説明

車両用受信設備

【課題】電磁雑音の更なる抑制を実現して、商品性の向上を図ることができる車両用受信設備を提供する。
【解決手段】車両20の金属製のルーフ部21の車両後方側の周縁部に配置されたアンテナ素子11と、ルーフ部21のアンテナ素子11の配置箇所と等電位になるよう一端がルーフ部21に電気的に接続され、ルーフ部21から車両のリヤガラス30に沿って車両後方に向かって延設されたラジアル12aと、ルーフ部21を含む金属製の部材に囲まれたリヤガラス30に沿って車幅方向に延在してラジアル12aに接続される導線12bと、アンテナ素子11で受信した信号が入力される受信機と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製のルーフ部にアンテナを備える車両用受信設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のルーフパネル後部にラジオ放送等の放送波を受信するためのアンテナを立設して備える車両用の受信設備が知られている。この車両用の受信設備は、車両に各種電気機器が搭載されている都合上、これら電気機器が発生するノイズによる電磁雑音を抑制する必要がある。その一つの方法として、ノイズを発生する電気機器を金属製のカバーで覆うという手法があるが、電気自動車やハイブリッド車などの場合、ノイズを発生する電気機器の搭載数が多いため、ノイズを発生する可能性がある全ての電気機器を金属製のカバーで覆うのはコスト面や設置スペースの都合で事実上困難となっていた。
そこで、車室内からのノイズが貫通し易いウインドウガラス、とりわけアンテナが立設された金属製のルーフ部の近傍に配置されたリヤウインドウガラス上に、アンテナ基部の接地点近傍から車両後方に接地されたラジアルを延設することで車室内からのアンテナへのノイズの入射を抑制するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−111704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した車両用受信設備にあっては、ラジアルの追加によってアンテナへのノイズの入射による電磁雑音を低減できることが確認されているものの、近年、更なる受信品質の向上を図るべく電磁雑音のより一層の低減が要望されている。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電磁雑音の更なる抑制を実現して、商品性の向上を図ることができる車両用受信設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車両(例えば、実施形態における車両20)の金属製のルーフ部(例えば、実施形態におけるルーフ部21)の車両後方側の周縁部に配置されたアンテナ素子(例えば、実施形態におけるアンテナ素子11)と、前記ルーフ部の前記アンテナ素子の配置箇所と等電位になるよう一端が前記ルーフ部に電気的に接続され、このルーフ部から車両のリヤガラス(例えば、実施形態におけるリヤガラス30)に沿って車両後方に向かって延設されたラジアル(例えば、実施形態におけるラジアル12a)と、前記ルーフ部を含む金属製の部材に囲まれた前記リヤガラスに沿って車幅方向に延在して前記ラジアルに接続される導線(例えば、実施形態における導線12b)と、前記アンテナ素子で受信した信号が入力される受信機(例えば、実施形態における受信機16)と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記導線は、前記リヤガラスの車幅方向全域に亘って延在していることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、複数の前記導線が設けられ、各導線の間隔は、受信波の波長をλとしたとき、略λ/n(n=実数)であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載した発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の発明において、前記導線は、前記リヤガラスの前記アンテナ素子に近い側である前記リヤガラスの上部にのみ設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載した発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の発明において、前記導線は、その車幅方向の中心位置で前記ラジアルに接続されることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載した発明は、請求項1乃至5の何れか一項に記載の発明において、前記車両は、その後部に電力制御装置を備えたハイブリッド車両または電気自動車であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した発明によれば、リヤガラスに沿って延設されたラジアルによって、ラジアルの延設方向すなわち、リヤガラスの上下方向の成分を有する電界ノイズをシールドすることができるとともに、リヤガラスに沿って延設された導線によって車幅方向の成分を有する電界ノイズをシールドすることができる。したがって、車室内の電気機器からリヤガラスを介して各方向成分を有する電界ノイズがアンテナへ到達するのを防止することができるため、ラジアルだけを用いる場合と比較して導線を用いた分だけ、受信品質の向上を図り商品性を向上することができる。
