説明

車両用回転電機

【課題】スリップリング部の防水性が向上され、しかも発電不良などの故障を防止した信頼性の高い車両用回転電機を得る。
【解決手段】スリップリング43を有する回転子を支承するフロント及びリヤブラケット12と、スリップリングに対して摺接されたブラシを保持するブラシホルダ51を備えたものにおいて、上記スリップリングの周りを間隙Aを介して包囲するスリップリングカバー部511と、上記リヤブラケットに対して軸方向に突設されたスリット様の開口部122aを有する断面円弧状の筒状体からなり、上記スリップリングカバー部の周りを空隙部Bを介して包囲すると共に、上記開口部から上記ブラシホルダを径方向に挿通させ、かつ下部に上記空隙部を外部に連通させるように形成された排出路122bを有する筒状部122とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は界磁巻線に電流を通電するためのスリップリングを有する車両用回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用交流発電機として、リヤ側のフレームから突出して回転子の回転軸に設けられたスリップリングの周囲を覆う断面円弧状の円筒部と、前記スリップリングに摺接するブラシを収納するブラシホルダと、前記ブラシホルダを含む電気部品を覆うリヤカバーと、前記円筒部によって形成された開口端部と前記ブラシホルダとの間に押圧挟持されたシール部材とを備え、前記円筒部の開口端部と前記シール部材の少なくとも一方に、これらの間の押圧面のほぼ全周にわたって連なった凸部を形成し、スリップリング周辺の気密性を向上させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−78383号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来技術の構成では、スリップリング周辺の気密性を確保するために、リヤブラケットのスリップリングを覆う円筒部の開口部とブラシホルダとの間に押圧狭持されたシール部材を用いているが、リヤブラケットのスリップリングを覆う円筒部の開口端部には角、隅部が存在し、角、隅部より異物、水が浸入し易いという課題があった。また、浸入した異物や水は直接スリップリングにかかってしまい、故障の原因となるという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような従来技術の課題を解消するためになされたもので、スリップリング部の防水性が向上され、しかも発電不良などの故障を防止した信頼性の高い車両用回転電機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両用回転電機は、界磁巻線及びこの界磁巻線に電流を供給するためのスリップリングを有する回転子と、この回転子を回転自在に支持するフロントブラケット及びリヤブラケットと、上記スリップリングに対して摺接されたブラシを保持するブラシホルダとを備えた車両用回転電機において、上記スリップリングの周りを間隙を介して包囲するスリップリングカバー部と、上記リヤブラケットに対して軸方向に突設されたスリット様の開口部を有する断面円弧状の筒状体からなり、上記スリップリングカバー部の周りを空隙部を介して包囲すると共に、上記開口部から上記ブラシホルダを径方向に挿通させ、かつ下部に上記空隙部を外部に連通させるように形成された排出路を有する筒状部とを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明においては、スリップリングはスリップリングカバー部により囲まれているため、異物や水の浸入がなく、リヤブラケットの筒状部とブラシホルダの間をシール材等で防水する必要がない。また、筒状部の開口部とブラシホルダとの隙間から異物や水が進入しても、スリップリングカバー部と筒状部の間の空隙部を外部に連通させる排出路が下部に形成されていることにより、該異物や水は該空隙部を通り、該排出路から外部に排出されるので異物や水が内部に堆積したり、通電部に支障を与えることがない信頼性の高い車両用回転電機が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1〜図5は、本発明の実施の形態1に係る車両用回転電機としての交流電動発電機を説明するもので、図1は全体構造を示す縦断面図、図2は図1に示された防水構造部を拡大して示す要部縦断面図、図3は図2のIII−III線における矢視断面図、図4は図1に示されたリヤブラケットの筒状部を示す斜視図、図5は図1に示されたスリップリングカバー部を示す下面図である。なお、各図を通じて同一符号は同一または相当部分を示すものとする。図において、交流電動発電機は、アルミニウム等金属製のフロントブラケット11及びリヤブラケット12から構成されたケース1と、フロントブラケット11及びリヤブラケット12に固定された固定子である電機子2と、フロントブラケット11及びリヤブラケット12にベアリング31、32を介して回転自在に支持された回転子4と、リヤブラケット12後方に設けられたブラシ装置5と、リヤブラケット12に固定された冷却フィン61aを有するインバータパワー回路部61及び界磁回路部62と、回転子位置検出センサ71を含む制御回路部7などを備えている。
