項1に係る発明は、例えば、ブレーキ操作部材の操作に応じてマスタシリンダ内にブレーキ液圧を発生させる車両用のブレーキ装置において、マスタシリンダ内にサーボ室を形成し、当該サーボ室のブレーキ液圧であるサーボ液圧に駆動されてマスタシリンダ内を摺動するマスタピストンと、マスタピストンに固定されている出力ロッドと、ブレーキ操作部材の操作により、マスタシリンダ内に反力室を形成しつつ、ブレーキ操作部材の操作量(以下「ブレーキ操作量」という)に応じて、出力ロッドに当接することなくマスタシリンダ内を摺動し、または、出力ロッドと一体となってマスタシリンダ内を摺動する入力ピストンと、回生トルクを取得する回生トルク取得部と、回生トルク取得部により取得された回生トルクに応じたブレーキ液圧である制御液圧を発生させる制御液圧発生部と、反力室に接続され、ブレーキ操作部材の操作量に応じたブレーキ液圧である反力液圧を発生させる反力液圧発生部と、反力液圧発生部に接続される反力液圧入力室と、制御液圧発生部に接続される制御液圧入力室と、サーボ室に接続されるサーボ液圧出力室と、が形成され、反力液圧から制御液圧を差し引いた液圧に応じたサーボ液圧をサーボ液圧出力室に発生させる機械式レギュレータと、を備えて構成することが可能である。
【0008】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、反力液圧入力室は制御液圧発生部に接続されており、制御液圧発生部と反力液圧入力室との間に設けられ、当該制御液圧発生部から反力液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する制御液圧入力制御弁と、反力液圧発生部と反力液圧入力室との間に設けられ、当該反力液圧発生部から反力液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する反力液圧入力制御弁と、車両状態を検出する車両状態検出手段と、制御液圧入力制御弁を開弁させ反力液圧入力制御弁を閉弁させるとともに、車両状態検出手段により検出されている車両状態に応じた制御液圧を制御液圧発生部により発生させて、ブレーキ操作部材の操作量に拘わらず自動的に反力液圧入力室を加圧する自動加圧制御手段と、を備えていることである。
【0009】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、制御液圧入力制御弁は常閉型の電磁弁であり、反力液圧入力制御弁は常開型の電磁弁であることである。
【0010】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、回生トルクを発生させることができない回生異常を検出する回生異常検出手段と、回生異常検出手段により回生異常であることが検出された場合に、制御液圧発生部による制御液圧を大気圧にして当該大気圧を制御液圧入力室に供給するとともに、反力液圧発生部による反力液圧を反力液圧入力室に供給する回生異常検出時制御手段と、を備えていることである。
【0011】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバと、反力液圧発生部とリザーバとの間に設けられ、当該反力液圧発生部と当該リザーバとの間のブレーキ液の流れを制御する反力液圧制御弁とを備え、反力液圧発生部とリザーバとの間のブレーキ液の流れが開放された状態で、反力液圧がブレーキ操作部材の操作量に拘わらず大気圧になることである。
【0012】
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項5において、反力液圧制御弁は常開型の電磁弁であることである。
【0013】
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、制御液圧発生部は、ブレーキ液を蓄圧するアキュムレータと、制御液圧入力室とアキュムレータとを接続する液圧増圧経路と、液圧増圧経路に設けられアキュムレータから制御液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する増圧制御弁と、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバと、制御液圧入力室とリザーバとを接続する液圧減圧経路と、液圧減圧経路に設けられ制御液圧入力室からリザーバへのブレーキ液の流れを制御する減圧制御弁と、を有して構成され、減圧制御弁は常開型の電磁弁であり、増圧制御弁は常閉型の電磁弁であることである。
【0014】
請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、制御液圧発生部は、ブレーキ液を蓄圧するアキュムレータと、制御液圧入力室とアキュムレータとを接続する液圧増圧経路と、液圧増圧経路に設けられアキュムレータから制御液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する増圧制御弁と、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバと、制御液圧入力室とリザーバとを接続する液圧減圧経路と、液圧減圧経路に設けられ制御液圧入力室からリザーバへのブレーキ液の流れを制御する減圧制御弁と、を有して構成され、増圧制御弁および減圧制御弁のいずれかに異常を検出する制御液圧発生部異常検出手段と、制御液圧発生部異常検出手段により増圧制御弁および減圧制御弁のいずれかに異常があることが検出された場合に、増圧制御弁を閉弁させ、減圧制御弁を開弁させる制御液圧発生部異常検出時制御手段と、を備えていることである。
【発明の効果】
【0015】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、ブレーキ操作部材が操作されると、反力液圧発生部によって、ブレーキ操作部材の操作量に応じたブレーキ液圧である反力液圧が機械的に発生される。この発生された反力液圧は、機械式レギュレータの反力液圧入力室に供給される。これにより、機械式レギュレータのサーボ液圧出力室にサーボ圧が発生し、当該サーボ圧がマスタシリンダのサーボ室に供給され、マスタ室にブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧が発生する。
【0016】
一方、制御液圧発生部は、回生トルクを取得する回生トルク取得部により取得された回生トルクに応じたブレーキ液圧である制御液圧を発生させる。この発生された制御液圧が、機械式レギュレータの制御液圧入力室に供給されると、機械式レギュレータにおいては、反力液圧入力室に供給されている反力液圧から、制御液圧入力室に供給されている制御液圧を差し引いた液圧に応じたサーボ液圧がサーボ液圧出力室に発生する。
【0017】
そして、この発生されたサーボ液圧は、マスタシリンダ内のサーボ室に供給される。これにより、ブレーキ操作部材の操作に応じたサーボ液圧によってマスタピストン部が駆動され、マスタシリンダ内のマスタ室に、ブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧が発生する。
【0018】
このように、ブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧をマスタシリンダ内のマスタ室に機械的に発生させた上で、回生トルクに応じたブレーキ液圧を差し引くことにより回生協調に対応させているため、ブレーキ操作部材のストロークなどを検出する検出装置を設けた従来のブレーキ装置と比較して、ブレーキ応答遅れを抑制することができる。
【0019】
回生トルクが0である場合すなわちブレーキ操作部材は操作されているが回生制動は行われていない場合には、制御液圧は発生されないため、サーボ液圧ひいてはマスタ室のブレーキ液圧は反力液圧に応じた液圧となる。一方、回生トルクが0でない場合すなわちブレーキ操作部材は操作され回生制動が行われている場合には、制御液圧は発生されるため、サーボ液圧ひいてはマスタ室のブレーキ液圧は反力液圧からその制御液圧を差し引いた液圧に応じた液圧となる。
【0020】
請求項2に記載の発明では、自動加圧制御手段により、制御液圧入力制御弁が開弁され反力液圧入力制御弁が閉弁されるとともに、制御液圧発生部で車両状態に応じた制御液圧が発生されると、当該制御液圧が機械式レギュレータの反力液圧入力室に供給され、反力液圧発生部の反力液圧が反力液圧入力室に供給されることはない。これにより、ブレーキ操作量に拘わらず、車両状態に応じたサーボ圧がサーボ液圧出力室に発生し、当該サーボ圧がマスタシリンダ内のサーボ室に供給され、マスタ室に車両状態に応じたブレーキ液圧が発生する。よって、車両状態に応じた自動加圧制御を行うことが可能である。例えば、自動加圧制御が必要な状態で車両状態に応じた自動加圧制御を実行することが考えられる。具体的には、ESC制御が必要な状態で車両状態としてのヨーレートに応じた自動加圧制御を自動的に実行したり、トラクションコントロールが必要な状態で車両状態としての車輪の空転に応じて自動加圧制御を自動的に実行したりする。また、自動加圧制御の実行モードへの切り替えスイッチがオンされた状態であることを条件に、自動加圧制御を実行することが考えられる。
【0021】
請求項3に記載の発明では、制御液圧入力制御弁が常閉型の電磁弁であり反力液圧入力制御弁が常開型の電磁弁であるため、電源失陥時に制御液圧入力制御弁が閉弁し反力液圧入力制御弁が開弁する。その結果、反力液圧発生部から機械式レギュレータの反力液圧入力室へのブレーキ液の流れは開放され、制御液圧発生部から反力液圧入力室へのブレーキ液の流れは遮断される。このように電源失陥時に、自動加圧制御を自動的に終了させるとともに、機械的に発生させた反力液圧によりブレーキ操作量に応じたブレーキ力を確保することができる。
【0022】
請求項4に記載の発明では、回生異常検出時に、制御液圧発生部により制御液圧が大気圧にされ、機械式レギュレータの制御液圧入力室に大気圧が供給され、反力液圧入力室に反力液圧発生部の反力液圧が供給される。これにより、サーボ液圧出力室に反力液圧に応じたサーボ液圧が発生し、当該サーボ液圧がマスタシリンダのサーボ室に供給され、マスタ室にブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧が発生する。このように、回生異常時に、機械的に発生させた反力液圧により回生トルク分の液圧を応答性よく補充することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明では、反力液圧制御弁を制御して反力室とリザーバとの間のブレーキ液の流れを開放すると、ブレーキ操作部材の操作に伴ってブレーキ操作部材に連動する部材(12c)が摺動しても反力液圧ひいてはサーボ液圧が発生されず、マスタピストン部はサーボ液圧により駆動されない。そのため、マスタピストン部は、ブレーキ操作に応じて、ブレーキ操作部材に連動する部材と一体となって摺動する。これにより、ブレーキ操作部材の操作力がマスタピストン部に伝わり、反力液圧がブレーキ操作部材に作用することはない。このように、ブレーキ操作部材の操作力は倍力されないが、操作力のみによる制動力は確実に確保することができる。
【0024】
