説明

車両用内装材

【課題】 アルデヒドなどのVOCや悪臭ガスの除去能に優れる車両用内装材を提供すること。
【解決手段】 上記課題を解決する車両用内装材は、基材と、当該基材に付着したガス吸着剤とを有する車両用内装材であって、ガス吸収剤が、アミノ基及び/又はイミノ基を有する有機ケイ素化合物を微粒子担体に担持し、当該アミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を、炭酸、蟻酸及び酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸で中和して得られるものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室には、天井材、トランクトリムなどのトリム材、フロアマットなどのマット材、クッション材、吸音材等、多くの内装材が備えられている。
【0003】
近年、自動車内におけるアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)を低減する動きが自主的に始まっている。VOC対策として、例えば、ポリウレタンフォームの表面にガス吸着剤などを塗布することなどが行われている(例えば、特許文献1)。ガス吸着剤としては、ヒドラジン誘導体などが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−124743号公報
【特許文献2】特許2818929号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のガス吸着剤を塗布した内装材は、ガス吸着剤の使用量に見合うVOCや悪臭の低減効果が得られない場合があり、ガス吸着性能の点で更なる改善の余地がある。なお、VOCなどの除去能を上げる方法として多量のガス吸着剤を内装材に付着させることが考えられるが、このような方法のみでは白化や粉落ちなどの問題が生じやすくなるため、内装材の外観や使用性が損なわれてしまう場合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、アルデヒドなどのVOCや悪臭ガスの除去能に優れる車両用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、基材と、当該基材に付着したガス吸着剤とを有する車両用内装材であって、ガス吸収剤が、アミノ基及び/又はイミノ基を有する有機ケイ素化合物を微粒子担体に担持し、当該アミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を、炭酸、蟻酸及び酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸で中和して得られるものであることを特徴とする車両用内装材を提供する。
【0008】
本発明によれば、上記構成を有するガス吸着剤が、アルデヒド系のガス及び酢酸等の酸性系の悪臭ガスの吸着性能に優れることから、アルデヒドなどのVOCや悪臭ガスの除去能に優れる車両用内装材を有効に実現することができる。
【0009】
また、上記本発明に係るガス吸着剤は、ヒドラジン誘導体などの従来のガス吸着剤と比較して、耐熱性にも優れている。これにより、本発明の車両用内装材は、車両内の高温下にあっても従来よりも高い水準でVOCや悪臭ガスの除去能を維持することができる。更に、本発明の車両用内装材は、120〜180℃の熱加工が施される場合であっても、従来よりも高い水準でVOCや悪臭ガスの除去能を維持できる。
【0010】
また、上記本発明に係るガス吸着剤は、ヒドラジン誘導体などの従来のガス吸着剤と比較して、白化現象が生じにくい。これにより、本発明の車両用内装材は、上記基材が露出する場合であっても、良好な外観を維持しつつ、VOCや悪臭の低減効果を十分有することができる。
【0011】
また、上記ガス吸着剤は、上記構成を有していない、粒子径の大きい担体に担持した有機ケイ素化合物系のガス吸着剤や粒子径が大きい無機系のガス吸着剤と比較して、粉落ちしにくい。これにより、本発明の車両用内装材は、上記基材が露出する場合であっても、粉落ちが発生しにくい良好な使用性を維持しつつ、VOCや悪臭の低減効果を十分有することができる。更に、本発明の車両用内装材は、粉落ちが発生しにくいことから、VOCや悪臭の低減効果を十分有しながらも、加工や組み付けにおける作業環境への影響が従来よりも少ないものになり得る。
【0012】
また、上記ガス吸着剤は、上記構成を有していない、塩酸などの無機塩で中和されているアミン塩系のガス吸着剤と比較して、金属と接触したときの錆発生を少なくすることができる。これにより、本発明の車両用内装材は、上記基材が錆び易い金属と接触する場合であっても、VOCや悪臭の低減効果を十分有することができる。
【0013】
本発明の車両用内装材において、上記微粒子担体は、シリカであることが好ましい。この場合、アミノ基及び/又はイミノ基を有する有機ケイ素化合物の担持量を十分に確保することが容易となり、より高水準のガス吸着性能が得られやすくなるため、VOCや悪臭を更に効率よく低減できる車両用内装材の実現が可能となる。
【0014】
本発明の車両用内装材は、天井材、マット材、トリム材、シートカバー材、サンバイザー、ベルト、シート、エアバッグ、ステアリング又はフィルターとすることができる。この場合、VOCや悪臭の低減効果を十分有しながらも、白化や粉落ちが十分抑制された良好な外観、使用性及び加工性を有する車両用内装材が実現可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アルデヒドなどのVOCや悪臭ガスの除去能に優れる車両用内装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る表皮材の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(車両用内装材)
本発明の車両用内装材は、基材と、当該基材に付着したガス吸着剤とを有し、ガス吸収剤が、アミノ基及び/又はイミノ基を有する有機ケイ素化合物を微粒子担体に担持し、当該アミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を、炭酸、蟻酸及び酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸で中和して得られるものであることを特徴とする。
【0018】
上記ガス吸着剤が付着している基材としては、車両用内装材を構成する公知の各種素材を用いることができ、例えば、樹脂フィルム、不織布、織物、編物、紙、フェルト、天然皮革、合成皮革、人工皮革などのシート状物、ウレタンフォーム、木質ボード、樹脂ボードなどの成形物が挙げられる。
