説明

車両用スライドデッキ装置

【課題】別の車両が衝突してきた場合であっても、荷物載置板をスライド可能に支持するレールを固定したラゲージルームの底板に亀裂や変形が生じるのを効果的に防止できる車両用スライドデッキ装置を提供する。
【解決手段】バックドア12を備える車両のラゲージルームの底板15上に、前後方向に並ぶ複数のブラケット21、22を介して固定した、前後方向に延びるチャンネル形状である左右一対のロアレール25と、左右のロアレールに対してスライド可能な荷物載置板115と、を備え、ロアレールに、その前後方向位置が隣り合う2つのブラケットの間に位置する貫通孔47を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックドアを備える車両のラゲージルームの底板に設けるスライドデッキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるスライドデッキ装置の従来技術としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1のスライドデッキ装置は、車両本体の後部に形成したラゲージルームの底部に固定した前後方向に延びる左右一対のガイドレール6と、左右のガイドレール6の上面を覆う平板状のラゲージフロア4と、を具備している。
ガイドレール6は車外側の側面が開口するチャンネル形状である。さらに、左右のガイドレール6の後端部の外側面には、車幅方向の回転軸回りに回転可能かつガイドレール6に対して前後方向に移動不能なローラ8が設けてある。
ラゲージフロア4の下面の前端部からは左右一対のブラケット4aが下向きに突出しており、左右のブラケット4aには車幅方向の回転軸回りに回転可能なローラ7が設けてある。
【0003】
左右のローラ7はそれぞれ左右のガイドレール6の内部に位置しており、共にガイドレール6の底面に接触している。さらに、左右のローラ8がラゲージフロア4の下面をそれぞれ支持しているので、ラゲージフロア4は左右のガイドレール6に沿って前後方向にスライド可能である。
従って、車両の背面に設けたバックドアを開放した状態で、荷物が載置されているラゲージフロア4を後方に引き出せば(図1の仮想線参照)、荷物を車両の後方に引き出すことが可能である。
【特許文献1】特開2002−87166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両の後部に別の車両が衝突すると、その衝撃が車両ボディを介してラゲージルームの底部(左右のガイドレール6を固定した部分)に伝わる。そのため、このときの衝撃が大きい場合には、ラゲージルームの底部に変形や亀裂が生じるおそれがある。
しかし、特許文献1のスライドデッキ装置ではこのような不具合を防止するための工夫がなされていない。
【0005】
本発明の目的は、別の車両が衝突してきた場合であっても、荷物載置板をスライド可能に支持するレールを固定したラゲージルームの底板に亀裂や変形が生じるのを効果的に防止できる車両用スライドデッキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用スライドデッキ装置は、バックドアを備える車両のラゲージルームの底板上に、前後方向に並ぶ複数のブラケットを介して固定した、前後方向に延びるチャンネル形状である左右一対のロアレールと、左右のロアレールに対してスライド可能な荷物載置板と、を備え、上記ロアレールに、その前後方向位置が隣り合う2つの上記ブラケットの間に位置し、かつ座屈に対する剛性が他の部分に比べて低い脆弱部を形成したことを特徴としている。
【0007】
上記ロアレールが、底板部と、該底板部の左右両端部から上方に延びる左右一対の側壁部と、左右の側壁部の上端から内側に略水平に延びる左右一対の上面部と、を備え、さらに、上記荷物載置板の下面を支持し、かつ左右のロアレールに対してスライド自在に嵌合する左右一対のアッパレールと、該アッパレールに設けた、上記ロアレール内において上記アッパレール及び荷物載置板を支持しながら上記底板部上を転動する前後方向に並ぶ複数のローラと、を備え、上記脆弱部を、ロアレールの上記側壁部に形成した貫通孔とするのが好ましい。
【0008】
上記貫通孔の下縁部に、上記脆弱部の構成要素である切れ込みを形成するのが好ましい。
【0009】
