説明

車両用ミラー及びその製造方法

【課題】 良好な防眩性及び視認性を備え、しかも見栄えも良い意匠性にも優れた車両用ミラーを実現する。
【解決手段】 着色ガラスから成るガラス基板2の表面に着色層3が形成され、この着色層3は、透明な着色を可能にするガラス着色用発色剤がガラス基板2の表面に塗布後、焼成されて形成されたものであり、ガラス着色用発色剤は、金属の超微粒子と、この超微粒子をガラス中に固定する有機金属化合物からなる膜形成用化合物と、バインダー樹脂と、Si、B又はPから選択された1種の元素を含む有機化合物である膜形成用化合物と、有機溶剤とからなり、車両用ミラーの入射光の波長域に対する平均反射率が、400〜500nmで25〜35%、500〜600nmで40〜50%、600〜700nmで35〜45%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用ミラー及びその製造方法に関し、特に、良好な防眩性及び視認性を備え、しかも見栄えが良く意匠性にも優れた車両用ミラー及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両用ヘッドライトとしてハロゲンランプが適用されてきた。ハロゲンランプの光は、短波長側の青みがかった波長域の光強度が比較的弱く、長波長域の光強度が比確的強く、黄色を呈するものである。
【0003】
ところで、車両用ミラーで運転者の目に過度の光が入ってくると運転者は眩しさを感じ、目が疲れ易くなる。また、短波長側の青みがかった波長域の光が弱くなると、道路の白線が判別し難くなるなど、物の輪郭をぼけさせ、視認性を低下させるという問題があった。
【0004】
これを解決するために、ハロゲンランプを備えた車両用ヘッドライトでは、その車両用ミラーとして、黄及び赤みがかった波長域の光を吸収し反射率を低減させることのできるブルーミラーを適用することにより、防眩効果を高めることができるとともに、視認性、特に夜間の視認性を向上させることができる、という点は知られている。
【0005】
最近では、ハロゲンランプに比べてより高輝度なディスチャージヘッドランプを備えた車両用ヘッドライトが普及している。ディスチャージヘッドランプは青白く高輝度な特性を有しているので、眩しさの度合いが強いが、これに対しては青色をカットし、夜間における十分な視界を確保する対策が採られている。それとともに防眩効果を向上させるサンバイザやサングラス等の防眩用光学部品が公知になっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−128803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスチャージヘッドランプの前記青色の光をカットする車両用ミラーは、従来から知られているが、透明光学薄膜や金属薄膜を複数積層させたものであり、このため製造工程が複雑になって比較的高価であるという問題があった。
【0007】
また、青白く高輝度な特性を有するディスチャージヘッドランプを備えた車両用ヘッドライトにおいては、その車両用ミラーで青色の光の反射をカットすると、その結果として黄色から褐色の色の反射光が相対的に強くなるので、ハロゲンランプを備えた車両用ヘッドライトに比べて運転者の感じる眩しさの度合いが高まるのみならず、ミラーの鏡面も黄ばんだイメージとなるため、色彩的に見て意匠性が乏しいものとなる。
【0008】
本発明は、上記従来の問題を解決することを目的とするものであり、比較的安価でディスチャージヘッドランプにも対応した防眩性及び優れた視認性を備え、しかも意匠性をも満たした車両用ミラー、及びその製造方法を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために、ガラス基板と、該ガラス基板の表面に形成された着色層と、前記ガラス基板の裏面に形成された反射膜とを備えた車両用ミラーであって、前記着色層は、Ag微粒子と、Si、B、Pから選ばれた少なくとも一種の元素を含む酸化物と、金属酸化物とを含有し、前記車両用ミラーの入射光の波長域に対する平均反射率が、400〜500nmで25〜35%、500〜600nmで40〜50%、600〜700nmで35〜45%であることを特徴とする車両用ミラーを提供する。
【0010】
このように構成すれば、前記Ag微粒子は波長405nm付近をピークとした波長500nmの波長域の光を吸収する効果を有するので、前記着色層が透明性を有し、かつ青色の光を適切にカットすることができる。また、前記車両用ミラーの入射光の波長域に対する平均反射率が、400〜500nmで25〜35%、500〜600nmで40〜50%、600〜700nmで35〜45%であるので、ヘッドランプからの光のうち、青色の波長の光の成分(青色成分)を適切にカットすることができる。
【0011】
更に、Si、B、Pから選ばれた少なくとも一種の元素を含む酸化物により、前記着色層の機械的強度を高めると共に、化学的耐久性を向上させることができる。そして、金属酸化物により、耐水性、耐薬品性、及び耐紫外線等を向上させることができる。その結果、充分な防眩効果、視認性向上効果を発揮すると共に、耐久性に優れた、ガラス基板の表面に着色層を形成し、このガラス基板の裏面に反射膜を形成した車両用ミラーを具現することができる。
