説明

車両用ルーフモール

【課題】 車両ルーフパネルの縁部に沿った所定の凹部に装着されるルーフモールであって、該凹部内にルーフキャリアの取付金具のような他の部材を収容し得る空間を確保しつつ安定して装着し得るルーフモールを提供すること。
【解決手段】 本発明のルーフモール10は、ルーフパネル30の縁部に沿った所定の凹部32に配置されたときに該凹部32を車外側から遮蔽可能な頭部12と、凹部32に設けられた被装着部38に装着される装着部24とを有している。頭部12は、連結部18を介して繋がる延長部16を有する。このモール10の装着部24が被装着部38に装着されると、連結部18は少なくとも延長部16の回転変位の中心となり、当該延長部16の回転変位は所定の位置で阻止されるので、凹部32内に延長部16が落ち込むのを防ぐことができ所定の空間が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のルーフパネルの縁部に沿って装着されるルーフモールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、構成部材間の隙間を塞いだり或いは装飾の目的で長尺状のモールディング(以下単に「モール」という。)が装着される。例えば、自動車等の車両のルーフパネル縁部に沿うルーフ溝にはルーフモールが装着される。
ところで、前記ルーフ溝には、後にルーフキャリア等を取り付けるための取付金具(ブラケット、ボルト等)のような他部材が配置される場合がある。かかる場合、ルーフモールのルーフ溝への装着が当該他部材によって部分的に阻まれることのないように、何らかの対策を施す必要がある。換言すれば、ルーフモールをルーフ溝に装着した場合でも、他部材を配置し得る空間をルーフ溝内に確保する必要がある。
【0003】
従来の対策として、ルーフ溝における前記取付金具等の他部材が配置されている部位と該金具が配置されていない部位とで装着するルーフモールをそれぞれ異ならせるということが挙げられる。すなわち、取付金具等の他部材がある場合のルーフ溝形状(内部空間)と該部材が無い場合のルーフ溝形状(内部空間)とにそれぞれ対応させて横断面形状の異なる複数のルーフモールを成形し、それらを当該他部材が配置されている部位と配置されていない部位とに別々に装着する。或いは、取付金具等の他部材が無い場合のルーフ溝形状に対応した横断面形状の一のルーフモールを成形し、該モールをルーフ溝に装着するとともに他部材が配置される部位に装着される部分については、該部材が装着の支障とならないようにモールの一部を切除する等の加工を行うことが考えられる。
しかしながら、上述のような複数の形状の異なるルーフモールを使用したり或いはモール装着時に別途削り加工等の処理を行うことは、モール装着に係るコストの上昇及び/又は取付工程の煩雑化を招く虞があり好ましくない。
なお、ルーフモールの取付構造に関する従来技術としては例えば以下の特許文献が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−352074号公報
【特許文献2】特開2004−224232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上述したような車両用ルーフモールの車両ルーフへの装着に関する従来の課題を解決すべく創出されたものであり、その目的とするところは、ルーフパネルの縁部に沿った所定の凹部に装着されるルーフモールであって該凹部内に前記取付金具のような他部材を収容し得る空間を確保でき、安定して装着し得るルーフモールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって以下に列挙するルーフモールが提供される。
即ち、請求項1の発明は、車両のルーフパネルの縁部に沿って設けられた溝状のモール配置用凹部に取付可能なポリマー材料製の弾性を有する長尺なルーフモールである。このルーフモールは、前記凹部に沿って装着されたとき、該凹部の底壁部と間隔を保って該凹部を車外側から遮蔽可能な頭部と、その頭部の裏面側に設けられ、前記凹部のルーフパネル側の側壁部から所定の距離をおいて該側壁部に沿って設けられた被装着部に装着される装着部とを有している。前記頭部は、該装着部が前記被装着部に装着されたときの該被装着部を基準として前記側壁部の方向への頭部本体部の幅が該被装着部から側壁部までの距離(L)よりも小さく装着部に連なる頭部本体部と、前記本体部の幅方向の前記側壁部寄りの端末から連結部を介して突出するように一体成形された延長部とを有している。そして、該延長部の突出方向先端は、フリー状態で前記距離(L)をわずかに超える距離(L1)に成形されている。ここで、前記延長部の横断面形状は、連結部側を底辺とし前記先端側を頂点とする略三角形状に成形されている。
