説明

車両用ブレーキ装置

【課題】電磁弁、液圧センサおよび電子制御ユニットをコンパクトにまとめて車両への組付け時の設置スペースを小さくし、組付け作業性を高め、通電不良が生じることのないようにする。
【解決手段】液圧ブースタ13のケーシング17に一体に設けられる張出し部17aに、該張出し部17aとの間に収納室78を形成するカバー77が取付けられ、電磁弁54および液圧センサ60はその一部を収納室78に突出させて張出し部17aに取付けられ、電子制御ユニット74は収納室78内でカバー77もしくは張出し部17aに取付けられ、外部導線側コネクタのコネクタハウジングと、カバー側コネクタのコネクタハウジングとの間に収納室に通じるコネクタ室が形成され、カバー77もしくは張出し部17aに、収納室78および外部間の通気を可能とした通気孔が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ操作部材のブレーキ操作に応じて液圧発生源の出力液圧を調圧する液圧ブースタと、該液圧ブースタの出力液圧で作動するマスタシリンダと、自動ブレーキ制御および回生ブレーキ制御の少なくとも一方を実行するための電磁弁および液圧センサと、液圧センサの検出値を少なくとも含む情報に基づいて前記電磁弁の作動を制御する電子制御ユニットとを備える車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用ブレーキ装置は、たとえば特許文献1等で既に知られている。
【特許文献1】特開2000−219125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1で開示された車両用ブレーキ装置では、マスタシリンダおよび液圧ブースタとは別に自動ブレーキ制御を行うための電磁弁および液圧センサが配置されている。しかるに車両への組付け時の設置スペースの問題および組付け作業性を考慮すると、全体をコンパクトにまとめておくことが望ましい。
【0004】
この際、電磁弁および液圧センサとともに電子制御ユニットをコンパクトにまとめるようにすると、電子制御ユニットならびに該電子制御ユニットへの電磁弁および液圧センサの接続部をカバーで覆って防水性を得ることが必要となり、そのような構造では、カバーに設けられるカバー側コネクタに外部導線に連なる外部導線側コネクタを接続することとなる。この際、両コネクタ間に生じるコネクタ室を、外部からの水の浸入による通電不良を防止すべく密閉状態に保持すると、通電に伴う温度変化によりコネクタ室の内圧が変化し、両コネクタのコネクタハウジングがそれぞれ変形し、コネクタハウジング間のシールが不充分となる可能性がある。
【0005】
また外部導線は導線が絶縁チューブで被覆されて成るものであり、該外部導線の外部導線側コネクタとは反対側の端部が水没したり、前記端部に水が付着したりすると、前記コネクタ室の内圧変化に伴って、絶縁チューブおよび導線間の間隙での毛細管現象により、外部の水がコネクタ室に吸い込まれる可能性がある。
【0006】
電子制御ユニットを本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、電磁弁、液圧センサおよび電子制御ユニットをコンパクトにまとめて、車両への組付け時の設置スペースを小さくし、組付け作業性を高めるとともに、通電不良が生じることのないようにした車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ブレーキ操作部材のブレーキ操作に応じて液圧発生源の出力液圧を調圧する液圧ブースタと、該液圧ブースタの出力液圧で作動するマスタシリンダと、自動ブレーキ制御および回生ブレーキ制御の少なくとも一方を実行するための電磁弁および液圧センサと、液圧センサの検出値を少なくとも含む情報に基づいて前記電磁弁の作動を制御する電子制御ユニットとを備える車両用ブレーキ装置において、前記液圧ブースタのケーシングに一体に設けられて液圧ブースタの側方に張り出す張出し部に、該張出し部との間に収納室を形成する合成樹脂製のカバーがシール部材を介して取付けられ、前記電磁弁および前記液圧センサがその一部を前記収納室に突出させて前記張出し部に取付けられ、前記電子制御ユニットは前記収納室内で前記カバーもしくは前記張出し部に取付けられ、外部導線側コネクタのコネクタハウジングと、前記外部導線側コネクタを液密にかつ着脱可能に