【0019】
樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。不織布としては、フェルトや、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アクリル、綿、ウールなどの材質からなるものや、難燃繊維、消臭繊維、炭素繊維、抗菌繊維、導電繊維などからなるものが挙げられる。織物及び編物の材質としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アクリル、綿、ウールなどが挙げられる。また、不織布は、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布などを用いることができる。
【0020】
基材が編物である場合、例えば、トリコット、ジャージ、ダブルラッセルなどの編物を用いることができる。
【0021】
木質ボードの材質としては、例えば、チップボード、合板などが挙げられる。また、樹脂ボードの材質としては、例えば、ポリプロピレン、アクリル、エポキシ、塩ビ、天然素材と合成樹脂との複合素材が挙げられる。
【0022】
本発明に係る車両用内装材において、本発明に係るガス吸着剤が付着している基材は、内装材そのもの、或いは、内装材を構成するメイン、サイド、背裏、天井、カマチなどの表面材、芯材又は中間材などの素材であってもよい。
【0023】
本発明に係るガス吸着剤は、例えば、微粒子担体及び上記有機ケイ素化合物として、互いに反応して結合可能なものを選び、それらを反応させた後、上記の酸で中和することにより得ることができる。有機ケイ素化合物は、微粒子担体との反応後、アミノ基及び/又はイミノ基が担体上に十分存在させることができるものが好ましい。
【0024】
微粒子担体としては、アミノ基及び/又はイミノ基を有する有機ケイ素化合物との反応性が良好であるという観点から、ヒドロキシル基を有する化合物を用いることができ、活性炭又はヒドロキシル基を有する金属酸化物を用いることが好ましい。ヒドロキシル基を有する金属酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、及び亜鉛酸化物等が挙げられる。
【0025】
活性炭及びヒドロキシル基を有する金属酸化物は、その表面が、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、カルボン酸塩、アンモニア、脂肪族若しくは芳香族アミン、アミノ基含有高分子等のアルカリに浸漬する等の方法によりアルカリ処理されているものであってもよい。
【0026】
上記のなかでも、ヒドロキシル基を有する金属酸化物を用いることが好ましい。この場合、ガス吸着剤を基材に付着させたときに、基材の色相への影響をより小さくすることが可能となる。更に、シリカが、表面のヒドロキシル基に富み、アミノ基及び/又はイミノ基を有する有機ケイ素化合物の担持量を多くすることができることから、特に好適である。
【0027】
また、微粒子担体は、平均粒径が1nm〜5μmの範囲にある粒子が好ましく、1nm〜1μmの範囲にある粒子がより好ましく、1nm〜500nmの範囲にある粒子がさらにより好ましく、1nm〜200nmの範囲にある粒子が最も好ましい。微粒子担体の平均粒径が1nm未満であると、アミノ基及び/又はイミノ基を有する有機ケイ素化合物を担持する能力が乏しくなり、十分なガス吸着性が得られにくくなる傾向がある。また、平均粒径が5μmを超えても、担体の表面積が小さくなるため、十分なガス吸着性が得られにくくなる傾向がある。更に、担体の平均粒径が上記の範囲内であれば、基材の色相への影響を十分小さく(特に、白化現象を抑制)しながら車両用内装材を製造することが可能となる。また、ガス吸着剤を基材に付着させる際にスプレー法により加工することがあるが、平均粒径が上記範囲内であると、スプレーの目詰まりが発生しにくくなり、ガス吸着剤のスプレー加工適性を向上させることができる。なお、本発明において平均粒径とは、累積50%のメジアン径のことをいう。
【0028】
アミノ基及び/又はイミノ基を有する有機ケイ素化合物としては、アミノ基及び/又はイミノ基を1個以上と、担体が有する官能基と反応して結合し得る官能基とを有する化合物が好ましい。担体がヒドロキシル基を有するものである場合、このヒドロキシル基と反応して結合し得る官能基としては、例えば、−SiOH基や−SiOR基(ここで、Rは炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である)が挙げられる。
【0029】
このような官能基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、3−アミノプロピルトリヒドロキシシラン、メトキシ(3−アミノプロピル)ジヒドロキシシラン、エトキシ(3−アミノプロピル)ジヒドロキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(2−アミノエチルアミノ)プロピル(イソプロポキシ)ジメトキシシラン、2−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0030】
担体に、アミノ基及び/又はイミノ基を有する有機ケイ素化合物を担持させるには、例えば、上記有機ケイ素化合物の水溶液(通常、5〜40質量%程度)に上記担体を加え、室温で10分〜5時間程度撹拌する方法が挙げられる。有機ケイ素化合物の使用量は、担体1質量部に対して0.1〜5質量部とするのが好ましく、0.5〜2質量部とするのがより好ましい。
【0031】
また、アミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を、炭酸、蟻酸及び酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸で中和するには、例えば、上記で得られた水溶液に、pHが当初の11〜12から4〜10になるまで、好ましくは6〜10になるまで、炭酸ガス、ドライアイス、蟻酸及び酢酸のうちの1種以上を加えて中和する方法が挙げられる。このような中和処理を経て、ガス吸着剤が含まれる水分散液を得ることができる。なお、中和後に、必要に応じて、分散剤(好ましくは非イオン界面活性剤)、増粘剤、防腐剤等の従来公知の成分を添加してもよい。また、水分散液の水を除去して、粉末状のガス吸着剤を得ることもできる。
【0032】
