説明

車両用制動装置

【課題】車両用制動装置において、電源装置が失陥してもホイールシリンダに油圧を供給可能として適正な制動力を確保することで、信頼性及び安全性の向上を図ると共に構造の簡素化を図る。
【解決手段】シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14を設けることで第1圧力室Rと第2圧力室Rと背面圧力室Rを区画し、入力ピストンと加圧ピストンとの間にストローク吸収機構を設け、圧力制御弁50で調圧した油圧を背面圧力室Rに供給可能とし、支持部材21(シリンダ12)に入力ピストン13との間にシール部材63を装着すると共に、支持部材23(加圧ピストン14)に入力ピストン13との間にシール部材64を装着し、各シール部材63,64の各シール径を略同等に設定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員のブレーキ操作に対して車両に付与する制動力を電子制御する車両用制動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の制動装置として、ブレーキペダルから入力されたブレーキ操作力やブレーキ操作量などに対して、車両の制動力、つまり、制動力を発生させるホイールシリンダへ供給する油圧を電気的に制御する電子制御制動装置が知られている。この電子制御制動装置としては、ブレーキ操作量に応じて目標制動油圧を設定し、アキュムレータに蓄えられた油圧を調圧してから、ホイールシリンダへ供給することで、制動力を制御するECB(Electronically Controlled Brake)が知られている。
【0003】
このECBは、運転者によるブレーキペダル操作に応じて作動するマスタシリンダと、このマスタシリンダに連結されたストロークシミュレータと、マスタシリンダとブレーキホイールシリンダとを連結する油圧経路に設けられたマスタカット弁と、油圧を蓄えられるアキュムレータと、このアキュムレータに蓄えられた油圧を調圧する調圧機構とを有している。従って、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、マスタシリンダがその操作量に応じた油圧を発生すると共に、作動油の一部がストロークシミュレータに流れ込み、ブレーキペダルストロークを吸収すると共に、ブレーキペダルにブレーキ反力を付与することで、ブレーキペダルの操作量が調整される。一方、ブレーキECUは、ブレーキ操作量に応じて車両の目標制動力、つまり、目標制動油圧を設定し、調圧機構によりアキュムレータの油圧を調圧して各ホイールシリンダに供給することで、乗員が所望する制動力が得られる。
【0004】
ところで、上述したECBは、ブレーキペダルから入力されたブレーキ操作に応じた適正な目標制動油圧を設定し、調圧機構を電気的に制御して調圧することで、各ホイールシリンダに対して適正な制動油圧を供給している。そのため、電源装置の失陥時には、調圧機構を制御することができず、各ホイールシリンダに適正な油圧を供給することが困難となる。そこで、電源装置の失陥時であっても、制動装置などの電子制御装置を正常に作動させるものとして、例えば、特許文献1に記載された車両用電源装置がある。
【0005】
この特許文献1に記載された車両用電源装置は、補助電源として、複数のキャパシタで形成されるキャパシタユニットを用いた電源バックアップユニットからなる車両用電源装置であって、バッテリの正常時にもキャパシタユニットからの電力供給を可能にする電力供給部と、この電力供給部を作動させるための強制作動部とを有し、正常時に電力供給部の動作状態を確認するようにしたものである。
【0006】
【特許文献1】特開2005−014754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の車両用電源装置にあっては、バッテリと補助電源(キャパシタユニット)を設け、バッテリの正常時にも、キャパシタユニットからの電力供給を可能にする電力供給部を設けこの電力供給部の動作状態を確認するようにしている。通常使用されるバッテリに加えて、補助電源としてキャパシタユニットを車両に搭載することは、製造コストが増加するばかりでなく、車両の重量が増加してしまって燃費の低下を招いてしまう。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、電源装置が失陥してもホイールシリンダに油圧を供給可能として適正な制動力を確保することで、信頼性及び安全性の向上を図ると共に構造の簡素化を図る車両用制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の車両用制動装置は、乗員が制動操作可能な操作部材と、シリンダ内に操作部材が連結される入力ピストンと加圧ピストンが移動自在に支持されることで、前記加圧ピストンより前方の第1圧力室と前記入力ピストンと前記加圧ピストンの間の第2圧力室と前記加圧ピストンより後方の第3圧力室が区画されるマスタシリンダと、前記入力ピストンと加圧ピストンとの間に設けられるストローク吸収機構と、油圧を受けて車輪に制動力を発生させるホイールシリンダと、前記第1圧力室と前記ホイールシリンダとを連結する油圧通路と、該油圧通路を開閉可能なマスタカット弁と、前記操作部材の操作ストロークに応じた目標制御圧に基づいた電磁力により駆動弁を移動することで油圧を調圧して出力可能であると共に、前記第1圧力室からの油圧をパイロット圧として前記駆動弁を移動することで油圧を調圧して出力可能である圧力制御弁と、該圧力制御弁からの油圧を前記第3圧力室及び前記ホイールシリンダに供給可能な制御圧通路と、前記圧力制御弁及び前記マスタカット弁を制御可能な制御手段とを備え、前記入力ピストンは、前記シリンダに対して移動自在に支持されると共に前記加圧ピストンに対して移動自在に支持され、前記入力ピストンと前記シリンダとの間に第1シール部が設けられると共に前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの間に第2シール部が設けられ、前記第1シール部と前記第2シール部の各シール径が略同等に設定される、ことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の車両用制動装置では、前記油圧通路の閉止時に前記第2圧力室をリザーバ室に連通し、前記油圧通路の開放時に前記加圧ピストンが前進することで前記第2圧力室を遮断する第1連通路が設けられることを特徴としている。
【0011】
本発明の車両用制動装置では、前記油圧通路の閉止時に前記第2圧力室をリザーバ室に連通し、前記油圧通路の開放時に前記加圧ピストンが前進することで前記第2圧力室を前記第1圧力室に連通する第3連通路が設けられることを特徴としている。
【0012】
本発明の車両用制動装置では、前記油圧通路の閉止時に前記第1圧力室をリザーバ室に連通し、前記油圧通路の開放時に前記加圧ピストンが前進することで前記第1圧力室を遮断する第2連通路が設けられることを特徴としている。
【0013】
本発明の車両用制動装置では、前記油圧通路が前輪の前記ホイールシリンダに連結され、前記制御圧通路が後輪の前記ホイールシリンダに連結され、前記油圧通路と前記制御圧通路を連通する連通油圧通路に連通弁が設けられることを特徴としている。
【0014】
本発明の車両用制動装置では、前記加圧ピストンに嵌合する前記入力ピストンの外径と前記第1圧力室を押圧する前記加圧ピストンの外径が略同径に設定されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用制動装置によれば、シリンダ内に入力ピストンと加圧ピストンを設けることで第1圧力室と第2圧力室と第3圧力室を区画し、入力ピストンと加圧ピストンとの間にストローク吸収機構を設け、第1圧力室の油圧をマスタカット弁の開放時に油圧通路によりホイールシリンダに供給可能とし、また、操作部材の操作ストロークに応じた目標制御圧に基づいて圧力制御弁で油圧を調圧して第3圧力室に供給可能であると共に、第1圧力室からの油圧をパイロット圧として圧力制御弁で油圧を調圧して第3圧力室に供給可能とし、入力ピストンをシリンダ及び加圧ピストンに対して移動自在に支持し、入力ピストンとシリンダとの間に第1シール部を設けると共に加圧ピストンと入力ピストンとの間に第2シール部を設け、第1シール部と第2シール部の各シール径を略同等に設定している。従って、電源装置が失陥してもホイールシリンダに油圧を供給可能として適正な制動力を確保し、信頼性及び安全性の向上を図ることができると共に、制御圧が第3圧力室に作用しても入力ピストンの反力が影響を受けることはなく、ストローク吸収機構を容易に内蔵可能とすると共に、電磁弁の数を減少して構造の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係る車両用制動装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係る車両用制動装置を表す概略構成図、図2は、実施例1の車両用制動装置における圧力制御弁の断面図である。