【0009】
回転子4は、ベアリング31、32に支承された回転軸であるシャフト40と、シャフト40の中央部に固定された磁極41と、磁極41に起磁力を発生させるための界磁巻線42と、界磁巻線42に電流を供給するシャフト40に絶縁保持された2つのスリップリング43と、磁極41の両側面部にそれぞれ固定されたファン44、45を備えている。そして、フロントブラケット11の前方に突出するシャフト40の一端部にはプーリ33が固定され、リヤブラケット12の後方に突出するシャフト40の他端部には回転子位置検出センサ71を構成する回転子位置検出センサロータ71aが固定されている。なお、便宜上プーリ33装着側をフロント側(前方側)、その反対側をリヤ側(後方側)と呼ぶこととする。
【0010】
ブラシ装置5はリヤブラケット12の外側のスリップリング43に対応する位置に配設され、リヤブラケット12にネジ(図示しない)により支持されたブラシホルダ51と、ブラシホルダ51内に収納され、スリップリング43に摺接する一対のブラシ52と、ブラシ52をスリップリング43方向に付勢するばね53を備え、ブラシホルダ51の下側部には、本発明の特徴部分の1つを構成している、スリップリング43の周りを間隙Aを介して包囲し、ブラシ粉などを下部に排出するための2つの貫通孔511aを有するスリップリングカバー部511がブラシホルダ51の本体部分と一体的に設けられている。なお、貫通孔511aは1つ、または3つ以上としても差し支えない。
【0011】
制御回路部7は、回転子位置検出センサロータ71a及び回転子位置検出センサロータ71aの回転位置により変化する電圧を出力する回転子位置検出センサステータ71bからなる回転子位置検出センサ71と、回転子位置検出センサステータ71bを固定するリング72が一体成形された樹脂ケース73と、樹脂ケース73内に配設された車両用交流発電電動機を制御する制御基板74と、回転子位置検出センサ71の後方に配設されたカバー75と、制御基板74を保護するカバー76と制御基板74上の配線と外部配線とを接続するコネクタ77などを有している。
【0012】
リヤブラケット12はベアリング保持部121の後部121aから軸方向後方(図2の左方向)に突出された間隔が広いスリット様の開口部122aを有する断面円弧状の筒状体からなる筒状部122を有しており、該筒状部122は図3に示すように、本発明の特徴部分の他の1つを構成している、スリップリングカバー部511の周りを空隙部Bを介して包囲すると共に、ブラシホルダ51の本体部分を開口部122aから隙間Cを介して径方向上方に挿通させている。そして、筒状部122の内周面下部には、上記空隙部Bを外部に連通させる溝状の排出路122bが凹設されている。なお、この例では排出路122bはベアリング保持部121の内周面下部を軸方向に通過して、ケース1内部のファン45に対向する位置に出口部Eを形成して開口され、かつ出口部Eの方向、即ち前方方向に径方向に溝が深くなるように下方向に傾斜されている。
【0013】
一方、ブラシホルダ51のスリップリングカバー部511の前方側端部には平面状部分を有するシール部材装着部511bが周方向に形成され、ベアリング保持部121の後部121a外周面との間にリング状のシール部材である第1のシール部材55が押圧状態で介装されている。そして、スリップリングカバー部511の後方側端部には同様の平面状部分を有するシール部材装着部511cが周方向に形成されており、リヤブラケット12の筒状部122の後端部、即ち突出端部内周面に接着剤等を用いて嵌合保持されているリング72の前端とシール部材装着部511cとの間に同様のリング状のシール部材である第2のシール部材56が押圧状態で介装され、スリップリング43部分への水や異物の侵入を防いでいる。
【0014】
なお、ブラシホルダ51の側面51a(図3)と筒状部122の開口部122aの間に形成された隙間Cは、筒状部122内周面とスリップリングカバー部511外周面の間に形成された空隙部Bに連通され、該空隙部Bは、筒状部122の内周面下部に凹設された排出路122bに連通されている。そして、スリップリングカバー部511の下部に設けられた2つの貫通孔511aは空隙部B、排出路122bを介して外部に連通されている。上記貫通孔511aとリヤブラケット12に設けられた排出路122bは回転子4の回転軸に対して周方向にずれており、リヤブラケット12の筒状部122の外径方向外側から径方向内側を見た場合、スリップリング43が見えないようになっている。また、回転子4に固定されたファン45は回転子4が回転することにより遠心方向に冷却風を生成するファンであり、図1、2の矢印D方向に冷却風の流れが生じる。その他の構成は例えば従来公知の車両用交流電動発電機と同様であるので説明を省略する。
