説明

車両用制動装置

【課題】車両用制動装置において、ドライバの意思確認を適正に行って駐車維持装置の作動を判断することで安全性及び操作性の向上を図る。
【解決手段】車両10の停止状態を維持する停止維持装置としてのディスクブレーキ装置20と、車両10の駐車状態を維持する駐車維持装置としてのパーキングブレーキ装置40とを設け、パーキングブレーキECU54は、ドライバの運転姿勢に基づいて車両10の運転を継続する運転継続意思を判定し、ドライバがディスクブレーキ装置20を作動し、且つ、ドライバに運転継続意思がないと判定したときには、パーキングブレーキ装置40を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバがブレーキペダルを踏込んで車両を停止した車両停止状態にあるとき、一定時間が経過したら車両駐車状態と判断し、パーキングブレーキ装置を自動的に作動させる技術がある。例えば、下記特許文献1に記載されたパーキングブレーキを備えた動力車は、摩擦ブレーキが液圧発生器によっても電子機械的アクチュエーターユニットによっても操作可能とし、液圧操作態様または電子機械的操作態様を設定可能とすると共に、両操作態様の切換え可能とするものである。
【0003】
そして、この特許文献1では、オートマチックトランスミッションを備えた車両の場合、オートマチックトランスミッションのパーキング位置に操作することで、ドライバが比較的長時間停車させるものと判断し、エンジンが作動していてもパーキングブレーキを作動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−076931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の装置では、ドライバがシフトレバーをパーキング位置に操作することで駐車意思を確認し、パーキングブレーキを作動させている。しかし、ドライバは、踏み切りや赤信号などで停車したときであっても、シフトレバーをパーキング位置に操作することがある。この場合、ドライバの意思に逆らってパーキングブレーキが作動してしまい、踏み切りが開いたり、信号が青になったりし、ドライバがシフトレバーを走行位置に操作してアクセルペダルを踏込んでも、車両を発進させることが困難となってしまう。このとき、ドライバは、パーキングブレーキの解除に手間取るおそれがあり、車両の発進操作が遅れてしまう。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、ドライバの意思確認を適正に行って駐車維持装置の作動を判断することで安全性及び操作性の向上を図る車両用制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用制動装置は、車両の停止状態を維持する停止維持装置と、車両の駐車状態を維持する駐車維持装置と、ドライバの運転姿勢に基づいて車両の運転を継続する運転継続意思を判定する運転継続意思判定部と、ドライバが前記停止維持装置を作動し且つ前記運転継続意思判定部がドライバに運転継続意思がないと判定したときに前記駐車維持装置を作動させる駐車制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記車両用制動装置にて、前記駐車制御部は、ドライバが前記停止維持装置を作動してから予め設定された第1判定時間が経過し、且つ、前記運転継続意思判定部がドライバに運転継続意思がないと判定したときに前記駐車維持装置を作動させることが好ましい。
【0009】
上記車両用制動装置にて、前記駐車制御部は、ドライバが前記停止維持装置を作動したときに前記運転継続意思判定部がドライバに運転継続意思があると判定しても、ドライバが前記停止維持装置を作動してから予め設定された第2判定時間が経過したら前記駐車維持装置を作動させることが好ましい。
【0010】
上記車両用制動装置にて、前記運転継続意思判定部は、ドライバの顔が予め設定された所定時間以上前方を向いていないときに運転継続意思がないと判定することが好ましい。
【0011】
上記車両用制動装置にて、前記運転継続意思判定部は、ドライバの座席が運転位置から予め設定された所定量後方に移動したときに運転継続意思がないと判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車両用制動装置は、ドライバが停止維持装置を作動し、且つ、ドライバに運転継続意思がないと確認したときに駐車維持装置を作動させる。そのため、ドライバに運転継続意思を確認し、この運転継続意思があるときには駐車維持装置が作動せず、ドライバに制動の違和感を与えることはなく、ドライバの意思確認を適正に行って駐車維持装置の作動を判断することで安全性及び操作性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態1の車両用制動装置における制御ブロック図である。
