説明

車両用ナビゲーションシステム

【課題】他の車両と走行比較をすることができ、また安全走行ができるように配慮した機能を有するナビゲーションシステムを提供する。
【解決手段】他のシステムによって生成された外部車両の走行データを取り込む外部車両走行データ取込手段と、その走行データに基づいて実際に走行する車両を電子地図上の所定のスタート位置から所定の道路上を走行させる場合に、仮想車両を電子地図上のスタート位置から所定の道路上で走行させた場合の仮想走行状態を外部車両走行データ取込手段による走行データに基づいてシミュレートする仮想走行演算手段とを有する。そしてこの演算結果による仮想車両の走行位置と、実際の走行車両の現在位置とを、表示部に表示させる表示制御手段を有する。さらに実際の車両が特定の専用道路で走行する場合にのみ、仮想車両の走行データと比較表示を許可する安全確保手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の車両と走行比較することのできる車両用ナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車が一定距離走行するために要する時間を計測し、その走行距離を表示する機能を有するナビゲーション装置がある。これによりユーザは、自分の運転技術や自動車の性能等を確認することができる。
【0003】
ところが、このような機能を有していたとしても、他人との比較をすることはできない。そこで、不特定の他人の走行データと自分の走行データをカーナビゲーション装置を使って比較するアイデアが提案されている(特許文献1)。これによれば、多数の人がホストコンピュータに走行記録を送信することによって、このホストコンピュータでデータの処理をし、その結果を受信することで、他人の走行データとの比較を可能とする。
【0004】
【特許文献1】特開2002−352390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では通信装置やホストコンピュータが必要で装置が複雑になったり、自分の欲しいデータを入手できる保証がなかったりする問題があり実用的ではなかった。一方、テレビゲームのカーレースシミュレーションゲームなどの走行データ記録を利用して、実際の車両の走行と比較することは、行われていない。
【0006】
そこで本発明の課題は、他の車両と走行比較をすることができ、また安全走行ができるように配慮した機能を有する車両用ナビゲーションシステムを提供する。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の車両用ナビゲーションシステムは、
地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
地図情報を電子地図として車両の現在位置とともに表示する表示部と、
外部のシステムによって生成された外部車両の走行データを取り込む外部車両走行データ取込手段と、
実際に走行する車両を電子地図上の所定のスタート位置から所定の道路上を走行させる場合に、外部車両を電子地図上のスタート位置から所定の道路上で走行させた場合の仮想走行状態を外部車両走行データ取込手段による走行データに基づいてシミュレートする仮想走行演算手段と、
その仮想走行演算手段の結果得られる外部車両の走行位置と、現在位置検出手段によって得られる実際の走行車両の現在位置とを、スタート位置をスタートしてからの同一の経過時間で互いに同期させて表示部の電子地図上に併せて表示する表示制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、外部のシステムにおいて外部車両を走行させ、その走行データを外部車両走行データ取込手段によってナビゲーションシステムに取り込むことができる。ここで外部車両とは、このナビゲーションシステムを搭載する車両以外の車両を指す。より具体的には、外部車両の走行データとは、他の車両を実際に道路上で走行させて得られた走行データ(例えば、レースドライバーが実際に走行した走行データ)でもよいし、安全運転を行えるように理想的にシミュレートされた仮想車両の走行データであってもよい。さらに後述するように、ゲーム機によってゲーム内の仮想道路上を仮想車両を走行して得られた走行データであってもよい。
【0009】