このように操作力のみによる制動力を確実に確保すべき状態は、制御液圧発生部に異常がある場合であり、制御液圧発生部に異常がある状態としては、例えば、制御液圧発生部がアキュムレータと当該アキュムレータ内にブレーキ液を蓄圧するポンプと当該ポンプを駆動する電気モータとを有して構成されている場合には、アキュムレータ内の液圧が所定の閾値以下となっている状態や、ポンプに異常がある状態や、電気モータに異常がある場合が考えられる。
【0025】
請求項6に記載した発明では、請求項5において、反力液圧制御弁は常開型の電磁弁である。これにより、電気系が異常となっても、反力液圧制御弁は開弁されるので、ブレーキ操作部材の操作力のみによる制動力は確実に確保することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明では、電源失陥時に、制御液圧発生部において、常閉型の増圧制御弁が閉弁されてアキュムレータから液圧増圧経路を介する制御液圧入力室へのブレーキ液の流れが遮断される一方、常開型の減圧制御弁が開弁されて制御液圧入力室から液圧減圧経路を介するリザーバへのブレーキ液の流れが開放される。また機械式レギュレータの反力液圧入力室には、反力液圧発生部により発生された反力液圧が供給される。これにより、機械式レギュレータにおいて、制御液圧入力室の液圧は大気圧となり、反力液圧入力室の液圧は反力液圧に応じた液圧となるため、サーボ液圧出力室には反力液圧に応じたサーボ圧が発生する。このように、電源失陥時に、機械的に発生させた反力液圧により回生トルク分の液圧を応答性よく補充することができる。
【0027】
請求項8に記載の発明では、制御液圧発生部において、増圧制御弁および減圧制御弁のいずれかに異常があることが検出された場合に、増圧制御弁が閉弁されてアキュムレータから液圧増圧経路を介する制御液圧入力室へのブレーキ液の流れが遮断される一方、減圧制御弁が開弁されて制御液圧入力室から液圧減圧経路を介するリザーバへのブレーキ液の流れが開放される。また機械式レギュレータの反力液圧入力室には、反力液圧発生部により発生された反力液圧が供給される。これにより、機械式レギュレータにおいて、制御液圧入力室の液圧は大気圧となり、反力液圧入力室の液圧は反力液圧に応じた液圧となるため、サーボ液圧出力室には反力液圧に応じたサーボ圧が発生する。このように、制御液圧発生部の増圧制御弁および減圧制御弁のいずれかに異常がある場合、すなわち回生協調制御が不能である場合に、機械的に発生させた反力液圧により回生トルク分の液圧を応答性よく補充することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるブレーキ装置を適用した第1の実施形態を示す概要図である。
【図2】図1に示すブレーキ装置を示す概要図である。
【図3】図1に示すブレーキ装置において、反力液圧制御弁がオンされた状態を示す概要図である。
【図4】図1に示すブレーキ装置において、ブレーキペダルが踏まれた状態を示す概要図である。
【図5】図1に示すブレーキ装置において、ブレーキペダルが踏まれた状態であり、かつ、回生トルクに応じた制御液圧が供給されている状態を示す概要図である。
【図6】図1に示すブレーキECUで実行される制御プログラムを示すフローチャートである。
【図7】車速と回生トルク量との相関関係を示すマップである。
【図8】回生トルク量と目標制御液圧との相関関係を示すマップである。
【図9】アキュムレータ圧と目標制御液圧との差圧と、増圧制御弁のデューティ駆動値との相関関係を示すマップである。
【図10】目標制御液圧と、減圧制御弁のデューティ駆動値との相関関係を示すマップである。
【図11】本発明によるブレーキ装置の作動を示すタイムチャートである。上段から順番に車速、総制動力、回生トルクおよびホイールシリンダ圧(W/C圧)を示している。
【図12】本発明によるブレーキ装置を適用した第2の実施形態を示す概要図である。
【図13】図12に示すブレーキECUで実行される制御プログラムを示すフローチャートである。
【図14】本発明によるブレーキ装置において機械式レギュレータの変形例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1)第1の実施形態
以下、本発明に係る車両用のブレーキ装置をハイブリッド車に適用した第1の実施形態を図面を参照して説明する。図1はそのハイブリッド車の構成を示す概要図であり、図2はブレーキ装置の構成を示す概要図である。車両用のブレーキ装置は、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル11の操作に応じてマスタシリンダ13内にブレーキ液圧を発生させる。
【0030】
ハイブリッド車は、図1に示すように、ハイブリッドシステムによって駆動輪例えば左右前輪Wfl,Wfrを駆動させる車両である。ハイブリッド車は、エンジン1およびモータ2を備えている。エンジン1の駆動力は、動力分割機構3および動力伝達機構4を介して駆動輪に伝達されるようになっており、モータ2の駆動力は、動力伝達機構4を介して駆動輪に伝達されるようになっている。
【0031】
ハイブリッド車は、インバータ6を備えている。インバータ6は、モータ2および発電機5と直流電源としてのバッテリ7との間で電圧を変換するものである。エンジンECU8は、ハイブリッドECU9からの指令に基づいてエンジン1の回転数を調整する。ハイブリッドECU9は、インバータ6を通してモータ2および発電機5を制御する。ハイブリッドECU9はバッテリ7が接続されており、バッテリ7の充電状態、充電電流などを監視している。
【0032】
上述したモータ2、インバータ6およびバッテリ7から回生ブレーキ装置Aが構成されている。回生ブレーキ装置Aは、車両の速度に基づいた回生制動力をモータ2によって駆動される左右前輪Wfl,Wfrに発生させるものである。また、上述したブレーキ操作部材であるブレーキペダル11、反力液圧発生部12、マスタシリンダ13、リザーバ14、サーボ液圧調整装置15、制動液圧調整装置16、ブレーキECU17、およびホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrからブレーキ装置Bが構成されている。ブレーキ装置Bは、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに液圧制動力を直接付与して車両を制動させる。
【0033】
図1に示すように、ブレーキECU17はハイブリッドECU9に互いに通信可能に接続されており、車両の全制動力が油圧ブレーキだけの車両と同等となるようにモータ2が行う回生ブレーキと油圧ブレーキの協調制御(回生協調制御)を行なう。具体的には、ブレーキECU17は、運転者の制動要求すなわち制動操作状態に応じたブレーキ液圧を、ハイブリッドECU9から回生ブレーキ装置Aの目標値すなわち目標回生制動力を取得して、調圧する。また、ブレーキECU17は、運転者の制動要求以上の回生制動を行う場合には、ハイブリッドECU9に回生制動力の上限値を出力する。運転者の制動要求は、ブレーキペダル11のストローク(またはマスタシリンダ圧)に基づいて導出すればよい。回生制動力の上限値を導出する上限値処理の説明は割愛する。
【0034】
図2に示すように、ブレーキペダル11の近傍には、ブレーキペダル11が踏み込まれているか否か(ブレーキペダル11が操作中であるか否か)すなわち制動中であるか否かを検出するブレーキスイッチ11aが設けられている。このブレーキスイッチ11aはブレーキECU17に接続されており、検出信号がブレーキECU17に出力されるようになっている。
【0035】
ブレーキペダル11はプッシュロッド18を介して反力液圧発生部12に接続されている。反力液圧発生部12は、ボディー12aと、ボディー12a内を液密に摺動可能な入力ピストン12cと、入力ピストン12c内を同入力ピストン12cと相対移動可能かつ液密に摺動する出力ロッド12dと、ストロークシミュレータ12gとを備えている。
【0036】
反力液圧発生部12のボディー12aは、マスタシリンダ13のボディー13aに一体的に構成されている。ボディー12a内の空間(後述する穴12b)とボディー13a(後述するシリンダ穴13b)とは、隔壁12a1により隔てられている。ボディー12aには、入力ピストン12cの摺動方向(軸方向)に沿って延在する穴12bが形成されている。入力ピストン12cは、ボディー12aの穴12b内に配設されている。これにより、上述の如く入力ピストン12cがボディー12a内を液密に摺動可能となっている。入力ピストン12cの一端側には、プッシュロッド18が接続されている。プッシュロッド18には、フランジ部材18aが固定されている。フランジ部材18aとボディー12aとの間には付勢部材18b(例えばスプリング)が介装されている。付勢部材18bは、フランジ部材18aがボディー12aから離れる方向に付勢するものである。図に示していないが、入力ピストン12cは穴12bから抜けないようになっている。ブレーキペダル11が踏み込まれていないとき、入力ピストン12cは付勢部材18bの図示右方向への付勢力を受けながら所定位置(初期位置)に位置決めされている。
【0037】
入力ピストン12cは、有底筒状であり、軸方向に沿って延在する穴12c1が、入力ピストン12cの摺動方向のプッシュロッド18とは反対側に開口している。
【0038】
出力ロッド12dの入力ピストン12c側の部分は、入力ピストン12cの穴12c1内に配設されている。これにより、上述の如く出力ロッド12dが入力ピストン12c内を同入力ピストン12cと相対移動可能にかつ液密に摺動可能となっている。入力ピストン12cの穴12c1内において、出力ロッド12dとの間には離間室12eが形成され、ボディー12aの穴12b内において、入力ピストン12c、出力ロッド12dおよび隔壁12a1との間には反力室12fが形成されている。
【0039】
出力ロッド12dは、隔壁12a1により支持されている。詳しくは、出力ロッド12dは、隔壁12a1を貫通し、入力ピストン12cと反対側で第1ピストン13cに固定されている。
【0040】
入力ピストン12cには離間室12eに開口するポート12c2が形成され、ボディー12aにはポート12c2が開口し入力ピストン12cの摺動方向に延びる連通溝12a2が形成されるとともに連通溝12a2およびリザーバ14に開口するポート12a3が形成されている。これにより、離間室12eは、ポート12c2、連通溝12a2およびポート12a3を介してリザーバ14に連通している。
【0041】
反力室12fは、ポート12a4を介してリザーバ14に連通するとともに、ポート12a5に接続された液圧油路12hを介してストロークシミュレータ12gに接続されている。ポート12a4は、ブレーキペダル11が踏み込まれていない状態では反力室12fとリザーバ14とを連通する状態となり、ブレーキペダル11が踏み込まれた状態では入力ピストン12cにより閉鎖される位置に配設されている。
【0042】
ストロークシミュレータ12gは、一般的によく知られているものであり、ブレーキペダル11の操作状態に応じた大きさのストロークをブレーキペダル11に発生させるものである。ストロークシミュレータ12gはハウジング12g1内を液密に摺動するピストン12g2と、ハウジング12g1とピストン12g2との間に形成された液圧室12g3と、ピストン12g2を液圧室12g3の容積を減少させる方向に付勢するスプリング12g4を備えている。
【0043】
ブレーキペダル11が踏み込まれると、ポート12a4が入力ピストン12cにより閉塞されるため、反力室12fのブレーキ液はストロークシミュレータ12gに送出され、ブレーキペダル11の操作量に応じた反力液圧がストロークシミュレータ12gにおいて発生される。
