説明

車両用周囲監視装置

【課題】車両周囲を撮影した複数の画像を合成して、車両周囲の状況を俯瞰する俯瞰画像を生成すると、画像の繋ぎ目において、路面から高さを有する物体に対して死角が生じてしまう。
【解決手段】撮影手段20で撮影された画像の繋ぎ目の内部に、仮想スクリーン設置手段30によって、路面に垂直で車両に対して遠近方向に延びた仮想スクリーンを設置し、仮想スクリーン投影画像生成手段40によって、撮影手段20で撮影された画像を仮想スクリーンに投影変換して、仮想スクリーン投影画像を生成し、画像表示手段90でこれを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設置され、車両の周囲を撮影した画像を表示する車両用周囲監視装置に関する。詳細には、車両の周囲に障害物が存在したとき、その障害物の存在を的確に表示することができる車両用周囲監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両にカメラを設置し、運転者に対して死角になりやすい車両周辺の画像を撮影して表示するシステムが一般的になってきている。
【0003】
特に、最近では、車両に複数のカメラを設置し、真上から見下ろしたように座標変換して俯瞰画像を生成し、さらに、生成した俯瞰画像同士を合成して、車両の周囲360°を見渡した画像を表示するシステムも実用化されている。
【0004】
その中には、例えば、俯瞰画像同士を合成する際、画像の繋ぎ目の位置を、車両の挙動に基づいて設定する発明が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−36668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、高さのある物体を路面に投影変換して画像化しているため、路面から高さのある物体は、変換後の画像では歪んでしまい、これによって立体物が認知しにくくなるという課題がある。
【0007】
また、異なるカメラで撮影した画像同士の、ちょうど繋ぎ目の位置に細い柱状物(立体物)が直立していたとき、撮影された画像を路面に投影変換すると、この柱状物は、その柱状物を撮影するカメラの主点位置と柱状物とを結ぶ方向に、カメラから遠ざかる向きに倒れ込んで変換される。したがって、繋ぎ目の位置で画像を合成すると、その繋ぎ目の位置を越えて倒れ込んだ柱状物の変換像が切り取られてしまい、結果的に、画像の繋ぎ目の位置にある柱状物の変換像は、路面と接している部分のみしか残らず、すなわち、合成された俯瞰画像上では、その繋ぎ目において、路面から高さを有する物体に対して死角が生じてしまうという課題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、画像同士の繋ぎ目においても、死角を生じることなく、路面から高さのある立体物を、歪みなく的確に表示することができる車両用周囲監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車両用周囲監視装置は、車両の周囲に取り付けられ、隣り合う撮影範囲の一部が重複するように配置された複数の撮影手段の重複領域の中に、仮想スクリーン設置手段が前記車両に対して遠近方向に延びた仮想スクリーンを設置し、仮想スクリーン投影画像生成手段が、隣り合う前記撮影手段で撮影した各々の画像を、前記仮想スクリーンに投影して仮想スクリーン投影画像を生成し、第1視点変換手段が、仮想スクリーン投影画像を所定の視点位置から所定の視線方向を向いて観測した画像に座標変換して、画像表示手段が前記座標変換された画像を表示するものである。
【0010】
すなわち、本発明に係る第1の車両用周囲監視装置は、車両周囲を撮影するように、隣り合う撮影範囲の一部が重複領域を有して車両に設置された複数の撮影手段と、前記撮影範囲の重複領域の内部に、前記車両に対して遠近方向に延び、鉛直方向に立ち上がった仮想スクリーンを設置する仮想スクリーン設置手段と、隣り合う前記撮影手段で撮影した各々の画像の各画素に格納された濃淡値に対応する値を、前記撮影手段の各々の主点に対応する位置から前記撮影手段で撮影された画像の各画素に向かって延ばした半直線が前記仮想スクリーンと交差する位置に格納する仮想スクリーン投影画像生成手段と、前記仮想スクリーン投影画像生成手段によって生成された画像を、所定の視点位置から所定の視線方向を向いて観測した画像に座標変換して出力する第1視点変換手段と、前記第1視点変換手段によって出力された画像を表示する画像表示手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
このように構成された本発明に係る第1の車両用周囲監視装置によれば、仮想スクリーン設置手段が、隣り合う撮影手段の各々の撮影範囲の重複領域の中に、車両に対して遠近方向に延びた仮想スクリーンを設置し、仮想スクリーン投影画像生成手段が隣り合う前記撮影手段で撮影した各々の画像の濃淡値に対応した値を前記仮想スクリーンに投影して仮想スクリーン投影画像を生成し、こうして生成された仮想スクリーン投影画像を、画像表示手段によって表示することにより、画像同士の繋ぎ目においても、死角を生じることなく、路面から高さのある立体物を、歪みなく的確に表示することができる。
【0012】
また、本発明に係る第2の車両用周囲監視装置は、車両周囲を撮影するように、隣り合う撮影範囲の一部が重複領域を有して車両に設置された複数の撮影手段と、前記撮影範囲の重複領域の内部に、前記車両に対して遠近方向に延び、鉛直方向に立ち上がった仮想スクリーンを設置する仮想スクリーン設置手段と、隣り合う前記撮影手段で撮影した各々の画像の各画素に格納された濃淡値に対応する値を、前記撮影手段の各々の主点に対応する位置から前記撮影手段で撮影された画像の各画素に向かって延ばした半直線が前記仮想スクリーンと交差する位置に格納する仮想スクリーン投影画像生成手段と、前記仮想スクリーン投影画像生成手段によって生成された画像を、所定の視点位置から所定の視線方向を向いて観測した画像に座標変換して出力する第1視点変換手段と、前記複数の撮影手段で撮影した各々の画像の各画素に格納された濃淡値を、前記撮影手段の各々の主点に対応する位置から前記撮影手段で撮影された画像の各画素に向かって延ばした半直線が路面と交差する位置に格納する路面投影画像生成手段と、前記路面投影画像生成手段によって生成された画像を、前記所定の視点位置から、前記所定の視線方向を向いて観測した画像に座標変換して出力する第2視点変換手段と、前記第1視点変換手段によって出力された画像と、前記第2視点変換手段によって出力された画像とを、1枚の画像に合成して出力する画像合成手段と、前記画像合成手段によって出力された画像を表示する画像表示手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
このように構成された本発明に係る第2の車両用周囲監視装置によれば、仮想スクリーン設置手段が、隣り合う撮影手段の各々の撮影範囲の重複領域の中に、車両に対して遠近方向に延びた仮想スクリーンを設置し、仮想スクリーン投影画像生成手段が隣り合う前記撮影手段で撮影した各々の画像の濃淡値に対応した値を前記仮想スクリーンに投影して仮想スクリーン投影画像を生成するとともに、路面投影画像生成手段が、前記複数の撮影手段で撮影した各々の画像の各画素に格納された濃淡値を路面に投影して路面投影画像を生成し、こうして生成された仮想スクリーン投影画像と路面投影画像とを、画像合成手段によって1枚の画像に合成して、画像表示手段によって表示することにより、隣り合う撮影範囲の境界部分のみならず、車両周囲に存在する立体物をも、的確に表示することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両用周囲監視装置によれば、車両周囲に設置された複数の撮影手段で撮影した画像の繋ぎ目に存在する、路面から高さのある立体物を、歪みなく的確に表示することができ、これによって、表示された画像を頼りに、車両の駐車操作や切り返し操作を、円滑に行うことができるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用周囲監視装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】(a)本発明の第1実施形態が設置された車両の左側面図である。(b)本発明の第1実施形態が設置された車両の上面図である。
【図3】仮想的に設定した車両周囲環境の配置図である。
【図4】(a)第1カメラで撮影した画像を第1仮想スクリーンに投影する様子を説明する図である。(b)第2カメラで撮影した画像を第1仮想スクリーンに投影する様子を説明する図である。(c)第1仮想スクリーン投影画像を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図6】(a)第1カメラで撮影した画像を路面に投影する様子を説明する図である。(b)第2カメラで撮影した画像を路面に投影する様子を説明する図である。(c)第1カメラで撮影した画像と、第2カメラで撮影した画像を各々路面に投影して合成する様子を説明する図である。