そして、実際の車両を道路上で走行させる場合に、ナビゲーション装置の表示部に、実際の車両を地図データ上に表示させることに加えて、外部車両の走行データに基づいて仮想走行演算手段によってシミュレートして算出された仮想車両の走行状態を、表示制御手段によって並べて表示部に表示させることができる。これにより運転者は、他の車両の走行と、実際の車両の走行とを比較しながら、実際の道路上を運転することができる。
【0010】
外部車両の走行データは、所定のスタート位置から走行をスタートした場合の走行時間と、走行距離または現在位置データと、を含む。走行時間とその時間に対する走行距離、または走行時間とその時間に対する現在位置データを走行データに含んでいれば、時間に対する走行距離、または現在位置から、実際の車両の走行している道路上での外部車両の走行状態を仮想走行演算手段によってシミュレートして実際の車両の走行と比較することができる。このようなデータを含んでいれば、外部車両が走行した道路と、実際の車両を運転する道路とが同じ道路であっても異なる道路であっても、仮想走行状態を算出することが可能である。
【0011】
外部車両が走行した道路が実在する道路であれば、外部車両の走行データの現在位置データは、経度・緯度座標、またはマップコードを利用できる。現在位置データが、この実在する道路に対応する経度・緯度座標、またはマップコードであれば、その実在する道路を実際の車両で走行する場合に、外部車両の走行とを比較することができる。あるいは、外部車両が走行した道路が実在しない道路であってもよく、この場合は仮想の経度・緯度座標を有するようにする。
【0012】
外部車両の走行データは、さらに外部車両の走行状態を示す機器の情報を含むようにしてもよい。外部車両の走行状態を示す機器の情報とは、所定時間間隔における外部車両の、ステアリング情報、アクセルの踏み込み状態、ブレーキの踏み込み状態、走行速度、エンジンの回転数、シフトレバーのレンジ位置などである。このような情報が外部車両走行データ取込手段によってナビゲーションシステムに取り込まれれば、表示部によってこれらのデータを表示させることで、より、具体的な走行比較を行うことができる。
【0013】
そして上述のように、外部車両は、所定のゲーム機の表示画面に表示される仮想道路上で走行される仮想車両であり、外部車両走行データ取込手段によって取り込まれる走行データは、仮想道路上でゲーム内の仮想車両を走行させる走行ゲームの結果として得られる仮想車両の走行データであってもよい。
【0014】
上記構成によれば、ゲーム機のゲーム内の仮想道路で仮想車両の走行ゲームを行って、その走行データを外部車両走行データ取込手段によってナビゲーション装置に取り込むことができる。そして、実際の車両を道路上で走行させる場合に、ナビゲーション装置の表示部に、実際の車両を地図データ上に表示させることに加えて、ゲーム機による走行ゲームの結果のデータに基づいて仮想走行演算手段によってシミュレートして算出された仮想車両の走行状態を、表示制御手段によって並べて表示部に表示させることができる。これにより運転者は、以前行ったゲームにおける仮想車両の走行と、実際の車両の走行とを比較しながら、実際の道路上を運転することができる。
【0015】
そして仮想道路は、実在するサーキット場を利用することができ、そのサーキット場において車両を実際に走行させ、仮想車両との走行比較を表示するようにできる。実際のサーキット場の地図データをゲーム機が有して、そのサーキット場で仮想車両の走行を行ってそのデータをナビゲーションシステムに取り込めば、このサーキット場で実際の車両を走行させた場合に、あたかも他の車両と並んで走行しているかのような感覚を得ることが可能である。
【0016】
外部車両走行データ取込手段は、記録媒体、またはネットワークを介して走行データを取り込む。ユーザは、ゲームを行う場合に、またはゲームを行った後に、記録媒体をゲーム機にセットしてゲーム機の走行データを記録する。そしてその記録媒体をナビゲーションシステムにセットして、ゲーム機における仮想車両の走行データをナビゲーションシステムに取り込むことができる。あるいは、ナビゲーションシステムがネットワークを介してゲーム装置と接続されるように構成し、このネットワークによって、走行データをナビゲーションシステムに取り込むようにしてもよい。または実際の車両を走行させて、そのデータを記録媒体に保存し、これを外部車両走行データ取込手段により取り込むようにしてもよい。この場合もネットワークを介して取り込むことも可能である。
【0017】
