説明

車両用ディスクブレーキのキャリパボディ

【課題】簡単な構造でキャリパボディの小型化とエア抜き性の向上とを図ることのできる2系統式の車両用ディスクブレーキのキャリパボディを提供する。
【解決手段】2系統式の車両用ディスクブレーキ1のキャリパボディ6において、第1ブレーキ系統用シリンダ孔11,13を連通する連通路23aと第1ブリーダ孔6oとを、第1ブレーキ系統用シリンダ孔11,13のディスク半径方向内端を直線状に繋ぐ仮想線IL1よりもディスク半径方向外側に一直線状に形成し、第2ブレーキ系統用シリンダ孔10を、連通路23aよりもディスク半径方向外側に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四輪自動車や自動二輪車等の車両に搭載される車両用ディスクブレーキのキャリパボディに係り、詳しくは、作用部に設けられた複数のシリンダ孔を、2つの液圧系統に分けた2系統式ピンスライド型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のシリンダ孔を2つの液圧系統に分けた2系統式のキャリパボディでは、複数のシリンダ孔をディスク周方向に並設し、少なくとも何れか2個のシリンダ孔を第1ブレーキ系統用シリンダ孔とし、その他のシリンダ孔を第2ブレーキ系統用シリンダ孔とし、少なくとも1個の第2ブレーキ系統用シリンダ孔を2個の第1ブレーキ系統用シリンダ孔の間に配置すると共に、該2個の第1ブレーキ系統用シリンダ孔を深底に、中央の第2ブレーキ系統用シリンダ孔を浅底にそれぞれ形成し、2個の第1ブレーキ系統用シリンダ孔を連通させる連通路を浅底シリンダ孔の底壁に形成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、第1ブレーキ系統用シリンダ孔に挿入されたピストンに作動液を供給する第1液通路と、第2ブレーキ系統用シリンダ孔に挿入されたピストンに作動液を供給する第2液通路とを直線状に穿設して形成したものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−79071号公報
【特許文献2】特開2006−153264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1に示されたキャリパボディでは、2個の第1ブレーキ系統用シリンダ孔を深底に形成して、キャリパボディのシリンダ孔底部側に連通路を設けるスペースを確保することから、キャリパボディが大型化していた。また、特許文献2の、中央のシリンダ孔を除けて、両側のシリンダ孔を通過する直線状の2本の液通路を連結させて第1液通路を形成するものでは、加工工数が増すと共にキャリパボディがディスク半径方向に大きくなっていた。また、液通路を両側のシリンダ孔のディスク半径方向内端を直線状に通過させて、キャリパボディの外面に開口する一端部にブリーダ孔を設けたものでは、ブリーダ孔を上方に向けた車体取付状態でエア抜きをする際に、シリンダ孔内のエア抜き性が良好ではなかった。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構造でキャリパボディの小型化とエア抜き性の向上とを図ることのできる2系統式の車両用ディスクブレーキのキャリパボディを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディは、ディスクロータの側部に配置する作用部に、3個以上のシリンダ孔をディスク周方向に並設し、少なくとも何れか2個のシリンダ孔を第1ブレーキ系統用シリンダ孔とし、その他のシリンダ孔を第2ブレーキ系統用シリンダ孔とし、少なくとも1個の第2ブレーキ系統用シリンダ孔を2個の第1ブレーキ系統用シリンダ孔の間に配置し、複数の第1ブレーキ系統用シリンダ孔を連通路によって連通し、前記第1ブレーキ系統用シリンダ孔に挿入されたピストンを、第1液通路を介して供給される作動液によって作動させ、前記第2ブレーキ系統用シリンダ孔に挿入されたピストンを、第2液通路を介して供給される作動液にて作動させると共に、前記第1液通路に第1ユニオン孔と第1ブリーダ孔とを開口し、前記第2液通路に第2ユニオン孔と第2ブリーダ孔とを開口した2系統式の車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、前記連通路と前記第1ブリーダ孔とは、前記複数の第1ブレーキ系統用シリンダ孔のディスク半径方向内端を直線状に繋ぐ仮想線よりもディスク半径方向外側に一直線状に形成され、前記第2ブレーキ系統用シリンダ孔は、前記連通路よりもディスク半径方向外側に設けられることを特徴としている。
【0007】
また、前記キャリパボディは、車体に取り付けたキャリパブラケットに、車両前進時におけるディスク回出側とディスク内周側とに設けられた一対の摺動ピンを介してディスク軸方向へ移動可能に支持され、ディスク内周側の摺動ピンは、該摺動ピンの断面内を、内部に前記複数の第1ブレーキ系統用シリンダ孔を備えたシリンダ部のディスク半径方向内端を直線状に繋ぐ仮想線が通る位置もしくは該仮想線よりもディスク半径方向外側に配置されると好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディによれば、連通路と第1ブリーダ孔とを一直線上に形成することから、加工工数を減らすことができ、コストの低減化を図ることができる。また、連通路は第1ブレーキ系統用シリンダ孔のディスク半径方向内端を直線状に繋ぐ仮想線よりもディスク半径方向外側に配置され、第2ブレーキ系統用シリンダ孔を連通路よりもディスクロータ半径方向外側に設けることにより、シリンダ孔内のエア抜き性を損なうことなくキャリパボディの小型化を図ることができる。
【0009】
さらに、キャリパボディをキャリパブラケットに取り付けるディスク周方向内側に設けた摺動ピンは、該摺動ピンの断面内を、内部に前記複数の第1ブレーキ系統用シリンダ孔を備えたシリンダ部のディスク半径方向内端を直線状に繋ぐ仮想線が通る位置もしくはこれよりもディスク半径方向外側に配置されることにより、キャリパボディを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図4のI-I断面図である。
【図2】図3のII-II断面図である。
【図3】本発明の一形態例を示す車両用ディスクブレーキの正面図である。
【図4】同じく車両用ディスクブレーキの平面図である。
【図5】図3のV-V断面図である。
【図6】図4のVI−VI断面図である。
【図7】同じくブレーキ装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本形態例のディスクブレーキ1は、自動二輪車のフロントブレーキ用で、ディスクロータ2の一側部で車体に固設されるキャリパブラケット3と、該キャリパブラケット3に一対の摺動ピン4,5を介して支持されるキャリパボディ6と、ディスクロータ2の両側部に対向配置される一対の摩擦パッド7,8とを備えている。また、矢印Aは車両前進時に前輪と一体に回転するディスクロータ2の回転方向であり、以下で述べるディスク回出側及びディスク回入側とは車両前進時におけるものとする。
【0012】
キャリパボディ6は、ディスクロータ2の両側部に配設される作用部6a及び反作用部6bと、これら作用部6aと反作用部6bとをディスクロータ2の外周を跨いで連結するブリッジ部6cとから構成され、作用部6aに形成する3つのシリンダ孔9,10,11を2つの液圧系統に分けた3ポット2系統式となっている。作用部6aには前記シリンダ孔9,10,11がディスクロータ側を開口して並設され、反作用部6bには4つの反力爪6dが形成されている。作用部6aと反作用部6bのディスクロータ回入側には摩擦パッド7,8を吊持するハンガーピン12のガイド腕6e,6eが突設され、作用部6aのディスク回出側とディスク内周側には、摺動ピン4,5の取付腕6f,6gがそれぞれ延設されている。