また、前記連結部の厚さは、前記頭部本体部の厚さよりも薄く、且つ、前記延長部の三角形状の底辺の長さよりも小さく成形されており、該連結部の少なくとも一部を回転中心とする前記延長部の頭部外表面側に向く方向への回転変位を許容している。ここで、前記延長部の回転変位は、前記装着部が前記被装着部に装着されたときの該被装着部を基準として前記延長部の回転変位後の前記先端から前記被装着部までの距離が前記L1を下回るが前記Lをわずかに上回る距離となるところで阻止されるように構成されていることを特徴とする。
なお、ここで「ポリマー材料」とは弾性を有する高分子であれば、特に限定されない。例えば、ポリプロピレン樹脂及びポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂、或いは熱可塑性エラストマー樹脂(オレフィン系、スチレン系等)、或いはEPDM等のゴムが挙げられる。
また、ここで開示されるルーフモールの「頭部」とは、ルーフモールを車両のルーフパネル縁部にあるモール配置用凹部に取り付けたときに、該凹部の外部に配置される部分をいう用語である。他方、ここで開示されるルーフモールの「装着部」とは、車両にルーフモールが設置されたとき、前記凹部に設けられた被装着部と係止する部分をいう。従ってここで開示されるルーフモールは、前記装着部によって車両に固定される。
また、前記頭部に包含される「延長部」とは、モール配置用凹部のルーフパネル側の側壁部に弾接係止される部分である。ここで、該延長部の横断面形状を示す「略三角形状」とは、先端にいくほど徐々に細くなる形状を示す概念であり、一般的な三角形状に限定されない。例えば、先端部分に丸みがある形状や、先端部分が面取りされ横断面形状が略台形状であるもの、或いは横断面形状における辺部が曲線で形成されるものも、ここでいう「略三角形状」に含まれる。
【0007】
請求項1のルーフモールでは、上記のとおり、頭部に包含される延長部の回転変位が所定の位置で阻止されるように構成されている。このため、該ルーフモールが車両に装着されている状態では、頭部本体に車外側から車内側に向けて不測の外力がかかったとしても略三角形状の延長部の変位が一定位置で停留されるため、該頭部本体の該凹部の底方向への落ち込みが防止される。
また、請求項1のルーフモールでは、前述した作用により頭部本体がモール配置用凹部の底壁部まで落ち込むことがないため、該頭部本体部の裏面と該凹部底壁部との間に所定の空間が確保される。これにより、前記空間内に他部材(典型的にはルーフキャリア用固定治具。例えば、ナット、ボルト、ブラケット等の取付金具。)を自由に設けることができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1のルーフモールにおいて、前記連結部は車外側に開口する凹溝が前記本体部と前記延長部との間に形成されるように薄肉に成形され、前記延長部の回転変位の途中で、前記凹溝がふさがるように該延長部の一部が対向する前記頭部本体部に当接して所定以上の変位が阻止されるように設定されているものである。
請求項2のルーフモールによると、請求項1のルーフモールの奏する効果に加えて、容易に変形可能な連結部が変位中心として作用し、延長部の回転変位が好ましく行い得るという効果が得られる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1のルーフモールにおいて、前記連結部は、外側表面が前記延長部表面と滑らかに連結された外側薄肉連結部と、該外側薄肉連結部より車内側に形成された空洞をはさんで成形された所定の距離だけ拡開可能な薄肉連結片とが一体成形されており、前記延長部の変位の際に薄肉連結片が伸長して又は拡開して所定以上の変位が阻止されるように設定されているものである。
請求項3のルーフモールによれば、請求項1のルーフモールの奏する効果に加えて、容易に変形可能な連結部である外側薄肉連結部が変位中心として作用し、延長部の回転変位が好ましく行い得るとともに、車両外方から視認される頭部外表面が滑らかな面で出現されるため、外観性(外表面側に溝等の線が発生しない)が向上するという効果が得られる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかのルーフモールにおいて、前記装着部は、ルーフパネルの前記凹部の底壁部から車外側に突出するフランジを両側から挟持し得る横断面形状が略逆U字状に成形され、前記逆U字形装着部の内面の一の側面から他の側面に向けて突出し、前記フランジに弾接して挟持する挟持リップを備えるものである。
請求項4のルーフモールによれば、請求項1から3のいずれかのルーフモールの奏する効果に加えて、ルーフパネル(即ち車両)への装着が容易であるとともに、装着後の安定性が高いという効果が得られる。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかのルーフモールにおいて、前記頭部は、幅方向で前記延長部と反対側に一体に突出成形されたシール部を更に有し、前記シール部は、その少なくとも先端側が頭部本体部よりも柔軟な材料で成形され、車両の開閉車体部材に弾接したとき、密着可能となっているものである。
