車両用ステアリングメンバ及びその製造方法
【課題】 ステアリングメンバ本体を分割構造にする必要がない車両用ステアリングメンバ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 ステアリングメンバ本体4の内部へブロー成形することにより樹脂ダクト部5を形成するため、ステアリングメンバ本体4を分割構造にする必要がない。樹脂ダクト部5にはステアリングメンバ本体4の開口9、10、11に対応する切除口16、17、18が形成されているため、空調エアーの導入や吹出しを確実に行える。樹脂ダクト部5が中空構造のため、ステアリングメンバ本体4が気密性の保たれた中空構造でなくても、空調エアーの漏れがない。樹脂ダクト部5が発泡樹脂により形成されているため、吸音効果が高く、空調エアーによる騒音の発生を抑制することができる。
【解決手段】 ステアリングメンバ本体4の内部へブロー成形することにより樹脂ダクト部5を形成するため、ステアリングメンバ本体4を分割構造にする必要がない。樹脂ダクト部5にはステアリングメンバ本体4の開口9、10、11に対応する切除口16、17、18が形成されているため、空調エアーの導入や吹出しを確実に行える。樹脂ダクト部5が中空構造のため、ステアリングメンバ本体4が気密性の保たれた中空構造でなくても、空調エアーの漏れがない。樹脂ダクト部5が発泡樹脂により形成されているため、吸音効果が高く、空調エアーによる騒音の発生を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ステアリングメンバ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルの内部には、車幅方向に沿った状態でステアリングメンバ本体が配されている。このステアリングメンバ本体は金属製の筒形状で、本来的には、ステアリングコラムや空調ユニット等の支持のために使用されるが、筒形状のために、空調ダクトとして兼用される場合もある。
【0003】
空調ダクトとして使用する場合には、ステアリングメンバ本体に、空調ユニットから空調エアーを導入する開口と、導入した空調エアーを複数箇所に分岐して吹き出すための開口がそれぞれ形成される。また、金属製のステアリングメンバ本体に対する防露対策のため、ステアリングメンバ本体の内部には樹脂ダクト部が形成される。
【0004】
樹脂ダクト部をステアリングメンバ本体内に形成するため、ステアリングメンバ本体は、例えば断面方向で二つ割にされた分割構造となっており、予め形成した樹脂ダクト部を内部に入れた状態でステアリングメンバ本体を筒状に組み付けてたり、或いは、分割された個々のステアリングメンバ本体の内面にスプレーで樹脂層を形成してからステアリングメンバ本体を筒状に組み付けたりしていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−1687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、ステアリングメンバ本体の内部に樹脂ダクト部を形成するため、ステアリングメンバ本体を複数に分割した構造にしたため、ステアリングメンバ本体の本来の強度が低下するおそれがある。そのため、ステアリングメンバ本体の強度低下を補うために複数の補強部品を追加する必要があり、車体重量及び部品点数の増加を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、ステアリングメンバ本体を分割構造にする必要がない車両用ステアリングメンバ及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、インストルメントパネルの内部に車幅方向に沿って配される金属製で筒状のステアリングメンバ本体に、空調エアーの導入又は吹出し用の開口を形成すると共に、ステアリングメンバ本体の内側に樹脂ダクト部を設けた車両用ステアリングメンバであって、前記樹脂ダクト部がステアリングメンバ本体の内部にブロー成形で形成されたものであり、該樹脂ダクト部にステアリングメンバ本体の開口に対応する切除口が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、樹脂ダクト部が、ステアリングメンバ本体の両端部に相当する部分が閉塞された中空構造であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、樹脂ダクト部が発泡樹脂により形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、金属製で筒状のステアリングメンバ本体を上下方向に沿って保持し、該ステアリングメンバ本体の内部に一端が閉塞された筒状のパリソンを導入し、導入したパリソン内に加圧空気を注入してブロー成形し、ブロー成形後にパリソンの他端を閉塞して中空構造の樹脂ダクト部を形成することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