説明

車両用シート

【課題】シートバックの車両幅方向外側への突出量を抑えつつ、車両側突時には車室側部の車室内への侵入を抑制する。
【解決手段】シートバック14のドア側サイド部14Bに設けられたサイドエアバッグ18の車両幅方向外側にはサイドプレート50が設けられており、サイドプレート50はシートバックフレーム側部22に沿った上下方向を長手方向とする長尺状の板材で構成されている。サイドプレート50はシートバック14のドア側サイド部14Bに当接した待機位置から、インフレータ32のガスによって車両幅方向外側へ移動し、サイドドア17のドアトリム60に設けられたアームレスト60Aに当接して、サイドドア17の車室内への侵入を抑制するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に車室側面に沿って配設される車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室側面に沿って配設される車両用シートが開示されている(特許文献1)。この技術では、ドア側に延びる補強部材の一端部が、バックフレームのサイド部より更に側方に延出しており、この一端部がシートバックのアウター突出部内にて側方に延びている。このため、シートバックのアウター突出部は、補強部材によって、車両側面衝突時にドア側の車室内侵入を抑えることができるようになっている。
【特許文献1】特開平7−267037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来技術では、シートバックの上部に車両幅方向外側に固定的に突出したアウター突出部が形成されている。このため、アウター突出部の車両幅方向外側への突出量を大きくし過ぎると、シートバックを前後方向へ移動する際に、アウター突出部が車室側部に設けられた車室内装材と当たる。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、シートバックの車両幅方向外側への突出量を抑えつつ、車両側突時には車室側部の車室内への侵入を抑制できる車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明の車両用シートは、シートバックの側部に設けられ前記シートバックの側部から車両幅方向外側へ向かって移動し、車室側面との当接用とされた車室側面侵入抑制手段と、車両側突時に前記車室側面侵入抑制手段を前記シートバックの側部から車両幅方向外側へ向かって移動させる移動手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
従って、車室側面侵入抑制手段はシートの通常使用状態では、シートバックの側部に設けられており、車両側突時にシートバックの側部から車両幅方向外側へ向かって移動手段により移動され車室側面と当接する。このため、シートの通常使用状態では車両側突時の状態に比べて車室側面侵入抑制手段の車両幅方向外側への突出量を少なくできる。この結果、シートバックに設けた車室側面侵入抑制手段の車両幅方向外側への突出量を抑えつつ、側突時には車室側面侵入抑制手段によって車室側部の車室内への侵入を抑制できる。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1記載の車両用シートにおいて、前記シートバックの側部に格納され、車両側突時にシート着座乗員と前記車室側面との間に膨張展開するサイドエアバッグを有することを特徴とする。
【0008】
従って、車両側突時に、シートバックの側部に設けられたサイドエアバッグが、車室側面侵入抑制手段によって車室内への侵入を抑制された車室側部とシート着座乗員との間に膨張展開する。この結果、サイドエアバッグが車室側面に引っ掛かることなく膨張展開する。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記サイドエアバッグは前記シートバックの側部における待機位置にある前記車室側面侵入抑制手段よりもシート幅方向内側に格納されていることを特徴とする。
【0010】
従って、車両側突時に、シートバックの側部における待機位置にある車室側面侵入抑制手段よりもシート幅方向内側に設けられたサイドエアバッグが、車室側面侵入抑制手段によって車室内への侵入を抑制された車室側部とシート着座乗員との間に膨張展開する。この結果、サイドエアバッグが車室側面に引っ掛かることなく膨張展開する。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、請求項2または請求項3に記載の車両用シートにおいて、前記移動手段は前記サイドエアバッグ展開用のインフレータのガス圧によって作動することを特徴とする。
