説明

車両用カーペット

【課題】 水等の液体をこぼしてしまったときに、液体が蓄電装置に到達するのを抑制することができる車両用カーペットを提供する。
【解決手段】 車両に搭載された蓄電装置(50)の上面に沿って配置される車両用カーペット(60)であって、車両ボディ(30)に対する搭載物(10,20,21)の接続を許容する開口部(61)と、開口部の一部から突出して、開口部および蓄電装置の間に位置する突出部(62)と、を有する。そして、突出部の先端(62b)が、蓄電装置の上面よりも下方に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックが搭載された車両の室内に配置される車両用カーペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の室内に電池パックを配置したものがあり、この電池パックは、車両の走行に用いられるエネルギを出力するために用いられる。このような車両では、電池パックの上面をカーペットで覆うことがある。
【特許文献1】特開2008−125963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電池パックの上面を覆うカーペットのうち、電池パックの近傍に穴部が形成されていることがある。具体的には、座席を車両ボディに固定するために、カーペットに穴部を形成しておくことがある。このような場合において、カーペット上に水等の液体をこぼしてしまったときに、穴部を介して電池パックに液体が到達してしまうことがある。
【0004】
そこで、本発明の目的は、水等の液体をこぼしてしまったときに、液体が蓄電装置に到達するのを抑制することができる車両用カーペットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両に搭載された蓄電装置の上面に沿って配置される車両用カーペットであって、車両ボディに対する搭載物の接続を許容する開口部と、開口部の一部から突出して、開口部および蓄電装置の間に位置する突出部と、を有する。そして、突出部の先端が、蓄電装置の上面よりも下方に位置している。
【0006】
蓄電装置は、搭載物の側から見たときに、蓄電装置の一部が開口部内に位置するように配置することができる。また、突出部の基端を、蓄電装置の上方に位置させることができる。ここで、突出部の基端は、開口部の一部を構成するものである。
【0007】
蓄電装置が、蓄電素子と、互いに接続されて、蓄電素子を収容するスペースを形成する第1および第2のケースと、を有している場合において、突出部の先端を、第1および第2のケースにおける接続部分よりも下方に位置させることができる。これにより、第1および第2のケースにおける接続部分を、突出部で覆うことができる。したがって、車両用カーペット上に液体をこぼしても、第1および第2のケースにおける接続部分に液体が到達してしまうのを抑制することができる。
【0008】
突出部は、搭載物と接触させることによって、蓄電装置の側に向かって曲げることができる。これにより、搭載物を車両ボディに搭載するだけで、突出部を用いて蓄電装置に液体が到達するのを抑制することができる。
【0009】
搭載物としては、蓄電装置の上方に配置される座席が挙げられる。そして、この座席は、車両のラゲッジルームと連なったスペースに配置することができる。
【0010】
なお、本発明の蓄電装置は、第1および第2のケースで囲まれたスペースに蓄電素子だけを配置したものに限らない。具体的には、蓄電素子とともに、蓄電素子と電気的に接続される機器や、蓄電素子の充放電制御に用いられる機器を配置することもできる。具体的には、蓄電素子と電気的に接続される機器としては、リレーやDC/DCコンバータといったものがある。また、蓄電素子の充放電に用いられる機器としては、蓄電素子の温度を検出する温度センサや、蓄電素子の電圧値を検出するためのセンサといったものがある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両用カーペットに開口部が形成されている場合において、開口部および蓄電装置の間に突出部を位置させることにより、水等の液体が開口部から蓄電装置に向かうのを阻止することができる。しかも、突出部の先端を、蓄電装置の上面よりも下方に位置させることにより、蓄電装置の上面に液体が到達して、液体が溜まってしまうのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1である車両用カーペットが配置された車室内の構造について、図1を用いて説明する。ここで、図1は、車室内における一部の構造を示す側面図である。
【0014】
本実施例の車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車とは、動力源としての電池パックに加えて、内燃機関や燃料電池といった他の動力源を備えた車である。また、電気自動車は、電池パックの出力だけを用いて走行する車である。本実施例の電池パックは、放電によって車両の走行に用いられるエネルギを出力したり、車両の制動時に発生する運動エネルギを回生電力として充電したりする。なお、車両の外部からの電力供給を受けて充電を行うこともできる。