、ステアリングメンバ本体の開口を、開口よりも大きいサイズのキャップ型で塞ぎ、その状態でブロー成形してキャップ型の内部に開口からパリソンを膨張させた膨出部を形成し、キャップ型を外した後、膨出部を開口周辺の外面と密着したフランジ部を残して樹脂ダクト部から切除することにより、フランジ部を有する切除口を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、ステアリングメンバ本体が円筒形状で、該ステアリングメンバ本体に複数の小孔を形成し、ブロー成形時に該小孔内にパリソンの一部を進入させて小孔と係合するアンカー部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、ステアリングメンバ本体の内部へブロー成形することにより樹脂ダクト部を形成するため、ステアリングメンバ本体を分割構造にする必要がない。樹脂ダクト部にはステアリングメンバ本体の開口に対応する切除口が形成されているため、空調エアーの導入や吹出しを確実に行える。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、樹脂ダクト部が中空構造のため、ステアリングメンバ本体が気密性の保たれた中空構造でなくても、空調エアーの漏れがない。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、樹脂ダクト部が発泡樹脂により形成されているため、吸音効果が高く、空調エアーによる騒音の発生を抑制することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、ステアリングメンバ本体を上下方向に沿って保持したため、パリソンを重力によりステアリングメンバ本体内に導入してブロー成形することができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、ブロー成形により開口から外側へ形成した膨出部を切断することにより、開口周辺の外面を覆うフランジ部を有する切除口を形成することができるため、そのフランジ部を介して、他の機器のダクトとの結合を行うことができる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、ステアリングメンバ本体が円筒形状でも、樹脂ダクト部に形成したアンカー部がステアリングメンバ本体の小孔に係合するため、樹脂ダクト部のステアリングメンバ本体内における回転方向での位置ズレを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
ステアリングメンバ本体を分割構造にする必要がない車両用ステアリングメンバ及びその製造方法を提供するという目的を、インストルメントパネルの内部に車幅方向に沿って配される金属製で筒状のステアリングメンバ本体に、空調エアーの導入又は吹出し用の開口を形成すると共に、ステアリングメンバ本体の内側に樹脂ダクト部を設けた車両用ステアリングメンバであって、前記樹脂ダクト部がステアリングメンバ本体の内部にブロー成形で形成されたものであり、該樹脂ダクト部にステアリングメンバ本体の開口に対応する切除口が形成されることで、実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1〜図11は、本発明の一実施例を示す図である。車室内の前方にはインストルメントパネル1が取付けられる。インストルメントパネル1の内部には、車幅方向両側のダッシュサイド2間に、車幅方向に沿うステアリングメンバ3が架設されている。ステアリングメンバ3は、金属製で円筒形状のステアリングメンバ本体4と、その内部に設けられた中空形状の樹脂ダクト部5とから構成されている。
【0021】
ステアリングメンバ本体4の両端部はブラケット6を介してダッシュサイド2に結合されている。ステアリングメンバ本体4のドライバー側には、図示せぬステアリングコラムを支持するステアリングサポート7が溶接により固定されている。また、ステアリングメンバ本体4の中央寄り位置には、一対のステー8が溶接により固定され、フロアトンネルと結合されている。
【0022】
そして、ステアリングメンバ本体4の中央には、上部にセンタ吹出口9が形成され、下部に導入口10が形成されている。また、左右両端の上部にサイド吹出口11がそれぞれ形成されている。センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11が、この実施例の「開口」をそれぞれ構成している。
【0023】
インストルメントパネル1には、中央にセンタデフ12が形成され、左右両側にサイドデフ13がそれぞれ形成されている。センタデフ12とセンタ吹出口9は、図示せぬダクトを介して連結され、サイドデフ13とサイド吹出口11もそれぞれ図示せぬダクトを介して連結されている。導入口10は、空調ユニット14(図3参照)の吹出ダクト15と連結されている。
【0024】
