説明

車両用樹脂製パネル部材の取付構造及び取付方法

【課題】樹脂製パネル部材を長孔に沿って熱膨張・熱収縮可能に車体本体部材に取り付けるに際し、簡単な構成で、樹脂製パネル部材の損傷を回避し、かつ長孔の幅方向の熱膨張・熱収縮を阻止することを課題とする。
【解決手段】樹脂製パネル部材2を車体本体部材6に取り付けるに際し、樹脂製パネル部材2に該パネル部材の熱変形を許容する方向に沿って長孔23を形成する。長孔23内に該長孔23と同じ方向に沿って開口22bが形成された枠状のスペーサ22を嵌挿する。スペーサ22は、前記樹脂製パネル部材2よりも圧縮クリープ強度が高く、前記樹脂製パネル部材2の前記長孔23が形成されている部分と略同じ厚みを有している。スペーサ22の開口22b内に該開口22bの幅に略等しい太さの軸部21cを有する締結ボルト21を挿通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用樹脂製パネル部材の取付構造及び取付方法に関し、自動車等の車両のボディの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の軽量化を図るため、例えばフェンダパネル等の車両の外面を形成するパネル部材を樹脂で製造することが知られているが、樹脂製のパネル部材を例えばエプロンフレーム等の金属製の車体本体部材に取り付けた状態で塗装後の焼付乾燥及び冷却を行うと、両部材の線膨張率が異なるため樹脂製パネル部材に熱応力が作用して該パネル部材が変形したり割れたりする問題がある。この問題に対処するために、例えば特許文献1に開示されるように、車体本体部材に長孔を形成し、樹脂製パネル部材に丸孔を設けて、これらの長孔及び丸孔に締結ボルトを挿通して締め付けることにより、両部材を長孔に沿って相対移動可能に組み付けることが知られている。
【0003】
しかし、前記特許文献1に開示の技術では、前記長孔に挿通する締結ボルトの軸部の太さが長孔の幅よりも小さいので、樹脂製パネル部材が長孔の幅方向にも熱膨張・熱収縮してしまい、その結果、例えばフェンダパネルが車体幅方向に熱膨張してフードパネルの側縁部を車体内方へ押し込んだり、あるいは上下方向に熱膨張してフードパネルの側縁部を上方へ押し上げたりして、車両の商品価値を決定する重要なファクタである車両の美的外観が損なわれる問題がある。さらに、締結ボルトの締付トルクにより樹脂製パネル部材が損傷してしまう可能性もある。そこで、本出願人は、長孔内に、該長孔と同じ方向に沿って開口が形成された枠状のスペーサを嵌挿し、このスペーサの開口内にネジ軸を挿通して締結用ナットで締付けを行うと共に、前記ネジ軸に、前記開口の幅に略等しい太さの大径部を設けた構成の発明について既に特許出願(特願2005−191185)をしたところである。これによれば、スペーサを挟んで締付けが行われるので、樹脂製パネル部材に過大な締付トルクが加わらず、該パネル部材の損傷が回避される。また、ネジ軸の大径部がスペーサの開口の幅方向の内面に当接するので、樹脂製パネル部材が長孔の幅方向に熱膨張・熱収縮することが阻止される。
【0004】
【特許文献1】特開2001−206248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許出願に係る発明においては、樹脂製パネル部材を車体本体部材に取り付ける器具として、前記ネジ軸と該ネジ軸に螺合された締結用ナットという複数の部材からなるネジアッセンブリを用いるので、このネジアッセンブリを準備するための部品コストや製造コストが高くつく、という問題が残っていた。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂製パネル部材を長孔に沿って熱膨張・熱収縮可能に車体本体部材に取り付けるに際し、簡単な構成で、樹脂製パネル部材の損傷を回避し、かつ長孔の幅方向の熱膨張・熱収縮を阻止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、まず、本願の請求項1に記載の発明は、樹脂製パネル部材を車体本体部材に取り付ける車両用樹脂製パネル部材の取付構造であって、前記樹脂製パネル部材に、該パネル部材の熱変形を許容する方向に沿って長孔が形成され、前記長孔内に、該長孔と同じ方向に沿って開口が形成され、前記樹脂製パネル部材よりも圧縮クリープ強度が高く、前記樹脂製パネル部材の前記長孔が形成されている部分と略同じ厚みを有する枠状のスペーサが嵌挿され、前記スペーサの開口内に、該開口の幅に略等しい太さの軸部を有する締結ボルトが挿通されていることを特徴とする。ここで、締結ボルトは、その軸部の一部がスペーサの開口の幅に略等しい太さであってもよく、またその軸部の全部がスペーサの開口の幅に略等しい太さであってもよい。
【0008】
次に、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両用樹脂製パネル部材の取付構造において、前記締結ボルトの頭部が着座する側の前記スペーサの端部に、前記樹脂製パネル部材の長孔の周縁部に当接するフランジ部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
