説明

車両用シートの防振構造

【課題】防振機能する弾性体が劣化しても、弾性体が介在するシート本体側の部材とフロア側の部材との干渉を起こし難くする。
【解決手段】シート本体1をフロアFに対して支持する支持構造(横スライドレール5の各ロアレール5Bと内側ロアフレーム4Bとの締結部20)に設けられ、この支持構造を構成するフロア側の部材(内側ロアフレーム4B)からシート本体側の部材(各ロアレール5B)に伝わる振動を抑制する車両用シートの防振構造10であり、シート本体側の部材に取り付けられる内筒部材12と、フロア側の部材に取り付けられる外筒部材11と、これら両筒部材11,12の間に介在して内筒部材12を外筒部材11に対して弾性的に支持する弾性体(防振ゴム13)と、を有する。上記両筒部材11,12は、防振ゴム13により相互に筒の軸線方向に移動可能に弾性結合された構成とされ、この筒の軸線方向がシート上下方向に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの防振構造に関する。詳しくは、シート本体をフロアに対して支持する支持構造に設けられ、この支持構造を構成するフロア側の部材からシート本体側の部材に伝わる振動を抑制する車両用シートの防振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の防振構造としては、下記特許文献1に開示されたものが知られている。この防振構造は、シート本体のフレームとフロア上に固定された支持パネルとの間に、弾性体となる板状の防振ゴムが積層状に介在して設けられた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−45840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術では、防振ゴムがシート本体とフロアとの間に重力方向に挟み込まれて設けられているため、防振ゴムの劣化に伴って、防振ゴムがシート本体の自重により重力方向に押し潰されて、防振ゴムを挟み込んでいるシート本体側の部材とフロア側の部材とが上下振動の作用によって押し当てられて異音を発生させるなどの不具合を生じさせやすくなる。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、防振機能する弾性体が劣化しても、弾性体が介在するシート本体側の部材とフロア側の部材との干渉を起こし難くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、シート本体をフロアに対して支持する支持構造に設けられ、この支持構造を構成するフロア側の部材からシート本体側の部材に伝わる振動を抑制する車両用シートの防振構造であり、シート本体側の部材に取り付けられる第1の部材と、フロア側の部材に取り付けられる第2の部材と、これら両部材の間に介在して設けられ、第1の部材を第2の部材に対して弾性的に支持する弾性体と、を有する。第1の部材と第2の部材は、その一方が筒状に形成されてその筒内に他方が差し込まれ、互いの内外に対向する周面間に弾性体が結合されて設けられることにより、一方と他方とが相互に筒の軸線方向に移動可能に弾性結合されて互いに筒の軸線方向には干渉し合わない構成とされている。この筒の軸線方向がシート上下方向に設定されている。
【0006】
この第1の発明によれば、第1の部材と第2の部材とは、それらの相互に弾性結合されて移動可能とされる筒の軸線方向が、シート上下方向に設定されて、互いにシート上下方向には干渉し合わない関係とされている。したがって、シート本体側の部材に取り付けられた第1の部材が、弾性体の劣化に伴ってシート本体の自重作用により第2の部材に対して大きく重力方向に押し下げられてしまうことがあっても、シート本体側の部材がフロア側の部材と干渉しない構成をとることができる。このように、弾性体が劣化しても、弾性体が介在するシート本体側の部材とフロア側の部材との干渉を起こし難くすることができる。
【0007】
第2の発明は、上述した第1の発明において、シート本体は、フロア上に支持されたシートクッションの後部にシートバックが連結され、このシートバックにシートベルト装置のリトラクタが内蔵されると共にシートバックの車幅方向外側の肩部にウェビングの引出口が設定された構成とされており、この車両用シートの防振構造が、シートクッションの車幅方向内側の側部をフロアに対して支持する構造部に設けられているものである。