上記のガス吸着剤は、担体に担持された有機ケイ素化合物由来のアミノ基及び/又はイミノ基が、炭酸、蟻酸及び酢酸からなる群より選ばれる1種以上の酸で中和されていることにより、熱処理或いは経時の熱履歴を受けた場合であっても、酢酸等の酸性系のガス及びアルデヒド系のガスに対するガス吸着性が十分維持されるという優れた耐熱性を有することができる。具体的には、熱処理でいうと200℃で5分程度まで、また、経時の熱履歴でいうと100℃で100時間程度まで、ガス吸着性を十分維持することができる。
【0033】
このような優れた耐熱性は、夏場などに車両内が高温になった場合であってもガス吸着性を十分に維持でき、VOCの発生を長期に亘って抑制できる点で有利となる。また、車両用内装材に若しくはその作製時に、120〜180℃の熱加工が施される場合であっても、従来よりも高い水準でVOCや悪臭ガスの除去能を維持できる。
【0034】
なお、担体に担持した有機ケイ素化合物由来のアミノ基及び/又はイミノ基を中和するための中和酸として、塩酸や硫酸などの強酸、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸等を用いた場合、上記の効果が得られにくくなる。その理由としては、中和塩が強固であるため、ガス吸着性そのものが低くなるとともに、脱酸による耐熱性も発現しにくくなることが考えられる。
【0035】
基材にガス吸着剤を付着させる方法としては、ガス吸着剤をそのまま、又は、水やアルコール等の溶媒で適宜希釈又は濃縮した分散液を用いて、スプレー、コーティング、キスロール、スタンプ等の公知の方法により塗布する方法や、浸漬する方法等が挙げられる。スプレーによる塗布は、例えば、ノズル、ローターダンプ、ハンドガンなどにより行われる。コーティングによる塗布は、例えば、ナイフ、ロータリー、グラビア、スクリーンなどにより行われる。スタンプによる塗布は、例えば、ホットスタンプなどにより行われる。浸漬する方法としては、含浸処理(PAD)などが挙げられる。塗布や浸漬のとき、ガス吸着剤又はその分散液には適宜バインダーを添加してもよい。バインダーとしては、従来公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、メチルセルロース、アクリル−エチレン共重合体エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、シリコーンエマルジョン等が挙げられる。コーティングにより塗布する場合には、グアガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カルボキシエチルデンプン、アクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダなどの増粘剤を添加することが好ましい。
【0036】
また、上述したようにガス吸着剤を水等の溶媒が含まれる分散液として得た場合、分散液から溶媒を留去して得られる粉体状のガス吸着剤と、上記バインダーとを混合し、この混合物を基材に塗布することができる。
【0037】
バインダーの使用量については、バインダーが多すぎるとガス吸着性が低下する場合がある。そのため、バインダーの使用量は、基材へのガス吸着剤の保持性とガス吸着性とをバランスさせる点から、ガス吸着剤1質量部に対して0.1質量部まで、好ましくは0.02〜0.5質量部とするのがよい。
【0038】
本発明の車両用内装材において、基材に対するガス吸着剤の付着量は、消臭性、粉落ち防止性、風合い、難燃性、経済性の観点から、0.1〜30(固形分換算)g/mが好ましい。
【0039】
基材にガス吸着剤或いはその分散液を塗布した後は、基材の種類やガス吸着剤の付着量に応じて、適当な条件により熱処理を施すことができる。例えば、自然乾燥や、常温〜220℃で数秒〜数日間の条件が挙げられる。
【0040】
本発明の車両用内装材において、本発明に係るガス吸着剤が付着している基材には、ガス吸着剤の他に、例えば、難燃剤、帯電防止剤、抗菌剤、柔軟剤、バインダー等の従来より用いられている成分を適宜併用して付着させてもよい。
【0041】
車両用内装材がウレタンフォームやラインマット、天井、トリムなどの成形体である場合、本発明に係るガス吸着剤を付着させたシート状の基材(例えば、不織布など)を用意し、これを、成形することで一体化させてもよい。
【0042】
また、本発明の車両用内装材においては、本発明に係るガス吸着剤を付着させたシート状の基材(例えば、不織布など)を用意し、これを、車両用内装材を構成する他の素材に接着剤を用いて貼り合わせてもよく、係止具を用いて係止してもよい。
【0043】
次に、本発明の車両用内装材の実施形態について具体的に説明する。
【0044】
本発明に係るガス吸着剤が付着した基材を有する車両用内装材としては、例えば、天井材、トリム材、マット材、床材、フィルター材、シートカバー材、サンバイザー、クッション材、吸音材、バネ受け材、ワディング材、ベルト、シート、エアバッグ、ステアリング、フィルターなどが挙げられる。
【0045】
上記の内装材のうち、天井材、マット材、トリム材、シートカバー材、サンバイザー、ベルト、シート、ステアリングなどは車両内に露出した状態で備えられる場合があるが、本発明に係るガス吸着剤が付着した基材を備えることにより、白化や粉落ちが十分少ない良好な外観を維持しつつ、VOCや悪臭の低減効果を十分有することができる。また、粉落ちが発生しにくいことから、加工や組み付けにおける作業環境への影響が従来よりも少ないものになり得る。
【0046】
また、上記の内装材においては、本発明に係るガス吸着剤が吸湿しにくいことから際付きを十分低減でき、良好な外観を維持できるという効果が得られる。
【0047】
また、上記の内装材のうち、トリム材、床材、クッション材、吸音材、バネ受け材、ワディング材などは車両内に金属部材と接触した状態で備えられる場合があるが、本発明に係るガス吸着剤が付着した基材を備えることにより、錆び易い金属と接触する場合であっても、VOCや悪臭の低減効果を十分有することができる。
【0048】
本実施形態に係る天井材は、例えば、複数のシート状物を重ねたものを所定形状に裁断し、これを所定の型により加圧成形することにより一体化して形成されるものが挙げられる。このような天井材においては、天井材を構成する複数のシート状物のうちの1種以上を、本発明に係るガス吸着剤が付着する基材とすることができる。
【0049】
例えば、天井材の表側を構成するシート状物(表面材)に適用する場合、基材としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ナイロン、塩ビ若しくは綿などの、繊維、不織布又はフィルム等を用いることができる。この場合、VOCや悪臭の低減効果を十分有しながら、白化や粉落ちが発生しにくい天井材を得ることができる。