上記荷物載置板と一緒にスライドし、かつロック位置とアンロック位置の間を移動可能なロック部材を備え、上記ロアレールの側面に、上記脆弱部と前後方向位置をずらして、上記ロック位置に位置するロック部材と係合可能でアンロック位置に位置するロック部材とは係合不能なロック孔を備える被ロック部材を固着するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
例えば車両の後部に別の車両が衝突すると、この衝突荷重がラゲージルームの底板、及び各ブラケットを介して左右のロアレールに伝わる。本発明のロアレールの座屈に対する剛性は脆弱部を形成した部分が最も小さいので、上記衝突荷重によってロアレールは脆弱部を形成した部分から座屈する。
このように衝突荷重のエネルギーを座屈を起こすことによりロアレールが効果的に吸収するので、ラゲージルームの底板に変形や亀裂が生じるのを防止できる。
【0011】
請求項2のように、ロアレールが底板部と、左右一対の側壁部と、左右の側壁部の上端から内側に延びる左右一対の上面部と、を備える場合に、底板部に脆弱部としての貫通孔を形成すると、この貫通孔がローラの転動の妨げとなってしまう。さらに、底板部にはローラからアッパレール及び荷物載置板の荷重が掛かるので、貫通孔を設けることにより底板部の剛性が低下すると、ローラから掛かる荷重により底板部が破損するおそれがある。また、上面部に貫通孔を形成すると、側壁部や底板部に貫通孔を形成する場合に比べてロアレール全体の剛性が低下してしまう。
しかし、請求項2のように側壁部に貫通孔を形成する場合は、このような不具合が生じることがない。
【0012】
請求項3の発明によると、ロアレールは貫通孔を形成した部分の剛性が最も小さくなるが、特に切れ込みを設けた部分の剛性が最も小さくなるので、ロアレールは切り込みを設けた部分から座屈を起こし易くなる。従って、ロアレールの座屈開始点をより精度よくコントロールできるようになる。
【0013】
請求項4のように構成すれば、ロアレールの中で被ロック部材を固着した部分の剛性が他の部分に比べて大きくなるので、被ロック部材を固着した部分から座屈が開始するおそれは極めて小さい。そのため、ロアレールの座屈開始ポイントを脆弱部を形成した部分にし易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を添付図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態の説明中の前後方向と左右方向は図中に記載した矢線方向を基準とする。
車両10の背面には背面開口部11が形成してあり、背面開口部11の上縁部には背面開口部11と同じ正面形状であるバックドア12の上縁部が左右方向の回転軸回りに回転自在として枢着してある。さらに、車両10の背面開口部11の直下には金属製のバンパーBPが設けてある。
車両10の車内には前後2列のシートが設けてあり(図1に示す符号13が2列目のシート)、2列目シート13の後方がラゲージルーム14となっている。ラゲージルーム14の底面を構成する金属製の底板15の上面には、載置した荷物を前後方向にスライド移動させるためのスライドデッキ装置20が設けてある。
【0015】
スライドデッキ装置20は以下に説明する構造である。
スライドデッキ装置20は、大きな構成要素として左右一対のロアレール25と、左右のロアレール25に対して前後方向にスライド可能なスライドユニット50と、スライドユニット50の上面に固定した荷物載置板115と、を備えている。
図6に示すように、底板15の前端部をなす前端支持部16と後端部をなす後端支持部17はその中央部(平坦部)に比べて上方に突出しており、前端支持部16の前面は前下方に向かって傾斜する傾斜取付部18となっている。さらに、後端支持部17の下面にはその幅方向全体に渡って金属製のチャンネル部材である補強部材19が固定してあり、補強部材19の後半部の上面にはその全長に渡って合成樹脂製のカバー部材Cが装着してある。
前端支持部16の傾斜取付部18の左右両端部近傍には貫通孔(図示略)が穿設してあり、前端支持部16の裏面(下面)の左右の貫通孔と対応する部分にはナットN1がそれぞれ固着してある。さらに、前端支持部16の上面の左右の貫通孔と対応する部分にはそれぞれ金属製の前部ブラケット21の前半部が載置してあり、前部ブラケット21に設けた貫通孔(図示略)と前端支持部16の貫通孔を貫通するボルトB1を対応するナットN1に螺合することにより、左右一対の前部ブラケット21を傾斜取付部18の左右両側部近傍に固定している。