地図情報は、車両が走行する場合に外部車両との走行比較を行っても安全であるとされる特定専用道路に、その特定専用道路であることを示す識別コードを含み、車両が走行比較を行う場合に、その道路が特定専用道路であるかを判断し、特定専用道路である場合には走行比較を表示し、特定専用道路以外においては、走行比較の表示を制限する安全確保手段を有する。
【0018】
一般の道路上においてゲーム車両との走行比較を行うと、運転者が実際の車両の走行速度を上げて走行する可能性があり、この場合危険を生じる。そこで安全確保手段を有すれば、走行比較表示をする前に、一般の道路ではなく危険の少ない特定専用道路であるかを識別コードにより判断して、特定専用道路であれば、仮想車両の走行データを比較表示する。ここで特定専用道路とは、自動車専用の道路で、走行の競争をしても危険が少ない、例えばサーキット場などを指す。
【0019】
またナビゲーションシステムは、車両の走行状態を示す機器の情報を取得する走行機器情報取得手段を有し、表示部は、車両の走行状態を示す機器の情報を表示する。そして車両の走行状態を示す機器の情報は、車両のアクセル、ブレーキの踏み込み状態、走行速度、エンジンの回転数、シフトレバーのレンジ位置のいずれかを含む。このように走行状態を表示部に表示することによって、ゲーム性が高められ、仮想車両との比較走行を楽しむことができる。
【0020】
表示部は、インストルメントパネルに組み込まれた状態で設置されてもよいし、インストルメントパネル上に設置されてもよい。または、表示部は、ヘッドアップディスプレイとして形成されてもよい。ヘッドアップディスプレイとして形成されれば、運転者は、外部車両との走行比較を視認しやすい。
【0021】
仮想走行演算手段により外部車両を仮想で走行させて比較しながら車両を走行させた後に、車両と外部車両との比較データを他のシステムへ転送するためのデータ転送手段を有する。他のシステムとは、例えば、ゲーム機、パーソナルコンピュータなどである。これらに比較データを、記録媒体やネットワークなどによって転送する。これにより、外部車両と実際の車両の走行結果を、ゲーム機やパーソナルコンピュータなどで比較表示させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施例としての車両用ナビゲーションシステムの全体構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置100は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ11、走行機器情報取得装置23、データの入力を行うデータ入出力装置21、そのデータを保存する記憶部22、音声案内などを行うスピーカ15、外部メモリ9、表示装置10、通信ユニット19、ETC車載器16、これらの接続された制御回路8、リモコン端末12を備えている。
【0023】
現在位置検出手段である位置検出器1は、周知の地磁気センサ2、ジャイロスコープ3、距離センサ4、および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPSのためのGPS受信機5を有している。これらのセンサ等2,3,4,5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部センサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0024】
地図データ入力器6は、位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路データを含む各種データを記憶媒体20から入力するための装置である。記憶媒体としては、そのデータ量からCD−ROMやDVD,ハードディスクドライブ(以降、HDDと称する)を用いるのが一般的であるが、例えばメモリカード等の他の媒体を用いてもよい。また、この記憶媒体20は本発明の地図情報記憶手段に相当している。
【0025】
操作スイッチ群7は、例えば表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられる。タッチスイッチは、表示装置10の画面上に縦横に微細に配置された赤外線センサより構成されており、例えば指やタッチペンなどでその赤外線を遮断すると、その遮断した位置が2次元座標値(X,Y)として検出される。これら操作スイッチ群7およびリモコン端末12によって、種々の指示を入力することが可能である。
【0026】
