説明

車両用エンジン制御装置

【課題】アクセルペダルとブレーキペダルを意図的に両踏みした場合にはエンジン出力制限を禁止させるようにしつつ、誤って両踏みした場合には迅速にエンジン出力を制限させることを図った車両用エンジン制御装置を提供する。
【解決手段】アクセルセンサ及びブレーキセンサの検出結果に基づき、アクセルペダル及びブレーキペダルが両踏み状態であると判定されている時(S20:Yes、S30:Yes)には、エンジン出力を制限させる(S50)。また、予め実施した試験により取得されたアクセル遊び量及びブレーキ遊び量をメモリ(記憶手段)に記憶させておき、アクセル検出開始時期及びブレーキ検出開始時期と、メモリに記憶されたアクセル遊び量及びブレーキ遊び量に基づき、実アクセル開始時期が実ブレーキ開始時期よりも後であるか否かを判定し、肯定判定された時(S40:Yes)には両踏み状態であってもエンジン出力制限を禁止させる(S60)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン出力を制御する車両用エンジン制御装置であって、アクセルペダル及びブレーキペダルが共に踏込操作されている両踏み状態が検出されている状況下でのエンジン出力制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アクセルペダルの踏込量に基づいて電動スロットルバルブの開度を制御する等により、エンジン出力を電子制御する車両エンジン制御装置がある。このような電子制御の車両では次のような安全対策を講じることができる。例えば、ブレーキペダルを踏み損なってアクセルペダルも同時に踏み込んでしまう場合のように、ブレーキペダルと共にアクセルペダルを誤って両踏みした場合であっても、アクセルペダルの踏込量に応じたエンジン出力とならないようにエンジン出力を制限させる出力制限制御を行うことができる(特許文献1参照)。
【0003】
このような安全対策(出力制限)では、車両運転者が誤って両踏みした状況を想定しているが、車両運転者が意図的に両踏み操作する場合もある。例えば、登り坂で車両を発進させる場合において、ブレーキペダルを踏んだままアクセルペダルを踏み込むことにより、停車状態(車速ゼロ)のままでエンジン回転数を上昇させ、その後ブレーキペダルから足を離して加速発進させるといった両踏み操作である。
【0004】
しかし、上述した出力制限を実施する車両においては、誤って両踏みした場合の安全を図ることができる反面、運転者が意図的に両踏み操作しても意図するようにはエンジン回転数(エンジン出力)が上昇しなくなる。
【0005】
そこで本発明者は、意図的に両踏み操作する場合には、ブレーキペダルよりも後にアクセルペダルを踏込操作する筈であり、ブレーキペダルよりも先(又は同時)にアクセルペダルを踏み込むことはないことに着目して、次の制御を検討した。すなわち、アクセルペダルがブレーキペダルよりも後に踏込操作された場合には、意図的に両踏み操作されたとみなして、出力制限を禁止してエンジン出力の上昇を許可する。一方、上記以外の両踏み検出時には、誤ってブレーキペダルが踏み込まれているとみなして、出力制限を実施して安全を図る。
【0006】
具体的には、アクセルセンサにより検出されたアクセルペダルの踏込み開始時期(アクセル検出開始時期)が、ブレーキセンサにより検出されたブレーキペダルの踏込み開始時期(ブレーキ検出開始時期)よりも後であれば、両センサにより両踏みが検出されている時であっても出力制限を禁止して出力を許可する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−291930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、実際にペダルを踏み始めてからアクセルセンサやブレーキセンサで検出されるまでには遊びが設けてあり、ペダルに触れただけでは検出しないようになっているのが一般的である。つまり、踏込量が所定量(遊び量)以上になって初めて検出するように設定されている。そして、この遊び量(図7(a)中の符号F2,F3参照)は車両毎に異なる値となっておりバラツキがある。図7(b)中の符号t2a,t2bはアクセル検出開始時期のバラツキを示し、図7(c)中の符号t3a,t3bはブレーキ検出開始時期のバラツキを示す。
【0009】
そのため、例えばt1時点で両ペダルを同時に踏み込んだのでエンジン出力を制限させたい場合において、アクセル検出開始時期がt2かつブレーキ検出開始時期がt3bであった場合(ケース1)には、アクセル検出開始時期t2がブレーキ検出開始時期t3aよりも先になるので、エンジン出力が好適に制限される。しかし、アクセル検出開始時期がt2かつブレーキ検出開始時期がt3aであった場合(ケース2)には、アクセル検出開始時期t2がブレーキ検出開始時期t3aよりも後になるので、エンジン出力制限が禁止されてしまう。
【0010】
そこで本発明者は、このような遊び量を考慮してブレーキ検出開始時期t3に遅れを持たせることをさらに検討した。具体的には、ブレーキ検出開始時期t3にディレイ時間Tdを加算した時期よりもアクセル検出開始時期t2が後である場合に、出力制限を禁止させる。これによればケース2の場合であってもアクセル検出開始時期t2がブレーキ検出開始時期t3a+Tdよりも先になるので、エンジン出力が好適に制限される。