【0015】
車両の室内には、シート(座席)10が配置されており、シート10は、シートスライド20によって支持されている。ここで、車両の室内とは、乗員が乗車するスペースである。本実施例において、シート10はリアシートであり、シート10に対して車両の後方には、ラゲージルームRが設けられている。ラゲージルームRには、荷物等を載せるためのデッキボード40が配置されている。デッキボード40は、シートスライド20よりも、車両の上方に位置している。
【0016】
なお、本実施例では、シート10が配置されるスペースと、ラゲージルームRとが繋がっているが、これに限るものではない。すなわち、シート10の配置スペースと、ラゲージルームRとが、特定の部材によって仕切られていてもよい。
【0017】
シートスライド20は、車両の前後方向(図1の左右方向)に延びており、シート10を車両の前後方向に移動させることができる。そして、車両の前後方向における所定の位置でシート10を停止させることができる。シートスライド20は、シート10の底面のうち、車両の左右方向(図1の紙面と直交する方向)における両端に配置することができる。
【0018】
シートスライド20は、一対のブラケット21を介して車両のフロアパネル(車両ボディ)30に固定されている。すなわち、各ブラケット21は、シート10をフロアパネル30に取り付けるために用いられ、フロアパネル30に対して締結部材を用いて固定される。ここで、一対のブラケット21は、シートスライド20の長手方向における両端部に固定されている。なお、フロアパネル30には、クロスメンバ31が固定されており、クロスメンバ31は、車両の左右方向に延びている。
【0019】
シート10の底面とフロアパネル30との間には、スペースが設けられており、このスペースには、電池パック50が配置されている。電池パック50は、図2に示すように、電池モジュール51と、電池モジュール51を収容するパックケース52とを有している。電池モジュール51は、複数の単電池(不図示)で構成されている。具体的には、複数の単電池が電気的に直列に接続されており、車両の走行に必要なエネルギ(電圧)を出力できるようになっている。単電池としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。そして、単電池は、円筒形や角形といった形状に形成することができる。一方、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。
【0020】
パックケース52は、アッパーケース(第1のケース)52aおよびロアーケース(第2のケース)52bを有している。そして、アッパーケース52aおよびロアーケース52bによって囲まれたスペースには、電池モジュール51が配置されている。また、パックケース52の内部には、電池モジュール51だけでなく、電池モジュール51の充放電の制御に用いられる機器や、電池モジュール51に電気的に接続される機器が配置されている。
【0021】
電池モジュール51の充放電の制御に用いられる機器としては、電池モジュール51(単電池)の温度を検出するためのセンサや、単電池の電圧を検出するセンサといったものがある。また、電池モジュール51に電気的に接続される機器としては、リレー、DC/DCコンバータや、電池モジュール51内における電気的な接続を遮断するためのサービスプラグといったものがある。
【0022】
アッパーケース52aおよびロアーケース52bは、接続部52cにおいて、互いに接続されている。具体的には、アッパーケース52aおよびロアーケース52bを、溶接によって接続したり、ボルトといった締結部材を用いて接続したりすることができる。パックケース52としては、熱伝導性や耐食性等に優れた材料で形成することができる。具体的には、パックケース52を、アルミニウムや鉄等といった金属で形成することができる。
【0023】
電池パック50は、フロアパネル30に対して所定のスペースを空けた状態で固定されている。すなわち、電池パック50の底面のうち、少なくとも一部が、フロアパネル30から離れている。また、電池パック50の上面とシート10の底面との間には、カーペット60が配置されている。ここで、カーペット60は、電池パック50の上面やフロアパネル30の表面を覆うようになっている。
【0024】
カーペット60には、図3に示すように、開口部61が形成されている。なお、図3では、カーペット60で覆われるフロアパネル30の形状も示している。
【0025】
開口部61は、シートスライド20のブラケット21をフロアパネル30に固定する際に、ブラケット21を通すための開口部である。本実施例では、シートスライド20の両端に一対のブラケット21が設けられているため、これらのブラケット21に対応した開口部がカーペット60に形成されている。ここで、図3に示す開口部61は、一対のブラケット21のうち、ラゲージルームR側に位置するブラケット21に対応した開口部である。なお、一対のブラケット21のうち、車両の前方に位置するブラケット21に対応した開口部を、図3に示す構成とすることもできる。