【図3】図3は、実施形態1の車両用制動装置における第2制動装置の制御ブロック図である。
【図4】図4は、実施形態1の車両用制動装置による処理の流れを表すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施形態2に係る車両用制動装置による処理の流れを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る車両用制動装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用制動装置を表す概略構成図、図2は、実施形態1の車両用制動装置における制御ブロック図、図3は、実施形態1の車両用制動装置における第2制動装置の制御ブロック図、図4は、実施形態1の車両用制動装置による処理の流れを表すフローチャートである。
【0016】
実施形態1の車両用制動装置は、車両の停止状態を維持する停止維持装置と、車両の駐車状態を維持する駐車維持装置とを有している。ここで、停止維持装置とは、ブレーキペダルから入力されたブレーキ操作量などに対して、車両の制動力、つまり、制動力を発生させるホイールシリンダへ供給する油圧を電気的に制御する電子制御式制動装置である。具体的に、この電子制御式制動装置としては、ブレーキ操作量に応じて目標制動油圧を設定し、アキュムレータに蓄えられた油圧を調圧してから、ホイールシリンダへ供給することで、制動力を制御するECB(Electronically Controlled Brake)である。また、駐車維持装置とは、ドライバにより操作可能であると共に、電気的に操作可能な電動パーキングブレーキである。この電動パーキングブレーキは、パーキングブレーキスイッチの操作により作動し、車両の制動力、つまり、制動力を発生させる電気モータによるケーブルの引張力を電気的に制御するものである。
【0017】
以下、本実施形態の車両用制動装置について詳細に説明する。図1に示すように、車両10には、駆動源としてのエンジン(内燃機関)11が搭載されている。このエンジン11は、クランクシャフトがトルクコンバータ12に連結され、このトルクコンバータ12を介して自動変速機13に連結されている。そして、自動変速機13は、その出力軸がプロペラシャフト14を介してデファレンシャルギア15に連結され、左右のドライブシャフト16を介して駆動輪となる左右の後輪17RL,17RRが連結され、車体前部には、前輪17FL,17FRが連結されている。
【0018】
このように車両10は、前輪17FL,17FRと後輪17RL,17RRからなる4つの車輪17FL,17FR,17RL,17RRを有している。ここで、車輪17FRは運転席から見て前方右側、車輪17FLは前方左側、車輪17RRは後方右側、車輪17RLは後方左側の車輪をそれぞれ表している。
【0019】
従って、エンジン11が駆動すると、その駆動力がトルクコンバータ12を介して自動変速機13の入力軸に入力されて回転し、ここで所定の変速比に減速されて所定のトルクが出力される。そして、減速後の駆動力が自動変速機13の出力軸からデファレンシャルギア15を介して左右のドライブシャフト16に伝達され、左右の駆動輪17RL,17RRを駆動回転することができる。
【0020】
なお、本実施形態の車両10は、2輪駆動車両に限定されるものではなく、4輪駆動車両であってもよく、また、内燃機関に代えて電気モータを搭載した電気自動車、内燃機関及び電気モータを搭載したハイブリッド車両であってもよい。
【0021】
車両10は、停止維持装置としてのディスクブレーキ装置20を有している。このディスクブレーキ装置20は、車輪17FR〜17RLごとに設けられたディスクブレーキユニット21FR,21FL,21RR,21RLを有している。このディスクブレーキ装置20は、所謂、EBD(Electronic Brake force Distribution:電子制動力分配制御)付きのABS(Antilock Brake System:アンチロックブレーキ装置)として構成されている。各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれ車輪17FR〜17RLと一体のブレーキディスク22と、車体側に設けられるブレーキキャリパ23から構成されている。このブレーキキャリパ23は、ホイールシリンダ24を内蔵しており、各ホイールシリンダ24は、それぞれ独立の液圧ライン25を介してブレーキアクチュエータ26に接続されている。
【0022】