【0044】
マスタシリンダ13は、ドライバによるブレーキ操作部材であるブレーキペダル11の操作力に応じて液圧(マスタシリンダ圧)を形成してホイールシリンダWC**に供給し、その液圧によって車輪W**に液圧制動力を発生させ得る装置である。
【0045】
マスタシリンダ13は、タンデム式のマスタシリンダであり、ボディー13aを備えている。ボディー13aには、シリンダ穴13bが形成されている。シリンダ穴13b内には、第1および第2ピストン13c,13dが液密に摺動可能に並べて配設されている。特許請求の範囲に記載のマスタピストン部は、第1ピストン13cおよび出力ロッド12dから構成される。
【0046】
ボディー13aのシリンダ穴13b内において、第1ピストン13cと隔壁12a1との間には、サーボ室13eが形成されている。マスタピストン13cは、サーボ室13eのブレーキ液圧であるサーボ液圧に駆動されてボディー13a内を摺動する。なお、第1ピストン13cと隔壁12a1とが当接するそれぞれの当接面は、両部材が当接してもサーボ室13eの容積が確保されるような構成となっている。
【0047】
ボディー13aのシリンダ穴13b内において、第1ピストン13cと第2ピストン13dとの間には、第1液圧室(マスタ室)13fが形成され、第2ピストン13dと底壁13a1との間には、第2液圧室(マスタ室)13gが形成されている。第1液圧室13f内には、第1ピストン13cと第2ピストン13dとの間に介装されて第1液圧室13fを拡張する方向に付勢する付勢部材13h(例えばスプリング)が配設されている。第2液圧室13g内には、第2ピストン13dと底壁13a1との間に介装されて第2液圧室13gを拡張する方向に付勢する付勢部材13i(例えばスプリング)が配設されている。
【0048】
サーボ室13eに液圧が供給されていないとき(例えばブレーキペダル11が踏み込まれていないとき)、第1ピストン13cは付勢部材13hによって付勢されて所定位置にあり、第2ピストン13dは付勢部材13iによって付勢されて所定位置にある(図2参照)。第1ピストン13cの所定位置は、第1ピストン13cが隔壁12a1に当接して位置決めされる位置であり、第1ピストン13cがポート13kを閉塞する直前位置となっている。第2ピストン13dの所定位置は、第2ピストン13dがポート13lを閉塞する直前位置に位置決め固定される位置である。
【0049】
マスタシリンダ13のボディー13aには、サーボ室13eと機械式レギュレータ15cとを連通するためのポート13jと、第1液圧室13fとリザーバ14とを連通するためのポート13kと、第2液圧室13gとリザーバ14とを連通するためのポート13lと、第1液圧室13fとホイールシリンダWC**とを制動液圧調整装置16を介して連通するためのポート13mと、第2液圧室13gとホイールシリンダ**とを制動液圧調整装置16を介して連通するためのポート13nと、が設けられている。
【0050】
サーボ液圧調整装置15は、圧力供給装置15a、制御液圧発生部15bおよび機械式レギュレータ15cを備えており、圧力供給装置15aからの圧力を受けた機械式レギュレータ15cによりブレーキペダル11の操作量に応じたサーボ液圧を形成してマスタシリンダ13のサーボ室13eに供給するものである。
【0051】
圧力供給装置15aは、ブレーキ液の液圧を比較的高圧で蓄圧する高圧力源であるアキュムレータ15a1と、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバ14と、リザーバ14のブレーキ液を吸入しアキュムレータ15a1に圧送するポンプ15a2と、ポンプ15a2を駆動させる電動モータ15a3を備えている。圧力供給装置15aは、アキュムレータ15a1に蓄圧されているブレーキ液の液圧(アキュムレータ圧)を圧力センサ15a4により検出することで、当該アキュムレータ圧を制御する。リザーバ14が貯留するブレーキ液は、略大気圧であればよく厳密に大気圧でなくてもよい。
【0052】
制御液圧発生部15bは、実回生実行値や車両状態やブレーキペダル11のストローク量に応じた制御液圧を発生させるものである。制御液圧発生部15bは、リザーバ14と、アキュムレータ15a1と、制御液圧入力室20cとアキュムレータ15a1とを接続する液圧増圧経路15b1と、液圧増圧経路15b1に設けられアキュムレータ15a1から制御液圧入力室20cへのブレーキ液の流れを制御する増圧制御弁15b2と、制御液圧入力室20cとリザーバ14とを接続する液圧減圧経路15b3と、液圧減圧経路15b3に設けられ制御液圧入力室20cからリザーバ14へのブレーキ液の流れを制御する減圧制御弁15b4と、を有して構成されている。
【0053】
増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4は、ブレーキECU17からの指令を受けて作動する電磁弁である。増圧制御弁15b2は常閉型のリニア電磁弁であり、減圧制御弁15b4は常開型のリニア電磁弁である。
【0054】
制御液圧発生部15bは、アキュムレータ15a1から制御液圧入力室20cに供給される液圧を増圧制御弁15b2によって調整すること、およびリザーバ14へのブレーキ液の排出(制御液圧入力室20cからリザーバ14に排出される液圧)を減圧制御弁15b4によって調整することにより、制御液圧を発生させる。なお、後述する制御液圧入力室20cやサーボ室13eの液圧を検出する圧力センサを設け、その圧力センサの検出信号をブレーキECU17に出力して制御液圧発生部15bにおいて制御液圧をフィードバック制御するようにしてもよい。
【0055】
機械式レギュレータ15cには、反力液圧発生部12、制御液圧発生部15bおよびマスタシリンダ13が接続されており、反力液圧による力から制御液圧による力を差し引いた力に応じた液圧であるサーボ圧を発生させるものである。機械式レギュレータ15cは、ハウジング21、調圧ピストン22、スプリング23、シリンダ部材24、環状部材25、弁体26、およびスプリング27を有して構成されている。
【0056】
機械式レギュレータ15cのハウジング21には、シリンダ穴21aが形成されると共に、高圧入力ポート21b、ドレンポート21c、反力液圧入力ポート21d、出力ポート21eおよび制御液圧入力ポート21fが形成されている。
【0057】
高圧入力ポート21bは液圧油路31を介してアキュムレータ15a1に接続されている。ドレンポート21cは液圧油路32を介してリザーバ14に接続されている。反力液圧入力ポート21dは液圧油路12hに接続されている液圧油路33を介して反力液圧発生部12の反力室12fおよびストロークシミュレータ12gに接続されている。出力ポート21eは液圧油路34を介してマスタシリンダ13のサーボ室13eに接続されている。
【0058】
制御液圧入力ポート21fは制御液圧発生部15bに接続されている。すなわち、制御液圧入力ポート21fは液圧増圧経路15b1を介してアキュムレータ15a1に接続されるとともに、液圧減圧経路15b3を介してリザーバ14に接続されている。本実施形態では、液圧増圧経路15b1と液圧減圧経路15b3とが1つとなって制御液圧入力ポート21fに接続されているが、液圧増圧経路15b1および液圧減圧経路15b3を制御液圧入力ポート21fに個別に接続してもよい。
【0059】
シリンダ穴21aには、調圧ピストン22が液密に摺動自在に配設されている。調圧ピストン22は、大径部22aと、大径部22aより小径である小径部22bと、小径部22bより小径であり小径部22bから突設された突設部22cとが一体的に形成されるように構成されている。調圧ピストン22の大径部22aの一側端(小径部22bが形成されていない側の端面)および小径部22bの他側端(突設部22cが形成されている側の端面)の各面積は、機械式レギュレータ15cが高圧入力ポート21bに加えられている液圧により反力液圧入力ポート21dに加えられている圧力に応じた液圧を出力ポート21eから出力することができるように設定されている。
【0060】
シリンダ部材24は穴24bを有する有底筒状に形成さている。シリンダ部材24は、その底部(隔壁部)24aを調圧ピストン22側に向けてシリンダ穴21a内に固定されている。隔壁部24aには貫通孔24a1が形成されている。シリンダ穴21a内において、調圧ピストン22の大径部22aの一側端(図示右端)とハウジング21の右閉塞端との間には反力液圧入力室20aが形成されている。また、調圧ピストン22の小径部22bの突設部22c側の他側端(図示左端側)とシリンダ部材24との間にはサーボ液圧出力室20bが形成されている。また、シリンダ部材24とハウジング21の左閉塞端との間には高圧入力室20dが形成されている。反力液圧入力室20aは反力液圧入力ポート21dに連通し、サーボ液圧出力室20bは出力ポート21eに連通し、高圧入力室20dは入力ポート21bに連通している。サーボ液圧出力室20bと高圧入力室20dとは隔壁部24aの貫通孔24a1を介して連通している。調圧ピストン22にはドレンポート21cに連通する連通路22dが形成されている。連通路22dは、突設部22cの先端から大径部22aの周側面に形成された連通溝22a1までを連通するように構成されている。環状に形成された連通溝22a1は、ドレンポート21cに臨んで配設されており、調圧ピストン22が往復動してもドレンポート21cとの連通が確保されるようになっている。
【0061】
調圧ピストン22の小径部22bの周側面とシリンダ穴21aの内周側面との間には、両部材22b,21aの間を液密に摺動可能である環状部材25が配設されている。調圧ピストン22の大径部22aの小径部22b側の他側端(図示左端)と環状部材25の一側端との間には制御液圧入力室20cが形成されている。制御液圧入力室20cは、環状部材25の外周側面に形成された連通溝25aを介して制御液圧入力ポート21fに連通している。環状に形成された連通溝25aは、制御液圧入力ポート21fに臨んで配設されており、環状部材25が往復動しても制御液圧入力ポート21fとの連通が確保されるようになっている。
【0062】
サーボ液圧出力室20bには、シリンダ部材24と環状部材25との間にスプリング23が配設されている。スプリング23は、環状部材25をシリンダ部材24から離間する方向に付勢し、ひいてはサーボ液圧出力室20bの容積を増大させる方向に調圧ピストン22を付勢している。
【0063】
反力液圧入力室20aに液圧が付与されていない場合(例えばブレーキペダル11の非作動時など)、スプリング23の付勢力によって調圧ピストン22は図示右方向に付勢され調圧ピストン22の一側端(右端)はシリンダ穴21aの右閉塞端に当接して位置決め固定される。このとき、後述する減圧弁は開状態となるため、出力ポート21eはサーボ液圧出力室20bおよび連通路22dを介してドレンポート21cに連通する。
【0064】