【0013】
前記シリンダ孔9,10,11は、ディスク回出側のシリンダ孔9とディスク回入側のシリンダ孔11とがディスク半径方向内側に、中央のシリンダ孔10がディスク半径方向外側に形成される。すなわち、ディスクロータ2の中心P1からシリンダ孔9の中心軸C1までの長さ寸法L1及び前記中心P1からシリンダ孔11の中心軸C2までの長さ寸法L2よりも、前記中心P1からシリンダ孔10の中心軸C3までの長さ寸法L3が長くなっている。さらに、中央のシリンダ孔10とディスク回入側のシリンダ孔11が小径に、ディスク回出側のシリンダ孔9が大径に形成されると共に、ディスク回出側のシリンダ孔9とディスク回入側のシリンダ孔11とは同一の深さに、中央のシリンダ孔10が、ディスク回出側のシリンダ孔9及びディスク回入側のシリンダ孔11よりも深く形成されている。そして、ディスク回出側でディスク半径方向内側に形成される大径のシリンダ孔9と、ディスク回入側でディスク半径方向内側に形成される小径のシリンダ孔11とを第1ブレーキ系統用のシリンダ孔とし、これらの第1ブレーキ系統用のシリンダ孔9,11間のディスク周方向中央でディスク半径方向外側に形成される小径で、且つ、他の2つのシリンダ孔9,11よりも深く形成されるシリンダ孔10を第2ブレーキ系統用のシリンダ孔としている。また、キャリパボディ6のシリンダ孔底部側は、中央のシリンダ孔10を他のシリンダ孔9,11よりもディスク半径方向外側に形成すると共に他のシリンダ孔9,11よりも深く形成されていることから、中央部のディスク半径方向外側に突出部6hを有する段付き形状となっている。
【0014】
ディスク回出側のシリンダ孔9には、大径のピストン13がピストンシール14とダストシール15とを介して内挿され、ディスク回入側のシリンダ孔11には、小径で前記ピストン13と同一長さのピストン16がピストンシール17とダストシール18とを介して内挿される。また、中央のシリンダ孔10には、小径で前記ピストン13,16よりも長いピストン19がピストンシール20とダストシール21とを介して内挿される。各ピストンシール14,17,20とダストシール15,18,21とは、シリンダ孔9,10,11に形成されたピストンシール溝9a,10a,11aとダストシール溝9b,10b,11bとにそれぞれ装着され、中央のシリンダ孔10のピストンシール溝10aは、他の2つのシリンダ孔9,11のピストンシール溝9a,11aよりも反ディスクロータ側に形成され、ディスク周方向に隣り合うピストンシール溝9a,10a及びピストンシール溝10a,11aがディスク軸方向に位置をずらして形成されると共に、ディスク周方向にオーバーラップして形成されている。また、ダストシール溝9b,10b,11bは、ピストンシール溝9a,10a,11aよりも浅く形成され、シリンダ孔9,10,11の開口側にそれぞれ形成されている。
【0015】
各ピストン13,19,16と各シリンダ孔9,10,11との間には、液圧室22a,22b,22cがそれぞれ画成され、第1ブレーキ系統用のシリンダ孔となるディスク回出側と回入側のシリンダ孔9,11とピストン13,16との間にそれぞれ画成された液圧室22a,22cは、第1液通路23の連通路23aによって連通している。
【0016】
作用部6aのディスク半径方向外側で、且つ ディスク回出側には第1ユニオンボス部6iが、ディスク半径方向内側で、且つ、ディスク回出側端部には第1ブリーダボス部6jがそれぞれ突設され、ディスク半径方向外側で、且つ、ディスク周方向中央部には第2ユニオンボス部6kと第2ブリーダボス部6mとがそれぞれ突設されている。
【0017】