【0011】
しかし今度は、誤って両踏み(つまり両ペダルを同時に踏み込み)したので出力制限させたい場合において、ブレーキ検出開始時期t3に遅れを持たせた分だけ、出力制限を開始するタイミング(図7(d)中の符号t4a,t4b参照)が遅くなってしまう。その結果、例えば、車両の近くに在る障害物との衝突を回避させるべくブレーキペダルを踏み込もうとした時に、誤って両踏みした場合には、直ぐに出力制限させて衝突回避を図ることが要求されるところ、上述したディレイ時間Tdを長く設定するほど出力制限の開始が遅くなり、衝突する可能性が高くなる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、アクセルペダルとブレーキペダルを意図的に両踏みした場合にはエンジン出力制限を禁止させるようにしつつ、誤って両踏みした場合には迅速にエンジン出力を制限させることを図った車両用エンジン制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0014】
請求項1記載の発明では、アクセルペダルの踏込操作の有無を検出するアクセルセンサと、ブレーキペダルの踏込操作の有無を検出するブレーキセンサと、前記アクセルセンサ及び前記ブレーキセンサの検出結果に基づき、前記アクセルペダル及び前記ブレーキペダルが共に踏込操作されている両踏み状態であるか否かを判定する両踏み判定手段と、前記両踏み判定手段により前記両踏み状態であると判定されている時には、前記ブレーキペダルの踏込操作を前記アクセルペダルの踏込操作よりも優先してエンジン出力を制限させる出力制限手段と、を備える。
【0015】
そしてさらに、前記アクセルペダルの踏込みを開始してから前記アクセルセンサが踏込みを検出するまでの踏込量をアクセル遊び量、前記ブレーキペダルの踏込みを開始してから前記ブレーキセンサが踏込みを検出するまでの踏込量をブレーキ遊び量とした場合において、予め実施した試験により取得された前記アクセル遊び量及び前記ブレーキ遊び量、又はこれらの遊び量と相関のある物理量が記憶されている記憶手段と、/前記アクセルセンサにより検出された踏込み開始時期であるアクセル検出開始時期、及び前記ブレーキセンサにより検出された踏込み開始時期であるブレーキ検出開始時期と、前記記憶手段に記憶された前記アクセル遊び量及び前記ブレーキ遊び量又は前記物理量に基づき、前記アクセルペダルが踏み込まれた実アクセル開始時期が、前記ブレーキペダルが踏み込まれた実ブレーキ開始時期よりも後であるか否かを判定するアクセル開始判定手段と、/前記アクセル開始判定手段により前記実アクセル開始時期が前記実ブレーキ開始時期よりも後であると判定された時には、前記両踏み判定手段により前記両踏み状態であると判定されている場合であっても、前記出力制限手段によるエンジン出力制限を禁止させる出力制限禁止手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
上記発明によれば、予め実施した試験により取得されたアクセル遊び量とブレーキ遊び量を記憶手段に記憶させておき、その記憶させておいたアクセル遊び量とブレーキ遊び量(又はそれらと相関のある物理量)を加味した上で、アクセル検出開始時期とブレーキ検出開始時期に基づき、実アクセル開始時期が実ブレーキ開始時期よりも後であるか否かを判定する。そのため、図7に例示するディレイ時間Tdを廃止、又は短く設定しても、両ペダルが同時に踏み込まれたにも拘わらず誤判定して出力制限を禁止するといった事態に陥ることを抑制できるので、誤って同時に両踏みした場合において、ディレイ時間Tdが原因で出力制限させるタイミングが遅くなることを抑制できる。また、意図的に両踏みした場合にはエンジン出力制限を禁止させるようにしつつ、誤って両踏みした場合には迅速にエンジン出力を制限させることができる。
【0017】
ちなみに、前記「物理量」の具体例としては、「遊び量の分だけ踏み込むのに要する時間」が挙げられる。
【0018】
請求項2記載の発明では、前記アクセルペダル及び前記ブレーキペダルは、両ペダル共に、踏込操作面よりも上方部分で支持される吊り下げ式のペダルであることを特徴とする。
【0019】
ここで、アクセルペダルには、車両のフロア部に支持されるフロア支持式のペダルと、踏込操作面よりも上方部分で支持される吊り下げ式のペダルとが存在する。一方、ブレーキペダルは吊り下げ指揮であるのが一般的である。そして、アクセルペダルにフロア支持式を採用した場合には、アクセルペダルの踏込操作面はブレーキペダルの踏込操作面から離れた位置となるのに対し、アクセルペダルに吊り下げ式を採用した場合には、両ペダルの踏込操作面が近くに位置することになるので、ブレーキペダルを踏み込み操作する時に誤ってアクセルペダルも同時に踏み込んでしまうといった誤操作が生じ易い。
【0020】
この点を鑑みた上記発明では、両ペダル共に吊り下げ式である場合に、上記請求項1記載の発明を適用させているので、誤って同時に両踏みした場合において迅速にエンジン出力を制限できる、といった上記効果が好適に発揮される。
【0021】
