説明

車両用外装品

【課題】バリを後加工で除去せずに安全性を確保する。
【解決手段】鍔体2を含めた庇部3の略中央部から上側かつ内側に、第1の合成樹脂材料である遮光性樹脂材料にカーボンブラックを配合した半透光性の黒色の着色樹脂からなる遮光部20を形成し、下側と、遮光部20を外側から覆うように下側から延設された上側に、第2の合成樹脂材料である透光性樹脂材料からなる透光部21および延設部21aを形成する。境界部23の両側の遮光部20と透光部21に、バリ31に沿って形成されたバリ31の表出面33と、バリ31の表出高さよりも高く表出面33から立設された壁面35とからなる保護部37をそれぞれ設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に取り付けられるサイドバイザー、バックバイザー等や、自動二輪車に取り付けられる風防、デフレクター等の車両用外装品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車や自動二輪車等の車両用外装品として、複数種類の合成樹脂材料を一体的に型成形させてなるバイザー等が広く開示されている。
例えば、特許文献1に記載された自動車用バイザーは着色した合成樹脂とより透光性の高い合成樹脂とを、特許文献2のサイドバイザーは透明熱可塑性樹脂と着色熱可塑性樹脂とを、2ステーションタイプのロータリー射出成形機等によって2色樹脂成形法を利用して形成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−146074号公報
【特許文献2】特開2003−341359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2の技術は、第1のキャビティへ一方の樹脂材料を射出してバイザーの一部分を形成した後、第2のキャビティへ他の樹脂材料を射出してバイザー全体を形成する工程上、第1、第2のキャビティを形成する金型のパーティングラインにいわゆるバリが生ずる場合がある。
このようなバリが生じた成形品に対しては、安全性および意匠性の確保の観点から、射出成形工程の後に、必要に応じてバリを除去することが一般的である。ただ実際にバリの除去作業を行う際には、特にバリの発生箇所が成形品の平面部分であると、成形品表面にキズを残す可能性が高まり、意匠性が損なわれ易くなるため、所定の品質基準を満たす作業レベルの手間がかかる点で問題があった。
【0005】
そこで、本発明では上記課題を鑑み、バリを後加工で除去しなくても安全性や意匠性を確保できる車両用外装品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明に係る車両用外装品は、成形金型内に形成した第1キャビティに第1の合成樹脂材料を射出してなる第1樹脂部と、第1キャビティに隣接して前記成形金型内に形成した第2キャビティに第2の合成樹脂材料を射出してなる第2樹脂部とを、前記成形金型内で一体的に型接続してなる庇部を備え、第1樹脂部と第2樹脂部との境界部上にバリ状体が表出されてなる車両用外装品であって、第1樹脂部と第2樹脂部との境界部に沿って、第1樹脂部または第2樹脂部の少なくとも一方の表面に、バリ状体の表出高さよりも高い壁面を立設して構成される。
【0007】
請求項2の発明に係る車両用外装品は、壁面が、第1樹脂部および第2樹脂部の両方の表面にそれぞれ立設されて構成される。
【0008】
請求項3の発明に係る車両用外装品は、第1樹脂部と第2樹脂部との境界部が、外装した車両に対向する庇部内側に配置されて構成される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、2、3の発明によれば、バリの除去作業を省いた場合であっても、バリに対する安全性および意匠性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る車両用外装品の一実施形態として自動車用バイザーを示す外観図であり、図2は図1の自動車用バイザーを自動車の窓枠に取り付けた状態を示し、(a)は要部断面図、(b)は(a)のA部拡大図である。
このバイザー1aは、自動車の窓枠10の上辺部に沿って長尺帯状に形成された庇部3と、この庇部3の上端縁3aに沿って連接された鍔体2とにより構成され、庇部3の内側上部には、内面と略垂直な係止突起6が設けられている。
【0011】
鍔体2を含めた庇部3の略中央部から上側かつ内側には、第1の合成樹脂材料である遮光性樹脂、例えば、無色透明のアクリル樹脂材料にカーボンブラックを配合した半透光性の黒色の着色樹脂からなる遮光部20(第2樹脂部)が形成されている。尚、図1において鍔体2の着色は省略する。
