説明

車両用ブラシレスモータの駆動装置

【課題】 より簡素な構成で製造コストを削減しながら、回転子の適切な位置検出によってブラシレスモータを駆動することができる車両に搭載された車両用ブラシレスモータの駆動装置を提供する。
【解決手段】 複数の固定子巻線UI、VI、WIへの電圧の供給をオン/オフするための電流調整PWM信号を生成する駆動信号生成手段54と、生成された電流調整PWM信号に応じて、各固定子巻線に電圧を供給する電圧供給手段20と、電流調整PWM信号から所定の期間TMREF1だけ位相をずらした内部PWM信号を生成する位置検出用信号生成手段55と、生成された内部PWM信号および検出された各固定子巻線に供給される電圧に応じて、回転子と各固定子巻線との相対的な位置を検出する位置検出手段55と、を備え、駆動信号生成手段54は、検出された回転子の位置に応じて、電流調整PWM信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子巻線の端子電圧に基づいて位置検出を行うセンサレスの車両用ブラシレスモータを駆動するための駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のブラシレスモータの駆動装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この駆動装置は、ブラシレスモータのU相、V相およびW相の固定子巻線に電圧をそれぞれ供給するための振動回路と、ブラシレスモータの各相の固定子巻線に印加された端子電圧をそれぞれ検出する分圧回路を備えている。ブラシレスモータでは、電圧が供給されていない固定子巻線にも、そのインダクタンスなどによって誘起電圧が生じ、誘起電圧を含む各固定子巻線の電圧は、分圧回路によって検出され、基準電圧発生回路で生成された基準電圧と比較器によって比較される。その比較結果を表す比較器から出力された信号は、制御装置に入力される。
【0003】
また、誘起電圧の生じた固定子巻線の端子電圧と基準電圧とを比較した比較器から出力された位相信号がハイに変化したタイミングに応じて位置検出信号が検出され、検出された位置検出信号に基づいて速度検出信号が算出される。制御装置は、演算によって得られた速度検出信号に基づいて、速度指令信号と速度検出信号との差が零になるように、所要のデューティ比のパルス幅変調信号(以下「PWM信号」という)を生成して振動回路に供給する。振動回路は、このPWM信号に基づいて、各固定子巻線に電圧を供給する。
【0004】
また、ブラシレスモータでは、各固定子巻線に供給されるPWM信号がオフからオンに切り換えられたときに、端子電圧に振動が発生し、誘起電圧が基準電圧を一時的に上回ることがあり、その場合、比較器からの位相信号に応じた位置検出信号が誤検出されるおそれがあるのに対し、特許文献1に係るブラシレスモータの駆動装置では、制御装置にラッチ回路およびラッチタイミング信号発生回路が設けられている。ラッチ回路は、ブラシレスモータの相ごとに設けられたDフリップフロップで構成されており、ラッチタイミング信号発生回路はPWM信号のオンからオフへの立ち下がりの時点でラッチタイミング信号をDフリップフロップのクロック端子に出力し、ラッチ回路の各Dフリップフロップは、ラッチタイミング信号がクロック端子に与えられた時点で、比較器からの位相信号をラッチする。
【0005】
それにより、振動回路に供給されるPWM信号がオフからオンに切り換わった際、端子
電圧に振動が発生し、端子電圧が基準電圧を一時的に上回ったとしても、ラッチ回路がラッチタイミング信号を受信したときには、比較器からの位相信号はロウになっているので、ラッチ回路は位相信号としてハイを出力することはない。その後、端子電圧が基準電圧以上になると、ラッチタイミング信号が与えられたときには比較器からの位相信号がハイになっているので、Dフリップフロップは、位相信号としてハイを連続的に出力する。以上の結果、位置検出信号が適切に検出され、それに基づいて、ブラシレスモータが適切に駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−147793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した特許文献に係るブラシレスモータの駆動装置では、振動回路に供給されるPWM信号がオンに切り換えられたときの端子電圧の振動による影響を回避するために、ラッチ回路やラッチタイミング信号発生回路などの専用の構成が制御装置に設けられており、適切な位置検出信号を得られるものの、ラッチ回路などの分、駆動装置の製造コストが増大してしまう。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、より簡素な構成で製造コストを削減しながら、回転子の適切な位置検出によってブラシレスモータを駆動することができる車両用ブラシレスモータの駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、特許請求の範囲に記載の請求項1に係る発明は、複数の固定子巻線UI、VI、WIに電圧(実施形態における(以下、本項において同じ)端子電圧VU、VV、VW)を供給することによって回転子を回転させる車両に搭載された車両用ブラシレスモータの駆動装置1であって、複数の固定子巻線UI、VI、WIへの電圧の供給をオン/オフするための駆動信号(電流調整PWM信号)を生成する駆動信号生成手段(電流調整信号生成部54)と、生成された駆動信号に応じて、複数の固定子巻線UI、VI、WIに電圧を供給する電圧供給手段(駆動回路20)と、複数の固定子巻線UI、VI、WIに供給される電圧をそれぞれ検出する電圧検出手段と、駆動信号から所定の期間(第1の所定時間TMREF1)だけ位相をずらした位置検出用信号(内部PWM信号)を生成する位置検出用信号生成手段(検出部55)と、生成された位置検出用信号および電圧検出手段によって検出された電圧に応じて、回転子の複数の固定子巻線に対する相対的な位置を検出する位置検出手段(検出部55)と、を備え、駆動信号生成手段は、位置検出手段によって検出された、回転子の相対的な位置に応じて、駆動信号を生成することを特徴とする。