ブレーキペダル27は、ドライバが踏込み可能に支持され、ブレーキブースタ28が接続され、このブレーキブースタ28にマスタシリンダ29が固定されている。ブレーキブースタ28は、ドライバによるブレーキペダル27の踏込み操作に対して所定の倍力比を有するアシスト力を発生することができる。マスタシリンダ29は、内部に図示しないピストンが移動自在に支持されることで、2つの油圧室を有しており、各油圧室には、ブレーキ踏力とアシスト力を合わせたマスタシリンダ圧を発生させることができる。マスタシリンダ29の上部には、リザーバタンク30が設けられており、このマスタシリンダ29とリザーバタンク30とは、ブレーキペダル27が踏込まれていない状態で連通し、ブレーキペダル27が踏込まれると閉鎖され、マスタシリンダ29の油圧室が加圧される。マスタシリンダ29は、各油圧室がそれぞれ油圧供給通路31を介してブレーキアクチュエータ26に接続されている。
【0023】
ブレーキアクチュエータ26は、ドライバによるブレーキペダル27の踏込み量に応じてブレーキ油圧を生成し、このブレーキ油圧を各液圧ライン25からホイールシリンダ24に供給し、この各ホイールシリンダ24を作動させることで、ディスクブレーキ装置20の各ディスクブレーキユニット21FR,21FL,21RR,21RLにより車輪17FR〜17RLに対して制動力を付与し、車両10を停止させることができる。
【0024】
車両10は、駐車維持装置としてのパーキングブレーキ装置40を有している。このパーキングブレーキ装置40は、後輪17RR,17RLごとに設けられたパーキングブレーキユニット41RR,41RLを有している。各パーキングブレーキユニット41RR,41RLは、図示しないが、それぞれ車輪17RR,17RLと一体のドラム、摩擦部材を保持する一対のブレーキシュー、ブレーキシューを駆動するブレーキレバーとから構成されている。このブレーキレバーは、それぞれ独立したケーブル42を介してブレーキ駆動装置43に接続されている。
【0025】
このブレーキ駆動装置43は、図示しない電動モータ、クラッチ、運動変換装置などから構成されている。ブレーキ駆動装置43は、パーキングブレーキスイッチ44がON操作されると、電動モータが作動し、ケーブル25が引っ張られる。このとき、ケーブル25の目標張力は、張力に対応する制動力が車両10を停止状態に維持する大きさに決定され、実際の張力が目標張力となるように電動モータが制御される。
【0026】
また、図1及び図2に示すように、車両10には、電子制御ユニット(ECU)が搭載されており、このECUは、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポート及び通信ポートを有している。このECUは、エンジンECU51、変速機ECU52、ディスクブレーキECU53、パーキングブレーキECU54とから構成されており、各ECU51〜54は、相互に情報のやり取りが可能となっている。
【0027】
エンジンECU51は、エンジン11の駆動を制御することができる。即ち、吸入空気量を計測するエアフローセンサ61、エンジン11の回転数を検出するエンジン回転数センサ62、アクセルペダルの踏込み量(アクセル開度)を検出するアクセルポジションセンサ63、電子スロットル装置におけるスロットル開度を検出するスロットルポジションセンサ64などが設けられている。エンジンECU51は、各センサ61〜64が検出した検出結果に基づいて、インジェクタによる燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火プラグによる点火時期などを制御する。
【0028】
変速機ECU52は、油圧制御部55により自動変速機13を油圧制御することで、変速制御することができる。即ち、自動変速機13の入力軸回転数を検出する入力軸回転数センサ65、ドライバが操作するシフトレバー装置によるシフトポジションを検出するシフト位置センサ66が設けられている。変速機ECU52は、各種センサ65,66が検出した検出結果に基づいて、油圧制御部55を制御し、自動変速機13を制御する。
【0029】
ディスクブレーキECU53は、ディスクブレーキ装置20の作動を制御することができる。即ち、マスタシリンダ29から供給される油圧(マスタシリンダ圧)を検出するマスタシリンダ圧センサ67、ブレーキペダルの踏込み量(ブレーキペダルストローク)を検出するブレーキペダルストロークセンサ68が設けられている。ディスクブレーキECU53は、各種センサ67,68が検出した検出結果に基づいて、ブレーキアクチュエータ26により生成されるブレーキ油圧を制御している。
【0030】
また、ディスクブレーキ装置20は、ドライバによりブレーキペダルが踏込まれなくてもブレーキ油圧を制御し、車輪17FR〜17RLに制動力を作用させることができる。即ち、ドライバがブレーキペダルを踏込んで車両10を停止状態とした後、ブレーキペダルの踏込みをやめても、ブレーキアクチュエータ26は、発生したブレーキ油圧を維持し、車両10を停止状態に維持する停止維持制御を実行することができる。この場合、ドライバがアクセルペダルを踏込むと、停止維持制御、つまり、ディスクブレーキ装置20による車両10の停止維持状態が解除され、直ちに車両10を発進させることができる。