【0012】
また、庇部3の略中央部から下側と、遮光部20を外側から覆うように下側から延設された鍔体2を含めた庇部3の上側には、第2の合成樹脂材料である透光性樹脂、例えば、無色透明のアクリル樹脂材料からなる透光部21および延設部21a(第1樹脂部)が形成されている。遮光部20は、透光部21の延設部21aと層状に一体的に成形されている。
【0013】
さらにバイザー1aの内側面には、遮光部20と透光部21との境界部23上にバリ31が表出されている。境界部23の両側の遮光部20と透光部21には、バリ31に沿って形成されたバリ31の表出面33と、バリ31の表出高さよりも高く表出面33から立設された壁面35とからなる帯状の保護部37がそれぞれ設けられている。
【0014】
壁面35は、境界部23から両側に、例えば0〜1.0(mm)の間隔t1、t2が確保されて立設されている。壁面35の高さh1、h2は表出面から0.3〜1.0(mm)、保護部37の幅w1、w2は0.5〜20.0(mm)に形成されている。
【0015】
上記構成のバイザー1aは、透光部21とその延設部21aが予め成形され、後に遮光部20が付け足されることにより、遮光部20と透光部21とが一体的に成形される。
以下、その成形工程の一例を図3と共に示す。図3は、スライドコアバック方式の射出成形型による成形工程の一例を示す概略断面図である。
【0016】
すなわち、バイザー1aの成形には、遮光部20を取り除いて透光部21と延設部21aとが型取られた第2キャビティ42と、遮光部20が型取られた第1キャビティとを、1つの成形金型で形成可能に構成された成形金型25が使用される。金型25は、上下移動可能な上側テーブル30と、固定された下側テーブル31とにより挟まれるように取り付けられている。
【0017】
金型25は、バイザー1aの鍔体端部と庇部の先端部とに対応した位置の第1および第2パーティング部44、45で上部金型25aと下部金型25bとの上下に2分割される。また下部金型25bには、上部金型25aとの合致状態で、第1キャビティ41および第2キャビティ42を形成するよう上下移動可能なスライド部47が設けられている。
【0018】
金型25において、上側テーブル30を下方に移動させ、上部金型25a,下部金型25bを合致状態にし、スライド部47を上方へ移動させて遮光部20を取り除いた透光部21と延設部21aを型取った第2キャビティ42を形成する。この第2キャビティ42を用いてノズルAの射出により透光性樹脂からなる透光部21および延設部21aを一体成形する(工程(a))。次に、合致状態のままスライド部47を下方に移動させて第1キャビティ41を形成し、この第1キャビティ41を用いてノズルBの射出により着色樹脂からなる遮光部20を成形し、遮光部20と透光部21とを型接続により一体的に成形する(工程(b))。そして上側テーブル30を上方に移動させ、成形完了したバイザー1bを取り出す(工程(c))。その後は工程(a)から工程(c)を繰り返す。上記工程により、遮光部20は透光部21および延設部21aと一体的に成形される。
【0019】
このバイザー1aによれば、バイザー内側の遮光部20と透光部21との境界部23に沿って保護部37を設けたので、成形完了時、遮光部20と透光部21との境界部23にバリ31が生じた場合であっても、バリ31の表出高さより高く保護部37を設けることが可能となる。よって、境界部23のバリ31に指や手が触れ難くなり安全性を高めることができ、成形完了後のバリ取り工程を省くことが可能となる。さらにバリ取り工程に伴い生じるバイザー表面のキズの発生を無くすことができ意匠性を向上できる。
【0020】
ここで、上述したバイザー1aを自動車の窓枠10に取り付ける場合、図2に示すように、窓枠内縁11を挟み込んで係着する断面略U字形の係着部12とバイザー1aの係止突起6を係止する係止孔4とを備えた取付金具9が、窓枠10との間に介装される。この取付金具9により、バイザー1aの係止突起6は取付金具9の係止孔4に係止され、バイザー1aの上端部3aは両面接着テープ7で窓枠10の窓枠平面部10aに貼着され、窓枠10の窓枠内縁11が取付金具9の係着部12により挟み込まれることにより、バイザー1aは窓枠10に取り付けられる。13はドアガラスラン、14はドアガラスである。