【0050】
また、天井材の中間から裏側までを構成するシート状物(中間材)に適用する場合、基材としては、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、フェルト、不織布、ガラス繊維、接着剤を用いることができる。この場合、VOCや悪臭の低減効果に優れる天井材を得ることができる。また、裏側が錆び易い金属部材上に配される場合、VOCや悪臭の低減効果を十分有しながらも、金属部材上に錆を発生させにくい天井材を得ることができる。
【0051】
本発明に係るガス吸着剤は耐熱性に優れているため、ガス吸着剤を予め付着させた基材を用いて天井材を作製する場合には、加圧成形時の熱(例えば、180℃)に対してガス吸着性能を十分維持することが可能である。
【0052】
本実施形態に係るトリム材としては、トランクトリム、ドアトリム、ルーフトリムが挙げられる。トランクトリムは、例えば、ポリオレフィン、塩ビ、熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン、アクリル、ウレタン樹脂等の合成樹脂を熱間圧縮、冷間圧縮、射出などの方法により所定の形状に成形してなる樹脂成形体、合成樹脂材料に木粉、無機化合物等のフィラーを添加したものを熱間圧縮、冷間圧縮、射出などの方法により所定の形状に成形してなる樹脂成形体、フェルト、係止具、不織布、表皮材などによって構成される。本発明に係るガス吸着剤を、上記の樹脂成形体、フェルト、係止具、不織布、表皮材に付着させることにより、VOCや悪臭の低減効果に優れたトランクトリムを得ることができる。
【0053】
上記のトランクトリムは、ガス吸着剤による白化や粉落ちが発生しにくいことから、良好な外観を有することができ、加工や組み付けにおける作業環境への影響が従来よりも少ないものになり得る。また、錆び易い金属と接触する場合であっても、VOCや悪臭の低減効果を十分有しながらも、従来よりも錆を発生させにくいものになり得る。
【0054】
本実施形態に係るマット材としては、例えば、フロアマット、ラインマット、オプションマットなどが挙げられる。これらのマット材は、例えば、不織布、編物、織物、ゴム、塩ビ、ガラス繊維、SBRなどの素材によって構成される。本発明に係るガス吸着剤を、これらの素材に付着させることにより、VOCや悪臭の低減効果に優れたマット材を得ることができる。
【0055】
マット材の表面材に適用する場合、基材としては、不織布、編物、織物を用いることができる。この場合、VOCや悪臭の低減効果を十分有しながら、白化や粉落ちが発生しにくいマット材を得ることができる。
【0056】
また、マット材の中間材〜床材に適用する場合、基材としては、ゴム、塩ビ、ガラス繊維、SBR、接着剤を用いることができる。この場合、VOCや悪臭の低減効果に優れるマット材を得ることができる。
【0057】
本実施形態に係る床材としては、本発明に係るガス吸着剤を、例えばフロアボード、トランクボードを構成する板材などに付着させたものが挙げられる。これにより、VOCや悪臭の低減効果に優れた床材を得ることができる。また、本実施形態に係る床材は、本発明に係るガス吸着剤を付着させたシート状の基材(例えば、不織布など)を用意し、これを、フロアボード、トランクボードを構成する板材に貼付けてなるものであってもよい。
【0058】
本実施形態に係るシートカバー材としては、例えば、不織布、編物、織物、フィルムなどの素材から構成されるものが挙げられる。本発明に係るガス吸着剤を、これらの素材に付着させることにより、VOCや悪臭の低減効果を十分有しながら、白化や粉落ちが発生しにくいシートカバー材を得ることができる。
【0059】
本実施形態に係る吸音材としては、例えば、フロアサイレンサー、ダッシュインシュレータなどが挙げられる。ダッシュインシュレータは、自動車の車室とエンジンルームとを区画し、エンジンルームの騒音に対して吸音作用を行うものであり、例えば、ポリエステル、綿、ガラス繊維などのフェルトによって構成される。また、フロアサイレンサーは、例えば、ポリエステル、綿、ガラス繊維などのフェルトによって構成される。本発明に係るガス吸着剤を、上記のフェルトなどに付着させることにより、VOCや悪臭の低減効果に優れた吸音材を得ることができる。
【0060】
また、本実施形態の吸音材は、錆び易い金属と接触する場合であっても、VOCや悪臭の低減効果を十分有しながらも、従来よりも錆を発生させにくいものになり得る。
【0061】
本実施形態に係るサンバイザーとしては、例えば、不織布、編物、織物、フィルム、芯材などの素材から構成されるものが挙げられる。本実施形態においては、本発明に係るガス吸着剤が付着した不織布、編物、織物、フィルムなどの基材を、サンバイザーの表面材とすることができる。このようなサンバイザーによれば、車内のVOCや悪臭を低減させることができる。
【0062】
本実施形態に係るフィルター材としては、例えば、エアコンのエアフィルターが挙げられる。エアフィルターとしては、例えば、ポリエステル製の不織布、活性炭を含む繊維不織布などを積層した構造を有するものが挙げられる。これらの素材に、本発明に係るガス吸着剤を付着させることにより、VOCや悪臭の低減効果に優れたエアフィルターの実現が可能となる。
【0063】
本実施形態に係るクッション材としては、例えば、ウレタンパッド、バネ、不織布、フィルムなどから構成されるものが挙げられる。ウレタンパッドの場合、本発明に係るガス吸着剤を付着させたシート状の基材(例えば、不織布など)を用意し、これを、金型内に配置して発泡成形を行うことで一体化させてもよく、或いは、ウレタン樹脂組成物を発泡成形して得られる成形体に接着剤を用いて貼り合わせる若しくは係止具を用いて係止してもよい。
【0064】
本実施形態に係るバネ受け材としては、例えば、樹脂フィルム、不織布、織物、編物、紙などからなるシート状物が挙げられる。これらの素材に、本発明に係るガス吸着剤を付着させることにより、VOCや悪臭の低減効果に優れたバネ受け材の実現が可能となる。また、本実施形態のバネ受け材は、錆び易い金属と接触する場合であっても、VOCや悪臭の低減効果を十分有しながらも、従来よりも錆を発生させにくいものになり得る。
【0065】
本実施形態に係るベルトとしては、例えば、シートベルトなどが挙げられる。シートベルトの場合、シートベルトを構成するナイロン、ポリエステルなどの繊維に、本発明に係るガス吸着剤を付着させることにより、VOCや悪臭の低減効果に優れたシートベルトの実現が可能となる。
【0066】