シリンダ部材24の穴24bには、ボール状の弁体26が移動自在に配設され、シリンダ部材24および弁体26を含んで圧力制御弁が構成されている。詳しくは、シリンダ部材24の隔壁部24aの弁体26側には、弁孔である貫通孔24a1の周辺に弁座24a2が形成されており、弁体26が弁座24a2に着脱可能になっている。貫通孔24a1は、調圧ピストン22の突設部22cが進退可能に形成されており、貫通孔24a1の内径は突設部22cの外径より大きく設定されている。調圧ピストン22の突設部22cの連通孔22dの開口端には、同連通孔22d周辺に弁体26の弁座22d1が形成されている。ハウジング21の左閉塞端と弁体26との間にはスプリング27が配設され、弁体26はスプリング27により弁座24a2側に付勢されている。これにより、常態では弁体26が弁座24a2に着座し、サーボ液圧出力室20bの容積を減少させる方向(図示左方向)へ所定距離だけ調圧ピストン22が摺動した状態では、弁体26が弁座24a2および弁座22d1に着座し、調圧ピストン22の突設部22cが図示左方向に更に摺動した状態では、弁座22d1に着座した状態の弁体26が突設部22cにより押されて弁座24a2から離脱するようになっている。また、弁座24a2から弁体26が離脱しかつ弁座22d1に弁体26が着座した状態の調圧ピストン22がサーボ液圧出力室20bの容積を増加させる方向(図示右方向)に摺動したときに、弁体26は弁座24a2に着座し、調圧ピストン22が図示右方向に更に摺動したときに、弁体26から弁座22d1が離脱するようになっている。
【0065】
このように、弁体26、弁座24a2及びスプリング27は、増圧弁を構成し、サーボ液圧出力室20bと高圧入力室20dとの間を連通又は遮断し、サーボ液圧出力室20b内の液圧(サーボ液圧)を増圧する。また、弁体26及び弁座22d1は減圧弁を構成し、サーボ液圧出力室20bと連通路22d(リザーバ14)との間を連通又は遮断し、サーボ液圧出力室20b内の液圧(サーボ液圧)を減圧する。
【0066】
このように構成された機械式レギュレータ15cの作動を図3−5を参照して説明する。
(反力液圧による調圧作動)
反力液圧入力室20aが増圧され、調圧ピストン22の大径部22aの小径部22bとは反対側の一側端に作用する力(=圧力×面積)が、調圧ピストン22の小径部22bの大径部22aとは反対側の他側端に作用する力(=圧力×面積)とスプリング23による付勢力の総和より大きくなれば、調圧ピストン22は左方向への移動を開始する。さらに、調圧ピストン22が左方向へ移動されると、弁座22d1が弁体26に当接して、減圧弁は閉状態となる。さらに、調圧ピストン22が左方向へ移動されて、調圧ピストン22がスプリング27の付勢力に抗して弁体26が左方向に移動されると、弁体26が弁座24a2から離脱して、増圧弁は開状態となる(図4参照)。
【0067】
増圧弁が開状態とされると、アキュムレータ15a1からの高圧の液圧が高圧入力ポート21b、高圧入力室20d、および貫通孔24a1を通ってサーボ液圧出力室20bに供給される。サーボ液圧出力室20b内の液圧が上昇して、大径部22aの一側端に作用する力が、調圧ピストン22の小径部22bの他側端に作用する力とスプリング23による付勢力の総和より小さくなれば、調圧ピストン22は右方向への移動を開始する。その後、弁体26が弁座24a2に着座して増圧弁が閉状態となり、狙いのブレーキ液圧となる。一方、ブレーキ操作量が減少する場合は、弁座22d1は弁体26から離脱して減圧弁が開状態となる。これにより、サーボ液圧出力室20bは連通路22dを介してドレンポート21c(リザーバ14)に連通するため、サーボ液圧出力室20b内の液圧は低下する。
【0068】
そして、サーボ液圧出力室20b内の液圧が低下して、調圧ピストン22の大径部22aの一側端に作用する力が、調圧ピストン22の小径部22bの他側端に作用する力とスプリング23による付勢力の総和より大きくなれば、調圧ピストン22は左方向への移動を再び開始する。このような調圧ピストン22の左右方向の移動によって、機械式レギュレータ15cは高圧入力ポート21bに加えられている圧力により反力液圧入力室20aに供給される液圧に応じた液圧を出力ポート21eから出力することができる。
【0069】
(制御液圧による調圧作動)
回生トルクが必要となった場合には、制御液圧発生部15bによりその回生トルクに応じたブレーキ液圧(制御液圧)を発生させ、その制御液圧を制御液圧入力ポート21fを介して制御液圧入力室20cに供給させる。これにより、環状部材25はシリンダ部材24に当接し、調圧ピストン22が環状部材25に対して右方向に移動する力が作用する。大径部22aの一側端に作用する力が、制御液圧とスプリング23による付勢力を差し引いた液圧に応じたサーボ液圧をサーボ液圧出力室20bに発生させている。
【0070】
車両用のブレーキ装置は、液圧油路12hと液圧油路32とを接続する液圧油路35を備えている。液圧油路35は、反力室12fおよびストロークシミュレータ12gをリザーバ14に接続するためのものである。液圧油路35には、反力室12fおよびストロークシミュレータ12gとリザーバ14との間のブレーキ液の流れを制御する反力液圧制御弁35aが配設されている。反力液圧制御弁35aは常開型の電磁弁であり、ブレーキECU17の指令に従って制御されるものである。
【0071】
制動液圧調整装置16は、一般的によく知られているものであり、マスタシリンダカット弁(マスタシリンダと保持弁および減圧弁と間を連通・遮断するもの)、保持弁、減圧弁、リザーバタンク、ポンプ、および電動モータなどを有して構成されている。制動液圧調整装置16は、ブレーキECU17からの指令を受けて、ブレーキペダル11の操作の有無に拘わらず、マスタシリンダ13からのブレーキ液圧を供給され各ホイールシリンダWC**に付与するブレーキ液圧すなわち車輪W**に付与する制動液圧を互いに独立して調整するESC制御(Electronic Stability Control;横滑りを防止する制御)を実行する。なお、制動液圧調整装置16は、ESC制御だけでなく、ABS制御(アンチロックブレーキ制御)、トラクションコントロール制御なども実行することができる。
【0072】
次に、上述したように構成された車両用のブレーキ装置の作動について図6のフローチャートに沿って説明する。ブレーキECU17は、例えば車両のイグニションスイッチ(図示省略)がオン状態にあるとき、上記フローチャートに対応したプログラムを所定の短時間毎に実行する。ブレーキECU17は、アキュムレータ圧が維持されるように、モータによるポンプの駆動制御を実行しつつ、圧力センサ15a4によりアキュムレータ圧(Acc圧)を検出し、そのアキュムレータ圧が0MPaより大きいか否か(すなわち圧力供給装置15aが正常に作動しているか否か)を判定する(ステップ102)。なお、ステップ102の代わりにまたはステップ102とともに、ポンプ15a2もしくはモータ15a3が異常であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0073】
ブレーキECU17は、アキュムレータ圧が0MPa(大気圧)以下である場合には、ステップ102で「NO」と判定し、全ての制御弁(ソレノイド;増圧制御弁15b2、減圧制御弁15b4、反力液圧制御弁35a、制御液圧入力制御弁36a、反力液圧入力制御弁33a)をオフ(非通電)する(ステップ104)とともに、ハイブリッドECU9(図6中では「HV」と記載している。)に回生要求無を指示する(ステップ106)。ハイブリッドECU9では、回生要求無を受けて、回生制動を発生させる制御(回生制御)が実行されない。これにより、車両には、回生制動力が付与されず、液圧制動力のみが付与されることとなる。
【0074】
ブレーキECU17は、アキュムレータ圧が0MPa0より大きい場合には、ステップ102で「YES」と判定し、ステップ108以降の処理を実行する。ステップ108においては、各制御弁の通電モニタ状態に基づいて各制御弁が異常であるか否かを判定する。
【0075】
ブレーキECU17は、各制御弁が異常であると判定した場合には、ステップ110で「NO」と判定し、全ての制御弁(ソレノイド;増圧制御弁15b2、減圧制御弁15b4、反力液圧制御弁35a、制御液圧入力制御弁36a、反力液圧入力制御弁33a)をオフ(非通電)する(ステップ104)とともに、ハイブリッドECU9に回生要求無を指示する(ステップ106)。これにより、制御弁が異常である場合、すなわち正常な制御を行うことができない場合には、不適切なブレーキ制御の実行を防止することができる。
【0076】
ブレーキECU17は、各制御弁が正常であると判定した場合には、ステップ110で「YES」と判定し、ステップ112以降の処理を実行する。ブレーキECU17は、ステップ112において、反力液圧制御弁35aをオン(通電)する(図3参照)。これにより、反力液圧制御弁35aが通電されて閉状態にされることで、ブレーキペダル11の操作量に応じた反力液圧がストロークシミュレータ12gにより発生可能な状態となる。
【0077】
なお、図2,3は、ブレーキペダル11が操作されていない状態(非制動状態;初期状態)を示す図である。初期状態においては、入力ピストン12cは初期位置(図2,3に示す位置)にある。反力液圧は発生されないので、機械式レギュレータ15cの調圧ピストン22は初期位置(図2,3に示す位置)にある。サーボ液圧出力室20bは、連通路22d、ドレンポート21cおよび液圧油路32を介してリザーバ14に連通しているので、サーボ液圧は大気圧と等しい。よって、第1ピストン(マスタピストン部)13cおよび第2ピストン13dも初期位置(図2,3に示す位置)にある。マスタシリンダ13からの制動液圧はホイールシリンダWC**に付与されない。
【0078】
ブレーキECU17は、ステップ114において、車両が制動中であるか否かを判定する。車両が制動中であるか否かの判定は、ブレーキスイッチ11aの検出信号に基づいて判定される。ブレーキスイッチ11aがオン信号であれば、ブレーキペダル11が踏まれているので、制動中であると判定することができる。
【0079】
ブレーキECU17は、制動中でないと判定した場合には、ステップ114で「NO」と判定し、ステップ106と同様にハイブリッドECU9に回生要求無を指示する(ステップ116)。これにより、車両に回生制動力が付与されることを禁止することができる。さらに、ブレーキECU17は、ステップ118において、制御液圧発生部15bの増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4をオフ(非通電)する(ステップ118)ことで、増圧制御弁15b2は閉状態となり減圧制御弁15b4は開状態となる。これにより、制御液圧発生部15bから制御液圧が供給されることを確実に防止することができる。
【0080】
一方、制動中であると判定した場合には、ブレーキECU17は、ステップ114で「YES」と判定し、ハイブリッドECU9に回生要求有を指示する(ステップ120)。ハイブリッドECU9は、回生要求が有るので、回生制動を発生させる制御(回生制御)を実行する。このとき、回生トルク量は、ハイブリッドECU9にて回生トルク量と車速との相関関係を示すマップ(図7に示す)と検出される車速とに基づいて決定される。このマップにおいては、車速が所定速度Vb(例えば5km/h)未満であるときには、車速が大きくなるほど回生トルク量は大きくなり、車速が所定速度Vb以上であり所定速度Va(例えば20km/h)未満であるときには、回生トルク量は一定であり、車速が所定速度Va以上であるときには、回生トルク量は車速が大きくなるにしたがって小さくなるように設定されている。なお、ステップ120において、ストローク量(ブレーキ操作量)を検出し、その検出値に基づいて回生上限値を算出し、回生上限値をハイブリッドECU9に指示してもよい。これにより、ハイブリッドECU9の回生効率は総制動力が変動せず最大になる。バッテリ7が満充電状態である場合などそれ以上回生制御をすることができない状況である場合には、回生制御は実行されない。すなわち、回生トルク量は0となる。