【0018】
実施例1の車両用制動装置において、図1に示すように、マスタシリンダ11は、シリンダ12内にピストンとしての入力ピストン13と加圧ピストン14が軸方向に移動自在に支持されて構成されている。このシリンダ12は、基端部が開口して先端部が閉塞した円筒形状をなし、内部に入力ピストン13と加圧ピストン14が同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持されている。
【0019】
また、操作部材としてのブレーキペダル15は、上端部が図示しない車体の取付ブラケットに支持軸16により回動自在に支持されており、下端部に運転者が踏み込み操作可能なペダル17が取付けられている。そして、ブレーキペダル15は、中間部に連結軸18によりクレビス19が取付けられ、このクレビス19には操作ロッド20の基端部が連結されている。そして、シリンダ12の基端部側に配置された入力ピストン13は、基端部にブレーキペダル15の操作ロッド20の先端部が連結されている。
【0020】
入力ピストン13は、外周面がシリンダ12の内周部に圧入または螺合して固定された円筒形状をなす支持部材21の内周面により移動自在に支持されている。この入力ピストン13は、支持部材21の内周面に嵌合する支持部13aと、基端部に固定されたブラケット13bと、先端部に支持部13aより大径の押圧部13cとを有している。そして、支持部材21と入力ピストン13のブラケット13bとの間に反力スプリング22が介装されており、入力ピストン13が一方方向(図1にて、右方)に付勢支持されている。
【0021】
加圧ピストン14は、シリンダ12内にて、入力ピストン13の先端部側に配置されており、外周面がシリンダ12の内周面に移動自在に支持されている。この加圧ピストン14は、シリンダ12の第1内周面12aに嵌合する支持部14aと、第1内周面12aに段部12bを介して大径に形成される第2内周面12cに嵌合するフランジ部14bとを有している。また、加圧ピストン14は、後方に開口する支持孔14cが形成されており、この支持孔14cの内周面に入力ピストン13の押圧部13cの外周面が移動自在に嵌合している。そして、支持孔14cの先端部に、支持部材23が圧入または螺合して固定されており、加圧ピストン14と支持部材23とは一体となって、入力ピストン13の支持部13aに対して相対移動可能となっている。
【0022】
また、加圧ピストン14は、支持孔14c内にゴム部材24が配置されている。そして、入力ピストン13は、押圧部13cの前面にゴム部材24を押圧する円錐部13dが形成されている。一方、ゴム部材24は、円錐部13dに対向する後端部が平坦面をなし、前端部に、加圧ピストン14に押圧したときに、この押圧方向(軸方向)と交差する方向(径方向)に弾性変形する円錐台形状をなす変形部24aが形成されている。
【0023】
そのため、入力ピストン13は、反力スプリング22の付勢力により、押圧部13cが支持部材23に当接する位置に付勢支持されており、反力スプリング22の付勢力に抗して前進すると、この押圧部13cがゴム部材24を押圧して加圧ピストン14における支持孔14cの底面に当接することができる。加圧ピストン14は、反力スプリング22の付勢力により、入力ピストン13を介して、支持部材23が支持部材21に当接する位置に付勢支持されている。また、入力ピストン13は、押圧部13cがゴム部材24を押圧してこのゴム部材24が加圧ピストン14における支持孔14cの底面に当接した後、更に前進することで加圧ピストン14を押圧し、入力ピストン13と加圧ピストン14とが一体となって前進することができ、加圧ピストン14の先端部がシリンダ12の底部に当接することができる。
【0024】
この場合、入力ピストン13と加圧ピストン14が反力スプリング22の付勢力により後退位置に位置決めされているとき、入力ピストン13の押圧部13cとゴム部材24との間には、ストローク吸収機構としての初期隙間Sが設定されている。即ち、入力ピストン13が初期ストローク(初期隙間S)だけ前進するとき、入力ピストン13はゴム部材24を弾性変形させることはなく、その初期ストロークが吸収される。
【0025】
そして、本実施例では、反力スプリング22とゴム部材24によりストロークシミュレータが構成されており、入力ピストン13が前進することで、反力スプリング22だけを弾性変形し、入力ピストン13が初期ストロークSを越えて前進し、ゴム部材24が加圧ピストン14に接触して押圧されることで、このゴム部材24が弾性変形する。ここで、反力スプリング22は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、ゴム部材24は、弾性変形時に非線形剛性変化をなす。
【0026】
従って、運転者がペダル17を踏み込むことでブレーキペダル15が回動すると、その操作力が操作ロッド20を介して入力ピストン13に伝達され、この入力ピストン13が反力スプリング22の付勢力に抗して前進することができる。そして、入力ピストン13が初期ストロークSだけ前進すると、ゴム部材24を弾性変形させることができ、入力ピストン13は加圧ピストン14を押圧し、一体となって前進することができる。
【0027】
なお、入力ピストン13と加圧ピストン14との受圧面積の関係は、以下に表すものとなっている。この場合、A1は、加圧ピストン14の支持部14aの断面積、A2は、加圧ピストン14のフランジ部14bの断面積、A3は、入力ピストン13の支持部13aの断面積である。
A1=A2−A3
【0028】
このように、シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14が同軸上に移動自在に配置されることで、加圧ピストン14における前進方向(図1にて左方)に第1圧力室Rが区画され、加圧ピストン14における後退方向(図1にて右方)、つまり、入力ピストン13と加圧ピストン14との間に第2圧力室Rが区画され、入力ピストン13及び加圧ピストン14における後退方向(図1にて右方)、つまり、加圧ピストン14及び支持部材23と支持部材21との間に背面圧力室(第3圧力室)Rが区画されている。また、シリンダ12と加圧ピストン14との間にリリーフ室Rが形成されている。
【0029】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLにはそれぞれブレーキ装置(制動装置)を作動させるホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLが設けられており、調圧手段を構成するABS(Antilock Brake System/アンチロックブレーキシステム)70により作動可能となっている。即ち、マスタシリンダ11の第1圧力室Rに連通する第1圧力ポート26には、第1油圧配管(油圧通路)27の一端部が連結されており、この第1油圧配管27の他端部は、2つの油圧供給配管28a,28bに分岐され、前輪FR,FLに配置されるブレーキ装置のホイールシリンダ25FR,25FLに連結されている。また、マスタシリンダ11の背面圧力室Rに連通する第2圧力ポート29には、第2油圧配管30の一端部が連結されており、この第2油圧配管30の他端部は、2つの油圧供給配管31a,31bに分岐され、後輪RR,RLに配置されるブレーキ装置のホイールシリンダ25RR,25RLに連結されている。
【0030】