また、底板15の後端部近傍(後端支持部17より前方)の左右両端部には2つの貫通孔(図示略)がそれぞれ穿設してあり、底板15の裏面(下面)の各貫通孔と対応する部分には4つのナットN2がそれぞれ固着してある。さらに、底板15の上面の左右の貫通孔(一対の貫通孔)と対応する部分にはそれぞれ金属製の後部ブラケット22の左右両側部が載置してあり、後部ブラケット22の左右両側部に穿設した2つの貫通孔(図示略)及び底板15の各貫通孔を貫通する4本のボルトB2を対応するナットN2にそれぞれ螺合することにより、左右一対の後部ブラケット22を底板15に固定している。
【0016】
左右のロアレール25は、前後方向に延びると共に上面が開口する金属製のチャンネル材である。左右のロアレール25は、その下面の前端部と後端部近傍を前部ブラケット21の後半部の上面と後部ブラケット22の上面にそれぞれねじ止めすることにより(図8に示すように、ロアレール25の底板部26の前端部は、ボルトB3を前部ブラケット21の後部に穿設したねじ孔に螺合することにより前部ブラケット21の後部に固定されている)、底板15に相対移動不能として固定してある。
図7から図12に示すように、ロアレール25は底板部26と、底板部26の左右両側部から上方に延びる左右一対の側壁部27と、左右の側壁部27の上端から内側に略水平に延びる上面部28と、上面部28の内縁部から垂下する抜止部29と、を備えている。底板部26の上面は扁平な底面30となっており、上面部28の下面は扁平な天井面31を構成している。左右のロアレール25の前端面には、ロアレール25の前端開口を塞ぐストッパ部材32が固着してある(図6参照)。
左右のロアレール25の車内側の側壁部27には、金属からなる3つの被ロック部材33、34、35が前後方向に並べて溶着してある。さらに、これら3つの被ロック部材33、34、35には前後一対のロック孔36が穿設してある。
【0017】
また、図6、図16等に示すように、左右のロアレール25の底板部26の下面の後端部には金属からなる後端支持部材38の上面が溶着してあり、後端支持部材38の底部に固定した平板状の当接板39が後端支持部17の左右両端部近傍に当接している。さらに図16に示すように、後端支持部材38の上部及び底板部26の後端部の互いに対向する箇所には、円形の取付孔41、42がそれぞれ穿設してある。この取付孔41と取付孔42には、取付孔41及び取付孔42より大径の頭部43を有する金属製のストッパ部材44が圧入しており、さらにストッパ部材44の下端部周面に凹設した環状溝に抜け止め用のCリング45を装着している。
さらに、左右のロアレール25の左右の側壁部27の中央部近傍(被ロック部材33と被ロック部材34の間)には、前後方向に延びる長孔(脆弱部)47が貫通孔として穿設してあり、各長孔47の下縁の中央部にはV字形状の切れ込み(脆弱部)48が形成してある。そのため、ロアレール25はロール成形により一様断面の長尺物として成形されるが、長孔47及び切れ込み48を形成した部分のみがその他の部分とは異なる断面形状になる。
【0018】
次に左右のロアレール25に対してスライド可能なスライドユニット50の構造について説明する。
図7から図12に示すように、スライドユニット50は、左右のロアレール25の内部にそれぞれ挿入する左右一対のローラ支持部材51を有している。ローラ支持部材51は互いに対称形状をなすと共に前後方向に延びる左右一対の車内側ブラケット52と車外側ブラケット53とからなるものであり、車内側ブラケット52及び車外側ブラケット53の垂直な上方突出部54を互いに接合して一体化したものである。車内側ブラケット52及び車外側ブラケット53は、上方突出部54の下端から略水平方向に延びる水平部55と、水平部55の端部から垂下する側壁部56とを具備している。車内側ブラケット52及び車外側ブラケット53の水平部55と側壁部56は、下面が開口するチャンネル状のローラ支持部57を構成している。さらにローラ支持部57の殆どの部分の断面形状(左右幅)は図7及び図9に示す通りであるが、図8に示すようにローラ支持部57の前端部近傍部分はその他の部分に比べて狭幅の断面形状となっている。