【0012】
従って、車両側突時に、サイドエアバッグがインフレータのガス圧によってシート着座乗員と車室側面との間に膨張展開すると共に、インフレータのガス圧によって移動手段が作動し、車室側面侵入抑制手段がシートバックの側部から車両幅方向外側へ向かって移動する。この結果、インフレータが1つですみ部品点数を少なくできる。
【0013】
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記車室側面侵入抑制手段は車室内装材に設けられた車室内側への突出部に対向していることを特徴とする。
【0014】
従って、車両側突時にシートバックの側部から車両幅方向外側へ向かって移動手段により移動された車室側面侵入抑制手段が、車室内装材に設けられた車室内側への突出部に当接する。このため、車室内装材に車室内側への突出部が設けられた隙間が少ない部位において、車室側部の車室内への侵入を抑制できる。
【0015】
請求項6に記載の本発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記車室側面侵入抑制手段が車両幅方向内側へ向かって移動するのを防止するための逆移動防止手段を有することを特徴とする。
【0016】
従って、逆移動防止手段によって、車室側面侵入抑制手段の車両幅方向内側へ向かっての移動が防止される。このため、車室側部の車室内への侵入を抑制する位置に車室側面侵入抑制手段が保持される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の本発明は、シートバックの車両幅方向外側への突出量を抑えつつ、側突時には車室側部の車室内への侵入を抑制できる。
【0018】
請求項2に記載の本発明は、サイドエアバッグを車室側面に引っ掛かることなく膨張展開させることができる。
【0019】
請求項3に記載の本発明は、サイドエアバッグを車室側面に引っ掛かることなく膨張展開させることができる。
【0020】
請求項4に記載の本発明は、部品点数を少なくできる。
【0021】
請求項5に記載の本発明は、車室内側への突出部が設けられた隙間が少ない部位において、車室側部の車室内への侵入を抑制できる。
【0022】
請求項6に記載の本発明は、車室側部の車室内への侵入を抑制する位置に車室側面侵入抑制手段を保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1〜図7を用いて、本発明に係る車両用シートの一実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0024】
図1には、本実施形態に係る車両用シートのフレームの斜め後方から見た斜視図が示されており、図7には、本実施形態に係る車両用シートのサイドエアバッグ展開状態の概略全体側面図が示されている。また、図2には、図7の2−2断面線に沿った部位におけるサイドエアバッグ格納状態の拡大断面図が示されている。
【0025】
図7に示すように、車両用シート10は自動車等の車両のシートであり、例えば運転者用のシートである。この車両用シート10は、乗員19が着座するシートクッション12と、このシートクッション12の後端部に傾倒可能に支持されて乗員19の背もたれとして利用されるシートバック14と、このシートバック14の上端部に上下動可能に支持されて乗員19の頭部を支持するヘッドレスト16と、を含んで構成されている。
【0026】
図2に示すように、シートバック14は、シート幅方向中央部に配置され乗員の背中を直接支持する中央部14Aと、この中央部14Aの車両幅方向外側の端部に一体的に設けられたドア側サイド部14Bと、中央部14Aの車両幅方向内側の端部に一体的に設けられたトンネル側(内側)サイド部(図示省略)とを備えている。なお、ドア側サイド部14B及びトンネル側サイド部は、いずれも車両前方側へ隆起した形状になっている。
【0027】
図7に示すように、シートバック14におけるドア側サイド部14Bの高さ方向中間部には、サイドエアバッグ装置20の一部を構成するサイドエアバッグ18が設けられている。このサイドエアバッグ18は折り畳み状態で格納されており、車両側面衝突時にサイドドア17(図2参照)の内側に沿ってシート前方側へ膨張展開するようになっている。
【0028】
なお、サイドエアバッグ18はその外郭を構成するケース27を備えており、そのケース27がシートバックフレーム側部22に図示を省略した取付部材によって取付けられている。但し、ケースは必ずしも必須ではなく、ケースレスタイプであってもよい。