【0012】
また、本発明は上記課題を解決するために、ガラス基板と、該ガラス基板の裏面に形成された着色層と、前記ガラス基板の裏面に形成された反射膜とを備えた車両用ミラーであって、前記着色層は、Ag微粒子と、Si、B、Pから選ばれた少なくとも一種の元素を含む酸化物と、金属酸化物を含有し、前記車両用ミラーの入射光の波長域に対する平均反射率が、400〜500nmで25〜35%、500〜600nmで40〜50%、600〜700nmで35〜45%であることを特徴とする車両用ミラーを提供する。
【0013】
このように構成すれば、前記した充分な防眩効果、視認性向上効果を発揮すると共に、耐久性に優れた効果を有する、ガラス基板の裏面に着色層と反射膜が形成された車両用ミラーを具現することができる。
【0014】
更に、前記Si、B、Pから選ばれた少なくとも一種の元素を含む酸化物は、Si酸化物を含むことが好ましい。このように構成すれば、前記着色層の機械的強度、及び化学耐久性を一段と向上させると共に、前記着色層の青色の光をカットする効果を増大させることができる。
【0015】
また、前記金属酸化物は、Ti酸化物を含むことが好ましい。このように構成すれば、前記着色層の耐水性、耐薬品性を一段と高めることができる。
【0016】
そして、前記金属酸化物は、Sn酸化物及びFe酸化物の両方またはいずれか一方を含むことが好ましい。このように構成すれば、前記着色層の耐紫外線性をより高め、ひいては車両用ミラーの耐久性を一層向上させることができる。
【0017】
また、前記ガラス基板を構成するガラスは、青または緑に着色された着色ガラスであることが好ましい。このように構成すれば、前記着色ガラスで、光の赤色成分をある程度カットすることができる車両用ミラーを具現することができる。
【0018】
更に、前記着色ガラスは、次の特性を備えていることが好ましい。
85≦L*≦100
−30≦a*≦0
−30≦b*≦30
但し、L*は明度であり、a*及びb*は色相と彩度を示す色度であって、a*は赤方向であり、b*は黄方向である。
【0019】
このように構成すれば、前記着色ガラスが、ほぼ650〜800nmの波長領域、つまり、橙色から赤色にかけての光の成分を、より適切に低下させることができる車両用ミラーを具現することができる。
【0020】
本発明は上記課題を解決するために、ガラス基板と、該ガラス基板の表面に形成された着色層と、前記ガラス基板の裏面に形成された反射膜とを備えた車両用ミラーの製造方法であって、前記ガラス基板の表面に、Ag微粒子と、Si、B、Pから選ばれた少なくとも1種の元素を含む有機化合物と、有機金属化合物と、バインダー樹脂と、有機溶剤とを含んでなる前記ガラス着色用発色剤を塗布した後、これを焼成して、前記着色層を形成する工程を含むことを特徴とする車両用ミラーの製造方法を提供する。
【0021】
このように構成すれば、前記したように、着色層が透明性を有し、かつ青色の光を適切にカットすると共に、ヘッドランプからの光のうち、青色の波長の光の成分(青色成分)を適切にカットし、前記着色層の機械的強度、化学的耐久性、耐水性、耐薬品性、及び耐紫外線等を向上させて、充分な防眩効果、視認性向上の効果を発揮することができると共に、耐久性を向上させて、ガラス基板の表面に着色層を形成させ、このガラス基板の裏面に反射膜を形成させた車両用ミラーの製造方法を具現することができる。
【0022】
また、本発明は上記課題を解決するために、ガラス基板と、該ガラス基板の裏面に形成された着色層と、該着色層の裏面に形成された反射膜とを備えた車両用ミラーの製造方法であって、前記ガラス基板の裏面に、Ag微粒子と、Si、B、Pから選ばれた少なくとも1種の元素を含む有機化合物と、有機金属化合物と、バインダー樹脂と、有機溶剤とを含んでなるガラス着色用発色剤を塗布した後、これを焼成して前記着色層を形成する工程を含むことを特徴とする車両用ミラーの製造方法を提供する。
【0023】
このように構成すれば、前記したような、充分な防眩効果、視認性向上効果を発揮することができると共に、耐久性に優れ、ガラス基板の裏面に着色層と反射膜を形成させた車両用ミラーの製造方法を具現することができる。
【0024】
また、前記Si、B、Pから選ばれた少なくとも1種の元素を含む有機化合物が、有機Si化合物であることが好ましい。このように構成すれば、前記着色層の機械的強度、及び化学耐久性を一段と向上させると共に、前記着色層の青色の光をカットする効果を増大させた車両用ミラーの製造方法を具現することができる。
【0025】
更に、前記有機金属化合物が、有機Ti化合物を含むことが好ましい。このように構成すれば、前記着色層の耐水性、耐薬品性を一段と高めた車両用ミラーの製造方法を具現することができる。
【0026】
そして、前記有機金属化合物が、有機Sn化合物及び有機Fe化合物の両方又はいずれか一方を含むことが好ましい。このように構成すれば、前記着色層の耐紫外線性をより高め、ひいては車両用ミラーの耐久性を一層向上させた車両用ミラーの製造方法を具現することができる。
【0027】
また、前記有機金属化合物が、有機Sn化合物を含み、かつ前記ガラス着色用発色剤100質量部に対して前記有機Sn化合物が0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