図6、図7及び図9に示すように、車内側ブラケット52及び車外側ブラケット53の側壁部56の前端部には支持孔59が穿設してあり、車内側ブラケット52及び車外側ブラケット53の側壁部56の後端部には支持孔60が穿設してある。左右の支持孔59と支持孔60には、左右両端部を除く部分が円柱形状をなす回転軸61と回転軸62がそれぞれ抜け止めされた状態で回転不能に嵌合している。さらに、ローラ支持部57内部の支持孔59と支持孔60に対応する位置には、支持孔59及び支持孔60とそれぞれ同軸をなすと共に互いに同形状をなすロアローラ63とロアローラ64がそれぞれ位置し、ロアローラ63とロアローラ64を左右方向に貫通する中心貫通孔65が回転軸61と回転軸62にそれぞれ回転可能に嵌合している。
一方、図6及び図8に示すように、ローラ支持部57の前端部近傍部分(その他の部分に比べて狭幅の部分)の車内側ブラケット52及び車外側ブラケット53には支持孔66が穿設してある。左右の支持孔66には金属製の回転軸67が抜け止めされた状態で回転不能に嵌合している。回転軸67は、支持孔66より大径の円柱形状をなすと共に車内側ブラケット52及び車外側ブラケット53の間に位置する中央軸部67aと、中央軸部67aの左右両端部から対応する支持孔66を通り抜けて左右方向に延びる、支持孔66より小径の円柱形状をなす回転支持部67bと、を有している。左右の回転支持部67bの周面には、回転支持部67bより短寸かつ回転支持部67b及び対応する支持孔66に対して相対回転不能であり、回転軸67より強度の強い金属からなるカラー68が嵌合している。さらに、左右の回転支持部67bの端部近傍には左右一対のアッパローラ69の中心孔がそれぞれ回転可能に嵌合しており、左右の回転支持部67bの端部(かしめ部67c)をかしめることにより左右のアッパローラ69の左右の回転支持部67bからの抜け落ちを防止している。
図6、図10及び図11に示すように、アッパローラ69の下端は、ロアローラ63の下端とロアローラ64の下端を結んだ直線よりも上方に位置している。そのため図6、図8及び図10に示すように、常時はロアローラ63とロアローラ64がロアレール25の底面30に接触し左右のアッパローラ69は底面30(及び天井面31)から離間する。従って、左右のローラ支持部材51はそのロアローラ63及びロアローラ64を回転させることにより、左右のロアレール25に対してそれぞれ前後方向にスライド可能である。なお、ローラ支持部材51の前方の移動端は前側のロアローラ63がストッパ部材32に当接する位置で規制され、ローラ支持部材51の後方の移動端は後側のロアローラ64が頭部43(ストッパ部材44)に当接する位置で規制される。
【0019】
図7から図12に示すように、左右のローラ支持部材51の車内側ブラケット52及び車外側ブラケット53の上方突出部54には、前後方向に並ぶ4つのリベットR1によって、共に断面L字形をなす車内側支承部材70と車外側支承部材71が一体化されている。車内側支承部材70と車外側支承部材71は共に、水平かつ互いに同じ高さに位置する支承片72と支承片73を具備している。
図12に示すように、左右の車内側支承部材70の支承片72の下面にはロック支持部材74が固定してある。ロック支持部材74は、ロアレール25の車内側の側壁部27と対向する垂下片75と、垂下片75と反対側の端部をなす傾斜片76とを具備している。垂下片75には被ロック部材33、34、35のロック孔36と同じ高さに位置する前後一対の貫通孔77が穿設してある(対をなす貫通孔77の前後間隔は対をなすロック孔36の前後間隔と同じである)。さらに、垂下片75には前後方向に延びる回転軸78の前後両端部が支持してあり、回転軸78にはロック部材79の上端部が回転可能に支持してある。ロック部材79の車内側端部はロック支持部材74の車内側の上端角部に穿設した窓孔80を通って垂下片75の車内側に突出している。さらに、ロック部材79の中間部には車外側に向かって突出する前後一対のロック爪81が設けてある。ロック部材79は、貫通孔77が被ロック部材33、34、35のいずれかのロック孔36と対向したときに、前後のロック爪81が前後の貫通孔77及びロック孔36にそれぞれ嵌合するロック位置(図12の実線の位置)と、前後のロック爪81が前後の貫通孔77及びロック孔36から車内側に脱出するアンロック位置(図12の仮想線Aで示す位置)との間を回転可能であり、回転軸78の周囲に巻いた捻りコイルばねS(図3参照)の回転付勢力により常にロック位置に向けて回転付勢されている。
さらに、ロック部材79の先端部(下端部)は車外側に向かって湾曲しており、その車外側面側に係合凹部83を形成している。この係合凹部83には係合球84が係合しており、係合球84に一端が接続する操作ワイヤW1がロック部材79に穿設した貫通孔(図示略)を通ってロック部材79の車内側に延びている。操作ワイヤW1は、傾斜片76に支持された支持筒85と、一端が支持筒85に固定された可撓性を有するアウターチューブ86の内部を挿通しており、操作ワイヤW1の他端は後述する操作ハンドル100に接続している。