【0029】
図1に示すように、シートバック14の骨格を構成するシートバックフレーム21の下部には、プレス成形によって断面形状が略コ字状に形成された左右一対のシートバックフレーム側部22が、シートバック高さ方向に沿って配設されている。また、シートバックフレーム21の上部には、パイプ材によって正面視で下方が開放された形状に屈曲されたシートバックフレーム上部23が配設されており、シートバックフレーム上部23の左右一対の下端部23Aは左右一対のシートバックフレーム側部22の上端部にそれぞれ連結されている。
【0030】
なお、シートバックフレーム21は車両後突時のモーメントを抑制するため、下部の荷重に比べて上部の荷重が低減されている。この結果、シートバックフレーム側部22は下方から上方に向かって前後幅Wが徐々に狭くなっていると共に、シートバックフレーム上部23もシートバックフレーム側部22の上部の前後幅に対応した小径のパイプ材とされている。
【0031】
図2に示すように、シートバックフレーム側部22は、略シート前後方向に沿って延在する平板状の基部22Aと、基部22Aの後端から車両幅方向内側となるシート幅方向内側へ向かって屈曲された後側壁部22Bと、を備えている。また、基部22Aの先端部には、シート幅方向内側後方へ向かってフランジ22Cが形成されており、後側壁部22Bのシート幅方向内側先端部には、シート前方へ向かってフランジ22Dが形成されている。
【0032】
シート外装部材としてのシートバックパッド24のシート幅方向中央部24Aからはシート幅方向外側に向かって側部24Bが形成されており、シートバックパッド24の側部24Bはシートバックフレーム側部22のシート幅方向外側の周囲に平断面形状が略C字状に形成されている。なお、シートバックパッド24は所定硬度のウレタンフオーム等によって構成されている。
【0033】
さらに、シートバックパッド24の外周をシート外装部材としてのシート表皮26が覆っており、サイドエアバッグ18は、シートバックパッド24の側部24Bに内蔵されている(組み込まれている)。
【0034】
図1に示すように、インフレータ32は、シートバックフレーム21の内周側に設けられた移動手段としての駆動装置34の内部に配置されている。また、駆動装置34はサイドエアバッグ装置20の一部を構成するエアバッグモジュールケース35の内部に配置されており、インフレータ32はパイプ33によって、サイドエアバッグ18に連結されている。なお、エアバッグモジュールケース35は所定の剛性を備えており、特に車両幅方向に作用する荷重に対して容易に変形しないようになっている。また、インフレータ32は図示を省略した衝撃感知センサーからの信号によって作動し、それによってサイドエアバッグ18が膨張展開するようになっている。
【0035】
エアバッグモジュールケース35はシート前後方向の長さが短い矩形の箱形状とされており、背面35Aの四隅近傍からは、それぞれシート幅方向外側に向かって板状のブラケット37が突出されている。これらのブラケット37は、左右のシートバックフレーム側部22にそれぞれボルト等の固定部材39によって固定されている。なお、ブラケット37も所定の剛性を備えており、特に車両幅方向に作用する荷重に対して容易に変形しないようになっている。
【0036】
図2に示すように、シートバックパッド24の側部24Bには、サイドエアバッグ18が収納されている空間部43が形成されている。この空間部43のシート幅方向外側からはシート前方へ向かって破断部破断促進部43Aが形成されており、この破断促進部43Aの前方の部位が、サイドエアバッグ18の膨張圧によって発生するシートバックパッド24の側部24Bの破断部(ティア部)となる。
【0037】
また、シート表皮26は皮等によって構成され意匠面を構成する第1層26Aと、発泡材等によって構成された第2層26Bとの2層構造となっている。シート表皮26は、前面部36(天板)と、前面部36のシート幅方向両端部に位置する前面サイド部38(天板サイド)と、両前面サイド部38に続く側面部40(カマチ)と、後面部(背面部)41で構成されている。また、シート表皮26の前面部36の両縁部36Aと前面サイド部38の一方の縁部38Aとが縫合糸S1によって縫製ラインH1で縫合されており、前面部36と両前面サイド部38とによってシートバック14の背もたれ側のシート表皮が構成されている。
【0038】
一方、シート表皮26のシート幅方向外側の前面サイド部38の他方の縁部38Bには、シート幅方向外側の側面部40の一方の縁部40Aが縫合糸S2によって破断部としてのバーストライン(縫製ライン)H2で縫合されている。さらに、シート表皮26の側面部40の他方の縁部40Bは後面部41の縁部41Aに縫合糸S3によって縫製ラインH3で縫合されている。