或いは、前記有機金属化合物が、有機Fe化合物を含み、前記ガラス着色用発色剤100質量部に対して有機Fe化合物が0.1〜4.5質量部であることが好ましい。このように構成すれば、充分な耐紫外線を有すると共に、良好な視認性を備えた車両用ミラーの製造方法を具現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る車両用ミラー及びその製造方法によると、近年普及しているディスチャージヘッドランプに対応した防眩性及び視認性に優れ、安価で見栄えが良いミラーを得ることができる。具体的な効果を以下に記載する。
【0029】
(1)本発明では、着色層にAg微粒子を含有するが、Ag微粒子は波長405nm付近をピークとした波長500nmの波長域の光を吸収する効果を有するので、着色層が透明性を有し、かつ青色の光を適切にカットすることができる。また、車両用ミラーの入射光の波長域に対する平均反射率が、400〜500nmで25〜35%、500〜600nmで40〜50%、600〜700nmで35〜45%であるので、ヘッドランプからの光のうち、青色の波長の光の成分(青色成分)を適切にカットすることができる。
【0030】
(2)更に、Si、B、Pから選ばれた少なくとも一種の元素を含む酸化物により、着色層の機械的強度を高めると共に、化学的耐久性を向上させることができる。そして、金属酸化物により、耐水性、耐薬品性、及び耐紫外線等を向上させることができる。その結果、充分な防眩効果、視認性向上効果を発揮すると共に、耐久性に優れた、ガラス基板の表面に着色層を形成し、このガラス基板の裏面に反射膜を形成した車両用ミラーを具現することができる。
【0031】
(3) 着色層に金属酸化物を含有するが、この金属酸化物にTi酸化物を含む構成であるから、前記着色層の耐水性、耐薬品性を一段と高めることができる。また、金属酸化物にSn酸化物及びFe酸化物の両方またはいずれか一方を含む構成とすれば、着色層の耐紫外線性をより高め、ひいては車両用ミラーの耐久性を一層向上させることができる。
【0032】
(4)ガラス基板を構成するガラスは、青または緑に着色された着色ガラスであるから、前記着色ガラスで、光の赤色成分をある程度カットすることができる車両用ミラーを具現することができる。
【0033】
(5)本発明では、着色ガラスは、85≦L*≦100、−30≦a*≦0、−30≦b*≦30(但し、L*は明度であり、a*及びb*は色相と彩度を示す色度であって、a*は赤方向であり、b*は黄方向である。)という構成であるから、着色ガラスが、ほぼ650〜800nmの波長領域、つまり、橙色から赤色にかけての光の成分を、より適切に低下させることができる車両用ミラーを具現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明に係る車両用ミラーを実施するための最良の形態を実施例に基づいて図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0035】
図1(a)は、本発明に係る車両用ミラーの実施例1を説明する図である。この車両用ミラー1は、基材である透明なガラス基板2と、ガラス基板2の表面(光の入射側の面)に形成された着色層3と、このガラス基板2の裏面(光の入射側と反対側の面)に形成された反射膜4と、を備えている。
【0036】
(着色層)
着色層3は、透明な着色を可能とする層(光透過性を保ちながらガラス基板2の表面を着色する層)であり、ガラス着色用発色剤をガラス基板2の表面に、スプレー、ディップ、ロールコート、スピンコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷等により塗布し、その後焼成して形成された焼成膜である。この着色層3の構成を、ガラス着色用発色剤の組成及び形成工程等を説明することにより、明確にする。
【0037】
着色層3を形成するための材料であるガラス着色用発色剤は、Ag微粒子と、このAg微粒子を着色層3中に固定する有機金属化合物からなる膜形成用化合物と、バインダー樹脂と、Si、B、Pから選ばれた少なくとも1種の元素を含む有機化合物である膜形成用化合物と、有機溶剤とから構成される。
【0038】
(Ag微粒子)
本発明で用いるAg微粒子は、着色層において透明性を有する黄色を呈し、波長405nm付近をピークとし、波長500nmの波長域を吸収する効果を奏するものである。前記Ag微粒子の粒径は、1〜100nmであることが好ましい。すなわち、前記Ag微粒子の粒径が1nm未満であると着色層が前記効果を充分に発揮するのが困難になるという問題があり、また、その粒径が100nm超では着色層の透明性が低下する虞があるので好ましくない。更に好ましくは、Ag微粒子の粒径は1〜10nmである。
【0039】
前記Ag微粒子は、Agイオンを従来公知の方法により還元して作製することができる。
Ag微粒子を使用する際には、Ag微粒子の表面を顔料分散剤等で保護することにより、Ag微粒子をアルコール、ケトン、エーテル、トルエン等の有機溶媒中に凝集させることなく単分散させた状態とすることができる。或いは、Ag微粒子を使用する際には、ガス中蒸発法により、Ag微粒子をα−テレピネオール、トルエン等の溶剤中に独立分散させた状態、または、アルコール、ケトン、エーテル、トルエン等に可溶な高分子マトリックス内に分散させた状態で使用してもよい。