ステアリングメンバ本体4の内部には、ステアリングメンバ本体4の内面に密着する発泡ポリプロピレン製の樹脂ダクト部5が設けられている。樹脂ダクト部5は、両端部が塞がれた中空構造で、前記センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11に相当する部分には、空調エアーE(図3参照)を出し入れするための切除口16、17、18が形成されている。
【0025】
また、各切除口16、17、18には、それぞれセンタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11の周辺外面を覆うフランジ部16a、17a、18aが一体形成されている。従って、このフランジ部16a、17a、18aに、例えば図3に示すように、空調ユニット14の吹出ダクト15のフランジ15aを当接させることで、接続部の気密性が得られる。
【0026】
更に、ステアリングメンバ本体4には複数の小孔19が形成されている。この小孔19は、図5に示すように、円周方向で3個づつ等しい角度で形成されている。そして、樹脂ダクト部5にはこの小孔19内に進入して係合するアンカー部20が形成されている。小孔19とアンカー部20が係合することにより、円筒状のステアリングメンバ本体4内において樹脂ダクト部5が回転方向へ位置ズレするのを防止し、切除口16、17、18への応力集中を防止できる。
【0027】
次に、図6〜図11に基づいて、ステアリングメンバ本体4の内部に樹脂ダクト部5を形成する方法について説明する。
【0028】
まず、筒状のステアリングメンバ本体4を上下方向に沿って保持する。ステアリングメンバ本体4の下端は底型21により塞ぐ。また、センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11は、それぞれよりも大きいサイズのキャップ型22、23、24で塞いだ状態にする。
【0029】
そして、ステアリングメンバ本体4の内部に、上方に設置されたダイス25から加熱軟化状態の発砲ポリプロピレンによるパリソンPを吐出する(図6参照)。ステアリングメンバ本体4が上下方向に沿って保持されているため、パリソンPを重力によりステアリングメンバ本体4に円滑に導入することができる。
【0030】
パリソンPをステアリングメンバ本体4内に収納した後、ダイス25に形成された空気孔(図示せず)から、パリソンP内に加圧空気を注入してブロー成形する。パリソンPはこの加圧空気の圧力により膨張して、ステアリングメンバ本体4の内面に押し付けられる(図7参照)。センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11では、パリソンPが外側に膨出し、センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11の周辺外面からキャップ型22、23、24の内面に沿って押付けられた膨出部26、27、28が形成される(図9参照)。
【0031】
また、小孔19に対応する部分では、パリソンPの一部が小孔19内に進入して、小孔19と係合するアンカー部20(図4参照)となる。小孔19の径が小さいため、パリソンPの一部は小孔19を貫通せず、小孔19から非突出のアンカー部20となる。
【0032】
次に、パリソンPを固化させた後、底型21、キャップ型22、23、24を外す。そして、パリソンPをダイス25から外し、上端を熱溶着により閉塞して、中空構造の樹脂ダクト部5を得る(図8参照)。
【0033】
そして、センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11から突出した膨出部26、27、28を、センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11の周辺外面と密着したフランジ部16a、17a、18aを残して、それぞれ切断線Cより切除する(図10参照)。そうすることにより、センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11と連通する切除口16、17、18が形成される。また、各切除口16、17、18には、センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11の周辺外面を覆うフランジ部16a、17a、18aも形成される(図11参照)。
【0034】
以上のように製造されたステアリングメンバ3は、ステアリングメンバ本体4の内部へブロー成形することにより樹脂ダクト部5を形成するため、ステアリングメンバ本体4を従来のように分割構造にする必要がない。従って、ステアリングメンバ本体4の強度低下がなく、強度低下を補うための補強部品が不要となるため、車体重量及び部品点数の低減を図ることができる。
【0035】
また、樹脂ダクト部5が両端を閉塞した中空構造のため、ブラケット6を介してダッシュサイド2に結合されるステアリングメンバ本体4が完全な中空でなくても、空調エアーEの漏れははい。
