説明

車両用インストルメントパネルの取り付け装置及び方法

【課題】インストルメントパネルを車室内に迅速且つ効率的に組み込むことを可能にする。
【解決手段】取り付け装置10は、インストルメントパネル24を把持するインパネ把持手段78を設け、前記インストルメントパネル24を搬送するとともに、前記インストルメントパネル24の重量を保持するアシスト機能を有するアシスト機18と、前記インパネ把持手段78に着脱可能に連結される連結手段80を設け、前記インパネ把持手段78を操作して前記インストルメントパネル24を車室14a内に配置し且つねじ止めする作業ロボット20、22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内にインストルメントパネルを組み付けるための車両用インストルメントパネルの取り付け装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の組立ラインにおいて、重量物部品の一つであるインストルメントパネルを、ロボットを用いて自動車車体の車室内に自動的に組み付ける作業が行われている。
【0003】
この種の作業に適用される装置として、例えば、特許文献1に開示されたインストルメントパネルアッセンブリの組み付け装置が知られている。この組み付け装置は、図14に示すように、自動車用ボディ本体1を搬送する組み立てライン2に並行してインパネアッシ3の供給ライン4が設けられている。
【0004】
この供給ライン4の終端には、3種類の組み付けツール5a、5b、5cが配置されており、前記組み付けツール5a、5b、5cには、それぞれ適正なインパネアッシ3が搬送されてくる。
【0005】
組み立てライン2から供給ライン4の終端にわたって、ガントリ型ロボット6が設けられており、前記ガントリ型ロボット6のロボットアーム6aの先端には、チャック部品7aが取り付けられている。このチャック部品7aは、組み付けツール5a〜5cの一端に取り付けられたチャック部品7bと連結可能である。
【0006】
ボディ本体1の両側には、多関節型ロボット8が設置されており、前記多関節型ロボット8のアーム先端には、インパネアッシ3をボディ本体1にボルト締結するナットランナ(図示せず)と、組み立てライン2上を搬送されるボディ本体1の位置計測及び前記ナットランナでボルト締結する際のボルト孔の位置計測を行うための複数のカメラ(図示せず)とが設けられている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−139350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の組み付け装置では、インパネアッシ3は、組み付けツール5a、5b又は5cに支持された状態で、ガントリ型ロボット6の駆動作用下にボディ本体1の車室内の所定の搭載位置に搬送されている。このため、ガントリ型ロボット6の駆動制御が相当に煩雑となるとともに、重量物であるインパネアッシ3を所定の搭載位置に迅速に位置決めすることが困難であるという問題がある。
【0009】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、インストルメントパネルを車室内に迅速且つ効率的に組み込むことが可能な車両用インストルメントパネルの取り付け装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車両の車室内にインストルメントパネルを組み付けるための車両用インストルメントパネルの取り付け装置に関するものである。
【0011】
この取り付け装置は、インストルメントパネルを把持するインパネ把持手段を設け、前記インストルメントパネルを自動搬送するとともに、前記インストルメントパネルの重量を保持するアシスト機能を有する第1作業機構と、前記インパネ把持手段に着脱可能に連結される連結手段を設け、前記インパネ把持手段を操作して前記インストルメントパネルを前記車室内に配置させる第2作業機構とを備え、前記第2作業機構は、前記インストルメントパネルを前記車両のインストルメントパネル取り付け位置にねじ止めするボルト締め付け手段を搭載している。
【0012】
また、第2作業機構は、車両の車幅方向両側にそれぞれ配設されることが好ましい。
【0013】
さらに、第2作業機構は、インストルメントパネル取り付け位置を確認するためのセンサを設けることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明は、車両の車室内にインストルメントパネルを組み付けるための車両用インストルメントパネルの取り付け方法に関するものである。