【0010】
この車両用ブラシレスモータの駆動装置によれば、複数の固定子巻線への電圧供給をオン/オフするための駆動信号が駆動信号生成手段により生成され、駆動信号に応じた電圧が電圧供給手段によって複数の固定子巻線に供給されることによって、ブラシレスモータの回転子が回転する。また、複数の固定子巻線にそれぞれ供給される電圧が電圧検出手段によって検出され、検出された電圧と、駆動信号から所定の期間だけ位相をずらした位置検出用信号に応じて、回転子の固定子巻線に対する相対的な位置が位置検出手段によって検出される。そして、検出された位置に応じて駆動信号が生成される。
【0011】
前述したように、ブラシレスモータでは、固定子巻線への電圧の供給をオフからオンに切り換えた直後に、電圧に振動が生じる(以下、このような電圧の振動を「リンギングノイズ」という)。このため、電圧供給の切換え直後に電圧を検出して位置検出を行った場合、検出される電圧がリンギングノイズの影響を受けることで、位置検出が適切に行われないおそれがある。これに対し、駆動信号から所定の期間だけ位相をずらした位置検出用信号に応じて回転子の位置検出を行うことにより、リンギングノイズの影響を受けないタイミングで位置検出を実行することが可能になり、それにより、リンギングノイズの影響を回避しながら、回転子の位置を適切に検出することができる。その結果、適切に検出された回転子の位置に応じて駆動信号を生成できるので、リンギングノイズの影響を回避しながら、ブラシレスモータを適切に駆動することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車両用ブラシレスモータの駆動装置1において、所定の期間は、駆動信号に応じて固定子巻線UI、VI、WIへの電圧供給がオフからオンに切り換えられた時から、電圧供給の切換えに伴って固定子巻線に供給される電圧に生じた振動が収束するまでの期間に設定されていることを特徴とする。
【0013】
この車両用ブラシレスモータの駆動装置によれば、駆動信号に応じて固定子巻線への電圧の供給がオフからオンに切り換えられた時から所定の期間が経過し、固定子巻線に供給される電圧に生じたリンギングノイズが収束したときに、位置検出が実行される。したがって、電圧検出手段によって検出される電圧にリンギングノイズによる影響が及ばないタイミングで位置検出を実行できるので、回転子の適切な位置検出を確実に実行することができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の車両用ブラシレスモータの駆動装置において、位置検出用信号生成手段および位置検出手段が設けられたマイクロコンピュータをさらに備えていることを特徴とする。
【0015】
この車両用ブラシレスモータの駆動装置によれば、位置検出用信号は、マイクロコンピュータに設けられた位置検出用信号生成手段によって生成され、位置検出は、同じくマイクロコンピュータに設けられた位置検出手段によって実行される。すなわち、位置検出用信号の生成および位置検出用信号に応じた位置検出は、マイクロコンピュータにおける処理のみで実行することができる。したがって、マイクロコンピュータの出力ポートが位置検出用信号の出力に占有されないので、出力ポートを他の用途に使用することができる。また、同じ理由により、位置検出のための新規の構成を付加する必要がないので、駆動装置をより簡素に構成でき、駆動装置の製造コストを削減することができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の車両用ブラシレスモータの駆動装置において、駆動信号生成手段はマイクロコンピュータ50に設けられ、駆動信号と位置検出用信号の間の位相のずれを所定の期間に維持するために、駆動信号と位置検出用信号を生成するタイミングを、定期的に再設定する再設定手段(マイコン50)をさらに備えていることを特徴とする。
【0017】
この車両用ブラシレスモータの駆動装置によれば、駆動信号もマイクロコンピュータで生成され、駆動信号および位置検出用信号が出力されるタイミングは、再設定手段によって定期的に再設定される。これにより、駆動信号および位置検出用信号の間の位相のずれが、例えばマイコンの位置検出用信号の出力に用いられるレジスタに不具合が生じたときなどに、所定の期間から変化した場合でも、再設定により所定の期間に戻されるので、リンギングノイズの影響を受けないタイミングで位置検出を継続して実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る車両用ブラシレスモータの駆動装置およびこれによって駆動されるブラシレスモータを示す回路図である。
【図2】図1のブラシレスモータの駆動装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図3】検出用電圧および出力電圧などを示すタイミングチャートである。
【図4】モータ駆動制御処理を示すフローチャートである。