【0031】
パーキングブレーキECU54は、パーキングブレーキ装置40の作動を制御することができる。即ち、パーキングブレーキ装置40を作動するためのON/OFFを出力するパーキングブレーキスイッチ69、電動モータにより引っ張られるケーブル25の張力を検出する張力センサ70が設けられている。パーキングブレーキECU54は、パーキングブレーキスイッチ69のON/OFF信号と張力センサ70の検出結果に基づいて、ブレーキ駆動装置43によるケーブル張力を制御している。
【0032】
また、パーキングブレーキ装置40は、パーキングブレーキスイッチ69がONされなくても、車両10の停止状態にて、予め定められた所定の条件が満たされた場合には、パーキングブレーキ装置40を作動することができる。即ち、本実施形態では、ドライバがブレーキペダルを踏込んでディスクブレーキ装置20が作動した後、ブレーキペダルの踏込みをやめても車両10を停止状態に維持する停止維持制御が実行されると、この制御の実行後から、予め設定された第1判定時間(例えば、3分)が経過した後、車両10が走行する道路の状況やドライバの運転継続意思を考慮してパーキングブレーキ装置40の作動を制御している。なお、この第1判定時間が経過するとは、この間にアクセルペダルの踏込み操作などがないことを条件とするものであり、アクセルペダルの踏込み操作があったときには、処理がリセットされる。
【0033】
パーキングブレーキECU54は、道路状況を検出する道路状況判定部を有している。具体的に、図3に示すように、この道路状況判定部は、ナビゲーション装置71により構成され、このナビゲーション装置71がパーキングブレーキECU54に接続されている。即ち、このナビゲーション装置71は、格納された地図データベースからの地図データを有すると共に、現在位置データを検出可能なGPSなどからなる位置センサが接続されている。そのため、パーキングブレーキECU54は、このナビゲーション装置71により、車両10が走行する道路状況、つまり、現在車両10が停止している場所が、踏み切り、交差点、渋滞道路、駐車場などのどこであるかを判定することができる。
【0034】
また、道路状況判定部として、車外の音を取り込むマイクロホン72、ドライバが操作するステアリングの操舵角を検出する操舵角センサ73、ドライバが操作するウインカースイッチ74、車両10前方を撮影する車外カメラ75が設けられ、パーキングブレーキECU54に接続されている。
【0035】
そのため、道路状況判定部は、ナビゲーション装置71により車両10が踏み切りで停止していることが検出され、マイクロホン72により踏み切りの警告音が取り込まれると、車両10は、踏み切りが遮断されているために停止状態にあると判定する。また、道路状況判定部は、ナビゲーション装置71により車両10が交差点で停止していることが検出され、ステアリングの操舵角やウインカースイッチ74により、車両10は、交差点で右折待ちであるために停止状態にあると判定する。また、道路状況判定部は、ナビゲーション装置71により車両10が交差点で停止していることが検出され、車外カメラ75の撮影画像により、車両10は、赤信号であるために停止状態にあると判定する。なお、道路交通情報通信システム(VICS)が接続されている場合には、このVICSからの上方により、車両10は、渋滞や事故などであるために停止状態にあると判定する。
【0036】
また、パーキングブレーキECU54は、ドライバの運転姿勢に基づいて車両10の運転を継続する運転継続意思を判定する運転継続意思判定部を有している。具体的に、この運転継続意思判定部は、ドライバの顔が予め設定された所定時間以上前方を向いていないときに運転継続意思がないと判定する。即ち、運転継続意思判定部として、運転席に座るドライバの顔を撮影する車内カメラ76が設けられている。そのため、運転継続意思判定部は、この車内カメラ76の撮影画像により、ドライバが予め設定された所定時間以上前方を向いているときには、運転継続意思があると判定する。一方、ドライバが所定時間以上前方を向いていないときに、運転継続意思がないと判定する。
【0037】
また、運転継続意思判定部として、ドライバの座席が運転位置から予め設定された所定量後方に移動したときに運転継続意思がないと判定する。この場合、ドライバの座席としてのシートクッションを前後にスライド可能なシートスライド装置が設けられ、このシートスライド装置にシート位置センサ77が設けられている。そのため、運転継続意思判定部は、このシート位置センサ77により、シートクッションの位置が運転位置から所定量後方に移動した位置にあるとき、ドライバの運転継続意思がないと判定する。また、ドライバの座席としてのシートバックを前後に傾動可能なリクライニング装置が設けられ、このリクライニング装置にリクライニング位置センサ77が設けられており、このリクライニング位置センサ77により、シートバック位置(角度)が運転位置(角度)から所定量(角度)後方に傾動した位置にあるとき、ドライバの運転継続意思がないと判定する。