【図7】(a)第1カメラから第4カメラで撮影した画像を各々路面に投影して合成する様子を説明する図である。(b)合成路面投影画像を示す図である。
【図8】(a)車両前進時に表示用モニタに表示される画像の例である。(b)車両後退時に表示用モニタに表示される画像の例である。
【図9】本発明の第1実施例の別の表示形態を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る車両用周囲監視装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】(a)本発明の第2実施形態が設置された車両の左側面図である。(b)本発明の第2実施形態が設置された車両の上面図である。
【図12】本発明の第2実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図13】(a)仮想的に設定した車両周囲環境の配置図である。(b)第1カメラから第4カメラで撮影した4枚の画像をそれぞれ路面投影画像に変換し、それらを合成する様子を説明する図である。(c)合成路面投影画像を示す図である。
【図14】(a)車両前進時に表示用モニタに表示される画像の例である。(b)車両後退時に表示用モニタに表示される画像の例である。
【図15】透過率設定部で設定される透過率パラメータの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る車両用周囲監視装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
本実施例は、本発明を、車両に設置された複数のカメラで撮影した車両周囲の画像を、運転者に見やすい形態で表示することが可能な、車両用周囲監視装置2に適用したものである。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用周囲監視装置2の構成を示すブロック図である。本実施例に係る車両用周囲監視装置2は、図1に示す通り、図示しない車両1に設置され、運転者による車両用周囲監視装置2の起動操作や終了操作を検出する操作検出手段10と、運転者の手の届く範囲に設置され、車両用周囲監視装置2の起動や終了を指示する操作スイッチ15と、車両周囲の画像を撮影する複数のカメラから構成された撮影手段20と、撮影手段20を構成する複数のカメラのうち、隣り合うカメラの撮影領域の重複部に仮想スクリーンを設置する仮想スクリーン設置手段30と、仮想スクリーン設置手段30で設置した仮想スクリーンに、前記隣り合うカメラで撮影した各々の画像を投影して仮想スクリーン投影画像を生成する仮想スクリーン投影画像生成手段40と、撮影された車両周囲の画像を、路面に投影して路面投影画像を生成する路面投影画像生成手段50と、仮想スクリーン投影画像生成手段40で生成された仮想スクリーン投影画像を、所定の仮想視点から所定の仮想視線方向を向いて観測した画像に変換する第1視点変換手段60と、路面投影画像生成手段50で生成された路面投影画像を、前記所定の仮想視点から前記所定の仮想視線方向を向いて観測した画像に変換する第2視点変換手段70と、第1視点変換手段60によって視点変換された仮想スクリーン投影画像と第2視点変換手段70によって視点変換された路面投影画像を1枚の画像に合成する画像合成手段80と、画像合成手段80で合成した画像を表示する画像表示手段90とから構成される。
【0019】
操作検出手段10は、詳しくは、運転者の起動スイッチ操作を検出する起動スイッチ操作検出部11と、運転者の終了スイッチ操作を検出する終了スイッチ操作検出部12と、車両のシフトポジションを検出するシフトポジション検出部13と、車速を検出する車速検出部14とからなる。
【0020】
操作スイッチ15は、詳しくは、車両用周囲監視装置2の起動を指示する起動スイッチ16と、車両用周囲監視装置2の終了を指示する終了スイッチ18とからなる。
【0021】
撮影手段20は、詳しくは、図2のように車両の周囲に設置され、隣り合う撮影領域が互いに重複するように配置された第1カメラ22、第2カメラ24、第3カメラ26、第4カメラ28と、第1カメラ22の出力信号をAD変換してディジタル信号に変換する第1デコーダ23、第2カメラ24の出力信号をAD変換してディジタル信号に変換する第2デコーダ25、第3カメラ26の出力信号をAD変換してディジタル信号に変換する第3デコーダ27、第4カメラ28の出力信号をAD変換してディジタル信号に変換する第4デコーダ29とからなる。
【0022】
仮想スクリーン投影画像生成手段40は、詳しくは、仮想スクリーン投影画像を生成するために、第1カメラ22から第4カメラ28の各設置位置と仮想スクリーンの各設置位置とに基づいて、予め作成された座標変換用データテーブルが格納された第1座標変換データ格納部44と、第1座標変換データ格納部44に格納された座標変換用データテーブルに基づいて、仮想スクリーン投影画像を生成する仮想スクリーン投影画像生成部42とからなる。
【0023】
路面投影画像生成手段50は、詳しくは、路面投影画像を生成するために、第1カメラ22から第4カメラ28の各設置位置に基づいて、予め作成された座標変換用データテーブルが格納された第2座標変換データ格納部56と、第2座標変換データ格納部56に格納された座標変換用データテーブルに基づいて、各カメラで撮影した画像から路面投影画像を生成する路面投影画像生成部52と、生成された複数の路面投影画像を1枚の画像に合成する路面投影画像合成部54とからなる。
【0024】
第1視点変換手段60は、詳しくは、車両1の進行方向や運転者のスイッチ操作に基づいて、仮想スクリーン投影画像と路面投影画像の合成画像を生成するための仮想視点位置と仮想視線方向を設定する仮想視点位置・仮想視線方向設定部66と、仮想視点位置・仮想視線方向設定部66で設定された仮想視点位置から仮想視線方向に向けて、仮想スクリーン投影画像の視点変換を行うための座標変換用データテーブルが格納された第3座標変換データ格納部64と、第3座標変換データ格納部64に格納された座標変換用データテーブルに基づいて、仮想スクリーン投影画像を視点変換する第1視点変換部62とからなる。
【0025】
第2視点変換手段70は、詳しくは、仮想視点位置・仮想視線方向設定部66で設定された仮想視点位置から仮想視線方向に向けて、路面投影画像の視点変換を行うための座標変換用データテーブルが格納された第4座標変換データ格納部74と、第4座標変換データ格納部74に格納された座標変換用データテーブルに基づいて、路面投影画像を視点変換する第2視点変換部72とからなる。
【0026】
画像合成手段80は、詳しくは、第1視点変換手段60によって視点変換された仮想スクリーン投影画像と第2視点変換手段70によって視点変換された路面投影画像とを1枚の画像に合成する際、画像が重複する部分の透過率を設定する透過率設定部84と、透過率設定部84で設定された透過率にて、第1視点変換手段60によって視点変換された仮想スクリーン投影画像を前面に、第2視点変換手段70によって視点変換された路面投影画像を背面にして合成する画像合成部82とからなる。
【0027】
さらに、画像表示手段90は、詳しくは、画像合成手段80で合成された画像を、ディジタル信号からアナログ信号に変換するエンコーダ92と、車内に設置され、エンコーダ92によってアナログ信号に変換された画像を表示する、液晶モニタ等の表示用モニタ94とからなる。
【0028】
次に、本実施例に係る車両用周囲監視装置2の作用について、図5のフローチャートに基づいて説明する。本実施例に係る車両用周囲監視装置2は、車両の駐車時や狭い場所での切り返し時に利用され、車両周囲の画像を運転者に呈示して運転動作を補助するものである。
【0029】
図2(a)に示すように、第1カメラ22は車両1のフロントバンパに、第2カメラ24は車両1の左ドアミラーに、第3カメラ26は車両1のリアバンパにそれぞれ設置されており、図2(a)には図示しないが、第4カメラ28は車両1の右ドアミラーに設置されている。
【0030】
また、各カメラは、図2(b)に示す通り、それらの撮影範囲と路面とが、各交線120、122、124、126で交わる範囲を撮影するように設置されている。
【0031】
なお、隣り合うカメラ22と24、24と26、26と28、および28と22は、図2(b)に示す通り、各々の撮影範囲が互いに重複し、第1重複領域E1、第2重複領域E2、第3重複領域E3、第4重複領域E4を有するように設置されている。
【0032】
まず、車両1が、駐車のために前方に向かって前進している場面について、本実施例の車両用周囲監視装置2の動作を説明する。運転者は、車両周囲の画像を監視する場合、車内に設置された起動スイッチ16を操作する。すると、起動スイッチ操作検出部11により起動スイッチ操作が検出され(図5のS2)、車両用周囲監視装置2の状態を表す変数βに1が与えられる(図5のS4)。
【0033】