そして、第1油圧配管27にマスタカット弁32が設けられている。このマスタカット弁32は、ノーマルオープンタイプの電磁式開閉弁であって、電力供給時に閉止する。また、第1油圧配管27と第2油圧配管30との間には、連通油圧配管33が設けられており、この連通油圧配管33には連通弁34が設けられている。この連通弁34は、ノーマルクローズタイプの電磁式開閉弁であって、電力供給時に開放する。
【0031】
また、第1油圧配管27から分岐した各油圧供給配管28a,28bには、油圧排出配管35a,35bの基端部が連結されており、第2油圧配管30から分岐した各油圧供給配管31a,31bには、油圧排出配管36a,36b基端部が連結されている。そして、各油圧排出配管35a,35b,36a,36bは、先端部が集合して第3油圧配管37に連結されている。そして、マスタシリンダ11のリリーフ室Rに連通する第1リリーフポート38に、この第3油圧配管37の先端部が連結されている。
【0032】
そして、各油圧供給配管28a,28b,31a,31bには、各油圧排出配管35a,35b,36a,36bとの接続部より上流側(第1、第2油圧配管27,30側)に、それぞれ電磁式の増圧弁39a,39b,40a,40bが配置されている。また、各油圧排出配管35a,35b,36a,36bには、それぞれ電磁式の減圧弁41a,41b,42a,42bが配置されている。この増圧弁39a,39b,40a,40bは、ノーマルオープンタイプの開閉弁であって、電力供給時に閉止する。一方、減圧弁41a,41b,42a,42bは、ノーマルクローズタイプの開閉弁であって、電力供給時に開放する。
【0033】
油圧ポンプ43はモータ44により駆動可能であり、第4油圧配管45を介してリザーバタンク(リザーバ室)46に連結されると共に、配管47を介してアキュムレータ48に連結されている。従って、モータ44を駆動すると、油圧ポンプ43はリザーバタンク46に貯留されている作動油を加圧してアキュムレータ48に供給することができ、アキュムレータ48は、所定圧力の油圧を蓄圧することができる。
【0034】
油圧ポンプ43及びアキュムレータ48は、高圧供給配管49を介して圧力制御弁50に連結されている。この圧力制御弁50は、電磁力によりアキュムレータ48に蓄圧された油圧を調圧し、マスタシリンダ11やホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに出力可能である。そのため、圧力制御弁50は、制御圧供給配管51を介して第2油圧配管30に連結され、減圧供給配管52及びリリーフ配管53を介して第3油圧配管37に連結されている。また、外部圧供給配管(パイロット通路)54を介して第1油圧配管27に連結されている。この場合、外部圧供給配管54は、第1油圧配管27におけるマスタカット弁32よりABS70側に連結されている。
【0035】
ここで、上述した調圧手段を構成する圧力制御弁50について詳細に説明する。
【0036】
この圧力制御弁50において、図2に示すように、ハウジング111は、その中心部に上下方向に沿って貫通する第1支持孔112が形成され、その上部には、第1支持孔112に連通する取付孔113及びねじ孔114が形成され、上方が外部に開口している。そして、位置調整用円盤115が外部からねじ孔114に螺合することで、第1支持孔112の上方の開口が閉塞されている。
【0037】
また、ハウジング111の下部には、第1支持孔112に連通し、且つ、この第1支持孔112より小径の第2支持孔116が形成されている。そして、ハウジング111の第1支持孔112と第2支持孔116にわたって駆動ピストン(駆動弁)117が移動自在に嵌合している。この駆動ピストン117は、円柱形状をなし、フランジ部117aが一体に形成されている。また、駆動ピストン117には、軸方向に貫通する第1通路117bが形成されると共に、この第1通路117bと交差するように径方向に貫通する第2通路117cが形成されている。
【0038】
ハウジング111の下部には、プランジャ118が上下方向に沿って移動自在に支持されると共にリターンスプリング119により下方に付勢支持されている。そして、このプランジャ118は、上方に延出されて第2支持孔116に移動自在に嵌合するロッド部118aを有し、第1弁部118bが駆動ピストン117に形成された第1弁座117dに着座可能となっている。そして、プランジャ118の外周側には、通電可能なコイル120が巻装されており、このプランジャ118とコイル120によりソレノイドが構成されている。
【0039】
ハウジング111の第1支持孔112には、駆動ピストン117の上方に位置して、円筒形状をなす外部ピストン(駆動弁)121が移動自在に嵌合し、この外部ピストン121の内部に制御弁122が配設され、この外部ピストン121と相対移動自在となっている。外部ピストン121は、連通孔121aが形成されると共に、上方が開口している。そして、駆動ピストン117のフランジ部117aと外部ピストン121との間には、リターンスプリング123が張設されており、駆動ピストン117は下方に付勢支持され、外部ピストン121は上方に付勢支持されている。
【0040】
外部ピストン121は、内部に制御弁122が収容され、上端部に蓋部124が固定されている。制御弁122は、上端部が蓋部124に嵌合する一方、下端部に連通孔121aを貫通する連結部122aが形成され、この連結部122aが駆動ピストン117の上端部に形成された連結凹部117eに嵌合している。また、制御弁122は、第2弁部122bが形成され、この第2弁部122bは、外部ピストン121に形成された第2弁座121bに着座可能となっている。そして、外部ピストン121と制御弁122との間には、リターンスプリング125が張設されており、その付勢力により外部ピストン121が上方に、制御弁122が下方に支持されることで、第2弁部122bが第2弁座121bに着座している。
【0041】
本実施例の圧力制御弁50は、上述したように、ハウジング111内に駆動ピストン117、外部ピストン121、制御弁122が移動自在に支持されることから、外部ピストン121と制御弁122により区画される高圧室R11と、ハウジング111と駆動ピストン117とプランジャ118により区画される減圧室R12と、ハウジング111と駆動ピストン117と外部ピストン121と制御弁122とにより区画される圧力室R13と、ハウジング111と外部ピストン121と制御弁122とにより区画されるリリーフ室R14と、ハウジング111と外部ピストン121により区画される外部圧力室R15が設けられている。
【0042】
そして、ハウジング111及び外部ピストン121を貫通して高圧室R11に連通する高圧ポートP11が形成されると共に、ハウジング111を貫通して減圧室R12に連通する減圧ポートP12が形成されている。また、ハウジング111を貫通して圧力室R13に連通する制御圧ポートP13が形成されている。更に、ハウジング111及び外部ピストン121を貫通してリリーフ室R14に連通するリリーフポートP14が形成されている。また、ハウジング111を貫通して外部圧力室R15に連通する外部圧ポートP15が形成されている。そして、高圧ポートP11は高圧供給配管49に連結され、減圧ポートP12は減圧供給配管52に連結され、制御圧ポートP13は制御圧供給配管51に連結され、リリーフポートP14はリリーフ配管53に連結され、外部圧ポートP15は外部圧供給配管54に連結されている。
【0043】
このように構成された圧力制御弁50にて、コイル120が消磁状態にあるとき、リターンスプリング119によりプランジャ118の第1弁部118bが、駆動ピストン117の第1弁座117dから離間している。一方、リターンスプリング125により制御弁122の第2弁部122bが外部ピストン121の第2弁座121bに着座している。従って、連通孔121aが閉止されることで、高圧室R11と圧力室R13とが遮断され、圧力室R13と減圧室R12とが連通する。
【0044】