表示部としての表示装置10はカラー液晶表示器により構成されており、表示装置10の画面には位置検出器1から入力された車両現在位置マークと、情報センタ14から受信した情報、更に地図上に表示する誘導経路等付加データとを重ね合わせて表示すると共に、本画面に経路案内の設定および経路誘導中の案内や画面の切り換え操作を行うためのボタンが表示される。表示部は、インストルメントパネルに組み込まれて設置されてもよいし、インストルメントパネル上に設置されてもよい。
【0027】
送信部、受信部としての送受信機13は、VICS(Vehicle Information and Communication System)等の情報センタ14から提供される情報を受信し、また情報センタ14へ情報を送信するための装置である。この送受信機13を介して外部から受け取った情報は、制御回路8において処理する。
【0028】
また、本車両用ナビゲーション装置100は、通信ユニット19を介して、携帯電話機17など移動体通信機器により、外部ネットワーク18との接続が可能で、インターネットに接続したり、専用の情報センタに接続することができる。さらに、ETC(自動料金収受システム,ETC:Electronic Toll Collection)車載器16と通信することにより、ETC車載器16がETC路上器から受信した、料金情報などをナビゲーション装置に取り込むことができる。また、ETC車載器16によって外部ネットワーク18と接続することも可能である。
【0029】
さらに、外部メモリ9には、本ナビゲーション装置の動作に必要なデータが記憶される。なお、外部メモリ9は、車両のイグニッションスイッチがオフ状態になっても(即ち、ナビゲーション装置100がオフ状態)、記憶内容が保持される。
【0030】
走行機器情報取得装置23は、車両のアクセルやブレーキの踏み込み状態、走行速度、エンジンの回転数、シフトレバーのレンジ位置を検出するための装置であり、走行機器情報取得手段を構成する。
【0031】
データ入出力装置21は、テレビゲーム装置31によって走行ゲームをした場合の走行データを入力するための装置であり、走行データが記憶された記憶媒体32がセットされることにより情報を入力するもので、外部車両走行データ取込手段である。
【0032】
或いは、データ入出力装置21は、実際に車両を走行させた場合の走行データや、理想的な走行をシミュレートしたシミュレートデータを取り込むこともできる。この走行データとしては、外部車両の走行時間と、走行距離または現在位置データ、走行状態を示す機器の情報などを含む。
【0033】
そしてこのデータは、記憶部22において記憶される。記憶媒体32としては、スマートメディア、SDメモリ、メモリスティック、コンパクトフラッシュ(登録商標)等のメモリカード、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、MD、MO等の光ディスクを用いることができる。または、記録媒体32の替わりにネットワークを介して走行データが入力されるようにしてもよい。
【0034】
制御回路8は通常のコンピュータとして構成されており、図2のように周知のCPU81,ROM82,RAM83,I/O84およびこれらの構成を接続するバスライン85が備えられている。
【0035】
CPU81は、ROM82およびRAM83に記憶されたプログラムおよびデータにより制御を行う。図2のように、ROM82にはオペレーティングシステム(以下、OSと称する)82sとOS82s上で動作するナビゲーションプログラム(以下、ナビプログラムと称する)82p、走行データに基づいて仮想走行を算出する仮想走行演算プログラム82kが格納される。仮想走行演算プログラム82kは、取得されたゲームの走行データ、他の実際の車両の走行データ、シミュレートデータなどに基づいて、実際の車両を所定のスタート位置からスタートさせた場合に、仮想車両がそのスタート位置から同時にスタートしたとして仮想車両の実際の道路上における走行をシミュレートする。RAM83には、OS82sのワークメモリ83s、仮想走行演算プログラム用ワークメモリ83kが形成される。
【0036】
また、ナビプログラム82pは、OS82s上にてナビプログラム用ワークメモリ83wを作業領域とする形で作動する。ナビゲーションプログラム82pは、経路を案内する機能に加え、仮想走行演算プログラム82kによって演算された仮想車両の走行状態を表示装置10に表示する機能を有する。また、後述するように比較走行をしても安全な道路であるかを判断し、安全である場合にその走行の比較を表示する安全確保の機能を有する安全確保手段である。