第1カメラ22から第4カメラ28で撮影された画像は、それぞれ、第1デコーダ23から第4デコーダ29で標本化および量子化されてディジタル画像に変換される(図5のS6)。なお、第1カメラ22から第4カメラ28で撮影された画像を、各々I(x、y)、I(x、y)、I(x、y)、I(x、y)とする。
【0034】
次に、仮想スクリーン設置手段30によって、隣り合って設置されたカメラの撮影範囲の重複領域E1、E2、E3、E4の中に、それぞれ、各重複領域E1、E2、E3、E4の面積を2等分するように、車両から遠近方向に延びた、路面に垂直な平面状の仮想スクリーン200、210、220、230が設置される。
【0035】
図3に、仮想スクリーン200の設置位置のみを示す。仮想スクリーン200は、図3において、∠XOA=∠YOAとなるように設置される。
【0036】
仮想スクリーン210、220、230は図示しないが、仮想スクリーン200と同様な位置関係にて設置される。
【0037】
さらに、仮想スクリーン投影画像生成手段40によって、第1重複領域E1に設置した第1仮想スクリーン200に画像I(x、y)と画像I(x、y)を投影変換し、第2重複領域E2に設置した第2仮想スクリーン210に画像I(x、y)と画像I(x、y)を投影変換し、第3重複領域E3に設置した第3仮想スクリーン220にI(x、y)と画像I(x、y)を投影変換し、第4重複領域E4に設置した第4仮想スクリーン230にI(x、y)と画像I(x、y)を投影変換する(図5のS7)。
【0038】
ここで、図3と図4に基づいて、第1仮想スクリーン200への投影変換の方法を説明する。図3は、車両1と、その左前方に4本の細い柱状物(第1柱状物301、第2柱状物302、第3柱状物303、第4柱状物304)が、路面に垂直に起立しており、正方形の4つの頂点の位置に配置されている様子を示す。
【0039】
なお、説明を簡単にするため、第1カメラ22と第2カメラ24の撮影範囲についてのみ説明するが、他のカメラの撮影範囲についても同様である。さらに、各カメラ22、24は水平方向に向いて設置されており、第1カメラ22は∠XPX’の範囲を撮影するものとし、第2カメラ24は∠YQY’の範囲を撮影するものとする。また、車両1は水平な路面上にあるものとする。
【0040】
ここで、∠XOYを2等分する位置に、路面に垂直な平面状の第1仮想スクリーン200を設置する。ここで、第1柱状物301と第3柱状物303は、第1仮想スクリーン200と重なる位置に起立しているものとする。
【0041】
仮想スクリーン投影画像生成手段40は、図4(a)に示すように、第1カメラ22で撮影した画像I(x、y)の濃淡値を、第1仮想スクリーン200に投影するとともに、図4(b)に示すように、第2カメラ24で撮影した画像I(x、y)の濃淡値を、第1仮想スクリーン200に投影する。
【0042】
仮想スクリーンへの投影変換とは、カメラで実際に撮影された像が、仮想スクリーン上に元々存在した物体の像であると仮定して、撮影された画像の濃淡値に対応する値を、仮想スクリーン上の対応する位置に格納するものである。
【0043】
この投影変換は、具体的には次のようにして実行される。図4(a)において、画像I(x、y)に写った第2柱状物302の像を構成する、画素(x0、y0)に着目する。画素(x0、y0)に格納された濃淡値I(x0、y0)は、図4(a)に示す第1カメラ22の主点位置Pから、着目している第2柱状物302を構成する画素(x0、y0)に向かって延ばした半直線が、第1仮想スクリーン200と交差する点に投影されるものとし、その交差する点に、濃淡値I(x0、y0)に対応する値を格納する。
【0044】
図4(a)の場合、点Mと点Nに挟まれた区間に第2柱状物302の像が投影されるため、第1仮想スクリーン200上の点Mと点Nに挟まれた領域に、第2柱状物302の像の濃淡値に対応する値が格納され、第2柱状物302の仮想スクリーン投影像302Pが生成される。
【0045】
同様の処理を、画像I(x、y)の全ての画素に対して行うことにより、第1仮想スクリーン200には、第1柱状物301の仮想スクリーン投影像301P、第3柱状物303の仮想スクリーン投影像303P、第4柱状物304の仮想スクリーン投影像304Pが、それぞれ生成される(図4(a)参照)。
【0046】
同様の処理を、第2カメラ24で撮影した画像I(x、y)に対しても行うと、第1仮想スクリーン200には、第1柱状物301の仮想スクリーン投影像301Q、第2柱状物302の仮想スクリーン投影像302Q、第3柱状物303の仮想スクリーン投影像303Q、第4柱状物304の仮想スクリーン投影像304Qが、それぞれ生成される(図4(b)参照)。
【0047】
こうして生成された仮想スクリーン投影像を加算合成することより、図4(c)に示す第1仮想スクリーン投影画像205が生成される。なお、単純に加算合成を行うと、第1仮想スクリーン投影画像205に格納可能な量子化ビット数に応じた値を越えてしまう可能性があるため、ここでは、画像I(x、y)の濃淡値と、画像I(x、y)の濃淡値を、それぞれ1/2倍して加算するものとする。
【0048】
4本の柱状物301、302、303、304は、路面に垂直に起立しており、第1カメラ22と第2カメラ24は、簡単のため水平向きに設置されているものとしたため、第1仮想スクリーン200には、図4(c)に示すように、各柱状物301、302、303、304の仮想スクリーン投影像が、スクリーンの上下方向に帯状に生成される。
【0049】
ここで、4本の柱状物301、302、303、304と車両1が、図3の位置関係にあるとき、4本の柱状物301、302、303、304は、ともに、第1カメラ22、および第2カメラ24を通して、第1仮想スクリーン200に投影され、図4(a)に示すように、第1カメラ22から見て4本の仮想スクリーン投影像が生成され、図4(b)に示すように、第2カメラ24から見て4本の仮想スクリーン投影像が生成される。
【0050】
これらの仮想スクリーン投影像を加算合成すると、仮想スクリーン投影像同士の重なりが発生するため、図4(c)のように、5本の仮想スクリーン投影像が生成される。図4(c)に示す5本の仮想スクリーン投影像は、左側から順に、仮想スクリーン投影像304P、仮想スクリーン投影像302Q、仮想スクリーン投影像301Pと301Q、仮想スクリーン投影像303Pと303Q、仮想スクリーン投影像302Pと304Qにそれぞれ対応したものである。
【0051】
但し、この仮想スクリーン投影像の本数は、柱状物の起立位置と仮想スクリーンの位置関係に依存することは言うまでもない。
【0052】
仮想スクリーンへの投影変換の手続きは、仮想スクリーン投影画像生成部42で行われるが、第1仮想スクリーン200と交差する点を、画像I(x、y)、画像I(x、y)の画素毎に算出するのは計算負荷が大きいため、第1カメラ22と第2カメラ24の配置に基づいて、第1仮想スクリーン投影画像205の任意の画素に投影される、画像I(x、y)と画像I(x、y)の座標値を、予め計算で求めておき、その計算結果に基づいて座標変換テーブルを予め作成して、第1座標変換データ格納部44に格納しておく。
【0053】
そして、仮想スクリーン投影画像生成部42では、第1座標変換データ格納部44に格納された座標変換テーブルに基づいて、座標の置き換えを行うことによって投影変換を実行することで、計算負荷を低減している。
【0054】
同様の投影変換は、図2の第2重複領域E2に設置した第2仮想スクリーン210、第3重複領域E3に設置した第3仮想スクリーン220、第4重複領域E4に設置した第4仮想スクリーン230に対しても実行される。これにより、4枚の仮想スクリーン投影画像(第1仮想スクリーン投影画像205、第2仮想スクリーン投影画像215、第3仮想スクリーン投影画像225、第4仮想スクリーン投影画像235)が生成される。
【0055】
次に、路面投影画像生成部52により、画像I(x、y)と画像I(x、y)、画像I(x、y)、画像I(x、y)は、各々路面に投影され、さらに、車両真上から見下ろした画像に変換される(図5のS8)。
【0056】
先述した仮想スクリーン投影画像が、カメラで撮影した画像には仮想スクリーン上に存在する物体の像が写っていると仮定して生成した画像であったのに対し、路面投影画像は、カメラで撮影した画像には路面上に存在する物体の像が写っていると仮定して生成した画像である。
【0057】
路面投影画像の生成は、路面投影画像生成部52で行われるが、画像I(x、y)の場合は、具体的に、第1カメラ22の主点位置Pから、第1カメラ22で撮影した画像I(x、y)の各画素に向かって延ばした半直線が、路面と交差する点を求めることによって行われる。画像I(x、y)についても、同様にして路面投影画像が生成される。
【0058】
ここで、画像I(x、y)や画像I(x、y)に対して、その画素毎に、路面と交差する点の座標を算出するのは計算負荷が大きいため、第1カメラ22と第2カメラ24の配置に基づいて、路面上の任意の点に投影される、画像I(x、y)と画像I(x、y)の座標値を、予め計算で求めておき、その計算結果に基づいて座標変換テーブルを予め作成して、第2座標変換データ格納部56に格納しておく。
【0059】