本実施形態に係るワディング材としては、例えば、ウレタンフォームなどが挙げられる。ウレタンフォームなどの素材に、本発明に係るガス吸着剤を付着させることにより、VOCや悪臭の低減効果に優れたワディング材の実現が可能となる。
【0067】
本実施形態に係るエアバッグとしては、例えば、エアバッグを構成するナイロン織物、シリコン樹脂、ポリエステル織物、フィルムなどの素材に、本発明に係るガス吸着剤を付着させたものが挙げられる。
【0068】
本実施形態に係るステアリングとしては、例えば、ステアリングを構成する皮、不織布、編物、織物などの表皮材に、本発明に係るガス吸着剤を付着させたものが挙げられる。
【0069】
本実施形態に係るシートとしては、例えば、シートを構成する、皮、不織布、編物、織物などの素材、芯材、ウレタンフォーム、バネ、係止具などに、本発明に係るガス吸着剤を付着させたものが挙げられる。また、シートの背裏材に、本発明に係るガス吸着剤を付着させることもできる。
【0070】
ところで、車両用座席などにおいて、その表皮に皮革を用いた場合、皮革から発生するアセトアルデヒドなどのVOCが問題となっている。皮革を用いた表皮材は一般的に、皮革の表面に3層程度のウレタン樹脂などからなる樹脂コート層が設けられ、裏面にウレタンフォームやフェルトが裏打ちされた構成を有している。
【0071】
上記のVOC対策として、従来は、(1)樹脂コート層を設けるためのウレタン樹脂スプレー時にガス吸着剤を併用する方法、(2)天然皮革の裏側にガス吸着剤をスプレーする方法、(3)天然皮革の染色後に行われる水洗処理時にガス吸着剤を添加し、バッチ処理する方法、などが行われていた。しかしながら、(1)の方法では、樹脂コート層の樹脂にガス吸着剤が埋没してしまい、ガス吸着剤の使用量に見合うVOC低減効果が得られにくい。(2)や(3)の方法では、ガス吸着剤による悪臭ガスの低減効果が経時で低下しやすく、3週間から1ヶ月でその効果がほとんど失われる場合があった。なお、この要因としては、天然皮革のタンパク質や脂肪酸の影響が考えられる。
【0072】
これに対して、皮革を用いた表皮材に、本発明に係るガス吸着剤を付着させた裏基布をさらに積層させることにより、アルデヒドなどのVOCや悪臭ガスの除去能に優れ、上記従来技術に比較して経時による性能劣化が小さい表皮材を実現することができる。
【0073】
図1は、本発明に係る表皮材の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す表皮材10は、皮革1と、皮革1の一方面上(表側となる面上)に設けられた樹脂コート層4と、皮革1の他方面上(裏側となる面上)に設けられた裏打ち層2と、裏打ち層2の皮革1とは反対側に設けられ、本発明に係るガス吸着剤が付着した裏基布3とを備える。なお、表皮材10においては、樹脂コート層4が3層設けられているが、1層或いは2層以上でもよく、樹脂コート層4を省略することもできる。また、裏打ち層2を省略することもできる。
【0074】
皮革1としては、例えば、天然皮革、合成皮革、人工皮革を用いることができる。裏打ち層2としては、例えば、ウレタンフォーム、フェルトなどを用いることができる。また、樹脂コート層4は、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂などから形成することができ、顔料、ガス吸着剤、帯電防止剤、架橋剤を含んでいてもよい。
【0075】
裏基布3としては、例えば、不織布、編物、織物、フィルムなどに、本発明に係るガス吸着剤を付着させたものを用いることができる。
【0076】
各層は、接着剤やフレームラミなどによって積層することができる。
【0077】
本実施形態に係る表皮材は、車両用座席の表皮材として好適である。
【実施例】
【0078】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0079】
<ガス吸着素材の製造>
(実施例1)
コロイダルシリカ(日産化学(株)、商品名「スノーテックス30」、平均粒径10〜20nm、シリカ含有量30質量%)437gに、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまで炭酸ガスを吹き込んで中和処理を施した後、更に水496gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.6であった。
【0080】
次に、上記で得られた水分散液を50倍に希釈して、0.4質量%のガス吸着剤水分散液(処理液)を調整し、これにポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)を、ピックアップ50質量%(ガス吸収剤の付与量が布に対して、0.4質量%×50質量%=0.2質量%となる条件)で浸漬処理した。そして、浸漬処理後の布を160℃で2分間乾燥することにより、カーシートの表皮材として用いられるガス吸着素材を得た。
【0081】
(実施例2)
コロイダルシリカ(日産化学(株)、商品名「スノーテックス30」、平均粒径10〜20nm、シリカ含有量30質量%)437gに、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまで炭酸ガスを吹き込んで中和処理を施した後、更に水496gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.6であった。
【0082】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0083】
(実施例3)
コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名「スノーテックス20L」、平均粒子径50nm、シリカ含有量20質量%)665gに、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまで蟻酸を加えて中和処理を施した後、更に水268gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.4であった。
【0084】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0085】
(実施例4)
実施例1と同様にして得られた水分散液を50倍に希釈して、0.4質量%のガス吸着剤水分散液(処理液)を調整し、これにポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)を、ピックアップ50質量%で浸漬処理した。そして、浸漬処理後の布を室温で1昼夜風乾することにより、ガス吸着素材を得た。
【0086】
(実施例5)
コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名「スノーテックスPS−S」、平均粒子径100nm、シリカ含有量20質量%)665gに、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまで炭酸ガスを吹き込んで中和処理を施した後、更に水268gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.6であった。
【0087】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0088】
(実施例6)
シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名「E−220A」、粒径約1μm)133gに水300gを加えて攪拌し、これに、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまで蟻酸を加えて中和処理を施した。なお、中和処理前の反応液のpHは11であった。中和処理後の反応液に、分散剤として「セロポールPC−300」(三洋化成(株)製商品名)15g、「ロードポール23」(ローディア日華(株)製商品名)の10質量%水溶液を20g及び「ソフタノール120」(日本触媒(株)製商品名)10gと、水455gとを加え、これらを十分に攪拌して、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。
【0089】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0090】
(実施例7)
コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名「スノーテックス30」、平均粒子径10〜20nm、シリカ含有量30質量%)437gに、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまで炭酸ガスを吹き込んで中和処理を施した後、更に水496gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.6であった。
【0091】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0092】
(実施例8)
コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名「スノーテックス30」、平均粒子径10〜20nm、シリカ含有量30質量%)437gに、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメチルメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまで炭酸ガスを吹き込んで中和処理を施した後、更に水496gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.6であった。
【0093】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0094】
(実施例9)
コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名「スノーテックス30」、平均粒子径10〜20nm、シリカ含有量30質量%)437gに、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまで炭酸ガスを吹き込んで中和処理を施した後、更に水496gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.6であった。
【0095】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0096】
(実施例10)
コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名「スノーテックスO」、平均粒子径10〜20nm、シリカ含有量20質量%)665gに、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが6になるまで炭酸ガスを吹き込んで中和処理を施した後、更に水268gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.6であった。
【0097】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0098】
(比較例1)
コロイダルシリカ(日産化学(株)、商品名「スノーテックス30」、平均粒径10〜20nm、シリカ含有量30質量%)437gに、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した後、更に水496gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。
【0099】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0100】
(比較例2)
コロイダルシリカ(日産化学(株)、商品名「スノーテックス30」、平均粒径10〜20nm、シリカ含有量30質量%)437gに、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまで塩酸を加えて中和処理を施した後、更に水496gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.6であった。
【0101】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0102】
(比較例3)
コロイダルシリカ(日産化学(株)、商品名「スノーテックス30」、平均粒径10〜20nm、シリカ含有量30質量%)437gに、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまでクエン酸を加えて中和処理を施した後、更に水496gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.6であった。
【0103】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0104】
(比較例4)
シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名「E−220A」、粒径約1μm)133gに水300gを加えて攪拌し、これに、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、分散剤として「セロポールPC−300」(三洋化成(株)製商品名)15g、「ロードポール23」(ローディア日華(株)製商品名)の10質量%水溶液を20g及び「ソフタノール120」(日本触媒(株)製商品名)10gと、水455gとを加え、これらを十分に攪拌して、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。
【0105】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0106】
(比較例5)
コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名「スノーテックス30」、平均粒子径10〜20nm、シリカ含有量30質量%)437gに、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまで塩酸で中和処理を施した後、更に水496gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.6であった。
【0107】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0108】
(比較例6)
コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名「スノーテックス30」、平均粒子径10〜20nm、シリカ含有量30質量%)437gに、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまでクエン酸で中和処理を施した後、更に水496gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.6であった。
【0109】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0110】
(比較例7)
コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名「スノーテックス30」、平均粒子径10〜20nm、シリカ含有量30質量%)437gに、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメチルメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまで塩酸で中和処理を施した後、更に水496gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.6であった。
【0111】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0112】
(比較例8)
コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名「スノーテックス30」、平均粒子径10〜20nm、シリカ含有量30質量%)437gに、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン67gを添加した反応液を、室温で約2時間攪拌した。次に、この反応液に、反応液のpHが9になるまで塩酸で中和処理を施した後、更に水496gを加えて、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を得た。なお、中和処理前の反応液のpHは11.6であった。
【0113】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0114】
(比較例9)
水に、平均粒子径5μmの多孔質粉体、アミノグアニジン塩酸塩、非イオン界面活性剤、及び増粘剤を混合分散し、ガス吸着剤の濃度が20質量%である水分散液を調整した。
【0115】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0116】
(比較例10)
水に、平均粒子径20nmのコロイダルシリカ、及びアミノグアニジン塩酸塩を混合し、ガス吸着剤の濃度が10質量%である水分散液を調整した。
【0117】
次に、上記で得られた水分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0118】
(比較例11)
水に、アジピン酸ジヒドラジドを溶解し、ガス吸着剤の濃度が5質量%であるガス吸着剤水溶液を調整した。
【0119】
次に、上記で得られたガス吸着剤水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0120】
(参考例1)
比較例1と同様にして得られた水分散液を50倍に希釈して、0.4質量%のガス吸着剤水分散液(処理液)を調整し、これにポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)を、ピックアップ50質量%で浸漬処理した。そして、浸漬処理後の布を室温で1昼夜風乾することにより、ガス吸着素材を得た。
【0121】
[ガス吸着剤のスプレー加工適性評価]
実施例及び比較例で得られたガス吸着剤の水分散液について、以下の方法によりスプレー加工適性を評価した。結果を表1に示す。
【0122】
ガス吸着剤の濃度が20質量%であるガス吸着剤水分散液50mLを、ハンドスプレーボトル(商品名「スプレイヤーポンプZ−305−101」、(株)三谷バルブ製)に入れ、ガス吸着剤が無くなるまでスプレー操作を繰り返した。このときのスプレーの目詰まり具合から、スプレー加工適性を下記基準に基づいて3段階で判定した。
○:試験の初期と最後で抵抗力が変わらず、ガス吸着剤を全てスプレーすることができる。
△:ガス吸着剤をスプレーから出すときの抵抗は次第に大きくなるが、ガス吸着剤を全て出すことができる。
×:スプレーが目詰まりして、ガス吸着剤を全て出すことができない。
【0123】
【表1】



【0124】
[ガス吸着素材の評価]
上記の実施例及び比較例で得られたガス吸着素材について、ガス吸着性、色相及び粉落ちを以下の方法により評価した。結果を表2に示す。
【0125】
(ガス吸着性)
5Lのテドラーバックに、得られたガス吸着素材を10cm×10cm(100cm)の大きさに切ったものを入れて封をし、中の空気をアスピレーターで完全に除去した。この中に、酢酸の初発濃度50ppm、又はアセトアルデヒドの初発濃度20ppmを含む窒素ガス3Lを封入し、室温で2時間放置後の酢酸又はアセトアルデヒドの濃度を測定し、下記式によりその減少率を求めた。