【0038】
ここで、運転位置とは、シートバックやシートクッションが、ドライバによるステアリング操作やブレーキペダル操作が可能な位置である。例えば、ドライバが仮眠したいとき、シートバックやシートクッションをステアリングやブレーキペダルから後方に離れた位置に移動することから、このようなときにドライバの運転継続意思がないと判定する。
【0039】
そして、パーキングブレーキECU54は、道路状況判定部と運転継続意思判定部の判定結果に基づいてパーキングブレーキ装置40を作動する駐車制御部を有している。即ち、駐車制御部は、上述した停止維持制御が実行された後、第1判定時間が経過したとき、車両10が踏み切りの遮断による停止状態、交差点で右折待ちによる停止状態、赤信号による停止状態、渋滞や事故による停止状態であるときには、パーキングブレーキ装置40を作動することによる制動のバックアップ制御の実行を禁止する。一方、駐車制御部は、停止維持制御が実行された後、第1判定時間が経過したとき、車両10が上述したいずれの停止状態でもないときには、パーキングブレーキ装置40を作動して制動のバックアップ制御を実行する。
【0040】
また、駐車制御部は、上述した停止維持制御が実行された後、第1判定時間が経過したとき、ドライバは、顔が所定時間以上前方を向いていないとき、ドライバが座るシートクッションが運転位置から後方に移動した位置にあるとき、ドライバが背がもたれるシートバックが運転位置から後方に傾動した位置にあるときに、ドライバの運転継続意思がないと判定する。そして、駐車制御部は、ドライバの運転継続意思がないと判定されたら、パーキングブレーキ装置40を作動して制動のバックアップ制御を実行する。一方、駐車制御部は、ドライバの運転継続意思があると判定されたら、パーキングブレーキ装置40を作動することによる制動のバックアップ制御の実行を禁止する。
【0041】
ここで、実施形態1の車両用制動装置による制動処理の流れを図4のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0042】
実施形態1の車両用制動装置において、ステップS11にて、ドライバがブレーキペダルを踏込んで車両10を停止状態とした後、ブレーキペダルの踏込みをやめても車両10を停止状態に維持する停止維持制御を実行中であるかどうかを判定する。ここで、停止維持制御を実行中でないと判定(No)されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、ここで、停止維持制御を実行中であると判定(Yes)されたら、ステップS12にて、タイマカウントアップTを開始する。
【0043】
ステップS13では、タイマカウントTが予め設定されたタイマカウントT1(例えば、3分)を経過したかどうかを判定する。ここで、タイマカウントTがタイマカウントT1を経過していないと判定(No)されたら、ステップS12に戻る。一方、タイマカウントTがタイマカウントT1を経過したと判定(Yes)されたら、ステップS14にて、現在の道路状況を読み込むと共にドライバの運転継続意思を確認する。
【0044】
即ち、上述したように、車両10が踏み切りの遮断による停止状態、交差点で右折待ちによる停止状態、赤信号による停止状態、渋滞や事故による停止状態にあるかどうかを判定する。また、ドライバの顔が所定時間以上前方を向いていない、ドライバが座るシートクッションが運転位置から後方に移動した位置にある、ドライバがを背もたれるシートバックが運転位置から後方に傾動した位置にあるかどうかを判定する。
【0045】
そして、ステップS15では、車両10が上述したいずれの停止状態でもないとき、または、ドライバの運転継続意思がないと判定されたとき、つまり、車両10が駐車状態にあると推定されることから、パーキングブレーキ装置40を作動するバックアップ制御が必要であるかどうかを判定する。ここで、バックアップ制御が必要であると判定(Yes)されたら、ステップS16にて、パーキングブレーキ装置40を作動して制動のバックアップ制御を実行する。そして、ステップS17にて、タイマカウントTをリセットする。
【0046】
一方、バックアップ制御が必要でないと判定(No)されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。即ち、パーキングブレーキ装置40を作動することによる制動のバックアップ制御の実行を禁止する。なお、この場合、アクセルペダルが踏まれたり、再度ブレーキペダルが踏まれたりしたときには、タイマカウントTをリセットする。
