説明

車両用内装材及びその製造方法

【課題】 安定的な密着強度が得られる車両用内装材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 不織布4は、ポリオレフィン樹脂製の基層2と、ポリウレタン樹脂製の表層3のそれぞれに対する密着性が高いため、不織布4を介して基層2と表層3とを接合することより、安定した密着強度を得ることができる。また、不織布4がポリオレフィン樹脂製のため、基層2の樹脂と界面接合して結合され、密着力が更に向上する。更に、不織布4がネット5により補強されているため、不織布4自体の強度が向上し、その分、基層2と表層3との密着力も向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のインストルメントパネル等の内装材は、剛性のあるポリオレフィン樹脂樹脂製の基層の表面に、触感性に優れたポリウレタン樹脂製の表層を形成している。この種のインストルメントパネルの製造方法としては、予め成形した基層を、表層形成用の金型内にセットし、基層と一緒に成形することにより、基層の表面に表層を形成している。
【0003】
基層のポリオレフィン樹脂と、表層のポリウレタン樹脂とは、そのままでは相互に密着しにくい(親和性が小さい)性質のため、金型にセットする前の基層の表面に対してウォータージェット処理を施し、基層の表面に粗面を形成しておく必要がある。そうすることにより、一緒に成形した基層と表層との密着力を高めている(例えば、特許文献1。)。
【特許文献1】特開平9−11246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、基層と表層との密着力を高めるために、ウォータージェット処理により基層の表面に予め粗面を形成しているが、ウォータージェット処理による粗面は、一時的に面活性上昇を生ずるものの、処理後の時間経過で活性が低下しやすいため、工程管理が大変に面倒で、結果として安定的な密着強度を得ることが難しかった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、安定的な密着強度が得られる車両用内装材及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、硬質ポリオレフィン樹脂製の基層と、該基層に接合される軟質ポリウレタン樹脂製の表層とを、不織布を介して接合したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、不織布がポリオレフィン樹脂製であることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、不織布がネットにより補強されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、エアバッグに対応する基層の裏面に、扉部を区画するループ状の周辺開裂溝と、該扉部を二分割する中央開裂溝を形成すると共に、不織布における前記中央開裂溝に合致する位置又は中央開裂溝に近接する位置に、中央開裂溝に沿った方向性を有するスリットを形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、硬質ポリオレフィン樹脂製の基層と、該基層に接合される軟質ポリウレタン樹脂製の表層とを、不織布を介して接合した構造で、不織布を基層用の金型にインサートして、基層の成形と一緒に一体化し、次に前記基層を表層用の金型にインサートして、表層の成形と一緒に一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、不織布は、ポリオレフィン樹脂製の基層と、ポリウレタン樹脂製の表層のそれぞれに対する密着性が高いため、不織布を介して基層と表層とを接合することより、安定した密着強度を得ることができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、不織布がポリオレフィン樹脂製のため、基層の樹脂と界面接合して結合され、密着力が更に向上する。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、不織布がネットにより補強されているため、不織布自体の強度が向上し、その分、基層と表層との密着力も向上する。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、エアバッグに対応した扉部を区画する場合も、その中央開裂溝に対応する不織布にスリットを形成したため、中央開裂溝からの開裂を妨げない。また、扉部の周辺開裂溝におけるヒンジになる部分には不織布が存在するため、ヒンジとしての強度が高まり、扉部が外れ飛ぶのを防止する。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、不織布を硬質の基層へ対して先に接合するため、取り扱いが容易で、表層用金型へのセット作業等を従来通りに行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
安定的な密着強度が得られる車両用内装材及びその製造方法を提供する、という目的を、硬質ポリオレフィン樹脂製の基層と、該基層に接合される軟質ポリウレタン樹脂製の表層とを、不織布を介して接合したことで、実現した。以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図3は、本願発明の第1実施例を示す図である。この実施例では、「内装材」として、自動車の車室内前方に設置されたインストルメントパネル1を例にして説明する。このインストルメントパネル1は、ポリオレフィン樹脂としてのポリプロピレン製で且つタルクを添加して強度を高めた基層2と、ポリウレタン樹脂としての無発泡ポリウレタン製の表層3とを有している。表層3の更に表面に表皮を形成しても良い。また、表層3としては、比重0.8以上の微発泡ポリウレタンを用いても良い。
【0018】
基層2と表層3とは、基層2と同じポリプロピレン製の不織布4を介在した状態で接合されている。不織布4は、図3に示すように、間にナイロン又は弗素樹脂等のネット5が挟まれ、このネット5により補強された状態になっている。
【0019】
インストルメントパネル1の助手席側の内部には、図示せぬエアバッグが内蔵され、このエアバッグに対応する基層2の裏面には、扉部6を区画するループ状の周辺開裂溝7と、扉部6を二分割する中央開裂溝8が形成されている。
【0020】