【0012】
請求項2に記載した発明によれば、請求項1の効果に加え、リヤガラスの車幅方向の略全域に導線を設けることで、より一層電界ノイズによる影響を低減することができる効果がある。
【0013】
請求項3に記載した発明によれば、複数設けられた導線の間隔がそれぞれ、略λ/n(n=実数)に設定されることで、波長λの受信波の受信感度を向上して、より効率的に電界ノイズによる影響を低減することができる効果がある。
【0014】
請求項4に記載した発明によれば、導線をリヤガラスの上部にのみ設けることで、アンテナへの影響が大きいアンテナ近傍のリヤガラス上部から車室外に放射される電界ノイズを抑制することができるため、例えば、大型のリヤガラスを用いている車両では、リヤガラス上部にのみ導線を配置することで導線の本数を削減でき、効率よく電界ノイズを抑制して受信品質の向上を図ることができる。またアンテナ近傍のリヤガラスの上部にのみ導線が設けられているので後方の視認性が損なわれない。
【0015】
請求項5に記載した発明によれば、導線がその車幅方向中心位置、すなわち長手方向の中心位置でラジアルに接続されるため、導線の両端部をより等電位化することができるため、導線によるシールド性能のばらつきを抑制してシールド性能の均一化を図ることができる。
【0016】
請求項6に記載した発明によれば、とりわけ、リヤガラスに近い車両後部に、高電圧を用いる駆動系の電気機器が設置されるハイブリッド車両や電気自動車に適用することで、アンテナへのノイズの影響を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態における車両用受信設備を示す斜視図であり、(a)は車両用受信設備を設置した車両の斜視図であり、(b)は、その要部を拡大して模式的に示した図である。
【図2】本発明の実施形態における車両用受信設備を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態におけるラジアルおよび導線の配索パターンを模式的に示した図である。
【図4】アンテナ素子へ入射されるノイズの電界強度の周波数特性を示すグラフである。
【図5】入射を抑制可能な電界ノイズの入射方向を説明するための図であり、(a)はラジアルおよび導線を設けた場合、(b)はラジアルのみを設けた場合である。
【図6】本発明の実施形態の第1変形例における図3に相当する図である。
【図7】本発明の実施形態の第1変形例の他の態様における図3に相当する図である。
【図8】本発明の実施形態の第2変形例における図3に相当する図である。
【図9】本発明の実施形態の第3変形例における図3に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、この発明の実施形態における車両用受信設備について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の車両用受信設備1が設置された車両20を示すものである。この車両20は、ハイブリッド車または電気自動車であって、その車室内後部下方に、モータを駆動するためのインバータやバッテリ等のパワーユニットを備えている。車両20のリヤガラス30は、ルーフ部21を含む車両20のボディを構成する金属製のパネルに囲まれており、ルーフ部21の後端のリヤガラス30の近傍には、車両20の車幅方向の略中央位置にアンテナ素子11が配置されている。これにより、ルーフ部21が車両20のうち最も地上高の高い位置を占めることから、ルーフ部21に配置されたアンテナ素子11の設置高も高くなり、特に超短波以上の周波数帯域において、受信信号の強度を高めることができる。また、ルーフ部21の後端部にアンテナ素子11を配置することによって、車両20に流麗な印象を付与し、その意匠性を向上させることができる。
【0019】
アンテナ素子11は、車載ラジオアンテナとして用いられている接地形の例えばマイクロアンテナやホイップアンテナであって、金属製のルーフ部21に接地され、その電気的な長さ(電気長)が波長λの受信波に良好に共振するλ/4や、水平方向に近い打ち上げ角が得られる5λ/8等に設定される。そして、アンテナ素子11の接地点近傍のルーフ部21からリヤガラス30に沿って、車両20の前後方向の一方である後方に向かいラジアル12aが配索されている。なお、アンテナ素子11の電気長はλ/4や5λ/8に限られるものではない。
【0020】