【図5】再設定制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用ブラシレスモータの駆動装置について、図面を参照しながら説明する。本実施形態による車両用ブラシレスモータの駆動装置(以下、単に「駆動装置」という)1は、車両(図示せず)に搭載されており、図1に示すように、電子制御装置2に設けられ、ブラシレスモータ10に接続されている。
【0020】
ブラシレスモータ10は、U相、V相およびW相のそれぞれの固定子巻線UI、VIおよびWIを有する固定子11と、永久磁石を有する回転子(図示せず)とを備えている。各固定子巻線の一方の端子は相互に接続され、他方の端子は、駆動装置1の後述する駆動回路20に接続されている。回転子は、駆動装置1によって各固定子巻線への通電を制御されることにより回転する。
【0021】
電子制御装置2には、バッテリー(図示せず)からの電圧を所定の電源電圧VBに変圧して供給する電源部3と、電源電圧VBよりも低電圧の接地電圧GNDを有する接地部4が設けられている。駆動装置1は、電源部3と接地部4の間に設けられ、ブラシレスモータ10に電圧を供給するための駆動回路20と、後述する基準電圧VRを生成するための基準電圧生成回路30と、ブラシレスモータ10の各相に供給される電圧と基準電圧VRとを比較する比較回路40と、比較回路40による比較結果に応じて、駆動回路20によるブラシレスモータ10の各相への電圧供給を制御するマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)50と、を備えている。
【0022】
駆動回路20は、電源部3および接地部4の間に直列に接続された第1スイッチ素子Tr1および第2スイッチ素子Tr2を有しており、第1スイッチ素子Tr1は電源部3側に配置され、Pチャンネル型のMOSFETで構成されている。また、第2スイッチ素子Tr2は接地部4側に配置され、Nチャンネル型のMOSFETで構成されている。また、第1スイッチ素子Tr1のドレインが電源部3に接続され、第2スイッチ素子Tr2のソースが接地部4に接地されており、第1スイッチ素子Tr1のソースと第2スイッチ素子Tr2のドレインの間の中間端子21が、固定子巻線UIの他方の端子に接続されている。
【0023】
また、電源部3および接地部4の間には、第1および第2スイッチ素子Tr1、Tr2とそれぞれ同様の第3および第4スイッチ素子Tr3、Tr4と、第5および第6スイッチ素子Tr5、Tr6とが設けられている。第3および第4スイッチ素子Tr3、Tr4の間の中間端子22は、固定子巻線VIの他方の端子に接続され、第5および第6スイッチ素子Tr5、Tr6の間の中間端子23は、固定子巻線WIの他方の端子に接続されている。
【0024】
基準電圧生成回路30は、電源部3および接地部4の間に直列に設けられた第1および第2抵抗R1、R2を有しており、第1抵抗R1が電源部3側に、第2抵抗R2が接地部4側にそれぞれ配置されている。基準電圧生成回路30は、第1および第2抵抗R1、R2の抵抗値に応じて電源電圧VBを分割し、電源電圧VBよりも低い電圧を、両抵抗R1、R2の間の中間端子31から出力する。
【0025】
比較回路40は、第1〜第3コンパレータ41〜43を有している。第1コンパレータ41の非反転入力端子には、駆動回路20の中間端子21から出力され、固定子巻線UIの他方の端子に印加される端子電圧VUが、第3抵抗R3を介して、U相の検出電圧VUaとして検出されて入力される。また、反転入力端子には、基準電圧生成回路30の中間端子31から出力された電圧が、第4抵抗R4を介して、基準電圧VRとして入力される。
【0026】
第1コンパレータ41は、基準電圧VRと検出電圧VUaとを比較した比較結果を表す位置検出信号VUoutを出力する。具体的には、検出電圧VUaが基準電圧VRを下回っているときには、電圧レベルの低い(以下「Lo」という)位置検出信号VUoutを出力し、検出電圧VUaが基準電圧VRを上回ると電圧レベルの高い(以下「Hi」という)位置検出信号VUoutを出力する。
【0027】
また、第2コンパレータ42の非反転入力端子には、固定子巻線VIに印加される端子電圧VVが、第5抵抗R5を介して、V相の検出電圧VVaとして検出されて入力され、反転入力端子には、基準電圧生成部30からの電圧が、第6抵抗R6を介して基準電圧VRとして入力される。それにより、第2コンパレータ42は、基準電圧VRと検出電圧VVaとの比較結果を表す位置検出信号VVoutを出力する。
【0028】
また、第1および第2コンパレータ41、42と同様、第3コンパレータ43の非反転入力端子には、固定子巻線VIに印加される端子電圧VWが、第7抵抗R7を介して、W相の検出電圧WVaとして検出されて入力され、反転入力端子には、基準電圧生成部30からの電圧が、第8抵抗R8を介して基準電圧VRとして入力される。それにより、第3コンパレータ43は、基準電圧VRと検出電圧WVaとの比較結果を表す位置検出信号VWoutを出力する。
【0029】
また、マイコン50には、エンジンを始動させるためのイグニッションスイッチ7が接続されており、そのオン/オフを表す出力信号IGが入力される。
【0030】
マイコン50は、本実施形態において、駆動信号生成手段、位置検出用信号生成手段、位置検出手段、および再設定手段を構成するものであり、CPU、RAM、ROM(いずれも図示せず)および入出力インターフェースなどを有している。上述した比較回路40やイグニッションスイッチ7などからの信号は、入力インターフェースでA/D変換や成形がなされた後、CPUに入力される。CPUは、これらの入力信号に応じ、ROMに記憶された制御処理などに従って、各種の演算処理を実行する。