【0020】
左右の車内側支承部材70の支承片72及び車外側支承部材71の支承片73の上面には前後方向に延びる金属製の側部支持部材87が載置してあり、側部支持部材87の前端部近傍と支承片72及び支承片73は4本のボルトB4によって互いに固定してある。左右の側部支持部材87の前後寸法はロアレール25と略同一であり、図5に示すようにその断面形状は略W字形状である。図17に示すように、側部支持部材87には前後方向に並べて3つの取付孔88が穿設してある。各取付孔88には断面略U字形状をなす固定金具89が下方から嵌合しており、固定金具89の前後両端部を側部支持部材87の下面にスポット溶接することにより固定している。固定金具89の上部には貫通孔90が穿設してあり、固定金具89の上部の下面には貫通孔90と同心をなすナットN3が固着されている。
左右の側部支持部材87の下面の後端部近傍には、左右方向に延びると共に上面が開口するチャンネル形状をなす金属製の後側梁部材91の左右一対の上部フランジ92が溶着してあり、左右の側部支持部材87の下面の前端部近傍には、左右方向に延びる金属製の前側梁部材93の両端部が溶着してある。さらに、後側梁部材91の下面の中央部近傍2箇所と前側梁部材93の下面の中央部近傍2箇所には、前後方向に延びる左右一対の金属製連結部材94の両端部が溶着してある。左右のアウターチューブ86の中央部近傍は、図示を省略した固定手段により左右の金属製連結部材94の中間部にそれぞれ固定されている。
図2、図4及び図13に示すように、後側梁部材91の中央部の下面には、後側梁部材91より短寸かつ断面形状がL字形をなすチューブ用ブラケット96が固定してある。チューブ用ブラケット96の垂下片97に形成した取付用凹部95(図5参照)には金属製の支持筒98が左右一対として固定してあり、左右の支持筒98にはアウターチューブ86の他端(後端)が接続している。図2及び図4に示すように、後側梁部材91の後面の中央部近傍からは2本のハンドル用ブラケット99が後方に向かって突出しており、左右のハンドル用ブラケット99に穿設した貫通孔(図示略)に操作ハンドル100の左右両端から突出する回転軸101がそれぞれ回転可能に嵌合している。
操作ハンドル100はロック位置とアンロック位置の間を回転可能であり、さらに操作ハンドル100の下面には左右の支持筒98から後方に突出する操作ワイヤW1の後端部がそれぞれ固着している。操作ワイヤW1にはロック部材79を回転付勢する捻りコイルばねSの付勢力が及ぶので、操作ハンドル100は常時はロック位置に位置する。一方、操作者が手で操作ハンドル100をアンロック位置に向けて回転操作すると操作ワイヤW1が後方に引かれるので、操作ワイヤW1の前端に接続する係合球84がロック部材79をアンロック位置側に回転させ、ロック爪81(ロック部材79)と支持孔66によるロックを解除する。
以上説明した左右のロアレール25に対して前後方向にスライド可能な部材、即ち、符号51〜101によって構成された各部材がスライドユニット50の構成要素である。また、車内側ブラケット52、車外側ブラケット53、車内側支承部材70、車外側支承部材71及び側部支持部材87がアッパレールの構成要素である。
【0021】
図2及び図14に示すように、底板15の左右方向の中央部かつ前後方向の後端部近傍には左右一対のねじ孔106が穿設してある。底板15の上面には断面略L字形をなす左右一対の支持板107が載置してあり、左右の支持板107を貫通するボルトB5を左右のねじ孔106に螺合することにより、左右の支持板107を底板15の上面に固定している。左右の支持板107の上端部には互いに同軸をなす支持孔108が穿設してあり、左右の支持孔108に回転軸109が抜け止めされた状態で回転不能に嵌合している。回転軸109の左右両端部を除く部分は円柱形状であり、この円柱形状部分に円筒形状をなす支持ローラ110の中心貫通孔111が回転可能に嵌合している。