【0040】
なお、Ag微粒子の含有量は、本発明の効果を奏する限りにおいて特に限定されるものではなく、適宜設定により焼成膜を所望の色調(濃淡度)に制御することも可能であるが、Ag微粒子の含有量は、ガラス着色用発色剤100質量部に対し0.1〜0.4質量部とすることが望ましい。
【0041】
(有機金属化合物)
本発明で使用される有機金属化合物は膜形成用化合物として用いられるものであり、焼成により金属酸化物となる。有機金属化合物の成分としては、例えばAl、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、In、Sbなどが挙げられる。具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、In、Sbなどのエトキシド、プロポキシド、ブトキシド等のアルコキシド類、ナフテン酸塩、酢酸塩等の有機酸塩類、そしてアセチルアセトン錯塩、オキシン錯塩等の有機錯塩類を用いることができる。
【0042】
有機金属化合物として、有機Ti化合物(焼成後はTi酸化物として着色層3に存在する)を選択すると、着色層3の耐水性、耐薬品性を向上させる効果がある。有機Ti化合物は発色剤100質量部に対して0.1〜50質量部含有させることが望ましい。0.1質量部未満では耐水性、耐薬品性の向上効果が充分ではなく、50質量部を超えるとミラーに白濁が生じて視認性が低下したり、膜にクラックが生じるなどの不具合が発生する虞がある。
【0043】
有機金属化合物として、有機Sn化合物及び有機Fe化合物の両方又はいずれか一方(焼成後はSn酸化物及びFe酸化物の両方またはいずれか一方として着色層3に存在する)を選択すると、着色層3の耐紫外線性が向上し、ひいては車両用ミラーの耐久性を向上させる効果がある。これは、Sn、Feが還元剤として作用し、着色層3においてAg微粒子の酸化を防止するためであると考えられる。
【0044】
中でも、有機Sn化合物の方が耐紫外線効果に優れることが明らかとなっている。その含有量は、発色剤100質量部に対して、有機Sn化合物が0.1〜2.0質量部、有機Fe化合物は0.1〜4.5質量部であることが望ましい。
【0045】
前記下限値未満では、充分な耐紫外線性の向上効果が得られず、紫外線によって色調が変化したり、透過率が上昇したりする虞がある。また、前記上限値を超えると、車両用ミラーに白濁が生じ、視認性が低下する不具合が生じる虞がある。本発明にあっては、これらの有機金属化合物を必要に応じて単独または併用のいずれで用いてもよい。
【0046】
(Si、B、Pから選択された少なくとも一種の元素を含む有機化合物)
本発明で使用されるSi、B、Pから選択された少なくとも一種の元素を含む有機化合物は、着色層3の主成分として作用し、Ag微粒子を着色層3中に凝集させずに分散させて固定させるものであり、焼成によりSi、B、Pから選択された少なくとも一種の元素を含む酸化物となる。この酸化物は非晶質の透明なガラスを形成するため、光を充分に透過させることができる。
【0047】
前記Si、B、Pから選択された少なくとも一種の元素を含む酸化物は、膜形成用化合物であって、Si、B、Pから選択された少なくとも一種の元素を含む有機化合物を焼成することにより形成することができる。前記Si、B、Pから選択された少なくとも一種の元素を含む有機化合物として、具体的には、Siのエトキシド、プロポキシド、ブトキシド等のシリコンアルコキシド類、ポロシロキサン骨格を有するシリコーンオイル類、シリコンワニス類、及びB、Pのエトキシド、プロポキシド、ブトキシド等のアルコキシド類、ナフテン酸塩、酢酸塩等の有機酸塩類、そしてアセチルアセトン錯塩、オキシン錯塩等の有機錯塩類が挙げられる。
【0048】
前記Si、B、Pから選択された少なくとも一種の元素を含む酸化物は、化学式M´Oyで表すことができる。ここで、M´はSi、B、Pから選択された少なくとも一種の元素であり、yは0.1〜3である。この酸化物は、着色層3の機械的強度を高めると共に、化学的耐久性を向上させる役割を演じる。前記有機化合物のうち、有機Si化合物を使用することは、焼成後にSi酸化物が着色層3に存在することとなり、結果、強度や耐久性がより高められると共に、着色層3の青色光をカットする効果が一層向上するようになるので好ましい。
【0049】
なお、前記有機Si化合物の含有量は、発色剤100質量部に対して1〜50質量部とすることが好ましい。ここで、前記発色剤は、前記Ag微粒子と有機金属化合物等とを組み合わせて得られたものである。前記有機Si化合物の含有量が、1質量部未満では強度及び耐久性向上の効果が充分に得られず、50質量部超では車両用ミラーに白濁が生じて視認性等が低下する虞がある。
【0050】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、ガラス着色用発色剤の粘度をガラス基板2に塗布しやすいように適度に維持し、ガラス基板2上に塗布してからガラス着色用発色剤で形成される着色層3の乾燥後の強度を保持する機能を有している。
【0051】
