説明

車両用ドライバユニットの電源系故障診断システム

【課題】運転者に故障状態を早期に認識させるとともに、主電源回路又は副電源回路が故障しても、車両をサービスステーション等に自走させることを可能とする。
【解決手段】車両のアクチュエータ11がドライバユニット12により駆動され、ドライバユニット12と電源13とが主電源回路14及び副電源回路16によりそれぞれ別個に接続される。主電源回路14及び副電源回路16からドライバユニット12への電力の供給状態がモニタ回路17により監視され、運転者に報知する報知手段18が車両の運転席に設けられる。コントローラ19は、電源13から主電源回路14及び副電源回路16への電力の供給を交互に切換えることにより得られるモニタ回路17の検出出力に基づいて、主電源回路14、副電源回路16及びモニタ回路17の故障を診断するとともに、報知手段19を制御するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の変速機等の複数のアクチュエータを駆動するドライバユニットに電力を供給する電源系に故障が発生したか否かを診断するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシステムとして、故障診断プログラムを実行する手段を備えた車両搭載コンピュータ装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この車両搭載コンピュータ装置では、電源供給回路が、車両の主電源スイッチを経由する第1回路と、この主電源スイッチをバイパスするとともに第2のスイッチを経由する第2回路とを有し、故障診断プログラムが実行された後に故障箇所が検出されたとき、上記第2のスイッチが自動的に閉じるように構成される。このように構成された車両搭載コンピュータ装置では、故障箇所を自動検出したときに、主電源スイッチが切れて第1回路が開いても、他系統の第2回路より電源を受けて、診断情報の消失を防ぐことにより、故障状況の把握を確実に行うことができる。即ち、このコンピュータ装置の自己診断によって保持された診断情報を消失せずに保持しておくことにより、サービス者が関与できるようになってからでも故障状況を認識できるので、修理及び復旧の処置や、故障対策の検討に大きな効果がある。
【特許文献1】特開昭62−28843号公報(請求項1、明細書第1頁右下欄7行目〜11行目、明細書第2頁右下欄4行目〜同頁同欄9行目)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の特許文献1に示された車両搭載コンピュータ装置では、電源のスイッチ回路として第1及び第2回路の2系統を備えており、故障診断プログラムの実行により故障箇所が検出されたとき、第1回路が開いて第2回路が閉じるけれども、この第2回路は、コンピュータ装置の自己診断によって保持された診断情報を消失せずに保持するためのものであり、第1回路が開いてしまうと、電源電力が車両制御のために供給されず、車両をサービスステーション等に自走させることができない不具合があった。
【0004】
本発明の第1の目的は、ドライバユニットの電源系が故障したと診断したときに車両の運転者に報知することにより、運転者に故障状態を早期に認識させることができるとともに、主電源回路又は副電源回路のいずれかが故障しても、車両をサービスステーション等に自走させることができる、車両用ドライバユニットの電源系故障診断システムを提供することにある。本発明の第2の目的は、ドライバユニットによるアクチュエータの駆動をドライバユニットの電源系の故障診断より優先させることにより、ドライバユニットの誤作動を防止できる、車両用ドライバユニットの電源系故障診断システムを提供することにある。本発明の第3の目的は、ドライバユニットの電源系の故障診断の頻度を比較的多くすることにより、ドライバユニットの電源系の故障を早期かつ確実に判定できる、車両用ドライバユニットの電源系故障診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、車両のアクチュエータ11を駆動するドライバユニット12と、ドライバユニット12と電源13とをそれぞれ別個に接続する主電源回路14及び副電源回路16と、主電源回路14及び副電源回路16からドライバユニット12への電力の供給状態を監視するモニタ回路17と、車両の運転席に設けられ運転者に報知する報知手段18と、電源13から主電源回路14及び副電源回路16への電力の供給を交互に切換えることにより得られるモニタ回路17の検出出力に基づいて主電源回路14、副電源回路16及びモニタ回路17の故障を診断するとともに報知手段18を制御するコントローラ19とを備えた車両用ドライバユニットの電源系故障診断システムである。
【0006】