路面投影画像生成部52では、第2座標変換データ格納部56に格納された座標変換テーブルに基づいて、座標の置き換えを行うことによって投影変換を実行することで、計算負荷を低減している。
【0060】
図3の配置において、第1カメラ22で撮影した画像I(x、y)と、第2カメラ24で撮影した画像I(x、y)を路面投影画像に変換する様子を図6に示す。
【0061】
図6(a)に示す通り、第1カメラ22で撮影した画像I(x、y)に写っている第1柱状物301、第2柱状物302、第3柱状物303、第4柱状物304は、各々、路面投影画像上には、第1カメラ22の主点位置Pと各柱状物とを結ぶ方向に沿って、第1カメラ22から遠ざかるように倒れ込んで変換される。
【0062】
また、図6(b)に示す通り、第2カメラ24で撮影した画像I(x、y)に写っている第1柱状物301から第4柱状物304は、各々、路面投影画像上には、第2カメラ24の主点位置Qと各柱状物とを結ぶ方向に沿って、第2カメラ24から遠ざかるように倒れ込んで変換される。
【0063】
次に、路面投影画像合成部54にて、画像I(x、y)、画像I(x、y)、画像I(x、y)、画像I(x、y)から、各々変換された路面投影画像が、1枚の画像に合成される。
【0064】
図6(c)を参照して、路面投影画像の合成方法について説明する。画像I(x、y)の路面投影画像と画像I(x、y)の路面投影画像は、第1カメラ22の撮影範囲と第2カメラ24の撮影範囲の重複領域を2等分する、直線AOを境界線として合成される。すなわち、図6(a)、(b)に表示された路面投影画像のうち、直線AOを跨いで投影された像は、合成画像には反映しない。こうして路面投影画像を合成することによって、第1カメラ22の路面投影画像と第2カメラ24の路面投影画像は、図6(c)のように合成される。
【0065】
図6(c)からわかるように、路面投影画像の繋ぎ目である直線AO上に存在する第1柱状物301と第3柱状物303の路面投影画像は、それらの柱状物が路面と接する部分を残して消失してしまう。
【0066】
ここで、車両1の左後方角部、右後方角部、右前方角部にも、それぞれ、左前方角部と同様の配置で、各々4本の細い柱状物が起立していると仮定すると、4台のカメラで撮影された4枚の画像の路面投影画像は、図7(a)のように合成される。
【0067】
なお、車両1自身、およびその直近部分は、カメラの撮影視野の外にあるため、例えば濃淡値を最小値や最大値に置き換えるなどして特異な値を格納し、情報が欠落していることを運転者に知らせる。こうして、図7(b)に示す合成路面投影画像300が生成される。
【0068】
次に、図5のS7で生成された4枚の仮想スクリーン投影画像は、第1視点変換手段60によって、所定の視点位置から所定の視線方向を向いて観測した画像に変換される。
【0069】
ここで、所定の視点位置と所定の視線方向は、操作検出手段10によって検出された情報に基づいて、仮想視点位置・仮想視線方向設定部66により決定される。
【0070】
すなわち、車両用周囲監視装置2の状態を表す変数βに1が与えられている場合(図5のS9)、仮想視点は車両1の後方上空に設定され、そこから車両1の前方側を見下ろす仮想視線方向が設定される(図5のS10)。
【0071】
第3座標変換データ格納部64には、4枚の仮想スクリーン投影画像を、設定した仮想視点位置から、設定した仮想視線方向を向いて観測したように視点変換するための座標変換テーブルが、予め作成されて格納されており、その座標変換テーブルに基づいて、第1視点変換部62にて視点変換が行われる(図5のS12)。
【0072】
さらに、図5のS8で生成された合成路面投影画像300は、第2視点変換手段70によって、仮想視点位置・仮想視線方向設定部66で設定したのと同じ視点位置、かつ同じ視線方向を向いて観測した画像に変換される。
【0073】
具体的には、第4座標変換データ格納部74には、合成路面投影画像300を、設定した仮想視点位置から、設定した仮想視線方向を向いて観測したように視点変換するための座標変換テーブルが、予め作成されて格納されており、その座標変換テーブルに基づいて、第2視点変換部72にて視点変換が行われる(図5のS13)。
【0074】
次に、第1視点変換部62で生成された4枚の仮想スクリーン投影画像(第1仮想スクリーン投影画像205、第2仮想スクリーン投影画像215、第3仮想スクリーン投影画像225、第4仮想スクリーン投影画像235)と、第2視点変換部72で生成された合成路面投影画像300とは、仮想スクリーン投影画像(205、215、225、235)を前面に、合成路面投影画像300を背面にして、画像合成手段80にて1枚の画像に合成される(図5のS14)。
【0075】
この画像合成は、透過率設定部84で決められた透過率に基づいて、画像合成部82によって行われる。
【0076】
今、第1視点変換部62で生成された第1仮想スクリーン投影画像205をK(x、y)、第2視点変換部72で生成された合成路面投影画像300をL(x、y)、画像合成手段80にて合成される画像をM(x、y)とすると、M(x、y)は、式1によって算出される。
【0077】
M(x、y)=α×K(x、y)+(1-α)×L(x、y) (式1)
ここでαは透過率パラメータである。すなわちαは、2枚の画像が重なった時、前面に配置された画像の透過率に対応する値であり、0≦α≦1の範囲をとる。αの値は予め設定され、透過率設定部84に格納される。本実施例の場合、α=1に設定されているものとする。これは、仮想スクリーン投影画像(205、215、225、235)と合成路面投影画像300が重なった場合、背面にくる合成路面投影画像300を不可視とする設定である。なお、αの値は1に限定されるものではなく、最終的に生成される合成画像の用途や見やすさに基づいて、適宜設定される。
【0078】
こうして得られた合成画像の例を図8(a)に示す。ここで、黒く塗り潰された領域は、車両1の存在位置とそのごく近傍にあたる、撮影手段20の撮影視野を外れた領域と、仮想スクリーン投影画像、および合成路面投影画像以外の領域である。
【0079】
このうち、車両1の存在位置には、図8(a)に示すように、後ろ向きの第1車両アイコン400を重畳表示して、前後の位置関係をより明確に表現するようにしてもよい。
【0080】
こうして得られた図8(a)の合成画像は、エンコーダ92によってDA変換され、車両1に内部に設置された表示用モニタ94に表示される(図5のS15)。
【0081】
なお、このとき、車速検出部14により、車速は常に検出されており、検出された車速が所定値を上回った場合(図5のS16)、表示された画像を本装置起動前の状態に戻し(図5のS20)、周囲監視装置の非表示状態に移行する(図5のS1)。
【0082】
また、終了スイッチ操作検出部12にて、終了スイッチ18が操作されたことが検出された場合(図5のS18)は、表示された画像を本装置起動前の状態に戻し(図5のS20)、周囲監視装置の非表示状態に移行する(図5のS1)。
【0083】
以上、車両1が前進している場合の動作について説明したが、車両1が後退している場合には、車両後方の画像が表示される。その場合の作用の流れは、上述した車両前進時とほぼ同様であるため、相違点のみ簡単に説明する。
【0084】
シフトポジション検出部13にてシフトポジションが後退位置にあることが検出される(図5のS3)と、システムの状態を表す変数βに2が格納され(図5のS5)、仮想視点位置・仮想視線方向設定部66にて、仮想視点は車両1の前方上空に設定され、そこから車両1の後方側を見下ろす仮想視線方向が設定される(図5のS11)。
【0085】
車両前進時と同様にして生成された仮想スクリーン投影画像と合成路面投影画像300とは、画像合成部82で合成され、図8(b)に示すように、車両後方を見下ろした画像として表示用モニタ94に表示される(図5のS15)。このとき、車両1の存在位置には、前向きの第2車両アイコン410を重畳表示して、前後の位置関係をより明確に表現するようにしてもよい。
【0086】
なお、この時、車速検出部14にて、車速は常にモニタされており、車速が所定値を上回った場合(図5のS16)、車両周囲の画像を表示するのは安全上好ましくないため、表示された画像を本装置起動前の状態に戻し(図5のS20)、周囲監視装置の表示状態から抜ける(図5のS1)。
【0087】
また、シフトポジション検出部13にて、シフトポジションは常に検出されており、シフトポジションが後退位置以外であることが検出された場合(図5のS19)は、表示された画像を本装置起動前の状態に戻し(図5のS20)、周囲監視装置の表示状態から抜ける(図5のS1)。
【0088】
このように構成された本第1実施形態に係る車両用周囲監視装置2によれば、隣り合うカメラの撮影範囲の境界部分に存在する立体物であっても、前記境界部分に仮想スクリーンを設置し、当該仮想スクリーンへの投影画像を生成してこの投影画像を表示することにより、死角を生じることなく、前記立体物を的確に表示することができる。従って、車両周囲の状況を運転者に的確に伝達することができ、これによって駐車操作や切り返し操作等の車両誘導を円滑に行うことができるようになる。