接続するようにして前記カバーに設けられるカバー側コネクタのコネクタハウジングとの間に前記収納室に通じるコネクタ室が形成され、前記カバーもしくは前記張出し部に、前記収納室および外部間の通気を可能とした通気孔が設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記通気孔が前記張出し部に設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成に加えて、前記ケーシングが取付けられるダッシュボードに向けて外端を開口せしめるようにして前記通気孔が前記張出し部に設けられることを特徴とする。
【0010】
さらに請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成に加えて、前記通気孔が通気防水素材で形成される閉塞部材で閉じられることを特徴とする。
【0011】
なお実施例のブレーキペダル11は本発明のブレーキ操作部材に対応する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、電磁弁および液圧センサが、液圧ブースタのケーシングに一体に設けられた張出し部に取付けられ、電子制御ユニットが、電磁弁および液圧センサの突出部を覆って張出し部に取付けられるカバーもしくは張出し部に取付けられるので、電磁弁、液圧センサおよび電子制御ユニットを液圧ブースタとともにコンパクトにまとめることができ、車両への組付け時の設置スペースを小さくし、組付け作業性を高めることが可能となる。しかも電磁弁および液圧センサの突出部および電子制御ユニットはカバーで覆われるので、車両搭載時の防水性も得ることができる。またカバーに設けられるカバー側コネクタのコネクタハウジングおよび外部導線側コネクタのコネクタハウジング間に形成されるコネクタ室がカバー内の収納室に連通され、収納室は通気孔によって外部との間の通気が可能であるので、コネクタ室の内圧が変化することが極力抑制されることになり、したがってコネクタハウジングの変形に伴なうシール不良が生じたり、外部導線の絶縁チューブおよび導線間の間隙からの毛細管現象による水の吸込みが生じたりするのを防止することができる。
【0013】
また請求項2記載の発明によれば、通気孔の形成が容易となる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、通気孔内に外部から水や塵埃等が入り込むのを極力防止することができる。
【0015】
さらに請求項4記載の発明によれば、収納室への水の浸入を確実に防止することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図6は本発明の一実施例を示すものであり、図1は車両用ブレーキ装置の全体構成を示すブレーキ液圧系統図、図2はマスタシリンダおよび液圧ブースタをダッシュボードに取付けた状態での縦断側面図、図3は図2の3矢視図、図4は図3の要部拡大図、図5は図4の5−5線断面図、図6は図4の6矢示部拡大図である。
【0018】
先ず図1において、四輪車両のブレーキ装置は、タンデム型であるマスタシリンダMと、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル11から入力されるブレーキ操作力に応じて液圧発生源12の液圧を調圧して前記マスタシリンダMに作用せしめる液圧ブースタ13と、前記ブレーキペダル11および液圧ブースタ13間に介装されるストロークシミュレータ14とを備える。
【0019】
前記マスタシリンダMのシリンダ体16は前端を閉じた有底円筒状に形成されており、液圧ブースタ13が備えるケーシング17の前端に前記シリンダ体16の後端が結合される。シリンダ体16の後端はケーシング17の前部に液密に嵌合されており、シリンダ体16の後端およびケーシング17間には、ケーシング17に液密に嵌合されるセパレータ18、第1スリーブ19および第2スリーブ20が、第1スリーブ19をセパレータ18および第2スリーブ20間に挟みつつ挟持される。
【0020】
シリンダ体16には前端を閉じた第1シリンダ孔21が形成されており、マスタシリンダMは、倍力液圧室22に背面を臨ませるとともに後方側にばね付勢される後部マスタピストン23が第1シリンダ孔21に摺動可能に嵌合されるとともに、後方側にばね付勢されつつ後部マスタピストン23の前方に配置される前部マスタピストン24が第1シリンダ孔21に摺動可能に嵌合されて成り、後部マスタピストン23および前部マスタピストン24間には後部出力液圧室25が形成され、シリンダ体16の前端閉塞部および前部マスタピストン24間に前部出力液圧室26が形成される。