【0081】
さらに、ブレーキECU17は、ステップ122において、ハイブリッドECU9から決定された回生トルク量を取得(受信)する。ブレーキECU17は、取得した回生トルク量が0でないか否か(ハイブリッドECU9からの回生トルク量があるか否か)をハイブリッドECU9から取得した回生トルク量に基づいて判定する。取得した回生トルク量が0である場合には、ブレーキECU17は、ステップ124で「NO」と判定し、ステップ118において制御液圧発生部15bの増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4をオフ(非通電)する。これにより、車両には回生制動力が付与されず液圧制動力のみが付与されることとなる。なお、入力した回生トルク量が0である場合は、上述したように回生制御をすることができない状況である場合、例えばバッテリ7が満充電である場合である。
【0082】
このとき、図4に示すように、ブレーキペダル11が踏み増しされると、ブレーキペダル11の操作量に応じた反力液圧がストロークシミュレータ12gにより発生される。この反力液圧が機械式レギュレータ15cの反力液圧入力室20aに供給される。反力液圧入力室20aの容積が拡大するため調圧ピストン22が左方向に移動され、弁座22d1が弁体26に着座することで減圧弁が閉状態となりさらに弁体26が弁座24a2から離脱することで増圧弁が開状態となる。アキュムレータ15a1からのアキュムレータ圧が、液圧油路31、高圧入力ポート21b、高圧入力室20dおよび貫通孔24a1を介してサーボ液圧出力室20bに導入される。その結果、調圧ピストン22の両端にかかる力がバランスすることで、反力液圧入力室20aに供給されている反力液圧に応じたサーボ液圧がサーボ液圧出力室20bひいてはサーボ室13eに発生し、ブレーキペダル11の操作に応じたブレーキ液圧がマスタシリンダ13内に発生する。
【0083】
一方、入力した回生トルク量が0でない場合(回生トルク量がある場合)には、ブレーキECU17は、ステップ124で「YES」と判定し、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4を駆動させて、取得した回生トルク量に応じた制御液圧を発生させる。すなわち、ブレーキECU17は、回生トルク量に応じた目標制御液圧をマップから導出し(ステップ126)、その導出した目標制御液圧に応じて増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4を駆動させる(ステップ128)。
【0084】
具体的には、ステップ126においては、ブレーキECU17は、目標制御液圧を、目標制御液圧と回生トルク量との相関関係を示すマップ(図8に示す)とハイブリッドECU9から入力した回生トルク量とに基づいて導出する。例えば図8に示すマップにおいては、回生トルク量が大きくなるにしたがって目標制御液圧が大きくなるように設定されている。
【0085】
ステップ128においては、最初に、ブレーキECU17は、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のデューティ駆動値(Duty駆動値)を導出する。増圧制御弁15b2のデューティ駆動値は、アキュムレータ圧と目標制御液圧との差圧と増圧制御弁15b2のデューティ駆動値との相関関係を示すマップ(図9に示す)およびアキュムレータ圧と目標制御液圧との差圧に基づいて導出される。このマップにおいては、目標制御液圧が0であるときには、差圧はアキュムレータ圧と同一となり、目標制御液圧がアキュムレータ圧であるときには、差圧は0となる。よって、差圧が大きくなるにしたがってデューティ駆動値が小さくなるように設定されている。すなわち、差圧が小さいほど駆動電流を大きくして増圧制御弁の開度を大きくするようになっている。
【0086】
また、減圧制御弁15b4のデューティ駆動値は、目標制御液圧と減圧制御弁15b4のデューティ駆動値との相関関係を示すマップ(図10に示す)および目標制御液圧に基づいて導出される。例えば図10に示すマップにおいては、差圧が大きくなるにしたがってデューティ駆動値が大きくなるように設定されている。すなわち、差圧が大きいほど駆動電流を大きくして減圧制御弁の開度を小さくするようになっている。
【0087】
次に、ブレーキECU17は、先に導出した増圧制御弁15b2のデューティ駆動値で増圧制御弁15b2を制御するとともに、先に導出した減圧制御弁15b4のデューティ駆動値で減圧制御弁15b4を制御する。
【0088】
このとき、図5に示すように、回生協調制御が行われる。回生トルクが必要となった場合、液圧制動力はその回生トルク分の制動力を減じてホイールシリンダWC**に供給することで、ブレーキペダル11に相当する総制動力を達成している。そこで、回生トルクに応じたブレーキ液圧を減じて発生すべく、制御液圧発生部15bからその回生トルクに応じたブレーキ液圧(制御液圧)が制御液圧入力ポート21fを介して制御液圧入力室20cに供給される。すなわち、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4が通電されてリニア制御される位置とされ、通電する電流に応じて出力圧力を調整することで、所望の制御液圧が制御液圧入力室20cに供給される。
【0089】
その結果、制御液圧による力(=環状面積×制御液圧)が、調圧ピストン22の小径部22b側(一端側)端に作用して調圧ピストン22が右方向に移動する。これにより、機械式レギュレータ15cでは、反力液圧による力から制御液圧による力を差し引いた力に相当する液圧に応じたサーボ液圧がサーボ液圧出力室20bに発生する。こうして、総制動力から回生トルク分の制動力を減じたブレーキ液圧がマスタシリンダ13に発生される。
【0090】
なお、ブレーキペダル11のストロークを検出するストロークセンサ、ブレーキペダル11の操作力を検出する踏力センサを設けた場合には、検出されるストロークや踏力に応じて回生トルクを導出するようにしてもよい。
【0091】
さらに、図11に示すタイムチャートを参照して説明する。走行中の車両において、時刻t1においてドライバによってブレーキペダル11が踏み込まれると、ブレーキペダル11の操作量に応じた総制動力が、踏み込みが解除されるまで車両に付与される。総制動力は回生トルクと液圧制動力との合計の制動力である。図11では、総制動力は一定であり、時刻t1から時刻t2までの期間には回生トルクが所定の比率で増大し、時刻t4から時刻t5までの期間には回生トルクが所定の比率で減少するものとする。
【0092】
時刻t1は制動が開始されるタイミングであり、時刻t2は、上記所定の比率で導出された回生トルクと、図7に示すマップおよび車速から導出した回生トルクとが同一となるタイミングである。時刻t2から時刻t4までの間においては、回生トルクは図7に示すマップと車速とから導出される。時刻t5以降であってブレーキペダル11が踏み込まれている間においては、車両は停止しているので回生トルクは発生させ得ない。
【0093】
ステップ126,128の処理で説明したように、回生トルクに相当する制御液圧が制御液圧発生部15bによって発生される。そして、機械式レギュレータ15cは、反力液圧から制御液圧を差し引いた液圧に応じたサーボ液圧をサーボ液圧出力室20bに発生させている。よって、総制動力から回生トルク分の制動力を減じたブレーキ液圧がマスタシリンダ13に発生され、時刻t1以降において図11に示すようにホイールシリンダWC**に供給される。
【0094】
なお、上述したステップ102,108,110の処理は、回生トルクを発生させることができない回生異常を検出する回生異常検出手段であり、上述したステップ104の処理は、回生異常検出手段により回生異常であることが検出された場合に、制御液圧発生部15bにより制御液圧として大気圧を発生させる回生異常検出時制御手段である。
【0095】
また、上述したステップ108,110の処理は、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のいずれかに異常を検出する制御液圧発生部異常検出手段であり、上述したステップ104の処理は、制御液圧発生部異常検出手段により増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のいずれかに異常があることが検出された場合に、増圧制御弁15b2を閉弁させ、減圧制御弁15b4を開弁させる制御液圧発生部異常検出時制御手段である。
【0096】
上述した本実施形態によれば、ブレーキペダル11が操作されると、反力液圧発生部12によって、ブレーキペダル11の操作量に応じたブレーキ液圧である反力液圧が機械的に発生される。この発生された反力液圧は、機械式レギュレータ15cの反力液圧入力室20aに供給される。これにより、機械式レギュレータ15cのサーボ液圧出力室20bにサーボ圧が発生し、当該サーボ圧がマスタシリンダ13のサーボ室13eに供給され、マスタ室13f、13gにブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧が発生する。
【0097】
一方、制御液圧発生部15bは、回生トルクを取得する回生トルク取得部(ステップ122)により取得された回生トルクに応じたブレーキ液圧である制御液圧を発生させる。この発生された制御液圧が、機械式レギュレータ15cの制御液圧入力室20cに供給されると、機械式レギュレータ15cにおいては、反力液圧入力室20aに供給されている反力液圧による力から、制御液圧入力室20cに供給されている制御液圧による力を差し引いた力に相当する液圧に応じたサーボ液圧がサーボ液圧出力室20bに発生する。
【0098】
そして、この発生されたサーボ液圧は、マスタシリンダ13内のサーボ室13eに供給される。これにより、ブレーキペダル11の操作に応じたサーボ液圧によってマスタピストン部13c、12dが駆動され、マスタシリンダ13内のマスタ室13g、13fに、ブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧が発生する。
【0099】
このように、ブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧をマスタシリンダ13内のマスタ室13g、13fに機械的に発生させた上で、回生トルクに応じたブレーキ液圧を差し引くことにより回生協調に対応させているため、ブレーキペダル11のストロークなどを検出する検出装置を設けた従来のブレーキ装置と比較して、ブレーキ応答遅れを抑制することができる。
【0100】
回生トルクが0である場合すなわちブレーキペダル11は操作されているが回生制動は行われていない場合には、制御液圧は発生されないため、サーボ液圧ひいてはマスタ室13f、13gのブレーキ液圧は反力液圧に応じた液圧となる。一方、回生トルクが0でない場合すなわちブレーキペダル11は操作され回生制動が行われている場合には、制御液圧は発生されるため、サーボ液圧ひいてはマスタ室13g、13fのブレーキ液圧は反力液圧からその制御液圧を差し引いた液圧に応じた液圧となる。
【0101】