【0015】
この取り付け方法は、第1作業機構のインパネ把持手段によりインストルメントパネルを把持し、前記インストルメントパネルを第2作業機構による操作開始位置まで自動搬送する工程と、前記インストルメントパネルが前記操作開始位置に搬送された際、前記第2作業機構を前記インパネ把持手段に連結する工程と、前記インストルメントパネルの重量を前記第1作業機構により保持しながら、前記第2作業機構により前記インパネ把持手段を操作し、前記インストルメントパネルを前記車室内に配置させる工程と、前記第2作業機構に搭載されたボルト締め付け手段により、前記インストルメントパネルを前記車室内のインストルメントパネル取り付け位置にねじ止めする工程とを有している。
【0016】
また、この取り付け方法は、第2作業機構に設けられるセンサを介し、インストルメントパネル取り付け位置を確認する工程と、前記センサによる検出信号に基づいて、前記第2作業機構の駆動を制御する工程とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、第1作業機構が、インストルメントパネルの重量を保持するアシスト機能を有するため、第2作業機構は、このインストルメントパネルを操作する際に、前記第2作業機構に付与される前記インストルメントパネルの荷重が有効に軽減される。従って、第2作業機構を良好に小型化することができ、作業設備全体の小型化及び簡素化が容易に図られるとともに、イナーシャを低減してインストルメントパネルの取り付け作業が迅速且つ効率的に遂行可能になる。
【0018】
しかも、第2作業機構は、前記インストルメントパネルを前記車両のインストルメントパネル取り付け位置にねじ止めするボルト締め付け手段を搭載している。このため、作業設備全体が専有する床面スペースを一層狭小化することができ、スペース効率の向上が図られる。
【0019】
さらに、メンテナンス等により第2作業機構を停止させる際には、この第2作業機構を第1作業機構から離脱させて退避位置に配置させることができる。これにより、作業者は、第1作業機構のアシスト作用下に、インストルメントパネルの組み付け作業を容易に行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用インストルメントパネルの取り付け装置10が配置される組み立てライン12の斜視説明図である。
【0021】
組み立てライン12は、自動車車体(車両)14を台車15に搭載してインストルメントパネル組み付け作業ステーションにピッチ搬送する搬送路16を備える。取り付け装置10は、アシスト機(第1作業機構)18と、自動車車体14の両側に配置される右側の作業ロボット(第2作業機構)20及び左側の作業ロボット(第2作業機構)22とを備え、前記自動車車体14の車室14a内にインストルメントパネル24を自動的に組み付ける。
【0022】
インストルメントパネル24の長手方向(車幅方向)両端には、このインストルメントパネル24を自動車車体14に取り付けるための基準孔(図示せず)が2つずつ形成されるとともに、後述するインパネ把持手段78が係合する把持穴26が形成される(図2参照)。
【0023】
アシスト機18は、インパネ取り出しステーション28の上方に位置し、自動車車体14の搬送方向(矢印T方向)に延在する第1枠体30を備える。図1及び図2に示すように、第1枠体30には、互いに対向して前進用シリンダ32と後退用シリンダ34とが配設される。
【0024】
第1枠体30は、矢印T方向に延在する一対のスライドレール38を有し、前記スライドレール38には、それぞれ複数のローラ40を介して第2枠体42が矢印T方向に進退可能に支持される。第2枠体42には、矢印B方向に互いに対向して搬入用シリンダ44と搬出用シリンダ46とが設けられる。
【0025】
第2枠体42は、矢印B方向に延在する一対のスライドレール50を有し、前記スライドレール50には、それぞれ複数のローラ52を介して、第3枠体54が矢印B方向に進退可能に支持される。
【0026】
第3枠体54には、第1板部材56と第2板部材58とが設けられる。第1板部材56には、前進用シリンダ32のロッド32aの先端部と、後退用シリンダ34のロッド34aの先端部とが固着される。第2板部材58には、搬入用シリンダ44のロッド44aの先端部と、搬出用シリンダ46のロッド46aの先端部とが固着される。
【0027】
