説明

車両用操舵装置

【課題】省エネルギを図ることのできる車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】荷役用油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダ31へ作動油を給排するための第1の油圧回路68と、操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13へ作動油を給排するための第2の油圧回路84とで、油圧源としての油圧ポンプ8、主供給路63の部分82、主排出路65の部分83および油タンク64を共用する。リフトシリンダ31が非作動状態にあるときに、切替弁としての操舵反力用制御弁57を切り替え、操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13を働かせる。荷役動作に支障をきたすようなことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷役車両のための車両用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
操舵部材と転舵輪との間の機械的な連結が断たれた、いわゆるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置において、油圧アクチュエータを用いて操舵部材に操舵反力を付与することが提案されている(例えば特許文献1を参照)。
また、電動パワーステアリング装置において、油圧ポンプから吐出される作動油の圧力によって操舵反力を生成する油圧反力機構が提案されている(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−29430号公報(請求項2)
【特許文献2】特開2008−184049号公報(請求項5、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フォークリフト等の荷役車両において、操舵部材に操舵反力を与えるための反力アクチュエータとして、電動モータを用いた場合、電動モータが電力を消費するため、省エネルギ上、好ましくない。
一方、特許文献1,2のように、専用の油圧アクチュエータを設けた場合、重量が増加し、燃費が悪くなるので、この場合も、省エネルギ上、好ましくない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、省エネルギを図ることのできる車両用操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、荷役装置(3)を備えた荷役車両(1)を操舵するための車両用操舵装置(9)において、荷役用油圧アクチュエータ(31)に作動油を給排するための第1の油圧回路(68)と、操舵反力用油圧アクチュエータ(13;13A)に作動油を給排するための第2の油圧回路(84)と、上記第2の油圧回路に設けられ操舵反力用油圧アクチュエータへの作動油の給排/停止を切り替える切替弁(57)と、切替弁の動作を制御する制御手段(11)と、を備え、上記第1の油圧回路および上記第2の油圧回路は、少なくとも油圧源(8)を共用しており、上記制御手段は、所定の条件が満たされたときに、第2の油圧回路を介して操舵反力用油圧アクチュエータに作動油が給排されるように切替弁を切り替え、上記所定の条件には、荷役用油圧アクチュエータが非作動状態であることが含まれることを特徴とする。
【0007】
本発明では、第1の油圧回路および第2の油圧回路において、少なくとも油圧源が兼用されるので、構造を簡素化して軽量化を図ることができる。その結果、軽量化による燃費の向上を通じて省エネルギに寄与することができる。また、荷役用油圧アクチュエータが非作動状態にあるときに、切替弁の切替によって操舵反力用油圧アクチュエータを働かせるようにしているので、荷役動作に支障をきたすようなことがない。
【0008】
また、上記第1の油圧回路は、油圧ポンプおよび油圧タンク(64)を荷役用油圧アクチュエータに接続する主油路(63,65)を含み、上記第2の油圧回路は、上記主油路の中途の接続部(63a,65a)から操舵反力用油圧アクチュエータ側へ分岐する分岐路(78,79)を含み、上記切替弁は、上記分岐路の作動油の流通を規制する状態と上記規制を解除する状態とを切り替える場合がある(請求項2)。この場合、第1の油圧回路と第2の油圧回路で、主油路の一部を兼用することができ、構造をより簡素化することができる。
【0009】
また、上記荷役装置の積載荷重(W)を検出する荷重検出手段(34)を備え、上記所定の条件には、上記荷重検出手段によって検出された積載荷重が零であることが含まれる場合がある(請求項3)。積載荷重が零のときは、通例、荷役用油圧アクチュエータへの作動油供給の必要がない。そこで、操舵反力用油圧アクチュエータに作動油を供給するための条件として、積載荷重が零であることを含むようにした。
【0010】