また、機械式レギュレータ15cにて、制動力が確保され、回生トルクを取得してから調圧するため、ブレーキペダル11のストロークなどを検出する検出装置を設け回生協調用のブレーキ液圧を作り、急制動を検出して切り替えを行う従来の構成と比較して、ブレーキペダル11を操作する際に操作の応答性を確保することができる。
【0102】
さらに、回生協調制御中においては、回生制動力分の制御液圧を機械式レギュレータ15cの制御液圧入力室20cに加えることにより、マスタシリンダ13内に発生されるブレーキ液圧を回生制動力分減少させている。この回生協調制御中に、回生制動力が失われた場合には、加えられている液圧を減ずることによりその失われた分を補充することができる。このとき、減ずる方法は、従来のように増大する方法に比べて、大容量のポンプやアキュムレータを設置することなく、しかも早急に行うことができる。よって、回生制動力が失われた場合であっても、装置自体の大型化・高コスト化を招くことなく、かつ、制御液圧の増圧をすることなく、応答性よく要求制動力を確保することができるブレーキ装置を提供することができる。
【0103】
また、回生トルクを発生させることができない回生異常を検出する回生異常検出手段(ステップ102,108,110)と、回生異常検出手段により回生異常であることが検出された場合に、制御液圧発生部15bにより制御液圧として大気圧を発生させる回生異常検出時制御手段(ステップ104)と、を備えている。よって、回生異常検出時に、制御液圧発生部15bにより制御液圧が大気圧にされ、機械式レギュレータ15cの制御液圧入力室20cに大気圧が供給され、反力液圧入力室20aに反力液圧発生部12の反力液圧が供給される。これにより、サーボ液圧出力室20bに反力液圧に応じたサーボ液圧が発生し、当該サーボ液圧がマスタシリンダ13のサーボ室13eに供給され、マスタ室13f、13gにブレーキ操作量に応じたブレーキ液圧が発生する。このように、回生異常時に、機械的に発生させた反力液圧により回生トルク分の液圧をブレーキペダルフィーリング(ストローク対踏力の特性)の変化なく応答性よく補充することができる。
【0104】
また、制御液圧発生部15bは、ブレーキ液を蓄圧するアキュムレータ15a1と、制御液圧入力室20cとアキュムレータ15a1とを接続する液圧増圧経路15b1と、液圧増圧経路15b1に設けられアキュムレータ15a1から制御液圧入力室20cへのブレーキ液の流れを制御する増圧制御弁15b2と、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバ14と、制御液圧入力室20cとリザーバ14とを接続する液圧減圧経路15b3と、液圧減圧経路15b3に設けられ制御液圧入力室20cからリザーバ14へのブレーキ液の流れを制御する減圧制御弁15b4と、を有して構成され、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のいずれかに異常を検出する制御液圧発生部異常検出手段(ステップ108,110)と、制御液圧発生部異常検出手段により増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のいずれかに異常があることが検出された場合に、増圧制御弁15b2を閉弁させ、減圧制御弁15b4を開弁させる制御液圧発生部異常検出時制御手段(ステップ104)と、を備えている。
【0105】
よって、制御液圧発生部15bにおいて、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のいずれかに異常があることが検出された場合に、増圧制御弁15b2が閉弁されてアキュムレータ15a1から液圧増圧経路15b1を介する制御液圧入力室20cへのブレーキ液の流れが遮断される一方、減圧制御弁15b4が開弁されて制御液圧入力室20cから液圧減圧経路15b3を介するリザーバ14へのブレーキ液の流れが開放される。また機械式レギュレータ15cの反力液圧入力室20aには、反力液圧発生部12により発生された反力液圧が供給される。これにより、機械式レギュレータ15cにおいて、制御液圧入力室20cの液圧は大気圧となり、反力液圧入力室20aの液圧は反力液圧に応じた液圧となるため、サーボ液圧出力室20bには反力液圧に応じたサーボ圧が発生する。このように、制御液圧発生部15bの増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4のいずれかに異常がある場合、すなわち回生協調制御が不能である場合に、機械的に発生させた反力液圧により回生トルク分の液圧を応答性よく補充することができる。
【0106】
反力液圧制御弁35aを制御して反力室12fとリザーバ14との間のブレーキ液の流れを開放すると、ブレーキペダル11の操作に伴ってブレーキペダル11に連動する部材である入力ピストン12cが摺動しても反力液圧ひいてはサーボ液圧が発生されず、マスタピストン部13c、12dはサーボ液圧により駆動されない。そのため、マスタピストン部13c、12dは、ブレーキ操作に応じて、ブレーキペダル11に連動する入力ピストン12cと一体となって摺動する。これにより、ブレーキペダル11の操作力がマスタピストン部13c、12dに伝わり、反力液圧がブレーキペダル11に作用することはない。このように、ブレーキペダル11の操作力は倍力されないが、操作力のみによる制動力は確実に確保することができる。
【0107】
このように操作力のみによる制動力を確実に確保すべき状態は、制御液圧発生部15bに異常がある場合であり、制御液圧発生部15bに異常がある状態としては、例えば、制御液圧発生部15bがアキュムレータ15a1と当該アキュムレータ15a1内にブレーキ液を蓄圧するポンプ15a2と当該ポンプ15a2を駆動する電気モータ15a3とを有して構成されている場合には、アキュムレータ15a1内の液圧が所定の閾値以下となっている状態や、ポンプ15a2に異常がある状態や、電気モータ15a3に異常がある場合が考えられる。
【0108】
また、反力室12fはリザーバ14に接続されており、反力室12fとリザーバ14との間に設けられ、当該反力室12fと当該リザーバ14との間のブレーキ液の流れを制御する反力液圧制御弁35aと、アキュムレータ15a1を蓄圧するポンプ15a2のモータ15a3と、をさらに備え、アキュムレータ15a1が低圧であり、または、ポンプ15a2もしくはモータ15a3が異常である場合には、反力液圧制御弁35aを開弁させ反力室12fとリザーバ14とを連通させる。これにより、アキュムレータ15a1が低圧であり、または、ポンプ15a2もしくはモータ15a3が異常である場合には、ブレーキペダル11の操作力のみによる制動力は確実に確保することができる。
【0109】
また、反力液圧制御弁35aは常開型の電磁弁である。これにより、電気系が異常となっても、反力液圧制御弁35aは開弁されるので、ブレーキペダル11の操作力のみによる制動力は確実に確保することができる。
【0110】
また、減圧制御弁15b4は常開型のリニア電磁弁であり、増圧制御弁15b2は常閉型のリニア電磁弁である。よって、電源失陥時に、制御液圧発生部15bにおいて、常閉型の増圧制御弁15b2が閉弁されてアキュムレータ15a1から液圧増圧経路15b1を介する制御液圧入力室20cへのブレーキ液の流れが遮断される一方、常開型の減圧制御弁15b4が開弁されて制御液圧入力室20cから液圧減圧経路15b3を介するリザーバ14へのブレーキ液の流れが開放される。また機械式レギュレータ15cの反力液圧入力室20aには、反力液圧発生部12により発生された反力液圧が供給される。これにより、機械式レギュレータ15cにおいて、制御液圧入力室20cの液圧は大気圧となり、反力液圧入力室20aの液圧は反力液圧に応じた液圧となるため、サーボ液圧出力室20bには反力液圧に応じたサーボ圧が発生する。このように、電源失陥時に、機械的に発生させた反力液圧により回生トルク分の液圧を応答性よく補充することができる。
【0111】
2)第2の実施形態
次に、本発明に係るブレーキ装置の第2の実施形態について図12を参照して説明する。図12はブレーキ装置の構成を示す概要図である。本第2の実施形態は、第1の実施形態のブレーキ装置を自動加圧機能が追加されたものである。同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0112】
ブレーキ装置においては、液圧油路33に反力液圧入力制御弁33aが設けられている。反力液圧入力制御弁33aは、反力室12fと反力液圧入力室20aとの間に設けられ、反力室12fから反力液圧入力室20aへのブレーキ液の流れを制御する。反力液圧入力制御弁33aは常開型の電磁弁である。
【0113】
また、反力液圧入力室20aは制御液圧入力室20cに液圧油路36を介して接続されている。液圧油路36には制御液圧入力制御弁36aが設けられている。制御液圧入力制御弁36aは、制御液圧入力室20cと反力液圧入力室20aとの間に設けられ、制御液圧入力室20cから反力液圧入力室20aへのブレーキ液の流れを制御する。すなわち、アキュムレータ15a1は制御液圧入力制御弁36aを介して反力液圧入力室20aに接続されている。
【0114】
また、ブレーキ装置は、上述した制動液圧調整装置16に代えて制動液圧調整装置19を設けている。制動液圧調整装置19は、一般的によく知られているものであり、保持弁、減圧弁、リザーバタンク、ポンプ、および電動モータなどを有して構成されている。制動液圧調整装置19は、ブレーキECU17からの指令を受けて、マスタシリンダ13からのブレーキ液圧を供給され各ホイールシリンダWC**に付与するブレーキ液圧すなわち車輪W**に付与する制動液圧を調整するABS御(アンチロックブレーキ制御)を実行する。制動液圧調整装置19も、車輪速度センサS**を備えている。
【0115】
上述したように構成された車両用のブレーキ装置の作動について図13のフローチャートに沿って説明する。ブレーキECU17は、例えば車両のイグニションスイッチ(図示省略)がオン状態にあるとき、上記フローチャートに対応したプログラムを所定の短時間毎に実行する。ブレーキECU17は、車両状態を検出する(ステップ202)。例えば、車両状態は車両のアンダステア状態、オーバステア状態である。具体的には、実ヨーレートを検出し、舵角ヨーレートとの偏差(ヨーレート偏差)を演算し、そのヨーレート偏差に基づいてアンダステア状態であるかオーバステア状態であるかニュートラルステア状態を判定する。また、車両状態は駆動輪のスリップ状態がある。この場合には、駆動輪の車輪速度を車輪速度センサS**によって検出する。
【0116】
ブレーキECU17は、車両状態の検出結果に基づいて自動加圧制御が必要か否かを判定する(ステップ204)。ブレーキECU17は、自動加圧制御が必要でないと判定した場合には、ステップ204で「NO」と判定し、ステップ206で通常制御を行う。通常制御においては、反力液圧入力制御弁33aはオフ(非通電)されて開状態となり、制御液圧入力制御弁36aもオフ(非通電)されて閉状態となる。このとき、上述した第1の実施形態と同様に、機械式レギュレータ15cにおいては、反力室12fから反力液圧入力室20aに供給されている反力液圧から、制御液圧入力室20cに供給されている制御液圧を差し引いた液圧に応じたサーボ液圧がサーボ液圧出力室20bで発生される。詳述すると、回生トルクが0であるときすなわちブレーキペダル11は操作されているが回生制動は行われていない場合には、制御液圧は発生されないため、サーボ液圧は反力液圧に応じた液圧となる。一方、回生トルクが0でないときすなわちブレーキペダル11は操作され回生制動が行われている場合には、制御液圧は発生されるため、サーボ液圧は反力液圧からその制御液圧を差し引いた液圧に応じた液圧となる。