【0008】
ここで、シートバックの車幅方向外側の肩部にシートベルト装置のウェビングの引出口が設定されているものでは、車両の前突発生時に、シート本体の車幅方向外側の側部に大きな入力荷重がかけられるため、同外側の側部は構造強度が高く設定されていることが好ましい。
この第2の発明によれば、シートバックの車幅方向外側の肩部にシートベルト装置のウェビングの引出口が設定されているものにおいて、シートクッションの車幅方向内側の側部をフロアに対して支持する構造部に車両用シートの防振構造が設けられていることにより、このようなシートバック付けのシートベルト装置が設定されるものにおいても、必要な強度を確保しつつ、車両用シートの防振構造を好適に設定することができる。
【0009】
第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、第1の部材と第2の部材は、その筒状に形成された一方がフロア側の部材に固定され、この一方の筒内に差し込まれる他方も筒状に形成されてその筒内に同他方をシート本体側の部材に締結するためのボルトを差し込んで固定できるようになっており、この車両用シートの防振構造が、シート本体とフロアとの間に設けられるスライドレールをシート本体側の部材又はフロア側の部材にボルト締結する締結部に設けられているものである。
【0010】
この第3の発明によれば、車両用シートの防振構造を、スライドレールをシート本体側の部材又はフロア側の部材にボルト締結する締結部に設けることにより、車両用シートの防振構造と締結部の構成を合理化して、これらを小さなスペースに設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1のシート本体の骨格構造を車幅方向外側から見た斜視図である。
【図2】同シート本体の骨格構造を車幅方向内側から見た斜視図である。
【図3】シートクッションの下部構造の斜視図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
始めに、実施例1の車両用シートの防振構造10(以下、防振構造10)の構成について、図1〜図4を用いて説明する。本実施例の防振構造10は、シート本体1をフロアFに対して支持する支持構造に設けられ、この支持構造を構成するフロア側の部材からシート本体側の部材に伝わる振動を抑制するものとなっている。ここで、シート本体1は、図1〜図2に示すように、背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、車幅方向に延設された前後一対の横スライドレール5と、車両前後方向に延設された左右一対の前後スライドレール6と、を有する。
【0014】
シートクッション3は、フロアF上に設置された左右一対の前後スライドレール6と、各前後スライドレール6の上部に固定されたロアフレーム4(外側ロアフレーム4A,内側ロアフレーム4B)と、ロアフレーム4の上部に固定された前後一対の横スライドレール5とを間に介して、フロアF上に支持されている。シートバック2は、その下端側の両側部が、回転止め可能な回転軸装置として機能する左右一対のリクライニング装置8を間に介して、シートクッション3の後端側の両側部にそれぞれ連結されている。
【0015】
上記シートバック2内には、3点式のシートベルト装置7のリトラクタ7Aが内蔵されており、その車幅方向外側の肩部には、上記シートバック2内のリトラクタ7Aからシート上方側に向かって繰り出されるウェビング7Bをシート前方側に引き出すための引出口7Cが設定されている。また、シートクッション3の車幅方向内側の側部には、ウェビング7Bに通されたタング7Dを装着するためのバックル7Eが連結されており、シートクッション3の車幅方向外側の側部には、ウェビング7Bの端部を固定するための固定具7Fが連結されている。
【0016】
上記シート本体1は、上記シートベルト装置7がシートバック2付けとされた構成により、その着座使用時に車両の前突が発生すると、ウェビング7Bの引出口7Cが設定されたシートバック2の車幅方向外側の肩部に大きな引張荷重が入力され、シート本体1全体の車幅方向外側の側部に大きな負荷がかかる構成となっている。そこで、本実施例では、詳細は後述するが、シート本体1の車幅方向外側の側部の構造強度が高められた構成となっている。また、上記構成のシート本体1に対し、防振構造10は、上記大荷重作用時の負荷が比較的小さくて済む、車幅方向内側の各横スライドレール5とロアフレーム4(内側ロアフレーム4B)との締結部20に設けられている。以下、上記防振構造10の具体的な構成について、シート本体1の各部の構成と共に詳しく説明していく。