請求項3記載の発明では、前記アクセル開始判定手段は、/前記アクセル検出開始時期及び前記アクセル遊び量又はその遊び量と相関のある物理量から、前記アクセルペダルの踏込みが開始された時期であるアクセル開始予測時期を算出し、/前記ブレーキ検出開始時期及び前記ブレーキ遊び量又はその遊び量と相関のある物理量から、前記ブレーキペダルの踏込みが開始された時期であるブレーキ開始予測時期を算出し、/前記アクセル開始予測時期が前記ブレーキ開始予測時期よりも所定時間以後であることを条件として、前記実アクセル開始時期が前記実ブレーキ開始時期よりも後であると判定することを特徴とする。
【0022】
ここで、試験して取得したアクセル遊び量及びブレーキ遊び量に含まれる計測誤差が原因となって、実際にはアクセル開始時期がブレーキ開始時期と同時であっても、実アクセル開始時期が実ブレーキ開始時期よりも後である誤判定することが懸念される。
【0023】
この懸念に対し上記発明では、アクセル検出開始時期及びアクセル遊び量又はその遊び量と相関のある物理量からアクセル開始予測時期を算出するとともに、ブレーキ検出開始時期及びブレーキ遊び量又はその遊び量と相関のある物理量からブレーキ開始予測時期を算出する。そして、アクセル開始予測時期がブレーキ開始予測時期よりも所定時間以後であることを条件として、実アクセル開始時期が実ブレーキ開始時期よりも後であると判定するので、前記計測誤差を前記所定時間で吸収させることができる。よって、計測誤差が原因で誤判定することを抑制できる。
【0024】
ちなみに、前記計測誤差は、車両毎のアクセル遊び量およびブレーキ遊び量のバラツキに比べれば十分に小さくできるので、そもそも問題となっていたディレイ時間Tdに比べて上記発明にかかる所定時間は短くできるので、「ディレイ時間Tdが原因で出力制限させるタイミングが遅くなることを抑制できる」といった先述した効果は上記発明によっても発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態にかかるエンジン制御システムの概略構成を示す図。
【図2】アクセルペダルが吊り下げ式である場合における、アクセルペダルとブレーキペダルの位置関係を示す図。
【図3】アクセルペダルがフロア支持式(オルガン式)である場合における、アクセルペダルとブレーキペダルの位置関係を示す図。
【図4】本発明の一実施形態において、アクセル開度の出力制御の処理手順を示すフローチャート。
【図5】図4に示すアクセル開度の制限制御の処理手順を示すフローチャート。
【図6】図4に示すアクセル開度の復帰制御の処理手順を示すフローチャート。
【図7】本発明が解決する課題を説明するタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。先ず、本実施形態にかかる車両用エンジン制御装置が適用されたエンジン制御システム全体の概略構成を、図1に基づいて説明する。
【0027】
図1に示すエンジン11(内燃機関)は点火式のガソリンエンジンであり、エンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、電動モータ15によって開度調節されるスロットルバルブ16と、このスロットルバルブ16の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ17とが設けられている。
【0028】
更に、スロットルバルブ16の下流側には、サージタンク18が設けられ、このサージタンク18に、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ19が設けられている。また、サージタンク18には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド20が設けられ、各気筒の吸気マニホールド20の吸気ポート近傍に、それぞれ吸気ポートに向けて燃料を噴射する燃料噴射弁21が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ22が取り付けられ、各気筒の点火プラグ22の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0029】
一方、エンジン11の排気管23には、排出ガスの空燃比又はリッチ/リーン等を検出する排出ガスセンサ24(空燃比センサ、酸素センサ等)が設けられ、この排出ガスセンサ24の下流側に、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒25が設けられている。
【0030】
また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ26や、ノッキングを検出するノックセンサ27が取り付けられている。また、クランク軸28の外周側には、クランク軸28が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ29が取り付けられ、このクランク角センサ29の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0031】