【0039】
なお、サイドエアバッグ装置20を備えたシートバック14のシート表皮26においては、破断が予定されている縫製ラインH2を一般にバーストラインと称している。また、シート表皮26の前面部36(天板)の両側に位置する前面サイド部38(天板サイド)もシート表皮26の前面を構成している。このため、前面部は前面サイド部(天板サイド)も含めた概念とする。
【0040】
バーストラインH2は、シートバックパッド24の破断促進部43Aと対応する位置に設けられており、バーストラインH2には他の縫製ラインに使用される縫い糸よりも破断しやすい番手や強度の縫い糸が使用されている。
【0041】
図2に示すように、シートバック14のドア側サイド部14Bにおけるサイドエアバッグ18の車両幅方向外側となるシート幅方向外側には、車室側面侵入抑制手段としてのサイドプレート50が設けられており、サイドプレート50はシート表皮26の外側に配置されている。また、サイドプレート50のシート上下方向から見た形状は、シートバック14のドア側サイド部14Bのシート幅方向外側の意匠に沿った湾曲形状とされている。また、サイドプレート50の前端部50Aは格納状態にあるサイドエアバッグ18より前方に達しており、サイドプレート50の後端部50Bは格納状態にあるサイドエアバッグ18より後方に達している。さらに、サイドプレート50の前端部50Aと後端部50Bとがシート表皮26に当接しており、前端部50Aと後端部50Bとの間の中間部50Cは、シート表皮26から僅かに離間している。
【0042】
図1に示すように、サイドプレート50はシートバックフレーム側部22に沿った上下方向を長手方向とする長尺状の板材で構成されている。また、サイドプレート50の上端部50Dは格納状態にあるサイドエアバッグ18より上方に達しており、サイドプレート50の下端部50Eは格納状態にあるサイドエアバッグ18より下方に達している。
【0043】
サイドプレート50の上端部50Dの近傍と、サイドプレート50の下端部50Eの近傍には、シート幅方向内側から移動手段としてのアーム52の先端部52Aが連結されており、アーム52は、開口部を車両幅方向外側に向けコ字状に屈曲された丸棒材で構成されている。また、アーム52の上下の横棒部52Bはシートバックフレーム側部22の基部22Aを貫通し、エアバッグモジュールケース35の側壁部35Bに形成した貫通孔51(図6参照)を通過し、エアバッグモジュールケース35の内部に達している。なお、上下の横棒部52Bの車両幅方向内側端部は、エアバッグモジュールケース35の内部において縦棒部52Cによって互いに連結されている。
【0044】
図3に示すように、アーム52の縦棒部52Cは、駆動装置34の内部を上下方向に通過している。また、駆動装置34の内部には移動手段としての移動体54が設けらており、移動体54は、車両幅方向外側(図3の矢印A方向)と車両幅方向内側(図3の矢印B方向)とへ移動可能となっている。なお、移動体54の車両幅方向外側壁部54Aには、支持部54Bが形成されており、この支持部54Bがアーム52の縦棒部52Cを車両幅方向内側から支持している。従って、移動体54が車両幅方向外側(図3の矢印A方向)へ移動することで、アーム52全体が車両幅方向外側(図3の矢印A方向)へ移動するようになっている。
【0045】
駆動装置34の内部の車両幅方向内側部には、インフレータ32からガスが供給される移動手段としての移動用エアバッグ56が折り畳まれた状態で設けられており、この移動用エアバッグ56の車両幅方向外側に移動体54が配置されている。従って、図4に示すように、インフレータ32からのガスによって、移動用エアバッグ56が駆動装置34の内部で膨張展開することによって、移動体54が車両幅方向外側(図3の矢印A方向)へ移動され、アーム52全体が車両幅方向外側(図3の矢印A方向)へ移動するようになっている。この結果、サイドプレート50が図2に実線で示すシートバック14のドア側サイド部14Bに当接した待機位置から、図2に2点鎖線で示す車両幅方向外側へ離間した突出位置へ向って移動するようになっている。なお、膨張展開するサイドエアバッグ18の作動軌跡と、移動するサイドプレート50の作動軌跡はお互いに干渉しないようになっている。
【0046】