【0031】
マイコン50は、入力インターフェースの1つとして検出ポート51を有しており、上述した比較回路40の第1〜第3コンパレータ41〜43から出力された位置検出信号VUout、VVout、VWoutは、検出ポート51からマイコン50に入力される。また、マイコン50は、電源部3側の第1、第3および第5スイッチ素子Tr1、Tr3、Tr5をそれぞれオン/オフするための電源部側切換え信号を生成して出力する電源部側信号生成部52と、接地部4側の第2、第4および第6スイッチ素子Tr2、Tr4、Tr6をそれぞれオン/オフするための接地部側切換え信号を生成して出力する接地部側信号生成部53と、ブラシレスモータ10の固定子巻線UI、VI、WIに供給される電圧をオン/オフすることで各固定子巻線に流れる電流の大きさを調整するために、電流調整用のパルス幅変調信号(以下「電流調整PWM信号」という)(駆動信号)を生成して出力する電流調整信号生成部54(駆動信号生成手段)を有している。
【0032】
電源部側信号生成部52は、比較回路40から入力された位置検出信号VUout、VVoutおよびVWoutに基づいて、U相、V相およびW相用の電源部側切換え信号をそれぞれ生成して出力する。電源部側信号生成部52から出力されたU相用の電源部側切換え信号は、プリドライバ回路5およびレベル変換回路6を介して、第1スイッチ素子Tr1のゲートに印加される。第1スイッチ素子Tr1は、印加された信号の電圧レベルに基づいてオン/オフされる。同様に、V相およびW相用の電源部側切換え信号は、プリドライバ回路5およびレベル変換回路6を介して、第3および第5スイッチ素子Tr3、Tr5のゲートにそれぞれ印加され、両者Tr3、Tr5は、印加された信号の電圧レベルに基づいてそれぞれオン/オフされる。
【0033】
接地部側信号生成部53は、電源部側信号生成部52と同様、位置検出信号VUout、VVout、VWoutに基づいて、接地部側切換え信号をブラシレスモータ10の相ごとにそれぞれ生成して出力する。出力されたU相用の接地部側切換え信号は、第1AND回路61に入力され、同じく出力されたV相およびW相用の接地部側切換え信号は、第2および第3AND回路62、63にそれぞれ入力される。
【0034】
また、マイコン50は検出部55を有しており、この検出部55は、位置検出信号VUout、VVout、VWoutがLoからHiに切り換わるタイミングをそれぞれ検出し、検出したタイミングに応じてブラシレスモータ10の回転数を算出する。
【0035】
電流調整信号生成部54は、電流調整PWM信号を生成して第1〜第3AND回路61〜63に出力する。電流調整PWM信号のデューティ比は、算出したブラシレスモータ10の回転数が目標回転数になるように、固定子巻線UI、VI、WIに通電させるべき電流の大きさに基づいて、設定される。
【0036】
第1AND回路61は、入力されたU相用の接地部側切換え信号および電流調整PWM信号の論理積を表す信号を出力する。同様に、第2および第3AND回路62、63からは、V相用の接地部側切換え信号および電流調整PWM信号の論理積を表す信号と、W相用の接地部側切換え信号および電流調整PWM信号の論理積を表す信号とが、それぞれ出力される。
【0037】
第1〜第3AND回路61〜63から出力された信号は、プリドライバ回路5を介して、第2、第4および第6スイッチ素子Tr2、Tr4、Tr6にそれぞれ入力され、各信号の電圧レベルおよびデューティ比に基づいて、第2、第4および第6スイッチ素子Tr2、Tr4、Tr6がそれぞれオン/オフされる。
【0038】
また、マイコン50の上述した検出部55では、電流調整PWM信号と同じ波形を有する内部PWM信号(位置検出用信号)が、電流調整PWM信号に対して第1の所定時間TMREF1だけ位相を遅らせて生成される。この第1の所定時間TMREF1は、例えば、電流調整PWM信号の周波数が20kHzのときには7〜10μsecに設定される。検出部55は、後述するように、内部PWM信号に基づくタイミングで、検出電圧VUa、VVa、VWaに応じ、位置検出信号VUout、VVout、VWoutの電圧レベルの切換えを検出する。
【0039】
次いで、上述した駆動装置1の動作について説明する。図2は、ブラシレスモータ10の固定子巻線UI、VI、WIへの通電パターンの切換えに伴う第1〜第6スイッチ素子Tr1〜Tr6のオン/オフのタイミングや、検出電圧VUa、VVa、WVaの変化を、時系列に沿って示すタイミングチャートである。なお、前述したように、第2、第4および第6スイッチ素子Tr2、Tr4、Tr6のゲートに印加される信号は、接地部側切換え信号と電流調整PWM信号との論理積に基づくものであるので、各検出電圧は、電流調整PWM信号のデューティ比に応じたパルス信号として、比較回路40に入力されるものであるが、説明の便宜上、同図には、連続して変化する信号として示している。
【0040】
同図に示すように、ブラシレスモータ10のW相からU相に電流が流れる通電パターンのときは、第1スイッチ素子Tr1がオフされるとともに第2スイッチ素子Tr2がオンされている。また、第3スイッチ素子Tr3および第4スイッチ素子Tr4がいずれもオフされている。また、第5スイッチ素子Tr5がオンされるとともに第6スイッチ素子Tr6がオフされている。これにより、電源部3と接地部4の間に、固定子巻線WIおよび固定子巻線UIを経由する通電経路が構成されている。具体的には、電源部3、第5スイッチ素子Tr5、中間端子23、固定子巻線WI、固定子巻線UI、中間端子21、第2スイッチ素子Tr2および接地部4を、順に経由して電流が流れる。