【0021】
シリンダ体16には、後部出力液圧室25に通じる後部出力ポート27と、前部出力液圧室26に通じる前部出力ポート28とが設けられる。さらに後部出力液圧室25で後部マスタピストン23および前部マスタピストン24間には後部マスタピストン23を後方側に付勢する後部戻しばね29が縮設され、前部出力液圧室26でシリンダ体16の前部閉塞端および前部マスタピストン24間には前部マスタピストン24を後方側に向けて付勢する前部戻しばね30が縮設される。
【0022】
マスタシリンダMには、リザーバ31が付設されるものであり、このリザーバ31には、第1、第2および第3液溜め室31a,31b,31cが相互に区画されて形成され、第2液溜め室31bに通じる円筒状の後部接続筒部32ならびに第1液溜め室31aに通じる円筒状の前部接続筒部33がシリンダ体16の軸線方向に間隔をあけた位置で上方に突出するようにして一体に設けられる。
【0023】
後部マスタピストン23には、該後部マスタピストン23が後退限位置に戻ったときに後部出力液圧室25を第2液溜め室31bに通じさせるセンターバルブ34が装着される。また前部マスタピストン24には、該前部マスタピストン24が後退限位置に戻ったときに前部出力液圧室26を第1液溜め室31aに通じさせるセンターバルブ35が装着される。
【0024】
マスタシリンダMの後部出力ポート27は、液圧モジュレータ36を介して右前輪用車輪ブレーキB1および左後輪用車輪ブレーキB2に接続されており、また前部出力ポート28は、液圧モジュレータ36を介して左前輪用車輪ブレーキB3および右後輪用車輪ブレーキB4に接続される。而して液圧モジュレータ36は、後部および前部出力ポート27,28から出力されるブレーキ液圧を自在に制御してブレーキ操作時のアンチロックブレーキ制御を実行し得るとともに、非ブレーキ操作状態でのトラクション制御等の自動ブレーキ制御を実行し得る従来周知のものである。
【0025】
液圧ブースタ13は、マスタシリンダMの後部マスタピストン23を後方から直接押圧することを可能として前端を倍力液圧室22に臨ませるとともにセパレータ18および第2スリーブ20に摺動可能に嵌合される円筒状のバックアップピストン38と、バックアップピストン38に内蔵される調圧弁手段39と、前記倍力液圧室22に接続される倍力液圧発生室40の液圧に基づく反力ならびにブレーキペダル11から入力されるブレーキ操作入力が釣り合うようにして前記調圧弁手段39を調圧作動せしめる制御ピストン41と、前記倍力液圧発生室40の液圧に基づく反力を制御ピストン41に付与するようにして前記調圧弁手段39および制御ピストン41間に介装される第1反力ピストン42と、ブレーキペダル11によるブレーキ操作入力が大きくなったときに第1反力ピストン42からの反力に加えて液圧発生源12の出力液圧および反力ばね44による反力を前記制御ピストン41に付与するようにして前記バックアップピストン38および第1反力ピストン42間に介装される第2反力ピストン43とを備える。
【0026】
ケーシング17には、倍力液圧室22に通じる接続液路45と、液圧発生源12に接続される入力ポート46と、液圧発生室40に通じる出力液路47と、第2スリーブ20の後方でケーシング17内に形成される解放室49に通じる解放ポート48とが、前方から順に間隔をあけて設けられる。
【0027】
前記入力ポート46には液圧発生源12が接続される。この液圧発生源12は、リザーバ31の第3液溜め室31cから作動液をくみ上げるポンプ51と、該ポンプ51の吐出側に接続されるアキュムレータ52とを備えるものであり、ケーシング17内の液圧センサ53で検出されるアキュムレータ52の液圧に応じて前記ポンプ51の作動が制御され、高圧の一定液圧が液圧発生源12から入力ポート46に供給される。また解放ポート48はリザーバ31の第3液溜め室31cに接続される。
【0028】
再び図1に注目して、調圧弁手段39は、前記入力ポート46および倍力液圧発生室40間に介設される増圧弁と、倍力液圧発生室40および解放室49間に介設される減圧弁とから成るものであり、ブレーキペダル11の操作に応じて増圧弁および減圧弁が開閉することにより、液圧発生源12の液圧を調圧して得られる倍力液圧が倍力液圧発生室40で発生することになる。