【0026】
フロアパネル30のうち、ブラケット21を固定する領域が、カーペット60で覆われていると、ブラケット21をフロアパネル30に固定しにくくなってしまう。そこで、カーペット60に開口部61を形成しておくことにより、ブラケット21をフロアパネル30に容易に固定することができる。
【0027】
なお、本実施例では、図3に示すように、開口部61を穴部として構成しているが、これに限るものではない。例えば、図4に示すように、カーペット60に対して、切り欠き形状を有する部分(切り欠き部)63を形成することができる。すなわち、ブラケット21を通すための領域のすべてがカーペット60で囲まれていなくてもよい。そして、本発明における開口部としては、ブラケット21といった搭載物の一部を貫通させる機能を有しているものであればよい。
【0028】
開口部61の一部には、突出部62が設けられている。すなわち、突出部62の基端62a(図3の点線で示す部分)は、開口部61の一部を構成している。また、突出部62の基端62aは、図5に示すように、曲げることができるようになっている。具体的には、ブラケット21をフロアパネル30に固定する際に、突出部62は、図6に示すように、ブラケット21の一部に押し込まれることにより、電池パック50が配置されている側に曲げられる。このとき、突出部62の先端62bは、電池パック50におけるアッパーケース52aおよびロアーケース52bの接続部52cよりも下方に位置するようになっている。
【0029】
なお、本実施例では、ブラケット21を用いてカーペット60の突出部62を曲げるようにしているが、これに限るものではない。すなわち、カーペット60の突出部62を予め曲げておくこともできる。また、シートスライド20等の一部を、突出部62を電池パック50側に押し込むための形状に形成しておくこともできる。
【0030】
突出部62の基端62aは、図6に示すように、電池パック50の上方に位置している。言い換えれば、シート10の側から見たときに、突出部62の基端62aは、電池パック50の配置領域内に位置するようになっている。そして、突出部62を省略した構成では、シート10の側から見たときに、電池パック50の一部が開口部61から見えるようになっている。
【0031】
なお、突出部62の基端62aは、電池パック50の上方に位置していなくてもよい。言い換えれば、シート10の側から見たときに、突出部62の基端62aを、電池パック50の配置領域の外に位置させることができる。より具体的には、基端62aを、図6に示す位置に対して、図6の右側にずらすこともできる。
【0032】
本実施例では、カーペット60に開口部61を形成する際に、突出部62の側辺62c(図3参照)に相当する部分に切り込みを入れることにより、突出部62を形成している。このため、突出部62の側辺62cは、開口部61に沿って形成されている。ここで、突出部62の幅や突出量は、適宜設定することができる。突出部62の幅とは、突出部62のうち図3の上下方向における長さであり、開口部61の大きさに依存することになる。また、突出部62の突出量とは、突出部62のうち図3の左右方向における長さである。本実施例では、図3に示すように、突出部62が、開口部61内における一部の領域を占めるように構成されているが、これに限るものではない。例えば、突出部62の大きさを、開口部61の大きさと等しくすることができる。一方、開口部61を含む平面に対する突出部62の傾き角度は、適宜設定することができる。
【0033】
ここで、図4に示す切り欠き部63を用いる場合には、切り欠き部63の一部に、本実施例の突出部62と同様の突出部を形成することができる。この場合において、突出部の基端および先端は、本実施例の突出部62と同様の位置関係を有していればよい。
【0034】
本実施例の車両において、例えば、ラゲージルームRのデッキボード40上で水をこぼしてしまうと、この水は、カーペット60上を移動しながら、シート10の下方に向かって移動する。ここで、カーペット60には開口部61が形成されているため、水は、開口部61を通過して電池パック50が収容されたスペースに入り込むことがある。
【0035】
本実施例では、電池パック50をフロアパネル30の表面から離した状態で配置しているため、電池パック50に水が接触しにくいようにしている。また、フロアパネル30には、電池パック50の配置スペースに移動した水を車両の外部に排出させる機構が設けられている。
【0036】
ここで、カーペット60に突出部62を形成しない場合には、開口部61を通過した水が、アッパーケース52aおよびロアーケース52bの接続部52cや、アッパーケース52aの上面に移動しやすくなってしまう。特に、本実施例では、シート10の側から見たときに、電池パック50の一部が開口部61内に位置しているため、電池パック50の上面に水が落下しやすくなってしまう。また、開口部61だけを形成した構成では、水が開口部61を介してカーペット60の裏面にも移動して、電池パック50の上面に落下してしまうことがある。このように、電池パック50の上面に水が移動した場合には、電池パック50の上面に水が溜まったままの状態となってしまうおそれがある。