第3枠体54には、シリンダ60が鉛直方向に向かって配置されており、このシリンダ60から下方に延在するロッド(図示せず)がスライドガイド62の内部に配設される。シリンダ60のロッドの下端には、昇降端部64が連結されるとともに、この昇降端部64には、水平方向に延在してアーム部66の一端が支持される。後述するように、アーム部66に支持されるインストルメントパネル24の矢印H方向の荷重、あるいは、インパネ把持手段78にかかる反力を感知するために、例えば、昇降端部64に力覚センサ67が設けられる。
【0028】
アーム部66は、ベアリング(図示せず)を介して軸回りに回転自在であり、ロックシリンダ68を介して所定の回転角度位置に固定可能である。ロックシリンダ68は、スライドガイド62に支持されるとともに、前記ロックシリンダ68から下方に延在するロッド68aがアーム部66に連結される。
【0029】
アーム部66には、一対のシリンダ70が互いに反対方向に向かって固定される。このシリンダ70から延在するロッド70aには、それぞれインパネ支持アーム72が連結される。インパネ支持アーム72は、アーム部66に設けられたガイドレール74に沿って進退可能であるとともに、それぞれの先端部には、インストルメントパネル24の各把持穴26に係合する結合部材76が設けられる。
【0030】
一対のシリンダ70及び一対のインパネ支持アーム72により、インパネ把持手段78が構成される。アーム部66の他端には、連結手段80を構成する操作レバー82がそれぞれ固着される。この操作レバー82は、略円柱状を有し、中央部分には、縮径した把持部84が形成される。
【0031】
第2枠体42には、この第2枠体42を所定の位置に位置決めするためのブレーキ手段86が設けられる。ブレーキ手段86は、押し上げられて第1枠体30に摺接することにより、第2枠体42が任意の位置に停止される。第1枠体30の矢印T方向先端縁部及び先端部には、投入位置検出用の第1リミットスイッチ88aと、前進端検出用の第2リミットスイッチ88bとが設けられる。第1枠体30の矢印T方向後端部には、原位置検出用の第3リミットスイッチ88cが設けられる。
【0032】
第3枠体54の矢印B方向両端には、ブレーキ手段86が設けられる。第2枠体42の矢印B方向両端には、送り端位置検出用の第4リミットスイッチ88dと、戻り端位置検出用の第5リミットスイッチ88eとが設けられる。
【0033】
右側の作業ロボット20及び左側の作業ロボット22は、同様に構成されており、以下に、前記作業ロボット20の構成について説明し、前記作業ロボット22には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0034】
図3に示すように、作業ロボット20は、旋回自在なロボット本体90を備える。このロボット本体90を構成するアーム92の先端部に手首部94が設けられるとともに、前記手首部94には、ハンド部96、ナットランナユニット(ボルト締め付け手段)98及び撮影部100が搭載される。
【0035】
ハンド部96は、図示しないアクチュエータを介して開閉自在な一対の爪部102を備え、インパネ把持手段78の操作レバー82と連結手段80を構成するとともに、後述するボルト110を把持する手段も構成している。
【0036】
ナットランナユニット98は、手首部94の先端に装着される一対のロッドレスシリンダ103a、103bを備える。ロッドレスシリンダ103a、103bには、スライダ104a、104bを介してナットランナ106a、106bが装着される。撮影部100は、インパネセット確認や取り付け位置のずれ確認等を行うためのCCD撮像カメラ(以下、単にカメラという)108を備える。
【0037】
図1に示すように、作業ロボット20及び作業ロボット22に近接して、インストルメントパネル24を自動車車体14に取り付けるためのボルト110を収容するボルトストック部112と、前記ボルトストック部112から取り出される2本の前記ボルト110を整列させるプリセット台114とが設けられる。
【0038】
図4に示すように、作業ロボット20、22の各カメラ108は、画像処理装置120に車体画像及びインパネセット位置画像等の画像情報を出力する。画像処理装置120は、各カメラ108から得られた画像情報を演算部122に出力し、前記演算部122では、前記画像情報が演算処理される。演算部122から主制御装置124に車体位置やインパネセット位置の検出結果が出力されるとともに、前記主制御装置124は、入力された演算情報に基づいて、作業ロボット20、22の動作を制御するとともに、アシスト機18の動作制御も行う。
【0039】