次に、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の車両用樹脂製パネル部材の取付構造において、前記締結ボルトの頭部の下方に、該頭部よりも大径で、前記スペーサのフランジ部に当接する鍔部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
次に、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から3のいずれかに記載の車両用樹脂製パネル部材の取付構造において、前記締結ボルト及び該ボルトが螺合する前記車体本体部材のネジ孔の少なくとも一方に、前記ネジ孔に螺合している前記締結ボルトの緩みを防止する緩み止め手段が備えられていることを特徴とする。ここで、緩み止め手段としては、ボルトやネジ孔のネジ谷に樹脂を流し込んで固めておくもの、ボルトやネジ孔のネジ山に角部を突設しておくもの、ボルトやネジ孔にビニールテープを巻き付けておくもの等がある。
【0011】
一方、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から4のいずれかに記載の取付構造を用いて樹脂製パネル部材を車体本体部材に取り付ける車両用樹脂製パネル部材の取付方法であって、前記樹脂製パネル部材の長孔内に前記スペーサを嵌挿し、前記スペーサの開口内に前記締結ボルトを挿通して前記車体本体部材のネジ孔に螺合させ、締付トルクが所定トルクに上昇するまでいったん締め付けた後、前記ネジ孔に螺合している状態で所定量だけ緩め、前記樹脂製パネル部材に熱が加わる所定の作業を行い、冷却後、再び前記締結ボルトを締付トルクが所定トルクに上昇するまで締め付けることを特徴とする。
【0012】
次に、請求項6に記載の発明は、前記請求項5に記載の車両用樹脂製パネル部材の取付方法において、前記締結ボルトを緩める作業を該ボルトを締め付ける作業と同じ装置を用いて行うことを特徴とする。
【0013】
そして、請求項7に記載の発明は、前記請求項5又は6に記載の車両用樹脂製パネル部材の取付方法において、前記締結ボルト及び前記スペーサの少なくとも一方が導電性である場合に、その導電性の部材の表面に非導電性被膜を形成しておき、前記締結ボルトを所定量だけ緩めた後、電気付与による塗装を行い、次いで、前記所定の作業として焼付乾燥を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
まず、請求項1に記載の発明によれば、樹脂製パネル部材の長孔内に、該長孔と同じ方向に沿って開口が形成され、前記樹脂製パネル部材よりも圧縮クリープ強度が高く、前記樹脂製パネル部材の前記長孔が形成されている部分と略同じ厚みを有する枠状のスペーサを嵌挿したから、該スペーサを挟んで締結ボルトの締付けが行われることとなり、その結果、樹脂製パネル部材を車体本体部材に取り付けるのに必要なトルクが確実・安定に達成されながら、樹脂製パネル部材に過大な締付トルクが加わらず、該パネル部材の損傷が回避される。また、前記スペーサの開口内に、該開口の幅に略等しい太さの軸部を有する締結ボルトを挿通したから、該軸部がスペーサの開口の幅方向の内面に当接することとなり、その結果、樹脂製パネル部材が長孔の幅方向に熱膨張・熱収縮することが阻止されると共に、熱変形が許容される長孔の長さ方向に確実・安定に案内される。そして、樹脂製パネル部材を車体本体部材に取り付ける器具として、簡単な構成の締結ボルトを用いたから、部品コストや製造コストの低減が図られる。
【0015】
次に、請求項2に記載の発明によれば、締結ボルトの頭部が着座する側のスペーサの端部に、樹脂製パネル部材の長孔の周縁部に当接するフランジ部を設けたから、このフランジ部によって、スペーサを長孔内に嵌挿する際の組付け性能及びスペーサの長孔内での位置保持性能が簡単な構造で向上することとなる。
【0016】
次に、請求項3に記載の発明によれば、締結ボルトの頭部の下方に、該頭部よりも大径で、スペーサのフランジ部に当接する鍔部を設けたから、このボルトの鍔部と前記スペーサのフランジ部との圧接面積が簡単な構造で増大し、締結ボルトの締結安定性が確保されることとなる。
【0017】
次に、請求項4に記載の発明によれば、締結ボルト及び/又は車体本体部材のネジ孔に、該ネジ孔に螺合している締結ボルトの緩みを防止する緩み止め手段を備えたから、たとえ締結ボルトを完全締結状態(締付トルクが所定トルクに上昇するまで締め付けた状態)とせず、仮締結状態(完全締結状態よりも所定量だけ緩んでいる状態)としていても、該締結ボルトの脱落が防止されることとなる。
【0018】
一方、請求項5に記載の発明によれば、前記請求項1から4のいずれかに記載の取付構造を用いて樹脂製パネル部材を車体本体部材に取り付けるようにしたから、前記請求項1から4に記載の発明と同様の効果が得られることとなる。
【0019】