【0017】
先ず、シート本体1の各部の構成について説明する。シートバック2は、図1〜図2に示すように、その骨格を成すバックフレーム2Fが、シートバック2の両側部の骨格を成す外側サイドフレーム2F1及び内側サイドフレーム2F2と、シートバック2の上部の骨格を成すアッパフレーム2F3と、が互いに一体に結合されて正面視逆U字形状に形成されたものとなっている。上記外側サイドフレーム2F1と内側サイドフレーム2F2は、共に、縦長状の鋼板部材により形成されている。詳しくは、内側サイドフレーム2F2は、図1に示すように、その前後側の各縁部が、シートバック2内に向かって折り曲げられた形となっており、その構造強度が高められた構成となっている。また、外側サイドフレーム2F1は、図1〜図2に示すように、その断面が矩形の閉断面形状となるように折り曲げられた形となっており、上記内側サイドフレーム2F2よりも更に構造強度の高められた構成となっている。
【0018】
上記外側サイドフレーム2F1は、内側サイドフレーム2F2よりも縦長に形成されている。アッパフレーム2F3は、L字状に折り曲げられた鋼管部材により形成され、その車幅方向内側の図示下方側に折り曲げられた端部が、内側サイドフレーム2F2の上端部に結合されて一体に固定され、車幅方向外側に真っ直ぐに延びる側の端部が、外側サイドフレーム2F1の上端部に貫通されて一体に結合されて固定されている。そして、上記外側サイドフレーム2F1と内側サイドフレーム2F2との間には、これらの間に跨るように、2本の鋼管部材より成る補強パイプ2F4が架け渡されて、これらに一体に結合されて固定されている。
【0019】
また、上記アッパフレーム2F3と外側サイドフレーム2F1との結合部には、前述したシートベルト装置7の引出口7Cが一体に結合されて固定されている。これにより、前述した車両の前突発生時に、ウェビング7Bを通して引出口7Cにかけられる車両前方側への大きな引張荷重が、上記構造強度の高められた外側サイドフレーム2F1によって強い力で支えられるようになっている。
【0020】
シートクッション3は、図1〜図2に示すように、その骨格を成すクッションフレーム3Fが、シートクッション3の両側部の骨格を成す外側サイドフレーム3F1及び内側サイドフレーム3F2と、シートクッション3の前部の骨格を成すフロントフレーム3F3と、が互いに一体に結合されて平面視逆U字形状に形成されたものとなっている。上記外側サイドフレーム3F1と内側サイドフレーム3F2は、共に、前後方向に長尺な鋼板部材により形成されている。詳しくは、内側サイドフレーム3F2は、図1に示すように、その上下側の各縁部がシートクッション3内に折り曲げられた形となっており、その構造強度が高められた構成となっている。また、外側サイドフレーム3F1は、図1〜図2に示すように、その断面が矩形の閉断面形状となるように折り曲げられた形となっており、上記内側サイドフレーム3F2よりも更に構造強度の高められた構成となっている。
【0021】
フロントフレーム3F3は、鋼管部材により形成され、その両端部が、内側サイドフレーム3F2の前端部と外側サイドフレーム3F1の前端部とにそれぞれ一体に結合されて固定されている。そして、上記外側サイドフレーム3F1と内側サイドフレーム3F2との間には、これらの後端部間に跨るように、鋼管部材より成る補強パイプ3F4が架け渡されて、これらに一体に結合されて固定されている。そして、前述した各リクライニング装置8は、クッションフレーム3Fの両サイドフレーム3F1,3F2の後端側の側部とバックフレーム2Fの両サイドフレーム2F1,2F2の下端側の側部との間にそれぞれ設けられて、各側部に一体に結合されて固定されている。これらリクライニング装置8は、常時はシートバック2の背凭れ角度を固定した状態に保持されており、シート本体1の車幅方向外側の側部に連結された操作レバー8Aの引き上げ操作によって上記固定状態が解かれるようになっている。
【0022】
