説明

車両用内装装置

【課題】装置本体に取付けられる取付け部材を所定の向きとは反対の向きで装置本体に取付けてしまうことを防止できる車両用内装装置の提供。
【解決手段】装置本体20と、装置本体20に所定の向きで取付けられる樹脂製の取付け部材30と、を有し、取付け部材30は、車室側面31aが意匠面を構成する意匠部31と、意匠部31から反車室側に突出して設けられ装置本体20に所定の向きとは反対の向きで取付けられるときに装置本体20と干渉する誤組付け防止リブ35と、を備えている、車両用内装装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室天井に配置されるオーバーヘッドコンソール装置等の車両用内装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用内装装置は、例えば特開2002−114095号公報に開示されている。上記公報開示の装置では、照明をオン・オフ操作するためのスライドノブが装置本体に取付けられている。
【0003】
しかし、上記公報開示の装置には、つぎの問題点がある。
スライドノブは車両前後方向でほぼ対称形状となっている。そのため、スライドノブを装置本体に取付ける際にスライドノブの向きがわかりにくく、所定の向き(正規の向き)とは前後で反対の向きにスライドノブを装置本体に取付けてしまうおそれがある。所定の向きとは反対の向きにスライドノブを装置本体に取付けてしまうと、(a)装置の意匠が狙った意匠とは異なる意匠になってしまう。また、(b)スライドノブがスムーズに動かなくなるおそれがある。
【特許文献1】特開2002−114095号公報
【特許文献2】特開2007−238049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、装置本体に取付けられる取付け部材を所定の向きとは反対の向きで装置本体に取付けてしまうことを防止できる車両用内装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 装置本体と、
前記装置本体に所定の向きで取付けられる樹脂製の取付け部材と、
を有し、
前記取付け部材は、車室側面が意匠面を構成する意匠部と、該意匠部から反車室側に突出して設けられ前記装置本体に前記所定の向きとは反対の向きで取付けられるときに前記装置本体と干渉する誤組付け防止リブと、を備えている、車両用内装装置。
(2) 前記取付け部材は金型を用いて成形されており、前記取付け部材を成形するときに成形後に前記誤組付け防止リブとなる部分に前記金型に設けられるランナーを流れてきた溶融樹脂が流れ込むようにされている、(1)記載の車両用内装装置。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)の車両用内装装置によれば、取付け部材が所定の向きとは反対の向きで取付けられるときに装置本体と干渉する誤組付け防止リブを備えているため、作業者が取付け部材を装置本体に取付けるときに所定の向きとは反対の向きに取付けようとしても誤組付け防止リブが装置本体に干渉し取付けることができない。したがって、取付け部材の装置本体への誤組付けを防止できる。
また、誤組付け防止リブが意匠部から反車室側に突出して設けられているため、取付け部材が所定の向きで装置本体に取付けられているときに誤組付け防止リブを意匠部で隠すことができ、誤組付け防止リブが設けられていても見栄えを悪化させることを抑制できる。
上記(2)の車両用内装装置によれば、成形後に誤組付け防止リブとなる部分に金型に設けられるランナーを流れてきた溶融樹脂が流れ込むようにされているため、成形後に誤組付け防止リブとなる部分に溶融樹脂を流れ込ませて該部分で溶融樹脂の圧力と流速を低減させた後、溶融樹脂を、成形後に誤組付け防止リブとなる部分以外の取付け部材部分(意匠部等)に流れ込ませることができる。そのため、意匠部(特に意匠面)に成形による波模様(ジェッティング)が出ることを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明実施例の車両用内装装置の一例を、図1〜図8を参照して、説明する。なお、図中、矢印Frは車両前方を示し、矢印Upは上方(反車室側)を示す。
本発明実施例の車両用内装装置は、たとえば、車室天井に設けられるオーバーヘッドコンソール装置である。ただし、車両用内装装置は、オーバーヘッドコンソール装置に限定されるものではない。
【0008】