【0037】
このような構成を持つことにより、本ナビゲーション装置100は、制御回路8のCPU81によりナビプログラム82pが起動されると、運転者が操作スイッチ群7あるいはリモコン端末12を操作して、表示装置10上に表示されるメニューから目的地経路を表示装置10に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。即ち、運転者が目的地を入力すると、GPS受信機5から得られる衛星のデータに基づき車両の現在地が求められ、情報センタ14から情報を受信し、表示装置10上にその車種の車両が通行するために適する道路地図を表示し、運転者に適切な経路を案内する。上記の動作および以下の実施例は、ナビプログラム82pにより制御されている。
【0038】
さらに他の車両との走行比較をすることもできる。まず、ゲーム機によって行われた走行データが保存された記憶媒体32をデータ入出力装置21に挿入して走行データを読み込んで、記憶部22に保存する。そしてユーザが特定専用道路において、操作スイッチ群7を操作して走行比較をセットすると、車両の走行の合わせて、記憶部22の走行データを仮想走行演算プログラム82kが読み込んで、仮想走行演算プログラム用ワークメモリ83k上で、仮想車両の走行状態を算出する。そしてその仮想車両の算出された走行位置を、実際の車両の現在位置と併せて表示部に表示する。
【0039】
図3を用いて、処理の流れを説明する。まずS1でテレビゲームにて仮想道路の走行ゲームを実施する。このゲーム内の仮想道路としては、実在するサーキット場であり、このサーキット場の道路に関するデータがゲーム機に記憶されている。ゲーム機の実施例を図4に示す。ゲーム機30は、モニタ34、ゲーム機本体31、操作部33によって構成される。ユーザは、図5に示すように、このゲーム機30に表示されるいくつかのサーキット場から、ゲーム走行を行いたいサーキット場を選択する。そしてモニタ34に表示されるサーキット場で、操作部33を操作することにより仮想車両を操作して、サーキットの走行ゲームを行う。そしてこの走行データを記憶媒体32に保存する(図3のS2)。
【0040】
ここで図6に走行データのデータ構造の一例を示す。これは、ゲーム機30によって仮想車両42を走行させた場合のデータである。走行時間は、所定のスタート位置から仮想車両42をスタートさせた場合の時間の経過を示す。このように走行データには、所定の時間ごとに仮想車両の走行距離が記憶され、またこの仮想車両の走行時の位置データとして、経度・緯度座標が記憶されている。この位置座標は、ゲーム機30に記憶された仮想道路の緯度・経度であり、実際の道路と対応している。あるいは、経度・緯度座標のかわりにマップコード(登録商標)が記録されるようにしてもよい。マップコードとは、特定の場所の位置データをコード化し、6〜10桁の番号でその場所を特定することができるものである。位置情報を住所や緯度・経度に比べ、小さいデータ量で表示できる。
【0041】
ゲーム機において走行する道路が実際に実在するサーキット場であり、そのサーキット場における実際の経度・緯度座標と対応して記憶されている。これにより、実際のそのサーキット場において実際に車両を走行させて走行比較する場合には、よりリアルな走行比較をすることができる。ゲーム機に記憶されたサーキット場が、車両の走行道路とが異なる場合には、時間と走行距離との関係から、実際の道路上の走行をシミュレートして表示装置10に表示される。
【0042】
図3に戻って、次にこの記憶媒体32に記憶された走行データをナビゲーション装置100のデータ入出力装置21からナビゲーション装置100に入力する(S3)。入力された走行データは、ナビゲーション装置100の記憶部22に保存される。ナビゲーション装置にサーキット地図データが記憶されているかをナビゲーションプログラム82pが判断し(S4)、サーキット地図データがナビゲーション装置100に記憶されていない場合には、サーキットの地図データを入力するように表示部に表示され、ユーザは地図データ入力器6によって地図データを入力する(S5)。そしてそのサーキット場にて車両を走行させる場合に、ゲームにおけるそのサーキット場の走行と比較しようとユーザがする場合には、S6からS7へ進み、ユーザは、操作スイッチ群7を操作して走行比較開始のスイッチ操作を行う。