【0037】
そこで、本実施例のように突出部62を設けることにより、カーペット60の開口部61に水等の液体が移動しても、この液体が電池パック50の上面や接続部52cに移動してしまうのを防止することができる。すなわち、突出部62は、開口部61および電池パック50の間に位置しており、開口部61から電池パック50に向かう液体を阻止するようにしている。
【0038】
ここで、突出部62は、図6に示すように、重力方向(図6の下方向)に向かって延びているため、突出部62に付着した液体は、重力の作用によってフロアパネル30上に落下することになる。このため、突出部62の裏面、言い換えれば、電池パック50と対向する面に液体が付着しても、突出部62の先端62bから液体を落下させることができる。この場合において、突出部62は、図6に示すように、電池パック50(接続部52c)から離れていることが好ましい。
【0039】
なお、本実施例では、シート10(ブラケット21)をフロアパネル30に固定するために、カーペット60に開口部61を形成しているが、これに限るものではない。すなわち、シート10以外の他の搭載物をフロアパネル30に固定するために、カーペット60に開口部を形成する場合においても、本発明を適用することができる。ここで、他の搭載物としては、コンソールボックス等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例1において、車室内の一部の構成を示す側面図である。
【図2】実施例1における電池パックの内部構造を示す概略図である。
【図3】実施例1におけるカーペットの構成を示す上面図である。
【図4】実施例1の変形例におけるカーペットの構成を示す上面図である。
【図5】実施例1におけるカーペットの構成を示す外観斜視図である。
【図6】実施例1において、カーペットおよび電池パックの位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10:シート(搭載物) 20:シートスライド(搭載物)
21:ブラケット(搭載物) 30:フロアパネル(車両ボディ)
31:クロスメンバ 40:デッキボード
50:電池パック(蓄電装置) 51:電池モジュール
52:パックケース 52a:アッパーケース(第1のケース)
52b:ロアーケース(第2のケース) 52c:接続部
60:カーペット 61:開口部
62:突出部 62a:基端
62b:先端


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された蓄電装置の上面に沿って配置される車両用カーペットであって、
車両ボディに対する搭載物の接続を許容する開口部と、
前記開口部の一部から突出して、前記開口部および前記蓄電装置の間に位置する突出部と、を有しており、
前記突出部の先端が、前記蓄電装置の上面よりも下方に位置していることを特徴とする車両用カーペット。
【請求項2】
前記搭載物の側から見たときに、前記蓄電装置の一部が前記開口部内に位置していることを特徴とする請求項1に記載の車両用カーペット。
【請求項3】
前記突出部の基端は、前記蓄電装置の上方に位置していることを特徴とする請求項2に記載の車両用カーペット。
【請求項4】
前記蓄電装置は、蓄電素子と、互いに接続されて、前記蓄電素子を収容するスペースを形成する第1および第2のケースと、を有しており、
前記突出部の先端は、前記第1および第2のケースにおける接続部分よりも下方に位置していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の車両用カーペット。
【請求項5】
前記突出部は、前記搭載物との接触によって、前記蓄電装置の側に向かって曲げられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の車両用カーペット。
【請求項6】
前記搭載物は、前記蓄電装置の上方に配置される座席であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の車両用カーペット。
【請求項7】
前記座席は、前記車両のラゲッジルームと連なったスペースに配置されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用カーペット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−64687(P2010−64687A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234935(P2008−234935)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】