請求項5のルーフモールは、請求項1から4のいずれかのルーフモールの奏する効果に加えて、シール部が車両の開閉車体部材に効果的に弾接してシール機構を発揮するとともにルーフモールの装着と同時にシール部材の装着が完了するため、装着作業が効率化されるという効果が得られる。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5のルーフモールにおいて、前記頭部本体部、連結部及び延長部が非発泡の軟質ゴム又は非発泡の軟質熱可塑性エラストマーから成形され、前記シール部が発泡した軟質ゴム又は発泡した軟質熱可塑性エラストマーから成形されているものである。
請求項6のルーフモールは、請求項5のルーフモールの奏する効果に加えて、開閉車体部材(典型的には車両のドアパネル。以下単に「ドア」ともいう。)に弾接した状態(即ち、ドア等の開閉車体部材が閉じた状態)における車両内外間の水密性が向上されるとともに、弾接する(即ちドア等の開閉車体部材を閉める)際に車両に加わる衝撃が該シール部によって好適に吸収されるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(押出成形プロセスのようなモールディングの一般的な製造方法)は、いずれも従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている事項と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0014】
本発明のルーフモールは、長手方向の少なくとも一部において、上述した構成の頭部本体部、連結部及び延長部から成る頭部と、装着部とを有しておればよく、その他のエレメント(付属部分)の有無に関しては特に制限はない。
先ず、本発明のルーフモールの構造について説明する。
本発明のルーフモールは車両のルーフパネルの縁部(典型的には車両前後方向の側部)に沿って溝状に設けられたモール配置用凹部に取り付けられる長尺部材であり、その構造は頭部と装着部とに大別される。典型的には、かかる頭部と装着部とはポリマー材料の押出成形等によって一体に成形される。
本発明に係る頭部は、前記凹部に備えられたときに該凹部の底壁部と間隔を保ちながら凹部を車外側から遮蔽しており、その構造は、大まかにいって、本体部と、延長部と、本体部と延長部とをつなぐ連結部とから構成されている。ルーフモールの用途及び該用途に応じた独自の形状(特に横断面形状)によってモール頭部は更に細分化し得るが本発明は当該細分化によって限定されない。例えば、ここで開示されるルーフモールの一形態として、ルーフパネルと開閉車体部材(典型的にはドアパネル)とに挟まれる位置に装着されるモール(ルーフサイドモールとも呼ばれる。)が挙げられる。かかる形態のルーフモールでは、頭部の構成要素として車両開閉部材に弾接されるシール部を含み得る。
【0015】
頭部本体部の裏面側(即ち装着時に車両を構成するパネルと対向する側)のいずれかの位置(好ましくは横断面形状において中央寄りの部分)に後述する装着部が成形(好ましくは一体成形)される。かかる装着部は、前記凹部のルーフパネル側の側壁部から所定の距離をおいて該側壁部に沿って設けられた被装着部に装着されたときの該被装着部を基準とした前記側壁部方向への頭部本体部の幅が、該被装着部から側壁部までの距離(L)よりも小さく設計される。そして、該側壁部に向けて頭部本体部から後述する連結部を介して突出するように延長部が設けられる。
【0016】
かかる延長部は、前記凹部の側壁部又は側壁部の上縁に弾接して係止される部位である。延長部の横断面形状は、前記本体部側から突出方向先端に向けて徐々に細くなる形状(例えば、本体部側を底辺とし突出方向先端を頂点とした略三角形状)になるように形成されることが好ましい。ここで、装着部が車両に装着されたときの所定の被装着部を基準として、該延長部の突出方向先端がフリー状態(即ち延長部が車両パネル等に接触していないフリーの状態)で前記距離(L)をわずかに超える距離(L1)に位置するように成形される。そして、好適には、車両ルーフに装着された際、後述する連結部が変位中心となって回転変位され、延長部の車両外側からみて裏面側に相当する部位が前記凹部のルーフパネル側の側壁部に弾接して係止されるように成形される。
【0017】