【0029】
このような液圧ブースタ13では、ブレーキペダル11からのブレーキ操作入力がストロークシミュレータ14を介して制御ピストン41に入力され、制御ピストン41から第1反力ピストン42に前方に向けての押圧力が作用する。而してバックアップピストン38に対する制御ピストン41の前進方向の移動量が所定値未満の状態では、制御ピストン41には第1反力ピストン42だけが当接しており、第1反力ピストン42の前進に応じて調圧弁手段39の減圧弁が閉弁して倍力液圧発生室40および解放室49間が遮断され、制御ピストン41、第1反力ピストン42がさらに前進することで調圧弁手段39の増圧弁が開弁する。
【0030】
また減圧弁の閉弁状態では第1反力ピストン42の前端に倍力液圧発生室40の液圧が作用しており、ブレーキペダル11からのブレーキ操作入力と、倍力液圧発生室40の液圧に基づく液圧力とが釣り合うように第1反力ピストン42および制御ピストン41が後退することで減圧弁が開弁するとともに増圧弁が閉弁し、そのような増圧弁および減圧弁の開閉を繰り返すことで、液圧発生源12の出力液圧がブレーキペダル11からのブレーキ操作入力に応じた倍力液圧に調圧されて倍力液圧発生室40に作用することになる。またバックアップピストン38に対する制御ピストン41の前進方向の移動量が所定値以上になると、制御ピストン41には第1反力ピストン42だけでなく第2反力ピストン43も当接することになり、液圧発生源12からの液圧によって第2反力ピストン43を後方に向けて押圧する液圧力ならびに反力ばね44のばね力も反力として加わるので、制御ピストン41に作用する反力は大きくなる。
【0031】
倍力液圧室22に通じるようにしてケーシング17に設けられている接続液路45は、常閉型のリニアソレノイドである自動ブレーキ加圧用の電磁弁54を介して液圧発生源12に接続されるとともに、リザーバ31の第3液溜め室31cに常閉型のリニアソレノイド弁である回生協調減圧用の電磁弁55を介して接続される。すなわち倍力液圧室22および液圧発生源12間に常閉型の自動ブレーキ加圧用の電磁弁54が介設され、倍力液圧室22およびリザーバ31間に常閉型の回生協調減圧用の電磁弁55が介設される。
【0032】
また倍力液圧発生室40に通じる出力液路47は、直列に接続された自動ブレーキ減圧用の電磁弁56および回生協調加圧用の電磁弁57を介して前記接続液路45に接続されており、自動ブレーキ減圧用の電磁弁56および回生協調加圧用の電磁弁57はともに常開型のリニアソレノイド弁である。
【0033】
自動ブレーキ減圧用の電磁弁56には、前記出力液路47から接続液路45側への作動液の流通を許容する第1の一方向弁58が並列に接続され、回生協調加圧用の電磁弁57には、前記接続液路45から前記出力液路47側への作動液の流通を許容する第2の一方向弁59が並列に接続される。
【0034】
すなわち倍力液圧発生室40および倍力液圧室22間に、第1の一方向弁58が並列に接続された自動ブレーキ減圧用の電磁弁56が介設されるとともに、第2の一方向弁59が並列に接続された回生協調加圧用の電磁弁57が介設されることになる。
【0035】
しかも出力液路47および自動ブレーキ減圧用の電磁弁56間にはブレーキ操作量検出用の液圧センサ60が接続され、回生協調加圧用の電磁弁57および接続液路45間に自動ブレーキフィードバック制御用の液圧センサ61が接続される。
【0036】
このように液圧発生源12および倍力液圧室22間には、自動ブレーキ加圧用の電磁弁54が介設され、倍力液圧発生室40および倍力液圧室22間には、自動ブレーキ減圧用の電磁弁56と、倍力液圧発生室40から倍力液圧室22側へのブレーキ液の流通を許容するようにして自動ブレーキ減圧用の電磁弁56に並列に接続される第1の一方向弁58とが介設されることにより、ブレーキペダル11の非操作時、すなわち調圧弁手段39の非作動時にも、自動ブレーキ加圧用の電磁弁54および自動ブレーキ減圧用の電磁弁56を開閉制御して倍力液圧室22の液圧を調圧することにより、非ブレーキ操作状態で車輪ブレーキB1〜B4にブレーキ液圧を作用せしめるようにした自動ブレーキ制御を行うことができる。しかも自動ブレーキ時に自動ブレーキ減圧用の電磁弁56が閉弁している状態でブレーキペダル11を操作することで調圧弁手段39が作動して、倍力液圧室22の液圧よりも高い液圧が倍力液圧発生室40に生じたときには、第1の一方向弁58を介して倍力液圧発生室40の液圧を倍力液圧室22に作用せしめることができ、通常のブレーキ操作時と同様にマスタシリンダMを作動せしめることができる。