【0041】
この状態から、タイミングt1において、ブラシレスモータ10の通電パターンを、W相からV相への通電パターンに切り換えるときには、第1スイッチ素子Tr1をオフに維持するとともに第2スイッチ素子Tr2をオフに切り換える。また、第3スイッチ素子Tr3をオフに維持するとともに第4スイッチ素子Tr4をオンに切り換える。さらに、第5スイッチ素子Tr5をオンに維持するとともに第6スイッチ素子Tr6をオフに維持する。
【0042】
この時、第2スイッチ素子Tr2をオフしたことにより、固定子巻線UIのインダクタンスによって、固定子巻線UIに一時的に大きなサージ電流が流れ、検出電圧VUaが一時的に大きく上昇し、その直後に大きく降下する。そして、固定子巻線UIに、固定子巻線UIのインダクタンスなどに起因する誘起電圧が誘起され、その結果、検出電圧VUaは、回転子の回転に伴って徐々に上昇する。一方、第4スイッチ素子Tr4がオンされ、固定子巻線VIが接地されたことにより、検出電圧VVaは、接地部4の接地電圧GND付近まで降下する。また、固定子巻線WIの駆動回路20側の他方の端子は、通電パターンの切換え前と同じく通電経路であるので、検出電圧WVaは、切換え前と同じ電圧に維持される。
【0043】
また、タイミングt2において、U相からV相への通電パターンに切り換えるときには、第1スイッチ素子Tr1をオンに切り換えるとともに第2スイッチ素子Tr2をオフに維持する。また、第3スイッチ素子Tr3をオフに維持するとともに第4スイッチ素子Tr4をオンに維持する。また、第5スイッチ素子Tr5をオフに切り換えるとともに第6スイッチ素子Tr6をオフに維持する。これにより、固定子巻線UIおよび固定子巻線VIを経由する通電経路が構成され、検出電圧VUaは一定の大きさに維持される。また、検出電圧VVaは接地電圧GND付近に維持される。また、第5スイッチ素子Tr5がオフされたことにより、固定子巻線WIに印加される電圧は接地電圧GNDまで降下し、その直後に誘起電圧が生じる。この誘起電圧は回転子の回転に伴って徐々に低下する。
【0044】
さらに、タイミングt3において、U相からW相への通電パターンに切り換えるときには、第1スイッチ素子Tr1をオンに維持するとともに第2スイッチ素子Tr2をオフに維持する。また、第3スイッチ素子Tr3をオフに維持するとともに第4スイッチ素子Tr4をオフに切り換える。また、第5スイッチ素子Tr5をオフに維持するとともに第6スイッチ素子Tr6をオンに切り換える。これにより、固定子巻線UI、WIを経由する通電経路が構成され、検出電圧VUaは切換え前と同じに維持される。また、検出電圧VVaは、タイミングt1からt2にかけての検出電圧VUaと同様に変動する。また、検出電圧WVは、第6スイッチ素子Tr6がオンされたことにより、接地電圧GND付近まで降下する。
【0045】
また、タイミングt4においてV相からW相への通電パターンに切り換えるときには、第1スイッチ素子Tr1をオフに切り換えるとともに第2スイッチ素子をオフに維持し、また、第3スイッチ素子Tr3をオンに切り換えるとともに第4スイッチ素子Tr4をオフに維持し、また、第5スイッチ素子Tr5をオフに維持するとともに第6スイッチ素子Tr6をオンに維持する。また、タイミングt5において、V相からU相への通電パターンに切り換えるときには、第1スイッチ素子Tr1をオフに維持するとともに第2スイッチ素子をオンに切り換え、また、第3スイッチ素子Tr3をオンに維持するとともに第4スイッチ素子Tr4をオフに維持し、また、第5スイッチ素子Tr5をオフに維持するとともに第6スイッチ素子Tr6をオフに切り換える。これにより、検出電圧VUa、VVaおよびWVaは、それぞれの通電パターンにおけるスイッチ素子Tr1〜Tr6のオン/オフの組合せに応じて変動する。
【0046】
以上のような通電パターンの切換えを、タイミングt6以降も周期的に繰り返すことによって、ブラシレスモータ10の回転数が目標回転数になるように制御される。また、目標回転数が変化すると、それに応じて電流調整PWM信号のデューティ比が再設定され、再設定されたデューティ比に基づいて、ブラシレスモータ10の各固定子巻線に流れる電流の大きさが制御される。
【0047】
図3(A)は、上述したタイミングチャートの区間Aを、検出電圧VUaについて、電流調整PWM信号などとともに拡大して示している。前述したように、第2、第4および第6スイッチ素子Tr2、Tr4、Tr6のゲートに印加される信号は、接地部側信号生成部と電流調整PWM信号の論理積に基づくものであるので、同図に示すように、検出電圧VUaは、電流調整PWM信号のデューティ比に基づくパルス信号である。
【0048】
タイミングt1において発生したサージ電流が収束すると、誘起電圧が固定子巻線UIに生じ、回転子の回転に伴って徐々に上昇する。同図に示すように、タイミングt1とタイミングt2の間のタイミングt1aにおいて、電流調整PWM信号がオンに切り換えられると、切換え直後に、固定子巻線UIに誘起される誘起電圧にリンギングノイズが生じ、検出電圧VUaが基準電圧VRを一時的に上回ることによって、位置検出信号VUoutの電圧レベルが一時的にHiに切り換えられる。マイコン50では、位置検出信号VUoutの切換えは、タイミングt1aから若干、遅延して、タイミングt1bにおいて検出される。リンギングノイズによる検出電圧VUaの振動はすぐに収束し、検出電圧VUaが基準電圧VRをすぐに下回ることによって、位置検出信号VUoutの電圧レベルはLoに切り換えられる。
【0049】