前記頭部本体部と前記延長部との間にある連結部は、前記延長部の回転変位の変位中心となり得る形状に成形される。かかる連結部は、頭部本体部と該本体部側面に対向する延長部とを連結するとともに、該延長部の上述した回転変位を所定の位置まで許容するとともに該所定位置で阻止し得るように構成される。従って、このような回転変位及び変位阻止機構が円滑に実施し得ればよく、連結部の形状や該連結部が成形される部位等はルーフモールの形状及び車両側のモール配置用凹部の形状に応じて異なってよく、特に限定されない。また、回転変位及び変位阻止機構を好適化するために、付加的な要素を備えてもよい。
好ましい形態の延長部及び連結部を備えたルーフモール(後述する実施例参照)では、頭部本体部が所定位置を超えてルーフモール配置用凹部に落ち込まずに停留され、頭部本体部裏面側とモール配置用凹部の底壁部との間に他部材(典型的にはルーフキャリア用固定治具。例えば、ナット、ボルト、ブラケット等の取付金具。)を取り付けるための空間が確保される。
【0018】
また、本発明は、ドアパネル等の開閉車体部材に弾接して密着し得るシール部が一体成形された頭部を有するルーフモールに好ましく適用することができる。本発明により提供されるかかる構成のルーフモールは、シール部材を新たに追加する必要がなく、部品点数の削減が実現されると共に、ルーフモールの装着によってシール部材の装着も完了することから、装着作業が効率化される。
【0019】
次に、本発明のルーフモールに係る装着部の構成について説明する。
装着部は前記頭部裏面に設けられており、車両側の被装着部の形状に対応した形状であってルーフモールを被装着部に固定し得ればその形状は特に限定されない。
例えば、モール配置用凹部に沿ってフランジ状の被装着部が設けられている場合、前記装着部は該フランジに被さる(フランジを挟み込む)形状、例えば横断面が略逆U字形状であるものが採用される。また、装着安定性を向上させるため、種々の要素(例えば、被装着部であるフランジ部に弾接して挟持し得る挟持リップを装着部に備えること、或いは装着部の挟持部分に高摩擦係数の材料をコーティングすること)を付加することができる。
【0020】
次に、本発明のルーフモールを製造するために用いられる材料について説明する。
ここで開示されるルーフモールの主要部分である頭部及び装着部の主要成分は、弾性を有するポリマー材料であれば特に限定されない。例えば熱可塑性樹脂を採用する場合、汎用樹脂でもエンジニアリング樹脂(所謂エンプラ)でもよく、結晶性樹脂でも非晶質樹脂でも良い。典型的には、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリルエチレンプロピレンゴムスチレン共重合体(AES)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。或いは、種々のグレードのポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等を用いることが可能である。
環境に対する配慮から、塩素等のハロゲンを含まない樹脂が好ましく、リサイクル性等の観点からポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が好ましい。
特に、取り扱い性がよく弾力性に優れた種々の熱可塑性エラストマー(例えばオレフィン系、スチレン系、ビニル系)を好適に使用することができる。また、車両外方に配置される頭部と車両の被装着部に取り付けられる装着部は、適度な剛性を備えるものが好ましい。このため、適度な剛性を備えた非発泡の熱可塑性エラストマー及びEPDM等の非発泡の軟質ゴムを好適に使用することができる。
なお、本発明の実施にあたっては、例示したようなポリマー材料の1種類をマトリックス成分とする成形材料を用いてもよく、或いは、2種類又は3種類以上の熱可塑性樹脂から成るポリマーコンプレックスやポリマーアロイをマトリックス成分とする成形材料を用いてもよい。
【0021】
また、頭部及び装着部を構成するポリマー材料には、種々の副成分を含有させ得る。そのような副成分として好適なものに、粉状及び/又は繊維状の固形充填材が挙げられる。この種の固形充填材としては、安定した物性を有するもの(典型的には従来から充填材として使用されているもの)であれば特に制限なく使用することができる。例えば、セラミック粉(タルク等の種々の無機化合物粉を包含する。以下同じ。)、カーボン粉(例えばカーボンブラック)、木粉、セラミックファイバー、カーボンファイバーが例示される。或いは、鉄粉等の金属粉や植物等(例えば木綿)から成る繊維状有機物であってもよい。好ましいセラミック粉としては、酸化物、ケイ酸塩、炭酸塩等の粉状物(典型的には粒径1〜1000μm)が挙げられる。ケイ酸塩としてはタルク、クレー、マイカ、ガラスビーズ等があり、強度向上の観点から特にタルクが好ましい。酸化物としてはシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、軽石等が挙げられる。炭酸塩としては炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。また、セラミックファイバーの好適例としては、直径が0.1〜500μm程度のガラスファイバー、ボロンファイバー、炭化ケイ素ファイバーが挙げられ、ガラスファイバーが特に好ましい。