【0021】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下、列挙するように本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状並びに構成を適宜に変更して実施することも可能である。
(1)本発明に係る車両用外装品を、サイドバイザー、フロントバイザー、サンルーフバイザー、バックバイザー、フロントバイザー等の各種の自動車用バイザー、或いは自動二輪車等のフード等に適用すること。
(2)本発明に係る車両用外装品を形成する合成樹脂として、アクリル樹脂以外の、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、およびこれらの1種または2種以上の混合樹脂等の各種の合成樹脂を用いること。
(3)遮光部を黒色以外の灰色、茶色、赤色等の各色に着色した合成樹脂によって形成すること。
(4)透光部を遮光部より透光性の高い有色合成樹脂によって形成すること。
(5)図4(a)のバイザー1bのように、庇部3の内側面から厚み方向へ壁面深さの位置にバリの表出面を設け、遮光部20と透光部21のそれぞれから保護部37aを凹設することによって、バリの表出高さよりも高く立設した壁面を確保しても良い。このバイザー1bによっても、バイザー1aと同様の作用効果を得ることができる。
(6)図4(b)のバイザー1cのように、遮光部20と透光部21との境界部に段差を設けることによって、遮光部の内面をバリの表出面とし、段差を壁面として保護部37bを構成しても良い。このバイザー1cによっても、バイザー1aと同様の作用効果を得ることができる。
(7)図4(c)のバイザー1dのように、庇部3の内側面から壁面深さの位置に遮光部20と透光部21との境界部を設け、遮光部20と透光部21のそれぞれから境界部へ壁面が斜めになるように、保護部37cを断面V字状に凹設することによって、バリの表出高さよりも高く立設した壁面を確保しても良い。このバイザー1dによっても、バイザー1aと同様の作用効果を得ることができる。
(8)バリ状体は、第1樹脂部と第2樹脂部との境界部上に表出するバリ状のものであれば、金型のパーティング部のずれに起因して生ずるバリに限らず、他の起因構成によるものを適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る車両用外装品の一実施形態として自動車用バイザーを示す外観図である。
【図2】自動車用バイザーを窓枠に取り付けた状態を示し、(a)は要部断面図、(b)はA部拡大図である。
【図3】成形工程を例示する概略断面図である。
【図4】他の保護部を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1a,1b,1c・・車両外装品としての自動車用バイザー、2・・鍔体、3・・庇部、3a・・上端縁、10・窓枠、7・・両面接着テープ、20・・遮光部(第1樹脂部)、21・・透光部(第2樹脂部)、21a・・延設部、23・・境界部、31・・バリ状体としてのバリ、33・・表出面、35・・壁面、37・・帯状の保護部、47・・スライド部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形金型内に形成した第1キャビティに第1の合成樹脂材料を射出してなる第1樹脂部と、第1キャビティに隣接して前記成形金型内に形成した第2キャビティに第2の合成樹脂材料を射出してなる第2樹脂部とを、前記成形金型内で一体的に型接続してなる庇部を備え、第1樹脂部と第2樹脂部との境界部上にバリ状体が表出されてなる車両用外装品であって、
第1樹脂部と第2樹脂部との境界部に沿って、第1樹脂部または第2樹脂部の少なくとも一方の表面に、バリ状体の表出高さよりも高い壁面を立設してなる、
ことを特徴とする車両用外装品。
【請求項2】
壁面は、
第1樹脂部および第2樹脂部の両方の表面にそれぞれ立設されてなる、
請求項1に記載の車両用外装品。
【請求項3】
第1樹脂部と第2樹脂部との境界部は、
庇部を外装した車両に対向する庇部内側に配置されてなる、
請求項1または2に記載の車両用外装品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−40001(P2009−40001A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209942(P2007−209942)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000216531)田村プラスチック製品株式会社 (24)
【Fターム(参考)】