その上で、スペーサの開口内に挿通した締結ボルトを締付トルクが所定トルクに上昇するまでいったん締め付けた後、すなわちいったん完全締結状態とした後、この締結ボルトを車体本体部材のネジ孔に螺合している状態で所定量だけ緩め、すなわち仮締結状態とし、そして、この状態で、樹脂製パネル部材に熱が加わる所定の作業を行い、冷却後に、再び締結ボルトを完全締結状態とするようにしたから、樹脂製パネル部材に熱が加わる所定の作業中及び冷却中は、樹脂製パネル部材は、車体本体部材に緩く組み付けられており、その結果、例えば車体本体部材に固く組み付けられた場合等と比べて、樹脂製パネル部材は、抵抗が少なく、円滑に、車体本体部材に対して長孔に沿って熱膨張・熱収縮できることとなる。
【0020】
その際、前記締結ボルトをスペーサを介して所定トルクまで締め付けるようにしたから、樹脂製パネル部材を過大に圧縮することなく、前記所定トルクを確実・安定に得ることができる。また、前記スペーサは、樹脂製パネル部材よりも圧縮クリープ強度が高いから、締結ボルトをいったん完全締結状態とした後に所定量だけ緩めたときには、締結ボルトは確実に仮締結状態となり、その結果、樹脂製パネル部材の長孔に沿った円滑な熱膨張・熱収縮が確実に実現する。これに対し、例えば、前記締結ボルトをスペーサを介さずに所定トルクまで締め付けた場合は、締結ボルトの頭部が圧縮クリープ強度の低い樹脂製パネル部材にめり込む等して、たとえその後に所定量だけ緩めても、締結ボルトは仮締結状態とならず、樹脂製パネル部材は未だ比較的強く車体本体部材に組み付けられた状態のまま残り、その結果、樹脂製パネル部材の長孔に沿った円滑な熱膨張・熱収縮が実現しなくなる可能性がある。
【0021】
しかも、前記緩み止め手段により、仮締結状態の締結ボルトの脱落が防止されるから、締結ボルトを仮締結状態とした後、樹脂製パネル部材に熱が加わる所定の作業を行い、冷却し、締結ボルトを最終的に完全締結状態とするまでの間は、たとえワークを移送・運搬等しても、そのときの振動等に起因して締結ボルトが脱落・紛失することが回避される。
【0022】
次に、請求項6に記載の発明によれば、締結ボルトを緩める作業を締結ボルトを締め付ける作業と同じ装置を用いて行うようにしたから、異なる作業工程間での作業性を簡単な方法により高めることができ、生産効率の上昇が図られることとなる。
【0023】
そして、請求項7に記載の発明によれば、締結ボルト及び/又はスペーサが導電性である場合に、その導電性の部材の表面に非導電性被膜を形成しておき、その上で、締結ボルトを所定量だけ緩めた後、電気付与による塗装(例えば電着塗装等)を行い、次いで、樹脂製パネル部材に熱が加わる所定の作業として焼付乾燥を行うようにしたから、前記塗装工程において締結ボルト表面やスペーサ表面に塗装被膜が形成されることが免れ、その結果、前記塗装被膜が形成された場合には、該被膜により、焼付乾燥中に、せっかく緩めた締結ボルトとスペーサとの自由な相対移動が阻害され、結果的に、樹脂製パネル部材と車体本体部材とが相対移動し難くなる、という不具合が解消されることとなる。以下、発明の最良の実施形態を通して本発明をさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両1の全体斜視図である。車両1は、左右のフェンダパネル2,2、フードパネル3、左右のドアパネル4,4(1つのみ図示)及びルーフパネル5等の種々のパネル部材により、その外面が形成されている。そして、本実施形態においては、フェンダパネル2は、車両1の軽量化を図るため、樹脂製とされている。
【0025】
図2は、前記車両1のフェンダパネル2と金属製の車体本体部材であるエプロンフレーム6との取付関係を示す拡大斜視図である。フェンダパネル2の内側上部に、車体前後方向に延びるフランジ部2aが設けられ、このフランジ部2aとエプロンフレーム6の上面部6aとが上下に重ね合わされている。そして、フェンダパネル2は、後方の固定部10と前方のスライド部20との2箇所でエプロンフレーム6に取り付けられている。
【0026】
その場合に、フェンダパネル2は、車体前後方向の熱変形(熱膨張・熱収縮)は許容されるが、車体幅方向及び上下方向の熱変形(熱膨張・熱収縮)は規制される。その理由は、フェンダパネル2とフードパネル3との間の意匠上のスキを保ち、フェンダパネル2とフードパネル3との接触等を回避するためである。これにより、車両1の商品価値を決定する重要なファクタである車両1の美的外観が保たれることとなる。これに対し、例えばフェンダパネル2の車体幅方向の熱膨張を許容すると、フェンダパネル2の上縁部2xがフードパネル3の側縁部3xを車体内方へ押し込んだり、あるいはフェンダパネル2の上下方向の熱膨張を許容すると、フェンダパネル2の上縁部2xがフードパネル3の側縁部3xを上方へ押し上げたりして、車両1の外形が変形する可能性がある。この観点から、後方の固定部10は、フェンダパネル2をエプロンフレーム6に取り付ける際の熱変形の基準位置となる取付部であり、前方のスライド部20は、フェンダパネル2のエプロンフレーム6に対する車体前後方向の相対移動を許容する取付部である。
【0027】