また、頭部成形材料及び/又は装着部成形材料には、上記固形充填材の他に、種々の補助成分を含有させることができる。かかる補助成分としては、酸化防止剤、光安定剤、UV吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、難燃剤、分散剤、抗菌剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0022】
また、後述する実施例のように、ここで開示されるルーフモールは、車両の開閉車体部材(典型的には車両のドアパネル)と弾接されるシール部が頭部と一体成形される形態であり得るが、かかるシール部を構成する材料は上述した頭部及び装着部を構成するポリマー材料よりも柔軟で弾力性がある材料が好ましく選択される。例えば、発泡した軟質ゴム(例えばスポンジゴム)又は発泡した熱可塑性エラストマー(例えばオレフィン系、スチレン系、ビニル系)が好適である。かかる材料(発泡した軟質ゴム又は発泡した熱可塑性エラストマー)から成るシール部を備えることにより、ドアパネルと弾接する時の衝撃吸収性及びドア閉止時の優れたシール性を実現することができる。
【0023】
本発明のルーフモールは、上述した種々の成形材料を用いて従来公知の種々の成形法(好ましくは押出成形法)によって製造することができる。また、ルーフモールが前記シール部を含む場合、シール部成形材料が熱融着や加硫接合により他の頭部成形材料と一体になるように、シール部成形材料を他の頭部成形材料及び装着部成形材料と共に使用していわゆる共押出成形することが好ましい。
なお、ここで開示されるルーフモールには、他の一般的な車両装着用の長尺なモールディングと同様、芯材が埋設(インサート)されてもよい。断面円形のワイヤ形状、平板形状等の金属製芯材を埋設することが、モール装着作業性及び装着後の寸法形状安定性の観点から好ましい。また、ここで開示されるルーフモールの一形態として上述した断面略逆U字形状の装着部を備えたものが挙げられるが、かかる形態のルーフモールには装着部の断面形状に合わせた逆U字断面形状の複数のリブ(肋骨)を備えた芯材を埋設することができる。この種の芯材が埋設されたルーフモールは被装着部(即ち車両)への装着強度が向上する。
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明のルーフモールのいくつかの実施例を説明する。なお、本発明を以下の説明及び関連する図面に示す形状に限定することを意図したものではない。
【0025】
<第一実施例>
本実施例に係るルーフモール10は、一般的な車両(自動車)1のルーフパネル30の両側縁部に備えられるモールであってルーフパネル30と開閉ドアパネル40との間に配置されるモールである。なお、図1は車両1の正面から見て左側に備えられたルーフモール10の外観と装着位置を模式的に示す斜視図である。図2は本実施例のルーフモール10を車両に装着した状態で車両の左側面からみた図である(なお、ルーフモールの状態を明示するため、車体についての図示は省略して示している)。
このルーフモール10はルーフパネル30に沿って装着される主要部分(即ち本発明に係る部分)とともにフロントウインドウの側縁部ならびにコーナー接続部(即ちフロントウインドウ側縁部とルーフパネル30の側縁部とを接続するコーナー部)に装着する部分が長手方向に一繋がりに一体的に成形されたものである。なお、ウインドウ側縁部に装着される部分6ならびにコーナー接続部に装着される部分8のモール形状は当該被装着部の形状及び構造に対応していればよく、何ら本発明を特徴付けるものではないため詳細な説明は省略する。
【0026】
図3は、本実施例に係るルーフモール10の主要部の横断面形状を示す断面図である。なお、車両装着時の状態を示すため、関連する車体側の部材については二点鎖線で示している。また、図4は図2におけるIV−IV線断面図(ブラケット44が設置される部分5)である。
図3及び図4に示すように、本実施例に係るモール配置用凹部32はルーフパネル30の側縁部がプレス成形により溝状に車両前後方向に形成された凹部32である。図示されるように、凹部32の車外寄りの側壁38は、ルーフパネル30の縁端が上向きにプレス成形されることによってフランジ部38を形成している。かかるフランジ部38が本実施例に係るルーフモール10の被装着部38である。
【0027】
図3及び図4に示すように、本実施例に係るルーフモール10は、大まかにいって、頭部12と装着部24とから成る。
頭部12は、モール配置用凹部32を遮蔽する頭部本体部14と、薄肉の連結部18と、頭部本体部14から当該連結部18を介して車体側に突出するように設けられる延長部16と、シール部22とを備えている。