この請求項1に記載された車両用ドライバユニットの電源系故障診断システムでは、車両が始動すると、コントローラ19は、電源13電力を主電源回路14を通してドライバユニット12に供給するけれども電源13電力を副電源回路16を通して供給しないという信号を上記主電源回路14及び副電源回路16にそれぞれに送る第1の切換位置に切換える。このときモニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給状態を検出すると、コントローラ19は主電源回路14が正常であると判定し、電源13電力を主電源回路14を通してドライバユニット12に供給しないけれども電源13電力を副電源回路16を通して供給するという信号を上記主電源回路14及び副電源回路16にそれぞれ送る第2の切換位置に切換える。このときモニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給状態を検出すると、コントローラ19は副電源回路16が正常であると判定し、主電源回路14、副電源回路16及びモニタ回路17が全て正常であると確定する。
【0007】
一方、主電源回路14及び副電源回路16を第1の切換位置に切換えたときに、モニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出できなかった場合であって、主電源回路14及び副電源回路16を第2の切換位置に切換えたときに、モニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出した場合、コントローラ19は主電源回路14が故障したと確定し、報知手段18を制御して車両の運転者にその旨を報知する。そして、コントローラ19が電源13電力を副電源回路16を通してドライバユニット12に供給することにより、運転者の運転操作により車両を自走させることができるので、速やかに車両をサービスステーション等に移動できる。また、主電源回路14及び副電源回路16を第1の切換位置に切換えたときに、モニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出した場合であって、主電源回路14及び副電源回路16を第2の切換位置に切換えたときに、モニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出できなかった場合、コントローラ19は再び主電源回路14及び副電源回路16を第1の切換位置に切換えて、モニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出すると、コントローラ19は副電源回路16が故障したと確定し、車両の運転者に報知手段18によりその旨を報知する。そして、コントローラ19が電源13電力を主電源回路14を通してドライバユニット12に供給することにより、運転者の運転操作により車両を自走させることができるので、速やかに車両をサービスステーション等に移動できる。
【0008】
また、主電源回路14及び副電源回路16を第1の切換位置に切換えたときに、モニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出できなかった場合であって、主電源回路14及び副電源回路16を第2の切換位置に切換えたときに、モニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出できなかった場合には、コントローラ19はモニタ回路17が故障したと確定し、車両の運転者に報知手段18によりその旨を報知する。そして、コントローラ19が電源13電力を主電源回路14又は副電源回路16のいずれか一方又は双方を通してドライバユニット12に供給することにより、運転者の運転操作により車両を自走させることができるので、速やかに車両をサービスステーション等に移動できる。更に、主電源回路14及び副電源回路16を第1又は第2の切換位置のいずれにも切換えていない状態で、モニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出できなくなった場合には、コントローラ19はモニタ回路17が故障したと確定し、車両の運転者に報知手段18によりその旨を報知する。そして、コントローラ19が電源13電力を主電源回路14又は副電源回路16のいずれか一方又は双方を通してドライバユニット12に供給することにより、運転者の運転操作により車両を自走させることができるので、速やかに車両をサービスステーション等に移動できる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、図1に示すように、運転者のアクチュエータ11に関する操作指示を検出する操作センサ23を更に備え、電源13から主電源回路14又は副電源回路16のいずれか一方又は双方を通してドライバユニット12に電力が供給されている状態で、操作センサ23が上記操作指示を検出したとき、コントローラ19は、主電源回路14、副電源回路16及びモニタ回路17の故障診断に優先させて、ドライバユニット12を制御してアクチュエータ11を駆動するように構成されたことを特徴とする。