ラジアル12aは、導体線または導体膜からなり、例えば、銀線、銅線またはアルミニウム線を絶縁被覆したものなどで構成される。ラジアル12aの車両前後方向の一端であるアンテナ素子11に近い側の端部(以下、単に前端部と称す)は、ルーフ部21を介してアンテナ素子11の接地点と電気的に接続されている。なお、ラジアル12aの前端部と、アンテナ素子11の接地点とは、ルーフ部21を介さず直接接続したり、図示しない接続線等により接続してもよい。またラジアル12aに、高周波電流の実効抵抗値を低くする観点からリッツ線を用いるようにしてもよい。
【0021】
ラジアル12aは、ルーフ部21上のアンテナ素子11に近い接地点から、リヤガラス30の面に沿って、ルーフ部21から遠ざかる方向に延設される。より具体的には、ルーフ部21の周縁部の後方にアンテナ素子11が配置されている場合、ラジアル12aはルーフ部21上の接地点から、車両20(図1参照)の前後方向に沿う概略後方に向かって、リヤガラス30の面に沿って延設されている。つまり車両20を左右に分割する面に対して平行にラジアル12aが延設される。なお、ラジアル12aの配置は、リヤガラス30に沿って配置されていれば良く、リヤガラス30の車室外面上または車室内面上、或いは、リヤガラス30内部でもよい。
【0022】
ここで、上述したラジアル12aの電気長は、受信波の(自由空間での)波長λを基準として、この受信波の基本波に共振するように、例えば、λ/4に設定されている。この場合、ラジアル12aの物理的な長さ(物理長)は、その電気長(つまり、λ/4)に、リヤガラス30の誘電率などを考慮して決定される所定の波長短縮率を乗算した値となる。なお、ラジアル12aの電気長は、5λ/8としてもよく、この場合、例えば、アンテナ素子11の電気長も5λ/8とするとよい。さらに、ラジアル12aの電気長は、λ/n(nは、1以上20以下の整数)としたときも、良好な受信性能が得られる。ラジアル12aの長さをλ/nとしたのは、受信波の低調波、基本波、高調波のいずれかに共振動作するからであり、nを20以下としたのは、ラジアル12aがこの長さであるとき、ラジアル12aが所定の効果を発揮することが期待でき、また、ラジアル12aが受信波の波長λに対して短すぎると、効果が期待できないからである。
【0023】
また、ラジアル12aの長さの基準は、ラジアル12aがリヤガラス30上に延設されている部分の長さとしてもよい。つまり、リヤガラス30に沿って配置されるラジアル12aの電気長を、5λ/8、λ/4、またはλ/n(nは、1以上20以下の整数)としてもよい。なぜなら、ラジアル12aは、ルーフ部21の後端部に配置ざれたアンテナ素子11の近傍から延設されているため、ラジアル12aの大部分がリヤガラス30上に延設されているからである。また、ラジアル12aは、金属部材であるルーフ部21上よりも、誘電体からなるリヤガラス30上に延設された部分が、グランドプレーンとして特徴的に動作するからである。
【0024】
ところで、上述したラジアル12aには、リヤガラス30に沿って車幅方向に延在する導線12bが接続されている。この導線12bは、図3に示すように、その長手方向の中心位置でラジアル12aに接続されている。導線12bは、上述したラジアル12aと同様に、例えば、銀線、銅線またはアルミニウム線を絶縁被覆したもの、或いはリッツ線などで構成される。導線12bは、リヤガラス30の車幅方向の略全領域に亘って延在され、その長さは、導線12bの配置された位置におけるリヤガラス30の湾曲分を含めた車幅方向の長さ寸法よりも若干短く設定される。これにより、導線12bの両端部は、リヤガラス30周りの金属製のパネルからやや離間されて配置される。また、導線12b同士の間隔は、受信波の波長をλとすると、略λ/n(n=実数)となるように設定されている。なお、導線12bの両端部は、リヤガラス30の車幅方向外側に位置する金属製のパネルに接地して設けてもよい。なお、図3では、ラジアル12aの後端部がリヤガラス30の上下方向の中央付近に配置される場合を示している。
【0025】
図1(b)に示すように、車両20のリヤガラス30には、複数の熱線31を含むデフオッガ32が配置され、スイッチ26およびヒューズ(図示せず)などを介してバッテリ27に接続されている。デフオッガ32の熱線31は、上述した導線12bおよびラジアル12aに対して絶縁材を介在させたり、離間配置することで電気的に絶縁される。
【0026】
図2は、本実施形態の車両用受信設備1を模式的に示したものである。
図2に示すように、車両用受信設備1は、アンテナ素子11、ラジアル12aおよび導線12bを備えたアンテナ10と、内部導体(心線)14および外部導体(鋼線)13を備えた同軸ケーブル15と、受信機16とを備えている。
アンテナ素子11は、その本体直下に、目的の周波数の受信信号を増幅する小信号高周波増幅器である前置増幅器17が配置され、この前置増幅器17には同軸ケーブル15を介して受信機16が接続されている。なお、前置増幅器17の配置はアンテナ素子11の本体直下に限られるものではない。
【0027】
