説明

車両用の配線固定構造

【課題】部品点数が少なく、取り付け作業の効率が良好であって、車両走行時における損傷が少ない車両用の配線固定構造を提供する。
【解決手段】配線固定構造10は、シャシフレーム1に固定されたサポート板12と、配線C1〜C3を担持する溝型ブラケット14と、溝型ブラケット14に担持された配線C1〜C3を結束するケーブルバンド16とにより構成される。サポート板12は、配線C1〜C3の配索方向に延在するようにシャシフレーム1に固定されており、ケーブルバンド16は、溝型ブラケット14とサポート板12との間の空洞部14Aに挿通され、溝型ブラケット14に担持された配線C1〜C3を結束している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の配線固定構造に係り、例えば、バスやトラック等の車両の電装部品をECUに接続する電気配線を車体側に固定するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バスやトラック等の車両では、離れた場所にある電装部品とECUとを電気配線で接続したものがある。
【0003】
この種の電気配線は、通常、車両のシャシフレームに溶接されたサポート板上に配索された状態でサポート板に固定される。電気配線の固定は、例えば、サポート板上に配索された電気配線を板金クランプでサポート板に固定したり、ケーブルバンドで電気配線をサポート板に直接固定したりして行う。
【0004】
また、シャシフレームに配線を固定する構造ではないが、特許文献1には、車両パネルに配索物を取り付けるバンドクランプが記載されている。このバンドクランプは、並設して配索されたハーネス、ホース及びケーブルの外周に複数本のバンドを巻き回すことで、これらの配索物を車両パネルに取り付けるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−19650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電気配線を板金クランプでサポート板に固定すると、板金クランプに加えてボルト及びナット等の締結部品が必要となり、部品点数が多くなってしまう。しかも、板金クランプ内への電気配線の押し込み作業が必要であるため、取り付け作業の効率が低いという問題があった。
【0007】
また電気配線をケーブルバンドでサポート板に直接固定すると、部品点数を低減することができるものの、ケーブルバンドがサポート板の下面にも巻き回されることになり、ケーブルバンドの一部が地面側に露出してしまうので、車両走行時における地面からの飛び石や小石の挟み込み等によってケーブルバンドが損傷してしまう問題があった。なお、この問題は、特許文献1に記載のバンドクランプをシャシフレームへの配線固定に適用した場合にも同様に、バンドクランプの損傷として起こり得る。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、部品点数が少なく、取り付け作業の効率が良好であって、車両走行時における損傷が少ない車両用の配線固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車両用の配線固定構造は、車両に配線を固定するための構造であって、前記配線の配索方向に延在するように、前記車両のシャシフレームに固定されたサポート板と、前記サポート板との間に空洞部が形成されるように前記サポート板上に固定され、前記配線を担持する溝型ブラケットと、前記溝型ブラケットと前記サポート板との間の前記空洞部に挿通され、前記溝型ブラケットに担持された前記配線を結束するケーブルバンドとを備える。
【0010】
この配線固定構造によれば、溝型ブラケットとサポート板との間の空洞部にケーブルバンドを挿通して、溝型ブラケットに担持された配線を結束固定するようにしたので、板金クランプを用いた従来の配線固定構造に比べて部品点数を低減し、取り付け作業の効率を向上させることができる。
【0011】
また上記配線固定構造では、サポート板上に設けられた溝型ブラケットとサポート板との間の空洞部にケーブルバンドが挿通されるため、ケーブルバンドがサポート板の下面に巻き回されることはない。このように、ケーブルバンドは地面側に露出していないので、車両走行時における地面からの飛び石や小石の挟み込み等によってケーブルバンドが損傷してしまうことがない。
【0012】
上記配線固定構造において、前記シャシフレーム及び前記サポート板には、それぞれ貫通孔が設けられており、該貫通孔にボルトが挿通され該ボルトの先端にナットが螺着されることで、前記サポート板は前記シャシフレームに固定されるとともに、前記シャシフレーム及び前記サポート板のいずれか一方の前記貫通孔は、前記配線の前記配索方向に長い長穴であることが好ましい。
【0013】