この請求項2に記載された車両用ドライバユニットの電源系故障診断システムでは、運転者がアクチュエータ11に関する操作指示(例えば、シフトレバーの操作)を行うと、この操作指示を操作センサ23が検出し、コントローラ19は操作センサ23の検出出力に基づいて主電源回路14及び副電源回路16の第1又は第2の切換位置への切換え動作を行わない。これによりドライバユニット12によるアクチュエータ11の駆動をドライバユニット12の電源系の故障診断より優先させるので、ドライバユニット12の誤作動を防止できる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、図1及び図2に示すように、主電源回路14、副電源回路16及びモニタ回路17の故障診断を行う間隔は1分間であることを特徴とする。また請求項4に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、図1及び図2に示すように、主電源回路14に電力を供給しかつ副電源回路16に電力を供給しない第1の時間と、主電源回路14に電力を供給せずかつ副電源回路16に電力を供給する第2の時間がそれぞれ1秒間であることを特徴とする。この請求項3及び4に記載された車両用ドライバユニットの電源系故障診断システムでは、ドライバユニット12の電源系の故障診断の頻度を1分間毎と比較的多くすることにより、ドライバユニット12の電源系の故障を早期かつ確実に判定できる。なお、故障診断は所定の間隔で行うけれども、第1の時間及び第2の時間の合計は、上記所定の間隔よりも十分に短いものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主電源回路及び副電源回路がドライバユニットと電源とをそれぞれ別個に接続し、主電源回路及び副電源回路からドライバユニットへの電力の供給状態をモニタ回路が監視するので、コントローラが、電源から主電源回路及び副電源回路への電力の供給を交互に切換えることにより得られるモニタ回路の検出出力に基づいて、主電源回路、副電源回路及びモニタ回路の故障を診断し、主電源回路、副電源回路又はモニタ回路のいずれかが故障したと判定した場合、車両の運転者にその回路が故障した旨を報知する。この結果、運転者に故障状態を早期に認識させることができる。また主電源回路及び副電源回路の両回路が同時に故障することは極めて考え難いため、コントローラが主電源回路又は副電源回路のいずれかが故障したと確定した場合、コントローラが電源電力を主電源回路又は副電源回路のうち正常な回路を通してドライバユニットに供給することにより、運転者の運転操作により車両を自走させることができる。この結果、運転者は速やかに車両をサービスステーション等に移動できる。
【0012】
また電源から主電源回路又は副電源回路のいずれか一方又は双方を通してドライバユニットに電力が供給されている状態で、操作センサが運転者のアクチュエータに関する操作指示を検出したとき、コントローラが、主電源回路、副電源回路及びモニタ回路の故障診断に優先させて、ドライバユニットを制御してアクチュエータを駆動するように構成すれば、運転者がアクチュエータに関する操作指示(例えば、シフトレバーの操作)を行うと、この操作指示を操作センサが検出し、コントローラは操作センサの検出出力に基づいて主電源回路及び副電源回路の第1又は第2の切換位置への切換え動作を行わない。この結果、コントローラは、ドライバユニットによるアクチュエータの駆動をドライバユニットの電源系の故障診断より優先させるので、ドライバユニットの誤作動を防止できる。更に主電源回路等の故障診断を行う間隔を1分間とし、上記第1の時間及び第2の時間をそれぞれ1秒間とすれば、ドライバユニットの電源系の故障診断の頻度が比較的多くなるので、ドライバユニットの電源系の故障を早期かつ確実に判定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、電源系故障診断システムは、車両のアクチュエータ11を駆動するドライバユニット12と、ドライバユニット12と電源13とをそれぞれ別個独立に接続する主電源回路14及び副電源回路16と、主電源回路14及び副電源回路16からドライバユニット12への電力の供給状態を監視するモニタ回路17と、車両の運転席に設けられ運転者に報知する報知手段18と、モニタ回路17の検出出力に基づいて主電源回路14、副電源回路16及びモニタ回路17の故障を診断するとともに報知手段18を制御するコントローラ19とを備える。上記ドライバユニット12は、トラック、バス、乗用車等の車両のクラッチ21や変速機22のアクチュエータ11を駆動制御するためのものである。またアクチュエータ11としては、クラッチブースタ21aに圧油を給排してクラッチ21を断続するクラッチアクチュエータ11aや、変速機22のシフトフォーク(図示せず)を移動させて主軸(図示せず)を所定の変速ギヤ(図示せず)に接続するシフトアクチュエータ11bが挙げられる。
【0014】