次に、このように構成される取り付け装置10の動作について、本実施形態に係る取り付け方法との関連で、図5及び図6に示すフローチャート並びに図7に示すタイミングチャートに沿って以下に説明する。
【0040】
なお、アシスト機18の動作が図5に示され、作業ロボット20、22の動作が図6に示されるとともに、前記アシスト機18及び前記作業ロボット20、22の動作は、図7に示すように、互いに関連して行われる。
【0041】
先ず、アシスト機18の動作について説明すると、このアシスト機18では、インパネ把持手段78が、インパネ取り出しステーション28に配置されているインストルメントパネル24上に位置決めされる。そして、シリンダ60が駆動されることにより、図示しないロッドを介して昇降端部64が下降する。
【0042】
この昇降端部64には、インパネ把持手段78が装着されており、前記インパネ把持手段78は、インパネ取り出しステーション28上のインストルメントパネル24に対向して配置される。その際、ロックシリンダ68が付勢されており、ロッド68aの伸縮動作が規制されるため、アーム部66は、回動不能に支持される。
【0043】
この状態で、シリンダ70、70が駆動され、ロッド70a、70aが互いに近接する方向に移動することによってインパネ支持アーム72、72がインストルメントパネル24の両側部に当接する。従って、結合部材76は、インストルメントパネル24の各把持穴26に挿入されるとともに、インパネ把持手段78は、前記インストルメントパネル24を把持する(ステップS1)。
【0044】
次いで、シリンダ60が逆方向に駆動されることにより、インパネ把持手段78は、インストルメントパネル24を把持した状態で上昇し、所定の高さ位置に配置される(ステップS2)。
【0045】
そして、前進用シリンダ32が駆動され、ロッド32aが矢印T方向に進出すると、このロッド32aに固着されている第1板部材56は、矢印T方向に押圧される。このため、第2枠体42は、ローラ40の回転作用下に、スライドレール38に沿って矢印T方向に所定の位置まで移動し、第1リミットスイッチ88aがオンされる際に、ブレーキ手段86が押し上げられて前記第2枠体42の移動が停止される(ステップS3)。
【0046】
この停止位置で、作業ロボット20は、ハンド部96を構成する一対の爪部102により、インパネ把持手段78に設けられている一方の操作レバー82を把持する。その際、操作レバー82の略中央側には、小径な把持部84が形成されており、一対の爪部102が前記把持部84を把持することにより、操作レバー82の所定の位置を確実に把持することができる。
【0047】
そこで、ロックシリンダ68がオフされて大気開放された状態で、作業ロボット20は、ハンド部96が所定の方向に旋回、回転及び移動等の動作を行う。これにより、操作レバー82を介してアーム部66の角度位置が調整される。従って、インストルメントパネル24は、姿勢が変化され(ステップS4)、このインストルメントパネル24が所定の姿勢に配置された後、ロックシリンダ68が付勢されてロッド68aの伸縮動作が規制され、アーム部66が保持される。
【0048】
なお、アーム部66に力覚センサ(図示せず)を設けることにより、このアーム部66の回動時に前記力覚センサによって検知される反力が0又は微少量に近似するように、ロックシリンダ68を制御することも可能である。
【0049】
さらに、ステップS5に進んで、前進用シリンダ32の駆動作用下に、第2枠体42が矢印D方向に移動して、第2リミットスイッチ88bがオンされる際に、ブレーキ手段86が押し上げられてアシスト操作開始位置に移動する。このアシスト操作開始位置において、インパネ把持手段78が作業ロボット20のハンド部96に把持されたと判断されると(ステップS6中、YES)、ステップS7に進んで、インパネセット操作が前記作業ロボット20及び作業ロボット22を介して行われる。
【0050】
具体的には、アシスト機18は、インパネ自動搬送モードからインパネアシスト搬送モードに切り換えられる。そして、作業ロボット20は、アシスト機18のアシスト作用下に、インストルメントパネル24を把持するインパネ把持手段78が操作されて、前記インストルメントパネル24を自動車車体14の車室14a内に投入する。
【0051】
その際、アシスト機18では、図8に示すように、搬入用シリンダ44の駆動作用下に、ロッド44aの先端部に固着される第2板部材58が矢印B方向に押圧される。このため、第3枠体54は、第2枠体42のスライドレール50に沿って矢印B方向に移動し、作業ロボット20によるインストルメントパネル24の投入作業をアシストする。
【0052】