図3は、前記車両1のフェンダパネル2とエプロンフレーム6との取付関係を示す部分切欠き分解図である。固定部10においては、フェンダパネル2のフランジ部2aに挿通孔13が形成され、エプロンフレーム6の上面部6aにネジ孔14が設けられている。そして、フェンダパネル2の側、つまり上方から、締結ボルト11が前記挿通孔13に挿通され、かつ前記ネジ孔14に螺合されて、前記締結ボルト11が締め付けられることにより、フェンダパネル2がエプロンフレーム6に固定部10において取り付けられる。一方、スライド部20においては、フェンダパネル2のフランジ部2aに長孔23が形成され、エプロンフレーム6の上面部6aにネジ孔24が設けられている。そして、フェンダパネル2の側、つまり上方から、締結ボルト21が前記長孔23に挿通され、かつ前記ネジ孔24に螺合されて、前記締結ボルト21が締め付けられることにより、フェンダパネル2がエプロンフレーム6にスライド部20において取り付けられる。
【0028】
その場合に、前記長孔23は、熱変形を許容する方向、すなわち車体前後方向に沿って延びている。長孔23は、本実施形態においては、矩形状である。また、前記長孔23内には、枠状のスペーサ22が嵌挿されている。このスペーサ22は、例えば、金属、無機化合物(セラミックス等)、FRP(繊維強化プラスチック:好ましくは熱硬化性樹脂)等で製作され、フェンダパネル2よりも圧縮クリープ強度が高く設定されている。すなわち、スペーサ22は、フェンダパネル2と比較して、圧縮力を受けたときの塑性変形が起こり難いのである。
【0029】
図4は、スライド部20の取付前の拡大断面図である。スペーサ22は、フェンダパネル2の長孔23内に略密着して嵌合する大きさの枠形状の本体部22aを有している。そして、締結ボルト21の頭部21aが着座する側の端部、すなわち上端部に、前記長孔23の周縁部に当接するフランジ部22cが形成されている。スペーサ22は、長孔23が形成されているフェンダパネル2の部分の厚みβと略同じ厚みαを有している。ここで、スペーサ22の厚みαとは、枠形状本体部22aの下端からフランジ部22cの下面までの高さである。また、スペーサ22は、フェンダパネル2の長孔23と同じ方向、すなわち車体前後方向に沿って延びる開口22bを有している。開口22bは、本実施形態においては、矩形状である。
【0030】
一方、締結ボルト21は、上から順に、レンチ等の工具によって回動される短六角柱状の頭部21aと、該頭部21aよりも径が大きい薄円環形状の鍔部21bと、該鍔部21bよりも径が小さい短円柱状の大径部21cと、該大径部21cと径が等しい上端部及び該大径部21cよりも径が小さい下端部を有する逆円錐台形状のテーパ部21dと、該テーパ部21dの下端部と径が等しいネジ軸部21eとを備えている。ここで、鍔部21b以外の部分は一体であり、鍔部21bは、その一体化物21xに対して当該締結ボルト21の軸心回りに回動自在とされている。すなわち、薄円環形状の鍔部21bは、一体化物21xに下方から頭部21aの直下まで差し込まれ、大径部21cの上端部がかしめられることにより(かしめ部21y)、大径部21cの上方かつ頭部21aの下方で回動自在に係止しているのである。この鍔部21bは、当該締結ボルト21が締め付けられたときに、前記スペーサ22のフランジ部22cに当接する。
【0031】
この締結ボルト21において、前記大径部21c、テーパ部21d及びネジ軸部21eは、該ボルト21の軸部を構成する。その場合に、前記大径部21cは、前記スペーサ22の開口22bの幅方向の内面(すなわち本実施形態では車体前後方向に延びる左右一対の面)22e,22eに略接する大きさに設定されている。すなわち、前記大径部21cは、スペーサ22の開口22bの幅に略等しい太さを有している。なお、スペーサ22の開口22bの上縁部は面取りされて斜面部22dが形成されている。この斜面部22dと、締結ボルト21のテーパ部21dとにより、締結ボルト21をスペーサ22の開口22bに挿通させる際に、ネジ軸部21eをネジ孔24へ良好に誘導するための誘い込み構造が提供されている。
【0032】
この締結ボルト21のネジ軸部21eには、該ネジ軸部21eと前記ネジ孔24とが螺合している状態で締結ボルト21の緩みを防止する緩み止め手段が備えられている。本実施形態では、緩み止め手段は、例えば図5に示すように、締結ボルト21のネジ軸部21eに樹脂30を流し込み、この樹脂30によってネジ谷が埋め込まれるようにしたものである。これにより、ネジ軸部21eをネジ孔24に螺合させたときに樹脂30が削られ、ネジ軸部21eのネジ山・ネジ谷とネジ孔24のネジ山・ネジ谷とが樹脂30を間に挟んで噛み合って、締結ボルト21の緩み防止が図られることとなる。なお、この緩み防止は、後述するように、塗装後の焼付乾燥中においても機能することが求められるので、前記樹脂は、その融点が焼付乾燥温度よりも高いもの(例えば200℃以上)であることが好ましい。そのような樹脂の例としては、例えばナイロン系の樹脂等が挙げられる。
【0033】
また、樹脂を用いる他の例として、図6に示すように、締結ボルト21のネジ軸部21eに凹溝40を縦に削り取り、この凹溝40内に樹脂41を流し込んで、この樹脂41によって凹溝40が埋め込まれるようにしても、図5の場合と同様の効果が得られる。なお、これらの例において、樹脂30,41は、必ずしもネジ谷の全部分又は凹溝40の全部分に付与する必要はなく、ネジ軸部21eとネジ孔24とが螺合する範囲内でネジ谷の一部分又は凹溝40の一部分のみに付与してもよい。
【0034】