【0089】
なお、上記実施例では、仮想スクリーン投影画像と合成路面投影画像を合成して表示する構成になっているが、その形式に囚われることはない。すなわち、仮想スクリーン投影画像のみを、図9のように表示してもよい。これは、図1において、路面投影画像生成手段50と第2視点変換手段70と画像合成手段80を削除した構成によって実現することができる。図9の表示方法によれば、死角が生じる画像の繋ぎ目付近の車両近傍の障害物の状況を的確に表示することができるという効果が得られる。
【0090】
さらに、上記実施例では、4枚の仮想スクリーン投影画像と合成路面投影画像を、1枚の画像に合成して表示する構成になっているが、その形式に囚われることはない。すなわち、車両前進時には、図8(a)で、第1仮想スクリーン投影画像205と第4仮想スクリーン投影画像235と合成路面投影画像300のみを合成して表示するようにしてもよい。これは、仮想視点位置・仮想視線方向設定部66にて仮想視点位置と仮想視点方向を設定した時に、第3座標変換データ格納部64に対して、第1仮想スクリーン投影画像205と第4仮想スクリーン投影画像235のみを作成するように指示を与えることによって実現することができる。
【0091】
また、車両後退時には、図8(b)で、第2仮想スクリーン投影画像215と第3仮想スクリーン投影画像225と合成路面投影画像300のみを合成して表示するようにしてもよい。これは、仮想視点位置・仮想視線方向設定部66にて仮想視点位置と仮想視点方向を設定した時に、第3座標変換データ格納部64に対して、第2仮想スクリーン投影画像215と第3仮想スクリーン投影画像225のみを作成するように指示を与えることによって実現できる。これにより、車両の進行方向の情報をより強調して表現することができるため、モニタに表示される画像の瞬読性を、より一層向上させることができる。
【実施例2】
【0092】
本実施例は、本発明を、車両に設置された複数のカメラで撮影した車両周囲の状況を、運転者に見やすい形態で表示することが可能な、車両用周囲監視装置4に適用したものである。特に、本実施例は、車両周囲に障害物検出手段を備え、この障害物検出手段の出力に基づいて、車両周囲の画像を、よりわかりやすい形態に変換して、車内に設置されたモニタに表示するものである。
【0093】
図10は、本発明の実施形態に係る車両用周囲監視装置4の構成を示すブロック図である。
【0094】
本発明に係る車両用周囲監視装置4は、図10に示す通り、図示しない車両1に設置され、運転者による車両用周囲監視装置4の起動操作や終了操作を検出する操作検出手段10と、運転者の手の届く範囲に設置され、車両用周囲監視装置4の起動や終了を指示する操作スイッチ15と、車両周囲の画像を撮影する複数のカメラから構成された撮影手段20と、撮影手段20を構成する複数のカメラのうち、隣り合うカメラの撮影領域の重複部に仮想スクリーンを設置する仮想スクリーン設置手段30と、仮想スクリーン設置手段30で設置した仮想スクリーンに、前記隣り合うカメラで撮影した各々の画像を投影して仮想スクリーン投影画像を生成する仮想スクリーン投影画像生成手段40と、撮影された車両周囲の画像を、路面に投影して路面投影画像を生成する路面投影画像生成手段50と、仮想スクリーン投影画像生成手段40で生成された仮想スクリーン投影画像を、所定の仮想視点から所定の仮想視線方向を向いて撮影した画像に変換する第1視点変換手段60と、路面投影画像生成手段50で生成された路面投影画像を、前記所定の仮想視点から前記所定の仮想視線方向を向いて撮影した画像に変換する第2視点変換手段70と、第1視点変換手段60によって視点変換された仮想スクリーン投影画像と第2視点変換手段70によって視点変換された路面投影画像とを1枚の画像に合成する画像合成手段80と、画像合成手段80で合成した画像を表示する画像表示手段90と、車両1の周囲の障害物の有無を検出し、その障害物までの距離を算出する障害物検出手段100とから構成される。
【0095】
操作検出手段10は、詳しくは、運転者の周囲監視装置の起動操作を検出する起動スイッチ操作検出部11と、周囲監視装置の終了操作を検出する終了スイッチ操作検出部12と、車両のシフトポジションを検出するシフトポジション検出部13と、車速を検出する車速検出部14とからなる。
【0096】
操作スイッチ15は、詳しくは、車両用周囲監視装置4の起動を指示する起動スイッチ16と、車両用周囲監視装置の終了を指示する終了スイッチ18とからなる。
【0097】
撮影手段20は、詳しくは、図11のように車両の周囲に設置され、隣り合う撮影領域が互いに重複するように配置された第1カメラ22、第2カメラ24、第3カメラ26、第4カメラ28と、第1カメラ22の出力信号をAD変換してディジタル信号に変換する第1デコーダ23、第2カメラ24の出力信号をAD変換してディジタル信号に変換する第2デコーダ25、第3カメラ26の出力信号をAD変換してディジタル信号に変換する第3デコーダ27、第4カメラ28の出力信号をAD変換してディジタル信号に変換する第4デコーダ29とから構成される。
【0098】
仮想スクリーン投影画像生成手段40は、詳しくは、仮想スクリーン投影画像を生成するために、第1カメラ22から第4カメラ28の各設置位置と仮想スクリーンの各設置位置とに基づいて、予め作成された座標変換用データテーブルが格納された第1座標変換データ格納部44と、第1座標変換データ格納部44に格納された座標変換用データテーブルに基づいて、仮想スクリーン投影画像を生成する仮想スクリーン投影画像生成部42とからなる。
【0099】
路面投影画像生成手段50は、詳しくは、路面投影画像を生成するために、第1カメラ22から第4カメラ28の各設置位置に基づいて、予め作成された座標変換用データテーブルが格納された第2座標変換データ格納部56と、第2座標変換データ格納部56に格納された座標変換用データテーブルに基づいて、各カメラで撮影した画像から、路面投影画像を生成する路面投影画像生成部52と、生成された複数の路面投影画像を1枚の画像に合成する路面投影画像合成部54とからなる。
【0100】
第1視点変換手段60は、詳しくは、車両1の進行方向や運転者のスイッチ操作に基づいて、仮想スクリーン投影画像と路面投影画像との合成画像を生成する、仮想視点位置と仮想視線方向を設定する仮想視点位置・仮想視線方向設定部66と、仮想視点位置・仮想視線方向設定部66で設定された仮想視点位置から仮想視線方向に向けて、仮想スクリーン投影画像の視点変換を行うための座標変換用データテーブルが格納された第3座標変換データ格納部64と、第3座標変換データ格納部64に格納された座標変換用データテーブルに基づいて、仮想スクリーン投影画像を視点変換する第1視点変換部62とからなる。
【0101】
第2視点変換手段70は、詳しくは、仮想視点位置・仮想視線方向設定部66で設定された仮想視点位置から仮想視線方向に向けて、路面投影画像の視点変換を行うための座標変換用データテーブルが格納された第4座標変換データ格納部74と、第4座標変換データ格納部74に格納された座標変換用データテーブルに基づいて、路面投影画像を視点変換する第2視点変換部72とからなる。
【0102】
画像合成手段80は、詳しくは、第1視点変換手段60によって視点変換された仮想スクリーン投影画像と第2視点変換手段70によって視点変換された路面投影画像とを1枚の画像に合成する際、画像が重複する部分の透過率を設定する透過率設定部84と、透過率設定部84で設定された透過率にて、第1視点変換手段60によって視点変換された仮想スクリーン投影画像を前面に、第2視点変換手段70によって視点変換された路面投影画像を背面にして合成する画像合成部82とからなる。
【0103】
画像表示手段90は、詳しくは、画像合成手段80で合成された画像を、ディジタル信号からアナログ信号に変換するエンコーダ92と、エンコーダ92によってアナログ信号に変換された画像を表示する表示用モニタ94とからなる。
【0104】
さらに、障害物検出手段100は、詳しくは、図11のように車両1の周囲に設置され、第1カメラ22の撮影範囲と第2カメラ24の撮影範囲の重複範囲である第1重複領域E1を含む第1測距範囲R1の障害物の有無とその障害物までの距離を算出する第1測距部102と、第2カメラ24の撮影範囲と第3カメラ26の撮影範囲の重複範囲である第2重複領域E2を含む第2測距範囲R2の障害物の有無とその障害物までの距離を算出する第2測距部104と、第3カメラ26の撮影範囲と第4カメラ28の撮影範囲の重複範囲である第3重複領域E3を含む第3測距範囲R3の障害物の有無とその障害物までの距離を算出する第3測距部106と、第4カメラ28の撮影範囲と第1カメラ22の撮影範囲の重複範囲である第4重複領域E4を含む第4測距範囲R4の障害物の有無とその障害物までの距離を算出する第4測距部108と、計測された障害物までの距離値に基づいて、画像合成時の透過率を設定する距離値判定部109とからなる。
【0105】
次に、本実施例に係る車両用周囲監視装置4の作用について、図12のフローチャートに基づいて説明する。本発明に係る車両用周囲監視装置4は、車両の駐車時や狭い場所での切り返し時等に利用され、車両周辺の画像を運転者に呈示して運転動作を補助するものである。