【0015】
次に、上記のように構成された実施の形態1の動作について説明する。車両用交流電動発電機が例えば交流発電機として動作するとき、プーリ33に巻き掛けられた図示省略しているベルトにより回転子4が回転され、回転子4に固定されたファン45も回転して矢印Dで示すように気流が付勢され、機外から取り入れられた外気がインバータパワー回路部61の冷却フィン61a、リヤブラケット12の通風口12aを経てケース1内に略軸方向に取り入れられ電機子2のコイル21を冷却した後、排気部12bから径方向に機外に排出される。なお、このとき排出路122bの出口部E近傍は負圧となっている。
【0016】
上記動作中、ブラシホルダ51の側面51aと筒状部122の開口部122aの間には隙間Cが形成されているので、該隙間Cから異物や水(水滴)が浸入し得るが、スリップリング43の周りはブラシホルダ51と一体に形成されたスリップリングカバー部511が覆っており、しかもスリップリングカバー部511の軸方向前方側及び後方側にはリング状の第1のシール部材55及び第2のシール部材56でシールされているので、隙間Cから浸入した異物や水はスリップリング43部分に侵入することなく、筒状部122とスリップリングカバー部511間の空隙部Bを経て筒状部122内周面の下部に凹設された排出路122bを通じてケース1内のファン45に対向する出口部Eから排出される。
【0017】
そして、上記排出路122bは出口部Eに向かって下方向に傾斜されていると同時に、矢印Dのように遠心方向に冷却風を付勢するファン45の内周部の空間に開口されていることにより、出口部E部分は負圧となっており、異物、水がより排出され易くなっている。また、第1及び第2のシール部材55、56が押圧状態でシールされているシール部材装着部511b、511c部分は、従来技術のような角部や隅部が存在せず、平面状でしかも加工が容易で一般的な例えばOリング状のシール部材を用いることができるので、長期の使用でもシールを確実に保持することができる。従って、筒状部122の開口部122aの角、隅部をシール部材でシールする必要がなく、スリップリング43周辺への異物、水の浸入が効果的に防止され、スリップリング43周辺の防水性が確保される。
【0018】
さらに、この実施の形態1ではブラシホルダ51のスリップリングカバー部511の略下部に、間隙Aと、空隙部Bを連通する貫通孔511aが図5に示すようにスリップリングカバー部511前端部に略コの字状に形成されているので、回転子4が回転したときに、ブラシ52とスリップリング43の摺動によって生じるブラシ粉がスリップリングカバー部511内部の間隙A部から貫通孔511aを通って筒状部122とスリップリングカバー部511間の空間からなる空隙部Bへ排出され、スリップリングカバー部511の内部にブラシ粉が溜まることがない。そして、車両の振動などで下方向から異物、水がはねた場合に、スリップリング43に直接かかることがなく、スリップリング43への水や異物の浸入を防ぐことができる。さらにまた、間隙A部と、空隙部Bの間で空気の吸排出がなされるため、スリップリング43やブラシ52の冷却性が向上され、スリップリング43やブラシ52の温度が低減される。また、本実施の形態1では貫通孔511aをスリップリングカバー部511前端部に構成しているが、スリップリングカバー部511後端部に構成し、貫通孔511aとリヤブラケット12に設けられた排出路122bを回転子回転軸に対して軸方向にずらしても、スリップリングカバー部511内部からのブラシ粉の排出、間隙A部と空隙部Bの間での空気の吸排気、スリップリング43への水や異物の浸入防止に関して同様の効果が得られる。
【0019】
上記のように、実施の形態1によれば、スリップリング43の周りを間隙Aを介して包囲するスリップリングカバー部511をブラシホルダ51と一体的に形成すると共に、リヤブラケット12に対して軸方向に突設された広幅のスリット様の開口部122aを有する断面円弧状の筒状体からなり、スリップリングカバー部511の周りを空隙部Bを介して包囲すると共に、開口部122aからブラシホルダ51の本体部分を径方向に挿通させ、かつ下部に空隙部Bを外部に連通させる排出路122bが形成された筒状部122とを備えるようにしたことにより、スリップリング43部分には異物や水が浸入する恐れがなく、筒状部122の開口部122aとブラシホルダ51の外周部を角や隅のあるシール材等で防水する必要もない。