ドライバユニット12は、ドライバ本体12aと、このドライバ本体12aに電源13の電力を別個独立に供給する主トランジスタ12b及び副トランジスタ12cとを有する。主トランジスタ12b及び副トランジスタ12cはエミッタ接地トランジスタであり、両トランジスタ12b,12cともスイッチング機能及び増幅機能をそれぞれ有する。主トランジスタ12b及び副トランジスタ12cのコレクタは電源13に接続され、主トランジスタ12b及び副トランジスタ12cのエミッタはドライバ本体12aに接続された後に接地される。また報知手段18は運転席に設けられた表示器(図示せず)及びスピーカ(図示せず)からなる。表示器には、主電源回路14、副電源回路16又はモニタ回路17のいずれかが故障したことが表示され、スピーカからは主電源回路14、副電源回路16又はモニタ回路17のいずれかが故障したことがアナウンスされるように構成される。更に運転席には運転者が操作するシフトレバー(図示せず)が設けられ、このシフトレバーの近傍にはシフトレバーの操作位置を検出するシフトセンサ23が設けられる。なお、図1の符号24はクラッチ21の断続を検出するクラッチセンサであり、符号26は変速機22の変速段位置を検出する変速段センサである。
【0015】
シフトセンサ23、クラッチセンサ24及び変速段センサ26の各検出出力はコントローラ19の制御入力にそれぞれ接続され、コントローラ19の制御出力は報知手段18及びドライバ本体12aにそれぞれ接続される。またモニタ回路17の一端は主トランジスタ12b及び副トランジスタ12cのエミッタの後述する合流点Yにそれぞれ接続され、モニタ回路17の他端はコントローラ19の制御入力に接続される。またコントローラ19の制御出力は、主電源回路14の主電源信号線14aを通して主トランジスタ12bのベースに接続されるとともに、副電源回路16の副電源信号線16aを通して副トランジスタ12cのベースにそれぞれ接続される。更にドライバ本体12aはクラッチアクチュエータ11a及びシフトアクチュエータ11bにそれぞれ接続される。ここで、図1の符号Xは、電源13と主トランジスタ12bのコレクタを接続する回路と、電源13と副トランジスタ12cのコレクタとを接続する回路との分岐点である。また図1の符号Yは、主トランジスタ12bのエミッタとドライバ本体12aとを接続する回路と、副トランジスタ12cのエミッタとドライバ本体12aとを接続する回路との合流点である。主電源回路14は、上記主電源信号線14aに加えて、主トランジスタ12bと、X点と主トランジスタ12bのコレクタとの間の主コレクタ線14bと、主トランジスタ12bのエミッタとY点との間の主エミッタ線14cとを含む。また副電源回路16は、上記副電源信号線16aに加えて、副トランジスタ12cと、X点と副トランジスタ12cのコレクタとの間の副コレクタ線16bと、副トランジスタ12cのエミッタとY点との間の副エミッタ線16cとを含む。
【0016】
なお、コントローラ19には、主電源回路14、副電源回路16及びモニタ回路17の故障診断を行う間隔と、主電源回路14に電力を供給しかつ副電源回路17に電力を供給しないという信号を主電源回路14及び副電源回路16にそれぞれ送る第1の時間と、主電源回路14に電力を供給せずかつ副電源回路16に電力を供給するという信号を主電源回路14及び副電源回路16にそれぞれ送る第2の時間とをそれぞれ計測するタイマ(図示せず)が設けられる。上記主電源回路14、副電源回路16及びモニタ回路17の故障診断を行う間隔は、1分間に設定される。また上記第1の時間と、上記第2の時間は、それぞれ1秒間に設定される。上記第1の時間及び第2の時間は、それぞれ上記範囲内であれば、同一の時間であってもよく或いはそれぞれ異なる時間であってもよい。
【0017】
このように構成された車両用ドライバユニットの電源系故障診断システムの動作を図2〜図5のタイムチャート及び図6のフローチャートに基づいて説明する。
(1) 主電源回路14、副電源回路16及びモニタ回路17が正常である場合
運転者がキースイッチ(図示せず)にてコントローラ19を始動すると、コントローラ19は、電源13電力が主電源回路14の主コレクタ線14b、主トランジスタ12b及び主エミッタ線14cを通してドライバ本体12aに供給されるという信号を、主電源回路14の主電源信号線14aを通して主トランジスタ12bのベースに送るとともに、電源13電力が副電源回路16の副コレクタ線16b、副トランジスタ12c及び副エミッタ線16cを通して供給されないという信号を、副電源回路16の副電源信号線16aを通して副トランジスタ12cのベースに送る第1の切換位置に切換える(図2の左部分)。このときモニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給状態を検出し、この状態が1秒間継続すると、コントローラ19は主電源回路14が正常であると判定する。