また、前後一対の各横スライドレール5は、図1〜図3に示すように、前述したクッションフレーム3Fの両サイドフレーム3F1,3F2と、これらの下方部に配される各側のロアフレーム4(外側ロアフレーム4A及び内側ロアフレーム4B)との間に挟まれて配設されている。これら横スライドレール5は、外側ロアフレーム4Aと内側ロアフレーム4Bとの間に架け渡されて車幅方向に延設されて固定されるロアレール5Bと、ロアレール5Bに対して車幅方向にスライド可能な状態に組み付けられてその上部にクッションフレーム3Fの両サイドフレーム3F1,3F2の下端部がそれぞれ固定されるアッパレール5Aと、アッパレール5Aのロアレール5Bに対するスライドをロック可能なロック装置5Cと、を有する。上記ロック装置5Cは、常時は附勢によってアッパレール5Aのスライドをロックした状態に保持されており、シート本体1に設けられた図示しない解除レバーが操作されることによってそのロック状態が解除されるようになっている。
【0023】
ロアフレーム4は、図1〜図3に示すように、シート本体1をフロアFに対して支持する支持構造を構成するものであり、互いに対向して配設される左右一対の鋼板製の外側ロアフレーム4Aと内側ロアフレーム4Bとから構成されている。これら外側ロアフレーム4Aと内側ロアフレーム4Bは、それぞれ、フロアF上に左右一対で配設される前後スライドレール6の各アッパレール6Aの上部に固定されて設けられており、それらの上部間には、前述した横スライドレール5の各ロアレール5Bが架け渡されて固定されている。上記外側ロアフレーム4Aと内側ロアフレーム4Bは、それらの上縁部と前後側の各縁部が、それぞれ、互いに対向するシート内方側に向かって折り曲げられており、構造強度が高められた構成となっている。
【0024】
また、左右一対の各前後スライドレール6は、図1〜図2に示すように、フロアF上に車両前後方向に延設されて固定されるロアレール6Bと、ロアレール6Bに対して車両前後方向にスライド可能な状態に組み付けられてその上部に外側ロアフレーム4Aの下端部と内側ロアフレーム4Bの下端部とがそれぞれ固定されるアッパレール6Aと、アッパレール6Aのロアレール6Bに対するスライドをロック可能なロック装置6Cと、を有する。上記ロック装置6Cは、常時は附勢によってアッパレール6Aのスライドをロックした状態に保持されており、シート本体1に設けられた図示しない解除レバーが操作されることによってそのロック状態が解除されるようになっている。
【0025】
ところで、図3に示すように、上記内側ロアフレーム4Bの上縁部と横スライドレール5の各ロアレール5Bとの連結は、同図に示す各締結部20において成されており、これら各締結部20には、それぞれ防振構造10が設けられている。ここで、内側ロアフレーム4Bが本発明のフロア側の部材に相当し、各ロアレール5Bが本発明のシート本体側の部材に相当し、横スライドレール5が本発明のスライドレールに相当する。以下、上記締結部20及び防振構造10の構成について説明する。図4に示すように、各締結部20は、各ロアレール5Bの底板部にシート上方側から差し込まれて内側ロアフレーム4Bの上縁部に貫通されるボルト21と、ボルト21の差し込まれた先端部に螺合される座付きナット22と、の組み合わせにより構成されている。
【0026】
各防振構造10は、円筒形状の外筒部材11と、外筒部材11よりも小さな筒径の円筒形状に形成されて外筒部材11の筒内に組み付けられる内筒部材12と、外筒部材11と内筒部材12との間の隙間内に設けられて外筒部材11の内周面と内筒部材12の外周面とにそれぞれ一体に面接着されて設けられる防振ゴム13と、から構成されている。ここで、内筒部材12が本発明の第1の部材に相当し、外筒部材11が本発明の第2の部材に相当し、防振ゴム13が本発明の弾性体に相当する。
【0027】
外筒部材11は、その筒の軸線方向がシート上下方向に向けられた状態として、その上端部が内側ロアフレーム4Bの上縁部に形成された孔4B1内に差し込まれて、その外周部全域が内側ロアフレーム4Bに溶着されて一体に固定されている。これにより、内筒部材12は、外筒部材11に対して、互いの間に結合された防振ゴム13の弾性力により、筒の軸線方向(シート上下方向)及び径方向にそれぞれ移動可能に弾性支持された状態とされている。
【0028】