また、上記荷役車両の前進を検出する前進検出手段(49)を備え、上記所定の条件には、上記前進検出手段により前進が検出されることが含まれる場合がある(請求項4)。通例、荷役車両は、後輪が転舵輪となっているため、車両が前進しながら旋回しているときに、車両安定化のための運転者の操作負担が大きくなる。そこで、操舵反力用アクチュエータへ作動油を供給する条件として、車両の前進を含めるようにした。これにより、前進旋回時に不安定になりがちな荷役車両の車両挙動を、操舵反力により急操舵を防止して安定化することができる。
【0011】
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態の車両用操舵装置を含む荷役車両としてのフォークリフトの概略構成を示す模式的側面図である。
【図2】フォークを昇降させる動作原理を説明するための概略図である。
【図3】荷役用油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダおよび操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダに作動油を給排するための油圧回路の模式図である。操舵反力用制御弁が第1の状態(待機状態)にある場合を示している。
【図4】荷役用油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダおよび操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダに作動油を給排するための油圧回路の模式図であり、操舵反力用制御弁が第2の状態にある場合を示している。
【図5】荷役用油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダおよび操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダに作動油を給排するための油圧回路の模式図であり、操舵反力用制御弁が第3の状態にある場合を示している。
【図6】フォークリフトの電気的構成を示すブロック図である。
【図7】ECUによる主たる制御の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の別の実施の形態の油圧回路の模式図であり、操舵反力用油圧アクチュエータとして油圧モータを用いる場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施の形態の添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施の形態の荷役車両としてのフォークリフトの概略構成を示す模式的側面図である。図1を参照して、フォークリフト1は、車体2と、その車体2の前部に設けられた荷役装置3と、車体2の後部に設けられたカウンタウェイト4と、車体2を支持する駆動輪としての前輪5および転舵輪としての後輪6と、例えばエンジンを含む車両の駆動源7と、油圧源としての油圧ポンプ8と、後輪6を転舵するための車両用操舵装置9とを備えている。
【0014】
車両用操舵装置9は、ノブ付きの手回しハンドルである操舵部材10と転舵輪である後輪6との間の機械的な連結が断たれた、いわゆるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置として構成されている。転舵輪として、単一の後輪6を車体2の左右方向の中央に設けてもよいし、車体2の左右にそれぞれ後輪6を設けてもよい。
車両用操舵装置9は、上記操舵部材10と、操舵部材10の操作に応じて転舵輪としての後輪6を転舵するための例えば電動モータからなり、制御手段としてのECU11(電子制御ユニット)によって駆動制御される転舵アクチュエータ12と、操舵部材10に操舵反力を付与するための操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13とを備えている。また、車両用操舵装置9は、操舵部材10の操舵角を検出する操舵角センサ14と、後輪6の転舵角を検出する転舵角センサ15とを備えている。
【0015】
転舵輪としての後輪6は、ほぼ鉛直な支持部材16によって回転可能に支持されている。その支持部材16は、車体2に保持された軸受17を介して、ほぼ鉛直な回転軸線C1の回りに回転可能に支持されている。
転舵アクチュエータ12の出力軸の回転は、伝達機構18を介して減速されて、支持部材16に伝達される。その伝達機構18は、転舵アクチュエータ12の出力軸とは同行回転する例えば駆動ギヤからなる駆動部材19と、回転軸線C1の回りに支持部材16とは同行回転可能に設けられ、上記駆動ギヤに噛み合う例えば従動ギヤからなる従動部材20とを有している。伝達機構18および転舵アクチュエータ12によって、転舵機構A1が構成されている。
【0016】
図示していないが、エンジン等の駆動源7の動力は、トルクコンバータを経て、前後進切替および変速動作を行うトランスミッションに伝達され、さらに、デファレンシャルを経て左右の前輪5(駆動輪)に伝達されるようになっている。トランスミッションには、前進クラッチおよび後進クラッチが内蔵されている。
フォークリフト1は、運転座席21を含む運転室22を備えている。運転室22は、車体2上にフレーム23によって取り囲まれた状態で形成されている。
【0017】