頭部本体部14は、大まかに区分して、装着部24の上部にあたり該装着部24に連なる装着頭部17と、該装着頭部17よりも車両ルーフ寄りでモール配置用凹部32の上部を主として覆う肉厚部15と、該装着頭部17よりも車両外側(ドアパネル40寄り)でその先端にシール部22が接続する延出部20とから構成されている。
肉厚部15は装着頭部17よりも盛り上がる形状で成形される一方、モール裏面側において後述するブラケット44が配置し得る空間33(凹部32)が確保されるように成形されている。また、肉厚部15は、凹部32の中央付近に位置する部位が最も肉厚であり、ルーフパネル30側の側壁部34に向けて表面が湾曲しつつ僅かに薄肉になるように成形されている。ここで肉厚部15は、図3に示すように、車両に装着された時に凹部32のルーフパネル側の側壁部34へ少し距離を残す位置まで到達するように(即ち、車両に装着されたときの被装着部38(フランジ部38)を基準として側壁部34方向への頭部本体部14の幅が、該被装着部38から側壁部34までの距離(L)よりも小さくなるように)設計されている。そして、その端面に側壁部34に向けて後述する形態の連結部18を介して突出するように、延長部16が設けられている。
【0028】
延長部16は、その横断面形状が前記本体部14側を底辺として突出方向を頂点とした略三角形状に形成されており、その先端部が前記凹部32のパネル寄り側壁部34に弾接係止されるように構成されている。図3に示すように、延長部16の突出方向先端は、フリー状態で前記距離(L)をわずかに超える距離(L1)が得られるように成形されている。
【0029】
かかる延長部16と頭部本体部14(肉厚部15)との間には、両者の対向する面の厚みよりも薄肉の連結部18が形成されている。具体的には、図3に示すように、かかる連結部18は、頭部12裏面側においては本体部14(肉厚部15)から延長部16にかけて滑らかに連結するよう略直線横断面形状で形成される一方、頭部12表面側においては本体部14と延長部16との間に車外側に向けて開口する凹溝19が形成されるように薄肉に成形されている。
而して、車両装着前(フリー状態時)における頭部12の状態を二点鎖線で示し装着後の状態を実線で示した図4から明らかなように、本実施例に係るルーフモール10を凹部32に沿って設けられたフランジ部38に装着した際には、凹部32の溝幅、頭部本体部14(肉厚部15)の横幅及び被装着部38から延長部16先端までの長さに関連する上述した距離LとL1との関係から、側壁部34に当接した延長部16が連結部18を回転中心として回転変位し、やがて該延長部16の一部(頭部12表面側の頂点付近)が対向する本体部14(肉厚部15)の側面に当接した時点(即ち凹溝19の開口部が塞がれる時点)で回転変位が阻止され、その状態を維持することができる。即ち、回転変位を阻止され側壁部34に当接した延長部16とフランジ部38に装着された装着部24により、頭部本体部14(肉厚部15)は凹部32を遮蔽した状態で係止されており、凹部32の底壁部36と頭部12裏面との間に所定の空間33を確保することができる。そして、かかる当接係止機構によって、頭部本体部14(肉厚部15)は所定位置に停留され、該空間33内に落ち込まない。これにより、図2に示すように、本実施例では、ルーフモール10に阻まれることなく、凹部32内の任意の位置(空間33)にルーフキャリア等を取り付けるための冶具(ここではブラケット44)を配置することができる。換言すれば、ブラケット44等の冶具の有無に拘わらず、ルーフパネル30の縁部に沿ってルーフモール10を車両前後方向に亘って装着することができる。
【0030】
図3及び図4に示すように、本実施例に係るルーフモール10には、頭部本体部14(装着頭部17)から延びる横断面が長靴形状の延出部20を備える。延出部20は、頭部本体部14と接続する部分にくびれ部20aを有する。また、延出部20の下端角部20b(即ち断面長靴形状におけるかかと部分)は、ルーフパネル30のドアパネル40側に延伸した延長部42)に接する位置に配置される。
かかる形状の延出部20を介して斜上方(車体に閉じられた際のドアパネル40の裏面即ちルーフパネル延長部42に対向する面)側に反り返るような湾曲形状で延出部20の先端に一体成形されたシール部22を有する。シール部22は、ドアパネル40と接触する部分(先端部)を強化するために、該接触付近が他の部位よりも肉厚になり且つ先端に向けて細くなるように成形されている。図4に示すように、シール部22はフリーの状態では緩やかに湾曲する形状であるが、ドアパネル40と接触した状態(即ちドアパネル40が閉じられた状態)においてはさらに湾曲することができる。即ち、シール部22は、開閉車体部材であるドアパネル40との接触により弾性変形し、車体に閉じられた際の当該ドアパネル40の裏面側に弾接する。