これにより、シャシフレーム及びサポート板に寸法誤差が生じても、長穴状の貫通孔によって寸法誤差を吸収することができるので、サポート板を確実にシャシフレームに組み付けることができる。
【0014】
上記配線固定構造において、前記溝型ブラケットは、前記サポート板に略直交しており、前記溝型ブラケットの長さは、前記サポート板の幅よりも小さいことが好ましい。
【0015】
このように溝型ブラケットの長さがサポート板の幅よりも小さくなるようにすることで、溝型ブラケットとサポート板との間の空洞部に挿通されるケーブルバンドをサポート板で覆うことができる。したがって、車両走行時における地面からの飛び石や小石の挟み込み等によるケーブルバンドの損傷をより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溝型ブラケットとサポート板との間の空洞部にケーブルバンドを挿通して、溝型ブラケットに担持された配線を結束固定するようにしたので、板金クランプを用いた従来の配線固定構造に比べて部品点数を低減し、取り付け作業の効率を向上させることができる。
【0017】
また、サポート板上に設けられた溝型ブラケットとサポート板との間の空洞部にケーブルバンドが挿通されるため、ケーブルバンドがサポート板の下面に巻き回されることはない。このように、ケーブルバンドは地面側に露出していないので、車両走行時における地面からの飛び石や小石の挟み込み等によってケーブルバンドが損傷してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の配線固定構造により、配線をシャシフレームに固定した様子を示す平面図である。
【図2】本実施形態の配線固定構造の構成例を示す斜視図である。
【図3】配線固定構造を示す図であり、(a)は配線固定構造の側面図、(b)は図3(a)の3B−3B線に沿った配線固定構造の断面図である。
【図4】シャシフレームにサポート板を固定する様子を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の配線固定構造により、配線をシャシフレームに固定した様子を示す平面図である。図2は、本実施形態の配線固定構造の構成例を示す斜視図である。図3(a)は配線固定構造の側面図であり、図3(b)は図3(a)の3B−3B線に沿った配線固定構造の断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る配線固定構造10は、車両のシャシフレーム1に固定されている。シャシフレーム1は、車両の両側に車両前後方向に沿って配置される一対のサイドレール2と、サイドレール2に架け渡される複数のクロスメンバー4とにより構成される。
【0022】
配線固定構造10は、図2及び図3に示すように、シャシフレーム1に固定されたサポート板12と、配線C1〜C3を担持する溝型ブラケット14と、溝型ブラケット14に担持された配線C1〜C3を結束するケーブルバンド16とにより構成される。なお、以下では3本の配線C1〜C3の固定構造について説明するが、配線の本数はこの例に限られず、何本であってもよいことはいうまでもない。
【0023】
配線C1〜C3は、例えば、車両フロント部に配置された電装部品を車両リア部に配置されたECUに接続するための電気配線であってもよい。この場合、配線C1〜C3は、シャシフレーム1のクロスメンバー4に設けられた貫通穴(不図示)に挿通され、車両フロント部の電装部品から車両リア部のECUに接続される。
【0024】
サポート板12は、配線C1〜C3の配索方向に延在するようにシャシフレーム1に固定されている。サポート板12は、図1に示すように、複数設けられており、各サポート板12A〜12Cが、シャシフレーム1の複数のクロスメンバー4の間に架け渡されている。
【0025】
溝型ブラケット14は、サポート板12上に互いに間隔を空けて複数設けられ、それぞれが配線C1〜C3を担持している。溝型ブラケット14は、図3(a)に示すように、溝型ブラケット14の開口部(溝部)がサポート板12に向かい合うように配置され、溝型ブラケット14とサポート板12との間に空洞部14Aが形成されている。なお、溝型ブラケット14のサポート板への固定は、例えば、スポット溶接やシームレス溶接等の溶接によって行うことができる。
【0026】
また溝型ブラケット14は、サポート板12に略直交しており、図3(b)に示すように、溝型ブラケット14の長さLは、サポート板12の幅Wよりも小さいことが好ましい。このように溝型ブラケット14の長さLがサポート板12の幅Wよりも小さくなるようにすることで、溝型ブラケット14とサポート板12との間の空洞部14Aに挿通されるケーブルバンド16をサポート板12で覆うことができる。したがって、車両走行時における地面からの飛び石や小石の挟み込み等によるケーブルバンド16の損傷をより確実に防止することができる。
【0027】