図2に示すように、サイドプレート50はサイドドア17の車室内装材としてのドアトリム60に設けられた車室内側への突出部としてのアームレスト60Aに対向して設けられており、サイドプレート50は車両幅方向外側(図2の矢印A方向)へ移動すると、アームレスト60Aに当接して、車室側部としてのサイドドア17の車室内への侵入を遅らせると共に車室内への侵入を抑制するようになっている。
【0047】
図5に示すように、エアバッグモジュールケース35における車両幅方向外側の側壁部35Bの上部には、ストッパ収納部62が車両幅方向外側に向かって突出形成されている。また、ストッパ収納部62の内部には、逆移動防止手段としてのストッパ64の上部64Aが挿入されており、ストッパ64の下端部64Bは、アーム52における上方側の横棒部52Bの上面に当接している。
【0048】
図6に示すように、ストッパ収納部62の下壁部62Aには、開口部66が形成されており、開口部66からストッパ64の下部64Cが下方に向かって突出している。また、ストッパ64の上部64Aは、ストッパ収納部62の下壁部62Aにおける開口部66の周縁部62Bに上方側から係合しており、ストッパ64がストッパ収納部62から落下しないようになっている。なお、ストッパ64の上部64Aと、ストッパ収納部62の上壁部62Cとの間にはスプリング等の付勢部材68が設けられており、ストッパ64を下方(図6の矢印C方向)へ向かって付勢している。
【0049】
一方、アーム52における上方側の横棒部52Bには、上方側から下方側に向かって逆移動防止手段としての係合凹部(ノッチ切欠)70が、横棒部52Bの軸方向に沿って所定の間隔で複数形成されている。各係合凹部70は、車両前後方向から見た形状が台形状となっている。より具体的に説明すると、係合凹部70の車両幅方向外側壁部70Aは上下方向に延びる垂直壁部となっており、車両幅方向内側壁部70Bは車両幅方向外側下方から車両幅方向内側上方に向かう傾斜壁部となっている。さらに、係合凹部70の底壁部70Cは横棒部52Bの軸方向に沿っている。
【0050】
ストッパ64の下部64Cの形状は、係合凹部70の形状に対応しており、ストッパ64の下部64Cと係合凹部70とが図6に示すように係合するようになっている(係合状態)。また、係合状態では、ストッパ64の下部64Cの車両幅方向外側壁部64Dと係合凹部70の車両幅方向外側壁部70Aとが対向しており、ストッパ64の下部64Cの車両幅方向内側壁部64Eと係合凹部70の車両幅方向内側壁部70Bとが対向している。即ち、ストッパ64の下部64Cの車両幅方向外側壁部64Dは上下方向に延びる垂直壁部となっており、ストッパ64の下部64Cの車両幅方向内側壁部64Eは車両幅方向外側下方から車両幅方向内側上方に向かう傾斜壁部となっている。さらに、ストッパ64の下端部64Bは横棒部52Bの軸方向に沿っている。
【0051】
従って、ストッパ64の下部64Cと係合凹部70との係合状態において、アーム52が車両幅方向外側から車両幅方向内側(図6の矢印D方向)へ移動した場合には、ストッパ64の下部64Cの車両幅方向外側壁部64Dと係合凹部70の車両幅方向外側壁部70Aとが当接することによって、アーム52の矢印D方向の移動が防止されるようになっている。
【0052】
一方、ストッパ64の下部64Cと係合凹部70との係合状態において、アーム52が車両幅方向内側から車両幅方向外側(図6の矢印E方向)へ移動した場合には、ストッパ64の下部64Cの車両幅方向内側壁部64Eと係合凹部70の車両幅方向内側壁部70Bとが摺動することによって、アーム52が矢印E方向へ移動できるようになっている。この際、ストッパ64は付勢部材68の付勢力に抗して上方向(図6の矢印F方向)へ移動すると共に、付勢部材68の付勢力によってアーム52の移動方に存在する次の係合凹部70に順次挿入されるようになっている。
【0053】
なお、ストッパ64を付勢部材68によって下方へ付勢したが、これに代えて、ストッパ64が自重によって下方へ移動する構成としてもよい。
【0054】
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0055】
車両が側面衝突時になると、図示しないエアバッグセンサによって側面衝突状態が検知され、その信号がエアバッグECUに入力される。エアバッグECUでは、サイドエアバッグ装置20を作動させるべきか否かを入力信号に基づいて判断し、サイドエアバッグ作動と判断すると、インフレータ32に所定の電流が通電される。これにより、インフレータ32が作動してガスが発生し、パイプ33を介してサイドエアバッグ18内にガスが噴出される。その結果、シートバック14のドア側サイド部14B内に折り畳み状態で格納されていたサイドエアバッグ18がシート内部で膨張展開し、シートバックパッド24とともにシート表皮26のバーストラインH2を破断する。また、シート表皮26のバーストラインH2を破断し、シート外部に膨張展開したサイドエアバッグ18は、シート着座乗員19の腰部19Aと胸部19Bとサイドドア17との間に介在し、シート着座乗員19の腰部19Aと胸部19Bを保護する。