本発明実施例の車両用内装装置10は、図1に示すように、装置本体20と、装置本体20に所定の向きで取付けられる(組付けられる)取付け部材30と、を有する。
なお、本実施例及び図示例では、取付け部材30が装置本体20にスライド可能に取付けられるスライドノブである場合を例にとって説明するが、取付け部材30は、装置本体20に所定の向きで取付けられるのであればスライドノブに限定されるものではなく、たとえば、プッシュノブ、カバー、ベゼル、レンズ等であってもよい。
【0009】
装置本体20は、樹脂製である。装置本体20は、車両の運転席と助手席の間または該間より前方の車室天井に固定されて配置されている。装置本体20の下面は意匠面20aとなっており、車両の内装部材の一部を構成している。意匠面20aは、意匠性向上のため、装置本体20の周囲の車室天井材と面一または略面一となっている。
装置本体20は、図6に示すように、爪受け部21と、車両前後方向に間隔をおいて設けられる一対のスライドガイド22と、上方に凹む凹部23と、図1に示すように、ランプ(照明、マップランプ)24と、を備える。
【0010】
爪受け部21は、図2に示すように、車両左右方向に延びている。爪受け部21は、凹部23の底面に設けられる上下方向に貫通する孔21aの縁部(その近傍含む)である。
【0011】
一対のスライドガイド22は、図6に示すように、凹部23内に設けられている。一対のスライドガイド22は、図2に示すように、車両左右方向に延びている。スライドガイド22の延び方向両端部は、車両前後方向に互いの距離を拡げる方向に所定量延びている。一方のスライドガイド22aの車両前後方向の延び量は、他方のスライドガイド22bの車両前後方向の延び量よりも大とされており、取付け部材30を所定の向き(正規の向き)とは反対の向きに装置本体20に取付け(組付け)ようとしたときに取付け部材30の後述の誤組付け防止リブ35と干渉し、取付け部材30を装置本体20に取付けることができないようになっている。
【0012】
凹部23は、図6に示すように、装置本体20の意匠面20aから反車室側(上方)に凹む部分である。凹部23は、取付け部材30の意匠部31を受け入れており、取付け部材30が装置本体20の意匠面20aより車室側(下方)に出っ張ることを防止している。凹部23は、取付け部材30の装置本体20に対するスライド動を阻害しないように、車両左右方向(取付け部材30のスライド方向と同方向)に延びている。凹部23の幅(車両前後方向長さ)は、取付け部材30の意匠部31の反車室側が車室内から見えることを抑制するとともに取付け部材30のスライド動を阻害しないように、取付け部材30の幅(取付け部材30の車両前後方向長さ)より若干長くされている。
【0013】
ランプ24は、車室内照明用のランプである。ランプ20は、図1に示すように、装置本体20の車両左右方向の両端部に設けられている。ランプ20は、レンズ25によって車室側からカバーされている。ランプ24のオン・オフ、またはランプ24を図示略の車両ドアが開いているときにオンさせるか否かは、取付け部材30を操作することによって、変更できるようになっている。
【0014】
取付け部材30は、樹脂製であり、型成形品である。取付け部材30は、図7に示すように、金型(上型40と下型41とスライド型50)を用いて成形される。型の基本の割り方向は、上下方向である。スライド型50は、車両前後方向と平行な方向にスライドする。
【0015】
取付け部材30は、装置本体20に車両左右方向(スライド方向)に直線状にスライド可能に支持されるスライドノブである。取付け部材30は、図3に示すように、車室側面31aが意匠面を構成する意匠部31と、意匠部31から反車室側に突出して設けられる箱状部32と、爪受け部21に引っ掛かる爪部33と、延長リブ34と、誤組付け防止リブ35と、を備える。
【0016】
意匠部31は、図4に示すように、板厚一定または略一定である。意匠部31は、車両左右方向を長手方向とする形状である。意匠部31の車室側面31aには、取付け部材30を乗員がスライド操作する際に滑ることを抑制するために、車両前後方向(スライド直交方向)に延びる溝部31bが少なくとも一条(図示例では4条)形成されている。意匠部31の反車室側面31cは、図6に示すように、車両前後方向の断面視で、直線状または略直線状になっている。図4に示すように、車両左右方向の断面視で、意匠部31の反車室側面31cの少なくとも両端部は、上方に湾曲している。
【0017】