第1液通路23は、第1ユニオンボス部6iに形成されてディスク回出側のシリンダ孔9に連通する第1ユニオン孔6nと、第1ブリーダボス部6jに形成されてディスク回出側のシリンダ孔9に連通する第1ブリーダ孔6oと、該第1ブリーダ孔6oから直線状に穿設され、中央のシリンダ孔10のディスク半径方向内側を通過してディスク回出側のシリンダ孔9とディスク回入側のシリンダ孔11とを直線状に繋ぐ前記連通路23aとを有している。第2液通路24は、第2ユニオンボス部6kに形成されて中央のシリンダ孔10に連通する第2ユニオン孔6pと、第2ブリーダボス部6mに形成されて前記中央のシリンダ孔10に連通する第2ブリーダ孔6qとを有している。また、第1ブリーダ孔6o及び第2ブリーダ孔6qには、ブリーダスクリュ25,26がそれぞれ螺着されている。
【0018】
第1液通路23の連通路23aは、ディスク回出側のシリンダ孔9とディスク回入側のシリンダ孔11のディスク半径方向内端を直線状に繋ぐ仮想線IL1よりも、ディスク半径方向外側に直線状に形成され、連通路23aと前記第1ブリーダ孔6oとは一直線上に形成される。この連通路23aと第1ブリーダ孔6oの加工は、第1ブリーダ孔6oの開口部からシリンダ孔13を通過してシリンダ孔11のディスク回出側面まで穿孔加工することにより、連通路23aと第1ブリーダ孔6oとが一度に穿孔加工され、さらに、第1部ブリーダ孔6oの開口部にブリーダスクリュ25を螺着する雌ねじ部がねじ加工される。また、中央のシリンダ孔10は第1液通路23よりもディスク半径方向外側に配置される。
【0019】
キャリパブラケット3は、ボトムケースに取り付けられる板状部材で、キャリパボディ6のディスク回出側で、且つ、ディスク外周側に突出する第1取付部3aと、キャリパボディ6のディスク内周側に配設される第2取付部3bとを備え、これら第1取付部3aと第2取付部3bの作用部側に、前記摺動ピン4,5がディスク軸と平行に突設されている。ディスク回出側の摺動ピン4は、前記ディスク回出側の取付腕6fに形成された挿通孔に、またディスク内周側の摺動ピン4は、前記ディスク内周側の取付腕6gに形成された挿通孔にそれぞれ挿通され、キャリパボディ6はこれら摺動ピン4によってディスク軸方向へ移動可能に支持されている。
【0020】
ディスク回出側の摺動ピン4は、雄ねじ部をキャリパブラケット3の作用部側からキャリパブラケットの通孔に挿通して、フランジ部4aをキャリパブラケット3の作用部側面に当接させ、通孔から反作用部側へ突出する雄ねじ部にスリーブナット4bを螺着し、スリーブナット4bと摺動ピン4のフランジ部4aとでキャリパブラケット3を挟持することにより、摺動ピン4がキャリパブラケット3の作用部側にディスク軸と平行に突設される。
【0021】
ディスク内周側の摺動ピン5は、取付腕6gの挿通孔に差し込まれる軸部5aと、キャリパブラケット3への取り付けに用いる雄ねじ5bと、該雄ねじ5bと軸部5aとの間に形成される六角形のナット5cとからなっている。キャリパブラケット3には、雄ねじ5bをキャリパブラケット3の雌ねじ孔に作用部側からねじ込んで、ナット5cをキャリパブラケット3の作用部側面に当接させることにより、摺動ピン5がキャリパブラケット3の作用部側にディスク軸と平行に突設される。また、このように取り付けられた摺動ピン5は、該摺動ピン5の断面内を、ディスク回出側のシリンダ孔9とディスク回入側のシリンダ孔11を内部に備えたキャリパボディ6のシリンダ部6r,6sのディスク半径方向内端を直線状に繋ぐ仮想線IL2が通る位置に配置される。
【0022】
ガイド腕6e,6eには、ハンガーピン12がディスクロータ2の外側を跨いでディスク軸と平行に架設され、このハンガーピン12に摩擦パッド7,8のディスク回入側が吊持されるとともに、摩擦パッド7,8のディスク回出側は、キャリパブラケット3とスリーブナット4bにてそれぞれ支持されている。
【0023】