【0117】
ブレーキECU17は、自動加圧制御が必要であると判定した場合には、ステップ204で「YES」と判定し、ステップ208で自動加圧制御を行う。自動加圧制御においては、反力液圧入力制御弁33aはオン(通電)されて閉状態となり、制御液圧入力制御弁36aもオン(通電)されて開状態となる。これにより、制御液圧発生部15bから反力液圧入力室20aに制御液圧が供給されても、その供給された制御液圧が反力室12fに排出されることはない。
【0118】
制御液圧発生部15bからの制御液圧は、反力液圧入力室20aおよび制御液圧入力室20cの両入力室に供給されているが、受圧面積は反力液圧入力室20aの方が十分大きいため、調圧ピストン22は自動加圧制御に応じたサーボ液圧が発生する位置でバランスしてサーボ液圧が保持される。
【0119】
また、制御液圧発生部15bからの制御液圧は、ESC制御やトラクションコントロール制御に必要な所望の液圧に設定されている。増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b4が制御されて、設定された所望の液圧が発生される。
【0120】
上述した第2の実施形態によれば、反力液圧入力室20aは制御液圧発生部15bに接続されており、制御液圧発生部15bと反力液圧入力室20aとの間に設けられ、当該制御液圧発生部15bから反力液圧入力室20aへのブレーキ液の流れを制御する制御液圧入力制御弁36aと、反力液圧発生部12と反力液圧入力室20aとの間に設けられ、当該反力液圧発生部12から反力液圧入力室20aへのブレーキ液の流れを制御する反力液圧入力制御弁33aと、車両状態を検出する車両状態検出手段(ステップ202)と、制御液圧入力制御弁36aを開弁させ反力液圧入力制御弁33aを閉弁させるとともに、車両状態検出手段(ステップ202)により検出されている車両状態に応じた制御液圧を制御液圧発生部15bにより発生させて、ブレーキペダル11の操作量に拘わらず自動的に反力液圧入力室20aを加圧する自動加圧制御手段(ステップ208)と、を備えている。
【0121】
よって、自動加圧制御手段(ステップ208)により、制御液圧入力制御弁36aが開弁され反力液圧入力制御弁33aが閉弁されるとともに、制御液圧発生部15bで車両状態に応じた制御液圧が発生されると、当該制御液圧が機械式レギュレータ15cの反力液圧入力室20aに供給され、反力液圧発生部12の反力液圧が反力液圧入力室20aに供給されることはない。これにより、ブレーキ操作量に拘わらず、車両状態に応じたサーボ圧がサーボ液圧出力室20bに発生し、当該サーボ圧がマスタシリンダ13内のサーボ室13eに供給され、マスタ室13f、13gに車両状態に応じたブレーキ液圧が発生する。よって、車両状態に応じた自動加圧制御を行うことが可能である。例えば、自動加圧制御が必要な状態で車両状態に応じた自動加圧制御を実行することが考えられる。具体的には、制動液圧調整装置19にて、ESC制御が必要な状態で車両状態としてのヨーレートに応じた自動加圧制御を自動的に実行したり、トラクションコントロールが必要な状態で車両状態としての車輪の空転に応じた自動加圧制御を自動的に実行したりする。また、自動加圧制御の実行モードへの切り替えスイッチがオンされた状態であることを条件に、自動加圧制御を実行することが考えられる。
【0122】
また、制御液圧入力制御弁36aが常閉型の電磁弁であり反力液圧入力制御弁33aが常開型の電磁弁であるため、電源失陥時に制御液圧入力制御弁36aが閉弁し反力液圧入力制御弁33aが開弁する。その結果、反力液圧発生部12から機械式レギュレータ15cの反力液圧入力室20aへのブレーキ液の流れは開放され、制御液圧発生部15bから反力液圧入力室20aへのブレーキ液の流れは遮断される。このように電源失陥時に、自動加圧制御を自動的に終了させるとともに、機械的に発生させた反力液圧によりブレーキ操作量に応じたブレーキ力を確保することができる。
【0123】
3)変形例
上述した第1および第2の実施形態において、機械式レギュレータ15cの変形例について図14を参照して説明する。図14に示す機械式レギュレータ115cは、環状部材25が削除された点、調圧ピストン122が主ピストン122aと副ピストン122fとを有して構成された点、およびシリンダ穴21hが形成された点が機械式レギュレータ15cと異なる点である。機械式レギュレータ15cと同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0124】
ハウジング21には、シリンダ穴21aとシリンダ穴21hが隔壁21iにより区画されて形成されている。シリンダ穴21aには、調圧ピストン122の主ピストン122aが液密かつ摺動可能に配設されている。シリンダ穴21hには、調圧ピストン122の副ピストン122fが液密かつ摺動可能に配設されている。隔壁21iには、主ピストン122aと副ピストン122fとを連結する連結部122eが液密かつ摺動可能に貫設されている。
【0125】
主ピストン122aの一側端(右端)と隔壁21iとの間には、反力液圧入力室20aが形成されている。主ピストン122aの他側端(左端)から突設部22cが突設されている。主ピストン122aの周側面には連通溝22a1が形成されている。
【0126】
副ピストン122fの他側端(左端)と隔壁21iとの間には、制御液圧入力室20cが形成されている。副ピストン122fの一側端(右端)とシリンダ穴21hの右閉塞端との間には、リザーバ14にポート21gを介して接続されている大気圧室20eが形成されている。
【0127】
このように構成された機械式レギュレータ115cの作動について説明する。反力液圧入力室20aが増圧され、主ピストン122aの一側端に作用する力が、主ピストン122aの他側端に作用する力とスプリング23による付勢力の総和より大きくなれば、調圧ピストン122は左方向への移動を開始する。さらに、調圧ピストン122が左方向へ移動されると、弁座22d1が弁体26に当接して、減圧弁は閉状態となる。さらに、調圧ピストン122が左方向へ移動されて、調圧ピストン122がスプリング27の付勢力に抗して弁体26が左方向に移動されると、弁体26が弁座24a2から離脱して、増圧弁は開状態となる。
【0128】
増圧弁が開状態とされると、アキュムレータ15a1からの高圧の液圧がサーボ液圧出力室20bに供給される。サーボ液圧出力室20b内の液圧が上昇して、主ピストン122aの一側端に作用する力が、主ピストン122aの他側端に作用する力とスプリング23による付勢力の総和とが等しくなれば、調圧ピストン122は右方向への移動を開始する。その後、弁体26が弁座24a2に着座して増圧弁が閉状態となり、増加していたサーボ液圧は保持される。さらに、弁座22d1は反力液圧入力室20a内の液圧が減少すると、弁体26から離脱して減圧弁が開状態となる。これにより、サーボ液圧出力室20bは連通路22dを介してドレンポート21c(リザーバ14)に連通するため、サーボ液圧出力室20b内の液圧は低下する。
【0129】
そして、サーボ液圧出力室20b内の液圧が低下して、主ピストン122aの一側端に作用する力が、主ピストン122aの他側端に作用する力とスプリング23による付勢力の総和より大きくなれば、調圧ピストン22は左方向への移動を再び開始する。このような調圧ピストン22の左右方向の移動の繰り返しによって、機械式レギュレータ115cは高圧入力ポート21bに加えられている圧力により反力液圧入力室20aに供給される液圧に応じた液圧を出力ポート21eから出力することができる。
なお、減圧制御弁15b4は常開型の電磁弁であるため、減圧制御弁15b4が非通電であるときには制御液圧入力室20cはリザーバ14に接続されているため、制御液圧入力室20cも大気圧になっており副ピストン122fの移動はスムーズに行われる。
【0130】
さらに、回生トルクが必要となった場合には、制御液圧発生部15bで発生されたその回生トルクに応じたブレーキ液圧(制御液圧)が制御液圧入力ポート21fを介して制御液圧入力室20cに供給される。その結果、制御液圧入力室20c内の制御液圧による力(環状面積×制御液圧)が調圧ピストン122に作用すると、調圧ピストン122は右方向に移動する。主ピストン122aの一側端に作用する力が、主ピストン122aの他側端に作用する力とスプリング23による付勢力と副ピストン122hの他側端に作用する力(=環状面積×制御液圧)の総和と等しくなる位置で、調圧ピストン22はバランスして位置決めされる。このとき、機械式レギュレータ15cは、反力液圧による力から制御液圧による力を差し引いた力に応じたサーボ液圧をサーボ液圧出力室20bに発生させている。
【符号の説明】
【0131】
1…エンジン、2…モータ、3…動力分割機構、4…動力伝達機構、5…発電機、6…インバータ、7…バッテリ、8…エンジンECU、9…ハイブリッドECU、11…ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)、11a…ブレーキスイッチ、12…反力液圧発生部、12c…入力ピストン、12d…出力ロッド(マスタピストン部)、12f…反力室、12g…ストロークシミュレータ、13…マスタシリンダ、13c…第1ピストン(マスタピストン部)、13e…サーボ室、13f、13g…第1および第2液圧室(マスタ室)、14…リザーバ、15…サーボ液圧調整装置、15a…圧力供給装置、15a1…アキュムレータ、15a2…ポンプ、15a3…電動モータ、15b…制御液圧発生部、15b2…増圧制御弁、15b4…減圧制御弁、15c,115c…機械式レギュレータ、16…制動液圧調整装置、17…ブレーキECU(回生トルク取得部、車両状態検出手段、自動加圧制御手段、回生異常検出手段、回生異常検出時制御手段、制御液圧発生部異常検出手段、制御液圧発生部異常検出時制御手段)、20a…反力液圧入力室、20b…サーボ液圧出力室、20c…制御液圧入力室、A…回生ブレーキ装置、B…ブレーキ装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作部材(11)の操作に応じてマスタシリンダ(13)内にブレーキ液圧を発生させる車両用のブレーキ装置において、
前記マスタシリンダ内にマスタ室(13f、13g)およびサーボ室(13e)を形成し、前記サーボ室のブレーキ液圧であるサーボ液圧に駆動されて前記マスタシリンダ内を前記ブレーキ操作部材の操作に拘わらず摺動可能に構成され、前記マスタ室にブレーキ液圧を発生させるマスタピストン部(13c,12d)と、
回生トルクを取得する回生トルク取得部(17、ステップ122)と、
前記回生トルク取得部により取得された回生トルクに応じた制御液圧を発生させる制御液圧発生部(15b)と、
前記ブレーキ操作部材の操作量に応じたブレーキ液圧である反力液圧を機械的に発生させる反力液圧発生部(12)と、
前記反力液圧発生部に接続される反力液圧入力室(20a)と、前記制御液圧発生部に接続される制御液圧入力室(20c)と、前記サーボ室に接続されるサーボ液圧出力室(20b)と、が形成され、前記反力液圧による力から前記制御液圧による力を差し引いた力に応じた前記サーボ液圧を前記サーボ液圧出力室に機械的に発生させる機械式レギュレータ(15c)と、