【0036】
空調エアーEは、空調ユニット14からステアリングメンバ3に導入された後、センタ吹出口9、サイド吹出口11に対応する切除口16、18から、インストルメントパネル1のセンタデフ12及びサイドデフ13を介して車室内へ吹き出される。
【0037】
そして、樹脂ダクト部5が発泡樹脂(発泡ポリプロピレン)により形成されているため、吸音効果が高く、空調エアーEによる騒音の発生を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上の実施例では、円筒状のステアリングメンバ本体4を例にしたが、角筒状でも良い。尚、その場合は樹脂ダクト部5が本来的にステアリングメンバ本体4の内部で回転しないため、小孔19とアンカー部20は不要である(長手方向への位置ズレ防止のために設けても良い)。更に、中空構造の樹脂ダクト部5を例にしたが、ステアリングメンバ本体4自体に気密性がある場合は、筒状の樹脂ダクト部でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例に係るステアリングメンバを示す斜視図。
【図2】図1のステアリングメンバを示す側面図。
【図3】図1のステアリングメンバを示す概略断面図。
【図4】図2の小孔とアンカー部とを示す拡大断面図。
【図5】図4の小孔の形成位置を示すステアリングメンバ本体の断面図。
【図6】図1のステアリングメンバ本体内にパリソンを導入した状態を示す断面図。
【図7】図6のステアリングメンバ本体内に導入したパリソンに加圧空気を注入してブロー成形する状態を示す断面図。
【図8】図7のブロー成形後にキャップ型を外して膨出部を切断する状態を示す断面図。
【図9】図8のキャップ型内における膨出部の形成状態を示す拡大断面図。
【図10】図9の膨出部の切断状態を示す拡大断面図。
【図11】図10の膨出部の切断後の状態を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0040】
1 インストルメントパネル
3 ステアリングメンバ
4 ステアリングメンバ本体
5 樹脂ダクト部
9 センタ吹出口(開口)
10 導入口(開口)
11 サイド吹出口(開口)
16、17、18 切除口
16a、17a、18a フランジ部
19 小孔
20 アンカー部
22、23、24 キャップ型
26、27、28 膨出部
E 空調エアー
P パリソン
C 切断線
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ステアリングメンバ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルの内部には、車幅方向に沿った状態でステアリングメンバ本体が配されている。このステアリングメンバ本体は金属製の筒形状で、本来的には、ステアリングコラムや空調ユニット等の支持のために使用されるが、筒形状のために、空調ダクトとして兼用される場合もある。
【0003】
空調ダクトとして使用する場合には、ステアリングメンバ本体に、空調ユニットから空調エアーを導入する開口と、導入した空調エアーを複数箇所に分岐して吹き出すための開口がそれぞれ形成される。また、金属製のステアリングメンバ本体に対する防露対策のため、ステアリングメンバ本体の内部には樹脂ダクト部が形成される。
【0004】
樹脂ダクト部をステアリングメンバ本体内に形成するため、ステアリングメンバ本体は、例えば断面方向で二つ割にされた分割構造となっており、予め形成した樹脂ダクト部を内部に入れた状態でステアリングメンバ本体を筒状に組み付けてたり、或いは、分割された個々のステアリングメンバ本体の内面にスプレーで樹脂層を形成してからステアリングメンバ本体を筒状に組み付けたりしていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−1687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、ステアリングメンバ本体の内部に樹脂ダクト部を形成するため、ステアリングメンバ本体を複数に分割した構造にしたため、ステアリングメンバ本体の本来の強度が低下するおそれがある。