上記防振構造10に対し、横スライドレール5の各ロアレール5Bを内側ロアフレーム4Bにそれぞれ締結する各締結部20は、次のように設けられている。すなわち、各締結部20は、上記シート上下方向に筒の軸線方向が向けられた各内筒部材12の筒内に、それぞれボルト21が各ロアレール5Bの底板部を貫通するようにシート上方側から差し込まれて挿通され、各内筒部材12の下方側へ貫通した各ボルト21の先端部に座付きナット22がそれぞれ螺合されて設けられている。これにより、各内筒部材12と各ロアレール5Bの底板部とが、それぞれ各ボルト21の頭部21Aと各座付きナット22の座22Aとによって軸線方向(シート上下方向)に挟持された状態となって一体に結合されている。
【0029】
詳しくは、上記内筒部材12は、外筒部材11よりも筒の長さが長く、外筒部材11に防振ゴム13を介して結合された状態では、その上下側の各端部が外筒部材11からシート上下方向側へそれぞれ張り出し、その上端部は内側ロアフレーム4Bの上縁部よりも更に上方側へ張り出した状態となって設けられるようになっている。これにより、上記締結部20によって内筒部材12の上部に締結された横スライドレール5の各ロアレール5Bは、それらの底板部と内側ロアフレーム4Bの上縁部との間に、それぞれシート上下方向に隙間Taを有した状態となって内側ロアフレーム4Bに組み付けられるようになっている。この隙間Taは、防振ゴム13の弾性力により、シート本体1に乗員が着座しても一定以上の隙間間隔が確保されるようになっている。
【0030】
したがって、上記防振構造10を介して内側ロアフレーム4Bに弾性支持されたシートクッション3及びシートバック2には、その車両走行時にフロアFから伝えられる振動が、上記防振構造10によって吸収されて抑制されることで伝わりにくくなる。詳しくは、上記振動が内筒部材12を外筒部材11に対して筒の軸線方向(シート上下方向)に振動させるように入力される場合には、上記各ロアレール5Bの底板部と内側ロアフレーム4Bの上縁部との間に設けられた隙間Taにより、内筒部材12と一体で動く各ロアレール5Bを、内側ロアフレーム4Bの上縁部に干渉させないように上下動させられるようになっている。また、上記振動が内筒部材12を外筒部材11に対して筒の径方向に振動させるように入力される場合には、これら外筒部材11と内筒部材12との間に防振ゴム13が介在して設けられていることにより、内筒部材12を外筒部材11に直接当てないように揺動させられるようになっている。
【0031】
また、上記防振構造10は、防振ゴム13が長期使用などの原因により老化(劣化)し、内筒部材12がシート本体1の自重作用によって外筒部材11に対して重力方向に押し下げられてしまうことがあっても、内筒部材12は外筒部材11に対して筒の軸線方向(シート上下方向)には干渉し合わない関係となっていて、各ロアレール5Bを内側ロアフレーム4Bの上縁部に干渉させないように両者の間に隙間Taを設定して移動を逃がせる構成となっていることから、これらを干渉させないように防振機能を発揮させられるようになっている。上記隙間Taは、例えば、内筒部材12の実質的な筒の長さを長くして、外筒部材11からの突出量を増やすことにより、そのシート上下方向の広狭の幅を簡便に調整することができる。
【0032】
ところで、上記防振ゴム13は、外筒部材11と内筒部材12との間の隙間全周に亘って介在するリング形状に形成されており、その外周面と内周面とがそれぞれ外筒部材11の内周面と内筒部材12の外周面とにそれぞれ全周に亘って面接着されて強固に一体に結合されている。なお、防振ゴム13の形状は、外筒部材11と内筒部材12との間の一部に隙間を形成する形となっているものであってもよく、シート本体1に乗員が着座してもその荷重を支えることができ、前述したフロアFから伝わる振動を抑制することができる制振性能を備えた構成となっているものであればよい。また、上記締結部20の座付きナット22は、その円板状に張り出す座22Aの直径が、外筒部材11の内径よりも大きく形成されており、シート本体1の自由状態時には、外筒部材11の下端部との間に隙間Tbを有し、シート本体1に乗員が着座することでその隙間Tbの間隔を広げるようになっており、車両走行時にフロアFからシート本体1に伝えられる振動を受けても、外筒部材11の下端部とは干渉しない関係とされている。
【0033】