【0020】
なお、筒状部122の開口部122aとブラシホルダ51との間には隙間Cが形成されているので、該隙間Cから空隙部Bに異物や水が進入することはあるものの、空隙部Bの下部には、該空隙部Bを外部に連通させる排出路122bが形成されていることにより、該異物や水は該空隙部Bを通り、該排出路122bから外部に排出されるので異物や水が内部に堆積したり、通電部に支障を与えることがない。従って故障の恐れがない信頼性の高い車両用回転電機が得られる。また、スリップリングカバー部511の下部に貫通孔511aを設けたことにより、回転子4が回転したときに、ブラシ52とスリップリング43の摺動によって生じるブラシ粉が該貫通孔511aから空隙部Bに排出され、さらに排出路122bから外部に排出されるので、スリップリングカバー部511内部にブラシ粉が溜まることがない。また、スリップリングカバー部511内部の間隙Aと空隙部Bとで空気の吸排出ができるため、スリップリング43やブラシ52の冷却性が向上され、温度が低減される。
【0021】
さらに、筒状部122の内周面下部からリヤブラケット12のベアリング保持部121の内周部にわたって軸方向に凹設された排出路122bは、フロント側に行くに従って径方向に広がって下方に傾斜されていることにより、排出路122bの出口部Eから異物、水が入り難いという利点を有する。また、該出口部Eはファン45の回転部分に対向して開口されているので、負圧が働き異物や水が排出され易い。さらに、この実施の形態1では、制御基板74が搭載された制御回路部7がリヤブラケット12筒状部122の後端部で接着剤等の固定手段(図示省略)により保持されている。このため、回転子位置検出センサ71や制御基板74の振動が抑制され、制御基板74の耐振性が向上する。
【0022】
さらに、スリップリングカバー部511の前方側端部及び後方側端部に、平面状部分を有する周方向のシール部材装着部511b及び511cがそれぞれ形成され、ベアリング保持部121の後部121a外周面との間、及びリヤブラケット12の筒状部122の後端部、即ち突出端部内周面に嵌合保持されているリング72の前端との間にそれぞれリング状の第1及び第2のシール部材55、56が押圧状態で介装されていることにより、スリップリングカバー部511の前方、または後方から、スリップリング43部に異物、水が浸入することがなく、スリップリング43部の防水性が向上される。また、第1及び第2のシール部材55、56はリング状なので製造が容易で漏れを生じる恐れがない。
【0023】
実施の形態2.
図6及び図7はこの発明の実施の形態2に係る車両用交流電動発電機を説明するものであり、図6はその要部構造を示す部分縦断面図、図7は図6に示されたスリップリングカバー部を示す下面図である。図において、リヤブラケット12の筒状部122の内周面下部には、ベアリング保持部121の内周部にわたって軸方向に凹設された実施の形態1と同様の排出路122bに加えて、インバータパワー回路部61上方の空間部Fに開口するように貫通された排出路である貫通路122cが設けられている。そして、スリップリングカバー部511の下部には、間隙Aと空隙部Bを連通する図7に示す貫通孔511dが設けられ、スリップリング43の周りの間隙Aはスリップリングカバー部511の下部の貫通孔511d、空隙部B、及び排出路122bまたは貫通路122cを経て、空間部Fまたは出口部Eに連通されている。
【0024】
なお、上記貫通孔511dはスリップリングカバー部511の軸方向両端部に形成されたシール部材装着部511b、511cに凹みを構成することなく、略「ロ」字状に形成されている。また、図6に示すように樹脂ケース73には、回転子位置検出センサ71の後部の空間Gと樹脂ケース73外部の空間部Jとを連通する空洞通路Hが回転子位置検出センサ71の下部(略下部)に設けられている。その他の構成は上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0025】
この実施の形態2では上記のように構成したことにより、ブラシホルダ51の側面と筒状部122の開口部122a側面の隙間C(図3)から浸入した異物、水は、リヤブラケット12の筒状部122とスリップリングカバー部511間の空隙部Bからリヤブラケット12のベアリング保持部121の内周部に凹設された排出路122bからだけでなく、リヤブラケット12の筒状部122外周の空間部Fに通じる貫通路122cを通って筒状部122の外部に排出され、筒状部122とスリップリングカバー部511間の空隙部Bや排出路122b、貫通路122cに異物、水、ブラシ粉が堆積し難くなる。
【0026】