この状態から、コイル120に通電すると、発生する電磁力によりプランジャ118が上方に移動し、ロッド部118aが駆動ピストン117を押圧し、この駆動ピストン117がリターンスプリング123の付勢力に抗して上方に移動する。すると、駆動ピストン117が制御弁122をリターンスプリング125の付勢力に抗して押圧し、この制御弁122が上方に移動する。制御弁122が上方に移動すると、第2弁部122bが外部ピストン121の第2弁座121bから離間して連通孔121aが開放される。従って、高圧室R11と圧力室R13が連通され、圧力室R13と減圧室R12とが遮断される。
【0045】
また、外部圧ポートP15から外部圧力室R15に外部圧(油圧)が供給されると、蓋部124を介して外部ピストン121が下方に移動する。すると、この外部ピストン121がリターンスプリング123の付勢力に抗して下方に移動し、制御弁122の第2弁座122bから外部ピストン121の第2弁部121bが離間して連通孔121aが開放される。従って、前述と同様に、高圧室R11と圧力室R13が連通され、圧力室R13と減圧室R12とが遮断される。
【0046】
図1に戻り、マスタシリンダ11にて、シリンダ12には、リリーフ室Rに連通する第2リリーフポート55が形成され、この第2リリーフポート55は第5油圧配管56を介してリザーバタンク46に連結されている。加圧ピストン14には、第2圧力室Rとリリーフ室Rとを連通可能な第1連通孔(第1連通路)57が形成されており、シリンダ12と加圧ピストン14との間には、第2リリーフポート55の一方側に位置してワンウェイシール58が設けられている。また、シリンダ12には、第3リリーフポート59が形成され、この第3リリーフポート59は第6油圧配管60を介してリザーバタンク46に連結されている。加圧ピストン14には、第3リリーフポート59と第1圧力室Rとを連通可能な第2連通孔(第2連通路)61が形成されており、シリンダ12と加圧ピストン14との間には、第3リリーフポート59の両側に位置してワンウェイシール62が設けられている。
【0047】
従って、加圧ピストン14が後退位置にあるとき、第2圧力室Rとリリーフ室Rとが第1連通孔57により連通すると共にリリーフ室Rが第2リリーフポート55によりリザーバタンク46に連通し、第1圧力室Rと第3リリーフポート59(リザーバタンク46)とが第2連通孔61により連通している。そして、入力ピストン13に押圧されて加圧ピストン14が微小前進すると、第2圧力室Rとリリーフ室Rとの連通が遮断されることから、第2圧力室Rが密閉状態となり、入力ピストン13と加圧ピストン14が一体となって前進可能となる。また、加圧ピストン14が微小前進すると、第1圧力室Rと第3リリーフポート59との連通が遮断されることから、マスタカット弁32が閉止状態であれば、第1圧力室Rが密閉状態となり、加圧ピストン14の前進が阻止され、マスタカット弁32が開放状態であれば、加圧ピストン14が前進することで、第1圧力室Rから第1油圧配管27に制御圧を供給可能となる。
【0048】
また、支持部材21には、入力ピストン13との間にシール部材(第1シール部)63が装着されると共に、加圧ピストン14と一体の支持部材23には、入力ピストン13との間にシール部材(第2シール部)64が装着されている。即ち、この構成により、入力ピストン13は、大気側のシール(シール部材63)径と加圧ピストン14側のシール(シール部材64)径とが同径(略同等)となっている。そのため、マスタシリンダ11の第2圧力ポート29から背面圧力室Rに制御圧が作用したとき、入力ピストン13は、この制御圧の圧力を受けることがないため、反力の変化もない。
【0049】
このように構成された本実施例の車両用制動装置にて、図1に示すように、電子制御ユニット(ECU)71は、ブレーキペダル15から入力ピストン13に入力される操作力(ペダル踏力)に応じた目標制御圧を設定し、圧力制御弁50により調圧し、この設定された目標制御圧を背面圧力室Rに作用させることで、加圧ピストン14をアシストする。また、目標制御圧をABS70を介して各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに制動油圧として付与することで、この各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLを作動し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに所望の制動力を作用させる。
【0050】
即ち、ブレーキペダル15には、このブレーキペダル15のペダルストロークSpを検出するストロークセンサ72と、そのペダル踏力を検出する踏力センサ73が設けられており、各検出結果をECU71に出力している。また、第1油圧配管27にて、マスタカット弁32より上流側、つまり、第1圧力ポート26側には、油圧を検出する第1圧力センサ74が設けられ、マスタカット弁32より下流側、つまり、ABS70側には、油圧を検出する第2圧力センサ75が設けられている。マスタカット弁32が閉止状態にあるとき、第1圧力センサ74は、第1圧力室Rの圧力を検出し、第2圧力センサ75は、前輪FR,FL及び後輪RR,RLの各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLへ供給される油圧(制御圧)を検出し、それぞれ検出結果をECU71に出力している。
【0051】
更に、油圧ポンプ43からアキュムレータ48を介して圧力制御弁50に至る高圧供給配管49には、油圧を検出する第3圧力センサ76が設けられている。この圧力センサ76は、アキュムレータ48に蓄圧されて圧力制御弁50に供給される油圧を検出し、検出結果をECU71に出力している。なお、前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、それぞれ図示しない車輪速センサが設けられており、検出した各車輪速度をECU71に出力している。
【0052】
従って、ECU71は、踏力センサ73が検出したブレーキペダル15のペダル踏力(または、ストロークセンサ72が検出したペダルストローク)に基づいて目標制御圧を設定し、圧力制御弁50における駆動ピストン117を制御する一方、第2圧力センサ75が検出した制御圧をフィードバックし、目標制御圧と制御圧とが一致するように制御している。この場合、ECU71は、ペダル踏力(ペダルストローク)に対する目標制御圧を表すマップを有しており、このマップに基づいて圧力制御弁50を制御する。
【0053】
本実施例の車両用制動装置による制動力制御について、具体的に説明すると、図1及び図2に示すように、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力(踏力)により入力ピストン13が前進(図1にて左方へ移動)する。このとき、踏力センサ73はペダル踏力を検出し、ECU71は、このペダル踏力に基づいて目標制御圧を設定する。そして、ECU71は、この目標制御圧に基づいて圧力制御弁50を制御し、圧力制御弁50は、アキュムレータ48に蓄圧された油圧を調圧し、目標制御圧となる制御圧を制御圧供給配管51に出力する。
【0054】
即ち、圧力制御弁50にて、コイル120に通電し、発生する吸引力によりプランジャ118をリターンスプリング119の付勢力に抗して上方に移動し、駆動ピストン117を押圧して上方に移動する。すると、駆動ピストン117が制御弁122を押圧して上方に移動し、連通孔121aが開放されることで、高圧ポートP11と制御圧ポートP13が連通する一方、減圧ポートP12と制御圧ポートP13が遮断される。そのため、アキュムレータ48の油圧が高圧供給配管49から高圧ポートP11に供給され、高圧室R11から連通孔121aを通ることで調圧されて圧力室R13に供給され、制御圧ポートP13から制御圧供給配管51を通して第2油圧配管30に供給される。
【0055】
すると、第2油圧配管30に供給された油圧は、マスタシリンダ11の第2圧力ポート29を通して背面圧力室Rに作用する。ところが、入力ピストン13は、大気側のシール径と加圧ピストン14側のシール径が同径であるため、入力ピストン13は制御圧に関係なく前進することとなり、ブレーキペダル15に対して反力スプリング22により適正な反力が付与される。
【0056】