を備えていることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記反力液圧入力室は前記制御液圧発生部に接続されており、
前記制御液圧発生部と前記反力液圧入力室との間に設けられ、当該制御液圧発生部から前記反力液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する制御液圧入力制御弁(36a)と、
前記反力液圧発生部と前記反力液圧入力室との間に設けられ、当該反力液圧発生部から前記反力液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する反力液圧入力制御弁(33a)と、
車両状態を検出する車両状態検出手段(17,ステップ202)と、
前記制御液圧入力制御弁を開弁させ前記反力液圧入力制御弁を閉弁させるとともに、前記車両状態検出手段により検出されている車両状態に応じた制御液圧を前記制御液圧発生部により発生させて、前記ブレーキ操作部材の操作量に拘わらず自動的に前記反力液圧入力室を加圧する自動加圧制御手段(17、ステップ208)と、
を備えていることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御液圧入力制御弁は常閉型の電磁弁であり、前記反力液圧入力制御弁は常開型の電磁弁であることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
回生トルクを発生させることができない回生異常を検出する回生異常検出手段(17、ステップ102,108,110)と、
前記回生異常検出手段により前記回生異常であることが検出された場合に、前記制御液圧発生部による前記制御液圧を大気圧にして当該大気圧を前記制御液圧入力室に供給するとともに、前記反力液圧発生部による前記反力液圧を前記反力液圧入力室に供給する回生異常検出時制御手段(17、ステップ104)と、
を備えていることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバと、
前記反力液圧発生部と前記リザーバとの間に設けられ、当該反力液圧発生部と当該リザーバとの間のブレーキ液の流れを制御する反力液圧制御弁(35a)とを備え、前記反力液圧発生部と前記リザーバとの間のブレーキ液の流れが開放された状態で、前記反力液圧が前記ブレーキ操作部材の操作量に拘わらず大気圧になることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記反力液圧制御弁は常開型の電磁弁であることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記制御液圧発生部は、ブレーキ液を蓄圧するアキュムレータ(15a1)と、前記制御液圧入力室と前記アキュムレータとを接続する液圧増圧経路(15b1)と、前記液圧増圧経路に設けられ前記アキュムレータから前記制御液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する増圧制御弁(15b2)と、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバ(14)と、前記制御液圧入力室と前記リザーバとを接続する液圧減圧経路(15b3)と、前記液圧減圧経路に設けられ前記制御液圧入力室から前記リザーバへのブレーキ液の流れを制御する減圧制御弁(15b4)と、を有して構成され、
前記減圧制御弁は常開型の電磁弁であり、前記増圧制御弁は常閉型の電磁弁であることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
前記制御液圧発生部は、ブレーキ液を蓄圧するアキュムレータ(15a1)と、前記制御液圧入力室と前記アキュムレータとを接続する液圧増圧経路(15b1)と、前記液圧増圧経路に設けられ前記アキュムレータから前記制御液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する増圧制御弁(15b2)と、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバ(14)と、前記制御液圧入力室と前記リザーバとを接続する液圧減圧経路(15b3)と、前記液圧減圧経路に設けられ前記制御液圧入力室から前記リザーバへのブレーキ液の流れを制御する減圧制御弁(15b4)と、を有して構成され、
前記増圧制御弁および前記減圧制御弁のいずれかに異常を検出する制御液圧発生部異常検出手段(17、ステップ108,110)と、
前記制御液圧発生部異常検出手段により前記増圧制御弁および前記減圧制御弁のいずれかに異常があることが検出された場合に、前記増圧制御弁を閉弁させ、前記減圧制御弁を開弁させる制御液圧発生部異常検出時制御手段(17、ステップ104)と、
を備えていることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項1】
ブレーキ操作部材(11)の操作に応じてマスタシリンダ(13)内にブレーキ液圧を発生させる車両用のブレーキ装置において、
前記マスタシリンダ内にマスタ室(13f、13g)およびサーボ室(13e)を形成し、前記サーボ室のブレーキ液圧であるサーボ液圧に駆動されて前記マスタシリンダ内を前記ブレーキ操作部材の操作に拘わらず摺動可能に構成され、前記マスタ室にブレーキ液圧を発生させるマスタピストン部(13c,12d)と、
回生トルクを取得する回生トルク取得部(17、ステップ122)と、
前記回生トルク取得部により取得された回生トルクに応じた制御液圧を発生させる制御液圧発生部(15b)と、
前記ブレーキ操作部材の操作量に応じたブレーキ液圧である反力液圧を機械的に発生させる反力液圧発生部(12)と、
前記反力液圧発生部に接続される反力液圧入力室(20a)と、前記制御液圧発生部に接続される制御液圧入力室(20c)と、前記サーボ室に接続されるサーボ液圧出力室(20b)と、が形成され、前記反力液圧による力から前記制御液圧による力を差し引いた力に応じた前記サーボ液圧を前記サーボ液圧出力室に機械的に発生させる機械式レギュレータ(15c)と、
を備えていることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記反力液圧入力室は前記制御液圧発生部に接続されており、
前記制御液圧発生部と前記反力液圧入力室との間に設けられ、当該制御液圧発生部から前記反力液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する制御液圧入力制御弁(36a)と、
前記反力液圧発生部と前記反力液圧入力室との間に設けられ、当該反力液圧発生部から前記反力液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する反力液圧入力制御弁(33a)と、
車両状態を検出する車両状態検出手段(17,ステップ202)と、
前記制御液圧入力制御弁を開弁させ前記反力液圧入力制御弁を閉弁させるとともに、前記車両状態検出手段により検出されている車両状態に応じた制御液圧を前記制御液圧発生部により発生させて、前記ブレーキ操作部材の操作量に拘わらず自動的に前記反力液圧入力室を加圧する自動加圧制御手段(17、ステップ208)と、
を備えていることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御液圧入力制御弁は常閉型の電磁弁であり、前記反力液圧入力制御弁は常開型の電磁弁であることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
回生トルクを発生させることができない回生異常を検出する回生異常検出手段(17、ステップ102,108,110)と、
前記回生異常検出手段により前記回生異常であることが検出された場合に、前記制御液圧発生部による前記制御液圧を大気圧にして当該大気圧を前記制御液圧入力室に供給するとともに、前記反力液圧発生部による前記反力液圧を前記反力液圧入力室に供給する回生異常検出時制御手段(17、ステップ104)と、
を備えていることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバと、
前記反力液圧発生部と前記リザーバとの間に設けられ、当該反力液圧発生部と当該リザーバとの間のブレーキ液の流れを制御する反力液圧制御弁(35a)とを備え、前記反力液圧発生部と前記リザーバとの間のブレーキ液の流れが開放された状態で、前記反力液圧が前記ブレーキ操作部材の操作量に拘わらず大気圧になることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記反力液圧制御弁は常開型の電磁弁であることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記制御液圧発生部は、ブレーキ液を蓄圧するアキュムレータ(15a1)と、前記制御液圧入力室と前記アキュムレータとを接続する液圧増圧経路(15b1)と、前記液圧増圧経路に設けられ前記アキュムレータから前記制御液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する増圧制御弁(15b2)と、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバ(14)と、前記制御液圧入力室と前記リザーバとを接続する液圧減圧経路(15b3)と、前記液圧減圧経路に設けられ前記制御液圧入力室から前記リザーバへのブレーキ液の流れを制御する減圧制御弁(15b4)と、を有して構成され、
前記減圧制御弁は常開型の電磁弁であり、前記増圧制御弁は常閉型の電磁弁であることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
前記制御液圧発生部は、ブレーキ液を蓄圧するアキュムレータ(15a1)と、前記制御液圧入力室と前記アキュムレータとを接続する液圧増圧経路(15b1)と、前記液圧増圧経路に設けられ前記アキュムレータから前記制御液圧入力室へのブレーキ液の流れを制御する増圧制御弁(15b2)と、大気圧のブレーキ液を貯留するリザーバ(14)と、前記制御液圧入力室と前記リザーバとを接続する液圧減圧経路(15b3)と、前記液圧減圧経路に設けられ前記制御液圧入力室から前記リザーバへのブレーキ液の流れを制御する減圧制御弁(15b4)と、を有して構成され、
前記増圧制御弁および前記減圧制御弁のいずれかに異常を検出する制御液圧発生部異常検出手段(17、ステップ108,110)と、
前記制御液圧発生部異常検出手段により前記増圧制御弁および前記減圧制御弁のいずれかに異常があることが検出された場合に、前記増圧制御弁を閉弁させ、前記減圧制御弁を開弁させる制御液圧発生部異常検出時制御手段(17、ステップ104)と、
を備えていることを特徴とする車両用のブレーキ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−43489(P2013−43489A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181022(P2011−181022)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
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