また、回転子4のファン45により生成される冷却風がリヤブラケット12の筒状部122側面を図6に示す矢印Dの方向に通過するため、異物、水、ブラシ粉が排出され易くなっている。また、ブラシホルダ51のスリップリングカバー部511の下部に設けられたスリップリングカバー部511内部の間隙Aと、スリップリングカバー部511と筒状部122間の空隙部Bを繋ぐ貫通孔511dは、スリップリングカバー部511の両端部のシール部材装着部511b、511cに凹みを構成していないため、第1及び第2のシール部材55、56は全周を押圧狭持されるため、スリップリング43周辺の防水性がさらに向上する。
【0027】
また、樹脂ケース73に図6に示すように空洞通路Hが設けられていることにより、該空洞通路Hからの通風が回転子位置検出センサ71後部の空間Gに流入した後、該空間Gからスリップリングカバー部511内部の間隙Aを通流し、該間隙Aから貫通孔511dを通ってリヤブラケット12の筒状部122とスリップリングカバー部511間の空隙部Bへ流れる風路Iが形成されることとなり、スリップリング43やブラシ52の冷却性がさらに向上される。また、ブラシ粉が回転子位置検出センサ71部に侵入し難く、ブラシ粉がスリップリングカバー部511の外部に排出されるため、回転子位置検出センサ71の信頼性が向上するという効果も得られる。また、本実施の形態2では空洞通路Hを樹脂ケース73に設けたが、カバー75、76を貫通して空間Gと外部とを連通させるように空洞通路Hを構成しても差し支えない。また、回転子位置検出センサ71の後部の空間Gをインバータパワー回路部61上方の空間部Fを介して外部と連通するように空洞通路Hを構成しても差し支えない。
【0028】
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3に係る車両用交流電動発電機の要部構造を示す縦断面図である。この実施の形態3では、リヤブラケット12の筒状部122の略下部に、該筒状部122とスリップリングカバー部511の間の空隙部Bを該筒状部122の下側外周部の空間部Fに連通する排出路122dが設けられており、筒状部122とスリップリングカバー部511間の空隙部Bとベアリング保持部121のケース1内空間は、リヤブラケット12のベアリング保持部121の後部121aにより分離されている。その他の構成は、上記実施の形態2における空洞通路Hを省略したものと同様である。
【0029】
上記のように構成された実施の形態3においては、ブラシホルダ51の側面と筒状部122の開口部122a側面の隙間C(図3)から浸入した異物、水は、リヤブラケット12の筒状部122とスリップリングカバー部511間の空隙部Bを経て下部に設けられた排出路122dを通って空間部Fに排出され、ファン45によって付勢される矢印Dで示す冷却風の流れに沿ってリヤブラケット12の外部に排出される。また、リヤブラケット12の筒状部122とスリップリングカバー部511間の空隙部B及び排出路122dとベアリング保持部121の内側空間は、ベアリング保持部121の後部121aにより分離されていることにより、上記隙間C(図3)から浸入した異物、水がベアリング32後方からベアリング32にかかることが無いため、ベアリング32の寿命が向上し、品質が向上する。
【0030】
なお、上記実施の形態1〜3では開口部122aが筒状部122の上方に設けられている場合、即ちブラシホルダ51が上方に設けられブラシ52が上下方向に配置されているものについて例示したが、これに限定されるものではなく、開口部122aの位置は例えば斜め上方、横方向などであっても差し支えない。また、スリップリングカバー部511はブラシホルダ51と一体的に形成されてスリップリング43を包囲しているが、スリップリングカバー部511の一部を例えば樹脂などの非伝導性の部材でブラシホルダ51と別体的に構成し、ブラシホルダ51に装着してブラシホルダASSYを構成することにより、スリップリング43を包囲しても良い。
【0031】
また、隙間Cは例えば通気性のある材料、ゴム材等で塞ぎ、あるいはブラシホルダ51の側面51aにおける隙間C位置の上方に庇を周設し、通気性を確保して上方から直接水が進入するのを防ぐようにしても良い。また、排出路122bは溝あるいは貫通路で形成したが、これに限定されるものではなく、例えばパイプなどを用い、あるいはパイプなどを併用して水や異物を機外に導くようにしても差し支えない。空洞通路Hにおいても、貫通路で形成したが、例えばゴム材料等のパイプなどを併用して通風路を構成しても差し支えない。その他、この発明の範囲内で種々の変形や変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1に係る車両用回転電機としての車両用交流電動発電機の全体構造を示す縦断面図。
【図2】図1に示された防水構造部を拡大して示す要部縦断面図。