【0047】
従って、停止維持制御を実行してから第1所定時間が経過しても、車両10が踏み切りの遮断、交差点で右折待ち、赤信号、渋滞や事故などによる停止状態であるときには、パーキングブレーキ装置40を作動するバックアップ制御を実行しない。また、停止維持制御を実行してから第1所定時間が経過しても、ドライバに運転継続意思があるときには、パーキングブレーキ装置40を作動するバックアップ制御を実行しない。そのため、パーキングブレーキ装置40の作動がドライバの運転の妨げになることはなく、ドライバに違和感を与えることはない。一方、停止維持制御を実行してから第1所定時間が経過したとき、車両10が上述した停止状態でないときには、パーキングブレーキ装置40を作動するバックアップ制御を実行する。また、停止維持制御を実行してから第1所定時間が経過したとき、ドライバに運転継続意思がないときには、パーキングブレーキ装置40を作動するバックアップ制御を実行する。そのため、車両10が駐車すべき状態にあったり、ドライバに駐車意思があったりするときには、パーキングブレーキ装置40を作動することで、安全性が確保される。
【0048】
このように実施形態1の車両用制動装置にあっては、車両10の停止状態を維持する停止維持装置としてのディスクブレーキ装置20と、車両10の駐車状態を維持する駐車維持装置としてのパーキングブレーキ装置40とを設け、パーキングブレーキECU54は、ドライバの運転姿勢に基づいて車両10の運転を継続する運転継続意思を判定し、ドライバがディスクブレーキ装置20を作動し、且つ、ドライバに運転継続意思がないと判定したときには、パーキングブレーキ装置40を作動させるようにしている。
【0049】
従って、ドライバの運転継続意思を確認し、この運転継続意思があるときにはパーキングブレーキ装置40を作動せず、パーキングブレーキ装置40がドライバの運転の妨げにならず、ドライバに制動の違和感を与えることはなく、ドライバの意思確認を適正に行って駐車維持装置の作動を判断することで、安全性及び操作性の向上を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態の車両用制動装置では、ドライバがディスクブレーキ装置20を作動してから予め設定された第1判定時間が経過し、且つ、ドライバに運転継続意思がないと判定したときにパーキングブレーキ装置40を作動させている。従って、ディスクブレーキ装置20の作動からの第1判定時間を設定することで、パーキングブレーキ装置40の作動の必要性を事前に把握することができ、ドライバの運転継続意思の判定と合わせてパーキングブレーキ装置40の作動の判定を高精度に行うことができる。
【0051】
また、本実施形態の車両用制動装置では、ドライバの顔が予め設定された所定時間以上前方を向いていないときに運転継続意思がないと判定している。従って、ドライバの視線を把握することで、運転継続意思を高精度に判定することができる。
【0052】
また、本実施形態の車両用制動装置では、ドライバの座席が運転位置から予め設定された所定量後方に移動したときに運転継続意思がないと判定している。従って、ドライバの座席位置を把握することで、運転継続意思を高精度に判定することができる。
【0053】
また、本実施形態の車両用制動装置では、現在の道路状況とドライバの運転継続意思とによりパーキングブレーキ装置40の作動を判定している。この場合、両者を判定条件とすることで、高精度な判定が可能となる。
【0054】
〔実施形態2〕
図5は、本発明の実施形態2に係る車両用制動装置による処理の流れを表すフローチャートである。なお、本実施形態の車両用制動装置の基本的な構成は、上述した実施形態1とほぼ同様の構成であり、図1乃至図3を用いて説明すると共に、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0055】
実施形態2の車両用制動装置は、図1乃至図3に示すように、車両10の停止状態を維持する停止維持装置としてディスクブレーキ装置20を設けると共に、車両10の駐車状態を維持する駐車維持装置としてパーキングブレーキ装置40が設けられている。そして、実施形態2の車両用制動装置は、実施形態1と同様に、ドライバがブレーキペダルを踏込んでディスクブレーキ装置20が作動した後、ブレーキペダルの踏込みをやめても車両10を停止状態に維持する停止維持制御が実行されると、この制御の実行後から、予め設定された第1判定時間(例えば、3分)が経過した後、車両10が走行する道路の状況やドライバの運転継続意思を考慮してパーキングブレーキ装置40の作動を制御している。
【0056】