【0043】
このときナビゲーション装置100は、そこがサーキット場であるかを判断し(S8)、サーキット場でなければ、走行比較は危険であるために走行比較を行わない。このため予め地図データに識別コードが記憶されており、この識別コードによってサーキット場であるかを判断することができる。つまりサーキット場などの自動車が専用で走行するために走行比較を行いつつ走行しても安全であると判断される道路には、特定専用道路としてその地図データ上に識別コードが付与されている。
【0044】
そして一般道であれば、仮想車両との走行比較を行いながら走行するのは危険であるため、特定専用道路としての識別コードは付与されておらず、この場合には、比較データを表示しない。このようにして運転者が今から運転しようとする道路がサーキット場であると判断されると、走行比較を行っても問題がないと判断され、S9に進み、実際の車両の走行とゲーム機の走行とが表示部に表示される。
【0045】
すなわち、実際の走行車両のスタート位置から実際の道路上で仮想車両が走行した場合の、仮想走行演算プログラム82kによって演算された走行位置と、実際の車両の現在位置とが併せて、表示制御手段によって表示部に表示される。つまりゲームにおける走行データの経過時間と走行距離(または位置データ)に基づいて、実際の道路上のスタート位置から仮想車両がスタートしてその実際の道路上を仮想車両があたかも走行するかのようにシミュレートして表示装置10に表示する。
【0046】
図7にナビゲーション装置の表示部の表示の例を示す。図の例では、右側に実際の車両41の走行、左側に仮想車両42の仮想走行を示す。右画面47には、道路43上に自車41の走行が示されている。左画面48には、同様に道路43上に、ゲームの走行データに基づく仮想車両42が示されている。右画面47の道路43と、左画面48の道路43とは、同一の道路であり、図の場合は、実際の車両41の方が、仮想車両よりも速いことが示されている。
【0047】
また自車41の走行を示す右画面47には、走行状態を示す機器情報49が表示されている。具体的には、車両41の走行速度、アクセル、ブレーキの踏み込み状態、エンジンの回転数、シフトレンジのレンジ位置が逐一表示され、運転者は、それを参照しながら運転することができゲーム性が高められている。
【0048】
図7(b)に示す実施例では、同一画面に実際の車両41と仮想車両42が1つの画面上に併せて表示されている。
【0049】
図8にナビゲーション装置の表示部の表示の他の例を示す。ナビゲーション装置100のモニタ10上には、走行道路43が3次元的に表示されている。そしてゲーム機における走行データから算出された仮想車両42がその道路43上を走行しているところが示される。図の場合、前方の道路上に仮想車両42が走行しているため、実際に運転している自車41が仮想車両42よりも遅いことが分かる。仮想車両42よりも速く走行し、この仮想車両42を追い抜けば、仮想車両42が後方を走行していることになるため、前方道路上に表示されなくなる。
【0050】
図9に示すように表示部をヘッドアップディスプレイで構成することもできる。ヘッドアップディスプレイユニット52は、車室内のインストルメントパネル54内に搭載されている。ヘッドアップディスプレイユニット52には、表示器53が収容されており、この表示器53は、表示光を出射する。表示器53から出射された表示光は、フロントガラス51の所定位置に封入されているホログラム56に到達する。ホログラム56によって表示光が運転者58の方向に回折され、運転者58の前方に走行比較表示に対応する虚像が表示される。すなわちヘッドアップディスプレイとは、フロントガラス51に半透明状態で地図データ等を表示し、フロントガラス51を通して前方の道路を見るとともに、フロントガラス51に表示された仮想車両との走行比較を確認することができるというものである。このような装置により、ドライバにとってより比較データが見やすくなり、ゲーム性を楽しむことができる。
【0051】
上述の仮想車両42との走行比較のデータは、ナビゲーション装置100に記憶され、記憶媒体32に出力することができる。図10(a)に比較データを表示させるためのシステムを示す。このシステムは、パソコン61によって構成されている。仮想車両42と実際の車両41とを走行させることによってナビゲーションシステムにより得られた比較データを、データ取込装置62に記録媒体32を挿入しパソコン61に取り込む。