また、第2油圧配管30に供給された制御圧は、各油圧供給配管31a,31bを通して後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに付与される。更に、第2油圧配管30に供給された制御圧は、連通油圧配管33を通して第1油圧配管27に供給され、各油圧供給配管28a,28bを通して前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに付与される。このとき、ECU71は、第2圧力センサ75が検出した制御圧をフィードバックし、目標制御圧と制御圧とが一致するように圧力制御弁50を制御する。従って、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに適正な制御圧が付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに適正な制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた所望の制動力を発生させることができる。
【0057】
ところで、乗員がブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン13が反力スプリング22の付勢力に抗して前進することで、この反力スプリング22だけが収縮して弾性変形する。この場合、入力ピストン13が初期ストロークSだけ前進する間は、ゴム部材24は弾性変形しない。そのため、反力スプリング22は、線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダル15の初期操作に対して、ストロークが早期に吸収されると共に、変化量が一定な反力が付与される。
【0058】
そして、乗員がブレーキペダル15を更に踏み込み、入力ピストン13が初期ストロークSを越えて前進すると、ゴム部材24が加圧ピストン14に接触して押圧される。このとき、マスタカット弁32が閉止されているため、加圧ピストン14が微小前進すると、第2連通孔61と第3リリーフポート59との連通が解除され、第1圧力室Rは密閉状態となり、加圧ピストン14の前進が拘束される。そのため、入力ピストン13がゴム部材24をより強く押圧することで、このゴム部材24が弾性変形する。即ち、入力ピストン13が反力スプリング22の付勢力に抗して更に前進することで、この反力スプリング22が収縮して弾性変形すると共に、ゴム部材24が加圧ピストン14に押圧されて収縮して弾性変形する。そのため、反力スプリング22は、線形剛性変化をなすものの、ゴム部材24は、弾性変形時に非線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダル15の調整操作に対して、ストロークが適正に吸収されると共に、安定した反力が付与される。
【0059】
また、入力ピストン13が前進し、ゴム部材24が加圧ピストン14により押圧されて弾性変形するとき、円錐部13dがゴム部材24の中心部を押圧することで、ゴム部材24は、その中心部が凹むように弾性変形する。続いて、この円錐部13dの前面がゴム部材24に密着して全体を押圧することで、ゴム部材24は、変形部24aが加圧ピストン14により径方向における外方に弾性変形する。そのため、入力ピストン13がゴム部材24を弾性変形させるとき、弾性初期と弾性終期における弾性変化率が高くなり、ブレーキペダル15に対して適正な反力が付与される。
【0060】
一方、電源系統に故障が発生して失陥した場合には、圧力制御弁50のコイル120への電流値を制御することで、各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLへ付与する制御圧を適正油圧に制御することができない。ところが、本実施例では、圧力制御弁50に、マスタシリンダ11の第1圧力室Rで発生したパイロット油圧(外部圧)により作動する外部ピストン121を設け、この外部ピストン121により駆動ピストン117を制御して適正な制御圧を出力可能としている。
【0061】
電源系統の失陥時に、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により入力ピストン13が前進し、初期ストロークSを越えると、入力ピストン13がゴム部材24を介して加圧ピストン14を押圧し、入力ピストン13と加圧ピストン14が一体となって前進する。入力ピストン13及び加圧ピストン14が前進すると、第1圧力室Rが加圧される。このとき、マスタカット弁32が開放されているため、第1圧力室Rの油圧が外部圧として第1油圧配管27に吐出され、外部圧供給配管54を通して圧力制御弁50に作用する。
【0062】
この圧力制御弁50にて、外部圧が外部圧供給配管54から外部圧ポートP15を介して外部圧力室R15に作用すると、外部ピストン121が下方に移動する。すると、連通孔121aが開放されることで、高圧ポートP11と制御圧ポートP13が連通する一方、減圧ポートP12と制御圧ポートP13が遮断される。そのため、アキュムレータ48の油圧が高圧供給配管49から高圧ポートP11に供給され、高圧室R11から連通孔121aを通ることで調圧されて圧力室R13に供給され、制御圧ポートP13から制御圧供給配管51を通して第2油圧配管30に供給される。すると、第2油圧配管30に供給された油圧は、マスタシリンダ11の第2圧力ポート29を通して背面圧力室Rに作用することとなり、この制御圧により加圧ピストン14を介して入力ピストン13をアシストすることができる。
【0063】
そのため、第2油圧配管30に供給された制御圧が、各油圧供給配管31a,31bを通して後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに付与される。また、制御圧によりアシストされることで、容易に前進する入力ピストン13により、第2油圧配管30の制御圧と同等の制御圧が第1圧力室Rから第1油圧配管27に吐出される。そのため、第1油圧配管27に供給された制御圧が、各油圧供給配管28a,28bを通して前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに付与される。従って、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに適正な制御圧が付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに適正な制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた所望の制動力を発生させることができる。
【0064】
なお、アキュムレータ48の残圧が不足した場合であっても、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により入力ピストン13が前進し、ゴム部材24を介して加圧ピストン14を押圧して前進し、第1圧力室Rを加圧することができる。そのため、第1圧力室Rから第1油圧配管27に踏力に応じた油圧が吐出されるため、この油圧を前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに付与し、前輪FR,FLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0065】
このように実施例1の車両用制動装置にあっては、シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14を直列に移動自在に支持することで第1圧力室R及び第2圧力室Rを区画するマスタシリンダ11を設け、第1圧力室Rに連結された第1油圧配管27にABS70を介して各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLを連結すると共にマスタカット弁32を設け、一方、電子制御可能な圧力制御弁50をABS70を介して各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに連結している。
【0066】