そのため、ステアリングメンバ本体の強度低下を補うために複数の補強部品を追加する必要があり、車体重量及び部品点数の増加を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、ステアリングメンバ本体を分割構造にする必要がない車両用ステアリングメンバ及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、インストルメントパネルの内部に車幅方向に沿って配される金属製で筒状のステアリングメンバ本体に、空調エアーの導入又は吹出し用の開口を形成すると共に、ステアリングメンバ本体の内側に樹脂ダクト部を設けた車両用ステアリングメンバであって、前記樹脂ダクト部がステアリングメンバ本体の内部にブロー成形で形成されたものであり、該樹脂ダクト部にステアリングメンバ本体の開口に対応する切除口が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、樹脂ダクト部が、ステアリングメンバ本体の両端部に相当する部分が閉塞された中空構造であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、樹脂ダクト部が発泡樹脂により形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、金属製で筒状のステアリングメンバ本体を上下方向に沿って保持し、該ステアリングメンバ本体の内部に一端が閉塞された筒状のパリソンを導入し、導入したパリソン内に加圧空気を注入してブロー成形し、ブロー成形後にパリソンの他端を閉塞して中空構造の樹脂ダクト部を形成することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、ステアリングメンバ本体の開口を、開口よりも大きいサイズのキャップ型で塞ぎ、その状態でブロー成形してキャップ型の内部に開口からパリソンを膨張させた膨出部を形成し、キャップ型を外した後、膨出部を開口周辺の外面と密着したフランジ部を残して樹脂ダクト部から切除することにより、フランジ部を有する切除口を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、ステアリングメンバ本体が円筒形状で、該ステアリングメンバ本体に複数の小孔を形成し、ブロー成形時に該小孔内にパリソンの一部を進入させて小孔と係合するアンカー部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、ステアリングメンバ本体の内部へブロー成形することにより樹脂ダクト部を形成するため、ステアリングメンバ本体を分割構造にする必要がない。樹脂ダクト部にはステアリングメンバ本体の開口に対応する切除口が形成されているため、空調エアーの導入や吹出しを確実に行える。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、樹脂ダクト部が中空構造のため、ステアリングメンバ本体が気密性の保たれた中空構造でなくても、空調エアーの漏れがない。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、樹脂ダクト部が発泡樹脂により形成されているため、吸音効果が高く、空調エアーによる騒音の発生を抑制することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、ステアリングメンバ本体を上下方向に沿って保持したため、パリソンを重力によりステアリングメンバ本体内に導入してブロー成形することができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、ブロー成形により開口から外側へ形成した膨出部を切断することにより、開口周辺の外面を覆うフランジ部を有する切除口を形成することができるため、そのフランジ部を介して、他の機器のダクトとの結合を行うことができる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、ステアリングメンバ本体が円筒形状でも、樹脂ダクト部に形成したアンカー部がステアリングメンバ本体の小孔に係合するため、樹脂ダクト部のステアリングメンバ本体内における回転方向での位置ズレを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
ステアリングメンバ本体を分割構造にする必要がない車両用ステアリングメンバ及びその製造方法を提供するという目的を、インストルメントパネルの内部に車幅方向に沿って配される金属製で筒状のステアリングメンバ本体に、空調エアーの導入又は吹出し用の開口を形成すると共に、ステアリングメンバ本体の内側に樹脂ダクト部を設けた車両用ステアリングメンバであって、前記樹脂ダクト部がステアリングメンバ本体の内部にブロー成形で形成されたものであり、該樹脂ダクト部にステアリングメンバ本体の開口に対応する切除口が形成されることで、実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1〜図11は、本発明の一実施例を示す図である。車室内の前方にはインストルメントパネル1が取付けられる。インストルメントパネル1の内部には、車幅方向両側のダッシュサイド2間に、車幅方向に沿うステアリングメンバ3が架設されている。ステアリングメンバ3は、金属製で円筒形状のステアリングメンバ本体4と、その内部に設けられた中空形状の樹脂ダクト部5とから構成されている。
【0021】