他方、ドアパネル40が閉められてそれに接触したシール部22が弾性変形したときには、それによって生じる衝撃が該くびれ部20aによって緩和される。さらにその応力によって延出部20がくびれ方向に湾曲し、図示されるように延出部20の下端角部20b(即ち断面長靴形状におけるかかと部分)がルーフパネル30(延長部42)に強く圧接される。
以上のようにして、シール部22と延出部20とによってドアパネル40とルーフパネル延長部42との間のシールを確実に行うことができる。
【0031】
本実施例に係るルーフモール10の装着部24は、その横断面形状が略逆U字形状であり、その対向内壁面には被装着部(フランジ部)38に弾接係止される挟持リップ28が対向して2個づつ(合計4個)設けられている。これにより、ルーフモール10を被装着部(フランジ部)38に確実に固定することができる。
また、装着部24には長手方向に延びる断面平板形状の幹部(図示しない背骨部)を有する金属製芯材26が埋設されている。この芯材26の幹部には、長手方向に沿って適当な間隔をあけつつ複数の横断面が略逆U字形状のリブ(肋骨部)が設けられている(図3及び図4はそのリブが設けられた部分の断面図である。)。これにより、ルーフモール10の姿勢安定性を向上させている。
特に限定されるものではないが、本実施例に係るルーフモール10は、頭部12に備えられたシール部22を除く部位が非発泡性の軟質ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーで構成され、シール部22は発泡性の軟質ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーで構成されている。本実施例に係るルーフモールは、これらポリマー材料を用いた共押出成形によって容易に製造することができる。また、本実施例に係るルーフモール10はドアパネル40と弾接係止するシール部22が頭部12と一体に成形されるため、部品点数や製造コストを削減することができる。
【0032】
<第二実施例>
次に、本発明に係るルーフモールの第二の実施例について説明する。なお、本実施例に係るルーフモール50を特徴付ける頭部52の連結部60及び延長部56以外の部分については、上述した第一実施例と同様の形態であるのでそれらについての説明は省略する。
【0033】
図5は本実施例に係るルーフモール50の頭部52がモール配置用凹部32の側壁部34にどのような形態で弾接しているかを示す部分断面図である。なお、図5では、頭部52の車両装着前(フリー状態)における形状を実線で示し、装着後の形状を二点鎖線で示している。
図示されるように、本実施例に係るルーフモール50は、車両外側の頭部52表面から滑らかに接続された連結部(外側薄肉連結部)60を介して前記第一実施例と同様の延長部56を備えている。また、頭部52(本体部54)の裏面側にはフリー状態において伸長可能な(即ちやや弛んだ)内側の薄肉連結片62が設けられている。即ち、頭部本体部54と延長部56とは、外側薄肉連結部60及び薄肉連結片62の二箇所で連結されており、外側薄肉連結部60と薄肉連結片62との間には空洞64が形成され延長部56の変位を許容している。
【0034】
而して、図5に示すように、本実施例に係るルーフモール50を凹部32に沿って設けられたフランジ部38(図4)に装着した際には、凹部32の溝幅、頭部本体部54(即ち肉厚部)の横幅及びフランジ部38から延長部56先端までの長さに関連する上述した距離LとL1との関係から、側壁部34に当接した延長部56が外側薄肉連結部60を回転中心として回転変位し、やがて薄肉連結片62が最大に伸びた(張った)時点で回転変位が阻止され、その状態を維持することができる。そして、第一実施例と同様、延長部56の回転変位が阻止されることによって、頭部本体部54の凹部32への落ち込みが防止されると共に頭部52裏面側と凹部32の底壁部36との間に空間53が確保され、他部材(例えばルーフキャリア取付用ブラケット)の配置が可能になる。
また、本実施例に係るルーフモール50では、外面側(即ち車両外側に配置される面側)が頭部本体部54から延長部56に至るまで一続きの滑らかな面として視認されるため、第一実施例で示した特性に加えて、優れた外観性が得られるという利点がある。
【0035】