一方、作業ロボット20では、図9に示すように、ハンド部96の移動作用下に、インパネ把持手段78を矢印R1方向に旋回させてインストルメントパネル24を車載姿勢に姿勢変換させる。さらに、インストルメントパネル24を車室14a内に投入した後、インパネ把持手段78を矢印R2方向に旋回させて、前記インストルメントパネル24をセット姿勢に姿勢変化させている。
【0053】
上記の作業ロボット20の動作時に、アシスト機18がインパネアシスト搬送モードに切り換えられている。従って、アシスト機18では、力覚センサ67を介してアーム部66に支持されるインストルメントパネル24の矢印H方向の荷重、あるいは、インパネ把持手段78にかかる反力を感知している。そして、力覚センサ67により検知される荷重(反力)が、0又は微少量に近似するように、前進用シリンダ32、後退用シリンダ34、搬入用シリンダ44及び搬出用シリンダ46が制御される。
【0054】
なお、アシスト機18がインパネアシスト搬送モードに切り換えられる際、上記の制御に代えて、前進用シリンダ32、後退用シリンダ34、搬入用シリンダ44及び搬出用シリンダ46を全て大気開放(オフ状態)させてもよい。
【0055】
次いで、作業ロボット20、22により、後述するように、インストルメントパネル24のボルト締めが行われた後、インパネ把持手段78による前記インストルメントパネル24の把持作用が解除される。具体的には、図2に示すように、各シリンダ70が前記とは逆方向に駆動され、一対のインパネ支持アーム72がインストルメントパネル24の両側部から離間する方向に移動する。このため、結合部材76が把持穴26から離脱し、インストルメントパネル24の把持作用が解除される(ステップS8)。
【0056】
インパネ把持手段78は、作業ロボット20及び必要に応じて作業ロボット22を介して、車室14aの外部に移動する。ここで、アシスト機18では、搬出用シリンダ46が駆動されることにより、第2板部材58が矢印B方向とは反対方向に押圧される。従って、第3枠体54は、インパネ把持手段78と一体的に矢印B方向とは反対方向、すなわち、車室外方向に移動し、作業ロボット20、22の操作をアシストする(ステップS9)。
【0057】
インパネ把持手段78が、車室14aの外部に移動されると、作業ロボット20、22による前記インパネ把持手段78の把持が解除された後(ステップS10中、YES)、前記インパネ把持手段78がインパネ組み付けステーションから搬出される(ステップS11)。
【0058】
具体的には、アシスト機18は、インパネアシスト搬送モードからインパネ自動搬送モードに切り換えられる。そして、後退用シリンダ34が駆動され、第1板部材56が矢印T方向とは反対方向に押圧される。このため、第2枠体42は、第3枠体54と一体に矢印T方向とは逆方向に移動する。そして、インパネ把持手段78が原位置に至る際に、第3リミットスイッチ88cがオンされることにより、このアシスト機18の駆動が停止される(ステップS12)。
【0059】
次いで、作業ロボット20の動作について説明すると、先ず、図10に示すように、前記作業ロボット20の手首部94に装着されているハンド部96は、ボルトストック部112に収容されているボルト110を把持し、プリセット台114上に立位姿勢で整列させる(図6中、ステップS101)。
【0060】
プリセット台114では、図11に示すように、立位姿勢で整列されているボルト110が回転され、ナットランナユニット98の各ナットランナ106a、106bに対応して位相合わせが行われる。その後、各ナットランナ106a、106bにより、それぞれボルト110が保持される(ステップS102)。
【0061】
作業ロボット20は、アシスト機18の姿勢変換動作(図5中、ステップS4参照)の補助を行った後(ステップS103)、ステップS104に進んで、自動車車体14のセンシングを行う。具体的には、作業ロボット20に装着されている撮影部100のカメラ108により、自動車車体14のボディ側基準孔を撮影し、この基準孔画像情報が画像処理装置120に入力される。そして、演算部122では、入力された画像情報に基づいて、ボディ側基準孔位置が良好であるか否かを判断するとともに、必要に応じて補正値を主制御装置124に出力する。
【0062】
作業ロボット20は、ハンド部96によりアシスト機18の操作レバー82を把持した後(ステップS105)、前記操作レバー82を操作することによってインストルメントパネル24を車載姿勢に変換する(ステップS106)。車載姿勢のインストルメントパネル24は、車室14a内にセットされる(ステップS107)。