従って、電源系統の正常時には、圧力制御弁50を制御することで、アキュムレータ48の油圧を調圧して各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに供給することができる。一方、電源系統の失陥時には、ブレーキペダル15の操作に応じた外部圧により圧力制御弁50を作動することで、アキュムレータ48の油圧を調圧して各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに供給することができる。即ち、電磁力及び外部圧により作動する圧力制御弁50を適用することで、電源系統の状態に拘らず乗員によるブレーキペダル15の操作に応じた制御圧を確実に発生させることができ、その結果、油圧経路を簡略化して構造の簡素化を図ることができると共に、製造コストを低減することができる一方、適正な制動力制御を可能とすることができ、信頼性及び安全性の向上を図ることができる。
【0067】
また、実施例1の車両用制動装置では、入力ピストン13を、シリンダ12と一体の支持部材21に移動自在に支持すると共に、加圧ピストン14と一体の支持部材23に移動自在に支持し、支持部材21と入力ピストン13との間にシール部材63を装着すると共に、支持部材23と入力ピストン13との間にシール部材64を装着し、各シール部材63,64の各シール径を略同等に設定している。
【0068】
従って、入力ピストン13は、大気側をシールするシール部材63の径と加圧ピストン14側をシールするシール部材64の径とが同径となり、マスタシリンダ11の第2圧力ポート29から背面圧力室Rに制御圧が作用したとき、入力ピストン13は、この制御圧の圧力を受けることがなくなり、ブレーキペダル15の反力が変化することがなく、適正なブレーキ反力を付与することができる。その結果、入力ピストン13と加圧ピストン14との間にストローク吸収機構やストロークシミュレータを容易に搭載することができ、装置の大型化を抑制することができる。また、第2圧力ポート29に連結される第2油圧配管30にマスタカット弁を設ける必要もなく、電磁弁の数を減少して構造の簡素化を図ることができる。
【0069】
また、実施例1の車両用制動装置では、マスタカット弁32により第1油圧配管27が閉止されているとき、第2圧力室Rをリザーバタンク46側に連通し、マスタカット弁32により第1油圧配管27が開放されているとき、加圧ピストン14が前進することで第2圧力室Rを遮断する第1連通孔57を加圧ピストン14に設け、シリンダ12と加圧ピストン14との間に第2リリーフポート55の一方側に位置してワンウェイシール58を設けている。マスタカット弁32により第1油圧配管27が閉止されているとき、第1圧力室Rをリザーバタンク46側に連通し、マスタカット弁32により第1油圧配管27が開放されているとき、加圧ピストン14が前進することで第1圧力室Rを遮断する第2連通孔61を加圧ピストン14に設け、シリンダ12と加圧ピストン14との間に第3リリーフポート59の両側に位置してワンウェイシール62を設けている。
【0070】
従って、加圧ピストン14が後退位置にあるとき、第2圧力室Rが第1連通孔57によりリザーバタンク46に連通すると共に、第1圧力室Rが第2連通孔61によりリザーバタンク46に連通している。この状態で、入力ピストン13に押圧されて加圧ピストン14が微小前進すると、第2圧力室Rとリザーバタンク46との連通が遮断されることから、第2圧力室Rが密閉状態となり、入力ピストン13と加圧ピストン14が一体となって前進することができる。また、加圧ピストン14が微小前進すると、第1圧力室Rとリザーバタンク46との連通が遮断される。このとき、マスタカット弁32が閉止状態であれば、第1圧力室Rが密閉状態となり、入力ピストン13及び加圧ピストン14の前進が阻止される。一方、マスタカット弁32が開放状態であれば、入力ピストン13及び加圧ピストン14が前進することで、第1圧力室Rから第1油圧配管27に制御圧を供給することができる。その結果、シミュレータカット弁を不要として装置の簡素化を可能とすることができる。
【0071】
また、実施例1の車両用制動装置では、マスタシリンダ11にて、第1圧力室R1に第1油圧配管27が連結され、背面圧力室Rに圧力制御弁50からの油圧が供給される制御圧供給配管51が第2油圧配管30を介して連結され、入力ピストン13と加圧ピストン14との間に初期隙間S1が設けられ、第1油圧配管27が前輪のホイールシリンダ25FR,25FLに連結され、制御圧供給配管51が後輪のホイールシリンダ25RR,25RLに連結され、第1油圧配管27と第2油圧配管30が連通油圧配管33により連結され、連通油圧配管33に連通弁34が設けられている。従って、簡単な構成で、電源系統の正常時と失陥時における適正な制動油圧を確保することができ、構造の簡素化及び信頼性、安全性の向上を図ることができる。
【0072】
そして、実施例1の車両用制動装置では、マスタシリンダ11内に制動操作力に応じたストロークを吸収すると共に反力を発生させるストロークシミュレータを内蔵し、このストロークシミュレータを、入力ピストン13とシリンダ11との間に張設された反力スプリング22と、入力ピストン13と加圧ピストン14との間に設けられたゴム部材24とにより構成し、入力ピストン13が初期ストロークだけ前進する間にゴム部材24の弾性変形を抑制する弾性変形抑制手段として、入力ピストン13と加圧ピストン14との間に初期隙間Sを設定している。
【0073】
従って、初期制動操作力により入力ピストン13が前進して反力スプリング22だけを弾性変形し、入力ピストン13が初期ストロークだけ前進してからゴム部材24を弾性変形することとなり、制動操作力に応じた理想的な吸収ストローク及び制動反力を確保することで、制動操作フィーリングを向上することができる。
【0074】
そして、乗員がブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン13が前進し、反力スプリング22だけが収縮して弾性変形することとなり、この反力スプリング22が線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダル15の初期操作に対して、ストロークを早期に吸収すると共に、変化量が一定となる反力を付与することができる。そして、乗員が更にブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン13が初期ストロークを越えて前進した後にゴム部材24を弾性変形させることとなり、このゴム部材24が非線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダル15の調整操作に対して、ストロークを適正に吸収すると共に、安定した反力を付与することができる。
【0075】
また、マスタシリンダ11内に、反力スプリング22とゴム部材24を構成要素とするストロークシミュレータを内蔵している。そのため、装置のコンパクト化を可能とすることができる。
【実施例2】
【0076】
図3は、本発明の実施例2に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0077】
実施例2の車両用制動装置において、図3に示すように、マスタシリンダ211は、シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14が軸方向に移動自在に支持されて構成されており、ブレーキペダル15における操作ロッド20の先端部が入力ピストン13に連結されている。入力ピストン13は、シリンダ12に固定された支持部材21の内周面に移動自在に支持され、反力スプリング22の付勢力により一方方向(図3にて、右方)に付勢支持されている。
【0078】
加圧ピストン14は、シリンダ12内にて、入力ピストン13の先端部側に配置され、移動自在に支持されている。そして、加圧ピストン14は、支持孔14cに入力ピストン13の押圧部13cが移動自在に嵌合し、支持孔14cの先端部に支持部材23が固定さることで、加圧ピストン14と支持部材23とは一体となって、入力ピストン13の支持部13aに対して相対移動可能となっている。また、加圧ピストン14は、支持孔14c内にゴム部材24が配置されている。
【0079】
このように、シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14が同軸上に移動自在に配置されることで、第1圧力室Rと第2圧力室Rと背面圧力室Rとリリーフ室Rが区画されている。そして、第1圧力室Rの第1圧力ポート26に第1油圧配管27が連結され、背面圧力室Rの第2圧力ポート29に第2油圧配管30が連結され、リリーフ室Rの第1リリーフポート38に第3油圧配管37が連結され、第2リリーフポート55に第5油圧配管56が連結されている。