さらに、左右の側部支持部材87の3つの固定金具89の上面にはスライドユニット50の上面全体を覆う平面視横長長方形の荷物載置板115が載置してある。図17に示すように、荷物載置板115の各固定金具89と対応する位置には平面視矩形の嵌合孔116が貫通孔として穿設してある。各嵌合孔116の下部には対応する固定金具89が下方から嵌合しており、左右の側部支持部材87の上面が荷物載置板115の下面の左右両側部をそれぞれ支持している。各嵌合孔116の上部にはゴム製のキャップ部材118の下部が嵌合しており、キャップ部材118の周縁部の下面は荷物載置板115の上面に当接している。キャップ部材118の上面に形成した凹部119の底面には貫通孔120が形成してあり、この貫通孔120と固定金具89の貫通孔90に挿入したボルトB6を固定金具89の下面に固着したナットN3に螺合することにより、荷物載置板115を左右の側部支持部材87に固定している。
さらに、図6に示すように、荷物載置板115の前面には正面視で横長の長方形をなすアルミニウム製の前面板117が固定してある。
このように各固定金具89の上面に荷物載置板115を固定すると、図14に示すように荷物載置板115の下面の左右方向の中央部が支持ローラ110によって支持される。
【0022】
次に以上構成のスライドデッキ装置20の動作について説明する。
車両10のバックドア12が背面開口部11を閉じているとき、スライドデッキ装置20の荷物載置板115及びスライドユニット50は、前面板117が前部ブラケット21と略同じ前後方向位置に位置する(2列目シート13の直後に位置する)収納位置(図2の位置)に位置し、左右のロック部材79のロック爪81が左右の被ロック部材33のロック孔36に嵌合する(ロックする)。
バックドア12を開放した状態で操作ハンドル100をアンロック位置まで回転させると、操作ワイヤW1が引かれることにより左右のロック部材79がアンロック位置まで回転するので、ロック部材79(ロック爪81)と被ロック部材33のロック孔36によるロック状態が解除される。そのため、操作ハンドル100を握ったまま荷物載置板115を後方に引き出すと、荷物載置板115及びスライドユニット50がロアローラ63、ロアローラ64及び支持ローラ110を回転させながら後方にスライドするので、荷物載置板115の後部が車両10(背面開口部11)の後方に突出する。左右のロアレール25の前後3箇所には被ロック部材33、34及び35を固着してあるので、左右のロック部材79が被ロック部材34と同じ前後方向位置に達したときに操作ハンドル100から手を離し左右のロック部材79(ロック爪81)を被ロック部材34のロック孔36に係合すれば、荷物載置板115及びスライドユニット50をその位置に保持できる。さらに図6の仮想線で示すように、荷物載置板115をその後部が車両10の背面開口部11から後方に大きく突出し、かつ左右のロアローラ64が左右の頭部43(ストッパ部材44)の直前に位置する最大引き出し位置までスライドさせたときに操作ハンドル100から手を離せば、左右のロック部材79(ロック爪81)が被ロック部材35のロック孔36に係合するので、荷物載置板115及びスライドユニット50を最大引き出し位置に保持できる。
また、例えば荷物載置板115の後端部に重量の大きい荷物を載せた状態で荷物載置板115の後部を背面開口部11の後方に大きく突出させると、荷物載置板115の後端部が下方に撓むと共に、後側のロアローラ64とロアレール25の底面30の接触部を支点として前側のロアローラ63及び荷物載置板115の前部が上方に浮き上がる。しかし、このように前側のロアローラ63及び荷物載置板115の前部が上方に浮き上がると、図11に示すように後部のロアローラ64より前方に位置するアッパローラ69がロアレール25の天井面31に接触するので、後部のロアローラ64と左右のアッパローラ69を利用することにより荷物載置板115及びスライドユニット50を前方または後方に円滑にスライドさせることができる。
【0023】
このような動作を行う本実施形態のスライドデッキ装置20は、別の車両が車両10の後部に衝突してきた場合のように大きな外力を受けた場合に大きな効果を発揮する。
即ち、例えば別の車両が車両10のバンパーBPに衝突すると、この衝突荷重がバンパーBPから車両ボディを介して底板15に伝わり、さらに前部ブラケット21及び後部ブラケット22から左右のロアレール25に伝わる。ロアレール25は金属製であり大きな剛性を有しており、特に被ロック部材33、34、35を固着した部分の剛性は大きい。しかし、長孔47を形成した部分はその他の部分に比べて座屈に対する剛性が低下しており、特に切れ込み48を形成した部分は長孔47を形成したその他の部分よりもさらに剛性が低下しているので、ロアレール25に掛かった荷重が所定値(座屈荷重)を超えると、ロアレール25は切れ込み48を形成した部分あるいはその近傍(長孔47を形成した部分の範囲内)から座屈を開始する。