【0056】
ここで、本実施形態では、インフレータ32が作動してガスが発生されると、図4に示すように、駆動装置34の内部において、移動用エアバッグ56が膨張展開する。このため、膨張展開した移動用エアバッグ56によって、移動体54が車両幅方向外側(図4の矢印A方向)へ移動することで、アーム52全体が車両幅方向外側(図4の矢印A方向)へ移動する。この結果、サイドプレート50が図2に実線で示すシートバック14のドア側サイド部14Bに当接した待機位置から、図2に2点鎖線で示す車両幅方向外側へ離間した突出位置へ向って移動する。
【0057】
この時、アーム52が車両幅方向内側から車両幅方向外側(図6の矢印E方向)へ移動するため、ストッパ64の下部64Cの車両幅方向内側壁部64Eと係合凹部70の車両幅方向内側壁部70Bとが摺動し、ストッパ64が付勢部材68の付勢力に抗して上方向(図6の矢印F方向)へ移動する。また、ストッパ64は付勢部材68の付勢力によってアーム52の移動方向に存在する次の係合凹部70に順次挿入される。
【0058】
また、車両幅方向外側へ移動したサイドプレート50は、サイドドア17のドアトリム60に設けられたアームレスト60Aに当接して、サイドドア17の車室内への侵入を遅らせると共に車室内への侵入を抑制する。
【0059】
この時、サイドドア17の車室内への侵入によって、アーム52が車両幅方向外側から車両幅方向内側(図6の矢印D方向)へ移動すると、係合状態となったストッパ64の下部64Cの車両幅方向外側壁部64Dと、係合凹部70の車両幅方向外側壁部70Aとが当接し、アーム52の矢印D方向の移動を防止する。
【0060】
このように、本実施形態では、車両側突時に、サイドプレート50によって、アームレスト60Aの車室内への侵入を遅らせると共に車室内への侵入を抑制できる。この結果、アームレスト60Aに邪魔されることなく(引っ掛かることなく)、サイドエアバッグ18をシート着座乗員19とサイドドア17との間に展開させることができる。このため、サイドエアバッグ18によってシート着座乗員19を保護できる。
【0061】
また、本実施形態では、エアバッグモジュールケース35が左右のブラケット37を介して左右のシートバックフレーム側部22にそれぞれ固定されている。このため、サイドドア17の車室内側方向への侵入力が大きい場合には、サイドドア17からサイドプレート50に作用する車室内側方向への荷重によって、車両用シート10全体が車両幅方向内側へ移動する。この結果、車両用シート10のシート着座乗員19も車両幅方向内側へ移動することになり、車両側突時のシート着座乗員19への衝撃を緩和させることができる。
【0062】
また、本実施形態では、1つのインフレータ32によってサイドエアバッグ18を膨張展開させると共に、移動用エアバッグ56も膨張展開させ、サイドプレート50を移動する構成になっている。このため、インフレータ32が1つですみ部品点数を少なくできるので不要な重量増加を回避できる。
【0063】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、車室側面侵入抑制手段としてのサイドプレート50を板材で構成したが、車室側面侵入抑制手段は板材に限定されず、メッシュ(網)構造等の他の構成としてもよい。
【0064】
また、実施形態では、サイドプレート50を車室内装材としてのドアトリム60に設けられた車室内側への突出部としてのアームレスト60Aに対向して設けたが、これに代えて、サイドプレート50はセンターピラーガーニッシュ等の他の車室内装材の車室内側への突出部に対向して設けた構成としてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、格納したサイドエアバッグ18の車幅方向外側をサイドプレート50の待機位置としたが、これに代えて、サイドエアバッグ18と前後または上下にオフセットした位置でサイドエアバッグ18の車幅方向内側をサイドプレート50の待機位置とし、その待機位置から車両幅方向外側へ向かってサイドプレート50が移動する構成としてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、シート表皮26を皮等によって構成され意匠面を構成する第1層26Aと、発泡材等によって構成された第2