また、実施形態2の車両用制動装置は、ドライバがディスクブレーキ装置20を作動したときに、車両10が走行する道路の状況やドライバの運転継続意思を考慮してパーキングブレーキ装置40の作動を禁止すると判定しても、停止維持制御の実行後から、第1判定時間よりも長い予め設定された第2判定時間(例えば、5分)が経過したら、パーキングブレーキ装置40を作動させるようにしている。なお、この第2判定時間が経過するとは、この間にアクセルペダルの踏込み操作などがないことを条件とするものであり、アクセルペダルの踏込み操作があったときには、処理がリセットされる。
【0057】
ここで、実施形態2の車両用制動装置による制動処理の流れを図5のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0058】
実施形態2の車両用制動装置において、ステップS21にて、ドライバがブレーキペダルを踏込んで車両10を停止状態とした後、ブレーキペダルの踏込みをやめても車両10を停止状態に維持する停止維持制御を実行中であるかどうかを判定する。ここで、停止維持制御を実行中でないと判定(No)されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、ここで、停止維持制御を実行中であると判定(Yes)されたら、ステップS22にて、タイマカウントアップTを開始する。
【0059】
ステップS23では、タイマカウントTが予め設定されたタイマカウントT1(例えば、3分)を経過したかどうかを判定する。ここで、タイマカウントTがタイマカウントT1を経過していないと判定(No)されたら、ステップS12に戻る。一方、タイマカウントTがタイマカウントT1を経過したと判定(Yes)されたら、ステップS24にて、現在の道路状況を読み込むと共にドライバの運転継続意思を確認する。
【0060】
即ち、車両10が踏み切りの遮断による停止状態、交差点で右折待ちによる停止状態、赤信号による停止状態、渋滞や事故による停止状態にあるかどうかを判定する。また、ドライバの顔が所定時間以上前方を向いていない、ドライバが座るシートクッションが運転位置から後方に移動した位置にある、ドライバが背をもたれるシートバックが運転位置から後方に傾動した位置にあるかどうかを判定する。
【0061】
そして、ステップS25では、車両10が上述したいずれの停止状態でもないとき、または、ドライバの運転継続意思がないと判定されたとき、つまり、車両10が駐車状態にあると推定されることから、パーキングブレーキ装置40を作動するバックアップ制御が必要であるかどうかを判定する。ここで、バックアップ制御が必要であると判定(Yes)されたら、ステップS26にて、パーキングブレーキ装置40を作動して制動のバックアップ制御を実行する。そして、ステップS27にて、タイマカウントTをリセットする。
【0062】
一方、バックアップ制御が必要でないと判定(No)されたら、ステップS28にて、タイマカウントTが予め設定されたタイマカウントT2(例えば、5分)を経過したかどうかを判定する。ここで、タイマカウントTがタイマカウントT2を経過していないと判定(No)されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。即ち、パーキングブレーキ装置40を作動することによる制動のバックアップ制御の実行を禁止する。一方、タイマカウントTがタイマカウントT2を経過したと判定(Yes)されたら、ステップS26にて、パーキングブレーキ装置40を作動して制動のバックアップ制御を実行する。そして、ステップS27にて、タイマカウントTをリセットする。
【0063】
従って、車両10が走行する道路状況やドライバの運転継続意思を用いてバックアップ制御が必要でないと判定しても、第2判定時間以上にわたって車両10が停止維持状態にあるときには、パーキングブレーキ装置40を作動する。つまり、バックアップ制御の必要性の誤判定に対しての安全対策であり、長い時間にわたって車両10が停止維持状態にあるときには、パーキングブレーキ装置40を作動してドライバの安全性を確保している。
【0064】
このように実施形態2の車両用制動装置にあっては、パーキングブレーキECU54は、ドライバがディスクブレーキ装置20を作動し、且つ、ドライバに運転継続意思があると判定しても、停止維持制御の実行後から、第2判定時間が経過したら、パーキングブレーキ装置40の作動させるようにしている。
【0065】
従って、車両10が走行する道路状況やドライバの運転継続意思を用いたバックアップ制御の必要性の判定が間違っても、長い時間にわたって車両10が停止維持状態にあるときには、パーキングブレーキ装置40を作動することで、ドライバの安全性を向上することができる。
【0066】