荷役装置3は、車体2によって、下端部24aを中心として傾動可能に支持された左右一対のアウターマスト24と、そのアウターマスト24によって昇降可能に支持されたインナーマスト25と、アウターマスト24によって昇降可能に支持されたリフトブラケット26と、そのリフトブラケット26に取り付けられ、荷物を積載する積載部としての左右一対のフォーク27とを備えている。
【0018】
アウターマスト24の所定部と車体2の所定部との間に、チルトシリンダ28が介在している。チルトシリンダ28は、車体2の所定部に揺動可能に連結された一端を有するシリンダ本体29と、シリンダ本体29の他端から突出するロッド30とを有している。ロッド30の先端は、アウターマスト24の所定部に揺動可能に連結されている。チルトシリンダ28のロッド30の伸縮動作に伴って、アウターマスト24が、直立姿勢および傾動姿勢に変位されるようになっている。
【0019】
また、アウターマスト24をガイドとしてインナーマスト25を昇降させるための荷役用油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダ31が設けられている。リフトシリンダ31は、アウターマスト24に固定されたシリンダ本体32と、シリンダ本体32から突出するロッド33とを有している。ロッド33の先端は、インナーマスト25の所定部に設けられた取付部25aに固定されている。
【0020】
リフトシリンダ31のシリンダ本体32の下部には、荷役装置3の積載荷重を検出するための荷重検出手段としての荷重センサ34が取り付けられている。荷重センサ34からの信号は、ECU11に入力されるようになっている。
運転室22の前部において、運転室22の底面22a上には、操作スタンド35が設けられており、運転室22の後部には、上記運転座席21が固定されている。
【0021】
上記操作スタンド35には、運転者が手で操作するための複数の操作要素として、上記操作部材10と、フォーク27を昇降させるための昇降操作レバー36と、アウターマスト24を揺動させるためチルト操作レバー37と、前進/後進切替レバー38とが設けられている。また、操作スタンド35には、主に後方を確認するための確認ミラー39が固定されている。また、操作スタンド35には、図示しない各種のスイッチ類が設けられている。
【0022】
また、操作スタンド35の基部近傍において、運転室22の底面22a上には、運転者が足で操作するための複数の操作要素として、アクセルペダル40、ブレーキペダル41、クラッチペダル42が設けられている。アクセルペダル40、ブレーキペダル41およびクラッチペダル42は、実際には紙面に垂直な方向(車両の左右方向に相当)に横並びで並べて配置されているが、図1では、模式的に示してある。また、図1では、操作要素としての昇降操作レバー36、チルト操作レバー37、前進/後進切替レバー38のレイアウトについても、模式的に示してある。
【0023】
フォーク27を昇降させる動作の原理を概念的に示す図2を参照して、インナーマスト25の上部には、スプロケット43が回転可能に支持されており、そのスプロケット43には、チェーン44が巻き掛けられている。そのチェーン44の一端44aが、アウターマスト24に設けられた固定部24bに固定され、チェーン44の他端44bが、リフトブラケット26に固定されている。これにより、リフトブラケット26およびフォーク27が、チェーン44を用いて懸架されている。
【0024】
リフトシリンダ31のロッド33の伸長に伴って、インナーマスト25が上昇すると、スプロケット43がアウターマスト24の固定部24bに対して上昇し、チェーン44を介して、リフトブラケット26および積載部としてのフォーク27を上昇させる。地表面48に対するフォーク27の上昇量は、リフトシリンダ31のロッド33の伸長量の2倍となる。
【0025】
積載部としてのフォーク27の高さを検出する積載部高さ検出手段としてのストロークセンサ45が設けられており、ストロークセンサ45からの信号は、ECU11に入力されるようになっている。ストロークセンサ45としてロータリエンコーダを用いるようにしてもよい。
具体的には、チェーン44の他端44bに一端が係止されたワイヤ46が、アウターマスト24に回転可能に支持されたワイヤドラム47に巻き取られており、フォーク27とともにチェーン44の他端44bが昇降すると、ワイヤ46がワイヤドラム47から巻き出されたり、巻き戻されたりする。このとき、ECU11は、ワイヤドラム47の回転数をストロークセンサ45としてのロータリエンコーダで検出し、その検出値に基づいてワイヤ46のワイヤドラム47からの巻き出し量を算出し、その算出値に基づいて、地表面48からのフォーク10の高さである積載部高さHを検出する。
【0026】
図3は荷役用油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダ31および操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13に作動油を給排するための油圧回路を示す模式図である。図3を参照して、荷役用油圧源としての油圧ポンプ8は、電動モータ60によって駆動される。荷役用油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダ31は、第1の油室61および第2の油室62を有している。