ステアリングメンバ本体4の両端部はブラケット6を介してダッシュサイド2に結合されている。ステアリングメンバ本体4のドライバー側には、図示せぬステアリングコラムを支持するステアリングサポート7が溶接により固定されている。また、ステアリングメンバ本体4の中央寄り位置には、一対のステー8が溶接により固定され、フロアトンネルと結合されている。
【0022】
そして、ステアリングメンバ本体4の中央には、上部にセンタ吹出口9が形成され、下部に導入口10が形成されている。また、左右両端の上部にサイド吹出口11がそれぞれ形成されている。センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11が、この実施例の「開口」をそれぞれ構成している。
【0023】
インストルメントパネル1には、中央にセンタデフ12が形成され、左右両側にサイドデフ13がそれぞれ形成されている。センタデフ12とセンタ吹出口9は、図示せぬダクトを介して連結され、サイドデフ13とサイド吹出口11もそれぞれ図示せぬダクトを介して連結されている。導入口10は、空調ユニット14(図3参照)の吹出ダクト15と連結されている。
【0024】
ステアリングメンバ本体4の内部には、ステアリングメンバ本体4の内面に密着する発泡ポリプロピレン製の樹脂ダクト部5が設けられている。樹脂ダクト部5は、両端部が塞がれた中空構造で、前記センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11に相当する部分には、空調エアーE(図3参照)を出し入れするための切除口16、17、18が形成されている。
【0025】
また、各切除口16、17、18には、それぞれセンタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11の周辺外面を覆うフランジ部16a、17a、18aが一体形成されている。従って、このフランジ部16a、17a、18aに、例えば図3に示すように、空調ユニット14の吹出ダクト15のフランジ15aを当接させることで、接続部の気密性が得られる。
【0026】
更に、ステアリングメンバ本体4には複数の小孔19が形成されている。この小孔19は、図5に示すように、円周方向で3個づつ等しい角度で形成されている。そして、樹脂ダクト部5にはこの小孔19内に進入して係合するアンカー部20が形成されている。小孔19とアンカー部20が係合することにより、円筒状のステアリングメンバ本体4内において樹脂ダクト部5が回転方向へ位置ズレするのを防止し、切除口16、17、18への応力集中を防止できる。
【0027】
次に、図6〜図11に基づいて、ステアリングメンバ本体4の内部に樹脂ダクト部5を形成する方法について説明する。
【0028】
まず、筒状のステアリングメンバ本体4を上下方向に沿って保持する。ステアリングメンバ本体4の下端は底型21により塞ぐ。また、センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11は、それぞれよりも大きいサイズのキャップ型22、23、24で塞いだ状態にする。
【0029】
そして、ステアリングメンバ本体4の内部に、上方に設置されたダイス25から加熱軟化状態の発砲ポリプロピレンによるパリソンPを吐出する(図6参照)。ステアリングメンバ本体4が上下方向に沿って保持されているため、パリソンPを重力によりステアリングメンバ本体4に円滑に導入することができる。
【0030】
パリソンPをステアリングメンバ本体4内に収納した後、ダイス25に形成された空気孔(図示せず)から、パリソンP内に加圧空気を注入してブロー成形する。パリソンPはこの加圧空気の圧力により膨張して、ステアリングメンバ本体4の内面に押し付けられる(図7参照)。センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11では、パリソンPが外側に膨出し、センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11の周辺外面からキャップ型22、23、24の内面に沿って押付けられた膨出部26、27、28が形成される(図9参照)。
【0031】
また、小孔19に対応する部分では、パリソンPの一部が小孔19内に進入して、小孔19と係合するアンカー部20(図4参照)となる。小孔19の径が小さいため、パリソンPの一部は小孔19を貫通せず、小孔19から非突出のアンカー部20となる。
【0032】
次に、パリソンPを固化させた後、底型21、キャップ型22、23、24を外す。そして、パリソンPをダイス25から外し、上端を熱溶着により閉塞して、中空構造の樹脂ダクト部5を得る(図8参照)。
【0033】
そして、センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11から突出した膨出部26、27、28を、センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11の周辺外面と密着したフランジ部16a、17a、18aを残して、それぞれ切断線Cより切除する(図10参照)。そうすることにより、センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11と連通する切除口16、17、18が形成される。また、各切除口16、17、18には、センタ吹出口9、導入口10、サイド吹出口11の周辺外面を覆うフランジ部16a、17a、18aも形成される(図11参照)。