同軸ケーブル15の外部導体13の一端(上端)は、アンテナ素子11の出力端子の接地側とともに、ルーフ部21に電気的に接続されている。ラジアル12aも、この接続箇所またはその近傍に接地されているので、アンテナ素子11の接地点、同軸ケーブル15の上端部、および、ラジアル12aのアンテナ素子11側は、受信時にほぼ同電位で動作する。これにより、アンテナ素子11の車両前方では、ルーフ部21がグランドプレーンとして動作し、アンテナ素子11の車両後方では、ラジアル12aおよび導線12bがグランドプレーンとして動作する。このように、アンテナ10は、実質的に水平面内無指向性となるため、車両20の変針によるフェージングの影響を抑制できる。
【0028】
同軸ケーブル15の他端(下端)の内部導体14は、受信機16の内部の回路に接続され、同軸ケーブル15の他端の外部導体13は、受信機16の筐体に接続されている。受信機16の筐体は金属製であり、車両20の車室内で車体のインナーパネルなどに接地されている。このように、アンテナ素子11の接地側、ラジアル12aのアンテナ素子11側、ルーフ部21の後端部、同軸ケーブル15の外部導体13、および、受信機16の筐体がおのおの電気的に接続され、ルーフ部21や車両20の車室内のインナーパネル等に接地されているため、アンテナ素子11の受信信号は、車室内に設置されたインバータやバッテリ等のパワーユニットなどに起因する電界ノイズからシールドされ、電磁雑音の混入が抑制された状態で受信機16に到達する。
【0029】
受信機16は、典型的には、超短波放送(いわゆるFMラジオ放送)を受信するものであるが、中波放送(いわゆるAMラジオ放送)、テレビジョン放送、文字多重放送、音声多重放送、データ多重放送などの受信機能を有していてもよい。これらの場合、アンテナ素子11に加えて、受信対象となる放送波の周波数に適合した素子を設ければよい。
【0030】
図4は、車室内のパワーユニット等のノイズ源から所定の強度で発せられた電界ノイズに対する車両用受信設備1の受信特性を示すグラフであり、ノイズレベルの大きさである電界強度を縦軸、電界ノイズの周波数を横軸としている。このグラフにおいて、実線は本実施形態のラジアル12aおよび導線12bを設けた場合(図中、前後+左右パターン)の受信特性であり、一点鎖線はラジアル12aのみを設けた場合(図中、前後パターン)の受信特性であり、破線がラジアル12aおよび導線12bの両方を設けていない場合(パターンなし)の受信特性を示している。ここで、図4に示す受信特性は、電界強度が1.0[V/m]のノイズフロアー(暗ノイズ)を基準とした場合の受信特性であって、電界強度が大きくなるほど、車室内からの電界ノイズが透過し易いことを示している。つまり、電界強度が1.0[V/m]よりも大きくなるほどアンテナ素子11で受信される電界ノイズの強度が大きくなる一方、電界強度が1.0[V/m]に近いほどアンテナ素子11で受信される電界ノイズの強度が小さくなる。
【0031】
図4に示すように、本実施形態のラジアル12aおよび導線12bを設けている場合(前後+左右パターン)は、図示している75MHz〜110MHzの全ての周波数帯域において電界強度が1.01[V/m]以下に抑制されている。
これに対して、ラジアル12aのみを設けている場合(前後パターン)およびラジアル12aおよび導線12bを設けていない場合(パターンなし)は、ノイズ周波数の増加に伴って2次関数的に電界強度が上昇している。より具体的には、ラジアル12aのみを設けている場合では105MHzを超えた辺りで電界強度が1.1[V/m]を超え、ラジアル12aおよび導線12bを設けていない場合は、95MHz程度で電界強度が1.1[V/m]を超えてしまう。
つまり、ノイズ周波数が高いほど車室内から発せられる電界ノイズが車室外へ放射される傾向となるが、この実施形態のラジアル12aおよび導線12bの両方を設けることで、ラジアル12aだけを設けた場合よりも上述したノイズ周波数の上昇に伴う影響が抑制され、とりわけ上記75MHz〜110MHzを含むFM帯において、電磁波の透過度が抑制されて、車室内からの放射電波(ノイズ)の影響が出難いことが分かる。
【0032】
したがって、この実施形態の車両用受信設備1によれば、リヤガラス30に沿って延設されたラジアル12aによって、図5(a)に示すように、ラジアル12aの延設方向すなわち、リヤガラス30の上下方向の成分を有する電界ノイズの入射をシールドすることができるとともに、リヤガラス30の車幅方向に沿って延設された導線12bによって車幅方向の成分を有する電界ノイズをシールドすることができるため、車室内の電気機器からリヤガラス30を介して各方向成分を有する電界ノイズがアンテナ素子11へ到達するのを防止することができ、この結果、図5(b)に示す従来例のようにラジアル12aだけを用いる場合と比較して導線12bを用いた分だけ、受信品質の向上を図り商品性を向上することができる。
【0033】
さらに、リヤガラス30の車幅方向の略全域に導線12bが設けられることで、より一層電界ノイズのシールド効果を高めることができる。
また、複数設けられた導線12bの間隔がそれぞれ、略λ/n(n=実数)に設定されているため、より効率的に電界ノイズのシールド効果を高めることができる。
【0034】