【0027】
油圧ポンプ8とリフトシリンダ31との間に、昇降用制御弁53が配置されている。昇降用制御弁53は、油圧ポンプ8からの主供給路63および油タンク64への主排出路65をそれぞれリフトシリンダ31の第1および第2の油室61,62に択一的に接続可能であるとともに、ECU11からの制御信号に応じて、流量を制御する電磁式の比例制御弁である。
【0028】
具体的には、昇降用制御弁53とリフトシリンダ31との間には、リフトシリンダ31の第1の油室61に連通する一端661を有する第1の通油路66が設けられているとともに、第2の油室62に連通する一端671を有する第2の通油路67が設けられている。
昇降用制御弁53は、主供給路63の一端631および主排出路65の一端651を、第1の油室61および第2の油室62の何れにも接続しない第1の状態(図3に示す待機状態に相当)と、主供給路63の一端631および主排出路65の一端651を、それぞれ、第1の通油路66の他端662および第2の通油路67の他端672に連通する第2の状態(図示せず。リフトシリンダ31のロッド33を伸長させる状態に相当)と、主供給路63の一端631および主排出路65の一端651を、それぞれ、第2の通油路67の他端672および第1の通油路66の他端662に連通する第3の状態(図示せず。リフトシリンダ31のロッド33を短縮させる状態に相当)とに切り替え可能である。
【0029】
油圧ポンプ8、主供給路63、昇降用制御弁53、第1の通油路66、第2の通油路67、主排出路65および油タンク64によって、荷役用油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダ31に作動油を給排するための第1の油圧回路68が構成されている。
操舵反力用油圧アクチュエータ13は、固定部としての円筒状のシリンダ本体69と、シリンダ本体69内にシリンダ本体69の軸方向に摺動可能に収容された可動部としてのピストン70と、シリンダ本体69内にピストン70によって互いに仕切られた第1および第2の油室71,72と、ピストン70と同行移動し、一部がシリンダ本体69から突出したロッド73とを備えている。
【0030】
ピストン70には、第1および第2の油室71,72間を連通するオリフィス74が形成されており、オリフィス74の働きで、ロッド73の進退に所定の粘性抵抗が付与されるようになっている。切替弁としての操舵反力用制御弁57が第1の状態(待機状態)にあるときは、上記粘性抵抗による操舵反力のみが付与されるようになっている。
操舵部材10は、ステアリングシャフトとして機能する支軸75の一端に同伴回転可能に連結されている。支軸75の他端には、支軸75と同伴回転するピニオン76が設けられている。一方、ロッド73の先端に、ロッド73と軸方向に同伴移動するラック77が設けられており、そのラック77は、上記ピニオン76に噛み合わされている。
【0031】
ピニオン76が設けられた支軸75と車体2との間には、操舵部材10を操舵中立位置に復帰させるために操舵部材10を操舵中立位置に付勢する、例えばねじりばねなどの付勢部材85が介在している。
操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13の油圧力が、ラック77およびピニオン76を介して、操舵部材10の操作に抗する操舵反力として、操舵部材10に与えられる。操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13の油圧力は、油圧ポンプ8と操舵反力用油圧アクチュエータ13との間に配置された操舵反力用制御弁57によって制御される。
【0032】
操舵反力用制御弁57は、主供給路63の中途の接続部63aから分岐した分岐供給路78および主排出路65の中途の接続部65aから分岐した分岐排出路79をそれぞれ操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13の第1および第2の油室71,72に択一的に接続可能であるとともに、ECU11からの制御信号に応じて、流量を制御する電磁式の比例制御弁である。また、操舵反力用制御弁57は、ECU11からの制御信号に応じて、操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13へ作動油を給排する状態(後述する第2または第3の状態に相当)と、操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13への作動油の給排を停止する状態(後述する第1の状態に相当)とを切り替える切替弁として機能する。
【0033】
具体的には、操舵反力用制御弁57と油圧シリンダ13との間には、油圧シリンダ13の第1の油室71に連通する一端801を有する第1の通油路80が設けられているとともに、第2の油室72に連通する一端811を有する第2の通油路81か設けられている。