不織布4のうち、中央開裂溝8に合致する位置には、中央開裂溝8に沿った方向性のスリット9が形成されている。
【0021】
扉部6の裏側には、扉部6より大きい樹脂製の裏当部材10が超音波溶着ホーンにより結合されている。裏当部材10は、前後で対向する周辺開裂溝7の一部7aを残して、周囲に切欠溝11が形成されている。周辺開裂溝7の外側にはエアバッグ装置に結合するフランジ12が形成され、フランジ12の内側の前記周辺開裂溝7の一部7aに対応する部分には湾曲状のヒンジ13が形成されている。
【0022】
次に、インストルメントパネル1の成形方法を説明する。基層2を成形するための金型内に不織布4をインサートし、不織布4も一緒に金型内において基層2を成形するためのポリプロピレンの射出成形を行う。これにより、表面に不織布4を一体的に接合した基層2が得られる。基層2の裏面には、周辺開裂溝7や中央開裂溝8も、金型により転写形成されている。
【0023】
そして、不織布4を表面に一体化した基層2を、別の金型にインサートする。この時、不織布4を硬質の基層2に先に接合するため、取り扱いが容易で、表層3用金の型へのセット作業等を従来通りに行える。基層2がセットされた金型により、表層3を成形するための無発泡ポリウレタンのRIM成形を行う。
【0024】
このようにして得られたインストルメントパネル1は、基層2と不織布4とが界面接合して強力に接合され、また表層3と不織布4とが含浸によるアンカー効果により強力に接合されるため、不織布4を介在させることで、基層2と表層3とが強力に密着される。しかも、不織布4がネット5により補強されているため、その分、不織布4自体の強度が向上し、基層2と表層3との密着力が更に高まっている。
【0025】
そして、このようなインストルメントパネル1のおいて、内蔵されたエアバッグが膨張すると、インストルメントパネル1に区画された扉部6は、中央開裂溝8から二分割して開き、エアバッグを室内側に展開する。
【0026】
扉部6の中央開裂溝8に対応する不織布4には、中央開裂溝8に合致したスリット9が形成されているため、中央開裂溝8からの開き動作を邪魔しない。また、扉部6は前後で対向する周辺開裂溝7の一部7aをヒンジにして開くが、その部分には不織布4が存在するため、扉部6のヒンジとしての強度が高まり、扉部6がインストルメントパネル1から外れて、裏当部材10のヒンジ13のみで支持されるような状況を回避する。
【実施例2】
【0027】
図4は、本願発明の第2実施例を示す図である。この第2実施例に係るインストルメントパネル14では、基層15の中央開裂溝16に対応する部分にスリット9を通過して表層17側へ突出する突起部18を形成した。そのため、表層17側にも中央開裂溝19が形成された構造となり、エアバッグ膨張時における扉部6の分割がより確実に行われる。その他の構成及び作用効果は、第1実施例と同様に付き、共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例3】
【0028】
図5は、本願発明の第3実施例を示す図である。この第3実施例に係るインストルメントパネル20では、不織布21のスリット22が、中央開裂溝8よりも若干前側近接位置にオフセットしており、またスリット22に対応する基層23には、表層24が入り込む凹部25が形成されている。
【0029】
このように、不織布21のスリット22が中央開裂溝8と合致していなくても、扉部6を確実に開くことができる。また、凹部25が形成されている分、基層23が分割しやすくなっている。その他の構成及び作用効果は、第1実施例と同様に付き、共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上の実施例では、内装材としてインストルメントパネル1を例に説明したこれに限定されず、本願発明は、硬質ポリオレフィン樹脂製の基層と、軟質ポリウレタン樹脂製の表層とを有する全ての内装材に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施例に係るインストルメントパネルを示す斜視図。
【図2】図1中矢示SA−SA線に沿う断面図。
【図3】図2のネットを挟んだ不織布を示す斜視図。
【図4】本発明の第2実施例に係るインストルメントパネルを示す断面図。
【図5】本発明の第3実施例に係るインストルメントパネルを示す断面図。
【符号の説明】
【0032】
1、14、20 インストルメントパネル(内装材)
2、15、23 基層
3、17、24 表層
4、21 不織布
5 ネット
6 扉部
7 周辺開裂溝
8、16 中央開裂溝
9、22 スリット
10 裏当部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ポリオレフィン樹脂製の基層と、該基層に接合される軟質ポリウレタン樹脂製の表層とを、不織布を介して接合したことを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
請求項1記載の車両用内装材であって、
不織布がポリオレフィン樹脂製であることを特徴とする車両用内装材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両用内装材であって、
不織布がネットにより補強されていることを特徴とする車両用内装材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用内装材であって、
エアバッグに対応する基層の裏面に、扉部を区画するループ状の周辺開裂溝と、該扉部を二分割する中央開裂溝を形成すると共に、
不織布における前記中央開裂溝に合致する位置又は中央開裂溝に近接する位置に、中央開裂溝に沿った方向性を有するスリットを形成したことを特徴とする車両用内装材。
【請求項5】
硬質ポリオレフィン樹脂製の基層と、該基層に接合される軟質ポリウレタン樹脂製の表層とを、不織布を介して接合した構造で、
不織布を基層用の金型にインサートして、基層の成形と一緒に一体化し、次に前記基層を表層用の金型にインサートして、表層の成形と一緒に一体化することを特徴とする車両用内装材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−1366(P2006−1366A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178489(P2004−178489)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】