このバインダー樹脂としては、例えばニトロセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ブチルセルロース等のセルロース類、メチルアクリレート等のアクリル類、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン等のポリエステル類、ポリオキシメチレン等のポリエーテル類、ポリカーボネート類、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のポリビニル類等である。
【0052】
(有機溶剤)
本発明で用いられる有機溶剤は、Ag微粒子、有機金属化合物、バインダー樹脂、Si、B、Pから選ばれた少なくとも一種の元素を含む有機化合物の種類に応じて適宜選択されるが、具体的にはメタクレゾール、ジメチルホルムアミド、カルビトール、α−テレピネオール、ジアセトンアルコール、トリエチレングリコール、パラキシレン、トルエン等の高沸点溶剤がこの発明のガラス着色用発色剤をガラス基板2上に印刷等で塗布するうえで好ましい。
【0053】
ガラス着色用発色剤は、ガラス基板2上に印刷等により塗布することができ、例えば、このガラス基板2を100〜200°Cの大気中に10分間放置して有機溶剤を除去して乾燥した後、300〜800°Cで数分間熱処理して焼成すれば、焼成膜である着色層3が形成される。
【0054】
このように形成された着色層3においては、Ag微粒子が、膜形成用化合物(例えば、Si−O−等)との相互作用のためにAg微粒子同志が凝集せず、大きく粒は成長せずに着色層3中に固定される。
【0055】
一方、膜形成用化合物(例.Si−O−等)は、Ag微粒子との相互作用のために自由に結晶化できず、非晶質の透明なガラスを生成し、着色層3の主成分となり、光を良く透過することが可能となる。
【0056】
結局、上記焼成膜である着色層3は、Ag微粒子と、MOX(MはAl、Ti、Sb等の金属元素、xは0.1〜3)からなる金属酸化物と、M’Oy(M’はSi、B、Pから選ばれた元素、yは0.1〜3)からなる非晶質の無機物と、を主な組成物として構成される。着色層3は、このような構成であるから、透明で鮮明な着色を可能にし、また強度を有する。
【0057】
着色層3を形成したガラス基板2は、ヘーズ率が0.25%以下とすることが望ましい。ヘーズ率が0.25%を超えると、映像がぼやけるなど車両用ミラーの視認性が低下する虞がある。また、全光線透過率を83%以上とすることが望ましい。すなわち、全光線透過率が83%未満であると、500nm以上の波長領域での吸収が大きくなり、ミラーの反射率が低下する虞がある。更に色調において、−5<a<5、10<bとすると、400〜500nmで青色の光の強度が低下し、青色光カット効果が高くなる。
【0058】
(ガラス基板)
このように400〜500nmで青色の光の強度が低下すると、この車両用ミラーでは黄色みが強くなる。そこで、本発明にあっては、ガラス基板2としてガラス自体が有色である着色ガラスを通過させて、600〜700nmの赤みを低減させることで緑みを強くして意匠性を発現させるようにすることができる。
【0059】
本発明で用いられるガラス基板2は、ガラス自体が有色である着色ガラスを利用し、例えば、着色剤としてCuO溶液により青色に着色されたガラス、又はCr2O3溶液により緑に着色された着色ガラスを利用し、通過した光の赤色成分をある程度カットすることができる。ガラス基板2の裏面に形成される反射膜4は、通常のミラーに使用される反射膜4と同じであり、Cr、Al、Pt及びこれらの合金、或いは、Ni−Cr合金、SUS等を蒸着して形成される。
【0060】
図3は、本実施例のガラス基板として利用される着色ガラスの分光透過率特性を示す図である。但し、この着色ガラスは、次の条件を有するものである。
85≦L*≦100
−30≦a*≦0
−30≦b*≦30
ここで、L*は明度であり、a*及びb*は色相と彩度を示す色度であって、a*は赤方向であり、b*は黄方向である。
【0061】
図3において、Bは青色に着色されたガラスの分光透過率特性であり、Gは緑色に着色された分光透過率特性である。この図3によると、青色の着色ガラス及び緑色の着色ガラスのいずれも、ほぼ650nm〜800nmの波長領域、要するに、橙色から赤色にかけての光の成分について透過率が低下する。これにより、前述のとおり赤色成分をある程度カットできる。
【0062】
以上の実施例1の車両用ミラーの構成を整理すると、図1に示すガラス基板2として板厚が、例えば2mm程度の自動車ウィンドウ用グリーンガラス(着色ガラス)を用い、これに着色層3と、例えば膜厚が100nm程度のCrからなる反射膜4とを備える構成とした。着色層3は、例えば、図4の配合表に示すように、有機溶剤であるテルピネオール及び1−ドデセンと、有機金属化合物である2−エチルヘキシル錫、またはナーセム錫、あるいは2−エチルヘキシル酸鉄、もしくはチタニウムアセチルアセトナートと、バインダー樹脂であるエチルセルロース、Si、B、Pから選択された少なくとも一種の元素を含む有機化合物であるシリコーンオイル、及び、Ag微粒子分散液(Ag微粒子の一次粒径が3.5nm程度のもの)を含有するように構成することができる。
【0063】