さらに、緩み止め手段の他の例として、周知のFTボルトを応用することができる。すなわち、図7に示すように、締結ボルト21のネジ軸部21eのネジ山に複数の角部50…50を突設するのである。こうすれば、ネジ軸部21eをネジ孔24に螺合させたときに前記角部50…50がネジ孔24のネジ谷に圧接され、ネジ軸部21eのネジ山とネジ孔24のネジ谷とが強固に噛み合って、締結ボルト21の緩み防止が図られることとなる。なお、ネジ軸部21eのネジ谷51は円形のままでよい。
【0035】
以上のような緩み止め手段は、締結ボルト21のネジ軸部21eの側に備えることに代えて、あるいは該ネジ軸部21eの側に備えることと共に、エプロンフレーム6のネジ孔24の側に備えることも可能である。また、緩み止め手段のさらに他の例として、締結ボルト21のネジ軸部21eやエプロンフレーム6のネジ孔24にビニールテープを巻き付けておくものがある。
【0036】
本実施形態では、前記締結ボルト21や前記スペーサ22が導電性である場合、図8に示すように、その導電性の部材21,22の表面に非導電性被膜(太線で示す)を形成しておく。こうすれば、後に電着塗装等の電気付与による塗装を行ったときに、締結ボルト21の表面やスペーサ22の表面に塗装被膜(×記号で示す)が形成されることが免れる(この効果については後に詳しく述べる)。ここで、非導電性被膜としては、例えば、エポキシ系塗料(乾燥温度:140℃以上)、メラミン系塗料(同:130℃以上)、ウレタン系塗料(同:100℃以上)及びオレフィン系塗料(同:100℃以上)を塗装して得られる被膜等が好ましく使用可能である。また、いずれも、塗装方法としては、槽内浸水塗装や吹付塗装等が採用できる。
【0037】
次に、樹脂製のフェンダパネル2を金属製のエプロンフレーム6に取り付ける方法を、図3、図4、図10及び図11に示す状態図と、図9に示すフローチャートとを参照しながら説明する。
【0038】
まず、車体組立工場において、図3に示したように、フェンダパネル2の長孔23内に、枠状のスペーサ22を嵌挿しておく。次いで、エプロンフレーム6の上面部6aの上に、フェンダパネル2のフランジ部2aを重ね合わせ、先に、固定部10において、フェンダパネル2の側から、締結ボルト11を挿通孔13に挿通し、かつエプロンフレーム6のネジ孔14に螺合させる。そして、締結ボルト11を締付トルクが所定トルクに上昇するまで締め付けて、固定部10における取付けを完了する。
【0039】
次いで、図4に示したように、スライド部20において、フェンダパネル2の側から、締結ボルト21をスペーサ22の開口22b内に挿通し、かつエプロンフレーム6のネジ孔24に螺合させる。そして、締結ボルト21を締付トルクが所定トルクに上昇するまでいったん締め付ける。この締付作業を図9に示すフローチャートを参照して説明すると、ステップS1で、インパクトレンチ60等の電動工具(図10参照)を用い、締結ボルト21を締付方向に回転させ、ステップS2で、回転トルク、すなわち締付トルクが所定トルク以上か否かを判定し、以上になれば、ステップS3で、締結ボルト21の回転を停止するのである。これにより、締結ボルト21は、図10に示すように、いったん完全締結状態とされる。
【0040】
次いで、締結ボルト21をネジ軸部21eがネジ孔24に螺合している状態で所定量だけ緩める。この緩め作業を図9に示すフローチャートを参照して説明すると、ステップS4で、ステップS3に引き続き同じインパクトレンチ60等の電動工具(図11参照)を用い、締結ボルト21を緩め方向に回転させ、ステップS5で、回転角度が所定範囲内か否か、すなわち緩め量が所定量になったか否かを判定し、所定量だけ緩めれば、ステップS6で、締結ボルト21の回転を停止するのである。これにより、締結ボルト21は、図11に示すように、仮締結状態とされる。ここで、前記回転角度の所定範囲としては、例えば半回転〜3回転程度が好ましい。
【0041】
次いで、この状態で、ワークを塗装工場へ移送し、該塗装工場において、電着塗装等の電気付与による塗装を行う。次いで、ワークを高温乾燥炉に入れて、フェンダパネル2に熱が加わる所定の作業、すなわち電着された塗料の焼付乾燥作業を行うことにより、塗膜を硬化させる。
【0042】
次いで、冷却後、ワークを車両組立工場へ移送し、該車両組立工場において、再び、締結ボルト21を締付トルクが所定トルクに上昇するまで締め付ける。この作業は、図9のステップS1〜ステップS3に準じるものであるから、ここではこれ以上の詳しい説明は省略する。これにより、締結ボルト21は、図10に示したように、再び完全締結状態とされ、スライド部20における取付けが完了する。
【0043】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本実施形態によれば、樹脂製パネル部材であるフェンダパネル2のフランジ部2aに長孔23を形成し、車体本体部材であるエプロンフレーム6の上面部6aにネジ孔24を設けて、フェンダパネル2の側から締結ボルト21を前記長孔23に挿通し、かつ前記ネジ孔24に螺合させて、締付トルクが所定トルクに上昇するまで締め付ける(図9のステップS1〜S3)ことにより、フェンダパネル2をエプロンフレーム6へ取り付けるようにしたから(図2、図3参照)、フェンダパネル2とエプロンフレーム6とが長孔23に沿って相対移動することが可能になる。