【0037】
また倍力液圧室22およびリザーバ31間に、回生協調減圧用の電磁弁55が介設され、倍力液圧発生室40および倍力液圧室22間には、回生協調加圧用の電磁弁57と、倍力液圧室22から倍力液圧発生室40側へのブレーキ液の流通を許容するようにして回生協調加圧用の電磁弁57に並列に接続される第2の一方向弁59とが介設されているので、ブレーキ操作状態での回生時に、回生協調加圧用の電磁弁57および回生協調減圧用の電磁弁55を開閉制御して倍力液圧室22の液圧を調圧することにより、通常のブレーキ時とはオフセットした状態のブレーキ液圧をマスタシリンダMから出力することができ、回生協調加圧用の電磁弁57の閉弁時にブレーキペダル11を戻したときには、第2の一方向弁59を介して倍力液圧室22の液圧をリザーバ31側に逃がすことができる。
【0038】
ストロークシミュレータ14は、制御ピストン41に液密にかつ軸方向摺動可能に嵌合される入力ピストン62と、該入力ピストン62および前記制御ピストン41間に介装される弾発手段63とを備えて制御ピストン41に内蔵される。
【0039】
入力ピストン62には、ブレーキペダル11に連なる入力ロッド64の前端部が首振り可能に連接される。すなわち入力ピストン62には、ブレーキペダル11の操作に応じたブレーキ操作力が入力ロッド64を介して入力され、そのブレーキ操作力の入力に応じて入力ピストン62は前進作動する。
【0040】
弾発手段63は、ゴム等の弾性材料によって筒状に形成される弾性体65と、弾性体65よりもばね荷重を小さく設定した金属製のコイルばね66とを備えるものであり、弾性体65およびコイルばね66は、ブレーキペダル11のブレーキ操作初期にはコイルばね66が発揮するばね力が制御ピストン41に作用し、コイルばね66のばね力の制御ピストン41への作用が終了した後に弾性体65の弾性変形が開始されるようにして、入力ピストン62および制御ピストン41間に直列に介装されるものである。
【0041】
前記入力ロッド64には、制御ピストン41のケーシング17からの突出部を覆うブーツ67の後端部が取付けられており、このブーツ67の前端部はケーシング17の後端部に取付けられる。
【0042】
図2および図3において、液圧ブースタ13のケーシング17は、その後端を車室側に突出させるようにして車両のダッシュボード70に前方側から取付けられるものであり、前記ダッシュボード70には、前記ケーシング17の後端を挿通せしめる開口部71が設けられる。
【0043】
液圧ブースタ13のケーシング17には、液圧ブースタ13の側方に張り出す張出し部17aが一体に設けられており、この張出し部17aを含んでケーシング17には、前記ダッシュボード70に前方側から対向する平坦な支持面72が形成され、複数のボルト73…によって該支持面72がダッシュボード70の前面に取付けられる。
【0044】
図4および図5を併せて参照して、前記張出し部17aには、該張出し部17aとの間に収納室78を形成する合成樹脂製のカバー77がシール部材93を介して取付けられ、自動ブレーキ制御および回生ブレーキ制御の少なくとも一方を実行するための電磁弁および液圧センサ、この実施例では、電磁弁54〜57および液圧センサ53,60,61がその一部を収納室78に突出させて張出し部17aに取付けられ、液圧センサ53,60,61の検出値を少なくとも含む情報に基づいて前記電磁弁54〜57の作動を制御する電子制御ユニット74が、収納室78内でカバー77もしくは張出し部17aに取付けられるものであり、この実施例では電子制御ユニット74がカバー77に取付けられる。また第1および第2の一方向弁56,57は前記張出し部17aに内蔵される。
【0045】
前記張出し部17aには外側に臨む平坦な取付け面75が形成されており、前記各電磁弁54〜57は、それら54〜57が備えるソレノイド部76…を前記取付け面75から突出させつつ、張出し部17aの上部に嵌合、固定される。また前記各液圧センサ53,60,61は、それらの一部を取付け面75から突出させつつ、前記電磁弁54〜57が配置される部分よりも下方で張出し部17aに嵌合、固定される。