この車両用ミラーによると、着色層3において、400〜500nmで青色の光の強度が低下し、黄色みが強くなるので、ガラス基板2としてガラス自体が有色である着色ガラスを通過させて、600〜700nmの赤みを低減させることで緑みを強くして意匠性を発現させるようにする。一方、500〜600nmの光の波長範囲は、人間の目の視感度が比較的高い領域であるので、視認性及び防眩性を確保するために、500〜600nmの範囲の光強度を前記のように低減させることが望ましい。
【0064】
結局、実施例1の車両用ミラーの全体の分光反射率特性を、紫外可視分光光度計UV−3150(島津製作所製)を用いて測定したところ、図2(a)に示す結果が得られた。この分光反射率特性では、車両用ミラーの平均反射率が、波長域が400〜500nmについて25〜35%、500〜600nmについて40〜50%、600〜700nmについて35〜45%である。
【0065】
(作用)
以上の構成からなる本発明に係る車両用ミラーの実施例1の作用を、ディスチャージヘッドランプからの光が入射する場合で説明する。ディスチャージヘッドランプからの光Lが車両用ミラー1に入射し着色層3を通過する。図2(b)は、ディスチャージヘッドランプからの光の分光特性を示す図である。
【0066】
このような分光特性を示すディスチャージヘッドランプからの光Lが、車両用ミラー1の着色層3を通過すると、Ag微粒子により、ディスチャージヘッドランプからの光のうち、青色の波長の光の成分(青色成分)がカットされ、防眩効果、視認性向上効果が生じる。
【0067】
ところで、青色成分をカットしても、黄色から褐色の色の反射光が相対的に強くなり、これにより運転者に眩しさを与えるだけでなく、ミラー1の鏡面も黄ばんだイメージとなる。しかしながら、着色層3を通過してガラス基板2に入射した光が、さらに、図3に示すような透過率特性を有する青又は緑の着色ガラスから成るガラス基板2を通過し反射されると、赤色成分がある程度カットされる。
【0068】
これにより、ミラー1の鏡面も黄ばんだイメージが消えて、黄緑から青緑となる。最終的に、ディスチャージヘッドランプからの光Lは、車両用ミラー1から、その分光反射率特性(図2(a))に従って、分光反射された反射光L’として出射される。
【0069】
この結果、反射光は目に入っても眩しさが低減され防眩性が向上するとともに、青色の光による視認性の低減を防止することができる。さらに、車両のサイドウィンドウを、黄緑から青緑のガラスを利用している場合には、車両用ミラー1と同系色となるので、意匠性を向上させることができる。
【実施例2】
【0070】
図1(b)は、本発明に係る車両用ミラーの実施例2を示す図である。この車両用ミラー5は、実施例1と同様に、ガラス基板、着色層及び反射膜をその構成要素として備えているが、これらは、それぞれ実施例1のガラス基板2、着色層3及び反射膜4と同じものであり、それぞれの説明は省略する。
【0071】
実施例2については、実施例1と異なる構成を中心に説明する。実施例2の車両用ミラー5は、基板である着色ガラス基板2と、このガラス基板2の裏面(光の入射側と反対側の面)に形成された着色層3と、この着色層3の裏面に形成された反射膜4と、を備えている。要するに、実施例2は、着色層3をガラス基板2の表面ではなく、裏面に形成し、さらにその裏面に反射膜4を形成している構成で実施例1とは異なる。
【0072】
実施例2のガラス基板2として利用される着色ガラスの分光透過率特性は実施例1と同じであり、又、車両用ミラーの分光反射率特性は、概略、実施例1と同じであるが平均反射率は約5%低くなる。そして、実施例2の作用、効果は、実施例1と実質的に同じである。この車両用ミラー5では、ディスチャージヘッドランプから入射した光Lは、ガラス基板2を通過する際に、その赤色の波長成分がある程度カットされ、さらに着色層3に入射してから反射膜4で反射されて着色層3を通過する過程で青色の波長成分がカットされる。
【0073】
この結果、実施例1と同様に、これにより、防眩性及び視認性を向上させるとともに、車両用ミラー5の鏡面も黄ばんだイメージが消えて、黄緑から青緑となる。車両のサイドウィンドウを、黄緑から青緑のガラスを利用している場合には、車両用ミラーと同系色になるから、見栄えが良く意匠性を向上させることができる。
【0074】
なお、実施例2では、裏面に着色層3を設けるため、耐磨耗性が要求される場合であっても、膜の剥離を気にする必要がない。しかし、反射膜4を着色層3上に形成する構成となるので、着色層3の表面平滑性が要求される。一方で、実施例1では、反射膜4はガラス基板2の裏面に形成されるため、着色層3の表面平滑性はそれほど要求されない。
【0075】
(実験例1)
上記実施例1、2は、本発明に係るミラーの全体構成に係る実施例であるが、図4(表1:配合剤及び質量比を示す配合表)に示す実施例3〜10は、このような全体構成を有する本発明に係るミラーにおいて、配合成分、配合比率をいろいろ変えた着色層の配合剤の具体例を示す実施例である。なお、比較例1〜6は、比較のために示すものであって、本発明とは異なる配合剤を有するものである。
【0076】
本発明者らは、実施例3〜10、比較例1〜6について、実験例1として、着色層を表面に形成したガラス基板の耐酸性、耐アルカリ性、ヘーズ率、透過率(全光透過率)、明度、色度(色調)、膜厚等の測定を実施し、本発明の効果を実証した。その測定結果を図5(表2)に示す。
【0077】
この実験例1における測定条件は次のとおりである。