【0063】
作業ロボット20は、インストルメントパネル24をセットした後、ステップS108に進んで、アシスト機18のアシスト作用下に、インパネ把持手段78を車室14aの外部に移動させ(ステップS108)、操作レバー82の把持を解除する(ステップS109)。
【0064】
さらに、作業ロボット20は、カメラ108によりインストルメントパネル24のセット位置のセンシングを行う(ステップS110)。このセット位置センシングにおいて、ボディ側基準孔とインストルメントパネル24の基準孔とのずれが発生していた際には、作業ロボット20により前記インストルメントパネル24の位置調整が行われる。
【0065】
次に、ステップS111に進んで、ナットランナユニット98を構成する各ナットランナ106a、106bに保持されているボルト110が、ボディ側基準孔及びインパネ側基準孔に螺合されて、インストルメントパネル24が自動車車体14に組み付けられる。
【0066】
具体的には、ロッドレスシリンダ103a、103bを介して、ナットランナ106a、106bが後退位置に配置されており、例えば、前記ロッドレスシリンダ103aが駆動されて、前記ナットランナ106aが前進する。そして、ナットランナ106aの回転作用下に、このナットランナ106aに保持されているボルト110が、ボディ側基準孔及びインパネ側基準孔に螺合する。その際、ナットランナ106bは、作業に干渉しない位置に退避している。
【0067】
ナットランナ106aによりボルト締め付け作業が終了すると、ロッドレスシリンダ103aが駆動されて、前記ナットランナ106aが後退する。一方、ロッドレスシリンダ103bが駆動されて、前記ナットランナ106bが前進し、前記ナットランナ106bの回転作用下に、他のボディ側基準孔及びインパネ側基準孔にボルト110が螺合する。
【0068】
また、作業ロボット22は、上記の作業ロボット20と同様に動作するものであり、その詳細な説明は省略する。なお、ステップS103の工程は、作業ロボット20のみで行われている。
【0069】
この場合、第1の実施形態では、アシスト機18は、インパネ把持手段78を介してインパネ取り出しステーション28からインストルメントパネル24を把持して取り出して自動搬送した後、作業ロボット20による前記インストルメントパネル24の車室14a内への組み付け作業時に、該インストルメントパネル24の重量を保持するアシスト機能を有している。
【0070】
このため、作業ロボット20は、インストルメントパネル24を車室14a内に投入してセットする際に、この作業ロボット20に付与される前記インストルメントパネル24の荷重が有効に軽減される。これにより、作業ロボット20を良好に小型化することができ、取り付け装置10全体の小型化及び簡素化が容易に図られるとともに、インストルメントパネル24の取り付け作業が迅速に且つ効率的に遂行可能になるという効果が得られる。
【0071】
しかも、インストルメントパネル24の重量は、アシスト機18に保持されている。このため、イナーシャによる影響が低減され、左右の作業ロボット20、22の共同作業により、重量物であるインストルメントパネル24の位置決め操作が一挙に簡素化される。
【0072】
さらに、作業ロボット20、22には、インストルメントパネル24を車室14a内のインパネ取り付け位置にねじ止めするナットランナユニット98が搭載されている。従って、作業設備全体が専有する床面スペースを一層狭小化することができ、スペース効率の向上が図られるという利点が得られる。
【0073】
さらにまた、メンテナンス等により作業ロボット20、22を停止させる際には、前記作業ロボット20、22をインパネ取り付け作業ステーションから退避させる。この状態で、作業者は、アシスト機18のアシスト作用下に、インストルメントパネル24の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0074】
なお、第1の実施形態では、作業ロボット20、22にハンド部96、ナットランナユニット98及び撮影部100を装着しているが、これに限定されるものではない。作業ロボット20、22は、少なくともナットランナユニット98を備えていればよい。
【0075】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る車両用インストルメントパネルの取り付け装置を構成するインパネ把持手段126の概略斜視説明図である。なお、第1の実施形態に係る取り付け装置10を構成するインパネ把持手段78と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0076】