操舵反力用制御弁57は、図3に示すように分岐供給路78の一端781および分岐排出路79の一端791を、油圧シリンダ13の第1の油室71および第2の油室72の何れにも接続しない第1の状態(待機状態に相当)と、図4に示すように分岐供給路78の一端781および分岐排出路79の一端791を、それぞれ、第1の通油路80の他端802および第2の通油路81の他端812に連通する第2の状態(油圧シリンダ13のロッド73を短縮させて左操舵に対して操舵反力を付与する状態に相当)と、図5に示すように分岐供給路78の一端781および分岐排出路79の一端791を、それぞれ、第2の通油路81の他端812および第1の通油路80の他端802に連通する第3の状態(油圧シリンダ13のロッド73を伸長させて右操舵に対して操舵反力を付与する状態に相当)とに切り替え可能である。
【0034】
油圧ポンプ8、主供給路63において油圧ポンプ8から接続部63aまでの部分82、分岐供給路78、操舵反力用制御弁57、第1の通油路80、第2の通油路81、分岐排出路79、主排出路65において油タンク64から接続部65aまでの部分83および油タンク64によって、操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13に作動油を給排するための第2の油圧回路84が構成されている。
【0035】
すなわち、荷役用油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダ31へ作動油を給排するための第1の油圧回路68と、操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13へ作動油を給排するための第2の油圧回路84とで、油圧ポンプ8、主供給路63の部分82、主排出路65の部分83および油タンク64が共用されている。これにより、構造の簡素化、軽量化が図られている。
【0036】
図6はフォークリフト1の主たる電気的構成を示すブロック図である。図6を参照して、ECU11には、操舵部材10の操舵角θh を検出するための操舵角センサ14、転舵輪としての後輪6の転舵角θW を検出するための転舵角センサ15、車速Vを検出するための車速センサ49、積載部としてのフォーク27の積載荷重Wを検出するための荷重検出手段としての荷重センサ34、積載部としてのフォーク27の高さである積載部高さHを検出するための積載部高さ検出手段としてのストロークセンサ45、昇降操作レバー36の位置を検出するための昇降操作レバー位置センサ50、チルト操作レバー37の位置を検出するためのチルト操作レバー位置センサ51、および前進/後進切替レバー38の切替に応じて作動する前進/後進切替スイッチ52のそれぞれから信号が入力されるようになっている。
【0037】
また、ECU11から、転舵アクチュエータ12、油圧ポンプ8から荷役用油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダ31への作動油の供給を制御する電磁式の比例制御弁からなる昇降用制御弁53、油圧ポンプ8からチルトシリンダ28への作動油の供給を制御する電磁式の比例制御弁からなるチルト用制御弁54、前進クラッチを係合/離脱させるための油圧シリンダに作動油の供給を制御する電磁式比例制御弁からなる前進クラッチ用制御弁55、および後進クラッチを係合/離脱させるための油圧シリンダに作動油の供給を制御する電磁式比例制御弁からなる後進クラッチ用制御弁56のそれぞれに信号が出力されるようになっている。また、ECU11から、操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13への作動油の給排/停止を制御する操舵反力用制御弁57に信号が出力されるようになっている。
【0038】
ECU11は種々の制御を実行する。例えば、ECU11は、後述する所定の条件が満たされたときに(図7のフローチャートにおいてステップS1でYES且つステップS2でYESのときに相当)、路面反力に応じた操舵反力を操舵部材10に与えるための油圧力を操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13によって発生させるべく、操舵角センサ14から入力された操舵角θh および車速センサ49から入力された車速Vに基づいて、操舵反力用制御弁57に制御信号D1を出力する。操舵反力用制御弁57は、ECU11からの制御信号D1に基づいて、油圧ポンプ8から操舵反力用アクチュエータとしての油圧シリンダ13に供給される作動油の方向および流量を制御する。
【0039】
また、ECU11は、昇降操作レバー位置センサ50から入力された昇降操作レバー36の位置に応じて、油圧ポンプ8からリフトシリンダ31への作動油の供給を制御する昇降用制御弁53に制御信号を出力する。
また、ECU11は、チルト操作レバー位置センサ51から入力されたチルト操作レバー37の位置に応じて、油圧ポンプ8からチルトシリンダ28への作動油の供給を制御するチルト用制御弁54に制御信号を出力する。
【0040】
また、ECU11は、前進/後進切替スイッチ52が前進へ切り替えられることに応じて前進クラッチ用制御弁55に制御信号を出力し、前進クラッチを作動させるための油圧シリンダに、油圧ポンプ8からの作動油が供給されるようにする。