【0126】
【数1】



【0127】
(色相)
ガス吸着素材の色相を、目視にて下記基準に基づいて3段階で判定した。
○:未加工のポリエステル100%黒染色布と同等の色調である。
△:斑や白粉はみられないが、素材表面が全体にやや白っぽく見える。
×:素材表面に白い斑が見られる、又は、白粉が見られる。
【0128】
(粉落ち)
ガス吸着素材に摩擦や衝撃を与えたときの粉落ちの度合いを目視で確認し、下記基準に基づいて3段階で判定した。
1:手ではたいても全く粉落ちが目視観察されない。
2:手ではたいたとき、わずかに粉落ちが目視観察される。
3:手ではたいたとき、かなりの粉落ちが目視観察される。
【0129】
【表2】



【0130】
(実施例11)
実施例1と同様にして得られた水分散液を10倍に希釈して、2質量%のガス吸着剤水分散液(処理液)を調整し、これにポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)を、ピックアップ50質量%(ガス吸収剤の付与量が布に対して、2質量%×50質量%=1質量%となる条件)で浸漬処理した。そして、浸漬処理後の布を160℃で2分間乾燥することにより、ガス吸着素材を得た。
【0131】
(実施例12)
実施例5と同様にして得られた水分散液を用いたこと以外は実施例11と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0132】
(実施例13)
実施例6と同様にして得られた水分散液を用いたこと以外は実施例11と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0133】
(実施例14)
実施例7と同様にして得られた水分散液を用いたこと以外は実施例11と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0134】
(比較例12)
比較例4と同様にして得られた水分散液を用いたこと以外は実施例11と同様にして、ガス吸着素材を得た。
【0135】
実施例11〜14及び比較例12で得られたガス吸着素材について、色相を上記の方法により評価した。結果を、実施例1、5、6及び7、比較例12の結果と合わせて表3に示す。
【0136】
【表3】



【0137】
[錆発生の評価]
上記で得られたガス吸着剤の水分散液を、鉄(SPCC−SB)製の小板に吹きつけ、3日間放置した。その後、錆の発生を目視により確認した。錆の発生が見られた場合を「有」、錆の発生が見られなかった場合を「無」とした。結果を表4に示す。
【0138】
【表4】



【0139】
<車両用内装材(カーシートの背裏材)の作製>
(実施例15)
実施例1と同様にして得られた分散液に、ポリエステル製のスパンボンド不織布(目付40g/m)を、ガス吸着剤の付着量が2g/mとなる条件で浸漬処理した。そして、浸漬処理後の不織布を120℃で2分間乾燥することにより、シート状の背裏材を得た。
【0140】
(実施例16)
実施例1と同様にして得られた分散液に、ポリプロピレン製のスパンボンド不織布(目付40g/m)を、ガス吸着剤の付着量が5g/mとなる条件で浸漬処理した。そして、浸漬処理後の不織布を120℃で2分間乾燥することにより、シート状の背裏材を得た。
【0141】
(実施例17)
実施例1と同様にして得られた分散液に、ポリエステル製のスパンボンド不織布(目付100g/m)を、ガス吸着剤の付着量が2g/mとなる条件で浸漬処理した。そして、浸漬処理後の不織布を120℃で2分間乾燥することにより、シート状の背裏材を得た。
【0142】
(実施例18)
実施例1と同様にして得られた分散液に、ポリプロピレン製のスパンボンド不織布(目付100g/m)を、ガス吸着剤の付着量が5g/mとなる条件で浸漬処理した。そして、浸漬処理後の不織布を120℃で2分間乾燥することにより、シート状の背裏材を得た。
【0143】
(比較例13)
比較例9と同様にして得られた分散液に、ポリエステル製のスパンボンド不織布(目付40g/m)を、ガス吸着剤の付着量が2g/mとなる条件で浸漬処理した。そして、浸漬処理後の不織布を120℃で2分間乾燥することにより、シート状の背裏材を得た。
【0144】
(比較例14)
比較例10と同様にして得られた分散液に、ポリエステル製のスパンボンド不織布(目付40g/m)を、ガス吸着剤の付着量が2g/mとなる条件で浸漬処理した。そして、浸漬処理後の不織布を120℃で2分間乾燥することにより、シート状の背裏材を得た。
【0145】
(比較例15)
比較例11と同様にして得られた水溶液に、ポリエステル製のスパンボンド不織布(目付40g/m)を、ガス吸着剤の付着量が2g/mとなる条件で浸漬処理した。そして、浸漬処理後の不織布を120℃で2分間乾燥することにより、シート状の背裏材を得た。
【0146】
(参考例2)
未処理のポリエステル製のスパンボンド不織布(目付40g/m)を用意した。
【0147】
[車両用内装材の評価]
上記の実施例、比較例及び参考例で得られたシートについて、上記と同様にして、ガス吸着性及び粉落ちを評価した。結果を表5に示す。
【0148】
【表5】



【符号の説明】
【0149】
1…皮革、2…裏打ち層、3…裏基布、4…樹脂コート層、10…表皮材。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、当該基材に付着したガス吸着剤と、を有する車両用内装材であって、
前記ガス吸収剤が、アミノ基及び/又はイミノ基を有する有機ケイ素化合物を微粒子担体に担持し、当該アミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を、炭酸、蟻酸及び酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸で中和して得られるものである、車両用内装材。
【請求項2】
前記内装材が、天井材、マット材、トリム材、シートカバー材、サンバイザー、ベルト、シート、エアバッグ、ステアリング又はフィルターである、請求項1に記載の車両用内装材。


【図1】
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【公開番号】特開2010−173343(P2010−173343A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15128(P2009−15128)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】