なお、上述した実施形態にて、ステップS14,S24にて、現在の道路状況を読み込むと共にドライバの運転継続意思を確認し、ステップS15,S25にて、車両10が踏み切り、右折待ち、赤信号、渋滞や事故などの停止状態でないとき、または、ドライバの運転継続意思がないと判定されたときに、パーキングブレーキ装置40を作動するようにしたが、この判定条件は、これらの条件に限定されるものではない。例えば、車両10が踏み切り、右折待ち、赤信号、渋滞や事故などの停止状態でないときに、パーキングブレーキ装置40を作動したり、ドライバの運転継続意思がないと判定されたときに、パーキングブレーキ装置40を作動したりしてもよい。更に、車両10が踏み切り、右折待ち、赤信号、渋滞や事故などの停止状態でないときで、且つ、ドライバの運転継続意思がないと判定されたときに、パーキングブレーキ装置40を作動するようにしてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態にて、現在の道路状況の判定では、車両10が踏み切り、右折待ち、赤信号、渋滞や事故などの停止状態でないときに、パーキングブレーキ装置40を作動するようにしたが、判定条件として、これらの一部または全部を用いてもよく、更に、別の条件を追加してもよい。また、ドライバの運転継続意思の判定条件として、ドライバの顔の向き、シートクッションの位置、シートバックの位置を用いたが、判定条件として、これらの一部または全部を用いてもよく、更に、別の条件を追加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明にかかる車両用制動装置は、停止維持装置を作動してドライバに運転継続意思がないと判定したときに駐車維持装置を作動させることで、ドライバの意思確認を適正に行って駐車維持装置の作動を判断し、安全性及び操作性の向上を図るものであり、制動装置を有する車両に有用である。
【符号の説明】
【0069】
10 車両
11 エンジン(内燃機関)
13 自動変速機
17FR,17FL,17RR,17RL 車輪
20 ディスクブレーキ装置
21FR,21FL,21RR,21RL ディスクブレーキユニット
26 ブレーキアクチュエータ
27 ブレーキペダル
40 パーキングブレーキ装置
41RR,41RL パーキングブレーキユニット
43 ブレーキ駆動装置
44 パーキングブレーキスイッチ
50 電子制御ユニット(ECU)
51 エンジンECU
52 変速機ECU
53 ディスクブレーキECU
54 パーキングブレーキECU(運転継続意思判定部、道路状況判定部、駐車制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の停止状態を維持する停止維持装置と、
車両の駐車状態を維持する駐車維持装置と、
ドライバの運転姿勢に基づいて車両の運転を継続する運転継続意思を判定する運転継続意思判定部と、
ドライバが前記停止維持装置を作動し且つ前記運転継続意思判定部がドライバに運転継続意思がないと判定したときに前記駐車維持装置を作動させる駐車制御部と、
を備えることを特徴とする車両用制動装置。
【請求項2】
前記駐車制御部は、ドライバが前記停止維持装置を作動してから予め設定された第1判定時間が経過し、且つ、前記運転継続意思判定部がドライバに運転継続意思がないと判定したときに前記駐車維持装置を作動させることを特徴とする請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記駐車制御部は、ドライバが前記停止維持装置を作動したときに前記運転継続意思判定部がドライバに運転継続意思があると判定しても、ドライバが前記停止維持装置を作動してから予め設定された第2判定時間が経過したら前記駐車維持装置を作動させることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用制動装置。
【請求項4】
前記運転継続意思判定部は、ドライバの顔が予め設定された所定時間以上前方を向いていないときに運転継続意思がないと判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の車両用制動装置。
【請求項5】
前記運転継続意思判定部は、ドライバの座席が運転位置から予め設定された所定量後方に移動したときに運転継続意思がないと判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の車両用制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−207239(P2011−207239A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73729(P2010−73729)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】