層26Bとの2層構造としたが、シート表皮26は2層構造に限定されず、1層構造、3層構造等の他の構造としてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、側面衝突することによりサイドエアバッグ装置20が作動する構成となっていたが、これに限らず、プリクラッシュセンサを搭載して、側面衝突予測(予知)時にもサイドエアバッグ装置20が作動する構成にしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、シート着座乗員19の少なくとも腰部19Aから胸部19Bの範囲を拘束する位置に上下方向にわたって膨張展開する側面視で縦長かつ大型のサイドエアバッグ18を備えたサイドエアバッグ装置20に対して本発明を適用したが、これに限らず、シート着座乗員19の胸部19Bのみ保護する小型のサイドエアバッグを備えたサイドエアバッグ装置等に対して本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの要部を示す斜め後方から見た斜視図である。
【図2】図7の2−2断面線に沿った部位におけるサイドエアバッグ格納状態を示す拡大断面図である。
【図3】図1の3−3断面線に沿った拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用シートのサイドプレートの作動状態を示す図3に対応する断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両用シートのストッパを示す斜め後方から見た斜視図である。
【図6】図5の6−6断面線に沿った拡大断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る車両用シートを示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0070】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
18 サイドエアバッグ
20 サイドエアバッグ装置
22 シートバックフレーム側部
24 シートバックパッド
32 インフレータ
34 駆動装置(移動手段)
35 エアバッグモジュールケース
50 サイドプレート(車室側面侵入抑制手段)
52 アーム(移動手段)
54 移動体(移動手段)
56 移動用エアバッグ(移動手段)
60 ドアトリム(車室内装材)
60A アームレスト(車室内側への突出部)
64 ストッパ(逆移動防止手段)
70 係合凹部(逆移動防止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの側部に設けられ前記シートバックの側部から車両幅方向外側へ向かって移動し、車室側面との当接用とされた車室側面侵入抑制手段と、
車両側突時に前記車室側面侵入抑制手段を前記シートバックの側部から車両幅方向外側へ向かって移動させる移動手段と、
を有することを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記シートバックの側部に格納され、車両側突時にシート着座乗員と前記車室側面との間に膨張展開するサイドエアバッグを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記サイドエアバッグは前記シートバックの側部における待機位置にある前記車室側面侵入抑制手段よりもシート幅方向内側に格納されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記移動手段は前記サイドエアバッグ展開用のインフレータのガス圧によって作動することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記車室側面侵入抑制手段は車室内装材に設けられた車室内側への突出部に対向していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記車室側面侵入抑制手段が車両幅方向内側へ向かって移動するのを防止するための逆移動防止手段を有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−126447(P2009−126447A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305750(P2007−305750)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】