インパネ把持手段126は、シリンダ70、70を介して開閉自在な一対のインパネ支持アーム72を備えるとともに、前記インパネ支持アーム72には、可動結合部材128が設けられる。この可動結合部材128は、断面長方形状を有しており、互いに90°の角度をなす取り付け角度位置に切り換え可能である。
【0077】
作業ロボット20、22では、ハンド部96により可動結合部材128が把持される。そこで、インストルメントパネル24の形状等に対応して、可動結合部材128が2つの角度位置のいずれかに切り換え可能である。これにより、第2の実施形態では、機種の異なるインストルメントパネル24に容易に対応することができるという効果がある。
【0078】
図13は、本発明の第3の実施形態に係る車両用インストルメントパネルの取り付け装置を構成するアシスト機130の概略斜視説明図である。なお、第1の実施形態に係る取り付け装置10を構成するアシスト機18と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0079】
アシスト機130は、第1枠体30の下部に沿ってラック・ピニオン手段132を介して進退可能な走行モータ134を備える。この走行モータ134は、第2枠体42に固定される。第2枠体42には、矢印B方向に延在してラック・ピニオン手段136を介して進退可能な走行モータ138が設けられる。この走行モータ138は、第3枠体54に固定される。
【0080】
このように構成される第3の実施形態では、インストルメントパネル24を把持するインパネ把持手段78を走行モータ134、138の駆動作用下に、矢印T方向及び矢印B方向にアシスト駆動することができるとともに、第1リミットスイッチ88a〜第5リミットスイッチ88eのオン/オフ信号に基づいて、前記インパネ把持手段78を所望の位置に正確且つ確実に位置決めすることができるという効果が得られる。
【0081】
具体的には、インパネ把持手段78によりインストルメントパネル24が把持され、このインパネ把持手段78が上昇端位置に至った後、走行モータ134の駆動作用下に、第2枠体42及び第3枠体54を介して前記インパネ把持手段78が矢印T方向に移動する。
【0082】
そして、第1リミットスイッチ88aがオンされる際に、走行モータ134の駆動を停止することにより、インストルメントパネル24が投入位置に配置される。一方、インパネ把持手段78を原位置に戻す際には、このインパネ把持手段78がインストルメントパネル24をアンクランプし、且つ作業ロボット20、22による前記インパネ把持手段78のアンクランプがなされた際に、走行モータ134が逆回転される。そして、第3リミットスイッチ88cがオンされることにより、インパネ把持手段78が原位置に復帰することが検出される。
【0083】
また、インストルメントパネル24を投入する際には、インパネ把持手段78により前記インストルメントパネル24が把持され、前記インストルメントパネル24の姿勢変換が完了するとともに、第1リミットスイッチ88aがオンした状態で、走行モータ138が駆動される。
【0084】
一方、インパネ把持手段78を搬出する際には、このインパネ把持手段78がインストルメントパネル24をアンクランプし、作業ロボット20、22による前記インパネ把持手段78の把持が排除され、且つ第1リミットスイッチ88aがオンされた状態で、走行モータ138が逆方向に駆動される。
【0085】
そして、第5リミットスイッチ88eがオンされることにより、インパネ把持手段78が自動車車体14の外部に検出されたことが搬出される。次いで、走行モータ134が駆動され、第3リミットスイッチ88cがオンされることにより、原位置復帰が検出される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用インストルメントパネルの取り付け装置が配置される組み立てラインの斜視説明図である。
【図2】前記取り付け装置を構成するアシスト機の概略斜視説明図である。
【図3】前記取り付け装置を構成する作業ロボットの斜視説明図である。
【図4】前記取り付け装置のブロック図である。
【図5】前記アシスト機の動作を説明するフローチャートである。
【図6】前記作業ロボットの動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の取り付け方法のタイミングチャートである。
【図8】前記組み付け方法の説明図である。
【図9】前記インストルメントパネルを車室内に投入する際の動作説明図である。