摩擦パッド7,8は、ディスクロータ2の側面と摺接するライニング7a,8aを、裏板7b,8bの一側面に固着して構成され、裏板7b,8bのディスク回入側には、ハンガーピン挿通孔を穿設した腕部7c,8cが突設されている。裏板7b,8bのディスク回出側には、トルク伝達腕7d,8dが設けられ、反作用部側のトルク伝達腕8dの先端には半円弧状の二股片8eが設けられている。作用部側の摩擦パッド7は、ディスク回入側のハンガーピン挿通孔にハンガーピン12を挿通して吊持され、ディスク回出側のトルク伝達腕7dをキャリパブラケット3で支持して、ピストン13,16,19とディスクロータ2の一側面との間に、ディスク軸方向へ移動可能に配設される。また、反作用部側の摩擦パッド8は、ディスク回入側のハンガーピン挿通孔に同じくハンガーピン12を挿通して吊持され、ディスク回出側のトルク伝達腕8d先端の二股片8eでスリーブナット4bの略半周を包持して、反力爪6dとディスクロータ2の他側面との間に、ディスク軸方向へ移動可能に配設される。
【0024】
前記2つの液通路23,24は、各ユニオン孔6n,6pに接続されるブレーキホース(図示せず)を介して公知の液圧マスタシリンダに連通し、例えば、図7に示されるように、第1液通路23は前輪用ブレーキのブレーキレバー31の操作によって液圧を発生させる第1液圧マスタシリンダ32に接続され、第2液通路24は、後輪用ブレーキのブレーキレバー33の操作によって液圧を発生させる第2液圧マスタシリンダ34に接続される。
【0025】
前輪用のブレーキレバー31を操作すると、第1液圧マスタシリンダ32で発生した液圧が、第1液通路23によって液圧室22a,22cへ導入され、ピストン13,16がシリンダ孔9,11をディスクロータ方向へ前進して前輪が制動される。また、後輪用のブレーキレバー33を操作すると、第2液圧マスタシリンダ34で発生した液圧が、第2液通路24によって液圧室22bに導入され、ピストン19がシリンダ孔10をディスクロータ方向へ前進して前輪が制動されると共に、後輪用のディスクブレーキ35が作動して後輪が制動される。
【0026】
本形態例は上述のように、連通路23aと第1ブリーダ孔6oの加工は、第1ブリーダ孔6oの開口部からシリンダ孔13を通過してシリンダ孔11のディスク回出側面まで穿孔加工することにより、連通路23aと第1ブリーダ孔6oとが一度に穿孔加工され、次いで、第1部ブリーダ孔6oの開口部に雌ねじ部を加工すればよいので加工工数を減らすことができ、コストの低減化を図ることができる。また、連通路23aは、ディスク回出側のシリンダ孔9とディスク回入側のシリンダ孔11のディスク半径方向内端を直線状に繋ぐ仮想線IL1よりも、ディスク半径方向外側に直線状に形成され、さらに、中央の第2ブレーキ系統用のシリンダ孔10を連通路23aよりもディスクロータ半径方向外側に設けることにより、第1ブリーダ孔6oを上方に向けた車体取付状態でのシリンダ孔11,13内のエア抜き性を損なうことなくキャリパボディ6の小型化を図ることができる。また、ディスク内周側の摺動ピン5は、該摺動ピン5の断面内を、ディスク回出側のシリンダ孔9とディスク回入側のシリンダ孔11を内部に備えたキャリパボディ6のシリンダ部6r,6sのディスク半径方向内端を直線状に繋ぐ仮想線IL2が通る位置に配置されることから、従来のように、摺動ピン5の取付腕がディスク半径方向内側に大きく突出することがなく、キャリパボディ6を更に小型化することができる。
【0027】
なお、本発明は上述の形態例に限らず、ディスク内周側の摺動ピンは、ディスク回出側のシリンダ孔とディスク回入側のシリンダ孔を内部に備えたキャリパボディのシリンダ部のディスク半径方向内端を直線状に繋ぐ仮想線よりもディスク半径方向外側に配置されていても良い。さらに、作用部に3個のシリンダ孔を備えたものに限らず、4個以上のシリンダ孔を備えたものにも適用できる。また、シリンダ孔の径や深さも任意であり、各ユニオン孔や第2ブリーダ孔も、シリンダ孔やキャリパボディの形状に応じて適宜形成すれば良い。さらに、液圧マスタシリンダは、ブレーキペダルの操作によって液圧を発生させるものでも良く、また、ブレーキ操作子の操作でワイヤ等の連繋手段を牽引して、液圧マスタシリンダに液圧を発生させるものでも良い。