また、マイコン50では、前述したように、電流調整PWM信号と同じ波形の内部PWM信号が、電流調整PWM信号から第1の所定時間TMREF1だけ位相を遅らせて生成されている。マイコン50は、この内部PWM信号に基づいて、通電パターンの切換えを検出する。具体的には、電流調整PWM信号がオンに切り換えられたタイミングt1aから第1の所定時間TMREF1だけ遅延したタイミングt1cにおいて、内部PWM信号がオンに切り換わったときに、マイコン50の検出部55は、検出ポート51での位置検出信号VUoutの検出に割り込むことによって、位置検出信号VUoutの電圧レベルを検出し、この検出を、タイミングt1cから所定の検出期間DETECTが経過したタイミングt1dまで実行する。
【0050】
なお、第1の所定時間TMREF1は、次に述べるように設定されている。すなわち、出力電圧Voutの電圧レベルの切換えが、リンギングノイズの発生から若干、遅延して検出されることや、リンギングノイズが収束して検出電圧VUaが安定するまでの期間を考慮して、リンギングノイズの影響を受けた出力電圧Voutによる誤判定を回避できるように、第1の所定時間TMREF1が設定されている。
【0051】
上述したタイミングt1bでは、リンギングノイズの影響により検出電圧VUoutが一時的にHiに切り換えられたものの、位置検出を実際に実行するタイミングt1c〜t1Dでは位置検出信号VUoutはLoであるので、このときには通電パターンはまだ切り換わっていないものと判定される。
【0052】
そして、タイミングt1eにおいて、電流調整PWM信号がオフに切り換えられるとともに検出電圧VUaは低下し、タイミングt1cから第1の所定時間TMREF1が経過したタイミングt1fにおいて内部PWM信号もオフに切り換えられる。
【0053】
そして、タイミングt1aから第3の所定時間TMREF3が経過したタイミングt1gにおいて、再度、電流調整PWM信号がオンに切り換えられるのに伴って、リンギングノイズの影響を受けた検出電圧VUaが生じ、若干、遅延したタイミングt1hにおいて位置検出信号VUoutがHiに切り換えられる。タイミングt1gでは、誘起電圧のレベルがタイミングt1aのときよりも高くなっているので、位置検出信号VUoutは、タイミングt1h以降、リンギングノイズが収束してもHiに維持され、したがって、タイミングt1i〜t1jでの位置検出のときにも、検出電圧VUoutはHiであることが検出される。このように、検出期間DETECTの間に位置検出信号VUoutの電圧レベルがHiであることが検出されたときに、回転子の固定子巻線UI、VI、WIに対する相対的な位置が検出され、通電パターンが切り換わったものと検出部55は判定する。
【0054】
そして、タイミングt1kにおいて、電流調整PWM信号がオフに切り換えられるとともに検出電圧VUaが低下し、タイミングt1kから若干、遅延して位置検出信号VUoutがLoに切り換えられる。また、タイミングt1lにおいて、内部PWM信号がオフに切り換えられる。また、タイミングt1l以降も、検出電圧VUaおよび基準電圧VRに応じて出力される位置検出信号VUoutの電圧レベルと、内部PWM信号がオンに切り換えられるタイミングとに応じて、通電パターンの切換えが検出される。
【0055】
また、上述した通電パターン切換えの検出は、検出電圧VVaについても実行され、例えばタイミングt3〜t4の間など、U相からV相への通電パターンに制御されている場合に、位置検出信号VVoutの電圧レベルがHiに切り換わったことが検出されたときに、検出部55は、回転子と固定子11の位置関係が正常であることを検出し、ブラシレスモータ10が適切に制御されているものと判定される。同様に、検出電圧WVaについても実行され、例えばタイミングt5〜t6の間など、V相からU相への通電パターンに制御されている場合に、位置検出信号VWoutの電圧レベルがHiに切り換わったときに、検出部55は、ブラシレスモータ10が適切に制御されているものと判定する。
【0056】
図4は、マイコン50で実行されるブラシレスモータ10の駆動制御処理を示している。この処理は、ブラシレスモータ10の回転数が目標回転数になるように、回転子と固定子11の相対的な位置関係に応じて、各固定子巻線に印加する電圧を制御するものであり、所定の周期で繰り返し実行される。この処理は、U相、V相およびW相のそれぞれについて実行される。以下、代表してU相についての駆動制御処理について説明する。
【0057】
この処理では、まず、ステップ1(S1と図示。以下同じ)において、出力信号IGに基づいて、イグニッションスイッチ7がオンされているか否かを判別する。この答がNoで、ブラシレスモータ10の駆動が要求されていないときには、信号出力許可フラグF_PWMを「1」にセットし(ステップ2)、本処理を終了する。
【0058】
一方、上記ステップ1の答がYesで、ブラシレスモータ10を駆動すべきときには、上記の信号出力許可フラグF_PWMが「1」であるか否かを判別する(ステップ3)。この信号出力許可フラグF_PWMは、電流調整PWM信号の生成が許可されているときに「1」にセットされるものである。この答がYesのときには、そのときのブラシレスモータ10の目標回転数に応じ、固定子巻線UIに通電させるべき電流の大きさに基づいて、電流調整PWM信号のデューティ比を設定する(ステップ4)。
【0059】
このステップ4では、電流調整PWM信号がオンに切り換えられたときから、リンギングノイズが収束し、内部PWM信号に基づく位置検出信号VUoutの検出が終了するまでの期間よりも、電流調整PWM信号がオン状態に維持される期間が長くなるように、デューティ比を設定する。これにより、電流調整PWM信号がオン状態に維持される期間が、後述する第2の所定時間TMREF2よりも長くなるように制御され、電流調整PWM信号がオン状態に維持されている期間内に検出期間DETECTを確保できるので、位置検出を確実に実行することが可能になる。