【0034】
以上のように製造されたステアリングメンバ3は、ステアリングメンバ本体4の内部へブロー成形することにより樹脂ダクト部5を形成するため、ステアリングメンバ本体4を従来のように分割構造にする必要がない。従って、ステアリングメンバ本体4の強度低下がなく、強度低下を補うための補強部品が不要となるため、車体重量及び部品点数の低減を図ることができる。
【0035】
また、樹脂ダクト部5が両端を閉塞した中空構造のため、ブラケット6を介してダッシュサイド2に結合されるステアリングメンバ本体4が完全な中空でなくても、空調エアーEの漏れははい。
【0036】
空調エアーEは、空調ユニット14からステアリングメンバ3に導入された後、センタ吹出口9、サイド吹出口11に対応する切除口16、18から、インストルメントパネル1のセンタデフ12及びサイドデフ13を介して車室内へ吹き出される。
【0037】
そして、樹脂ダクト部5が発泡樹脂(発泡ポリプロピレン)により形成されているため、吸音効果が高く、空調エアーEによる騒音の発生を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上の実施例では、円筒状のステアリングメンバ本体4を例にしたが、角筒状でも良い。尚、その場合は樹脂ダクト部5が本来的にステアリングメンバ本体4の内部で回転しないため、小孔19とアンカー部20は不要である(長手方向への位置ズレ防止のために設けても良い)。更に、中空構造の樹脂ダクト部5を例にしたが、ステアリングメンバ本体4自体に気密性がある場合は、筒状の樹脂ダクト部でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例に係るステアリングメンバを示す斜視図。
【図2】図1のステアリングメンバを示す側面図。
【図3】図1のステアリングメンバを示す概略断面図。
【図4】図2の小孔とアンカー部とを示す拡大断面図。
【図5】図4の小孔の形成位置を示すステアリングメンバ本体の断面図。
【図6】図1のステアリングメンバ本体内にパリソンを導入した状態を示す断面図。
【図7】図6のステアリングメンバ本体内に導入したパリソンに加圧空気を注入してブロー成形する状態を示す断面図。
【図8】図7のブロー成形後にキャップ型を外して膨出部を切断する状態を示す断面図。
【図9】図8のキャップ型内における膨出部の形成状態を示す拡大断面図。
【図10】図9の膨出部の切断状態を示す拡大断面図。
【図11】図10の膨出部の切断後の状態を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0040】
1 インストルメントパネル
3 ステアリングメンバ
4 ステアリングメンバ本体
5 樹脂ダクト部
9 センタ吹出口(開口)
10 導入口(開口)
11 サイド吹出口(開口)
16、17、18 切除口
16a、17a、18a フランジ部
19 小孔
20 アンカー部
22、23、24 キャップ型
26、27、28 膨出部
E 空調エアー
P パリソン
C 切断線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネル(1)の内部に車幅方向に沿って配される金属製で筒状のステアリングメンバ本体(4)に、空調エアーの導入又は吹出し用の開口(9、10、11)を形成すると共に、ステアリングメンバ本体(4)の内側に樹脂ダクト部(5)を設けた車両用ステアリングメンバであって、
前記樹脂ダクト部(5)がステアリングメンバ本体(4)の内部にブロー成形で形成されたものであり、該樹脂ダクト部(5)にステアリングメンバ本体(4)の開口(9、10、11)に対応する切除口(16、17、18)が形成されていることを特徴とする車両用ステアリングメンバ。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ステアリングメンバであって、
樹脂ダクト部(5)が、ステアリングメンバ本体(4)の両端部に相当する部分が閉塞された中空構造であることを特徴とする車両用ステアリングメンバ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両用ステアリングメンバであって、
樹脂ダクト部(5)が発泡樹脂により形成されていることを特徴とする車両用ステアリングメンバ。
【請求項4】