【0052】
そして、図10(b)に示すように、モニタ63に比較データを表示して、実際の車両41と仮想車両42との走行比較を確認することができる。(b)のように2画面に分割して実際の車両41と仮想車両42とを並べて表示してもよいし、前述のように、1画面上に実際の車両41と仮想車両42とを表示してもよい。このようなシステムにより、仮想車両と実際の車両との走行の比較を、実際の走行が終了した後に、運転者は落ち着いた状態で確認することができる。
【0053】
図11に仮想車両の走行を行うシミュレータの実施例を示す。このシミュレータ70は、ステアリング71、ギヤ72、アクセル73、ブレーキ74など車を擬似的に運転するために必要なものを装備しており、擬似車両信号を発生する。またナビゲーション装置と通信するための通信手段を有する。通信手段としては、無線でもよいし、シリアル通信などの有線でもよい。あるいは、記録媒体に記憶して、ナビゲーション装置で読み取るようにしてもよい。
【0054】
ナビゲーション装置は、ゲームシミュレーションモードのなかに、実車走行モードと擬似信号入力モードを兼ね備え切替できる。実車走行モードのときは、ナビゲーション装置は、通常の車両信号により動作する。擬似信号入力モードのときは、シリアル通信などの外部通信手段により擬似車両信号を受け取ることができる。ユーザーがこのシミュレータ70を操作すると、ステアリング71やギヤ72などの各種操作をリアルタイムに判定してそのデータを通信手段にてナビに送信する。また、アクセル73やブレーキ74などの情報から擬似的な車速も計算してデータに付加する。これによりナビゲーション装置は、これらのデータをもとに、スタート地点からどの位置に車が進んだかを推定し地図画面上に仮想の現在位置を表示することができる。なお、このシミュレータも本明細書においては、ゲーム機に含まれる。
【0055】
なお以上の説明において、ナビゲーションに取り込まれる外部車両の走行データは、ゲーム機における仮想車両の走行データである場合について主に説明したが、実際の車両を走行させた場合の走行データ(例えば、模範走行データとして、レースドライバーが車両を走行させた場合の走行データ)や、安全運転のための理想的な走行をコンピュータによってシミュレートしたシミュレートデータなどをナビゲーション装置に取り込んで、それらのデータと走行比較を行うようにすることもできる。
【0056】
この場合、外部車両のステアリング情報、アクセルの踏み込み状態、ブレーキの踏み込み状態、走行速度、エンジンの回転数、シフトレバーのレンジ位置をなども走行データとして取り込めば、ナビゲーション装置100の表示装置10に、図12(a),(b)に示すように、そのデータを表示して、より臨場感溢れる走行比較を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のナビゲーションシステムの構成を示すブロック図。
【図2】制御回路を説明するための図。
【図3】走行状態の比較表示を行うための処理順序を説明するフローチャート。
【図4】仮想車両の走行ゲームを行うためのゲーム機の実施例。
【図5】ゲーム内の走行する道路の選択を示す図。
【図6】走行データのデータ構造を説明する図。
【図7】ナビゲーションシステムの表示部に表示される走行比較の例。
【図8】ナビゲーションシステムの表示部に表示される走行比較の例2。
【図9】表示部をヘッドアップディスプレイとして形成した例。
【図10】走行比較のデータを取り込んで表示させるためのシステムの実施例。
【図11】仮想車両の走行を行うシミュレータの実施例。
【図12】外部車両の走行状態を示すデータが表示される走行比較の例。
【符号の説明】
【0058】
21 データ入出力装置
22 記憶部
30 テレビゲーム装置
32 記録媒体
41 実際の車両
42 仮想車両
100 ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
前記地図情報を電子地図として前記車両の現在位置とともに表示する表示部と、
外部のシステムによって生成された外部車両の走行データを取り込む外部車両走行データ取込手段と、
実際に走行する前記車両を前記電子地図上の所定のスタート位置から所定の道路上を走行させる場合に、前記外部車両を前記電子地図上の前記スタート位置から前記所定の道路上で走行させた場合の仮想走行状態を前記外部車両走行データ取込手段による前記走行データに基づいてシミュレートする仮想走行演算手段と、