1秒経過後、コントローラ19は、電源13電力が主電源回路14の主コレクタ線14b、主トランジスタ12b及び主エミッタ線14cを通してドライバユニット12に供給されないという信号を、主電源回路14の主電源信号線14aを通して主トランジスタ12bのベースに送るとともに、電源13電力が副電源回路16の副コレクタ線16b、副トランジスタ12c及び副エミッタ線16cを通して供給されるという信号を、副電源回路16の副電源信号線16aを通して副トランジスタ12cのベースに送る第2の切換位置に切換える(図2の左部分)。このときモニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給状態を検出し、この状態が1秒間継続すると、コントローラ19は副電源回路16が正常であると判定する。そしてコントローラ19は最終的に主電源回路14、副電源回路16及びモニタ回路17が全て正常であると確定する。一方、電源13から主電源回路14又は副電源回路16のいずれか一方又は双方を通してドライバユニット12に電力が供給されている状態で、運転者が変速機22の変速段を変更するためにシフトレバーを操作すると、このシフトレバーが操作されたことをシフトセンサ23が検出する。このときコントローラ19は、主電源回路14、副電源回路16及びモニタ回路17の故障診断に優先させて、ドライバユニット12を制御してアクチュエータ11を駆動する。即ち、運転者がシフトレバーを操作したとき、コントローラ19はシフトセンサ23の検出出力に基づいて主電源回路14及び副電源回路16を第1又は第2の切換位置のいずれにも切換えずに、ドライバユニット12によりアクチュエータ11を駆動させることを優先させる。この結果、ドライバユニット12の誤作動を防止できる。
【0018】
(2) 主電源回路14が故障した場合
コントローラ19が主電源回路14及び副電源回路16を第1の切換位置に切換えたときに、モニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出できず(図2の右部分)、この状態が1秒間継続すると、コントローラ19は主電源回路14又はモニタ回路17のいずれかが故障したと仮判定を行う。1秒経過後、コントローラ19が主電源回路14及び副電源回路16を第2の切換位置に切換えたときに、モニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給状態を検出し(図2の右部分)、この状態が0.1秒間継続すると、コントローラ19は副電源回路16が正常であると判定した後、主電源回路14が故障したと確定する。そして、コントローラ19は報知手段18を作動させて主電源回路14が故障したことを運転者に報知するとともに、電源13電力を副電源回路16を通してドライバユニット12に供給する。この結果、運転者の運転操作により車両を自走させることができるので、運転者は速やかに車両をサービスステーション等に移動でき、このサービスステションで主電源回路14を修理できる。
【0019】
(3) 副電源回路16が故障した場合
コントローラ19が主電源回路14及び副電源回路16を第1の切換位置に切換えたときに、モニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出し(図3の右部分)、この状態が1秒間継続すると、主電源回路14が正常であると判定する。1秒経過後、コントローラ19は主電源回路14及び副電源回路16を第2の切換位置に切換える。このときモニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出できず(図3の右部分)、この状態が1秒間継続すると、コントローラ19は副電源回路16又はモニタ回路17のいずれかが故障したと仮判定を行う。1秒経過後、コントローラ19は主電源回路14及び副電源回路16を再び第1の切換位置に切換える。このときモニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給状態を検出し(図3の右部分)、この状態が0.1秒間継続すると、コントローラ19は主電源回路14が正常であると判定した後、最終的に副電源回路16が故障したと確定する。そして、コントローラ19は報知手段18を作動させて副電源回路16が故障したことを運転者に報知するとともに、電源13電力を主電源回路14を通してドライバユニット12に供給する。この結果、運転者の運転操作により車両を自走させることができるので、運転者は速やかに車両をサービスステーション等に移動でき、このサービスステションで副電源回路16を修理できる。
【0020】
(4) モニタ回路17が故障した場合