箱状部32は、意匠部31の中央部とその近傍に設けられている。箱状部32は、図3に示すように、矩形状または略矩形状の上壁32aと、上壁32aの車両左右方向の両端から車室側に意匠部31まで延びる矩形状または略矩形状の両側壁32bと、図6に示すように、上壁32aの車室側面の車両前後方向の中央部から意匠部31まで車室側に延びる延び壁32cと、箱状部32内で延び壁32cの車両前後方向の両側に位置する空間部32eと、を備える。
延び壁32cの、車両左右方向の両端は、両側壁32bに連なっている。
空間部32eは、箱状部32の上下方向及び車両前後方向の肉厚を薄くするために設けられている。空間部32eは、図7に示すように、取付け部材30成形のスライド型50を利用して成形される。
箱状部32は、図6に示すように、車両前後方向に装置本体20の一対のスライドガイド22間に入り込んでおり、車両前後方向の両側面32dで一対のスライドガイド22の車両前後方向の内側面22cに摺動接触可能とされている。
【0018】
爪部33は、箱状部32に設けられている。爪部33は、車両前後方向に間隔をおいて2個設けられている。爪部33は、箱状部32の上壁32aから上方に延び車両前後方向に弾性変形可能な弾性変形部33aと、弾性変形部33aの延び方向先端部に設けられ装置本体20の爪受け部21に引っ掛かる引っ掛かり部33bと、を備える。
引っ掛かり部33bと箱状部32の上壁32aとの上下方向間には、空間があり、該空間は、図7に示すように、取付け部材30成形のスライド型50を利用して成形される。引っ掛かり部33bは、図6に示すように、箱状部32の上壁32aとの間に爪受け部21を挟み込んでおり取付け部材30の装置本体20に対する上下方向のがたつきを抑えている。
【0019】
延長リブ34は、図3に示すように、箱状部32の車両前後方向の両端部から車両左右方向に延びて設けられている。延長リブ34は、車両前後方向に一対のスライドガイド22間に入り込んでいる。延長リブ34の車両前後方向の両外側面34aは、車両前後方向で箱状部32の両側面32dと同位置にあり、箱状部32の両側面32dとともに一対のスライドガイド22の内側面22cに摺動接触可能とされている。
【0020】
延長リブ34の両外側面34aと箱状部32の両側面32dが一対のスライドガイド22の内側面22cに摺動接触可能とされているため、延長リブ34の両外側面34aと箱状部32の両側面32dとスライドガイド22の内側面22cとは、取付け部材30の装置本体20に対する車両前後方向の位置を決めるガイド面になっている(取付け部材30がスライドガイド22によって車両左右方向にガイドされている)。
【0021】
誤組付け防止リブ35は、意匠部31の反車室側面31cから反車室側に突出して設けられている。誤組付け防止リブ35の突出量は、箱状部32の突出量よりも小とされており、取付け部材30が所定の向き(正規の向き)で装置本体20に組付けられているときに装置本体20に干渉しないようにされている。誤組付け防止リブ35は、車両左右方向で箱状部32とは異なる位置に設けられている。誤組付け防止リブ35は、意匠部31の、車両前後方向の一端部またはその近傍のみに設けられている。
【0022】
図8に示すように、取付け部材30を成形するときに成形後に誤組付け防止リブ35となる部分には、重なり合っている上下型40,41の境部(PL(パーティングライン))に設けられるランナー42を流れてきた溶融樹脂が流れ込む。成形後に誤組付け防止リブ35となる部分に流れ込んだ溶融樹脂は、成形後に誤組付け防止リブ35となる部分で圧力と流速が低減された後、成形後に誤組付け防止リブ35となる部分以外の部分(成形後に意匠部31、箱状部32、爪部33、延長リブ34となる部分)に流れ込む。なお、図7と図8に示すように、誤組付け防止リブ35は、車両左右方向で箱状部32とは異なる位置に設けられているため、誤組付け防止リブ35の成形、誤組付け防止リブ35となる部分に溶融樹脂を流れ込ませることが、箱状部32の上壁32aと爪部33の引っ掛かり部33bとの間の部分をスライド型50で抜くこと、箱状部32の空間部32eをスライド型50で抜くことを邪魔することはない。
【0023】
つぎに、本発明実施例の作用を説明する。
本発明実施例では、取付け部材30が所定の向きとは反対の向きで取付けられるときに装置本体20と干渉する誤組付け防止リブ35を備えているため、作業者が取付け部材30を装置本体20に取付けるときに所定の向きとは反対の向きに取付けようとしても誤組付け防止リブ35が装置本体20に干渉し取付けることができない。したがって、取付け部材30の装置本体20への誤組付けを防止できる。
【0024】