更に、アクセルセンサ31によってアクセルペダル32の操作量が検出され、ブレーキスイッチ33(ブレーキセンサ)によってブレーキペダル34の踏込操作が検出されると共に、車速センサ35によって車速が検出される。ここで、ブレーキペダル34は、車両の運転中に車両を減速又は停止させるための常用ブレーキ装置のブレーキ操作部である。また、アクセルペダル32やブレーキペダル34は、図2に例示する吊り下げ式(ペンダントタイプ)のペダルでも良いし、或いは、図3に例示するフロア支持式(オルガン式)のペダルでも良い。
【0032】
図2は、吊り下げ式のブレーキペダル34と吊り下げ式のアクセルペダル32との位置関係を示す図であり、アクセルペダル32は、車両乗員の足裏で踏込み操作される踏込操作面を有するペダル部32aと、ペダル部32aから上方に延びるアーム部32bと、アーム部32bの上端を回動可能に支持する支持部32cと、を備えて構成されている。ブレーキペダル34は、車両乗員の足裏で踏込み操作される踏込操作面を有するペダル部34aと、ペダル部34aから上方に延びるアーム部34bと、アーム部34bの上端を回動可能に支持する支持部34cと、を備えて構成されている。
【0033】
図3は、アクセルペダル320がフロア支持式である場合の図であり、このアクセルペダル320は、車両乗員の足裏で踏込み操作される踏込操作面を有するペダル部320aと、ペダル部320aのうち車両後方側の端部を回動可能に支持するとともに車体のフロア部50に固定された支持部320bと、ペダル部320aを上方へ押し戻す向きに弾性力を付勢するバネ部320cと、を備えて構成されている。
【0034】
車体のフロア部50は、水平に拡がる形状の金属製パネルにより形成されている。なお、フロア部50の前方端部には傾斜状の金属製パネルにより形成されるキックアップ部51が接続され、キックアップ部51の前方端部には、鉛直に広がる形状の金属製パネルにより形成されるダッシュパネル52(ファイアウォール)が接続されている。そして、アクセルペダル320の支持部320bは、このフロア部50に取り付けられている。
【0035】
これら各種センサやスイッチの出力は、電子制御回路(ECU30)に入力される。このECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することでエンジン制御手段としての役割を果たし、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。その際、ECU30は、アクセルセンサ31で検出したアクセル開度(アクセルペダル32の操作量)に基づいてスロットル開度(吸入空気量)等を制御してエンジン11の出力を制御する。
【0036】
これら図2及び図3に示すように、アクセルペダル32,320とブレーキペダル34は、フロア部50の上方にて並べて配置されており、運転者が片足で両ペダル32,320,34を同時に踏み込むことができるような位置関係に配置されている。
【0037】
なお、アクセルペダル32が吊り下げ式の場合には、フロア支持式の場合に比べてペダル部32aの位置が高くなるので、ブレーキペダル34のペダル部34aの位置と同じ高さになる場合が多い。そのため、特に両ペダル32,34が吊り下げ式の場合(図2参照)には、図3の場合に比べて、運転者がブレーキペダル34を踏込み操作しようとした時に誤ってアクセルペダル32も踏み込んでしまうといった事態に陥りやすい。そのため、誤操作による両踏みに対応した本実施形態のエンジン制御は、図2の如く両ペダル32,34が吊り下げ式の場合に効果が好適に発揮される。
【0038】
ECU30は、アクセルセンサ31の出力信号に基づいてアクセルペダル32の踏み込み(オン操作)を判定すると共に、ブレーキスイッチ33の出力信号に基づいてブレーキペダル34の踏み込み(オン操作)を判定する。なお、アクセルセンサ31により検出されたアクセルペダル32の踏込量が所定値A1以上である場合に、アクセルペダル32が踏み込まれていると判定(オン操作を判定)する。そして、アクセルセンサ31及びブレーキスイッチ33が共にオン操作を判定している時には、アクセルペダル32及びブレーキペダル34が共に踏込操作されている両踏み状態であると判定する。両踏み状態の判定手法については後に詳述する。
【0039】
また、アクセルセンサ31及びブレーキスイッチ33が共にオン操作判定している時点において、エンジン出力軸の回転速度を変速して駆動輪へ伝達する変速機ATが動力伝達を遮断するニュートラル状態又は動力伝達する連結状態のいずれであっても、上述の如く共にオン操作判定していれば両踏み状態であると判定する。図1に示す変速機(トランスミッション)には、その変速段を自動で切り替える自動式(AT)が採用されているが、変速段を運転者が手動操作して切り替えるマニュアル式(MT)であってもよい。
【0040】
両踏み状態であると判定した場合には、エンジン制御用のアクセル開度(エンジン11の制御に使用するアクセル開度)を車速に応じた制限値にするアクセル開度制限制御(出力制限制御)を実行する。一方、ブレーキペダル34のオン操作が検出されていない時にアクセルペダル32のオン操作が検出されている場合には、運転者の加速意図があると判断して、アクセル開度制限制御を禁止する。