【0046】
カバー77は、合成樹脂によって張出し部17a側を開放した箱形に形成されるものであり、複数のねじ部材79…により前記取付け面75に締結される。前記取付け面75およびカバー77間には、前記電磁弁54〜57および前記各液圧センサ53,60,61を無端状に囲繞するシール部材93が介装されるものであり、このシール部材93はカバー77の開口縁に装着される。
【0047】
前記カバー77内の中間部には、前記各電磁弁54〜57のソレノイド部76…の一部を挿通せしめるソレノイド用開口部80…、ならびに前記各液圧センサ53,60,61に対応したセンサ用開口部81…を有する支持壁部82が設けられる。
【0048】
電子制御ユニット74は、電気回路がプリントされる基板83に半導体チップ等が搭載されて成るものであり、前記支持壁部82に関して前記張出し部17aとは反対側でカバー77内に配置され、前記支持壁部82に設けられた複数の支柱84…に前記基板83が締結される。
【0049】
前記支持壁部82には複数の導電性金属製のバスバー85…が埋設されており、前記各電磁弁54〜57のソレノイド部76…が備えるコイル76a…から延出される端子86…がソレノイド用開口部80…で前記バスバー85…の一部に溶接等で電気的に接続される。これにより前記ソレノイド部76…のコイル76a…はカバー77の支持壁部82に固定的に支持されることになる。また前記各液圧センサ53,60,61から延出される端子87…がセンサ用開口部81…でバスバー85…の一部に溶接等で電気的に接続される。さらに電子制御ユニット74はアルミワイヤー88によるワイヤーボンディングによって前記バスバー85…の一部に電気的に接続される。
【0050】
カバー77には、張出し部17aから前方側にはみだすようにしてカバー側コネクタ90が設けられる。このカバー側コネクタ90は、カバー77と一体にして箱形に形成されるコネクタハウジング91と、コネクタハウジング91の内部に収容、支持される複数本のコネクタ端子92…とで構成されるものであり、コネクタ端子92…は前記バスバー85…の端部で形成される。
【0051】
カバー77に連設されたカバー側コネクタ90には、複数の外部導線94…の端部に共通に設けられる外部導線側コネクタ95が着脱可能に接続される。この外部導線側コネクタ95のコネクタハウジング96は、カバー側コネクタ90のコネクタハウジング91に嵌合される嵌合部96aと、該嵌合部96aとの間に前記コネクタハウジング91を挿脱可能に挿入せしめる外筒部96bとを一体に有して合成樹脂により形成されており、カバー側コネクタ90のコネクタハウジング91に着脱可能に係合し得るものである。
【0052】
カバー側コネクタ90への外部導線側コネクタ95の接続時に、カバー側コネクタ90のコネクタハウジング91と、外部導線側コネクタ95のコネクタハウジング96における嵌合部96aとの間にはコネクタ室97が形成され、このコネクタ室97内に、両コネクタハウジング91,95の接触面間から水が浸入することを防止するために、嵌合部96aの外面にはコネクタハウジング91の内面に弾発的に接触する環状のシール部材93が装着される。
【0053】
外部導線側コネクタ95のコネクタハウジング96における嵌合部96aには、カバー側コネクタ90が備える複数のコネクタ端子92…をそれぞれ内端側から個別に挿入せしめる接続孔99…が両端を開口せしめて設けられており、各コネクタ端子92…を挿脱可能に嵌合せしめるように雌型に形成されるコネクタ端子100…が各接続孔99…内に配置される。
【0054】
しかも各外部導線94…の外面と、各接続孔99…の外端側内面との間には環状のシール部材101…が介装されており、各外部導線94…は各シール部材101…を介してコネクタハウジング96に支持されることになる。また各外部導線94…のコネクタハウジング96への挿入部から各接続孔99…を経てコネクタ室97に水が浸入することも前記シール部材101…で阻止される。各外部導線94…の外部導線側コネクタ95への連結部は、合成樹脂製のブーツ102で覆われる。
【0055】
カバー77には、カバー側および外部導線側コネクタ90,95間に形成されるコネクタ室97を、カバー77および張出し部17a間に形成される収納室78に連通せしめる連通孔103が設けられる。
【0056】