ケーブルバンド16は、溝型ブラケット14とサポート板12との間の空洞部14Aに挿通され、溝型ブラケット14に担持された配線C1〜C3を結束している。ケーブルバンド16としては、例えば、トーマスアンドベッツインターナショナルインク社製のタイラップをはじめとする樹脂製バンドを用いることができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の配線固定構造10によれば、溝型ブラケット14とサポート板12との間の空洞部14Aにケーブルバンド16を挿通して、溝型ブラケット14に担持された配線C1〜C3を結束固定するようにしたので、板金クランプを用いた従来の配線固定構造に比べて部品点数を低減し、取り付け作業の効率を向上させることができる。
【0029】
また配線固定構造10では、サポート板12上に設けられた溝型ブラケット14とサポート板12との間の空洞部14Aにケーブルバンド16が挿通されるため、ケーブルバンド16がサポート板12の下面に巻き回されることはない。このように、ケーブルバンド16は地面側に露出していないので、車両走行時における地面からの飛び石や小石の挟み込み等によってケーブルバンド16が損傷してしまうことがない。
【0030】
なお、上述の実施形態では、シャシフレーム1へのサポート板12の固定方法については特に説明しなかったが、ボルト及びナットを用いて、サポート板12をクロスメンバー4に締結してもよい。
【0031】
図4は、ボルト及びナットを用いて、シャシフレーム1にサポート板12を固定する様子を示す分解斜視図である。同図に示すように、シャシフレーム1のクロスメンバー4には、ブラケット6がクロスメンバー4から車両前後方向に張り出すように設けられている。クロスメンバー4へのブラケット6の固定は、例えば、溶接によって行ってもよい。またブラケット6及びサポート板12には、それぞれ貫通孔6A及び貫通孔12Aが設けられている。そして、これらの貫通孔6A、12Aにボルト20が挿通され該ボルト20の先端にナット22が螺着されることで、サポート板12がブラケット6に固定される。
【0032】
ここで、ブラケット6及びサポート板12のいずれか一方の貫通孔(6A、12A)は、車両前後方向(図2に示す配線C1〜C3の配索方向)に長い長穴になっている(図4に示す例では、貫通孔6Aが長穴である)。これにより、シャシフレーム1及びサポート板12に寸法誤差が生じても、長穴状の貫通穴6Aによって寸法誤差を吸収することができるので、サポート板12を確実にシャシフレーム1に組み付けることができる。
【0033】
なお、図4には、クロスメンバー4に固定されたブラケット6に対して、サポート板12を取り付ける例を示したが、クロスメンバー4に貫通穴を設けて、クロスメンバー4に直接サポート板12を取り付けるようにしてもよい。
【0034】
以上、本発明の一例について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 シャシフレーム
2 サイドレール
4 クロスメンバー
10 配線固定構造
12 サポート板
14 溝型ブラケット
14A 空洞部
16 ケーブルバンド
20 ボルト
22 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配線を固定するための構造であって、
前記配線の配索方向に延在するように、前記車両のシャシフレームに固定されたサポート板と、
前記サポート板との間に空洞部が形成されるように前記サポート板上に固定され、前記配線を担持する溝型ブラケットと、
前記溝型ブラケットと前記サポート板との間の前記空洞部に挿通され、前記溝型ブラケットに担持された前記配線を結束するケーブルバンドとを備える車両用の配線固定構造。
【請求項2】
前記シャシフレーム及び前記サポート板には、それぞれ貫通孔が設けられており、該貫通孔にボルトが挿通され該ボルトの先端にナットが螺着されることで、前記サポート板は前記シャシフレームに固定されるとともに、
前記シャシフレーム及び前記サポート板のいずれか一方の前記貫通孔は、前記配線の前記配索方向に長い長穴であることを特徴とする請求項1に記載の車両用の配線固定構造。
【請求項3】
前記溝型ブラケットは、前記サポート板に略直交しており、
前記溝型ブラケットの長さは、前記サポート板の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用の配線固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−127659(P2011−127659A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285279(P2009−285279)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】