【0044】
そして、その場合に、フェンダパネル2の長孔23内に、該長孔23と同じ方向に沿って開口22bが形成され、フェンダパネル2よりも圧縮クリープ強度が高く、フェンダパネル2の前記長孔23が形成されている部分の厚みβと略同じ厚みαを有する枠状のスペーサ22を嵌挿したから(図4、図10参照)、前記締結ボルト21の締付けによりフェンダパネル2をエプロンフレーム6に取り付ける際には、前記枠状スペーサ22を挟んで締結ボルト21の締付けが行われることとなり、その結果、フェンダパネル2をエプロンフレーム6に取り付けるのに必要なトルクが確実・安定に達成されながら、フェンダパネル2に過大な締付トルクが加わることが回避され、ひいてはフェンダパネル2のフランジ部2aの損傷が回避されることとなる。
【0045】
例えば、スペーサ22の厚みαが長孔形成部分の厚みβより僅かに大きくても、両者は略同じ厚みであるから、締結ボルト21の締付時には、該ボルト21の鍔部21bがスペーサ22のフランジ部22c及び本体部22aを下方へ押圧し、スペーサ22を圧縮しながらフェンダパネル2のフランジ部2aを下方へ押圧することとなるので、結果的に、フェンダパネル2に過大な締付トルクが作用することがないのである。また、逆に、スペーサ22の厚みαが長孔形成部分の厚みβより僅かに小さくても、両者は略同じ厚みであるから、締結ボルト21の締付時には、初めのうちは、該ボルト21の鍔部21bがスペーサ22のフランジ部22cを介してフェンダパネル2のフランジ部2aを直接下方へ押圧し、フェンダパネル2のフランジ部2aを圧縮することとなるが、スペーサ22の本体部22aの下端がエプロンフレーム6の上面部6aに着接した後は、スペーサ22を圧縮しながらフェンダパネル2のフランジ部2aを下方へ押圧することとなるので、この場合もやはり結果的に、フェンダパネル2に過大な締付トルクが作用することがないのである。
【0046】
そして、締結ボルト21の軸部に、スペーサ22の開口22bの幅方向の内面22e,22eに略接する大径部21cを設けたから(図4参照)、換言すれば、締結ボルト21の軸部に、スペーサ22の開口22bの幅に略等しい太さの大径部21cを設けたから、この大径部21cがスペーサ22の開口22bの幅方向の内面22e,22eに当接することにより、フェンダパネル2が開口22bの幅方向、すなわち長孔23の幅方向に熱変形(熱膨張・熱収縮)することが阻止されると共に、フェンダパネル2が熱変形が許容される長孔23の長さ方向に確実・安定に案内されることとなる。
【0047】
しかも、以上の効果が、フェンダパネル2をエプロンフレーム6に取り付ける器具として、簡単な構成の締結ボルト21を用いるだけで得られるから、部品コストや製造コストの低減が図られることとなる。
【0048】
次に、締結ボルト21の頭部21aが着座する側のスペーサ22の端部に、長孔23の周縁部に当接するフランジ部22cを設けたから(図10、図11参照)、このフランジ部22cによって、スペーサ22を長孔23内に嵌挿する際の組付け性能及びスペーサ22の長孔23内での位置保持性能が簡単な構造で向上することとなる。
【0049】
次に、締結ボルト21の頭部21aの下方に、該頭部21aよりも大径で、スペーサ22のフランジ部22cに当接する鍔部21bを設けたから(図4、図10参照)、このボルト21の鍔部21bとスペーサ22のフランジ部22cとの圧接面積が簡単な構造で増大し、締結ボルト21の締結安定性が確保されることとなる。
【0050】
次に、締結ボルト21及び/又はエプロンフレーム6のネジ孔24に、該ネジ孔24に螺合している状態の締結ボルト21の緩みを防止する緩み止め手段を備えたから(図5〜図7参照)、たとえ締結ボルト21を完全締結状態とせず、仮締結状態としていても、該締結ボルト21のワークからの脱落が防止されることとなる。
【0051】
一方、フェンダパネル2をエプロンフレーム6に取り付ける方法において、スペーサ22の開口22b内に挿通した締結ボルト21を締付トルクが所定トルクに上昇するまでいったん締め付けた後(図9のステップS1〜S3)、すなわち締結ボルト21をいったん完全締結状態とした後(図10参照)、該締結ボルト21をエプロンフレーム6のネジ孔24に螺合している状態で所定量だけ緩め(図9のステップS4〜S6)、すなわち締結ボルト21を仮締結状態とし(図11参照)、そして、この状態で、ワークの塗装工程とフェンダパネル2に熱が加わる塗料の焼付乾燥作業とを行い、ワークが冷却した後に、再び、仮締結状態にある締結ボルト21を完全締結状態とするようにしたから(図9のステップS1〜S3及び図10に準じる)、フェンダパネル2に熱が加わる焼付乾燥作業中及び冷却中は、フェンダパネル2は、エプロンフレーム6に緩く組み付けられており、その結果、例えばエプロンフレーム6に固く組み付けられた場合等と比べて、フェンダパネル2は、抵抗が少なく、円滑に、エプロンフレーム6に対して長孔23に沿って熱変形(熱膨張・熱収縮)できることとなる。
【0052】