コントローラ19が主電源回路14及び副電源回路16を第1の切換位置に切換えたときに、モニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出できず(図4の右部分)、この状態が1秒間継続すると、コントローラ19は主電源回路14又はモニタ回路17のいずれかが故障したと仮判定を行う。1秒経過後、コントローラ19は主電源回路14及び副電源回路16を第2の切換位置に切換える。このときモニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出できず(図4の右部分)、この状態が0.1秒間継続すると、コントローラ19は最終的にモニタ回路17が故障したと確定する。そして、コントローラ19は報知手段18を作動させてモニタ回路17が故障したことを運転者に報知するとともに、電源13電力を主電源回路14又は副電源回路17のいずれか一方又は双方を通してドライバユニット12に供給する。この結果、運転者の運転操作により車両を自走させることができるので、運転者は速やかに車両をサービスステーション等に移動でき、このサービスステションでモニタ回路17を修理できる。一方、コントローラ19が主電源回路14及び副電源回路16を第1又は第2の切換位置のいずれにも切換えていない状態で、モニタ回路17が電源13電力のドライバユニット12への供給を検出できず(図5の右部分)、この状態が1秒間継続すると、コントローラ19はモニタ回路17が故障したと確定する。そして、コントローラ19は報知手段18を作動させてモニタ回路17が故障したことを運転者に報知するとともに、電源13電力を主電源回路14又は副電源回路16のいずれか一方又は双方を通してドライバユニット12に供給する。この結果、運転者の運転操作により車両を自走させることができるので、運転者は速やかに車両をサービスステーション等に移動でき、このサービスステションでモニタ回路17を修理できる。なお、キースイッチをオフにすると、上記故障診断はリセットされ、次にキースイッチをオンしたときに初めから故障診断が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明実施形態の車両用ドライバユニットの電源系故障診断システムを示す構成図である。
【図2】主電源回路が故障した状態を示すタイムチャートである。
【図3】副電源回路が故障した状態を示すタイムチャートである。
【図4】モニタ回路が故障した状態を示すタイムチャートである。
【図5】モニタ回路が故障した状態を示すタイムチャートである。
【図6】主電源回路、副電源回路又はモニタ回路が故障したときの電源系故障診断システムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0022】
11 アクチュエータ
12 ドライバユニット
13 電源
14 主電源回路
16 副電源回路
17 モニタ回路
18 報知手段
19 コントローラ
23 シフトセンサ(操作センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアクチュエータ(11)を駆動するドライバユニット(12)と、
前記ドライバユニット(12)と電源(13)とをそれぞれ別個に接続する主電源回路(14)及び副電源回路(16)と、
前記主電源回路(14)及び前記副電源回路(16)から前記ドライバユニット(12)への電力の供給状態を監視するモニタ回路(17)と、
車両の運転席に設けられ運転者に報知する報知手段(18)と、
前記電源(13)から前記主電源回路(14)及び前記副電源回路(16)への電力の供給を交互に切換えることにより得られる前記モニタ回路(17)の検出出力に基づいて前記主電源回路(14)、前記副電源回路(16)及び前記モニタ回路(17)の故障を診断するとともに前記報知手段(18)を制御するコントローラ(19)と
を備えた車両用ドライバユニットの電源系故障診断システム。
【請求項2】
運転者のアクチュエータ(11)に関する操作指示を検出する操作センサ(23)を更に備え、
電源(13)から主電源回路(14)又は副電源回路(16)のいずれか一方又は双方を通してドライバユニット(12)に電力が供給されている状態で、前記操作センサ(23)が前記操作指示を検出したとき、コントローラ(19)は、前記主電源回路(14)、前記副電源回路(16)及びモニタ回路(17)の故障診断に優先させて、前記ドライバユニット(12)を制御して前記アクチュエータ(11)を駆動するように構成された請求項1記載の車両用ドライバユニットの電源系故障診断システム。
【請求項3】
主電源回路(14)、副電源回路(16)及びモニタ回路(17)の故障診断を行う間隔は1分間である請求項1又は2記載の車両用ドライバユニットの電源系故障診断システム。
【請求項4】
主電源回路(14)に電力を供給しかつ副電源回路(16)に電力を供給しない第1の時間と、前記主電源回路(14)に電力を供給せずかつ前記副電源回路(16)に電力を供給する第2の時間がそれぞれ1秒間である請求項1又は2記載の車両用ドライバユニットの電源系故障診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−280110(P2009−280110A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134861(P2008−134861)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】