【0041】
次に、図4〜図6を用いて、ECU30により実施されるアクセル開度出力制御の処理手順を説明する。
[アクセル開度出力制御ルーチン]
図4に示すアクセル開度出力制御ルーチンは、ECU30の電源オン中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップS10で、車速が所定値V1以上であるか否かを判定する。
【0042】
このステップS10で、車速が所定値V1以上であると判定された場合には、ステップS20(両踏み判定手段)に進み、実アクセル開度が所定値A1よりも大きいか否かを判定する。ここで、所定値A1は、予め設定した固定値としても良いし、車速に応じて設定するようにしても良い。
【0043】
このステップS20で、実アクセル開度が所定値A1よりも大きい(アクセルペダル32が踏み込まれている)と判定された場合には、ステップS30(両踏み判定手段)に進み、ブレーキOFF(ブレーキペダル34の踏み込みが解除された状態)からブレーキON(ブレーキペダル34が踏み込まれた状態)になったか否かを判定する。
【0044】
ブレーキONになった場合には、アクセルペダル32及びブレーキペダル34が共に踏み込まれた両踏み状態であると判定(S30:Yes)して次のステップS40に進む。一方、上記ステップS30で「No」と判定された場合には上記ステップS10に戻る。
【0045】
ステップS40では、両踏み状態に至る過程で、実際にアクセルペダル32を踏み込み開始した時期(実アクセル開始時期)が、実際にブレーキペダル34を踏み込み開始した時期(実ブレーキ開始時期)よりも後であるか否かを判定する。この判定手法については後に詳述する。そして、実アクセル開始時期が実ブレーキ開始時期よりも後ではないと判定(S40:No)した場合には、ブレーキペダル34を踏み込む際に誤ってアクセルペダル32も踏み込んでしまった、誤操作による両踏み状態であるとみなして、次のステップS50(出力制限手段)に進み、後述する図5のアクセル開度制限制御ルーチンを実行する。これにより、両踏みが検出され(S30:Yes)、かつ、誤操作であると判定(S40:No)した場合には、エンジン制御用のアクセル開度を制限値まで減少させるアクセル開度制限制御(S50)を実行する。
【0046】
一方、両踏みが検出された場合であっても、実アクセル開始時期が実ブレーキ開始時期よりも後であると判定(S40:Yes)した場合には、意図的に両踏み操作したとみなして、次のステップS60(出力制限禁止手段)に進み、ステップS50によるアクセル開度制限制御の実行を禁止して、図4の処理を一旦終了する。
【0047】
ステップS50によるアクセル開度制限制御が実行されると、その後、ステップS70に進み、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキONからブレーキOFFになったか否かを判定する。このステップS70で、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキONからブレーキOFFになったと判定された場合には、ステップS80に進み、後述する図6のアクセル開度復帰制御ルーチンを実行する。これにより、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキONからブレーキOFFになったと判定された場合には、運転者が意図的にブレーキペダル34の踏み込みを解除したため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度に戻すアクセル開度復帰制御を実行する。
【0048】
この後、ステップS90に進み、実アクセル開度が所定値A4よりも小さいか否かを判定する。ここで、所定値A4は、上記ステップS20の所定値A1よりも小さい値に設定されている。このステップS90で、実アクセル開度が所定値A4よりも小さいと判定された場合には、アクセル開度復帰制御を終了する。
【0049】
ここで、ステップS40における「実アクセル開始時期が実ブレーキ開始時期よりも後であるか否か」の判定手法について、図7を用いて詳細に説明する。図7(a)はペダル32,34の実際の踏込量を示しており、図7の例では、アクセルペダル32及びブレーキペダル34をt1時点で同時に踏み込み開始している。しかし、ペダル32,34を踏み始めてからアクセルセンサ31やブレーキスイッチ33で検出されるまでには遊びが設けてあり、ペダル部32a,34aに触れただけでは検出しないようになっている。つまり、踏込量が所定量(遊び量)以上になって初めて検出するように設定されている。
【0050】
図7(b)(c)は、アクセルセンサ31の検出量とブレーキスイッチ33のオンオフ状態の変化を示しており、例えば図中の実線に示す場合には、アクセルセンサ31はt2時点(アクセル検出開始時期)で踏込み開始を検出しており、ブレーキスイッチ33はt3時点(ブレーキ検出開始時期)で踏込み開始を検出している。
【0051】