【0106】
図11(a)に示すように、第1カメラ22は車両1のフロントバンパに、第2カメラ24は車両1の左ドアミラーに、第3カメラ26は車両1のリアバンパにそれぞれ設置されており、図11(a)には図示しないが、第4カメラ28は車両1の右ドアミラーに設置されている。
【0107】
また、図11(b)に示すように、第1測距部102はフロントバンパ左角に、第2測距部104はリアバンパ左角に、第3測距部106はリアバンパ右角に、第4測距部108はフロントバンパ右角にそれぞれ設置されている。これらの測距部は、具体的には超音波センサや光学式測距センサで構成されるが、測距機能さえ有していれば、その構成は問わない。
【0108】
また、各カメラは、図11(b)に示す通り、それらの撮影範囲と路面とが、各交線120、122、124、126で交わる範囲を撮影するように設置されている。
【0109】
なお、隣り合うカメラ22と24、24と26、26と28、および28と22は、図11(b)に示す通り、それぞれの撮影範囲が互いに重複し、第1重複領域E1、第2重複領域E2、第3重複領域E3、第4重複領域E4を有するように設置されている。
【0110】
そして、第1測距部102は、第1重複領域E1を含む領域を第1測距範囲R1とし、第2測距部104は、第2重複領域E2を含む領域を第2測距範囲R2とし、第3測距部106は、第3重複領域E3を含む領域を第3測距範囲R3とし、第4測距部108は、第4重複領域E4を含む領域を第4測距範囲R4とするように配置されている。
【0111】
以下、車両1が、駐車のために前方に向かって微速前進している場面について、本実施例の動作を説明する。運転者は、車両周囲を監視する場合、車内に設置された起動スイッチ16を操作する。すると、起動スイッチ操作検出部11により起動スイッチ操作が検出される(図12のS2)。この時、車両用周囲監視装置4の状態を表す変数βに1が与えられる(図12のS4)。
【0112】
第1カメラ22から第4カメラ28で撮影された画像は、それぞれ、第1デコーダ23から第4デコーダ29で標本化および量子化されてディジタル画像に変換される(図12のS6)。なお、第1カメラ22で撮影された画像をI(x、y)、第2カメラ24で撮影された画像をI(x、y)、第3カメラ26で撮影された画像をI(x、y)、第4カメラ28で撮影された画像をI(x、y)とする。
【0113】
画像入力と同時に、第1測距部102から第4測距部108にて車両周囲の測距が行われ、各々の測距部から、車両1の周囲に存在する障害物までの距離に対応した値が出力される。
【0114】
ここで、簡単のため、本実施例が動作している環境が、図13(a)の通りであるとする。すなわち、車両1の左前方には、第1実施例で説明したのと同じ条件で、4本の柱状物(第1柱状物301、第2柱状物302、第3柱状物303、第4柱状物304)が路面に垂直に起立しており、車両1の右後方には、4本の柱状物(第5柱状物305、第6柱状物306、第7柱状物307、第8柱状物308)が、正方形の4つの頂点の位置に配置され、各々が路面に垂直に起立しているものとする。なお、車両左前方の4本の柱状物は、駐車操作を行う際に注意喚起が必要な要注意喚起範囲420の内部にあり、車両右後方の4本の柱状物は、要注意喚起範囲420の外部にあるものとする。
【0115】
4つの測距部(102、104、106、108)からは、路面から高さを有する物体(障害物)までの距離が近いほど小さい値が出力される。本実施例の場合、第1測距部102から、最も小さな値が出力され、第3測距部106から、次に小さな値が出力される。車両1の左後方と右前方には、障害物が存在しないため、第2測距部104と第4測距部108からは、非常に大きな値が出力される。
【0116】
次に、4つの測距部(102、104、106、108)から出力された値は、距離値判定部109に送られ、所定値以下の値を出力する側距部の有無とその位置が特定される。本例の場合、第1測距部102から、所定値以下の値が出力されていることが特定される(図12のS7)。
【0117】
すると、距離値判定部109にて、所定値以下の値が出力されることが特定された第1測距部102の測距範囲である第1測距範囲R1がカバーする第1重複領域E1に対して、仮想スクリーン設置手段30によって、第1重複領域E1の面積を2等分するように、車両から遠近方向に延びた、路面に垂直な平面状の第1仮想スクリーン200が設置される。
【0118】
さらに、仮想スクリーン投影画像生成手段40によって、設置した第1仮想スクリーン200に画像I(x、y)と画像I(x、y)を投影変換して、仮想スクリーン投影画像が生成される(図12のS8)。仮想スクリーン投影画像の生成方法については、第1実施例で説明した通りであるため、ここでは説明を割愛する。
【0119】
仮想スクリーン投影画像は、仮想スクリーン投影画像生成部42で生成されるが、第1仮想スクリーン200と交差する点を、画像I(x、y)、画像I(x、y)の画素毎に算出するのは、計算負荷が大きいため、第1カメラ22と第2カメラ24の配置に基づいて、第1仮想スクリーン投影画像205の任意の画素に投影される、画像I(x、y)と画像I(x、y)の座標値を、予め計算で求めておき、その計算結果に基づいて座標変換テーブルを予め作成して、第1座標変換データ格納部44に格納しておく。
【0120】
そして、仮想スクリーン投影画像生成部42では、第1座標変換データ格納部44に格納された座標変換テーブルに基づいて、座標の置き換え操作を行うことによって投影変換を実行することで、計算負荷を低減している。この投影変換により、第1仮想スクリーン投影画像205が生成される。
【0121】
次に、路面投影画像生成部52により、画像I(x、y)と画像I(x、y)、画像I(x、y)、画像I(x、y)は、各々路面に投影され、さらに、車両真上から見下ろした画像に変換される(図12のS9)。
【0122】
路面投影画像の生成方法は、第1実施例で説明した通りであるため、ここでは説明を割愛する。路面投影画像は、路面投影画像生成部52で生成されるが、画像I(x、y)の場合は、具体的に、第1カメラ22の主点位置Pから、第1カメラ22で撮影した画像I(x、y)の各画素に向かって延ばした半直線が、路面と交差する点を求めることによって行われる。画像I(x、y)についても、同様にして路面投影画像が生成される。
【0123】
ここで、画像I(x、y)や画像I(x、y)に対して、その画素毎に、路面への投影点を計算するのは計算負荷が大きいため、第1カメラ22と第2カメラ24の配置に基づいて、路面上の任意の点に投影される、画像I(x、y)と画像I(x、y)の座標値を、予め計算で求めておき、その計算結果に基づいて予め座標変換テーブルを作成し、第2座標変換データ格納部56に格納しておく。
【0124】
具体的な路面投影画像の生成方法は、第1実施例で説明した通りであるため、ここでは説明を割愛する。
【0125】
本実施例が動作している環境が、図13(a)である場合、4台のカメラで撮影された4枚の画像の路面投影画像は、図13(b)のように合成される。
【0126】
ここで、車両1自身、およびその直近部分は、カメラの撮影視野の外にあるため、例えば濃淡値を最小値や最大値に置き換えるなどして特異な値を格納し、情報が欠落していることを運転者に知らせる。こうして、図13(c)に示す合成路面投影画像300が生成される。
【0127】
次に、図12のS8で生成された第1仮想スクリーン投影画像205は、第1視点変換手段60によって、所定の視点位置から所定の視線方向を向いて観測した画像に変換される。
【0128】
ここで、所定の視点位置と所定の視線方向は、操作検出手段10によって検出された情報に基づいて、仮想視点位置・仮想視線方向設定部66により決定される。
【0129】
すなわち、車両用周囲監視装置4の状態を表す変数βに1が与えられている場合(図12のS10)、仮想視点は車両1の後方上空に設定され、そこから車両1の前方側を見下ろす仮想視線方向が設定される(図12のS11)。
【0130】
第3座標変換データ格納部64には、仮想スクリーン投影画像を、設定した仮想視点位置から、設定した仮想視線方向を向いて観測したように視点変換するための座標変換テーブルが、予め作成されて格納されており、その座標変換テーブルに基づいて、第1視点変換部62にて視点変換が行われる(図12のS13)。
【0131】
さらに、図12のS9で生成された合成路面投影画像300は、第2視点変換手段70によって、仮想視点位置・仮想視線方向設定部66で設定したのと同じ視点位置から、同じ視線方向を向いて観測した画像に変換される。
【0132】
具体的には、第4座標変換データ格納部74には、合成路面投影画像300を、設定した仮想視点位置から設定した仮想視線方向を向いて観測したように視点変換するための座標変換テーブルが、予め作成されて格納されており、その座標変換テーブルに基づいて、第2視点変換部72にて視点変換が行われる(図12のS14)。
【0133】