【0060】
次いで、通電パターンに基づいて駆動回路20の第1および第2スイッチ素子Tr1、Tr2を駆動し(ステップ5)、固定子巻線UIへの電圧を供給または遮断するように制御するとともに、上述したステップ4で設定したデューティ比に基づいて、電流調整PWM信号を生成して出力する(ステップ6)。また、このステップ6では、内部PWM信号の生成も同時に開始される。この内部PWM信号は、前述したように、電流調整PWM信号と同じ波形を有しており、それよりも第1の所定時間TMREF1だけ位相を遅らせて生成される。
【0061】
次に、検出タイマのタイマ値TMDETを0にセットし(ステップ7)、タイマ値TMDETが第1の所定時間TMREF1よりも大きいか否かを判別する(ステップ8)。この答がYesで、上記のステップ7で検出タイマのタイマ値TMDETが0にセットされてから第1の所定時間TMREF1が経過したときには、内部PWM信号に基づいて、検出ポート51での位置検出信号VUoutの検出に割込みをかけることによって、位置検出信号VUoutの電圧レベルがHiであるか否かを判別する(ステップ9)。この答がNoのときには、タイマ値TMDETが第2の所定時間TMREF2よりも大きいか否かを判別する(ステップ10)。この第2の所定時間TMREF2は、電流調整PWM信号がオンに切り換えられたときから、リンギングノイズが収束し、さらに検出期間DETECTが終了するまでの期間に設定されている。
【0062】
この答がNoのとき、すなわち、内部PWM信号に基づく割込みによる位置検出信号VUoutの検出期間DETECTがまだ終了していないときには、電流調整PWM信号などの出力がすでに開始されていることを表すために、信号出力許可フラグF_PWMを「0」にセットし(ステップ11)、本処理を終了する。これにより、本処理の次回以降のループにおいて、前記ステップ3の答がNoになり、前記ステップ2で信号出力許可フラグE_PWMが再度、「1」にセットされるまで、前記ステップ4〜ステップ7がスキップされる。
【0063】
一方、前記ステップ8の答がNoで、第1の所定時間TMREF1が経過していないときには、リンギングノイズがまだ収束していないものとして、上記ステップ11を実行して本処理を終了する。
【0064】
一方、前記ステップ9の答がYesで、位置検出信号VUoutの電圧レベルがHiであることを、検出期間DETECT内に検出したときには、U相に対応した検出期間中であるか否かを判別する(ステップ12)。すなわち、例えば図2の区間Aのように、U相に生じた誘起電圧に基づいて、通電パターンの切換えを検出することが可能な期間であるか否かを判別する。
【0065】
この答がYesのときには、回転子の各固定子巻線に対する相対的な位置関係が正常で、通電パターンが切り換えられたことを検出する(ステップ13)。そして、タイマ値TMDETが第3の所定時間TMREF3よりも大きいか否かを判別する(ステップ14)。第3の所定時間TMREF3は、電流調整PWM信号の周期を示しており、例えば、その周波数が20kHzのときには50μsecに設定される。
【0066】
この答がNoで、前記ステップ7で検出タイマがセットされてから第3の所定時間TMREF3がまだ経過していないときには、そのまま本処理を終了する。一方、上記ステップ14の答がYesで、第3の所定時間TMREF3が経過したときには、前記ステップ2で信号出力許可フラグF_PWMを「1」にセットし、本処理を終了する。一方、上記ステップ12の答がNoで、U相に対応した検出期間でないときには、上記ステップ14以降を実行し、本処理を終了する。
【0067】
一方、前記ステップ10の答がYesで、位置検出信号VUoutの検出期間DETECTが終了するまで、位置検出信号VUoutがLoに維持され、通電パターンの切換えが検出されなかったときには、上記ステップ14以降を実行し、本処理を終了する。
【0068】
図5は、マイコン50で実行される再設定制御処理を示すフローチャートである。この処理は、電流調整PWM信号および内部PWM信号の位相のずれを一定に維持するために、両信号を出力するタイミングを定期的に再設定するためのものであり、所定の周期で繰り返し実行される。この処理もまた、U相、V相およびW相ごとに実行される。
【0069】
この処理では、まず、リセットタイマのタイマ値TMRESETが第4の所定時間TMREF4よりも大きいか否かを判別する(ステップ21)。この第4の所定時間TMREF4は、電流調整PWM信号および内部PWM信号の出力タイミングの再設定の周期を示しており、電流調整PWM信号の周期である第3の所定時間TMREF3よりも長い期間に設定されている。
【0070】
この答がYesで、リセットタイマが0にセットされてから第4の所定時間TMREF4が経過したときには、電流調整PWM信号および内部PWM信号の生成をいずれも停止し(ステップ22)、そのときの車両の運転状態などに応じたブラシレスモータ10の目標回転数に応じて、電流調整PWM信号のデューティ比を再設定し(ステップ23)、再設定したデューティ比での電流調整PWM信号の出力と、電流調整PWM信号から第1の所定時間TMREF1だけ位相を遅らせた内部PWM信号の生成とを開始する(ステップ24)。
【0071】