しかし、上記座付きナット22は、車両の前突が発生したり後突が発生したりして、シート本体1がフロアF上から剥離する方向(シート上方向)に強い引張荷重を受けることにより、上記防振ゴム13の弾性力を超える強い力で上方側に引張られて、その座22Aを外筒部材11の下端部に当接させる。これにより、上記防振ゴム13を介した弾性結合力を超える強い力でシート本体1がフロアF上から剥離する方向に力を受けても、座付きナット22の座22Aが外筒部材11の下端部に当接して支持力を発揮することで、シート本体1の剥離防止をすることができるようになっている。
【0034】
このように、本実施例の防振構造10によれば、外筒部材11と内筒部材12は、それらの防振ゴム13を介して相互に弾性結合されて相対移動可能とされる筒の軸線方向が、シート上下方向に設定されて、互いにシート上下方向には干渉し合わない関係とされている。したがって、横スライドレール5の各ロアレール5B(シート本体側の部材)に取り付けられた内筒部材12が、防振ゴム13(弾性体)の老化(劣化)に伴ってシート本体1の自重作用により内筒部材12に対して大きく重力方向に押し下げられてしまうことがあっても、各ロアレール5B(シート本体側の部材)が内側ロアフレーム4B(フロア側の部材)と干渉しない構成をとることができる。このように、防振ゴム13が老化(劣化)しても、防振ゴム13が介在する各ロアレール5B(シート本体側の部材)と内側ロアフレーム4B(フロア側の部材)との干渉を起こし難くすることができる。
【0035】
また、シートバック2の車幅方向外側の肩部にシートベルト装置7のウェビング7Bの引出口7Cが設定されているものにおいて、シートクッション3の車幅方向内側の側部をフロアFに対して支持する構造部に防振構造10が設けられていることにより、このようなシートバック2付けのシートベルト装置7が設定されているものにおいても、必要な強度を確保しつつ、防振構造10を好適に設定することができる。また、防振構造10を、横スライドレール5の各ロアレール5B(シート本体側の部材)を内側ロアフレーム4B(フロア側の部材)の上縁部にボルト締結する締結部20に設けることにより、防振構造10と締結部20の構成を合理化して、これらを小さなスペースに設けることができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を一つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、上記実施例では、本発明の車両用シートの防振構造を構成する弾性体に相当するものとして、ゴム(防振ゴム13)を例示したが、弾性体は、第1の部材を第2の部材に対して弾性的に支持可能な構造特性を備えたものであればよく、バネや可撓性を備えた樹脂等、種々の弾性部材によって構成することができるものである。また、上記実施例では、防振構造10を、横スライドレール5の各ロアレール5B(シート本体側の部材)を内側ロアフレーム4B(フロア側の部材)にボルト締結する締結部20に設けたものを例示したが、別の箇所に設けられていても良い。すなわち、本発明の車両用シートの防振構造は、シート本体をフロアに対して支持する支持構造において、この支持構造を構成するフロア側の部材からシート本体側の部材に伝わる振動を抑制するように設けられていれば良く、例えば上記実施例においては、前後スライドレール6の各アッパレール6A(フロア側の部材)とロアフレーム4(シート本体側の部材)との間や、横スライドレール5の各アッパレール5A(フロア側の部材)とクッションフレーム3F(シート本体側の部材)との間など、シート本体1をフロアFに対して支持する支持構造であればどこにでも適用することができるものである。
【0037】
また、本発明の車両用シートの防振構造は、上記実施例における横スライドレール5や前後スライドレール6など、スライドレールを備えた車両用シートが適用対象となるものではなく、スライドレールを備えていない車両用シートに対しても適用することができる。また、上記実施例では、シートバック2にシートベルト装置7のリトラクタ7Aが内蔵されたシート本体1において、ウェビング7Bの引出口7Cが設定された車幅方向外側とは反対側(車幅方向内側)の側部に防振構造10が適用された構成を例示したが、シートベルト装置がシートバック付けとなっていない構成においては、車幅方向外側の側部にも防振構造を適用してもよい。本発明の車両用シートの防振構造は、シート本体をフロアに対して支持する支持構造の少なくとも一箇所に設けられていればよく、その設置箇所については特に限定されるものではない。
【0038】