(1)耐酸性は3質量%の硫酸水溶液に2時間浸漬し、膜の剥離の有無を目視で確認した。そして、剥離なしを「○」とし、剥離ありを「×」として評価した。
(2)耐アルカリ性は3質量%の水酸化ナトリウム溶液に2時間浸漬し、膜の剥離の有無を目視で確認した。そして、剥離なしを「○」、剥離有りを「×」として評価した。
(3)ヘーズ率は、濁度計 NDH−300A(日本電色製)を使用して、ヘーズ率(JIS K 7105)を測定した。
(4)全光透過率は、色差計 ZE2000(日本電色製)を使用して、全光透過率(JIS Z 28722)を測定した。
(5)膜厚は、触針式膜厚計(Dektak 6M(アルバック社製))を用いて測定した。
(6)Ag微粒子は、平均一次粒経が3.5nmのものを用いた。
【0078】
以上の実験例1における測定結果から、次の点が実証された。
(1)実施例3〜10は、いずれも全光(線)透過率が83%以上であり、ミラーの反射率が高い。
(2)実施例3〜10は、いずれもa値、b値について、−5<a<5、10<bであり、青色光カット効果が高い。
(3)Au微粒子を用いた比較例1〜4では、色調のa値、b値が所望の範囲から大きく外れていることから、青色カット効果を奏しないことがわかる。
(4)Tiを含有しない比較例3、5は耐酸性が低く、Siを含有しない比較例4、6では耐アルカリ性が低いことから、耐薬品性に難があることがわかる。
【0079】
なお、実施例3〜6は、いずれもヘーズ率が0.25%以下であり、実施例7〜9と比較すると車両用ミラーの視認性に優れていることがわかる。このヘーズ率の上昇は、着色層にSn又はFeが過剰に存在するためと考えられる。即ち、視認性の観点から、ガラス着色剤に、有機Sn化合物又は有機Fe化合物が適正量配合されることが望ましいことがわかる。そこで、本発明にあっては、上述したように、有機Sn化合物又は有機Fe化合物の配合量を適切な範囲に設定することにより、視認性に優れた車両用ミラーを具現することができる。
【0080】
(耐候試験)
実施例3、4、6、7については、着色層を表面に形成したガラス基板について、耐候試験を実施した。耐候試験条件は、試験機として強エネルギーキセノンメーターを使用し、1000時間、着色層の膜面に照射した。その測定結果を図6(表3)に示す。
【0081】
この図6(表3)によると、実施例4、6、7では、耐候試験において透過率変化、色調変化が少なく良好な結果を示すことがわかる。実施例3では、耐候試験後に透過率が上昇し、色が薄くなっていることが観察された。また色調において、a値及びb値の低下が知見され、着色層が赤みを帯び、黄色みが薄くなっている。これは、青色カット効果が低下していることを示す。これらの性能低下は、紫外線によって、Ag微粒子が酸化されることにより生じたと推察される。即ち、耐候性を考慮すると、着色層にSn、Feが含まれることが望ましいことがわかる。
【0082】
なお、実施例7では、耐紫外線には優れた効果を示すものの、Sn過多によりヘーズ率が高くなっていることが分かる。Feを含有する実施例6では、耐紫外線効果を奏することが確認できるものの、Snを含有する実施例4や実施例7と比較すると、Snの方がその効果が高いことが分かった。
【0083】
(実験例2)
本発明者らは、本発明の実施例4と比較例1〜6(配合表については図4参照。)について、着色層の分光特性を測定した。なお、実施例4については、着色層とソーダライムガラスからなるものについても分光特性を測定した(図7参照)。測定結果は、図7〜9に示す。
【0084】
以上の実験例2における測定結果から、次の点が実証された。
(1)図7に示すように、実施例4では520nm以上の波長域に関して90%以上の高い透過率を示すのに対し、405nmの透過率は4%となり、500nm以上の波長域の透過率を低減させることなく、400〜500nmの波長域の光を適度に吸収できる。
(2)図8に示すように、比較例1〜4では、500〜600nmに吸収ピークを持ち、500〜600nmの透過率が低下している。それに対し、400〜500nmの透過率低減効果はほとんど認められない。
(3)一方、図9に示すように、比較例5、6は、実施例4と同様に、500nm以上の波長域の透過率を低減させることなく、400〜500nmの波長域の光を適度に吸収できる。但し、実施例4と比較すると405nmの透過率低減効果は低い。
【0085】
以上、本発明に係る車両用ミラーを実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明は特にこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係る車両用ミラーは以上のような構成であり、防眩性及び視認性を向上させるから、見栄えが良く意匠性を向上させることができるから、車両用の室内ミラー、サイドミラーに適している。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】(a)は実施例1を説明する図であり、(b)は実施例2を説明する図である。
【図2】(a)は本発明の車両用ミラーの分光反射率特性を示す図であり、(b)はディスチャージヘッドランプおよびハロゲンヘッドランプの分光特性を示す図である。