次いで、リセットタイマのタイマ値TMRESETおよび検出タイマのタイマ値TMDETをいずれも0にセットする(ステップ25)とともに、信号出力許可フラグF_PWMをリセットする(ステップ26)。これにより、前述したモータ駆動制御処理のステップ2で信号出力許可フラグF_PWMが「1」にセットされるまで、上記ステップ23で設定されたデューティ比に応じたブラシレスモータ10の制御が実行される。
【0072】
一方、前記ステップ21の答がNoで、タイマ値TMRESETが0にセットされたときから第4の所定時間TMREF4がまだ経過していないときには、そのまま本処理を終了する。
【0073】
以上のように、本実施形態に係る駆動装置1によれば、電流調整PWM信号から第1の所定時間TMREF1だけ位相を遅らせた内部PWM信号がオンに切り換えられたタイミング、すなわち、リンギングノイズの影響を受けない検出期間DETECTにおいて、位置検出を実行することができるので、リンギングノイズの影響を回避しながら、回転子の固定子巻線UI、VI、WIに対する相対的な位置を、通電パターンの切換えのタイミングとして適切に検出することができる。その結果、適切に検出された通電パターンの切換えのタイミングに応じて、電流調整PWM信号を生成できるので、リンギングノイズの影響を回避しながら、ブラシレスモータ10を適切に駆動することができる。
【0074】
また、内部PWM信号の生成と、内部PWM信号に基づいた通電パターンの切換えのタイミングの検出は、マイコン50の検出部55によって実行される。すなわち、内部PWM信号の生成およびそれに応じた位置検出は、マイコン50における処理のみで実行することができる。したがって、マイコン50の出力ポートが内部PWM信号の出力に占有されないので、出力ポートを他の用途に使用することができる。また、同じ理由により、位置検出のための構成を付加する必要がないので、駆動装置1をより簡素に構成でき、駆動装置1の製造コストを削減することができる。
【0075】
また、電流調整PWM信号および内部PWM信号が出力されるタイミングは、第4の所定時間TMREF4ごとに定期的に再設定される。これにより、例えばマイコン50のPWM信号の出力に用いられるレジスタに不具合が生じたときなどに、電流調整PWM信号および内部PWM信号の間の位相のずれが、第1の所定時間TMREF1から変化した場合でも、再設定により第1の所定時間TMREF1に戻されるので、リンギングノイズの影響を受けないタイミングでの位置検出を確実に実行することができる。
【0076】
なお、上述した実施形態はあくまで一例であり、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 駆動装置
10 ブラシレスモータ
20 駆動回路(電圧供給手段)
50 マイクロコンピュータ(再設定手段)
54 電流調整信号生成部(駆動信号生成手段)
55 検出部(位置検出用信号生成手段、位置検出手段)
UI、VI、WI 固定子巻線
TMREF1 第1の所定時間(所定の期間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定子巻線に電圧を供給することによって回転子を回転させる車両に搭載された車両用ブラシレスモータの駆動装置であって、
前記複数の固定子巻線への電圧の供給をオン/オフするための駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、
当該生成された駆動信号に応じて、前記複数の固定子巻線に電圧を供給する電圧供給手段と、
前記複数の固定子巻線に供給される電圧をそれぞれ検出する電圧検出手段と、
前記駆動信号から所定の期間だけ位相をずらした位置検出用信号を生成する位置検出用信号生成手段と、
当該生成された位置検出用信号および前記電圧検出手段によって検出された電圧に応じて、前記回転子の前記複数の固定子巻線に対する相対的な位置を検出する位置検出手段と、
を備え、
前記駆動信号生成手段は、前記位置検出手段によって検出された、前記回転子の前記相対的な位置に応じて、前記駆動信号を生成することを特徴とする車両用ブラシレスモータの駆動装置。
【請求項2】
前記所定の期間は、前記駆動信号に応じて前記固定子巻線への電圧供給がオフからオンに切り換えられた時から、当該電圧供給の切換えに伴って前記固定子巻線に供給される電圧に生じた振動が収束するまでの期間に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブラシレスモータの駆動装置。
【請求項3】
前記位置検出用信号生成手段および前記位置検出手段が設けられたマイクロコンピュータをさらに備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ブラシレスモータの駆動装置。
【請求項4】
前記駆動信号生成手段は前記マイクロコンピュータに設けられ、
前記駆動信号と前記位置検出用信号の間の位相のずれを前記所定の期間に維持するために、前記駆動信号と前記位置検出用信号を生成するタイミングを、定期的に再設定する再設定手段をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載の車両用ブラシレスモータの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−110938(P2013−110938A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256426(P2011−256426)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】