【符号の説明】
【0028】
1…ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパブラケット、4,5…摺動ピン、6…キャリパボディ、6a…作用部、6b…反作用部、6c…ブリッジ部、6d…反力爪、6e…ガイド腕、6f,6g…取付腕、6h…突出部、6i…第1ユニオンボス部、6j…第1ブリーダボス部、6k…第2ユニオンボス部、6m…第2ブリーダボス部、6n…第1ユニオン孔、6o…第1ブリーダ孔、6p…第2ユニオン孔、6q…第2ブリーダ孔、6r…シリンダ部、6s…シリンダ部、7,8…摩擦パッド、7a,8a…ライニング、7b,8b…裏板、7c,8c…腕部、7d,8d…トルク伝達腕、8e…二股片、9,10,11…シリンダ孔、9a,10a,11a…ピストンシール溝、9b,10b,11b…ダストシール溝、12…ハンガーピン、13,16,19…ピストン、14,17,20…ピストンシール、15,18,21…ダストシール、22a,22b,22c…液圧室、23…第1液通路、23a…連通路、24…第2液通路、31,33…ブレーキレバー、32…第1液圧マスタシリンダ、34…第2液圧マスタシリンダ、35…ディスクブレーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータの側部に配置する作用部に、3個以上のシリンダ孔をディスク周方向に並設し、少なくとも何れか2個のシリンダ孔を第1ブレーキ系統用シリンダ孔とし、その他のシリンダ孔を第2ブレーキ系統用シリンダ孔とし、少なくとも1個の第2ブレーキ系統用シリンダ孔を2個の第1ブレーキ系統用シリンダ孔の間に配置し、複数の第1ブレーキ系統用シリンダ孔を連通路によって連通し、前記第1ブレーキ系統用シリンダ孔に挿入されたピストンを、第1液通路を介して供給される作動液によって作動させ、前記第2ブレーキ系統用シリンダ孔に挿入されたピストンを、第2液通路を介して供給される作動液にて作動させると共に、前記第1液通路に第1ユニオン孔と第1ブリーダ孔とを開口し、前記第2液通路に第2ユニオン孔と第2ブリーダ孔とを開口した2系統式の車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、前記連通路と前記第1ブリーダ孔とは、前記複数の第1ブレーキ系統用シリンダ孔のディスク半径方向内端を直線状に繋ぐ仮想線よりもディスク半径方向外側に一直線状に形成され、前記第2ブレーキ系統用シリンダ孔は、前記連通路よりもディスク半径方向外側に設けられることを特徴とする車両用ディスクブレーキのキャリパボディ。
【請求項2】
前記キャリパボディは、車体に取り付けたキャリパブラケットに、車両前進時におけるディスク回出側とディスク内周側とに設けられた一対の摺動ピンを介してディスク軸方向へ移動可能に支持され、ディスク内周側の摺動ピンは、該摺動ピンの断面内を、内部に前記複数の第1ブレーキ系統用シリンダ孔を備えたシリンダ部のディスク半径方向内端を直線状に繋ぐ仮想線が通る位置もしくは該仮想線よりもディスク半径方向外側に配置されることを特徴とする請求項1記載の車両用ディスクブレーキのキャリパボディ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−185502(P2010−185502A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29348(P2009−29348)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】