このように衝突荷重のエネルギーをロアレール25が座屈することにより吸収すると、底板15に変形や亀裂が生じるのを効果的に防止できる。
【0024】
さらに、底板部26に長孔47や切れ込み48を形成した場合は、長孔47や切れ込み48がロアローラ63及びロアローラ64の転動の妨げとなってしまう。また、底板部26にはロアローラ63及びロアローラ64から大きな荷重が掛かるので、長孔47や切れ込み48を形成することにより底板部26の剛性が低下すると、ロアローラ63及びロアローラ64から掛かる荷重により底板部26が変形したり破損するおそれがある。また、上面部28や抜止部29に長孔47や切れ込み48を形成すると、底板部26や側壁部27に長孔47や切れ込み48を形成する場合に比べてロアレール25全体の剛性が低下してしまう。
しかし、本実施形態のように側壁部27に長孔47及び切れ込み48を形成すれば、このような問題が生じることはない。
【0025】
また、本実施形態では長孔47(切れ込み48)を形成した部分の剛性を低下させるだけでなく、被ロック部材33、34、35を固着した部分の剛性を高めることによりロアレール25が被ロック部材33、34、35を固着した部分から座屈し難くしているので、ロアレール25の座屈開始ポイントを精度よくコントロールできる。
【0026】
以上説明した本実施形態では、ロアレール25の特定箇所の剛性を低下させるための脆弱部を長孔47及び切れ込み48を形成することにより構成しているが、脆弱部を長孔47や切れ込み48とは形状の異なる貫通孔や切欠(前部ブラケット21と後部ブラケット22の間の前後方向位置に形成する)により構成してもよい。また、図18に示すように、貫通孔及び切欠の代わりとして、ロアレール25の左右両側部(一方のみでもよい)にプレス加工により凹部125を形成し(この場合も凹部125は前部ブラケット21と後部ブラケット22の間の前後方向位置に形成する)、この凹部125によって脆弱部を構成してもよい。
さらに、貫通孔や切欠や凹部等の脆弱部は前部ブラケット21と後部ブラケット22の中央部(あるいは中央部近傍)に設けるのが好ましいが、前部ブラケット21と後部ブラケット22の間であれば中央部(あるいは中央部近傍)とは異なる位置に設けてもよい。
また、上述のような不都合が生じるおそれはあるが、底板部26、上面部28、抜止部29に貫通孔や切欠や凹部等の脆弱部を形成して実施することは勿論可能である。
さらに、前後方向に並ぶ3つ以上のブラケットを底板15とロアレール25に固定して実施することも勿論可能である(この場合も、脆弱部は隣り合う2つのブラケットの間の前後方向位置に形成する)。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を適用した自動車の後部の斜視図である。
【図2】スライドデッキ装置の荷物載置板を仮想線で示す平面図である。
【図3】スライドデッキ装置の荷物載置板及び側部支持部材を省略して示す平面図である。
【図4】スライドユニットの平面図である。
【図5】スライドユニットの背面図である。
【図6】右側のロアレールとその周辺部材の側面図である。
【図7】図6のVII−VII矢線に沿う断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII矢線に沿う断面図である。
【図9】図6のIX−IX矢線に沿う断面図である。
【図10】図6のX矢線に見た正面図である。
【図11】荷物載置板の前端部が浮き上がったときの図10と同様の断面図である。
【図12】図6のXII−XII矢線に沿う断面図である。
【図13】図4のXIII−XIII矢線に沿う断面図である。
【図14】図2のXIV−XIV矢線に沿う断面図である。
【図15】長孔及び切れ込みの拡大図である。
【図16】図6のXVI−XVI矢線に沿う断面図である。
【図17】図2のXVII−XVII矢線に沿う断面図である。
【図18】変形例におけるロアレールの中央部分を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
10 車両(自動車)
11 背面開口部
12 バックドア
13 2列目シート
14 ラゲージルーム
15 底板
16 前端支持部
17 後端支持部
18 傾斜取付部
19 補強部材
20 スライドデッキ装置
21 前部ブラケット(ブラケット)