但し、これらの検出開始時期t2,t3は、両ペダル32,34を同時に踏み込んだからといって一致する訳ではなく、符号t2a,t2b,t3a,t3bに示すように車両毎のバラツキがある。例えば、アクセル検出開始時期がt2bであればアクセルセンサ31の遊び量(アクセル遊び量)は符号F2に示す量となり、ブレーキ検出開始時期がt3aであればブレーキスイッチ33の遊び量(ブレーキ遊び量)は符号F3に示す量となる。つまり、これらのアクセル遊び量F2及びブレーキ遊び量F3には車両毎のバラツキがある。
【0052】
そのため、図7に例示するように、仮にt1時点で両ペダルを同時に踏み込んだとしても、アクセル検出開始時期t2がブレーキ検出開始時期t3aよりも後になることがある。そこで本実施形態では、車両を市場へ出荷する前に、アクセル遊び量F2とブレーキ遊び量F3を計測する試験を車両毎に実施しており、その試験により取得したアクセル遊び量F2とブレーキ遊び量F3を、ECU30が有するメモリ30aに記憶させている。なお、メモリ30aにはEEPROM等の不揮発性書き換え可能メモリを採用することが望ましい。
【0053】
そして、ステップS40では、アクセルセンサ31で検出されたアクセル検出開始時期t2及びブレーキスイッチ33で検出されたブレーキ検出開始時期t3と、メモリ30aに記憶されたアクセル遊び及びブレーキ遊びとに基づき、「実アクセル開始時期が実ブレーキ開始時期よりも後であるか否か」を判定する。
【0054】
具体的には、先ず、メモリ30aに記憶されているアクセル遊び量F2の分だけアクセルペダル32を踏み込むのに要する時間Tacを算出する。この時、アクセルペダル32を踏み込む踏込速度を予め設定しておいた固定の値として次のように算出する。Tac=F2/踏込速度。そして、アクセル検出開始時期t2から所要時間Tacを減算してアクセル開始予測時期を算出する。
【0055】
次に、メモリ30aに記憶されているブレーキ遊び量F3の分だけブレーキペダル34を踏み込むのに要する時間Tbrを算出する。この時、ブレーキペダル34を踏み込む踏込速度を予め設定しておいた固定の値として次のように算出する。Tbr=F3/踏込速度。そして、ブレーキ検出開始時期t3から所要時間Tbrを減算してブレーキ開始予測時期を算出する。
【0056】
そして、このように算出したアクセル開始予測時期が、ブレーキ開始予測時期に所定時間を加算した時期よりも後であれば、実アクセル開始時期が実ブレーキ開始時期よりも後であると、ステップS40で判定する。
[アクセル開度制限制御ルーチン]
図5に示すアクセル開度制限制御ルーチンは、前記図4のアクセル開度出力制御ルーチンのステップS50で実行されるサブルーチンである。本ルーチンが起動されると、まず、ステップS51で、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた減算量をマップ等により算出する。ここで、減算量のマップは、例えば、アクセル開度制限制御開始時の車速が低くなるほど減算量が小さくなってエンジン制御用のアクセル開度の変化速度(減少速度)が遅くなるように設定されている。
【0057】
この後、ステップS52に進み、本ルーチンの演算周期毎に前回のエンジン制御用のアクセル開度(初期値は実アクセル開度)から減算量だけ減算して今回のエンジン制御用のアクセル開度を求める(今回のエンジン制御用アクセル開度=前回のエンジン制御用アクセル開度−減算量)。
【0058】
この後、ステップS53に進み、アクセル開度制限制御開始時の車速(又は現在の車速)に応じた制限値をマップ等により算出する。ここで、制限値のマップは、例えば、アクセル開度制限制御開始時の車速(又は現在の車速)が低くなるほど制限値が小さくなるように設定されている。
【0059】
この後、ステップS54に進み、エンジン制御用のアクセル開度が制限値以下であるか否かを判定し、エンジン制御用のアクセル開度が制限値よりも大きいと判定されれば、上記ステップS52に戻り、前回のエンジン制御用のアクセル開度から減算量だけ減算して今回のエンジン制御用のアクセル開度を求める処理を繰り返す。
【0060】
その後、上記ステップS54で、エンジン制御用のアクセル開度が制限値以下であると判定されたときに、本ルーチンを終了する。以上の処理により、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた変化速度(減少速度)でエンジン制御用のアクセル開度を制限値まで減少させるアクセル開度制限制御を実行する。
[アクセル開度復帰制御ルーチン]
図6に示すアクセル開度復帰制御ルーチンは、前記図4のアクセル開度出力制御ルーチンのステップS80で実行されるサブルーチンである。本ルーチンが起動されると、まず、ステップS81で、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)に応じた加算量をマップ等により算出する。ここで、加算量のマップは、例えば、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)が低くなるほど加算量が小さくなってエンジン制御用のアクセル開度の変化速度(増加速度)が遅くなるように設定されている。
【0061】
この後、ステップS82に進み、本ルーチンの演算周期毎に前回のエンジン制御用のアクセル開度に加算量だけ加算して今回のエンジン制御用のアクセル開度を求める(今回のエンジン制御用アクセル開度=前回のエンジン制御用アクセル開度+加算量)。