【図3】図2のIII−III線における矢視断面図。
【図4】図1に示されたリヤブラケットの筒状部を示す斜視図。
【図5】図1に示されたスリップリングカバー部を示す下面図。
【図6】本発明の実施の形態2に係る車両用交流電動発電機の要部構造を示す部分縦断面図。
【図7】図6に示されたスリップリングカバー部を示す下面図。
【図8】本発明の実施の形態3に係る車両用交流電動発電機の要部構造を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0033】
12 リヤブラケット、 121 ベアリング保持部、 122 筒状部、 122a 開口部、 122b 排出路、 122c 排出路(貫通路)、 122d 排出路、 4 回転子、 42 界磁巻線、 43 スリップリング、 45 ファン、 51 ブラシホルダ、 511 スリップリングカバー部、 511a 貫通孔、 511b、511c シール部材装着部、 511d 貫通孔、 52 ブラシ、 55 第1のシール部材、 56 第2のシール部材、 61 インバータパワー回路部、 7 制御回路部、 71 回転子位置検出センサ、 72 リング、 73 樹脂ケース、 74 制御基板、 A 間隙、 B 空隙部、 C 隙間、 E 出口部、 F、J 空間部、 G 空間、 H 空洞通路、 I 風路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界磁巻線及びこの界磁巻線に電流を供給するためのスリップリングを有する回転子と、この回転子を回転自在に支持するフロントブラケット及びリヤブラケットと、上記スリップリングに対して摺接されたブラシを保持するブラシホルダとを備えた車両用回転電機において、上記スリップリングの周りを間隙を介して包囲するスリップリングカバー部と、上記リヤブラケットに対して軸方向に突設されたスリット様の開口部を有する断面円弧状の筒状体からなり、上記スリップリングカバー部の周りを空隙部を介して包囲すると共に、上記開口部から上記ブラシホルダを径方向に挿通させ、かつ下部に上記空隙部を外部に連通させるように形成された排出路を有する筒状部と、を備えたことを特徴とする車両用回転電機。
【請求項2】
上記筒状部は上記リヤブラケットのベアリング保持部から外側方向に突出するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用回転電機。
【請求項3】
上記スリップリングカバー部の軸方向端部にリング状のシール部材を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用回転電機。
【請求項4】
上記排出路は上記筒状部の内周面から上記ベアリング保持部の内周面を軸方向に通過して上記リヤブラケットの内側に開口するように形成された溝状の凹部からなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車両用回転電機。
【請求項5】
上記溝状の凹部は、上記リヤブラケットの内側方向に向けて深さが径方向に深くなるように傾斜していることを特徴とする請求項4に記載の車両用回転電機。
【請求項6】
上記排出路は、上記筒状体の下部に設けられた、該筒状体を径方向に貫通する貫通路を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の車両用回転電機。
【請求項7】
上記空隙部は、上記リヤブラケットのベアリング保持部によって軸方向に分離されていることを特徴とする請求項2ないし請求項5の何れかに記載の車両用回転電機。
【請求項8】
上記スリップリングカバー部の略下部には、上記間隙と上記空隙部を連通する貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れかに記載の車両用回転電機。
【請求項9】
上記筒状部の突出方向端部に回転子位置検出センサを備えると共に、外気を該回転子位置検出センサを経て上記間隙に通じさせる風路が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れかに記載の車両用回転電機。
【請求項10】
上記筒状部の突出方向端部に、交流電動発電機として動作させるための制御基板が保持されていることを特徴とする請求項1ないし請求項9の何れかに記載の車両用回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−228410(P2008−228410A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61157(P2007−61157)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】