そして、導線12bをリヤガラス30の上部にのみ設けることで、アンテナ素子11への影響が大きいアンテナ近傍のリヤガラス30の上部から車室外に放射される電界ノイズを抑制することができるため、とりわけ大型のリヤガラス30を用いている車両では、リヤガラス30上部にのみ導線12bを配索することで導線12bの本数を削減でき、効率よく電界ノイズを抑制して受信品質の向上を図ることができる。また、アンテナ素子11近傍のリヤガラス30の上部にのみ導線12bが設けられているので後方の視認性が損なわれない。
【0035】
また、リヤガラス30に近い車両後部にインバータやバッテリ等高電圧を用いた駆動系のパワーユニットが設置されているハイブリッド車両や電気自動車に適用することで、インバータやバッテリ等のパワーユニットに起因するアンテナ素子11への電界ノイズの入射を大幅に低減することができる。
【0036】
次に上述した実施形態におけるラジアル12aおよび導線12bの配索パターンの変形例について図面を参照しながら説明する。なお、上述した実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。
図6は、ラジアル12a及び導線12bの配索パターンの第1変形例を示すものである。この図6に示すように、この第1変形例の配索パターンは、ラジアル12aの下端部(後端部)をリヤガラス30の下縁近傍まで延伸して設けている。また、この第1変形例では、ラジアル12aの長さに応じてラジアル12aに接続される導線12bの本数を増加させている。なお、図7に示すようにラジアル12aの下端部をリヤガラス30の下方の金属製のパネルに接地させてもよい。
この第1変形例のように構成することで、リヤガラス30上部だけではなく、リヤガラス30の全域に亘って電界ノイズが車室外に放射されるのを抑制することができる。
【0037】
図8は、ラジアル12a及び導線12bの配索パターンの第2変形例を示すものである。この図8に示すように第2変形例の配索パターンは、上述した実施形態よりも導線12bの長さ寸法が相対的に短く設定されており、リヤガラス30の周縁部分を除く領域に導線12bが配置されている。このように導線12bを短く設定した場合でも、電界ノイズが貫通するリヤガラス30の主要部分に導線12bが配置されることとなるため、十分に電磁雑音を抑制することができる。なお、図8では、ラジアル12aの下端部が接地された一例を示しているが、この下端部が接地されていなくとも同様に電磁雑音の抑制効果を奏し得る。
【0038】
図9は、ラジアル12a及び導線12bの配索パターンの第3変形例を示すものである。この図9に示すように、第3変形例の配索パターンは、上述した第1変形例における導線12bの間隔をλ/n(nは、1以上20以下の整数)の条件を満たしつつ拡大したものである。このように導線12bの間隔を拡大することで、第1変形例よりも少ない本数の導線12bで効率よく電界ノイズをシールドすることができる。
【符号の説明】
【0039】
12a ラジアル
12b 導線
16 受信機
20 車両
21 ルーフ部
30 リヤガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の金属製のルーフ部の車両後方側の周縁部に配置されたアンテナ素子と、
前記ルーフ部の前記アンテナ素子の配置箇所と等電位になるよう一端が前記ルーフ部に電気的に接続され、このルーフ部から車両のリヤガラスに沿って車両後方に向かって延設されたラジアルと、
前記ルーフ部を含む金属製の部材に囲まれた前記リヤガラスに沿って車幅方向に延在して前記ラジアルに接続される導線と、
前記アンテナ素子で受信した信号が入力される受信機と、
を備えたことを特徴とする車両用受信設備。
【請求項2】
前記導線は、前記リヤガラスの車幅方向の略全域に亘って延在していることを特徴とする請求項1に記載の車両用受信設備。
【請求項3】
複数の前記導線が設けられ、各導線の間隔は、受信波の波長をλとしたとき、略λ/n(n=実数)であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用受信設備。
【請求項4】
前記導線は、前記リヤガラスの前記アンテナ素子に近い側である前記リヤガラスの上部にのみ設けられることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両用受信設備。
【請求項5】
前記導線は、その車幅方向の中心位置で前記ラジアルに接続されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の車両用受信設備。
【請求項6】
前記車両は、その後部に電力制御装置を備えたハイブリッド車両または電気自動車であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の車両用受信設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−49825(P2011−49825A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196576(P2009−196576)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】