【0062】
この後、ステップS83に進み、エンジン制御用のアクセル開度が実アクセル開度以上であるか否かを判定し、エンジン制御用のアクセル開度が実アクセル開度よりも小さいと判定されれば、上記ステップS82に戻り、前回のエンジン制御用のアクセル開度に加算量だけ加算して今回のエンジン制御用のアクセル開度を求める処理を繰り返す。
【0063】
その後、上記ステップS83で、エンジン制御用のアクセル開度が実アクセル開度以上であると判定されたときに、本ルーチンを終了する。以上の処理により、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)に応じた変化速度(増加速度)でエンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度まで増加させるアクセル開度復帰制御を実行する。
【0064】
以上により、本実施形態によれば、実アクセル開始時期が実ブレーキ開始時期よりも後であると判定した場合(S40:Yes)には、両踏み状態であると判定(S30:Yes)されていてもアクセル開度制限制御を禁止(S60)するので、運転者の意図した通りにエンジン回転速度を上昇させることができる。
【0065】
また、例えばブレーキペダル34を踏み込む際に誤ってアクセルペダル32も共に踏み込んでしまった場合には、実アクセル開始時期が実ブレーキ開始時期よりも後でないと判定されることとなり(S40:No)、両踏み状態と判定してアクセル開度制限制御が実施されるので、エンジン出力が制限されて安全性を向上できる。
【0066】
そして、実アクセル開始時期が実ブレーキ開始時期よりも後であるか否かを判定するにあたり、実際に試験により計測したアクセル遊び量F2及びブレーキ遊び量F3に基づき判定するので、遊び量のバラツキに起因した誤判定を抑制できる。よって、意図的な両踏み操作と誤って両踏みした場合とを精度良く判定できるので、両踏み検出時において、出力制限制御(S50)を実施する場合と禁止する場合とを的確に判断できる。
【0067】
さらに本実施形態によれば、以下の効果も得られるようになる。
【0068】
・両踏み判定してアクセル開度制限制御を実行するにあたり、エンジン制御用のアクセル開度を車速に応じた制限値にすることで、車速に応じてエンジン出力を抑制することができるため、アクセルペダル32とブレーキペダル34が両方とも踏み込まれたときの安全性を向上できる。
【0069】
・アクセル開度制限制御を実行する際に、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた変化速度でエンジン制御用のアクセル開度を制限値まで減少させるようにしたので、エンジン制御用のアクセル開度を適度な変化速度で制限値まで減少させることができ、エンジン出力の急変を回避して、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0070】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、以下のように変更して実施してもよい。また、各実施形態の特徴的構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0071】
・ステップS40の判定を実施するにあたり、上記実施形態ではメモリ30aに記憶されている遊び量F2,F3の分だけペダル32,34を踏み込むのに要する時間Tac,Tbrを算出し、その後、検出開始時期t2,t3から所要時間Tac,Tbrを減算して開始予測時期を算出している。これに対し、ペダル32,34を踏み込むのに要する時間Tac,Tbrを遊び量F2,F3に替えてメモリ30aに記憶させておき、その記憶させた所要時間Tac,Tbr及び検出開始時期t2,t3に基づき開始予測時期を算出するようにしてもよい。なおこの場合にメモリ30aに記憶させておく所要時間Tac,Tbrは、「遊び量と相関のある物理量」に相当する。
【0072】
・厳密には、ブレーキペダル34には、踏込み始めの所定量はブレーキ油圧を上昇させることがない。つまり、前記所定量は機械的なブレーキ遊び量であると言える。そして、この機械的なブレーキ遊び量(所定量)だけ踏み込んだ状態をゼロ基準として、遊び量F3を試験により計測してメモリ30aに記憶させるようにしてもようい。アクセルペダル32の遊び量F2についても同様である。
【0073】
・図4のステップS20では、実アクセル開度>所定値A1である場合にアクセルペダル32が踏み込まれていると判定(オン操作を判定)するが、実アクセル開度>0である場合にオン操作を判定してもよい。
【0074】
・上記実施形態では、アクセル開度制限制御を実行する際に、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた変化速度でエンジン制御用のアクセル開度を制限値まで減少させるようにしたが、これに限定されず、例えば、エンジン制御用のアクセル開度を速やかに制限値まで減少させたい場合には、エンジン制御用のアクセル開度をステップ的に制限値に切り換えるようにしても良い。
【0075】