【0080】
また、マスタシリンダ211にて、シリンダ12には、第3リリーフポート59が形成されており、この第3リリーフポート59は、第6油圧配管60を介してリザーバタンク46に連結されている。そして、加圧ピストン14には、第1圧力室Rと第3リリーフポート59とを連通可能な第2連通孔61が形成されると共に、第2圧力室Rと第3リリーフポート59とを連通可能な第3連通孔(第3連通路)212が形成されている。更に、シリンダ12と加圧ピストン14との間には、第3リリーフポート59の両側に位置してワンウェイシール62が設けられている。
【0081】
従って、加圧ピストン14が後退位置にあるとき、第1圧力室Rと第3リリーフポート59とが第2連通孔61により連通し、第2圧力室Rと第3リリーフポート59とが第2連通孔212により連通している。そして、入力ピストン13に押圧されて加圧ピストン14が微小前進すると、第1圧力室Rと第3リリーフポート59との連通が遮断されることから、マスタカット弁32が閉止状態であれば、第1圧力室Rが密閉状態となり、加圧ピストン14の前進が阻止され、マスタカット弁32が開放状態であれば、加圧ピストン14が前進することで、第1圧力室Rから第1油圧配管27に制御圧を供給可能となる。また、マスタカット弁32が開放状態のとき、加圧ピストン14が更に前進すると、第2圧力室Rは第3リリーフポート59との連通が遮断され、第1圧力室Rと連通することから、入力ピストン13と加圧ピストン14が一体となって前進可能となる。
【0082】
なお、本実施例の車両用制動装置では、上述したマスタシリンダ211にマスタカット弁、ABS、ホイールシリンダ、圧力制御弁などが連結されているが、これらの構成は、上述した実施例1と同様であるため、説明は省略する。
【0083】
従って、本実施例の車両用制動装置による制動力制御について、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力(踏力)により入力ピストン13が前進する。このとき、踏力センサ73はペダル踏力を検出し、ECU71は、このペダル踏力に基づいて目標制御圧を設定する。そして、ECU71は、この目標制御圧に基づいて圧力制御弁50を制御し、圧力制御弁50は、アキュムレータ48に蓄圧された油圧を調圧し、目標制御圧となる制御圧を制御圧供給配管51に出力する。
【0084】
圧力制御弁50により、アキュムレータ48の油圧が調圧されて制御圧供給配管51を通して第2油圧配管30に供給される。すると、この制御圧は、各油圧供給配管31a,31bを通して後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに付与される。また、この制御圧は、連通油圧配管33を通して第1油圧配管27に供給され、各油圧供給配管28a,28bを通して前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに付与される。従って、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに適正な制御圧が付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに適正な制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた所望の制動力を発生させることができる。
【0085】
一方、電源系統に故障が発生して失陥した場合には、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により入力ピストン13が前進し、初期ストロークSを越えると、入力ピストン13がゴム部材24を介して加圧ピストン14を押圧し、入力ピストン13と加圧ピストン14が一体となって前進する。入力ピストン13及び加圧ピストン14が前進すると、第1圧力室Rが加圧される。このとき、マスタカット弁32が開放されているため、第1圧力室Rの油圧が外部圧として第1油圧配管27に吐出され、外部圧供給配管54を通して圧力制御弁50に作用する。
【0086】
圧力制御弁50に外部圧が作用すると、アキュムレータ48の油圧が調圧されて制御圧供給配管51を通して第2油圧配管30に供給される。すると、前述と同様に、第2油圧配管30に供給された制御圧は、マスタシリンダ211の第2圧力ポート29を通して背面圧力室Rに作用することとなり、この制御圧により加圧ピストン14を介して入力ピストン13をアシストすることができる。
【0087】
そのため、第2油圧配管30に供給された制御圧が、各油圧供給配管31a,31bを通して後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに付与される。また、制御圧によりアシストされることで、容易に前進する入力ピストン13により、第2油圧配管30の制御圧と同等の制御圧が第1圧力室Rから第1油圧配管27に吐出される。そのため、第1油圧配管27に供給された制御圧が、各油圧供給配管28a,28bを通して前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに付与される。従って、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに適正な制御圧が付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに適正な制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた所望の制動力を発生させることができる。
【0088】
このように実施例2の車両用制動装置にあっては、マスタシリンダ211にて、マスタカット弁32により第1油圧配管27が閉止されているとき、第1圧力室Rをリザーバタンク46に連通し、マスタカット弁32により第1油圧配管27が開放されているとき、加圧ピストン14が前進することで第1圧力室Rを遮断する第2連通孔212を加圧ピストン14に設け、シリンダ12と加圧ピストン14との間に第3リリーフポート59の両側に位置してワンウェイシール62を設けている。
【0089】
従って、加圧ピストン14が後退位置にあるとき、第1圧力室Rが第2連通孔61によりリザーバタンク46に連通し、第2圧力室Rが第2連通孔212によりリザーバタンク46に連通している。この状態で、入力ピストン13に押圧されて加圧ピストン14が微小前進すると、第1圧力室Rとリザーバタンク46との連通が遮断される。このとき、マスタカット弁32が閉止状態であれば、第1圧力室Rが密閉状態となり、入力ピストン13及び加圧ピストン14の前進が阻止される。一方、マスタカット弁32が開放状態であれば、入力ピストン13及び加圧ピストン14が前進することで、第1圧力室Rから第1油圧配管27に制御圧を供給することができる。なお、マスタカット弁32が開放状態のとき、加圧ピストン14が更に前進すると、第2圧力室Rは第3リリーフポート59との連通が遮断され、第1圧力室Rと連通することから、入力ピストン13と加圧ピストン14が一体となって前進することができる。その結果、シミュレータカット弁を不要とすると共に、加圧ピストン14の全長を短縮して装置の簡素化を可能とすることができる。
【実施例3】
【0090】
図4は、本発明の実施例3に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0091】
実施例3の車両用制動装置において、図4に示すように、マスタシリンダ311は、シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14が軸方向に移動自在に支持されて構成されており、ブレーキペダル15における操作ロッド20の先端部が入力ピストン13に連結されている。入力ピストン13は、シリンダ12に固定された支持部材21の内周面に移動自在に支持され、反力スプリング22の付勢力により一方方向(図4にて、右方)に付勢支持されている。
【0092】