22 後部ブラケット(ブラケット)
25 ロアレール
26 底板部
27 側壁部
28 上面部
29 抜止部
30 底面
31 天井面
32 ストッパ部材
33 34 35 被ロック部材
36 ロック孔
38 後端支持部材
39 当接板
41 42 取付孔
43 頭部
44 ストッパ部材
45 Cリング
47 長孔(脆弱部)(貫通孔)
48 切れ込み(脆弱部)
50 スライドユニット
51 ローラ支持部材
52 車内側ブラケット(アッパレール)
53 車外側ブラケット(アッパレール)
54 上方突出部
55 水平部
56 側壁部
57 チャンネル部
59 60 支持孔
61 62 回転軸
63 64 ロアローラ
65 中心貫通孔
66 支持孔
67 回転軸
67a 中央軸部
67b 回転支持部
67c かしめ部
68 カラー
69 アッパローラ
70 車内側支承部材(アッパレール)
71 車外側支承部材(アッパレール)
72 73 支承片
74 ロック支持部材
75 垂下片
76 傾斜片
77 貫通孔
78 回転軸
79 ロック部材
80 窓孔
81 ロック爪
83 係合凹部
84 係合球
85 支持筒
86 アウターチューブ
87 側部支持部材(アッパレール)
88 取付孔
89 固定金具
90 貫通孔
91 後側梁部材
92 上部フランジ
93 前側梁部材
94 金属製連結部材
96 チューブ用ブラケット
97 垂下片
98 支持筒
99 ハンドル用ブラケット
100 操作ハンドル
101 回転軸
106 ねじ孔
107 支持板
108 支持孔
109 回転軸
110 支持ローラ
111 中心貫通孔
115 荷物載置板
116 嵌合孔
117 前面板
118 キャップ部材
119 凹部
120 貫通孔
125 凹部(脆弱部)
B1 B2 B3 B4 B5 B6 ボルト
BP バンパー
R1 リベット
C カバー部材
N1 N2 N3 ナット
S 捻りコイルばね
W1 操作ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックドアを備える車両のラゲージルームの底板上に、前後方向に並ぶ複数のブラケットを介して固定した、前後方向に延びるチャンネル形状である左右一対のロアレールと、
左右のロアレールに対してスライド可能な荷物載置板と、を備え、
上記ロアレールに、その前後方向位置が隣り合う2つの上記ブラケットの間に位置し、かつ座屈に対する剛性が他の部分に比べて低い脆弱部を形成したことを特徴とする車両用スライドデッキ装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用スライドデッキ装置において、
上記ロアレールが、底板部と、該底板部の左右両端部から上方に延びる左右一対の側壁部と、左右の側壁部の上端から内側に略水平に延びる左右一対の上面部と、を備え、さらに、
上記荷物載置板の下面を支持し、かつ左右のロアレールに対してスライド自在に嵌合する左右一対のアッパレールと、
該アッパレールに設けた、上記ロアレール内において上記アッパレール及び荷物載置板を支持しながら上記底板部上を転動する前後方向に並ぶ複数のローラと、を備え、
上記脆弱部を、ロアレールの上記側壁部に形成した貫通孔とした車両用スライドデッキ装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用スライドデッキ装置において、
上記貫通孔の下縁部に、上記脆弱部の構成要素である切れ込みを形成した車両用スライドデッキ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の車両用スライドデッキ装置において、
上記荷物載置板と一緒にスライドし、かつロック位置とアンロック位置の間を移動可能なロック部材を備え、
上記ロアレールの側面に、上記脆弱部と前後方向位置をずらして、上記ロック位置に位置するロック部材と係合可能でアンロック位置に位置するロック部材とは係合不能なロック孔を備える被ロック部材を固着した車両用スライドデッキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−307952(P2008−307952A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155642(P2007−155642)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】