また、ECU11は、前進/後進切替スイッチ52が後進へ切り替えられることに応じて後進クラッチ用制御弁56に制御信号を出力し、後進クラッチを作動させるための油圧シリンダに、油圧ポンプ8からの作動油が供給されるようにする。
【0041】
図7はECU11の主たる動作を示すフローチャートである。図7を参照して、ECU11は、まず、ステップS1において、荷重センサ34からの信号に基づいて検出されたフォーク27の積載荷重Wが零であり(W=0)、且つ昇降操作レバー位置センサ50からの信号に基づいて検出された昇降操作レバー36がホームポジションに位置しているか否かを判定する。
【0042】
ステップS1において、積載荷重Wが零であり(W=0)且つ昇降操作レバー36がホームポジションに位置している(すなわち、荷役用油圧アクチュエータであるリフトシリンダ31が動作していない)と判定された場合(ステップS1においてYESの場合)には、ステップS2に進み、車速センサ15からの信号に基づいてフォークリフト1が前進しているか否かを判定する。
【0043】
ステップS2において、フォークリフト1が前進していると判定された場合(ステップS2においてYESの場合)には、操舵反力用制御弁57を第1の状態から第2の状態(図4参照)または第3の状態(図5参照)に切り替え、操舵部材10の操舵方向に応じて、油圧ポンプ8からの作動油を操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13の対応する油室71または72に作動油を供給するとともに、その作動油の流量を制御して操舵部材10に所要の操舵反力を与える。
【0044】
一方、ステップS1において、積載荷重Wが零でない(W≠0)か、または昇降操作レバー36がホームポジションにない(すなわち、荷役用油圧アクチュエータであるリフトシリンダ31が動作している)かの少なくとも一方であると判断された場合(ステップS1においてNOの場合)には、操舵反力用制御弁57を第1の状態(図3に示す待機状態)に切り替える。
【0045】
第1の状態への切替によって、油圧ポンプ8から操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13への作動油の給排が停止されるので、操舵部材10の操作に対して、油圧シリンダ13の上記オリフィス74の粘性抵抗のみによる操舵反力が付与されることになる。
本実施の形態によれば、荷役用油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダ31へ作動油を給排するための第1の油圧回路68と、操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13へ作動油を給排するための第2の油圧回路84とで、油圧源としての油圧ポンプ8、主供給路63の部分82、主排出路65の部分83および油タンク64が共用されているので、構造を簡素化して、軽量化を図ることができる。また、軽量化による燃費の向上を通じて省エネルギに寄与することができる。
【0046】
また、リフトシリンダ31が非作動状態にあるときに、切替弁としての操舵反力用制御弁57を第2または第3の状態に切り替えることによって、操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13を働かせるようにしているので、荷役動作に支障をきたすようなことがない。
また、第1の油圧回路68が、油圧ポンプ8および油圧タンク64とリフトシリンダ31とを接続する主供給路63および主排出路65を含み、第2の油圧回路84が、主供給路63の中途の接続部63aおよび主排出路65の中途の接続部65aを、それぞれ、操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13に分岐供給路78および分岐排出路79を含む。すなわち、第1の油圧回路68と第2の油圧回路84で、一部の油路、すなわち、主供給路63の部分82および主排出路65の部分83を兼用することができ、構造を簡素化することができる。ただし、第1の油圧回路68および第2の油圧回路84で少なくとも油圧ポンプ8が兼用されていればよい。
【0047】
また、積載荷重Wが零のときは、通例、荷役用油圧アクチュエータであるリフトシリンダ31への作動油供給の必要がない。そこで、操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ13に作動油を供給するための条件として、積載荷重Wが零であることを含むようにした。
また、フォークリフト1は、後輪6が転舵輪となっているため、前進しながら旋回しているときに、運転者の負担が大きくなる。そこで、操舵反力用アクチュエータとしての油圧シリンダ13へ作動油を供給する条件として、車両の前進を含めるようにした。これにより、前進旋回時に不安定になりがちな荷役車両の車両挙動を、操舵反力により急操舵を防止して安定化することができる。
【0048】
また、車両用操舵装置9が、操舵部材10と転舵輪としての後輪6との機械的な連結が断たれた、いわゆるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置として構成されているので、操舵反力の付与に関する自由度が高い。