次に、第1視点変換部62で生成された第1仮想スクリーン投影画像205と、第2視点変換部72で生成された合成路面投影画像300とは、第1仮想スクリーン投影画像205を前面に、合成路面投影画像300を背面にして、画像合成手段80にて1枚の画像に合成される(図12のS15)。
【0134】
この画像合成は、透過率設定部84で決められたルールに基づいて、画像合成部82によって行われる。
【0135】
今、第1視点変換部62で生成された第1仮想スクリーン投影画像205をK(x、y)、第2視点変換部72で生成された合成路面投影画像300をL(x、y)、画像合成手段80にて合成される画像をM(x、y)とすると、M(x、y)は、先述した式1によって算出される。
【0136】
ここで、透過率パラメータαは、0≦α≦1の範囲の値をとる。本実施例2においては、α=1に設定される。これは、仮想スクリーン投影画像(205、215、225、235)と合成路面投影画像300が重なった場合、背面に合成される合成路面投影画像300を不可視とする設定である。
【0137】
こうして得られた合成画像の例を図14(a)に示す。ここで、黒く塗り潰された領域は、車両1の存在位置とそのごく近傍にあたる、撮影手段20の撮影視野を外れた領域と、仮想スクリーン投影画像、および合成路面投影画像以外の領域である。
【0138】
ここで、車両1の存在位置には、後ろ向きの第1車両アイコン400を重畳表示して、前後の位置関係をより明確に表現するようにしてもよい。
【0139】
こうして得られた図14(a)の合成画像は、エンコーダ92によってDA変換され、車両1の内部に設置された表示用モニタ94に表示される(図12のS16)。
【0140】
なお、このとき、車速検出部14により、車速は常に検出されており、検出された車速が所定値を上回った場合(図12のS17)、表示された画像を本装置起動前の状態に戻し(図12のS21)、周囲監視装置の非表示状態に移行する(図12のS1)。
【0141】
また、終了スイッチ操作検出部12によって、終了スイッチ18が操作されたことが検出された場合(図12のS19)は、表示された画像を本装置起動前の状態に戻し(図12のS21)、周囲監視装置の非表示状態に移行する(図12のS1)。
【0142】
以上、車両1が前進している場合の動作について説明したが、車両1が後退している場合には、車両後方の画像を表示する。その場合の作用の流れは、上述した車両前進時とほぼ同様であるため、相違点のみ説明する。
【0143】
シフトポジション検出部13にてシフトポジションが後退位置にあることが検出される(図12のS3)と、システムの状態を表す変数βに2が格納され(図12のS5)、仮想視点位置・仮想視線方向設定部66にて、仮想視点は車両1の前方上空に設定され、そこから車両1の後方側を見下ろす仮想視線方向が設定される(図12のS12)。
【0144】
車両前進時と同様にして生成された仮想スクリーン投影画像と合成路面投影画像300とは、画像合成部82で合成され、図14(b)に示すように、車両後方を見下ろした画像として表示用モニタ94に表示される(図12のS16)。このとき、車両1の存在位置には、前向きの第2車両アイコン410を重畳表示して、前後の位置関係をより明確に表現するようにしてもよい。
【0145】
なお、この時、車速検出部14により、車速は常に検出されており、検出された車速が所定値を上回った場合(図12のS17)、表示された画像を本装置起動前の状態に戻し(図12のS21)、周囲監視装置の非表示状態に移行する(図12のS1)。
【0146】
また、シフトポジション検出部13にて、シフトポジションは常に検出されており、シフトポジションが後退位置以外であることが検出された場合(図12のS20)は、表示された画像を本装置起動前の状態に戻し(図12のS21)、周囲監視装置の非表示状態に移行する(図12のS1)。
【0147】
このように構成された第2実施形態に係る車両用周囲監視装置4によれば、障害物が検出された領域内にのみ仮想スクリーンを設置し、その仮想スクリーンに対して仮想スクリーン投影画像を生成して表示する構成にしたため、従来の監視装置では死角になる画像の繋ぎ目の位置に障害物が存在したときのみ、仮想スクリーン投影画像が表示され、これにより、障害物存在時の視認性をより一層向上させることができる。
【0148】
なお、上記実施例では、障害物までの距離が所定値以下のとき、その障害物が検出された領域に対応する場所に仮想スクリーンを設置し、透過率設定部84において透過率パラメータαを1に設定することにより、その仮想スクリーンに投影して生成した仮想スクリーン投影画像と重複する合成路面投影画像300を不可視とする設定にして合成画像を生成したが、その形式に囚われることはない。
【0149】
すなわち、第1測距部102で測定され出力された障害物までの距離に対応した値D1、第2測距部104で測定され出力された障害物までの距離に対応した値D2、第3測距部106で測定され出力された障害物までの距離に対応した値D3、第4測距部108で測定され出力された障害物までの距離に対応した値D4の値に応じて、透過率設定部84において、各距離に対応した値Di(i=1、2、3、4)が第1の距離しきい値Dmaxよりも大きい時は、透過率パラメータαを0に設定して、仮想スクリーン投影画像を不可視とし、また、Diが第2の距離しきい値Dminよりも小さい時は、透過率パラメータαを1に設定して、合成路面投影画像300を不可視とし、さらに、Dmin<Di<Dmaxの時は、距離に対応した値Diが小さいほど透過率パラメータαを、1を越えない大きい値に設定し、これによって、障害物までの距離が近づくほど、仮想スクリーン投影画像をはっきりと表示させるようにしてもよい。このようにして設定される透過率パラメータαの例を図15に示す。
【0150】
透過率を図15のように設定することによって、障害物への接近を、運転者に、より明確に伝達することができるようになる。
【0151】
また、距離値判定部109にて、第1測距部102から第4測距部108の各々から出力される障害物までの距離に対応した値D1からD4の時間変化を観測し、各Di(i=1、2、3、4)が時間の経過とともに小さく(近く)なっている時は、車両1と障害物とが近づいているものと判断してαの値を(1を越えない範囲で)大きくして、仮想スクリーン投影像の背面に合成される合成路面投影像を見えにくくし、障害物に近づいていることを明確に伝達できるようにし、逆に、各Di(i=1、2、3、4)が時間の経過とともに大きく(遠く)なっている時は、車両1と障害物とが遠ざかっているものと判断してαの値を(0を下回らない範囲で)小さくして、仮想スクリーン投影像の背面に合成される合成路面投影像を見えやすくし、障害物から遠ざかっていることを明確に伝達できる表示形態を採るようにしてもよい。
【0152】
さらに、上記実施例では、隣り合うカメラの撮影範囲の重複領域の面積を略2等分する位置に、車両から遠近方向に延びる、路面に垂直な平面状の仮想スクリーンを設置したが、その形式に囚われることはない。すなわち、測距部(102、104、106、108)に、測距範囲を水平方向(車両の周囲方向)にスキャンして水平方向の角度毎に距離情報を測定できる機能を持たせ、障害物情報が得られた方向に向かって延びる、鉛直に立ち上がった平面状の仮想スクリーンを設置し、この仮想スクリーン上に仮想スクリーン投影画像を生成してこれを表示する構成としてもよい。
【0153】
この方法によれば、障害物が存在する方向に仮想スクリーンが設置されるため、仮想スクリーン投影画像の中の障害物の像は、その障害物を撮影する、隣り合った2台のカメラから仮想スクリーンの同じ位置に投影され、したがって、仮想スクリーン投影画像上で、障害物を表す像の濃淡値は大きい値となり、それによって障害物がより一層明確に表示され、画像の視認性が向上するという効果が得られる。
【符号の説明】
【0154】
2 車両用周囲監視装置
10 操作検出手段
11 起動スイッチ操作検出部
12 終了スイッチ操作検出部
13 シフトポジション検出部
14 車速検出部
15 操作スイッチ
16 起動スイッチ
18 終了スイッチ
20 撮影手段
22 第1カメラ
23 第1デコーダ
24 第2カメラ
25 第2デコーダ
26 第3カメラ
27 第3デコーダ
28 第4カメラ
29 第4デコーダ
30 仮想スクリーン設置手段
40 仮想スクリーン投影画像生成手段
42 仮想スクリーン投影画像生成部
44 第1座標変換データ格納部
50 路面投影画像生成手段
52 路面投影画像生成部
54 路面投影画像合成部
56 第2座標変換データ格納部
60 第1視点変換手段
62 第1視点変換部
64 第3座標変換データ格納部
66 仮想視点位置・仮想視線方向設定部
70 第2視点変換手段
72 第2視点変換部
74 第4座標変換データ格納部
80 画像合成手段
82 画像合成部
84 透過率設定部
90 画像表示手段
92 エンコーダ
94 表示用モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周囲を撮影するように、隣り合う撮影範囲の一部が重複領域を有して車両に設置された複数の撮影手段と、