図6において、ケーシング17に設けられる支持面72において張出し部17aに対応する部分にはダッシュボード70側に向けて外端を開口せしめた通気孔104が設けられており、この通気孔104は、張出し部17aに設けられる通気路105を介して収納室78に連通する。
【0057】
前記通気孔104は、内端を閉じるとともに前記通気路105を中間部に直角に開口せしめた小径孔部104aと、該小径孔部104aよりも大径である中径孔部104bと、中径孔部104bよりも大径である大径孔部104cとが、外方に臨む環状段部104dを小径孔部104aおよび中径孔部104b間に形成するとともにテーパ状の段部104eを中径孔部104bおよび大径孔部104c間に形成して同軸に連なって成るものである。
【0058】
すなわち通気孔104は、その内端を収納室78に連通せしめるとともに外端開口部をダッシュボード70に対向させるようにして張出し部17aに設けられており、支持面72には、該通気孔104における大径孔部104bの外端部を張出し部17aの側方に向けて開口する切欠き106が形成される。
【0059】
通気孔104における前記段部104dには、たとえば商品名ゴアテックスで代表される通気防水素材により円形のシート状に形成される閉塞部材107が当接される。一方、中央部に透孔108を有して金属により円盤状に形成される押さえ部材109が、通気孔104の中径孔部104bに圧入される。この押さえ部材109には、閉塞部材107側に突出した円形の突部109aが一体に設けられており、前記閉塞部材107は、押さえ部材109の突部109aと段部104dとの間に挟持される。すなわち通気孔104は閉塞部材107で閉じられることになる。
【0060】
次にこの実施例の作用について説明すると、液圧ブースタ13のケーシング17には、液圧ブースタ13の側方に張り出す張出し部17aが一体に設けられており、この張出し部17aには、該張出し部17aとの間に収納室78を形成する合成樹脂製のカバー77がシール部材93を介して取付けられ、自動ブレーキ制御および回生ブレーキ制御を実行するための電磁弁54〜57および液圧センサ53,60,61がその一部を収納室78に突出させて張出し部17aに取付けられ、液圧センサ53,60,61の検出値を少なくとも含む情報に基づいて前記電磁弁54〜57の作動を制御する電子制御ユニット74が、収納室78内でカバー77に取付けられ、第1および第2の一方向弁58,59は張出し部17aに内蔵される。
【0061】
したがって各電磁弁54〜57と、第1および第2の一方向弁58,59と、各液圧センサ53,60,61と、電子制御ユニット74とを液圧ブースタ13とともにコンパクトにまとめることができ、車両への組付け時の設置スペースを小さくし、組付け作業性を高めることが可能となる。しかも各電磁弁54〜57、各液圧センサ53,60,61および電子制御ユニット74は、カバー77で覆われるので、車両搭載時の防水性も得ることができる。
【0062】
また外部導線側コネクタ95のコネクタハウジング96と、外部導線側コネクタ95を液密にかつ着脱可能に接続するようにしてカバー77に設けられるカバー側コネクタ90のコネクタハウジング91との間に収納室78に通じるコネクタ室97が形成され、収納室78は通気孔104によって外部との間の通気が可能である。
【0063】
これによりコネクタ室97の内圧が、外部導線側コネクタ95およびカバー側コネクタ90間の通電に伴う温度変化によってもコネクタ室97の内圧が変化することが極力抑制されることになり、したがってコネクタハウジング91,96の変形に伴なうシール不良が生じたり、外部導線94…の絶縁チューブおよび導線間の間隙からの毛細管現象による水の吸込みが生じたりするのを防止することができる。
【0064】
しかも通気孔104は張出し部17aに設けられるものであり、通気孔104の形成は容易である。また通気孔104の外端は、ケーシング17が取付けられるダッシュボード70に向けて開口するものであるので、通気孔104内に外部から水や塵埃等が入り込むのを極力防止することができる。
【0065】
さらに通気孔104が通気防水素材で形成される閉塞部材107で閉じられているので、通気孔104から収納室への水の浸入を確実に防止することができる
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0066】