その際、前記締結ボルト21をスペーサ22を介して所定トルクまで締め付けるようにしたから(図10参照)、フェンダパネル2を過大に圧縮することなく、前記所定トルクが確実・安定に得られることとなる。また、前記スペーサ22は、フェンダパネル2よりも圧縮クリープ強度が高いから、締結ボルト21をいったん完全締結状態とした後に所定量だけ緩めたときには、締結ボルト21は確実に仮締結状態となり(図11参照)、その結果、フェンダパネル2の長孔23に沿った円滑な熱膨張・熱収縮が確実に実現する。
【0053】
しかも、その場合に、緩み止め手段により、仮締結状態の締結ボルト21の脱落が防止されるから(図5〜図7参照)、締結ボルト21を仮締結状態とした後、塗装工場へのワークの移送、塗装工程、焼付乾燥工程、冷却工程、車両組立工場へのワークの移送、及び、締結ボルト21を再び完全締結状態とするまでの間に、たとえワークに振動等が伝達されても、それに起因して締結ボルト21が脱落・紛失することが回避されることとなる。
【0054】
また、塗装・乾燥前の工程において、締結ボルト21を締め付ける作業(ステップS1〜S3)に用いる装置と、締結ボルト21を緩める作業(ステップS4〜S6)に用いる装置とを、同じインパクトレンチ30を用いて行うようにしたから(図10、図11参照)、異なる作業工程間での作業性を簡単な方法により高めることができ、生産効率の上昇が図られることとなる。特に、締結ボルト21を完全締結状態とする作業と仮締結状態とする作業とが連続して行われるので(ステップS1〜S6)、作業者は、ただインパクトレンチ60をボルト21の頭部21aに押し当てておくだけでよくなる。
【0055】
なお、本実施形態では、塗装・乾燥前に締結ボルト21を仮締結状態とするために、いったん締結ボルト21を完全締結状態としてから所定量だけ巻き戻すようにした。これにより、仮締結状態においてもネジ軸部21eとネジ孔24との螺合が確実に保たれ、この点からも、締結ボルト21の脱落防止が確実に図られる。
【0056】
そして、図8に示したように、本実施形態では、締結ボルト21及び/又はスペーサ22が導電性である場合には、その導電性の部材の表面に非導電性被膜(太線で示す)を形成しておき、その上で、締結ボルト21を所定量だけ緩めた後、電気付与による塗装(例えば電着塗装等)を行い、次いで、フェンダパネル2に熱が加わる所定の作業として焼付乾燥を行うようにしたから、前記塗装工程において締結ボルト21の表面やスペーサ22の表面に塗装被膜(×記号で示す)が形成されることが免れる。これに対し、導電性の部材の表面に非導電性被膜を形成しておかないと、前記塗装工程において締結ボルト21の表面やスペーサ22の表面に塗装被膜が形成されてしまい、該被膜により、焼付乾燥中に、せっかく緩めた締結ボルト21とスペーサ22との自由な相対移動が阻害され、結果的に、フェンダパネル2とエプロンフレーム6とが相対移動し難くなってしまうのである。それゆえ、本実施形態では、締結ボルト21及び/又はスペーサ22が導電性である場合に、その導電性の部材の表面に予め非導電性被膜を形成しておくことにより、前記不具合が解消されることとなる。
【0057】
また、締結ボルト21の鍔部21bを回転自在としたから(図4参照)、締結ボルト21の締付中は、その軸トルクがスペーサ22に直接作用し難くなり、該スペーサ22のねじれや変形が抑制できる。
【0058】
以上の実施形態は、本発明の最良の実施形態ではあるが、特許請求の範囲を逸脱しない限り、なお種々の改良や変更を行うことができることはいうまでもない。例えば、樹脂製パネル部材をドアパネル4(図1参照)とした場合は、車体幅方向の熱膨張・熱収縮は許容されるが、車体前後方向及び上下方向の熱膨張・熱収縮は規制される。その理由は、意匠上の問題の他、例えばドアパネル4とルーフパネル5との間のスキを保ち、ドアの円滑な開閉を確保するためである。
【0059】
また、図12に示すように、締結ボルト21の鍔部21bを皿バネ70で構成すると、締結ボルト21の締結安定性がより一層高められる。
【0060】
また、図13に示すように、金属製のエプロンフレーム6のネジ孔24を、ウエルドナット80で構成してもよく、図14に示すように、エプロンフレーム6に穿設した孔の縁部を立てるバーリング加工の部分90にネジ切りをして構成してもよい。
【0061】
さらに、前記実施形態では、締結ボルト21は、その軸部の一部がスペーサ22の開口22bの幅に略等しい太さであったが、図15に示すように、その軸部の全部がスペーサ22の開口22bの幅に略等しい太さであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、樹脂製パネル部材を長孔に沿って熱膨張・熱収縮可能に車体本体部材に取り付けるに際し、簡単な構成で、樹脂製パネル部材の損傷を回避し、かつ樹脂製パネル部材が長孔の幅方向に熱膨張・熱収縮することを阻止することができるもので、自動車等の車両のボディの技術分野において広範な産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両を示す斜視図である。
【図2】前記車両のフェンダパネルとエプロンフレームとの取付関係を示す拡大斜視図である。
【図3】図2の部分切欠き分解図である。
【図4】図3に示したスライド部のI−I線による拡大断面図であって、取付前の状態である。