誤組付け防止リブ35が意匠部31から反車室側に突出して設けられているため、取付け部材30が所定の向きで装置本体20に取付けられているときに誤組付け防止リブ35を意匠部31で隠すことができ、誤組付け防止リブ35が設けられていても見栄えを悪化させることを抑制できる。
【0025】
成形後に誤組付け防止リブ35となる部分に金型40,41に設けられるランナー42を流れてきた溶融樹脂が流れ込むようにされているため、成形後に誤組付け防止リブ35となる部分に溶融樹脂を流れ込ませて該部分で溶融樹脂の圧力と流速を低減させた後、溶融樹脂を、成形後に誤組付け防止リブ35となる部分以外の取付け部材30部分(意匠部31等)に流れ込ませることができる。そのため、成形後に誤組付け防止リブ35となる部分以外の取付け部材30部分に流れ込む溶融樹脂の圧力変化と流速変化を小にすることができ、意匠部31(特に意匠面31a)に成形による波模様(ジェッティング)が出ることを抑制できる。
【0026】
爪部33が箱状部32から反車室側の延びて設けられているため、爪部33が意匠部31から反車室側に延びて設けられている場合に比べて、爪部33の延び方向長さ(上下方向長さ)を短くすることができ、爪部33の強度を向上させることができる。
【0027】
装置本体20に、反車室側に凹み意匠部31を受け入れる凹部23が設けられているため、意匠部31の反車室側面31cが車両前後方向の断面視で直線上または略直線状になっている場合であっても、意匠部31の反車室側が車室内から見えてしまうことを抑制できる。
【0028】
凹部23が車両左右方向と同方向に延びて設けられているため、取付け部材30を装置本体20に対してスライドさせる際に凹部23が邪魔になることはない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明実施例の車両用内装装置の底面図である。
【図2】本発明実施例の車両用内装装置の装置本体の、取付け部材が取付けられる部位の底面図である。
【図3】本発明実施例の車両用内装装置の取付け部材の、反車室側から見たときの斜視図である。
【図4】本発明実施例の車両用内装装置の取付け部材の、前後方向からみたときの正面図である。
【図5】本発明実施例の車両用内装装置の取付け部材の、平面図である。
【図6】本発明実施例の車両用内装装置の、取付け部材とその近傍を示す断面図である。
【図7】本発明実施例の車両用内装装置の、取付け部材と該取付け部材の成形型の、箱状部部位での断面図である。
【図8】本発明実施例の車両用内装装置の、取付け部材と該取付け部材の成形型の、誤組付け防止リブ部位での断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 車両用内装装置
20 装置本体
20a 本体の意匠面
21 爪受け部
21a 貫通孔
22,22a、22b スライドガイド
22c スライドガイドの内側面
23 凹部
24 ランプ
25 レンズ
30 取付け部材
31 意匠部
31a 意匠部の車室側面
31c 意匠部の反車室側面
32 箱状部
32a 箱状部の上壁
32b 箱状部の両側壁
32c 箱状部の延び壁
32d 箱状部の両側面
32e 空間部
33 爪部
33a 弾性変形部
33b 引っ掛かり部
34 延長リブ
34a 延長リブの両外側面
35 誤組付け防止リブ35
40 上型
41 下型
42 ランナー
50 スライド型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体に所定の向きで取付けられる樹脂製の取付け部材と、
を有し、
前記取付け部材は、車室側面が意匠面を構成する意匠部と、該意匠部から反車室側に突出して設けられ前記装置本体に前記所定の向きとは反対の向きで取付けられるときに前記装置本体と干渉する誤組付け防止リブと、を備えている、車両用内装装置。
【請求項2】
前記取付け部材は金型を用いて成形されており、前記取付け部材を成形するときに成形後に前記誤組付け防止リブとなる部分に前記金型に設けられるランナーを流れてきた溶融樹脂が流れ込むようにされている、請求項1記載の車両用内装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−255771(P2009−255771A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108125(P2008−108125)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】