その仮想走行演算手段の結果得られる前記外部車両の走行位置と、前記現在位置検出手段によって得られる実際の走行車両の現在位置とを、前記スタート位置をスタートしてからの同一の経過時間で互いに同期させて前記表示部の前記電子地図上に併せて表示する表示制御手段と、
を含むことを特徴とする車両用ナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記外部車両の前記走行データは、所定の前記スタート位置から走行をスタートした場合の走行時間と、走行距離または現在位置データと、を含む請求項1に記載の車両用ナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記外部車両の前記走行データの前記現在位置データは、経度・緯度座標、またはマップコードである請求項2に記載の車両用ナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記外部車両の前記走行データは、前記外部車両の走行状態を示す機器の情報を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用ナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記外部車両の走行状態を示す機器の情報は、所定時間間隔における前記外部車両の、ステアリング情報、アクセルの踏み込み状態、ブレーキの踏み込み状態、走行速度、エンジンの回転数、シフトレバーのレンジ位置を含む請求項4に記載の車両用ナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記外部車両は、所定のゲーム機の表示画面に表示される仮想道路上で走行される仮想車両であり、前記外部車両走行データ取込手段によって取り込まれる走行データは、仮想道路上でゲーム内の前記仮想車両を走行させる走行ゲームの結果として得られる該仮想車両の走行データである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用ナビゲーションシステム。
【請求項7】
前記仮想道路は、実在するサーキット場であり、そのサーキット場において前記車両を実際に走行させ、前記仮想車両との走行比較を表示する請求項6に記載の車両用ナビゲーションシステム。
【請求項8】
前記外部車両走行データ取込手段は、記録媒体、またはネットワークを介して前記走行データを取り込む請求項1ないし7のいずれか1項に記載の車両用ナビゲーションシステム。
【請求項9】
前記地図情報は、前記車両が走行する場合に前記外部車両との走行比較を行っても安全であるとされる特定専用道路に、その特定専用道路であることを示す識別コードを含み、前記車両が走行比較を行う場合に、その道路が前記特定専用道路であるかを判断し、前記特定専用道路である場合には走行比較を表示し、前記特定専用道路以外においては、走行比較の表示を制限する安全確保手段を有する請求項1ないし8のいずれか1項に記載の車両用ナビゲーションシステム。
【請求項10】
前記車両の走行状態を示す機器の情報を取得する走行機器情報取得手段を有し、前記表示部は、前記車両の走行状態を示す機器の情報を表示する請求項1ないし9のいずれか1項に記載の車両用ナビゲーションシステム。
【請求項11】
前記車両の前記走行状態を示す機器の情報は、前記車両のアクセルの踏み込み状態、ブレーキの踏み込み状態、走行速度、エンジンの回転数、シフトレバーのレンジ位置のいずれかを含む請求項10に記載の車両用ナビゲーションシステム。
【請求項12】
前記表示部は、ヘッドアップディスプレイである請求項1ないし11のいずれか1項に記載の車両用ナビゲーションシステム。
【請求項13】
前記仮想走行演算手段により前記外部車両を仮想で走行させて比較しながら前記車両を走行させた後に、前記車両と前記外部車両との比較データを他のシステムへ転送するためのデータ転送手段を有する請求項1ないし12に記載の車両用ナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−90933(P2006−90933A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278970(P2004−278970)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】