たとえば上記実施例では、自動ブレーキ制御および回生ブレーキ制御の両方を実行するための電磁弁54〜57および液圧センサ53,60,61を備える車両用ブレーキ装置について説明したが、本発明は、自動ブレーキ制御および回生ブレーキ制御のいずれか一方を実行する電磁弁および液圧センサを備える車両用ブレーキ装置にも適用することができる。
【0067】
また電子制御ユニット74は、ケーシング17の張出し部17aに取付けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】車両用ブレーキ装置の全体構成を示すブレーキ液圧系統図である。
【図2】マスタシリンダおよび液圧ブースタをダッシュボードに取付けた状態での縦断側面図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図4の6矢示部拡大図である。
【符号の説明】
【0069】
11・・・ブレーキ操作部材であるブレーキペダル
12・・・液圧発生源
13・・・液圧ブースタ
17・・・ケーシング
17a・・・張出し部
53,60,61・・・液圧センサ
54,55,56,57・・・電磁弁
70・・・ダッシュボード
74・・・電子制御ユニット
77・・・カバー
78・・・収納室
90・・・カバー側コネクタ
91,96・・・コネクタハウジング
95・・・外部導線側コネクタ
97・・・コネクタ室
93・・・シール部材
104・・・通気孔
107・・・閉塞部材
M・・・マスタシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作部材(11)のブレーキ操作に応じて液圧発生源(12)の出力液圧を調圧する液圧ブースタ(13)と、該液圧ブースタ(13)の出力液圧で作動するマスタシリンダ(M)と、自動ブレーキ制御および回生ブレーキ制御の少なくとも一方を実行するための電磁弁(54,55,56,57)および液圧センサ(53,60,61)と、液圧センサ(53,60,61)の検出値を少なくとも含む情報に基づいて前記電磁弁(54〜57)の作動を制御する電子制御ユニット(74)とを備える車両用ブレーキ装置において、前記液圧ブースタ(13)のケーシング(17)に一体に設けられて液圧ブースタ(13)の側方に張り出す張出し部(17a)に、該張出し部(17a)との間に収納室(78)を形成する合成樹脂製のカバー(77)がシール部材(93)を介して取付けられ、前記電磁弁(54〜57)および前記液圧センサ(53,60,61)がその一部を前記収納室(78)に突出させて前記張出し部(17a)に取付けられ、前記電子制御ユニット(74)は前記収納室(78)内で前記カバー(77)もしくは前記張出し部(17a)に取付けられ、外部導線側コネクタ(95)のコネクタハウジング(96)と、前記外部導線側コネクタ(95)を液密にかつ着脱可能に接続するようにして前記カバー(77)に設けられるカバー側コネクタ(90)のコネクタハウジング(91)との間に前記収納室(78)に通じるコネクタ室(97)が形成され、前記カバー(77)もしくは前記張出し部(17a)に、前記収納室(78)および外部間の通気を可能とした通気孔(104)が設けられることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記通気孔(104)が前記張出し部(17a)に設けられることを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記ケーシング(17)が取付けられるダッシュボード(70)に向けて外端を開口せしめるようにして前記通気孔(104)が前記張出し部(17a)に設けられることを特徴とする請求項2記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記通気孔(104)が通気防水素材で形成される閉塞部材(107)で閉じられることを特徴とする請求項3記載の車両用ブレーキ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−99057(P2007−99057A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290738(P2005−290738)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】