・上記実施形態では、アクセル開度復帰制御を実行する際に、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)に応じた変化速度でエンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度まで増加させるようにしたが、これに限定されず、例えば、エンジン制御用のアクセル開度を速やかに実アクセル開度まで増加させたい場合には、エンジン制御用のアクセル開度をステップ的に実アクセル開度に切り換えるようにしても良い。
【0076】
・上記実施形態では、変速段を自動で切り替える変速機ATを備えた車両に本発明を適用させているが、変速段が運転者により手動で切り替えられるマニュアル式の変速機(MT)に適用させてもよい。
【0077】
・上記実施形態で用いられているブレーキスイッチ33は、車両に備えられたブレーキランプのオンオフスイッチとして機能するスイッチを兼用させるようにしてもよい。
【0078】
・本発明は、ブレーキペダル34の踏込操作の有無を検出するブレーキスイッチ33に替えて、ブレーキペダル34の踏込量を検出するブレーキセンサを備えた車両に適用しても良い。
【0079】
・本発明は、図1に示すような吸気ポート噴射式エンジンに限定されず、筒内噴射式エンジンや、吸気ポート噴射用の燃料噴射弁と筒内噴射用の燃料噴射弁の両方を備えたデュアル噴射式のエンジンにも適用して実施できる。
【符号の説明】
【0080】
30a…メモリ(記憶手段)、31…アクセルセンサ、32,320…アクセルペダル、33…ブレーキスイッチ(ブレーキセンサ)、34…ブレーキペダル、F2…アクセル遊び量、F3…ブレーキ遊び量、S20,S30…両踏み判定手段、S40…アクセル開始判定手段、S50…出力制限手段、S60…出力制限禁止手段、t2,t2a,t2b…アクセル検出開始時期、t3,t3a,t3b…ブレーキ検出開始時期。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダルの踏込操作の有無を検出するアクセルセンサと、
ブレーキペダルの踏込操作の有無を検出するブレーキセンサと、
前記アクセルセンサ及び前記ブレーキセンサの検出結果に基づき、前記アクセルペダル及び前記ブレーキペダルが共に踏込操作されている両踏み状態であるか否かを判定する両踏み判定手段と、
前記両踏み判定手段により前記両踏み状態であると判定されている時には、前記ブレーキペダルの踏込操作を前記アクセルペダルの踏込操作よりも優先してエンジン出力を制限させる出力制限手段と、
前記アクセルペダルの踏込みを開始してから前記アクセルセンサが踏込みを検出するまでの踏込量をアクセル遊び量、前記ブレーキペダルの踏込みを開始してから前記ブレーキセンサが踏込みを検出するまでの踏込量をブレーキ遊び量とした場合において、予め実施した試験により取得された前記アクセル遊び量及び前記ブレーキ遊び量、又はこれらの遊び量と相関のある物理量が記憶されている記憶手段と、
前記アクセルセンサにより検出された踏込み開始時期であるアクセル検出開始時期、及び前記ブレーキセンサにより検出された踏込み開始時期であるブレーキ検出開始時期と、前記記憶手段に記憶された前記アクセル遊び量及び前記ブレーキ遊び量又は前記物理量に基づき、前記アクセルペダルが踏み込まれた実アクセル開始時期が、前記ブレーキペダルが踏み込まれた実ブレーキ開始時期よりも後であるか否かを判定するアクセル開始判定手段と、
前記アクセル開始判定手段により前記実アクセル開始時期が前記実ブレーキ開始時期よりも後であると判定された時には、前記両踏み判定手段により前記両踏み状態であると判定されている場合であっても、前記出力制限手段によるエンジン出力制限を禁止させる出力制限禁止手段と、
を備えることを特徴とする車両用エンジン制御装置。
【請求項2】
前記アクセルペダル及び前記ブレーキペダルは、両ペダル共に、踏込操作面よりも上方部分で支持される吊り下げ式のペダルであることを特徴とする請求項1に記載の車両用エンジン制御装置。
【請求項3】
前記アクセル開始判定手段は、
前記アクセル検出開始時期及び前記アクセル遊び量又はその遊び量と相関のある物理量から、前記アクセルペダルの踏込みが開始された時期であるアクセル開始予測時期を算出し、
前記ブレーキ検出開始時期及び前記ブレーキ遊び量又はその遊び量と相関のある物理量から、前記ブレーキペダルの踏込みが開始された時期であるブレーキ開始予測時期を算出し、
前記アクセル開始予測時期が前記ブレーキ開始予測時期よりも所定時間以後であることを条件として、前記実アクセル開始時期が前記実ブレーキ開始時期よりも後であると判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用エンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−97634(P2012−97634A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245045(P2010−245045)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】