【図3】本発明の実施例1の車両用ミラーの着色ガラスの分光透過率特性を示す図である。
【図4】本発明の実験例1における実施例3〜10、比較例1〜6の着色層の配合剤の配合表を示す表である。
【図5】実験例1における測定結果を示す表である。
【図6】本発明の耐候試験の結果を示す表である。
【図7】実験例2における測定結果を示すグラフであり、実施例4の着色層と、着色層及びガラス基板の分光特性を示している。
【図8】実験例2における測定結果を示すグラフであり、実施例4と比較例1〜4の分光特性を示している。
【図9】実験例2における測定結果を示すグラフであり、実施例4と比較例5、6の分光特性を示している。
【符号の説明】
【0088】
1、5 車両用ミラー
2 ガラス基板
3 着色層
4 反射膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、該ガラス基板の表面に形成された着色層と、前記ガラス基板の裏面に形成された反射膜とを備えた車両用ミラーであって、
前記着色層は、Ag微粒子と、Si、B、Pから選ばれた少なくとも一種の元素を含む酸化物と、金属酸化物と、を含有し、
前記車両用ミラーの入射光の波長域に対する平均反射率が、400〜500nmで25〜35%、500〜600nmで40〜50%、600〜700nmで35〜45%であることを特徴とする車両用ミラー。
【請求項2】
ガラス基板と、該ガラス基板の裏面に形成された着色層と、前記ガラス基板の裏面に形成された反射膜とを備えた車両用ミラーであって、
前記着色層は、Ag微粒子と、Si、B、Pから選ばれた少なくとも一種の元素を含む酸化物と、金属酸化物とを含有し、
前記車両用ミラーの入射光の波長域に対する平均反射率が、400〜500nmで25〜35%、500〜600nmで40〜50%、600〜700nmで35〜45%であることを特徴とする車両用ミラー。
【請求項3】
前記Si、B、Pから選ばれた少なくとも一種の元素を含む酸化物が、Si酸化物である請求項1又は2に記載の車両用ミラー。
【請求項4】
前記金属酸化物が、Ti酸化物を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ミラー。
【請求項5】
前記金属酸化物が、Sn酸化物及びFe酸化物の両方またはいずれか一方を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用ミラー。
【請求項6】
前記ガラス基板が、青または緑に着色された着色ガラスである請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用ミラー。
【請求項7】
前記ガラス基板が、次の特性を備えている請求項6に記載の車両用ミラー。
85≦L*≦100
−30≦a*≦0
−30≦b*≦30
但し、L*は明度であり、a*及びb*は色相と彩度を示す色度であって、a*は赤方向であり、b*は黄方向である。
【請求項8】
ガラス基板と、該ガラス基板の表面に形成された着色層と、前記ガラス基板の裏面に形成された反射膜とを備えた車両用ミラーの製造方法であって、
前記ガラス基板の表面に、Ag微粒子と、Si、B、Pから選ばれた少なくとも1種の元素を含む有機化合物と、有機金属化合物と、バインダー樹脂と、有機溶剤とを含んでなるガラス着色用発色剤を塗布した後、これを焼成して、前記着色層を形成する工程を含むことを特徴とする車両用ミラーの製造方法。
【請求項9】
ガラス基板と、該ガラス基板の裏面に形成された着色層と、該着色層の裏面に形成された反射膜とを備えた車両用ミラーの製造方法であって、
前記ガラス基板の裏面に、Ag微粒子と、Si、B、Pから選ばれた少なくとも1種の元素を含む有機化合物と、有機金属化合物と、バインダー樹脂と、有機溶剤とを含んでなるガラス着色用発色剤を塗布した後、これを焼成して前記着色層を形成する工程を含むことを特徴とする車両用ミラーの製造方法。
【請求項10】
前記Si、B、Pから選ばれた少なくとも1種の元素を含む有機化合物が、有機Si化合物である請求項8又は9に記載の車両用ミラーの製造方法。
【請求項11】
前記有機金属化合物が、有機Ti化合物を含む請求項8〜10のいずれか1項に記載の車両用ミラーの製造方法。
【請求項12】
前記有機金属化合物が、有機Sn化合物及び有機Fe化合物の両方又はいずれか一方を含む請求項8〜11のいずれか1項に記載の車両用ミラーの製造方法。
【請求項13】
前記有機金属化合物が、有機Sn化合物を含み、かつ
前記ガラス着色用発色剤100質量部に対して前記有機Sn化合物が0.1〜2.0質量部である請求項8〜12のいずれか1項に記載の車両用ミラーの製造方法。
【請求項14】
前記有機金属化合物が、有機Fe化合物を含み、前記ガラス着色用発色剤100質量部に対して有機Fe化合物が0.1〜4.5質量部である請求項8〜13のいずれか1項に記載の車両用ミラーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−151203(P2006−151203A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344870(P2004−344870)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】