加圧ピストン14は、シリンダ12内にて、入力ピストン13の先端部側に配置され、移動自在に支持されている。そして、加圧ピストン14は、支持孔14cに入力ピストン13の押圧部13cが移動自在に嵌合し、支持孔14cの先端部に支持部材23が固定さることで、加圧ピストン14と支持部材23とは一体となって、入力ピストン13の支持部13aに対して相対移動可能となっている。また、加圧ピストン14は、支持孔14c内にゴム部材24が配置されている。
【0093】
そして、本実施例にて、入力ピストン13と加圧ピストン14との受圧面積の関係は、以下に表すものとなっている。この場合、A11は、加圧ピストン14の支持部14aの断面積、A12は、加圧ピストン14のフランジ部14bの断面積、A13は、入力ピストン13の支持部13aの断面積である。
A11=A13
従って、入力ピストン13のシール径と加圧ピストン14のシール径が同等に設定されることから、入力ピストン13が前進することで発生する入力荷重と、加圧ピストン14が前進することで発生する制御油圧(マスタシリンダ圧勾配)とが同等なものとなり、マスタシリンダ311により発生可能な最大発生油圧が増加し、リニアな制動特性が確保される。
【0094】
なお、本実施例の車両用制動装置では、上述したマスタシリンダ311にマスタカット弁、ABS、ホイールシリンダ、圧力制御弁などが連結されているが、これらの構成並びに作用については、上述した実施例1、2と同様であるため、説明は省略する。
【0095】
このように実施例3の車両用制動装置にあっては、入力ピストン13の支持部13aが加圧ピストン14の支持部材21に移動自在に嵌合し、加圧ピストン14の支持部14aがシリンダ12に移動自在に嵌合し、入力ピストン13の支持部13aの外径(断面積A13)と第1圧力室Rを押圧する加圧ピストン14の支持部14aの外径(断面積A11)が略同径に設定されている。
【0096】
従って、入力ピストン13のシール径と加圧ピストン14のシール径が同等に設定されることから、入力ピストン13が前進することで発生する入力荷重と、加圧ピストン14が前進することで発生する出力荷重(マスタシリンダ圧勾配)とが同等なものとなり、マスタシリンダ311により発生可能な最大発生油圧が増加し、リニアな制動特性が確保される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上のように、本発明に係る車両用制動装置は、入力ピストンにおける大気側のシール径と第2圧力室側のシール径を略同等に設定することで、電源装置が失陥してもホイールシリンダに油圧を供給可能として適正な制動力を確保することで、信頼性及び安全性の向上を図ると共に構造の簡素化を図るものであり、いずれの種類の制動装置に用いても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施例1に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図2】実施例1の車両用制動装置における圧力制御弁の断面図である。
【図3】本発明の実施例2に係る両用制動装置を表す概略構成図である。
【図4】本発明の実施例3に係る両用制動装置を表す概略構成図である。
【符号の説明】
【0099】
11,211,311 マスタシリンダ
12 シリンダ
13 入力ピストン(ピストン)
14 加圧ピストン(ピストン)
15 ブレーキペダル(操作部材)
21,23 支持部材
22 反力スプリング
24 ゴム部材
25FR,25FL,25RR,25RL ホイールシリンダ
27 第1油圧配管(油圧通路)
30 第2油圧配管
32 マスタカット弁
33 連通油圧配管(連通油圧通路)
34 連通弁
39a,39b,40a,40b 増圧弁
41a,41b,42a,42b 減圧弁
43 油圧ポンプ
46 リザーバタンク
48 アキュムレータ
49 高圧供給配管
50 圧力制御弁
51 制御圧供給配管(制御圧通路)
54 外部圧供給配管
57 第1連通孔(第1連通路)
61 第2連通孔(第2連通路)
63 シール部材(第1シール部)
64 シール部材(第2シール部)
70 ABS
71 電子制御ユニット、ECU
72 ストロークセンサ
73 踏力センサ
74 第1圧力センサ
75 第2圧力センサ
76 第3圧力センサ
117 駆動ピストン(駆動弁)
121 外部ピストン(駆動弁)
122 制御弁
212 第3連通孔(第3連通路)
第1圧力室
第2圧力室
背面圧力室(第3圧力室)
リリーフ室
初期隙間、初期ストローク(ストローク吸収機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が制動操作可能な操作部材と、
シリンダ内に操作部材が連結される入力ピストンと加圧ピストンが移動自在に支持されることで、前記加圧ピストンより前方の第1圧力室と前記入力ピストンと前記加圧ピストンの間の第2圧力室と前記加圧ピストンより後方の第3圧力室が区画されるマスタシリンダと、
前記入力ピストンと加圧ピストンとの間に設けられるストローク吸収機構と、
油圧を受けて車輪に制動力を発生させるホイールシリンダと、
前記第1圧力室と前記ホイールシリンダとを連結する油圧通路と、
該油圧通路を開閉可能なマスタカット弁と、
前記操作部材の操作ストロークに応じた目標制御圧に基づいた電磁力により駆動弁を移動することで油圧を調圧して出力可能であると共に、前記第1圧力室からの油圧をパイロット圧として前記駆動弁を移動することで油圧を調圧して出力可能である圧力制御弁と、
該圧力制御弁からの油圧を前記第3圧力室及び前記ホイールシリンダに供給可能な制御圧通路と、
前記圧力制御弁及び前記マスタカット弁を制御可能な制御手段とを備え、
前記入力ピストンは、前記シリンダに対して移動自在に支持されると共に前記加圧ピストンに対して移動自在に支持され、前記入力ピストンと前記シリンダとの間に第1シール部が設けられると共に前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの間に第2シール部が設けられ、前記第1シール部と前記第2シール部の各シール径が略同等に設定される、
ことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項2】
前記油圧通路の閉止時に前記第2圧力室をリザーバ室に連通し、前記油圧通路の開放時に前記加圧ピストンが前進することで前記第2圧力室を遮断する第1連通路が設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記油圧通路の閉止時に前記第2圧力室をリザーバ室に連通し、前記油圧通路の開放時に前記加圧ピストンが前進することで前記第2圧力室を前記第1圧力室に連通する第3連通路が設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項4】
前記油圧通路の閉止時に前記第1圧力室をリザーバ室に連通し、前記油圧通路の開放時に前記加圧ピストンが前進することで前記第1圧力室を遮断する第2連通路が設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の車両用制動装置。
【請求項5】
前記油圧通路が前輪の前記ホイールシリンダに連結され、前記制御圧通路が後輪の前記ホイールシリンダに連結され、前記油圧通路と前記制御圧通路を連通する連通油圧通路に連通弁が設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の車両用制動装置。
【請求項6】
前記加圧ピストンに嵌合する前記入力ピストンの外径と前記第1圧力室を押圧する前記加圧ピストンの外径が略同径に設定されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の車両用制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−928(P2010−928A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161834(P2008−161834)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】