以上、本発明のいくつかの実施例を詳細に説明したがこれらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、ルーフモールの頭部表面に更にカバー層を付加して装飾効果を高めてもよい。また、本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、その一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第一実施例に係るルーフモールが装着された状態の車両を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施例に係るルーフモールを模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の第一実施例に係るルーフモールのフリー状態での横断面形状を示す断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV線断面図であり、車両ルーフに装着した状態でのルーフモールの横断面形状を示す断面図である。
【図5】本発明の第二実施例に係るルーフモールを模式的に示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10,50 ルーフモール
12,52 頭部
14,54 頭部本体部
16,56 延長部
18,60 連結部
22 シール部
24 装着部
32 モール配置用凹部
34 側壁部
36 底壁部
62 薄肉連結片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフパネルの縁部に沿って設けられた溝状のモール配置用凹部に取付可能なポリマー材料製の弾性を有する長尺なルーフモールであって、
前記ルーフモールは、前記凹部に沿って装着されたとき、該凹部の底壁部と間隔を保って該凹部を車外側から遮蔽可能な頭部と、その頭部の裏面側に設けられ、前記凹部のルーフパネル側の側壁部から所定の距離をおいて該側壁部に沿って設けられた被装着部に装着される装着部とを有し、
前記頭部は、該装着部が前記被装着部に装着されたときの該被装着部を基準として前記側壁部の方向への頭部本体部の幅が該被装着部から側壁部までの距離(L)よりも小さく装着部に連なる頭部本体部と、
前記本体部の幅方向の前記側壁部寄りの端末から連結部を介して突出するように一体成形された延長部とを有し、該延長部の突出方向先端は、フリー状態で前記距離(L)をわずかに超える距離(L1)に成形されており、
前記延長部の横断面形状は連結部側を底辺とし、前記先端側を頂点とする略三角形状に成形され、
前記連結部の厚さは、前記頭部本体部の厚さよりも薄く、且つ、前記延長部の三角形状の底辺の長さよりも小さく成形されており、該連結部の少なくとも一部を回転中心とする前記延長部の頭部外表面側に向く方向への回転変位を許容しており、
ここで前記延長部の回転変位は、前記装着部が前記被装着部に装着されたときの該被装着部を基準として前記延長部の回転変位後の前記先端から前記被装着部までの距離が前記L1を下回るが前記Lをわずかに上回る距離となるところで阻止されるように構成されている、ルーフモール。
【請求項2】
前記連結部は、車外側に開口する凹溝が前記本体部と前記延長部との間に形成されるように薄肉に成形され、
前記延長部の回転変位の途中で、前記凹溝がふさがるように該延長部の一部が対向する前記頭部本体部に当接して所定以上の変位が阻止されるように設定されている、請求項1に記載のルーフモール。
【請求項3】
前記連結部は、外側表面が前記延長部表面と滑らかに連結された外側薄肉連結部と、該外側薄肉連結部より車内側に形成された空洞をはさんで成形された所定の距離だけ拡開可能な薄肉連結片とが一体成形されており、前記延長部の変位の際に薄肉連結片が伸長して所定以上の変位が阻止されるように設定されている、請求項1に記載のルーフモール。
【請求項4】
前記装着部は、ルーフパネルの前記凹部の底壁部から車外側に突出するフランジを両側から挟持し得る横断面形状が略逆U字状に成形され、
前記逆U字形装着部の内面の一の側面から他の側面に向けて突出し、前記フランジに弾接して挟持する挟持リップを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のルーフモール。
【請求項5】
前記頭部は、幅方向で前記延長部と反対側に一体に突出成形されたシール部を更に有し、
前記シール部は、その少なくとも先端側が頭部本体部よりも柔軟な材料で成形され、車両の開閉車体部材に弾接したとき、密着可能となっている、請求項1から4のいずれか一項に記載のルーフモール。
【請求項6】
前記頭部本体部、連結部及び延長部は非発泡の軟質ゴム又は非発泡の軟質熱可塑性エラストマーから成形され、
前記シール部は発泡した軟質ゴム又は発泡した軟質熱可塑性エラストマーから成形されていることを特徴とする、請求項5に記載のルーフモール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−199114(P2006−199114A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11994(P2005−11994)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】