前記撮影範囲の重複領域の内部に、前記車両に対して遠近方向に延び、鉛直方向に立ち上がった仮想スクリーンを設置する仮想スクリーン設置手段と、
隣り合う前記撮影手段で撮影した各々の画像の各画素に格納された濃淡値に対応する値を、前記撮影手段の各々の主点に対応する位置から前記撮影手段で撮影された画像の各画素に向かって延ばした半直線が前記仮想スクリーンと交差する位置に格納する仮想スクリーン投影画像生成手段と、
前記仮想スクリーン投影画像生成手段によって生成された画像を、所定の視点位置から所定の視線方向を向いて観測した画像に座標変換して出力する第1視点変換手段と、
前記第1視点変換手段によって出力された画像を表示する画像表示手段とを備えたことを特徴とする車両用周囲監視装置。
【請求項2】
車両周囲を撮影するように、隣り合う撮影範囲の一部が重複領域を有して車両に設置された複数の撮影手段と、
前記撮影範囲の重複領域の内部に、前記車両に対して遠近方向に延び、鉛直方向に立ち上がった仮想スクリーンを設置する仮想スクリーン設置手段と、
隣り合う前記撮影手段で撮影した各々の画像の各画素に格納された濃淡値に対応する値を、前記撮影手段の各々の主点に対応する位置から前記撮影手段で撮影された画像の各画素に向かって延ばした半直線が前記仮想スクリーンと交差する位置に格納する仮想スクリーン投影画像生成手段と、
前記仮想スクリーン投影画像生成手段によって生成された画像を、所定の視点位置から所定の視線方向を向いて観測した画像に座標変換して出力する第1視点変換手段と、
前記複数の撮影手段で撮影した各々の画像の各画素に格納された濃淡値を、前記撮影手段の各々の主点に対応する位置から前記撮影手段で撮影された画像の各画素に向かって延ばした半直線が路面と交差する位置に格納する路面投影画像生成手段と、
前記路面投影画像生成手段によって生成された画像を、前記所定の視点位置から、前記所定の視線方向を向いて観測した画像に座標変換して出力する第2視点変換手段と、
前記第1視点変換手段によって出力された画像と、前記第2視点変換手段によって出力された画像とを、1枚の画像に合成して出力する画像合成手段と、
前記画像合成手段によって出力された画像を表示する画像表示手段とを備えたことを特徴とする車両用周囲監視装置。
【請求項3】
起動スイッチと、前記起動スイッチが操作されたこと、および車両のシフトポジションを検出する操作検出手段とを備え、前記起動スイッチの操作と前記シフトポジションとに基づいて、前記第1視点変換手段が、前記視点位置と、前記視線方向とを決定することを特徴とする請求項1記載の車両用周囲監視装置。
【請求項4】
前記仮想スクリーン設置手段は、隣り合う前記撮影手段の前記撮影範囲の重複領域に、前記重複領域の面積を略2等分する位置に仮想スクリーンを設置するものであることを特徴とする請求項1または3記載の車両用周囲監視装置。
【請求項5】
前記仮想スクリーン設置手段は、前記車両の進行方向に基づいて、前記仮想スクリーンの設置位置を設定するものであることを特徴とする請求項1、3および4のうちいずれか1項に記載の車両用周囲監視装置。
【請求項6】
隣り合う撮影手段の撮影範囲の重複領域における、車両から、前記車両の近傍に存在する路面から高さのある物体までの距離を出力する複数の障害物検出手段を備え、前記仮想スクリーン設置手段は、前記路面から高さのある物体までの距離が所定値よりも小さいことが検出されたとき、または、前記路面から高さのある物体までの距離が時間とともに小さくなることが検出されたとき、前記検出結果を出力した障害物検出手段の設置位置に対応した前記撮影手段の撮影範囲の重複領域の内部に前記仮想スクリーンを設置して、前記仮想スクリーンに対して前記仮想スクリーン投影画像を生成して表示することを特徴とする請求項1、3、4および5のうちいずれか1項に記載の車両用周囲監視装置。
【請求項7】
前記障害物検出手段は、前記隣り合う撮影手段の撮影範囲の重複領域において、前記車両の周囲方向に亘って、前記車両の近傍に存在する路面から高さのある物体までの距離を出力する機能を有し、前記路面から高さのある物体までの距離が所定値よりも小さいことが検出されたとき、または、前記路面から高さのある物体までの距離が時間とともに小さくなることが検出されたとき、前記仮想スクリーン設置手段によって、前記検出された物体が存在する方向に向けて、鉛直方向に立ち上がり、かつ前記車両に対して遠近方向に延びた仮想スクリーンが設置され、前記仮想スクリーンに対して前記仮想スクリーン投影画像を生成して表示することを特徴とする請求項1、3、4、5および6のうちいずれか1項に記載の車両用周囲監視装置。
【請求項8】
起動スイッチと、前記起動スイッチが操作されたこと、および車両のシフトポジションを検出する操作検出手段とを備え、前記起動スイッチの操作と前記シフトポジションとに基づいて、前記第1視点変換手段および前記第2視点変換手段が、前記視点位置と、前記視線方向とを決定することを特徴とする請求項2記載の車両用周囲監視装置。
【請求項9】
前記仮想スクリーン設置手段は、隣り合う前記撮影手段の前記撮影範囲の重複領域に、前記重複領域の面積を略2等分する位置に仮想スクリーンを設置するものであることを特徴とする請求項2または8記載の車両用周囲監視装置。
【請求項10】
前記仮想スクリーン設置手段は、前記車両の進行方向に基づいて、前記仮想スクリーンの設置位置を設定するものであることを特徴とする請求項2、8および9のうちいずれか1項に記載の車両用周囲監視装置。
【請求項11】
隣り合う撮影手段の撮影範囲の重複領域における、車両から、前記車両の近傍に存在する路面から高さのある物体までの距離を出力する複数の障害物検出手段を備え、前記仮想スクリーン設置手段は、前記路面から高さのある物体までの距離が所定値よりも小さいことが検出されたとき、または、前記路面から高さのある物体までの距離が時間とともに小さくなることが検出されたとき、前記検出結果を出力した障害物検出手段の設置位置に対応した前記撮影手段の撮影範囲の重複領域の内部に前記仮想スクリーンを設置して、前記仮想スクリーンに対して前記仮想スクリーン投影画像を生成して表示することを特徴とする請求項2、8、9および10のうちいずれか1項に記載の車両用周囲監視装置。
【請求項12】
前記障害物検出手段は、前記隣り合う撮影手段の撮影範囲の重複領域において、前記車両の周囲方向に亘って、前記車両の近傍に存在する路面から高さのある物体までの距離を出力する機能を有し、前記路面から高さのある物体までの距離が所定値よりも小さいことが検出されたとき、または、前記路面から高さのある物体までの距離が時間とともに小さくなることが検出されたとき、前記仮想スクリーン設置手段によって、前記検出された物体が存在する方向に向けて、鉛直方向に立ち上がり、かつ前記車両に対して遠近方向に延びた仮想スクリーンが設置され、前記仮想スクリーンに対して前記仮想スクリーン投影画像を生成して表示することを特徴とする請求項2、8、9、10および11のうちいずれか1項に記載の車両用周囲監視装置。
【請求項13】
前記画像合成手段は、互いに重なって合成された画像の透過率を設定する透過率設定部と、前記透過率設定部で設定された透過率にて画像合成を行う画像合成部とを有し、前記第1視点変換手段によって出力された画像が前面に、前記第2視点変換手段によって出力された画像が背面に合成されるとともに、前記透過率設定部によって、前記第2視点変換手段によって出力された画像が不可視となるように前記透過率が設定されることを特徴とする請求項2、8、9、10、11および12のうちいずれか1項に記載の車両用周囲監視装置。
【請求項14】
前記障害物検出手段によって前記路面から高さのある物体までの距離が所定値よりも小さいことが検出されたとき、または、前記路面から高さのある物体までの距離が時間とともに小さくなることが検出されたとき、前記透過率設定部にて、前記検出結果を出力した障害物検出手段の設置位置に対応した前記撮影手段の撮影範囲の重複領域の内部に設置された仮想スクリーン投影画像の透過率を、前記仮想スクリーン投影画像の背面に合成される前記路面投影画像が、前記路面から高さのある物体までの距離が近いほど見えにくくなるように設定することを特徴とする請求項2、8、9、10、11および12のうちいずれか1項に記載の車両用周囲監視装置。

【図1】
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【図5】
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【図12】
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【図15】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−188335(P2011−188335A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52762(P2010−52762)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】