また、上記実施例では、本発明の車両用シートの防振構造を構成する第1及び第2の部材を、それぞれ、円筒状の内筒部材12及び外筒部材11として構成したものを例示したが、これらは、角筒等の他の断面形状に形成されたものであってもよい。また、上記実施例では、内筒部材12がシート本体側の部材(横スライドレール5の各ロアレール5B)に取り付けられ、外筒部材11がフロア側の部材(内側ロアフレーム4B)に取り付けられた構成を例示したが、内筒部材がフロア側の部材に取り付けられ、外筒部材がシート本体側の部材に取り付けられる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 シート本体
2 シートバック
2F バックフレーム
2F1 外側サイドフレーム
2F2 内側サイドフレーム
2F3 アッパフレーム
2F4 補強パイプ
3 シートクッション
3F クッションフレーム
3F1 外側サイドフレーム
3F2 内側サイドフレーム
3F3 フロントフレーム
3F4 補強パイプ
4 ロアフレーム
4A 外側ロアフレーム
4B 内側ロアフレーム(フロア側の部材)
4B1 孔
5 横スライドレール(スライドレール)
5A アッパレール
5B ロアレール(シート本体側の部材)
5C ロック装置
6 前後スライドレール
6A アッパレール
6B ロアレール
6C ロック装置
7 シートベルト装置
7A リトラクタ
7B ウェビング
7C 引出口
7D タング
7E バックル
7F 固定具
8 リクライニング装置
8A 操作レバー
10 車両用シートの防振構造
11 外筒部材(第2の部材)
12 内筒部材(第1の部材)
13 防振ゴム(弾性体)
20 締結部
21 ボルト
21A 頭部
22 座付きナット
22A 座
Ta 隙間
Tb 隙間
F フロア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体をフロアに対して支持する支持構造に設けられ、当該支持構造を構成するフロア側の部材からシート本体側の部材に伝わる振動を抑制する車両用シートの防振構造であって、
前記シート本体側の部材に取り付けられる第1の部材と、
前記フロア側の部材に取り付けられる第2の部材と、
当該両部材の間に介在して設けられ、前記第1の部材を前記第2の部材に対して弾性的に支持する弾性体と、を有し、
前記第1の部材と前記第2の部材は、その一方が筒状に形成されてその筒内に他方が差し込まれ、互いの内外に対向する周面間に前記弾性体が結合されて設けられることにより、前記一方と前記他方とが相互に筒の軸線方向に移動可能に弾性結合されて互いに筒の軸線方向には干渉し合わない構成とされており、前記筒の軸線方向がシート上下方向に設定されていることを特徴とする車両用シートの防振構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートの防振構造であって、
前記シート本体は、前記フロア上に支持されたシートクッションの後部にシートバックが連結され、該シートバックにシートベルト装置のリトラクタが内蔵されると共に該シートバックの車幅方向外側の肩部にウェビングの引出口が設定された構成とされ、当該車両用シートの防振構造が前記シートクッションの車幅方向内側の側部を前記フロアに対して支持する構造部に設けられていることを特徴とする車両用シートの防振構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートの防振構造であって、
前記第1の部材と前記第2の部材は、その筒状に形成された前記一方が前記フロア側の部材に固定され、該一方の筒内に差し込まれる前記他方も筒状に形成されてその筒内に当該他方を前記シート本体側の部材に締結するためのボルトを差し込んで固定できるようになっており、当該車両用シートの防振構造が前記シート本体と前記フロアとの間に設けられるスライドレールを前記シート本体側の部材又は前記フロア側の部材にボルト締結する締結部に設けられていることを特徴とする車両用シートの防振構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−76496(P2012−76496A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221042(P2010−221042)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】