次いで、図8は本発明の別の実施の形態の車両用操舵装置の要部の油圧回路を示す模式図である。図8を参照して、本実施の形態が図3の実施の形態と主に異なるのは、下記である。すなわち、図3の実施の形態では、操舵反力用油圧アクチュエータとして、直動形の油圧シリンダ13を用い、ロッド73の直線運動をラック77およびピニオン76によって回転運動に変換していた。これに対して、本実施の形態では、操舵反力用油圧アクチュエータとして、回転形の油圧モータ13Aを用いた。これにより、図3の実施の形態で用いていたラック77およびピニオン76を廃止し、構造の一層の簡素化を図った。
【0049】
操舵反力用油圧アクチュエータとしての油圧モータ13Aは、例えばオービットモータ或いは外接形歯車モータ等の二方向流れ形かつ二方向回転形であり、第1の通油路80に連通する導入ポート131および第2の通油路81に連通する導入ポート132を切り換えることで、出力軸としての支軸75の回転方向を切り換えることができる。また、この油圧モータ13Aは定容量形であり、操舵反力用制御弁57からの作動油の供給量の増減に伴って支軸75を介して操舵部材10に所要の操舵反力を与えるようになっている。
【0050】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、例えば、上記各実施の形態において、荷役用油圧アクチュエータとして、リフトシリンダ31に代えて、チルトシリンダ28を適用し、チルトシリンダ28に作動油を給排するための第1の油圧回路と、操舵反力用油圧アクチュエータ(油圧シリンダ13または油圧モータ13A)に作動油を給排するための第2の油圧回路とで、少なくとも油圧ポンプ8を兼用するようにしてもよい(図示せず)。
【0051】
その他、本発明の特許請求の範囲で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0052】
1…フォークリフト(荷役車両)、2…車体、3…荷役装置、6…後輪(転舵輪)、8…油圧ポンプ(油圧源)、9…車両用操舵装置、10…操舵部材、11…ECU(制御手段)、12…転舵アクチュエータ、13…油圧シリンダ(操舵反力用油圧アクチュエータ)、13A…油圧モータ(操舵反力用油圧アクチュエータ)、14…操舵角センサ(操舵角検出手段)、15…転舵角センサ(転舵角検出手段)、31…リフトシリンダ(荷役用油圧アクチュエータ)、34…荷重センサ(荷重検出手段)、49…車速センサ(前進検出手段)、57…操舵反力用制御弁(切替弁)、63…主供給路(主油路)、63a…接続部、64…油タンク、65…主排出路(主油路)、65a…接続部、68…第1の油圧回路、78…分岐供給路(分岐路)、79…分岐排出路(分岐路)、84…第2の油圧回路、W…積載荷重、V…車速

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役装置を備えた荷役車両を操舵するための車両用操舵装置において、
荷役用油圧アクチュエータに作動油を給排するための第1の油圧回路と、
操舵反力用油圧アクチュエータに作動油を給排するための第2の油圧回路と、
上記第2の油圧回路に設けられ操舵反力用油圧アクチュエータへの作動油の給排/停止を切り替える切替弁と、
切替弁の動作を制御する制御手段と、を備え、
上記第1の油圧回路および上記第2の油圧回路は、少なくとも油圧源を共用しており、 上記制御手段は、所定の条件が満たされたときに、第2の油圧回路を介して操舵反力用油圧アクチュエータに作動油が給排されるように切替弁を切り替え、
上記所定の条件には、荷役用油圧アクチュエータが非作動状態であることが含まれることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1において、上記第1の油圧回路は、油圧ポンプおよび油圧タンクを荷役用油圧アクチュエータに接続する主油路を含み、
上記第2の油圧回路は、上記主油路の中途の接続部から操舵反力用油圧アクチュエータ側へ分岐する分岐路を含み、
上記切替弁は、上記分岐路の作動油の流通を規制する状態と上記規制を解除する状態とを切り替えることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項1または2において、上記荷役装置の積載荷重を検出する荷重検出手段を備え、 上記所定の条件には、上記荷重検出手段によって検出された積載荷重が零であることが含まれることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項において、上記荷役車両の前進を検出する前進検出手段を備え、
上記所定の条件には、上記前進検出手段により前進が検出されることが含まれることを特徴とする車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−254236(P2010−254236A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109512(P2009−109512)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】