【図10】前記作業ロボットによりボルトを取り出す際の説明図である。
【図11】プリセット台の前記ボルトがナットランナより受け取られる際の説明図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る車両用インストルメントパネルの取り付け装置を構成するインパネ把持手段の概略斜視説明図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る車両用インストルメントパネルの取り付け装置を構成するアシスト機の概略斜視説明図である。
【図14】特許文献1に開示された組み付け装置の概略斜視説明図である。
【符号の説明】
【0087】
10…取り付け装置 12…組み立てライン
14…自動車車体 14a…車室
16…搬送路 18、130…アシスト機
20、22…作業ロボット 24…インストルメントパネル
26…把持穴 30、42、54…枠体
32、34、44、46、60、70…シリンダ
56、58…板部材 66…アーム部
72…インパネ支持アーム 76…結合部材
78、126…インパネ把持手段 80…連結手段
82…操作レバー 96…ハンド部
98…ナットランナユニット 100…撮影部
106a、106b…ナットランナ 108…カメラ
110…ボルト 114…プリセット台
120…画像処理装置 122…演算部
124…主制御装置 128…可動結合部材
132、136…ラック・ピニオン手段
134、138…走行モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内にインストルメントパネルを組み付けるための車両用インストルメントパネルの取り付け装置であって、
前記インストルメントパネルを把持するインパネ把持手段を設け、前記インストルメントパネルを自動搬送するとともに、前記インストルメントパネルの重量を保持するアシスト機能を有する第1作業機構と、
前記インパネ把持手段に着脱可能に連結される連結手段を設け、前記インパネ把持手段を操作して前記インストルメントパネルを前記車室内に配置させる第2作業機構と、
を備え、
前記第2作業機構は、前記インストルメントパネルを前記車両のインストルメントパネル取り付け位置にねじ止めするボルト締め付け手段を搭載することを特徴とする車両用インストルメントパネルの取り付け装置。
【請求項2】
請求項1記載の取り付け装置において、前記第2作業機構は、前記車両の車幅方向両側にそれぞれ配設されることを特徴とする車両用インストルメントパネルの取り付け装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の取り付け装置において、前記第2作業機構は、前記インストルメントパネル取り付け位置を確認するためのセンサを設けることを特徴とする車両用インストルメントパネルの取り付け装置。
【請求項4】
車両の車室内にインストルメントパネルを組み付けるための車両用インストルメントパネルの取り付け方法であって、
第1作業機構のインパネ把持手段により前記インストルメントパネルを把持し、前記インストルメントパネルを第2作業機構による操作開始位置まで自動搬送する工程と、
前記インストルメントパネルが前記操作開始位置に搬送された際、前記第2作業機構を前記インパネ把持手段に連結する工程と、
前記インストルメントパネルの重量を前記第1作業機構により保持しながら、前記第2作業機構により前記インパネ把持手段を操作し、前記インストルメントパネルを前記車室内に配置させる工程と、
前記第2作業機構に搭載されたボルト締め付け手段により、前記インストルメントパネルを前記車室内のインストルメントパネル取り付け位置にねじ止めする工程と、
を有することを特徴とする車両用インストルメントパネルの取り付け方法。
【請求項5】
請求項4記載の取り付け方法において、前記第2作業機構に設けられるセンサを介し、前記インストルメントパネル取り付け位置を確認する工程と、
前記センサによる検出信号に基づいて、前記第2作業機構の駆動を制御する工程と、
を有することを特徴とする車両用インストルメントパネルの取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−190450(P2009−190450A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30488(P2008−30488)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】