金属製で筒状のステアリングメンバ本体(4)を上下方向に沿って保持し、該ステアリングメンバ本体(4)の内部に一端が閉塞された筒状のパリソン(P)を導入し、導入したパリソン(P)内に加圧空気を注入してブロー成形し、ブロー成形後にパリソン(P)の他端を閉塞して中空構造の樹脂ダクト部(5)を形成することを特徴とする車両用ステアリングメンバの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の車両用ステアリングメンバの製造方法であって、
ステアリングメンバ本体(4)の開口(9、10、11)を、開口(9、10、11)よりも大きいサイズのキャップ型(22、23、24)で塞ぎ、その状態でブロー成形してキャップ型(22、23、24)の内部に開口(9、10、11)からパリソン(P)を膨張させた膨出部(26、27、28)を形成し、キャップ型(22、23、24)を外した後、膨出部(26、27、28)を開口(9、10、11)周辺の外面と密着したフランジ部(16a、17a、18a)を残して樹脂ダクト部(5)から切除することにより、フランジ部(16a、17a、18a)を有する切除口(16、17、18)を形成することを特徴とする車両用ステアリングメンバの製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の車両用ステアリングメンバの製造方法であって、
ステアリングメンバ本体(4)が円筒形状で、該ステアリングメンバ本体(4)に複数の小孔(19)を形成し、ブロー成形時に該小孔(19)内にパリソン(P)の一部を進入させて小孔(19)と係合するアンカー部(20)を形成したことを特徴とする車両用ステアリングメンバの製造方法。
【請求項1】
インストルメントパネル(1)の内部に車幅方向に沿って配される金属製で筒状のステアリングメンバ本体(4)に、空調エアーの導入又は吹出し用の開口(9、10、11)を形成すると共に、ステアリングメンバ本体(4)の内側に樹脂ダクト部(5)を設けた車両用ステアリングメンバであって、
前記樹脂ダクト部(5)がステアリングメンバ本体(4)の内部にブロー成形で形成されたものであり、該樹脂ダクト部(5)にステアリングメンバ本体(4)の開口(9、10、11)に対応する切除口(16、17、18)が形成されていることを特徴とする車両用ステアリングメンバ。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ステアリングメンバであって、
樹脂ダクト部(5)が、ステアリングメンバ本体(4)の両端部に相当する部分が閉塞された中空構造であることを特徴とする車両用ステアリングメンバ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両用ステアリングメンバであって、
樹脂ダクト部(5)が発泡樹脂により形成されていることを特徴とする車両用ステアリングメンバ。
【請求項4】
金属製で筒状のステアリングメンバ本体(4)を上下方向に沿って保持し、該ステアリングメンバ本体(4)の内部に一端が閉塞された筒状のパリソン(P)を導入し、導入したパリソン(P)内に加圧空気を注入してブロー成形し、ブロー成形後にパリソン(P)の他端を閉塞して中空構造の樹脂ダクト部(5)を形成することを特徴とする車両用ステアリングメンバの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の車両用ステアリングメンバの製造方法であって、
ステアリングメンバ本体(4)の開口(9、10、11)を、開口(9、10、11)よりも大きいサイズのキャップ型(22、23、24)で塞ぎ、その状態でブロー成形してキャップ型(22、23、24)の内部に開口(9、10、11)からパリソン(P)を膨張させた膨出部(26、27、28)を形成し、キャップ型(22、23、24)を外した後、膨出部(26、27、28)を開口(9、10、11)周辺の外面と密着したフランジ部(16a、17a、18a)を残して樹脂ダクト部(5)から切除することにより、フランジ部(16a、17a、18a)を有する切除口(16、17、18)を形成することを特徴とする車両用ステアリングメンバの製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の車両用ステアリングメンバの製造方法であって、
ステアリングメンバ本体(4)が円筒形状で、該ステアリングメンバ本体(4)に複数の小孔(19)を形成し、ブロー成形時に該小孔(19)内にパリソン(P)の一部を進入させて小孔(19)と係合するアンカー部(20)を形成したことを特徴とする車両用ステアリングメンバの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−69426(P2006−69426A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257032(P2004−257032)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
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