【図5】緩み止め手段の1例を示す締結ボルトの拡大図である。
【図6】緩み止め手段の他の例を示す締結ボルトの拡大図である。
【図7】緩み止め手段のさらに他の例を示す締結ボルトの拡大図であって、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【図8】締結ボルトの表面及びスペーサの表面に非導電性被膜を形成した効果を示す断面図である。
【図9】締結ボルトを完全締結状態としたのち仮締結状態とする具体的動作の1例を示すフローチャートである。
【図10】図4と類似の拡大断面図であって、締結ボルトは完全締結状態である。
【図11】図4と類似の拡大断面図であって、締結ボルトは仮締結状態である。
【図12】皿バネで鍔部を構成した例を示す締結ボルトの断面図である。
【図13】エプロンフレームのネジ孔の他の例を示す断面図である。
【図14】エプロンフレームのネジ孔のさらに他の例を示す断面図である。
【図15】スライド部の他の例を示す図10と類似の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 車両
2 フェンダパネル(樹脂製パネル部材)
2a フランジ部
3 フードパネル
4 ドアパネル
6 エプロンフレーム(車体本体部材)
6a 上面部
10 固定部
20 スライド部
21 締結ボルト
21a ボルト頭部
21b 鍔部
21c 大径部(軸部)
21d テーパ部(軸部)
21e ネジ軸部(軸部)
22 スペーサ
22b 開口
22c フランジ部
22e 幅方向内面
23 長孔
24 ネジ孔
30,41 流し込み樹脂(緩み止め手段)
50 ネジ山角部(緩み止め手段)
60 インパクトレンチ
α スペーサ厚み
β 長孔形成部分厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製パネル部材を車体本体部材に取り付ける車両用樹脂製パネル部材の取付構造であって、
前記樹脂製パネル部材に、該パネル部材の熱変形を許容する方向に沿って長孔が形成され、
前記長孔内に、該長孔と同じ方向に沿って開口が形成され、前記樹脂製パネル部材よりも圧縮クリープ強度が高く、前記樹脂製パネル部材の前記長孔が形成されている部分と略同じ厚みを有する枠状のスペーサが嵌挿され、
前記スペーサの開口内に、該開口の幅に略等しい太さの軸部を有する締結ボルトが挿通されていることを特徴とする車両用樹脂製パネル部材の取付構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車両用樹脂製パネル部材の取付構造において、
前記締結ボルトの頭部が着座する側の前記スペーサの端部に、前記樹脂製パネル部材の長孔の周縁部に当接するフランジ部が設けられていることを特徴とする車両用樹脂製パネル部材の取付構造。
【請求項3】
前記請求項2に記載の車両用樹脂製パネル部材の取付構造において、
前記締結ボルトの頭部の下方に、該頭部よりも大径で、前記スペーサのフランジ部に当接する鍔部が設けられていることを特徴とする車両用樹脂製パネル部材の取付構造。
【請求項4】
前記請求項1から3のいずれかに記載の車両用樹脂製パネル部材の取付構造において、
前記締結ボルト及び該ボルトが螺合する前記車体本体部材のネジ孔の少なくとも一方に、前記ネジ孔に螺合している前記締結ボルトの緩みを防止する緩み止め手段が備えられていることを特徴とする車両用樹脂製パネル部材の取付構造。
【請求項5】
前記請求項1から4のいずれかに記載の取付構造を用いて樹脂製パネル部材を車体本体部材に取り付ける車両用樹脂製パネル部材の取付方法であって、
前記樹脂製パネル部材の長孔内に前記スペーサを嵌挿し、
前記スペーサの開口内に前記締結ボルトを挿通して前記車体本体部材のネジ孔に螺合させ、締付トルクが所定トルクに上昇するまでいったん締め付けた後、前記ネジ孔に螺合している状態で所定量だけ緩め、
前記樹脂製パネル部材に熱が加わる所定の作業を行い、
冷却後、再び前記締結ボルトを締付トルクが所定トルクに上昇するまで締め付けることを特徴とする車両用樹脂製パネル部材の取付方法。
【請求項6】
前記請求項5に記載の車両用樹脂製パネル部材の取付方法において、
前記締結ボルトを緩める作業を該ボルトを締め付ける作業と同じ装置を用いて行うことを特徴とする車両用樹脂製パネル部材の取付方法。
【請求項7】
前記請求項5又は6に記載の車両用樹脂製パネル部材の取付方法において、
前記締結ボルト及び前記スペーサの少なくとも一方が導電性である場合に、その導電性の部材の表面に非導電性被膜を形成しておき、
前記締結ボルトを所定量だけ緩めた後、電気付与による塗装を行い、
次いで、前記所定の作業として焼付乾燥を行うことを特徴とする車両用樹脂製パネル部材の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−161047(P2007−161047A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358591(P2005−358591)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】